光的座標

同義語:null coordinates光錐座標light-cone coordinates

概要

光的座標(null coordinates)とは、2 次元の Lorentz 多様体の局所座標 $(u,v)$ で、座標ベクトル $\partial_u,\partial_v$ がともに光的なもの、すなわち計量が $2g_{uv}\,du\,dv$ の形になるものである。どの点のまわりにも存在し、$g=-e^{2\rho}du\,dv=e^{2\rho}(-dt^2+dx^2)$ と書けるので、2 次元の Lorentz 計量は局所共形平坦である。光的座標の取り替えは局所的に $u'=f(u)$、$v'=h(v)$(または $u,v$ を入れ替えた形)に限られ、波動方程式は $\partial_u\partial_vf=0$ という形になる。スカラー曲率は $8e^{-2\rho}\partial_u\partial_v\rho$ で表される。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 時空, 擬リーマン多様体, 共形変換, ベクトル場の流れ

2 次元の Minkowski 時空 $-dt^2+dx^2$ では、光は $t-x$ または $t+x$ が一定の直線に沿って進む。そこで $u=t-x$、$v=t+x$ を座標にとると、計量は $-du\,dv$ となり、2 つの座標軸の方向がどちらも光の進む方向(光的方向)になる。このように座標ベクトルがどちらも光的になる座標を光的座標(null coordinates)という。
2 次元の Lorentz 計量は、どの点のまわりでも光的座標をもち、そこで $-e^{2\rho}\,du\,dv$ の形に書ける。これは Riemann 計量の等温座標に当たる事実だが、証明ははるかに易しい。光的方向の 2 本の直線場の積分曲線をそのまま座標線にすればよいからである。この記事では、光的座標の存在と取り替えの自由度を証明し、そこから 2 次元 Lorentz 多様体の局所共形平坦性、波動方程式の一般解、曲率の公式と平坦性の判定を導く。

定義

以下、$(M,g)$ を 2 次元の Lorentz 多様体とする。符号は 時空 と同じく $(-,+)$ をとる。$du\,dv:=\frac12(du\otimes dv+dv\otimes du)$ と書く(対称積)。$\partial_u,\partial_v$ は座標 $(u,v)$ の座標ベクトル場である。

光的座標

$M$ の局所座標 $(U,(u,v))$ が光的座標であるとは、$U$ の各点で $\partial_u$ と $\partial_v$ がともに光的、すなわち
$$ g(\partial_u,\partial_u)=g(\partial_v,\partial_v)=0 $$
となることをいう。このとき $g=2g_{uv}\,du\,dv$($g_{uv}:=g(\partial_u,\partial_v)$)であり、$g$ は非退化なので $g_{uv}$ は $U$ の上で $0$ にならない。

座標 $u$ の等高線($u$ が一定の曲線)は $\partial_v$ を接ベクトルとするので、光的座標の座標線はすべて光的な曲線である。逆にこれが光的座標の特徴であり、光的座標は「光線の 2 つの族」で張った座標といえる。

2 次元の光的方向

各点 $p\in M$ で、$T_pM$ の光的ベクトルの全体と $0$ を合わせたものは、異なる 2 本の直線の和集合である。$e_0,e_1$ を $T_pM$ の正規直交基底($g(e_0,e_0)=-1$、$g(e_1,e_1)=1$)とすると、その 2 本は $e_0+e_1$ と $e_0-e_1$ が張る直線である。

$g(ae_0+be_1,ae_0+be_1)=-a^2+b^2$ なので、これが $0$ であることは $b=\pm a$ と同値である。$\square$

光的座標と Minkowski 計量の関数倍

$(U,(u,v))$ を光的座標で $g_{uv}<0$ とし、$t:=\frac12(u+v)$、$x:=\frac12(v-u)$ とおく。$\rho:=\frac12\log(-2g_{uv})$ とおくと
$$ g=-e^{2\rho}\,du\,dv=e^{2\rho}\bigl(-dt^2+dx^2\bigr) $$
である。すなわち $(t,x)\colon U\to\mathbb R^2$ は $(U,g)$ から 2 次元 Minkowski 時空の開集合への共形変換である。$g_{uv}>0$ のときは $u$ を $-u$ に取り替えれば $g_{uv}<0$ になる。

