Lusinの分離定理

同義語:Luzinの分離定理Lusin separation theorem

概要

Lusin の分離定理(Lusin separation theorem)とは、Baire 空間 $\mathcal N$ の積の中の互いに交わらない 2 つの解析集合 $A,B$ に対し、$A$ を含み $B$ と交わらない Borel 集合が存在するという定理である。分離可能性が可算和と両立することを使い、閉集合の点の近似の列に沿った背理法で証明される。系として、解析集合で補集合も解析集合であるものはちょうど Borel 集合であるという Suslin の定理、互いに交わらない解析集合の列の Borel 集合による分離、グラフが解析集合である写像の Borel 可測性、閉集合の単射な連続像が Borel 集合であることが従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影階層, Borel集合, Baire空間(記述集合論)

Lusin の分離定理(Lusin separation theorem)は、互いに交わらない 2 つの解析集合 $A,B$ に対して、$A$ を含み $B$ と交わらない Borel集合 $C$ が必ずあるという定理である。解析集合は閉集合の射影として得られる集合で、Borel 集合より真に広い(射影階層 の記事の系「Borel でない解析集合」)。それでも 2 つの解析集合を「切り離す」だけなら、Borel 集合で足りる。
この定理から、解析集合で補集合も解析集合であるもの($\boldsymbol\Delta^1_1$ 集合)はちょうど Borel 集合であるという Suslin の定理 が直ちに従う。Suslin の定理は、「ある実数が存在して」という射影の操作を、補集合と可算和のくり返しに置き換えられる場面を教えるもので、記述集合論の基本的な構成原理である(Mos09 2E 節、p. 68)。Suslin は 1917 年にこの定理を告知し、最初に公表された証明は Lusin と Sierpiński による(1918 年)。分離定理の形は Lusin が 1927 年に示した(Mos09 2 章の注 8、pp. 85–86)。
この記事では、分離定理を背理法で証明し、Suslin の定理、互いに交わらない解析集合の列の分離、解析的なグラフをもつ写像の Borel 可測性を導く。

設定

記号は 射影階層 の記事の「空間と記号」と「定義」に従う。$\mathcal N=\omega^\omega$ を Baire 空間とし、有限列 $s$ に対し $N_s:=\{x\in\mathcal N\mid s\text{ は }x\text{ の初期部分}\}$ とおく。$N_s$ は開かつ閉で、$N_s$ の全体は $\mathcal N$ の開基をなす。有限列の全体は可算なので、$\mathcal N$ の開集合はどれも可算個の $N_s$ の和である。有限列 $s$ の長さを $\lvert s\rvert$、$s$ の後ろに $i\in\omega$ を付け加えた列を $s^\frown i$、$x\in\mathcal N$ の最初の $n$ 項を $x\restriction n$ と書く。
「空間」とは $\mathcal N^k$($k\ge1$)のことで、空間 $X$ の部分集合 $A$ が 解析集合($\boldsymbol\Sigma^1_1$)であるとは、閉集合 $F\subseteq X\times\mathcal N$ によって
$$ A=\exists^{\mathcal N}F=\{x\in X\mid\text{ある }y\in\mathcal N\text{ で }(x,y)\in F\} $$
と書けることである。補集合が解析集合である集合を $\boldsymbol\Pi^1_1$、両方であるものを $\boldsymbol\Delta^1_1$ という。$\boldsymbol\Sigma^1_1$ は連続写像による逆像・可算和・可算共通部分・射影で閉じ、開集合と閉集合を含む(射影階層 の記事の命題「射影階層の閉包性」)。Borel 集合はすべて $\boldsymbol\Delta^1_1$ である(同記事の系「Borel 集合は $\boldsymbol\Delta^1_1$」)。

分離

集合 $X$ の部分集合 $A,B,C$ について、$A\subseteq C$ かつ $C\cap B=\emptyset$ のとき、$C$ は $A$ を $B$ から分離する という。空間 $X$ の部分集合 $A,B$ について、$A$ を $B$ から分離する Borel 集合があるとき、$A$ と $B$ は Borel 分離可能 であるという。

