Eichler–Deuringの質量公式(Eichler–Deuring mass formula)とは、素数 $p$ について、$\bar{\mathbb{F}}_p$ 上の超特異楕円曲線の同型類 $E$ にわたる和 $\sum 1/\#\operatorname{Aut}(E)$ が $(p-1)/24$ に等しいという公式である。同型類の個数は $p$ を $12$ で割った余りによって $p$ の $1$ 次式からずれるが、自己同型群の位数で重みづけるとずれが消える。$p\ge5$ では、Legendre 形の曲線の超特異なパラメータが Hasse 多項式の $(p-1)/2$ 個の単純根であることから従う。Deuring の対応により、四元数体 $B_{p,\infty}$ の極大整環に対する Eichler の質量公式と同じものになる。
標数 $p>0$ の代数閉体の上の楕円曲線のうち、$p$ 捩れ点が単位元だけのものを超特異楕円曲線という。超特異楕円曲線の同型類は各 $p$ について有限個しかない。その個数は $p$ を $12$ で割った余りによって細かく変わるが、各同型類を自己同型群の位数の逆数で重みづけて足すと、$p$ の 1 次式 $(p-1)/24$ というきれいな値になる。これが Eichler–Deuring の質量公式である。
以下、$p$ は素数、$\bar{\mathbb{F}}_p$ は有限体 $\mathbb{F}_p$ の代数閉包である。楕円曲線 $E$ の自己同型群 $\operatorname{Aut}(E)$ とは、$E$ からそれ自身への同型で単位元 $O$ を保つもの全体のなす群であり、$\bar{\mathbb{F}}_p$ 上で定義されたもの全部を考える。$\operatorname{Aut}(E)$ は $[-1]$ を含む有限群であり、その位数は $24$ の約数である(Sil09 Theorem III.10.1、p. 103。$p\ge5$ の場合は j不変量 の命題「自己同型群」に証明がある)。
素数 $p$ に対し、$\bar{\mathbb{F}}_p$ 上の超特異楕円曲線の同型類の全体を $\mathcal{S}_p$ とし、
$$
N_p:=\#\mathcal{S}_p,\qquad
M_p:=\sum_{[E]\in\mathcal{S}_p}\frac{1}{\#\operatorname{Aut}(E)}
$$
とおく。$M_p$ を超特異楕円曲線の質量(mass)という。
$\mathcal{S}_p$ が有限集合であることは、下の thm-edm-mass の証明の中で $N_p$ を数えることで同時に示される。
すべての素数 $p$ について
$$
M_p=\sum_{[E]\in\mathcal{S}_p}\frac{1}{\#\operatorname{Aut}(E)}=\frac{p-1}{24}
$$
が成り立つ。さらに $N_2=N_3=1$ であり、$p\ge5$ のとき
$$
N_p=\frac{p-1}{12}+\frac23s_0+\frac12s_1=\Bigl\lfloor\frac{p}{12}\Bigr\rfloor+\epsilon_p
$$
である。ここで $s_0=1$($p\equiv2\bmod3$ のとき)、$s_0=0$(それ以外)、$s_1=1$($p\equiv3\bmod4$ のとき)、$s_1=0$(それ以外)とし、$\epsilon_p$ は $p\equiv1,5,7,11\pmod{12}$ に応じて $0,1,1,2$ とする。
公式は Sil09 Exercise 5.9(p. 154)が「Eichler と Deuring の質量公式」として挙げ、個数の公式は同 Theorem V.4.1(c)(p. 149)にある。この記事では節「証明」で、$p\ge5$ の場合を Legendre 形の曲線のパラメータを数えることで証明し(prf-edm-mass)、$p=2,3$ は直接確かめる。
$\#\operatorname{Aut}(E)$ の逆数で重みづけるのは、対称性の大きい対象を「その分だけ小さく」数えるためである。$p\ge5$ では、一般の超特異曲線は $\operatorname{Aut}(E)=\{\pm1\}$ で重み $1/2$ をもち、$j$ 不変量が $0$ または $1728$ の特別な曲線だけが重み $1/6$、$1/4$ をもつ。個数 $N_p$ はこの特別な曲線が超特異かどうかで $p$ の $1$ 次式からずれるが、重みつきの和ではずれが打ち消し合う。
打ち消し合いの仕組みは、$p\ge5$ のとき Legendre 形 $y^2=x(x-1)(x-\lambda)$ のパラメータ $\lambda$ を数えるとはっきりする。1 つの同型類に対応する $\lambda$ の個数はちょうど $12/\#\operatorname{Aut}(E)$ であり(lem-edm-legendre)、超特異な $\lambda$ は全部で $(p-1)/2$ 個ある(Hasse不変量 の定理「Igusa の定理」)。したがって