$g=2g_{uv}\,du\,dv=-e^{2\rho}\,du\,dv$ は定義そのものである。$u=t-x$、$v=t+x$ から $du\,dv=(dt-dx)(dt+dx)=dt^2-dx^2$(対称積として)なので後半を得る。$\square$

存在

光的座標の存在

2 次元の Lorentz 多様体 $(M,g)$ のどの点 $p$ のまわりにも、$g_{uv}<0$ となる光的座標 $(U,(u,v))$ がある。したがって $U$ の上で $g=-e^{2\rho}\,du\,dv$ と書ける。

段 1:光的なベクトル場. $p$ のまわりの座標をとり、時間的なベクトル $\tau\in T_pM$ を定数成分で延長したベクトル場を $T$ とする。$g(T,T)$ は連続なので、$p$ の近傍で $g(T,T)<0$ である。座標ベクトル場の一方 $Y$ は $p$ で $T$ と線形独立なので、近傍を縮めれば各点で $T,Y$ は線形独立である。$e_0:=T/\sqrt{-g(T,T)}$、$Y':=Y+g(Y,e_0)e_0$ とおくと $g(Y',e_0)=0$、$Y'\neq0$ であり、時間的ベクトルの直交補空間は空間的なので(時空 の命題「時間的ベクトルの直交補空間」)$g(Y',Y')>0$ である。$e_1:=Y'/\sqrt{g(Y',Y')}$ とおき、
$$ L:=e_0+e_1,\qquad N:=e_0-e_1 $$
とすると、$L,N$ は滑らかで各点で線形独立な光的ベクトル場であり、$g(L,N)=-2$ である。
段 2:関数 $u,v$. $L_p\neq0$ なので、ベクトル場の流れ の定理「整流定理」により $p$ のまわりの座標 $(y^1,y^2)$ で $L=\partial/\partial y^1$ となるものがある。$u:=y^2$ とおくと $du(L)=0$、$du_p\neq0$ である。同様に $N$ に整流定理を当てて、$dv(N)=0$、$dv_p\neq0$ となる関数 $v$ を得る。
段 3:座標になること. $du_p$ と $dv_p$ が線形従属なら、$dv_p$ は $L_p$ と $N_p$ の両方で $0$ になり、$L_p,N_p$ は $T_pM$ を張るので $dv_p=0$ となって矛盾する。よって 逆写像定理 により、$(u,v)$ は $p$ の連結な近傍 $U$ の上の座標である。
段 4:光的であること. $du(\partial_v)=0$ なので $\partial_v$ は $\ker du$ に属する。$\ker du$ は 1 次元で $L\neq0$ を含むので、$\partial_v=aL$($a$ は $0$ にならない関数)である。同様に $\partial_u=bN$ である。よって $g(\partial_u,\partial_u)=g(\partial_v,\partial_v)=0$ で、$(u,v)$ は光的座標であり、$g_{uv}=ab\,g(N,L)=-2ab$ は $U$ の上で $0$ にならない。$U$ は連結なので $g_{uv}$ の符号は一定であり、正なら $u$ を $-u$ に替えればよい。最後の主張は prop-null-conformal-chart である。$\square$

2 次元 Lorentz 多様体の局所共形平坦性

2 次元の Lorentz 多様体は局所共形平坦である。すなわち各点の近傍 $U$ と $U$ 上の関数 $\rho$ で、$e^{-2\rho}g$ が平坦になるものがある。

thm-null-existence と prop-null-conformal-chart により $U$ の上で $e^{-2\rho}g=-dt^2+dx^2$ であり、これは定数係数の計量なので曲率テンソルは $0$ である。$\square$

等温座標との比較と出典

Riemann 計量の場合の対応する主張は等温座標の存在定理で、その証明には楕円型の偏微分方程式(Beltrami 方程式)を解く必要がある。Lorentz 計量では光的方向という 2 つの直線場が計量から直接決まるので、常微分方程式(ベクトル場の流れ)だけで座標が作れる。この証明の筋は Lee18 Problem 7-15(p. 224)のヒントと同じであり、同書は p. 222 で、Riemann 計量・Lorentz 計量を問わず 2 次元の擬リーマン多様体は局所共形平坦であると述べている。3 次元以上で局所共形平坦であるための条件は Cottonテンソル の定理「Weyl–Schouten の定理」で与えられる。