$C$ が $A$ を $B$ から分離するなら、補集合 $X\setminus C$ は $B$ を $A$ から分離する。Borel 集合は補集合で閉じているので、Borel 分離可能性は $A$ と $B$ について対称である。分離する集合があるためには $A\cap B=\emptyset$ が必要である。

Lusin の分離定理

$X$ を空間とし、$A,B\subseteq X$ を互いに交わらない解析集合とする。このとき $A$ と $B$ は Borel 分離可能である。

証明の方針

証明は次の節で与える。可算和の分離 lem-ls-union を、閉集合の点の近似で $A,B$ を細かく分けた分解にくり返し当て、分離できない部分を無限に下っていくと、極限で $A$ の点と $B$ の点が得られ、その 2 点の違いが有限の段で見えることから矛盾が出る、という背理法である。

解析集合 $A=\exists^{\mathcal N}F$ は、閉集合 $F$ の「影」である。点 $x$ が $A$ に属することは、証人 $y$ が見つかることで確かめられるが、属さないことを確かめるには、すべての $y$ を調べなければならない。Borel 集合は、開集合から補集合と可算和をくり返しとって(くり返しの回数は超限回にわたる。Borel階層)作られる集合で、射影のような「すべての $y$ を見渡す」操作を使わない。分離定理は、2 つの影 $A,B$ が重ならないとき、その間に射影を使わずに作れる壁を立てられることを主張する。壁の作り方は、$A,B$ を証人の最初の何項かで細かく分け、細かい部分どうしの壁を可算和と可算共通部分でつなぐというものである。

証明

鍵は、分離可能性が可算和と相性がよいことである。

可算和の分離

空間 $X$ の部分集合について $A=\bigcup_{i\in\omega}A_i$、$B=\bigcup_{j\in\omega}B_j$ とする。すべての $i,j$ で $A_i$ と $B_j$ が Borel 分離可能なら、$A$ と $B$ も Borel 分離可能である。対偶をとれば、$A$ と $B$ が Borel 分離可能でないなら、ある $i,j$ で $A_i$ と $B_j$ も Borel 分離可能でない。

各 $(i,j)$ について $A_i$ を $B_j$ から分離する Borel 集合 $C_{i,j}$ を選び(可算選択)、$C:=\bigcup_i\bigcap_jC_{i,j}$ とおく。$C$ は Borel 集合である。$A_i\subseteq\bigcap_jC_{i,j}\subseteq C$ なので $A\subseteq C$ である。$b\in B_j$ が $C$ に属すると、ある $i$ で $b\in\bigcap_{j'}C_{i,j'}$、とくに $b\in C_{i,j}$ となり、$C_{i,j}\cap B_j=\emptyset$ に反する。よって $C\cap B=\emptyset$ である。$\square$

閉集合の近似に沿った背理法

$\mathcal N^k$ は $\mathcal N$ と同相で、同相写像は解析集合を解析集合に(逆写像による逆像として)、Borel 集合を Borel 集合に(Borel集合 の記事の定理「連続写像とBorel集合」の 2)移すので、$X=\mathcal N$ としてよい。閉集合 $F,G\subseteq\mathcal N\times\mathcal N$ を $A=\exists^{\mathcal N}F$、$B=\exists^{\mathcal N}G$ ととり、同じ長さの有限列 $u,s$ について $A_{u,s}:=\exists^{\mathcal N}\bigl(F\cap(N_u\times N_s)\bigr)$ とおく。$B_{v,t}$ も $G$ で同様に定める。$A,B$ が Borel 分離可能でないと仮定し、長さを 1 ずつ伸ばしながら有限列を選んで矛盾を導く。

詳細

段 1(分解). 定義から $A_{\emptyset,\emptyset}=A$、$A_{u,s}\subseteq N_u$ であり、$N_u\times N_s=\bigcup_{i,j\in\omega}N_{u^\frown i}\times N_{s^\frown j}$ から $A_{u,s}=\bigcup_{i,j}A_{u^\frown i,s^\frown j}$ である。$B_{v,t}$ も同じ性質をもつ。添字 $(i,j)\in\omega\times\omega$ は可算なので、lem-ls-union が使える。