$$
\sum_{[E]}\frac{1}{\#\operatorname{Aut}(E)}=\sum_{[E]}\frac{([E]\text{ に対応する }\lambda\text{ の個数})}{12}=\frac{1}{12}\cdot\frac{p-1}{2}
$$
となる。
四元数環の側から見ると、超特異楕円曲線の自己準同型環は $p$ と $\infty$ でだけ分岐する四元数体 $B_{p,\infty}$ の極大整環であり(超特異楕円曲線 の定理「Deuring の定理と超特異性の同値な特徴づけ」)、超特異曲線の同型類は 1 つの極大整環のイデアル類と 1 対 1 に対応する(Deuring の対応、rem-edm-quaternion)。この対応のもとで質量公式は、四元数環の整環の単数群の位数で重みづけた類数の公式(Eichler の質量公式)と同じものになる。
超特異な $j$ 不変量を $\mathbb{F}_p$ または $\mathbb{F}_{p^2}$ の元として並べると次のようになる($p\ge5$ では $1728$ を $p$ で割った余りも併記する)。$\#\operatorname{Aut}(E)$ は $p\ge5$ で $j\ne0,1728$ なら $2$、$j=1728$ なら $4$、$j=0$ なら $6$ である。
| $p$ | 超特異な $j$ | $N_p$ | $M_p$ | $(p-1)/24$ |
|---|---|---|---|---|
| $2$ | $0$ | $1$ | $1/24$ | $1/24$ |
| $3$ | $0$ | $1$ | $1/12$ | $2/24$ |
| $5$ | $0$ | $1$ | $1/6$ | $4/24$ |
| $7$ | $6\ (=1728)$ | $1$ | $1/4$ | $6/24$ |
| $11$ | $0,\ 1\ (=1728)$ | $2$ | $1/6+1/4$ | $10/24$ |
| $13$ | $5$ | $1$ | $1/2$ | $12/24$ |
| $17$ | $0,\ 8$ | $2$ | $1/6+1/2$ | $16/24$ |
| $19$ | $7,\ 18\ (=1728)$ | $2$ | $1/2+1/4$ | $18/24$ |
| $23$ | $0,\ 3\ (=1728),\ 19$ | $3$ | $1/6+1/4+1/2$ | $22/24$ |
| $37$ | $8,\ 3\pm10\sqrt2$ | $3$ | $3/2$ | $36/24$ |
$p=2,3$ の自己同型群の位数 $24$、$12$ は Sil09 Theorem III.10.1(p. 103)による(この記事では証明しない)。$p=37$ では $2$ が $\mathbb{F}_{37}$ の平方非剰余なので、$3\pm10\sqrt2$ は $\mathbb{F}_{37^2}\setminus\mathbb{F}_{37}$ の共役な 2 元であり、超特異な $j$ が $\mathbb{F}_p$ に入るとは限らないことを示す($\mathbb{F}_{p^2}$ には必ず入る。超特異楕円曲線 の定理「Deuring の定理と超特異性の同値な特徴づけ」の 3)。$p\ge5$ の行の $j$ は、Hasse 多項式 $H_p$ の根 $\lambda$ について $j_L(\lambda)$ を計算すると得られる(記号は節「証明」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 重み $1/\#\operatorname{Aut}(E)$(同型類を 1 つずつ数える) | $p=11$ と $p=13$ | $N_{11}=2>N_{13}=1$ となり、個数は $p$ について単調でも $1$ 次式でもない |
| 超特異であること(通常の曲線も数える) | $\bar{\mathbb{F}}_p$ 上の楕円曲線全体 | 同型類は $j\in\bar{\mathbb{F}}_p$ と 1 対 1 で無限個あり、和が発散する |
| 代数閉体 $\bar{\mathbb{F}}_p$ 上で同型類をとること($\mathbb{F}_p$ 上の同型で分ける) | $p=5$、$y^2=x^3+1$ と $y^2=x^3+2$ | どちらも $j=0$ で超特異だが $\mathbb{F}_5$ 上は同型でなく、$\bar{\mathbb{F}}_5$ 上の 1 つの類が 2 つに分かれる |
