Pontryaginの曲面(Pontryagin surface)とは、素数 $p$ ごとに作られる 2 次元のコンパクト距離空間 $\Pi_p$ で、球面の三角形分割の各三角形を $p$ 重に巻きつく Möbius の帯に取り替える操作を無限に繰り返した逆極限である。被覆次元は 2 だが、$\mathbb{Z}/p$ 係数のコホモロジー次元は 2、$q\neq p$ に対する $\mathbb{Z}/q$ 係数や有理数係数のコホモロジー次元は 1 で、係数によって次元が変わる。そのため $p\neq q$ なら積 $\Pi_p\times\Pi_q$ の次元は 4 ではなく 3 になり、コンパクト集合の積の次元が次元の和になるとは限らないことを示す基本的な例である。
$[0,1]^m\times[0,1]^n=[0,1]^{m+n}$ のように、よく知っている空間では「積の次元は次元の和」になる。Pontryaginの曲面(Pontryagin surface)は、この素朴な予想を破る空間として Pontryagin が 1930 年に構成した 2 次元のコンパクト距離空間の族 $\Pi_p$($p$ は素数)である(Dra01 の文献表 [51] と p. 13 の例)。$p\neq q$ なら $\Pi_p\times\Pi_q$ の次元は $4$ ではなく $3$ になる。
作り方は単純で、球面の三角形分割の各三角形を「$p$ 重に巻きつく Möbius の帯」に取り替える操作を無限に繰り返し、その 逆極限 をとる。$p=2$ のときは本当に Möbius の帯であり、各段は向き付け不可能な閉曲面になる。
この記事では、次元の定義を述べたうえで構成を与え、$\dim\Pi_p=2$ と、$p\neq q$ で $\dim(\Pi_p\times\Pi_q)=3$、$\dim(\Pi_p\times\Pi_p)=4$ となることを記事の中で証明する。道具は、多面体の開星の被覆、多面体のコホモロジーの計算、3 次元球面への写像の延長(障害理論)である。
以下、コンパクト距離空間を単にコンパクト集合と呼ぶことがある。$G$ はアーベル群で、$\mathbb{Z}/p$ は位数 $p$ の巡回群を表す。多面体(有限単体複体の幾何学的実現)のコホモロジーは 特異コホモロジー である。
$X$ をコンパクト距離空間とする。$X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ の位数が $n+1$ 以下であるとは、$X$ のどの点も $\mathcal{U}$ の高々 $n+1$ 個の元にしか属さないことをいう。
整数 $n\geq 0$ について、$X$ の任意の有限開被覆が、位数 $n+1$ 以下の有限開被覆で細分できるとき、$\dim X\leq n$ と書く。このような $n$ の最小値を $X$ の被覆次元(covering dimension)といい $\dim X$ で表す。そのような $n$ がなければ $\dim X=\infty$ とし、$\dim\emptyset=-1$ とする。
定義は開集合だけで書かれているので、被覆次元は位相不変量である(距離の取り方によらない)。$n$ 次元の多面体(たとえば $[0,1]^n$)の被覆次元はちょうど $n$ である($\geq n$ は Dra01 例 1.3 (1)(4)、p. 3 から従い、この記事では証明しない。$\leq n$ は下の thm-ps-upper を定数の逆系に使えばよい)。
被覆次元は「開集合がどれだけ重ならざるを得ないか」を測る。これを係数つきのコホモロジーで測り直したものが次の量である。
コンパクト距離空間 $X$ とアーベル群 $G$ について、ある閉集合 $A\subset X$ で $\check{H}^n(X,A;G)\neq0$ となる整数 $n$ の最大値を、$X$ の$G$ 係数コホモロジー次元といい $\dim_G X$ で表す(最大値がなければ $\infty$)。ここで $\check{H}$ は Čechコホモロジー である(Dra01 p. 2 の定義)。
この記事では証明しないが、次の二つが知られている(Dra01 例 1.3 (1) と定理 1.4、p. 3)。
$f_p\colon S^1\to S^1$、$z\mapsto z^p$ を $S^1\subset\mathbb{C}$ の $p$ 重被覆とする。その写像柱
$$
M_p:=\bigl(S^1\times[0,1]\ \sqcup\ S^1\bigr)\big/\bigl((z,1)\sim f_p(z)\bigr)
$$
を考える。$\partial M_p:=S^1\times\{0\}$ を $M_p$ の縁、後ろの $S^1$ の像を芯 $C$ と呼ぶ。
$M_2$ は Möbius の帯である。帯 $S^1\times[0,1]$ の片方の縁を 2 重に巻きつけて芯に貼ると、芯のまわりを半回転ねじれた帯ができる。縁 $\partial M_2$ は 1 本の円周で、芯を 2 周する。円板を切り取って Möbius の帯を縁で貼る操作は、射影平面 $\mathbb{RP}^2$ との連結和にあたる。
$p\geq3$ の $M_p$ は、3 枚以上の帯が芯に沿って交わるので多様体ではないが、有限単体複体として三角形分割できる 2 次元の多面体である。