段 2(列の選択). $A_{u,s}$ と $B_{v,t}$ が Borel 分離可能でないような、長さ $n$ の列の 4 つ組 $(u,s,v,t)$ を「悪い」とよぶ。仮定により $(\emptyset,\emptyset,\emptyset,\emptyset)$ は悪い。悪い $(u,s,v,t)$ に対し、段 1 と lem-ls-union により、ある $i,j,i',j'$ で $(u^\frown i,s^\frown j,v^\frown i',t^\frown j')$ も悪い。これをくり返し(従属選択)、各 $n$ で悪い 4 つ組 $(u_n,s_n,v_n,t_n)$ を、それぞれが前の段の列を延長するように選ぶ。それらの和として $x,y,x',y'\in\mathcal N$ が定まり、$u_n=x\restriction n$、$s_n=y\restriction n$、$v_n=x'\restriction n$、$t_n=y'\restriction n$ である。

段 3(極限の点). 空集合は何からでも $\emptyset$ によって分離され、何でも空集合から $\mathcal N$ によって分離されるので、悪い 4 つ組では $A_{u_n,s_n}$ も $B_{v_n,t_n}$ も空でない。よって各 $n$ で $F\cap(N_{x\restriction n}\times N_{y\restriction n})$ は空でなく、その点 $(x_n,y_n)$ は $n\to\infty$ で $(x,y)$ に収束する。$F$ は閉集合なので $(x,y)\in F$、すなわち $x\in A$ である。同様に $x'\in B$ である。

段 4(矛盾). $A\cap B=\emptyset$ なので $x\ne x'$ であり、十分大きな $n$ で $x\restriction n\ne x'\restriction n$ となる。このとき $N_{u_n}$ と $N_{v_n}$ は交わらない。$A_{u_n,s_n}\subseteq N_{u_n}$、$B_{v_n,t_n}\subseteq N_{v_n}$ なので、Borel 集合 $N_{u_n}$ は $A_{u_n,s_n}$ を $B_{v_n,t_n}$ から分離する。これは 4 つ組が悪いことに反する。$\square$

証明では、分離できないという性質を、閉集合 $F,G$ の点の近似の列に沿って下ろしていった。極限で $A$ の点と $B$ の点が得られ、両者の違いがある有限の段で見えることが矛盾を生む。Mos09 2E.1(pp. 65–67)は、木による表示を使って同じ背理法と、分離する Borel 集合を具体的に作る構成的な証明の両方を与えている。構成的な証明では、$F$ と $G$ の証人の近似を同時に伸ばしていく有限列の組のうち、$x$ の部分が一致し続けるものを集めた木を考える。$A\cap B=\emptyset$ なので、この木には無限の枝がない(整礎である)。整礎な木の上では葉の側から根の側へ再帰的に集合を定められ、$x$ の部分の次の項が食い違った所ではその項の値を固定した $\{z\mid z(n)=t\}$ の形の開かつ閉な集合を、近似が尽きた所では $\emptyset$ か $\mathcal N$ を置き、lem-ls-union の $\bigcup\bigcap$ でつないでいく。根で得られる集合が分離する Borel 集合である。背理法の段 4 で使った「違いが有限の段で見える」ことが、この構成では木の整礎性になっている。
選択公理の使い方について注意する。lem-ls-union では可算個の分離集合を選び、段 2 では従属選択を使った。どちらも 選択公理 の弱い形である(可算選択公理、従属選択公理)。

Suslin の定理

Suslin の定理

空間 $X$ の部分集合 $A$ について、$A$ が Borel 集合であることと、$A$ と $X\setminus A$ がともに解析集合であること($A\in\boldsymbol\Delta^1_1$)は同値である。

Borel 集合が $\boldsymbol\Delta^1_1$ であることは 射影階層 の記事の系「Borel 集合は $\boldsymbol\Delta^1_1$」である。逆に $A$ と $X\setminus A$ が解析集合なら、両者は交わらないので、thm-ls-main により $A$ を $X\setminus A$ から分離する Borel 集合 $C$ がある。$A\subseteq C$ と $C\cap(X\setminus A)=\emptyset$ から $C=A$ であり、$A$ は Borel 集合である。$\square$