3 行目:$y^2=x^3+b$ と $y^2=x^3+b'$ が体 $k$ 上同型であることは、$b'=u^{-6}b$ となる $u\in k^\times$ があることと同値である(j不変量 の補題「短い形どうしの座標の取り替え」)。$\mathbb{F}_5^\times$ では $u^4=1$ なので $u^{-6}=u^{-2}\in\{1,4\}$ であり、$2$ は $1\cdot\{1,4\}$ に入らない。$\bar{\mathbb{F}}_5$ 上では $u^6=1/2$ となる $u$ があるので同型である。
$k$ を標数 $p\ge5$ の代数閉体とする。$\lambda\in k\setminus\{0,1\}$ に対し、3 次式 $x(x-1)(x-\lambda)$ は相異なる 3 根をもつので、$E_\lambda\colon y^2=x(x-1)(x-\lambda)$ は楕円曲線であり、その $j$ 不変量は
$$
j(E_\lambda)=j_L(\lambda):=2^8\,\frac{(\lambda^2-\lambda+1)^3}{\lambda^2(\lambda-1)^2}
$$
である(j不変量 の例「いろいろな曲線の $j$ 不変量」)。$\{0,1,\infty\}$ の置換に当たる 6 つの変換
$$
\lambda,\quad \frac1\lambda,\quad 1-\lambda,\quad \frac1{1-\lambda},\quad \frac{\lambda}{\lambda-1},\quad \frac{\lambda-1}{\lambda}
$$
は、合成について 3 次対称群に同型な群 $G$ をなし、$k\setminus\{0,1\}$ に作用する。
$k$ を標数 $p\ge5$ の代数閉体とする。
1:$G$ は $\lambda\mapsto1/\lambda$ と $\lambda\mapsto1-\lambda$ で生成されるので、この 2 つで不変なことを見ればよい。$\lambda$ を $1/\lambda$ に替えると、分子は $\lambda^{-6}(\lambda^2-\lambda+1)^3$、分母は $\lambda^{-4}(\lambda-1)^2$ になり、比は変わらない。$\lambda$ を $1-\lambda$ に替えても $\lambda^2-\lambda+1$ と $\lambda^2(\lambda-1)^2$ は変わらない。全射性:$j_0\in k$ に対し
$$
\Phi_{j_0}(\lambda):=2^8(\lambda^2-\lambda+1)^3-j_0\lambda^2(\lambda-1)^2
$$
は最高次係数 $2^8\ne0$ の 6 次式で、$\Phi_{j_0}(0)=\Phi_{j_0}(1)=2^8\ne0$ である。$k$ は代数閉体なので根 $\lambda\ne0,1$ をもち、$j_L(\lambda)=j_0$ である。とくに各ファイバーは 6 点以下である。
2:$G$ 軌道の大きさが $6$ より小さいのは、$G$ の単位元以外の元で固定される $\lambda$ に限る。
単位元以外の 5 つの変換の固定点を $k\setminus\{0,1\}$ で求めると、$1/\lambda=\lambda$ から $\lambda=-1$、$1-\lambda=\lambda$ から $\lambda=1/2$、$\lambda/(\lambda-1)=\lambda$ から $\lambda=2$、$1/(1-\lambda)=\lambda$ と $(\lambda-1)/\lambda=\lambda$ からはどちらも $\lambda^2-\lambda+1=0$ である。$p\ne3$ なので $-1,2,1/2$ は相異なり($-1=2$、$2=1/2$、$-1=1/2$ はいずれも $3=0$ を意味する)、$\lambda^2-\lambda+1$ の判別式 $-3$ は $0$ でないのでその 2 根も相異なり、$-1,2,1/2$ のどれとも異なる(これらで $\lambda^2-\lambda+1$ は $3$、$3$、$3/4$ になる)。$\{-1,2,1/2\}$ は 1 つの軌道で $j_L=2^8\cdot27/4=1728$、$\lambda^2-\lambda+1=0$ の 2 根は 1 つの軌道で $j_L=0$ である。$1728=2^6\cdot3^3\ne0$ なので、この 2 つの値は異なる。
$j_0\ne0,1728$ なら、ファイバーの点 $\lambda$ は上の 5 点のどれでもないので、軌道 $G\lambda$ は大きさ $6$ で、1 によりファイバーに含まれる。ファイバーは 6 点以下なので軌道と一致する。$j_0=1728$ のファイバーは $\{-1,2,1/2\}$ を含み、ほかの点 $\mu$ があれば $\mu$ は上の 5 点のどれでもないので軌道の大きさは $6$ になり、合計 $9$ 点となって 6 点以下に反する。$j_0=0$ のファイバーは $\Phi_0=2^8(\lambda^2-\lambda+1)^3$ の根、すなわち 2 根である。