素数 $p$ を固定する。2 次元の多面体の列 $L_1,L_2,\dots$ と連続全射 $q_k\colon L_{k+1}\to L_k$ を次のように作る。
$\Pi_p$ は直積 $\prod L_k$ の閉集合なのでコンパクト距離空間である。結合写像 $q_k$ がすべて全射なので、各 $\pi_k$ も全射である($y\in L_k$ に対し、全射性を使って $L_{k+1},L_{k+2},\dots$ の点を順に選び、$L_{k-1},\dots,L_1$ へは $q$ で送ればよい)。$j\geq k$ について $q_{jk}:=q_k\circ\dots\circ q_{j-1}\colon L_j\to L_k$($q_{kk}=\mathrm{id}$)と書くと、$\pi_k=q_{jk}\circ\pi_j$ である。
細かさの条件は満たせる。$\Pi_p$ に後の lem-ps-small の距離 $d=\sum_i2^{-i}d_i$ を入れると、$L_k$ の部分集合 $B$ について $\pi_k^{-1}(B)$ の直径は、$x_i=q_{ki}(x_k)$($i\leq k$)で決まる部分と $\sum_{i>k}2^{-i}=2^{-k}$ 以下の部分の和で押さえられる。$L_k$ ができた時点で $q_{ki}$($i\leq k$)は決まっているので、$\tau_k$ に重心細分を繰り返して前者を $2^{-k}$ 未満にできる(重心細分しても、$K_{k-1}$ が部分複体の和集合であることは保たれる)。すると $\mu_k\leq2^{1-k}$ となる。細かさは係数ごとの次元(thm-ps-coefficients)と積の次元の上からの評価(thm-ps-product)に使い、thm-ps-dim には要らない。
また $K_1\subset K_2\subset\cdots$ であり、$q_k$ は $K_k$ の上で恒等写像なので、$y\in K_1$ に定数列 $(y,y,\dots)$ を対応させる写像は $K_1$ を $\Pi_p$ の閉集合として埋め込む。
$p=2$ のとき、$L_{k+1}$ は $L_k$ の各 2 単体を Möbius の帯に取り替えたものなので、$L_k$ と $\mathbb{RP}^2$ を $\tau_k$ の 2 単体の個数だけ連結和したものである。辺や頂点の近くでも、帯の縁の近くが三角形の縁の近くと同じ形で集まるので、$L_{k+1}$ は閉曲面になる。したがって $k\geq2$ の $L_k$ はすべて向き付け不可能な閉曲面であり、$\Pi_2$ は向き付け不可能な閉曲面の逆極限である。一方 $\Pi_2$ 自身は曲面(2 次元多様体)ではない。多様体は dimensionally full-valued だが、$\dim_{\mathbb{Z}/3}\Pi_2=1\neq2$ だからである(下の thm-ps-coefficients)。
取り替えで $H^2$ がどう変わるかを、一つの部品について計算する。
$G$ をアーベル群とする。
要点:$M_p$ は芯の円周に縮み、縁から芯への写像は $p$ 重被覆なので、対の長完全列で $H^2(M_p,\partial M_p;G)$ は $H^1(S^1;G)=G$ を $p$ 倍写像の像で割ったものになる。
$M_p$ は芯 $C\cong S^1$ に変形レトラクトするので、$H^n(M_p;G)\cong H^n(S^1;G)$ であり、これは $n=0,1$ で $G$、$n\geq2$ で $0$ である。縁の包含 $i\colon\partial M_p\hookrightarrow M_p$ にレトラクションを合成すると $f_p$ になるから、$i^*\colon H^1(M_p;G)\to H^1(\partial M_p;G)$ は $f_p^*\colon H^1(S^1;G)\to H^1(S^1;G)$ と同じである。普遍係数定理(Hat02 定理 3.2、p. 195)より $H^1(S^1;G)=\mathrm{Hom}(H_1(S^1),G)$ で、$f_p$ は $H_1(S^1)=\mathbb{Z}$ に $p$ 倍で作用するので、$f_p^*$ は $G$ の $p$ 倍写像である。
対 $(M_p,\partial M_p)$ の長完全列(Hat02 pp. 199–200)$$H^1(M_p;G)\xrightarrow{\ i^*\ }H^1(\partial M_p;G)\xrightarrow{\ \delta\ }H^2(M_p,\partial M_p;G)\longrightarrow H^2(M_p;G)=0$$から、$\delta$ は全射で核は $i^*$ の像 $pG$ である。よって $H^2(M_p,\partial M_p;G)\cong G/pG$。$n\geq3$ では $H^{n-1}(\partial M_p;G)=0$ と $H^n(M_p;G)=0$ に挟まれるので $0$ である。
$\Delta$ は可縮なので、同じ長完全列から $\delta_\Delta\colon H^1(\partial\Delta;G)\to H^2(\Delta,\partial\Delta;G)$ は同型である。$\rho$ は対の写像 $(M_p,\partial M_p)\to(\Delta,\partial\Delta)$ であり、連結準同型の自然性から $\rho^*\circ\delta_\Delta=\delta\circ(\rho|)^*$ が成り立つ。$(\rho|)^*$ で両方の $H^1$ を $G$ と同一視すると、$\rho^*$ は $\delta_\Delta(g)\mapsto\delta(g)$、すなわち $G\to G/pG$ の商写像である。$\square$