Mos09 2E.2(p. 68)は、より一般に $\kappa$-Suslin 集合の形で述べ、その特別な場合として「Borel 集合であることと $\boldsymbol\Delta^1_1$ であることは同値」を挙げている。とくに、Borel でない解析集合 $D$(射影階層 の記事の系「Borel でない解析集合」)の補集合は解析集合でない。Suslin の名は、非可算な解析集合が空でない完全集合を含むという別の定理(完全集合性質 の記事の定理「Suslin の定理」)にも使われるので、どちらを指すかに注意する。

解析集合と Borel 集合の挟み込み

解析集合 $A$ と、補集合が解析集合である集合 $E$ が $A\subseteq E$ を満たすなら、Borel 集合 $C$ で $A\subseteq C\subseteq E$ となるものがある。実際 $A$ と $X\setminus E$ は交わらない解析集合なので、thm-ls-main の $C$ が $A\subseteq C$、$C\cap(X\setminus E)=\emptyset$ を満たす。たとえば Borel でない解析集合 $D$ と、$D$ と交わらない解析集合 $B$ をとると、$D\subseteq C$、$C\cap B=\emptyset$ となる Borel 集合 $C$ がある。$D$ 自身は Borel でないので $C\ne D$ だが、$C\setminus D$ は $B$ と交わらない($C\cap B=\emptyset$ による)。

帰結

解析集合の列の分離

空間 $X$ の解析集合の列 $A_0,A_1,\dots$ が互いに交わらないなら、互いに交わらない Borel 集合の列 $C_0,C_1,\dots$ で、すべての $n$ について $A_n\subseteq C_n$ となるものがある。

各 $n$ について $\bigcup_{m\ne n}A_m$ は解析集合の可算和なので解析集合で、$A_n$ と交わらない。thm-ls-main により、$A_n$ を $\bigcup_{m\ne n}A_m$ から分離する Borel 集合 $C'_n$ を選ぶ。$C_n:=C'_n\setminus\bigcup_{m< n}C'_m$ とおくと Borel 集合である。$m\ne n$ なら $C'_m\cap A_n=\emptyset$ なので、$A_n\subseteq C'_n\setminus\bigcup_{m< n}C'_m=C_n$ である。$m< n$ なら $C_n\cap C'_m=\emptyset$ かつ $C_m\subseteq C'_m$ なので、$C_n\cap C_m=\emptyset$ である。$\square$

この系は Mos09 の演習 2E.6(pp. 68–69)にある。同書のヒントは $C_n$ を順に選んでいく方法で、上の証明は先に全部選んでから差をとる形にした。

グラフが解析集合である写像

$X$ を空間とし、写像 $f\colon X\to\mathcal N$ のグラフ $\{(x,y)\in X\times\mathcal N\mid f(x)=y\}$ が解析集合であるとする。このとき $f$ は Borel 可測である。とくにグラフが閉集合なら $f$ は Borel 可測である。

グラフを $\Gamma$ とおく。有限列 $s$ について
$$ f^{-1}(N_s)=\exists^{\mathcal N}\bigl(\Gamma\cap(X\times N_s)\bigr),\qquad X\setminus f^{-1}(N_s)=\exists^{\mathcal N}\bigl(\Gamma\cap(X\times(\mathcal N\setminus N_s))\bigr) $$
である($y$ として $f(x)$ をとる)。$X\times N_s$ と $X\times(\mathcal N\setminus N_s)$ は閉集合なので、右辺はどちらも解析集合の共通部分の射影として解析集合である。よって $f^{-1}(N_s)$ は $\boldsymbol\Delta^1_1$ で、cor-ls-suslin により Borel 集合である。$\mathcal N$ の開集合 $U$ は可算個の $N_s$ の和なので $f^{-1}(U)$ も Borel 集合であり、逆像が Borel 集合になる集合の全体は σ-代数なので、$\mathcal N$ のすべての Borel 集合の逆像は Borel 集合である。$\square$