奇素数 $p$ と $m:=(p-1)/2$ に対し、Hasse 多項式を
$$
H_p(t):=\sum_{i=0}^m\binom{m}{i}^2t^i\in\mathbb{F}_p[t]
$$
とおく。次の 2 つは既存の記事で証明されている。
$p\ge5$ とする。$j=0$ の曲線が超特異であることと $p\equiv2\pmod3$ は同値であり、$j=1728$ の曲線が超特異であることと $p\equiv3\pmod4$ は同値である。
前半は 超特異楕円曲線 の例「曲線 $y^2=x^3+1$」による。後半は lem-edm-legendre の 2 により $j=1728$ の曲線が $E_{-1}$ であることから、$H_p(-1)$ を計算すればよい。$\binom{m}{i}^2=\binom{m}{i}\binom{m}{m-i}$ なので
$$
H_p(-1)=\sum_{i=0}^m(-1)^i\binom{m}{i}\binom{m}{m-i}=\bigl[t^m\bigr](1-t)^m(1+t)^m=\bigl[t^m\bigr](1-t^2)^m
$$
であり、これは $m$ が奇数なら $0$、$m$ が偶数なら $(-1)^{m/2}\binom{m}{m/2}$ である。後者は $p$ より小さい数の階乗の比なので $p$ で割れない。$m$ が奇数であることは $p\equiv3\pmod4$ と同値である。$\square$
$p\ge5$ の場合。 $Z\subset\bar{\mathbb{F}}_p$ を $H_p$ の根の集合とする。上に挙げた 2 つの事実により、$Z$ は $E_\lambda$ が超特異になる $\lambda\in\bar{\mathbb{F}}_p\setminus\{0,1\}$ の集合で、$\#Z=m=(p-1)/2$ である。
lem-edm-legendre の 3 により、各同型類 $[E]$ に対応する $\lambda$ の集合 $\Lambda_E$ は空でなく、異なる同型類の $\Lambda_E$ は交わらず、$\bar{\mathbb{F}}_p\setminus\{0,1\}$ はそれらの和集合である。超特異性は同型類で決まるので
$$
Z=\bigsqcup_{[E]\in\mathcal{S}_p}\Lambda_E
$$
である。とくに $\mathcal{S}_p$ は有限集合である。lem-edm-legendre の 4 により $\#\Lambda_E=12/\#\operatorname{Aut}(E)$ なので
$$
M_p=\sum_{[E]\in\mathcal{S}_p}\frac{1}{\#\operatorname{Aut}(E)}=\frac1{12}\sum_{[E]\in\mathcal{S}_p}\#\Lambda_E=\frac{\#Z}{12}=\frac{p-1}{24}
$$
を得る。
個数については、$j=0$、$j=1728$ の類が $\mathcal{S}_p$ に入るかどうかを $s_0,s_1\in\{0,1\}$ で表す(lem-edm-special により定理の $s_0,s_1$ と一致する)。$\#\Lambda_E$ は $j\ne0,1728$ の類で $6$、$j=1728$ で $3$、$j=0$ で $2$ なので
$$
\frac{p-1}{2}=6(N_p-s_0-s_1)+2s_0+3s_1,\qquad\text{すなわち}\qquad N_p=\frac{p-1}{12}+\frac23s_0+\frac12s_1
$$
である。$p$ を $12$ で割った余りで分けると次の表になり、$N_p-\lfloor p/12\rfloor=\epsilon_p$ を得る。
| $p\bmod12$ | $s_0$ | $s_1$ | $N_p$ | $\lfloor p/12\rfloor$ |
|---|---|---|---|---|
| $1$ | $0$ | $0$ | $(p-1)/12$ | $(p-1)/12$ |
| $5$ | $1$ | $0$ | $(p+7)/12$ | $(p-5)/12$ |
| $7$ | $0$ | $1$ | $(p+5)/12$ | $(p-7)/12$ |
| $11$ | $1$ | $1$ | $(p+13)/12$ | $(p-11)/12$ |