係数を変えると、部品の $H^2$ は次のように変わる。
| 係数 $G$ | $H^2(M_p,\partial M_p;G)\cong G/pG$ | $\rho^*$ |
|---|---|---|
| $\mathbb{Z}$ | $\mathbb{Z}/p$ | 全射、同型でない |
| $\mathbb{Z}/p$ | $\mathbb{Z}/p$ | 同型 |
| $\mathbb{Z}/q$(素数 $q\neq p$) | $0$ | 零写像 |
| $\mathbb{Q}$ | $0$ | 零写像 |
$\mathbb{Z}/p$ 係数では部品は円板と区別がつかず、$\mathbb{Z}/q$ 係数や $\mathbb{Q}$ 係数では部品の 2 次元の部分が消える。Pontryaginの曲面の性質はすべてこの表から来る。
すべての $k\geq1$ について次が成り立つ。
$K=K_k$ は $L_k$ と $L_{k+1}$ の両方の部分複体で、$q_k$ は $K$ の上で恒等写像だから、対の写像 $q_k\colon(L_{k+1},K)\to(L_k,K)$ を与える。$L_k/K$ は 2 単体ごとの $\Delta/\partial\Delta$ の一点和、$L_{k+1}/K$ は $M_\Delta/\partial M_\Delta$ の一点和なので(Hat02 p. 202 の一点和の公理と商の同型)、
$$
H^2(L_k,K;G)\cong\prod_\Delta H^2(\Delta,\partial\Delta;G),\qquad H^2(L_{k+1},K;G)\cong\prod_\Delta H^2(M_\Delta,\partial M_\Delta;G)
$$
であり、この同一視で $q_k^*$ は各成分の $\rho^*$ になる。二つの対の長完全列と $q_k^*$ から、次の可換図式を得る。$K$ は 1 次元なので $H^2(K;G)=0$ である(Hat02 p. 203)。
$$
\xymatrix{
H^1(K;G) \ar[r]^-{\delta} \ar@{=}[d] & H^2(L_k,K;G) \ar[r] \ar[d]^{\prod\rho^*} & H^2(L_k;G) \ar[r] \ar[d]^{q_k^*} & 0 \\
H^1(K;G) \ar[r]^-{\delta'} & H^2(L_{k+1},K;G) \ar[r] & H^2(L_{k+1};G) \ar[r] & 0
}
$$
図式が可換とは $(\prod\rho^*)\circ\delta=\delta'$ であり、右の四角も可換ということである。行が完全なので、$H^2(L_k;G)\cong\operatorname{coker}\delta$、$H^2(L_{k+1};G)\cong\operatorname{coker}\delta'$ で、$q_k^*$ は余核の間の誘導写像である。
$p=2$ の場合は、ex-ps-stages-2 の向き付け不可能な閉曲面 $N$ について $H^2(N;\mathbb{Z}/2)\cong\mathbb{Z}/2$、$H^2(N;\mathbb{Z}/3)=0$ となることと合っている。
多面体の開被覆として、頂点の開星を使う。有限単体複体 $T$ の点 $y$ の重心座標を $(t_v(y))_v$ とし、頂点 $v$ の開星を $\operatorname{st}(v):=\{y : t_v(y)>0\}$ とする。$y$ を内部に含む単体を $y$ の台単体と呼ぶと、$y\in\operatorname{st}(v)$ は「$v$ が $y$ の台単体の頂点である」ことと同じである。
$T$ を次元 $n$ 以下の有限単体複体とする。
要点:点 $y$ が入る開星は、$y$ の台単体の頂点の開星だけである。
1. 共通部分の点 $y$ をとると、すべての $v_i$ が $y$ の台単体の頂点なので、一つの単体の頂点である。逆に $v_0,\dots,v_m$ がある単体 $\sigma$ の頂点なら、$\sigma$ の重心ではすべての $t_{v_i}$ が正である。 2. $t_v$ は連続なので $\operatorname{st}(v)$ は開集合で、どの点も台単体の頂点の開星に入る。点 $y$ が入る開星は台単体の頂点の開星だけであり、台単体は次元 $n$ 以下なので頂点は $n+1$ 個以下である。$\square$
逆極限 $X=\varprojlim(L_i,q_i)$ に距離を入れる。各 $L_i$ に $1$ 以下の値をとる距離 $d_i$ をとり(多面体を $\mathbb{R}^N$ に実現した Euclid 距離と $1$ の小さい方)、$X$ に
$$
d(x,y):=\sum_{i\geq1}2^{-i}d_i(x_i,y_i)
$$
を入れる。これは直積位相を与える距離である。