この系は Mos09 の演習 2E.4(p. 68)にあり、同書のヒントは、$f(x)\in N_s$ を「ある $y$ で $f(x)=y$ かつ $y\in N_s$」と「すべての $y$ で $f(x)=y$ なら $y\in N_s$」の 2 通りに書くもので、上の 2 つ目の等式はその後者の否定を射影の形に書き直したものである。たとえば連続な全単射 $g\colon\mathcal N\to\mathcal N$ の逆写像 $g^{-1}$ は、グラフ $\{(y,x)\mid g(x)=y\}$ が閉集合なので、連続とは限らなくても Borel 可測である。連続性を Borel 可測性に弱めても同じことがいえる。

Borel 可測な全単射の逆写像

$f\colon\mathcal N\to\mathcal N$ が Borel 可測な全単射なら、逆写像 $f^{-1}$ も Borel 可測である。

$f$ のグラフは
$$ \{(x,y)\mid f(x)=y\}=\bigcap_s\Bigl(\bigl(f^{-1}(N_s)\times N_s\bigr)\cup\bigl((\mathcal N\setminus f^{-1}(N_s))\times(\mathcal N\setminus N_s)\bigr)\Bigr) $$
と書ける($s$ は有限列全体を動く)。実際、右辺の条件は「すべての $s$ で $y\in N_s\iff f(x)\in N_s$」であり、$N_s$ の全体は点を区別するので $y=f(x)$ と同値である。$f^{-1}(N_s)$ は Borel 集合である。Borel 集合 $B_1,B_2\subseteq\mathcal N$ について $B_1\times B_2$ は、連続な射影による逆像 $B_1\times\mathcal N$ と $\mathcal N\times B_2$ の共通部分なので Borel 集合であり(Borel集合 の記事の定理「連続写像とBorel集合」の 1)、したがってグラフは Borel 集合である。$f^{-1}$ のグラフは、座標を入れ替える同相写像による $f$ のグラフの像なので Borel 集合で、とくに解析集合である。cor-ls-graph により $f^{-1}$ は Borel 可測である。$\square$

Borel 可測性の定義は逆像についての条件であり、像 $f[B]$ が Borel 集合になることは定義からは分からない。上の系により、全単射なら $f[B]=(f^{-1})^{-1}(B)$ は Borel 集合であり、$B\mapsto f[B]$ は $\mathcal N$ の Borel 集合全体の全単射を与える。
列の分離 cor-ls-sequence を使うと、単射な連続写像の像が Borel 集合であることが示せる。解析集合は閉集合の連続像として Borel 集合より広くなりうるが、写像が単射なら Borel 集合の範囲にとどまる。

単射な連続像は Borel 集合

$F\subseteq\mathcal N$ を閉集合とし、$f\colon F\to\mathcal N$ を連続な単射とする。このとき像 $f[F]$ は $\mathcal N$ の Borel 集合である。

有限列 $u$ について $A(u):=f[F\cap N_u]$ とおく。$A(u)$ は解析集合で、長さを固定すると互いに交わらない。cor-ls-sequence で Borel 集合に広げ、閉包と交わらせて入れ子にすると、$f[F]$ を可算和と可算共通部分で書ける。

詳細

段 1. $A(u)=\exists^{\mathcal N}\{(y,x)\mid x\in F\cap N_u,\ f(x)=y\}$ で、括弧の中は閉集合である($x_m\to x$、$f(x_m)\to y$ で $x_m\in F\cap N_u$ なら、$F\cap N_u$ が閉なので $x\in F\cap N_u$、連続性から $f(x)=y$)。よって $A(u)$ は解析集合である。長さ $n$ の列 $u\ne u'$ では $N_u\cap N_{u'}=\emptyset$ で $f$ は単射なので、$A(u)\cap A(u')=\emptyset$ である。