取り替えの自由度

向きを保つ等温座標の取り替えが正則関数に限られる(等温座標 の定理「等温座標の取り替えは正則」)のと対照的に、光的座標の取り替えは 1 変数関数の組で与えられ、非常に自由である。座標 $(u,v)$ による像が開区間の積 $I\times J$ になる領域を光的な長方形と呼ぶ。

光的座標の取り替え

$U$ を連結な開集合とし、$(u,v)$ と $(u',v')$ をともに $U$ 上の光的座標とする。このとき $U$ 全体で次のどちらか一方が成り立つ。

  1. $\partial u'/\partial v=0$ かつ $\partial v'/\partial u=0$。
  2. $\partial u'/\partial u=0$ かつ $\partial v'/\partial v=0$。
    とくに $U$ が $(u,v)$ に関する光的な長方形なら、1 の場合は $u'=f(u)$、$v'=h(v)$、2 の場合は $u'=f(v)$、$v'=h(u)$ と書け、$f,h$ の導関数は $0$ にならない。逆に、導関数が $0$ にならない 1 変数関数 $f,h$ に対し $(f(u),h(v))$ は光的座標である。

各点で、光的な直線は $\partial_u$ と $\partial_v$ が張る 2 本だけである(lem-null-directions)。$\partial_{v'}$ は光的なので、そのどちらかに属する。$U_1:=\{q\mid du(\partial_{v'})=0\}$、$U_2:=\{q\mid dv(\partial_{v'})=0\}$ とおくと、$U_1$ は $\partial_{v'}$ が $\partial_v$ の直線に属する点、$U_2$ は $\partial_u$ の直線に属する点の集合で、$\partial_{v'}\neq0$ から両者は交わらず、合わせて $U$ を覆う。どちらも閉集合なので、$U$ の連結性から一方が $U$ に一致する。
$U=U_1$ とする。$\partial_{u'}$ は光的で $\partial_{v'}$ と線形独立なので、もう一方の直線、すなわち $\partial_u$ の直線に属する。$\partial_v$ は $\partial_{v'}$ の $0$ にならない関数倍なので $du'(\partial_v)=0$、すなわち $\partial u'/\partial v=0$ であり、同様に $\partial v'/\partial u=0$ である。$U=U_2$ のときも同様に 2 を得る。光的な長方形の上では、$v$ について偏導関数が $0$ の関数は $u$ だけの関数である。$(u',v')$ が座標なのでヤコビアン $f'(u)h'(v)$(2 の場合は $-f'(v)h'(u)$)は $0$ にならない。逆の主張は、$\partial_{u'}=\partial_u/f'(u)$、$\partial_{v'}=\partial_v/h'(v)$ が光的であることからわかる。$\square$

2 次元 Minkowski 時空の共形変換

$\Omega,\Omega'$ を 2 次元 Minkowski 時空 $(\mathbb R^2,\eta)$、$\eta=-du\,dv$ の連結な開集合で、$\Omega$ は光的な長方形とする。微分同相 $\varphi\colon\Omega\to\Omega'$ が共形変換($\varphi^*\eta=e^{2\sigma}\eta$)であることは、$\varphi$ が
$$ (u,v)\mapsto\bigl(f(u),h(v)\bigr)\quad\text{または}\quad(u,v)\mapsto\bigl(f(v),h(u)\bigr)\qquad(f'h'>0) $$
の形であることと同値である。

$\varphi$ を共形変換とすると、$\varphi^*\eta$ は $\eta$ の正の関数倍なので、ベクトルが光的であることは $\eta$ についても $\varphi^*\eta$ についても同じである。$(u\circ\varphi,v\circ\varphi)$ は $\varphi^*\eta$ の光的座標なので $\eta$ の光的座標でもあり、prop-null-change から上の形の $f,h$ が得られる。このとき $\varphi^*\eta=-f'(u)h'(v)\,du\,dv$(2 つ目の形では $-f'(v)h'(u)\,du\,dv$)なので、$e^{2\sigma}=f'h'>0$ である。逆に $f'h'>0$ ならこの式から $\varphi$ は共形変換である。$\square$