$\varepsilon>0$ とし、$2^{-j}<\varepsilon/2$ となる $j$ をとる。このとき $\delta>0$ があって、$L_j$ の直径 $\delta$ 未満の任意の部分集合 $B$ について $\operatorname{diam}\pi_j^{-1}(B)<\varepsilon$ となる。
要点:$L_j$ までの成分は結合写像の一様連続性で小さくでき、$j$ より先の成分の寄与は $2^{-j}$ 以下である。
$i\leq j$ について $q_{ji}\colon L_j\to L_i$ はコンパクト集合上の連続写像なので一様連続である。そこで $\delta>0$ を、$d_j(y,y')<\delta$ ならすべての $i\leq j$ で $d_i(q_{ji}y,q_{ji}y')<\varepsilon/2$ となるようにとる。$x,x'\in\pi_j^{-1}(B)$ なら、$i\leq j$ で $x_i=q_{ji}(x_j)$、$x'_i=q_{ji}(x'_j)$ かつ $d_j(x_j,x'_j)<\delta$ だから$$d(x,x')\leq\sum_{i\leq j}2^{-i}\cdot\frac{\varepsilon}{2}+\sum_{i>j}2^{-i}=(1-2^{-j})\frac{\varepsilon}{2}+2^{-j}.$$右辺は $x,x'$ によらない定数で、$\varepsilon/2+2^{-j}<\varepsilon$ より小さい。よって直径(上限)も $\varepsilon$ 未満である。$\square$
$X=\varprojlim(L_i,q_i)$ を、次元 $n$ 以下の多面体 $L_i$ と連続写像 $q_i$ の逆極限とする。このとき $\dim X\leq n$ である。
$\mathcal{U}$ を $X$ の有限開被覆とし、$\lambda>0$ をその Lebesgue 数とする(直径 $\lambda$ 未満の集合は $\mathcal{U}$ のどれかの元に含まれる)。lem-ps-small を $\varepsilon=\lambda$ で使い、$j$ と $\delta$ を得る。$L_j$ の三角形分割に重心細分を繰り返すと、単体の直径の最大値は $0$ に近づく(Hat02 p. 120。1 回の重心細分で直径は $n/(n+1)$ 倍以下になる)。開星は頂点を含む閉単体の和集合に含まれ、直径は単体の直径の最大値の 2 倍以下なので、細分を十分繰り返せば、すべての開星の直径が $\delta$ 未満の三角形分割 $T$ が得られる。
$\mathcal{V}:=\{\pi_j^{-1}(\operatorname{st}(v)) : v\text{ は }T\text{ の頂点}\}$ とおく。$\pi_j$ は連続なので $\mathcal{V}$ は $X$ の有限開被覆である。各元の直径は $\lambda$ 未満なので $\mathcal{V}$ は $\mathcal{U}$ の細分である。逆像は共通部分を保つ($\pi_j^{-1}(A)\cap\pi_j^{-1}(B)=\pi_j^{-1}(A\cap B)$)ので、$X$ の点 $x$ が属する $\mathcal{V}$ の元の個数は、$\pi_j(x)$ が属する開星の個数以下であり、prop-ps-star より $n+1$ 以下である。よって $\dim X\leq n$。$\square$
Pontryaginの曲面の各段 $L_k$ は 2 次元の多面体だから、$\dim\Pi_p\leq2$ である。同じ定理から、$\Pi_p\times\Pi_q$ は 4 次元の多面体 $L_k\times L'_k$ の逆極限(二つの逆極限の積は、積の逆系の逆極限と同相)なので $\dim(\Pi_p\times\Pi_q)\leq4$ も分かる。積 $L_k\times L'_k$ は単体の積を細分して三角形分割できる(Hat02 §3.B、p. 278)。
下からの評価には、「次元が低いと、結合写像がコホモロジーを殺す」という次の補題を使う。
$X=\varprojlim(L_i,q_i)$ を、有限単体複体 $L_i$ と連続全射 $q_i$ の逆極限とし、$\dim X\leq n$ とする。このとき任意の $k$ について、ある $j\geq k$ と、次元 $n$ 以下の有限単体複体 $N$ と連続写像 $h\colon L_j\to|N|$、$g\colon|N|\to L_k$ があって、$q_{jk}\simeq g\circ h$(ホモトピック)となる。特に、任意のアーベル群 $G$ と $m>n$ について $q_{jk}^*\colon H^m(L_k;G)\to H^m(L_j;G)$ は零写像である。
要点:$\mathcal{W}$ を開星の引き戻しの位数 $n+1$ 以下の細分とし、その脈体 $N$ を経由する単体写像 $h\colon L_j\to|N|$、$g\colon|N|\to L_k$ を作ると、$q_{jk}(y)$ と $g(h(y))$ はいつも同じ閉単体に入るので、線分でつなぐホモトピーがとれる。