$p=3$ の場合。 $H_3(t)=1+t$ の根は $\lambda=-1$ だけである。標数 $3$ でも $\Phi_{j_0}(\lambda)=(\lambda+1)^6-j_0\lambda^2(\lambda-1)^2$($2^8=1$、$\lambda^2-\lambda+1=(\lambda+1)^2$)は $\Phi_{j_0}(0)=\Phi_{j_0}(1)=1$ を満たす 6 次式なので、lem-edm-legendre の 1・3 と同じ議論で、どの曲線もある $E_\lambda$ に同型である。よって超特異な類は $E_{-1}$ の類だけで、$j=j_L(-1)=1728=0$ である。$\#\operatorname{Aut}(E)=12$ なので $N_3=1$、$M_3=1/12=(3-1)/24$ である。
$p=2$ の場合。 標数 $2$ では超特異であることと $j=0$ は同値であり(超特異楕円曲線 の例「標数が 2 または 3 のとき $j=0$ が超特異」)、j不変量 の定理「$j$ 不変量による分類」により $j=0$ の類は 1 つである。$\#\operatorname{Aut}(E)=24$ なので $N_2=1$、$M_2=1/24$ である。
$p=2,3$ の自己同型群の位数は Sil09 Theorem III.10.1(p. 103)による(この記事では証明しない)。$\square$
Sil09 Remark V.4.1.1(p. 149)は、Hasse 多項式が重根をもたないことの証明と、そこから超特異曲線の個数を出すこの数え方を、井草準一(Jun-ichi Igusa)の論文に帰している。証明の中で使った事実のうち、この記事で証明していないのは、Legendre 族の Hasse 多項式による判定、$j=0$ の曲線と標数 $2$ の曲線の超特異性の判定(超特異楕円曲線 の 2 つの例)、Igusa の定理、$j$ 不変量による分類、自己同型群の位数であり、$p=2,3$ の自己同型群の位数のほかは上に挙げた各記事に証明がある。
$B$ を $\mathbb{Q}$ 上の定符号四元数環で判別式(分岐する素数の積)が $D$ のもの、$\mathcal{O}\subset B$ を極大整環とする。$\mathcal{O}$ の片側イデアル類の集合は有限で、Eichler の質量公式
$$
\sum_{[J]}\frac{1}{\#\mathcal{O}'(J)^\times}=\frac{\varphi(D)}{24}
$$
が成り立つ。ここで和は $\mathcal{O}$ の片側イデアル類にわたり、$\mathcal{O}'(J)$ は $J$ の反対側の整環($J$ を左イデアルとみるなら右整環)、$\varphi$ は Euler 関数である(Voi21 Theorem 25.1.1、p. 415。そこでは $\#\mathcal{O}'(J)^\times/\{\pm1\}$ で重みづけた形 $\varphi(D)/12$ で述べられている。この記事では証明しない)。
$p$ と $\infty$ でだけ分岐する四元数体 $B_{p,\infty}$($D=p$)について、超特異楕円曲線 $E_0$ を 1 つ固定し $\mathcal{O}_0:=\operatorname{End}(E_0)$ とおくと、超特異楕円曲線の同型類と $\mathcal{O}_0$ の片側イデアル類のあいだに全単射があり、対応する $E$ と $J$ について $\operatorname{Aut}(E)\cong\mathcal{O}'(J)^\times$ となる(Deuring の対応、Voi21 Corollary 42.3.7、p. 792。この記事では証明しない)。この 2 つを合わせると
$$
\sum_{[E]\in\mathcal{S}_p}\frac1{\#\operatorname{Aut}(E)}=\sum_{[J]}\frac1{\#\mathcal{O}'(J)^\times}=\frac{p-1}{24}
$$
を得る(Voi21 42.3.8 の式 (42.3.9)、p. 792)。Voi21 の Eichler の質量公式の証明は、四元数環のゼータ関数の留数を計算する解析的なもので、第 25 章に $\mathbb{Q}$ 上の場合の概略、第 26 章に総実体上の場合の証明(Main Theorem 26.1.5、p. 432)がある(同書は、$\mathbb{Q}$ 上のこの公式を最初に証明したのは Hey だと述べている。p. 416)。逆向きに、thm-edm-mass の初等的な証明は、Deuring の対応を通して $D=p$ の場合の Eichler の質量公式の別証明を与え、$B_{p,\infty}$ の極大整環の類数が $N_p$ に等しいことも示す。
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