$f,h$ は任意に選べるので、2 次元 Minkowski 時空の局所的な共形変換は無限に多くのパラメータをもつ。これは、3 次元以上では光錐を保つ線形写像が自動的に計量の定数倍を保つこと(共形変換 の命題「光円錐を保つ線形写像」)と対照的である。2 次元では $(u,v)\mapsto(-u,v)$、すなわち $(t,x)\mapsto(x,t)$ も光錐を保つが、$f'h'=-1<0$ で共形変換ではない(共形変換 の注意「反例:2次元での光円錐の保存」)。

波動方程式

関数 $f$ に対し $\square_gf:=\operatorname{tr}_g\nabla^2f$(擬リーマン多様体の Laplace–Beltrami 作用素。Lorentz 計量では d'Alembert 作用素ともいう)とおく。$\eta=-dt^2+dx^2$ では $\square_\eta f=-\partial_t^2f+\partial_x^2f$ である。

光的座標での d'Alembert 作用素

$g=-e^{2\rho}\,du\,dv$ のとき、Christoffel 記号で $0$ でないものは $\Gamma^u_{uu}=2\partial_u\rho$、$\Gamma^v_{vv}=2\partial_v\rho$ だけであり、
$$ \square_gf=-4e^{-2\rho}\,\partial_u\partial_vf $$
である。

$g_{uu}=g_{vv}=0$、$F:=g_{uv}=-\frac12e^{2\rho}$、$g^{uv}=1/F$、$g^{uu}=g^{vv}=0$ である。Christoffel 記号の公式 $\Gamma^k_{ij}=\frac12g^{kl}(\partial_ig_{jl}+\partial_jg_{il}-\partial_lg_{ij})$ に入れると、$\Gamma^u_{uu}=\frac12g^{uv}(2\partial_uF)=\partial_u\log|F|=2\partial_u\rho$、$\Gamma^v_{vv}=2\partial_v\rho$ であり、$\Gamma^u_{uv}=\frac12g^{uv}(\partial_vF-\partial_vF)=0$ などほかはすべて $0$ である。よって $\nabla^2f(\partial_u,\partial_v)=\partial_u\partial_vf-\Gamma^k_{uv}\partial_kf=\partial_u\partial_vf$ で、
$$ \square_gf=2g^{uv}\,\nabla^2f(\partial_u,\partial_v)=\frac2F\,\partial_u\partial_vf=-4e^{-2\rho}\,\partial_u\partial_vf $$
である。$\square$

2 次元の波動方程式の一般解

$U$ を光的な長方形とする。$U$ 上の滑らかな関数 $f$ が $\square_gf=0$ を満たすことは、1 変数の滑らかな関数 $a,b$ によって $f(u,v)=a(u)+b(v)$ と書けることと同値である。とくにこの条件は計量の共形類だけで決まる。

prop-null-wave から $\square_gf=0$ は $\partial_u(\partial_vf)=0$ と同値である。これは $\partial_vf$ が $v$ だけの関数 $\beta(v)$ であることを意味し、$b$ を $\beta$ の原始関数とすると $\partial_v(f-b)=0$ なので $f-b$ は $u$ だけの関数 $a(u)$ である。逆は明らかである。$e^{2\sigma}g$ に対しても $(u,v)$ は光的座標で、$\rho$ が $\rho+\sigma$ に変わるだけなので、条件 $\partial_u\partial_vf=0$ は変わらない。$\square$

$\eta$ では $u=t-x$、$v=t+x$ なので、これは 1 次元の波動方程式の解が左右に進む 2 つの波 $a(t-x)+b(t+x)$ の和であるという d'Alembert の公式である(波動方程式と弦の振動)。2 次元では $\square_{e^{2\sigma}g}=e^{-2\sigma}\square_g$ なので、波動方程式の解は共形変換で解に移る。