$\tau$ を $L_k$ の三角形分割とする。$\{\pi_k^{-1}(\operatorname{st}(v))\}_v$ は $X$ の有限開被覆なので、$\dim X\leq n$ より、位数 $n+1$ 以下の有限開被覆 $\mathcal{W}$ で細分できる(空集合は除いておく)。各 $W\in\mathcal{W}$ について、$W\subset\pi_k^{-1}(\operatorname{st}(v(W)))$ となる頂点 $v(W)$ を一つ選ぶ。$\mathcal{W}$ の脈体 $N$ を、$\mathcal{W}$ の元を頂点とし、共通部分が空でない元の組を単体とする単体複体とする。位数が $n+1$ 以下なので $\dim N\leq n$ である。
段 1($g$ の構成).$W_0,\dots,W_m$ の共通部分が点 $x$ を含むなら、$\pi_k(x)\in\operatorname{st}(v(W_0))\cap\dots\cap\operatorname{st}(v(W_m))$ なので、prop-ps-star より $v(W_0),\dots,v(W_m)$ は $\tau$ の一つの単体の頂点である。よって $W\mapsto v(W)$ は単体写像に延び、これを $g\colon|N|\to L_k$ とする。
段 2($h$ の構成).$\lambda$ を $\mathcal{W}$ の Lebesgue 数とし、thm-ps-upper の証明と同じく、$j\geq k$ と $L_j$ の三角形分割 $T$ を、各頂点 $w$ について $\pi_j^{-1}(\operatorname{st}(w))$ の直径が $\lambda$ 未満となるようにとる(lem-ps-small の $j$ は大きくとり直してよい)。各 $w$ について $\pi_j^{-1}(\operatorname{st}(w))\subset W(w)$ となる $W(w)\in\mathcal{W}$ を選ぶ。$w_0,\dots,w_m$ が $T$ の単体の頂点なら、prop-ps-star より開星の共通部分に点 $y$ があり、$\pi_j$ が全射なので $\pi_j(x)=y$ となる $x$ がある。$x$ はすべての $W(w_i)$ に属するので、$W(w_0),\dots,W(w_m)$ は $N$ の単体をなす。よって $w\mapsto W(w)$ は単体写像 $h\colon L_j\to|N|$ に延びる。
段 3(ホモトピー).$y\in L_j$ の $T$ での台単体の頂点を $w_0,\dots,w_m$ とし、$\pi_j(x)=y$ となる $x$ をとる。各 $i$ で $x\in\pi_j^{-1}(\operatorname{st}(w_i))\subset W(w_i)\subset\pi_k^{-1}(\operatorname{st}(v(W(w_i))))$ だから、$q_{jk}(y)=\pi_k(x)$ は $\operatorname{st}(v(W(w_i)))$ に属する。つまり $v(W(w_i))$ はすべて $q_{jk}(y)$ の台単体 $\sigma$ の頂点である。一方 $g(h(y))$ は $v(W(w_0)),\dots,v(W(w_m))$ の張る単体、すなわち $\sigma$ の面に入る。よって $q_{jk}(y)$ と $g(h(y))$ は同じ閉単体 $\sigma$ に入り、重心座標での線分$$H(y,t):=(1-t)\,q_{jk}(y)+t\,g(h(y))\qquad(0\leq t\leq1)$$は $L_k$ の中にある。重心座標は連続なので $H$ は連続であり、$q_{jk}\simeq g\circ h$ である。
最後に、コホモロジーのホモトピー不変性から $q_{jk}^*=h^*\circ g^*$ であり、$|N|$ は次元 $n$ 以下なので $m>n$ で $H^m(|N|;G)=0$(Hat02 p. 203)。よって $q_{jk}^*=0$ である。$\square$
すべての素数 $p$ について $\dim\Pi_p=2$ である。
thm-ps-upper より $\dim\Pi_p\leq2$ である。$\dim\Pi_p\leq1$ と仮定して矛盾を導く。$\Pi_p$ の結合写像 $q_k$ はすべて全射なので、lem-ps-factor を $n=1$、$k=1$、$m=2$、$G=\mathbb{Z}/p$ で使うと、ある $j\geq1$ で $q_{j1}^*\colon H^2(L_1;\mathbb{Z}/p)\to H^2(L_j;\mathbb{Z}/p)$ は零写像になる。ところが prop-ps-h2 の 1 より、$q_{j1}^*$ は同型 $q_i^*$ の合成なので同型であり、$H^2(L_1;\mathbb{Z}/p)\cong\mathbb{Z}/p\neq0$ だから零写像ではない。これは矛盾である。よって $\dim\Pi_p=2$。$\square$
この証明では、prop-ps-h2 の $\mathbb{Z}/p$ 係数の部分だけを使った。$\mathbb{Z}/q$ 係数($q\neq p$)では各段の $H^2$ が $0$ になるので、同じ議論で下からの評価は得られない。これが係数による次元の違いの現れである。
Pontryaginの曲面 $\Pi_p$ と素数 $q\neq p$ について
$$
\dim_{\mathbb{Z}/p}\Pi_p=\dim_{\mathbb{Z}}\Pi_p=2,\qquad\dim_{\mathbb{Z}/q}\Pi_p=\dim_{\mathbb{Q}}\Pi_p=1.