段 2. 各 $n$ について、長さ $n$ の列(可算個)に cor-ls-sequence を当て、互いに交わらない Borel 集合 $B(u)\supseteq A(u)$ をとる。$\overline{A(u)}$ を $A(u)$ の閉包とし、$B^*(u):=\bigcap_{m\le\lvert u\rvert}\bigl(B(u\restriction m)\cap\overline{A(u\restriction m)}\bigr)$ とおく。$B^*(u)$ は Borel 集合で、長さを固定すると互いに交わらず、$A(u)\subseteq B^*(u)$($A(u)\subseteq A(u\restriction m)$ による)、$B^*(u^\frown i)\subseteq B^*(u)$ である。$E:=\bigcap_n\bigcup_{\lvert u\rvert=n}B^*(u)$ は Borel 集合である。

段 3($f[F]=E$). $y=f(x)$($x\in F$)なら、各 $n$ で $y\in A(x\restriction n)\subseteq B^*(x\restriction n)$ なので $y\in E$ である。逆に $y\in E$ なら、各 $n$ で $y\in B^*(u_n)$ となる長さ $n$ の $u_n$ がただ 1 つある。$B^*(u_{n+1})\subseteq B^*(u_{n+1}\restriction n)$ と一意性から $u_{n+1}\restriction n=u_n$ なので、$u_n=x\restriction n$ となる $x\in\mathcal N$ がある。$y\in\overline{A(x\restriction n)}$ なので、$x_n\in F\cap N_{x\restriction n}$ で $f(x_n)$ と $y$ が最初の $n$ 項で一致するものがとれる。$x_n\to x$ で $F$ は閉なので $x\in F$、連続性から $f(x_n)\to f(x)$、一方 $f(x_n)\to y$ なので $y=f(x)\in f[F]$ である。$\square$

この方法は Mos09 の演習 2E.7(p. 69)のヒントにある。
$\mathcal N$ 以外の空間への拡張について述べる。Mos09 2E.1(p. 65)は、分離定理を $\kappa$-Suslin 集合という一般化した形で、$\mathbb R$ を含む完全な積空間の上で述べている。この記事では $\mathbb R$ などへの拡張は証明しない。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
$B$ が解析集合Borel でない解析集合 $D$ と、その補集合 $\mathcal N\setminus D$$A$ と $B$ が Borel 分離可能であること
分離する集合が Borel 集合(開集合に強める)$Q:=\{x\mid\text{ある }m\text{ 以降 }x(n)=0\}$ と $\mathcal N\setminus Q$開集合で分離できること
第 1 段($\boldsymbol\Delta^1_1$)$\boldsymbol\Delta^1_2$ に属する Borel でない解析集合 $D$$\boldsymbol\Delta^1_n$ の集合が Borel 集合であること
反例の確かめ

1 行目は分離集合が一意に決まること、2 行目は $Q$ が開集合でないこと、3 行目は各段の包含関係による。

詳細

1 行目:$D$ を $\mathcal N\setminus D$ から分離する集合 $C$ は $D\subseteq C\subseteq D$ を満たすので $C=D$ であり、Borel 集合でない。$\mathcal N\setminus D$ は解析集合でない(cor-ls-suslin の後の注意)。$D$ の存在は 射影階層 の記事の系「Borel でない解析集合」による。

2 行目:$Q$ は可算集合なので Borel 集合であり、$Q$ と $\mathcal N\setminus Q$ は Borel 分離可能である($Q$ 自身が分離する)。分離する集合は 1 行目と同じ理由で $Q$ に限る。$Q$ は開集合でない:どの $N_s$ も、$s$ の後ろに $1$ を並べ続けた点を含み、それは $Q$ に属さないので、空でない $Q$ は開基の元を含まない。補集合の側から分離する場合も、$\mathcal N\setminus Q$ は開集合でない:$1$ を並べ続けた点 $e$ の近傍 $N_{e\restriction n}$ は、$e\restriction n$ の後ろに $0$ を並べ続けた $Q$ の点を含む。

3 行目:$D$ は解析集合なので、射影階層 の記事の命題「各段の包含関係」により $D\in\boldsymbol\Delta^1_2$ である。$D$ は Borel 集合でないので、Suslin の定理は $\boldsymbol\Delta^1_2$ には延びない。

関連項目

参考文献

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