曲率

光的座標でのスカラー曲率

$g=-e^{2\rho}\,du\,dv$ のとき、リッチテンソルとスカラー曲率は
$$ \mathrm{Ric}=-2\,\partial_u\partial_v\rho\,(du\otimes dv+dv\otimes du),\qquad S=8e^{-2\rho}\,\partial_u\partial_v\rho $$
である。とくに $\mathrm{Ric}=\frac S2\,g$ である。

prop-null-wave の Christoffel 記号から $\nabla_{\partial_u}\partial_v=\nabla_{\partial_v}\partial_u=0$、$\nabla_{\partial_u}\partial_u=2\rho_u\partial_u$、$\nabla_{\partial_v}\partial_v=2\rho_v\partial_v$ である($\rho_u:=\partial_u\rho$ など)。よって
$$ R(\partial_u,\partial_v)\partial_v=\nabla_{\partial_u}(2\rho_v\partial_v)=2\rho_{uv}\partial_v,\qquad R(\partial_u,\partial_v)\partial_u=-\nabla_{\partial_v}(2\rho_u\partial_u)=-2\rho_{uv}\partial_u $$
である。リッチテンソル の定義 $\mathrm{Ric}(Y,Z)=\operatorname{tr}\bigl(X\mapsto R(X,Y)Z\bigr)$ と $R(\partial_u,\partial_u)=R(\partial_v,\partial_v)=0$ から、$\mathrm{Ric}(\partial_u,\partial_v)$ は $R(\partial_v,\partial_u)\partial_v=-2\rho_{uv}\partial_v$ の $\partial_v$ 成分 $-2\rho_{uv}$ に等しい。$\mathrm{Ric}(\partial_u,\partial_u)$ は $R(\partial_v,\partial_u)\partial_u=2\rho_{uv}\partial_u$ の $\partial_v$ 成分で $0$、同様に $\mathrm{Ric}(\partial_v,\partial_v)=0$ である。$S=2g^{uv}\mathrm{Ric}(\partial_u,\partial_v)=2\cdot(-2e^{-2\rho})\cdot(-2\rho_{uv})=8e^{-2\rho}\rho_{uv}$ であり、$\frac S2g_{uv}=-2\rho_{uv}$ から最後の式を得る。$\square$

平坦な 2 次元 Lorentz 多様体

2 次元の Lorentz 多様体 $(M,g)$ について次は同値である。

  1. 曲率テンソルが恒等的に $0$ である。
  2. 各点のまわりに $g=-dU\,dV$ となる光的座標 $(U,V)$、すなわち $g=-dT^2+dX^2$ となる座標 $(T,X)$ がある。

2 ⇒ 1 は定数係数の計量だからである。1 ⇒ 2:thm-null-existence の光的座標 $(u,v)$ を、像が光的な長方形になるよう近傍を縮めてとる。$R(X,Y)$ は $X,Y$ について反対称なので $R$ は $R(\partial_u,\partial_v)$ で決まり、prf-null-curvature の計算から $R(\partial_u,\partial_v)$ は $\partial_u,\partial_v$ をそれぞれ $-2\rho_{uv}\partial_u$、$2\rho_{uv}\partial_v$ に写す。よって 1 は $\rho_{uv}=0$ と同値で、cor-null-wave-solution の証明と同じく $\rho=\alpha(u)+\beta(v)$ と書ける。$U:=\int e^{2\alpha(u)}du$、$V:=\int e^{2\beta(v)}dv$ とおくと $U'(u),V'(v)>0$ なので $(U,V)$ は座標で、$dU\,dV=e^{2\rho}du\,dv$ から $g=-dU\,dV$ である。$T:=\frac12(U+V)$、$X:=\frac12(V-U)$ とすればよい。$\square$

例

Minkowski 計量の光的座標

$\eta=-dt^2+dx^2$ では $u=t-x$、$v=t+x$ が光的座標で $\eta=-du\,dv$($\rho=0$)である。$u$ が一定の直線は速さ $1$ で右に進む光線、$v$ が一定の直線は左に進む光線である。cor-null-conformal-maps により、たとえば $(u,v)\mapsto(e^u,e^v)$ は $\eta$ を $e^{u+v}\eta$ に写す共形変換で、Lorentz 変換(boost)$(u,v)\mapsto(\lambda u,\lambda^{-1}v)$($\lambda>0$)は等長変換である。