$$
証明は Dra01 に譲る。
この記事では証明しない(Dra01 例 1.9、p. 5。例 2.10、p. 10 はほかの係数群も扱う)。$\dim_{\mathbb{Z}}\Pi_p=2$ は thm-ps-dim と Alexandroff の定理から従う。$\dim_{\mathbb{Z}/p}\Pi_p=2$ の要点は、prop-ps-h2 の 1 と Čech コホモロジーの連続性により $\check{H}^2(\Pi_p;\mathbb{Z}/p)\cong\mathbb{Z}/p\neq0$ となることである。$\dim_{\mathbb{Z}/q}\Pi_p\leq1$ の要点は、lem-ps-local の表のとおり $\mathbb{Z}/q$ 係数では各部品の 2 次元の相対コホモロジーが消えることを、細かい三角形分割の単体の逆像ごとに(局所的に)使うことである。
積の次元を上から押さえるには、thm-ps-upper のように段の多面体の開星を引き戻すだけでは足りない(各段 $L_k\times L'_k$ は 4 次元である)。そこで、結合写像を「3 次元の部分に押し込んだ写像」に取り替えても開被覆が作れる、という次の判定法を使う。
$X=\varprojlim(L_k,q_k)$ を、多面体 $L_k$ と連続全射 $q_k$ の逆極限とし、$X$ に直積位相を与える距離 $d$ をとる。整数 $n\geq0$ について、任意の $\varepsilon>0$ に対し次のものがあるとする:番号 $k$、$L_k$ の閉集合の有限族 $\mathcal{C}$、$L_k$ の三角形分割 $T$、その次元 $n$ 以下の部分複体 $P$、連続写像 $g\colon L_{k+1}\to|P|$ で、
要点:$g\circ\pi_{k+1}$ で $P$ の開星を引き戻した被覆が、位数 $n+1$ 以下で細かい。
$\mathcal{U}$ を $X$ の有限開被覆、$\lambda$ をその Lebesgue 数とし、$\varepsilon=\lambda/5$ として仮定のものをとる。$P$ の頂点 $v$ ごとに $V_v:=(g\circ\pi_{k+1})^{-1}(\operatorname{st}_P(v))$ とおく。$P$ の開星は $|P|$ を覆うので、$\{V_v\}$ は $X$ の有限開被覆で、prop-ps-star を $P$ に使うと位数は $n+1$ 以下である。
直径を評価する。$\pi_k$ は全射なので、各 $v$ について $w_v\in\pi_k^{-1}(v)$ を一つ選ぶ。$x\in V_v$、$y:=\pi_{k+1}(x)$ とする。$g(y)$ の $P$ での台単体は $v$ を頂点にもち、条件 1 よりある $C_1\in\mathcal{C}$ に含まれるので、$g(y),v\in C_1$。条件 3 より $g(y),q_k(y)\in C_2$ となる $C_2\in\mathcal{C}$ がある。$z\in\pi_k^{-1}(g(y))$ をとると、$\pi_k(x)=q_k(y)$ なので $x,z\in\pi_k^{-1}(C_2)$、また $z,w_v\in\pi_k^{-1}(C_1)$。条件 2 より $d(x,w_v)<2\varepsilon$ である。したがって $\operatorname{diam}V_v\leq4\varepsilon<\lambda$ で、各 $V_v$ は $\mathcal{U}$ のどれかの元に含まれる。よって $\dim X\leq n$。$\square$
判定法の写像 $g$ は、各段で 4 次元の塊を 3 次元の境界へ押し込むことで作る。押し込めるかどうかを決めるのが、次の計算である。
素数 $p,q$ について $W:=M_p\times M_q$、$\partial W:=\partial M_p\times M_q\cup M_p\times\partial M_q$ とおく。任意のアーベル群 $G$ について
$$
H^4(W,\partial W;G)\cong G/(pG+qG)
$$
である。特に $p\neq q$ なら $H^4(W,\partial W;G)=0$ であり、連続写像 $\rho\times\rho\colon\partial W\to\partial(\Delta\times\Delta)$ は連続写像 $W\to\partial(\Delta\times\Delta)$ に延びる。$p=q$ なら $H^4(W,\partial W;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}/p\neq0$ である。
要点:$W/\partial W$ は 2 つの写像錐 $S^1\cup_pe^2$ と $S^1\cup_qe^2$ の smash 積で、4 次元の胞体の境界が $p$ 倍と $q$ 倍の和になるので $H^4=G/(pG+qG)$。これが消えれば障害理論で延長できる。
コンパクト Hausdorff 空間の対について $(X\times Y)/(A\times Y\cup X\times B)$ は $X/A$ と $Y/B$ の smash 積 $(X/A)\wedge(Y/B)$ である($A,B$ は空でない閉集合。smash 積の定義は Hat02 p. 10)。実際、商写像の積 $X\times Y\to(X/A)\times(Y/B)$ と smash 積への商写像の合成は連続な全射で、同一視されるのはちょうど $A\times Y\cup X\times B$ の点どうしである。コンパクト Hausdorff 空間を閉集合で潰した空間はコンパクト Hausdorff なので(正規性で閉集合と点を分離する)、$X/A$、$Y/B$、その積、さらにその閉集合 $(X/A)\vee(Y/B)$ を潰した smash 積はいずれもコンパクト Hausdorff である。よって誘導される写像 $(X\times Y)/(A\times Y\cup X\times B)\to(X/A)\wedge(Y/B)$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射であり、同相写像である。$X_p:=M_p/\partial M_p$ は $f_p$ の写像錐、すなわち円周に次数 $p$ の写像で 2 胞体を貼った CW 複体である(Hat02 p. 13)。胞体を $e^0,e^1,e^2$ とすると、胞体的境界は $de^2=p\,e^1$、$de^1=0$ である(胞体的境界公式、Hat02 p. 140)。$X_q$ の胞体を $f^0,f^1,f^2$($df^2=q\,f^1$)とする。
$W/\partial W\cong X_p\wedge X_q$ で、CW 対の商の同型(Hat02 p. 202)から $H^4(W,\partial W;G)\cong H^4(X_p\times X_q,X_p\vee X_q;G)$ である。これは $i,j\geq1$ の積胞体 $e^i\times f^j$ の胞体的余鎖複体で計算できる(Hat02 定理 3.5、p. 203)。3 次元の胞体は $e^1\times f^2$、$e^2\times f^1$、4 次元は $e^2\times f^2$ だけで、積の胞体的境界公式(Hat02 命題 3B.1、p. 269)より$$d(e^2\times f^2)=de^2\times f^2+(-1)^2e^2\times df^2=p\,(e^1\times f^2)+q\,(e^2\times f^1).$$3 次の余鎖 $\varphi$ について $(\delta\varphi)(e^2\times f^2)=p\,\varphi(e^1\times f^2)+q\,\varphi(e^2\times f^1)$ なので、$\delta$ の像は $pG+qG$ で、5 次の余鎖はないから $H^4\cong G/(pG+qG)$。$p\neq q$ なら $pG+qG=G$($ap+bq=1$ となる整数がある)なので $0$、$p=q$、$G=\mathbb{Z}$ なら $\mathbb{Z}/p$ である。
$\partial(\Delta\times\Delta)$ は 3 次元球面 $S^3$ と同相で、単連結なので abelian な CW 複体(Hat02 p. 342)であり、$n<3$ で $\pi_n(S^3)=0$(Hat02 系 4.9、p. 349)。$W$ は 4 次元の CW 複体なので $n\geq4$ で $H^{n+1}(W,\partial W;\,\cdot\,)=0$。$p\neq q$ なら上の計算で $n=3$ の $H^4(W,\partial W;\pi_3(S^3))$ も $0$ である。よって障害理論(Hat02 系 4.73、p. 417)により、$\partial W\to S^3$ は $W$ 全体に延びる。$\square$
$\mathbb{Z}$ 係数の値 $\mathbb{Z}/\gcd(p,q)$ は、Künneth 公式の Tor の項として理解できる。$X_p$ の被約ホモロジーは 1 次の $\mathbb{Z}/p$ だけなので、Künneth 公式(Hat02 定理 3B.6、p. 275)から $X_p\times X_q$ のホモロジーには 3 次の $\operatorname{Tor}(\mathbb{Z}/p,\mathbb{Z}/q)$ が現れ、普遍係数定理で $H^4$ に移る。$p\neq q$ ではこれが消え、$p=q$ では消えない。これが積の次元の差を生む。
下からの評価には、閉集合の次元が大きくならないことも使う。
コンパクト距離空間 $X$ の閉集合 $A$ について $\dim A\leq\dim X$。
要点:$A$ の開被覆に $X\setminus A$ を足して $X$ の開被覆にし、その細分を $A$ に制限する。
$\dim X\leq n$ とし、$\{A\cap O_i\}$($O_i$ は $X$ の開集合)を $A$ の有限開被覆とする。$\{O_i\}\cup\{X\setminus A\}$ は $X$ の有限開被覆なので、位数 $n+1$ 以下の有限開被覆 $\mathcal{V}$ で細分できる。$\{V\cap A : V\in\mathcal{V}\}$ は $A$ の有限開被覆で位数 $n+1$ 以下であり、$V\cap A\neq\emptyset$ なら $V$ は $X\setminus A$ に含まれないのでどれかの $O_i$ に含まれ、$V\cap A\subset A\cap O_i$ である。$\square$
$p\neq q$ を素数とする。このとき $\dim\Pi_p=\dim\Pi_q=2$ だが
$$
\dim(\Pi_p\times\Pi_q)=3
$$
である。一方 $\dim(\Pi_p\times\Pi_p)=4$ である。
$\Pi_q$ の段を $L'_k$、結合写像を $q'_k$、射影を $\pi'_k$ とし、$\Pi_p\times\Pi_q=\varprojlim(L_k\times L'_k,\,q_k\times q'_k)$ に距離 $d+d'$ を入れる。
段 1($\dim(\Pi_p\times\Pi_q)\leq3$).lem-ps-criterion を $n=3$ で使う。$\varepsilon>0$ に対し、def-ps-surface の細かさの条件から $\mu_k,\mu'_k<\varepsilon/2$ となる $k$ をとる。$\mathcal{C}$ を積 $\sigma\times\tau$($\sigma,\tau$ はそれぞれ $\tau_k,\tau'_k$ の単体)全体とすると、$(\pi_k\times\pi'_k)^{-1}(\sigma\times\tau)=\pi_k^{-1}(\sigma)\times\pi_k'^{-1}(\tau)$ の直径は $\mu_k+\mu'_k<\varepsilon$ 以下である。単体の積を細分して、各 $\sigma\times\tau$ を部分複体とする $L_k\times L'_k$ の三角形分割 $T$ をとり(Hat02 p. 278)、$P:=K_k\times L'_k\cup L_k\times K'_k$($\dim\sigma+\dim\tau\leq3$ の積の和)とする。$P$ は 3 次元の部分複体である。
$g\colon L_{k+1}\times L'_{k+1}\to|P|$ を次のように定める。$K_k\times L'_{k+1}\cup L_{k+1}\times K'_k$ の上では $g:=q_k\times q'_k$(像は $P$ に入る)。$\tau_k,\tau'_k$ の 2 単体 $\Delta,\Delta'$ ごとの塊 $M_\Delta\times M'_{\Delta'}$ の上では、lem-ps-block により、境界の上の $q_k\times q'_k$ を延長した写像 $M_\Delta\times M'_{\Delta'}\to\partial(\Delta\times\Delta')\subset P$ とする。これらの閉集合は $L_{k+1}\times L'_{k+1}$ を覆い、重なりは塊の境界だけで、そこで定義が一致するので、$g$ は連続である。塊の上では $g(y)$ と $(q_k\times q'_k)(y)$ はともに $\Delta\times\Delta'$ に入り、それ以外では一致する。よって lem-ps-criterion の条件 1〜3 が成り立ち、$\dim(\Pi_p\times\Pi_q)\leq3$。
段 2($\dim(\Pi_p\times\Pi_q)\geq3$).$\tau'_1$ の 2 単体の縁の円周 $S\subset K'_1$ は、定数列として $\Pi_q$ の閉集合になる(def-ps-surface の後の注意)。$\Pi_p\times S=\varprojlim(L_k\times S,\,q_k\times\mathrm{id})$ で、結合写像は全射である。体係数の Künneth 公式(Hat02 定理 3.15、p. 216)と $H^i(L_k;\mathbb{Z}/p)=0$($i\geq3$)から
$$
H^3(L_k\times S;\mathbb{Z}/p)\cong H^2(L_k;\mathbb{Z}/p)\otimes H^1(S;\mathbb{Z}/p)\cong\mathbb{Z}/p
$$
であり、交叉積の自然性から $(q_{k1}\times\mathrm{id})^*$ は $q_{k1}^*\otimes\mathrm{id}$ として働くので、prop-ps-h2 より同型である。$\dim(\Pi_p\times S)\leq2$ なら、lem-ps-factor($n=2$、$m=3$、$G=\mathbb{Z}/p$)によりある $j$ で $(q_{j1}\times\mathrm{id})^*=0$ となって矛盾する。よって $\dim(\Pi_p\times S)\geq3$ で、lem-ps-closed より $\dim(\Pi_p\times\Pi_q)\geq3$。
段 3($\dim(\Pi_p\times\Pi_p)=4$).thm-ps-upper より $\leq4$ である。段 2 と同じく Künneth 公式から $H^4(L_k\times L_k;\mathbb{Z}/p)\cong H^2\otimes H^2\cong\mathbb{Z}/p$ で、$(q_{k1}\times q_{k1})^*$ は同型である。$\dim\leq3$ なら lem-ps-factor($n=3$、$m=4$)と矛盾するので、$\dim(\Pi_p\times\Pi_p)=4$。$\square$
段 1 が $p=q$ で使えないのは、lem-ps-block の障害 $H^4(W,\partial W;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}/p$ が消えず、塊を境界へ押し込めないからである。直観的には、$\mathbb{Z}/p$ 係数で見ると $\Pi_q$ は 1 次元にしか見えず(thm-ps-coefficients)、$\mathbb{Z}/q$ 係数で見ると $\Pi_p$ が 1 次元にしか見えないので、どの素数で見ても積は $2+1=3$ 次元以下にしか見えない。コホモロジー次元の理論による別証明は Dra01 系 3.8 の後の例(p. 13)にある。
Pontryagin の 1930 年の論文は、Dra01 の文献表 [51] によれば C. R. Acad. Sci. Paris 190, pp. 1105–1107 に載った「次元論の基本的な仮説について」である。Boltyanskii は、$\dim X=2$ で $\dim(X\times X)=3$ となるコンパクト集合 $X$ を作った(Dra01 の文献表 [7]。有限次元のコンパクト集合 $X$ では、$\dim(X\times X)$ は $2\dim X$ か $2\dim X-1$ である(Alexandroff の定理と Dra01 定理 3.16、p. 14))。
$\Pi_3$ の第 2 段 $L_2$ を考える。prop-ps-h2 より $H^2(L_2;\mathbb{Z}/3)\cong\mathbb{Z}/3$ だが、$H^2(L_2;\mathbb{Z}/2)=0$、$H^2(L_2;\mathbb{Q})=0$ である。$\mathbb{Z}/2$ 係数や有理数係数では、$L_2$ の「面」はすべて 1 次元のもの(芯の円周)と区別がつかない。
thm-ps-upper の証明は、$\Pi_p$ の任意の有限開被覆を、ある段 $L_j$ の細かい三角形分割の開星の逆像で細分するものだった。開星の被覆の位数は 3 なので $\dim\Pi_p\leq2$ が出る。同じ方法を $\Pi_p\times\Pi_q$ に使うと、各段 $L_j\times L'_j$ が 4 次元なので $\leq4$ しか出ない。上からの評価 $3$ を得るには、prf-ps-product の段 1 のように、結合写像を 3 次元の部分 $P$ へ押し込んだ写像に取り替えてから開星を引き戻す必要がある。
次の表は、次元についての主張が成り立つための条件を外したときの反例である。1、2 行目は「積の次元は次元の和」、3 行目は「多面体の逆極限の次元は段の次元に等しい」という主張についてのものである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 因子の一方が dimensionally full-valued(多面体など) | $\Pi_2\times\Pi_3$ | $\dim(X\times Y)=\dim X+\dim Y$($3\neq2+2$) |
| 係数が体($F$ 係数のコホモロジー次元の積公式) | $\Pi_2\times\Pi_3$ の $\mathbb{Z}$ 係数 | $\dim_{\mathbb{Z}}(X\times Y)=\dim_{\mathbb{Z}}X+\dim_{\mathbb{Z}}Y$($3\neq4$) |
| 各段の結合写像が最上次のコホモロジーを殺さない | $\Pi_2\times\Pi_3=\varprojlim(L_k\times L'_k)$ | 各段の次元 $4$ がそのまま極限の次元になる(極限は $3$ 次元) |
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