Robertson–Walker 型の計量

開区間 $I$ と正の関数 $a$ に対し、$I\times\mathbb R$ 上の計量 $g=-dt^2+a(t)^2dx^2$ を考える。共形変換 の例「Robertson–Walker時空の共形平坦性」と同じく共形時間 $\eta(t):=\int_{t_0}^tds/a(s)$ をとると $g=a^2(-d\eta^2+dx^2)$ なので、$u:=\eta-x$、$v:=\eta+x$ が光的座標で $g=-a^2\,du\,dv$、$e^{2\rho}=a(t)^2$ である。光線は $x=\pm\eta+$ 定数 で表される。$a(t)=t$($I=(0,\infty)$、$t_0=1$)なら $\eta=\log t$、$e^{2\rho}=t^2=e^{u+v}$ で $\rho_{uv}=0$ だから、prop-null-curvature によりこの計量は平坦である。実際 $T:=t\cosh x$、$X:=t\sinh x$ とおくと $-dT^2+dX^2=-dt^2+t^2dx^2$ であり、$(t,x)\mapsto(T,X)$ は $(0,\infty)\times\mathbb R$ を Minkowski 時空の未来の光錐の内部 $\{T>|X|\}$ に写す。

定曲率の計量

$\{uv<1\}$ 上の $g_+:=-\dfrac{4\,du\,dv}{(1-uv)^2}$ を考える。$\rho=\log2-\log(1-uv)$ で $\rho_{uv}=\partial_v\dfrac{v}{1-uv}=\dfrac1{(1-uv)^2}$ なので、prop-null-curvature から $S=8\cdot\dfrac{(1-uv)^2}4\cdot\dfrac1{(1-uv)^2}=2$ である。同様に $\{uv>-1\}$ 上の $g_-:=-\dfrac{4\,du\,dv}{(1+uv)^2}$ では $\rho_{uv}=-\dfrac1{(1+uv)^2}$ で $S=-2$ である。スカラー曲率が定数 $\pm2$ の Lorentz 計量が、光的座標では有理式で書ける。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
2 次元3 次元の Lorentz 計量 $-dt^2+h$($h$ は放物面の計量)局所共形平坦
Lorentz 計量Euclid 平面 $dx^2+dy^2$$g(\partial_u,\partial_u)=g(\partial_v,\partial_v)=0$ となる座標の存在
局所的な主張平坦な Lorentz トーラス$M$ 全体で定義された光的座標の存在
$f'h'>0$(cor-null-conformal-maps)$(u,v)\mapsto(-u,v)$共形変換であること
表の反例の確かめ

1 行目:Cottonテンソル の例「3 次元の積 $\mathbb R\times\Sigma$」で $\varepsilon=-1$ とすると $C\ne0$ であり、Weyl–Schouten の定理によりこの計量は局所共形平坦でない。
2 行目:Riemann 計量では $0$ でないベクトル $X$ について $g(X,X)>0$ なので、座標ベクトル場が光的になることはない(共形平坦性は等温座標で成り立つが、光的座標はない)。
3 行目:$\mathbb R^2$ の $\eta=-du\,dv$ は整数の平行移動で不変なので、トーラス $\mathbb R^2/\mathbb Z^2$ に平坦な Lorentz 計量を定める。光的座標は特に $M$ から $\mathbb R^2$ の開集合への微分同相を与えるが、コンパクトな $M$ の連続像はコンパクトで、$\mathbb R^2$ の空でないコンパクト集合は開集合でないので、そのような座標は $M$ 全体では定義できない。
4 行目:$(u,v)\mapsto(-u,v)$ は $(t,x)\mapsto(x,t)$ であり、$\eta=-du\,dv$ を $du\,dv=-\eta$ に写す。$-\eta$ は $\eta$ の正の関数倍でないので共形変換ではないが、光的な直線を光的な直線に写す。

関連項目

参考文献

[1]
John M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds, Graduate Texts in Mathematics 176, Springer, 2018, p. 222(2 次元の擬リーマン多様体の局所共形平坦性)、Problem 7-15(p. 224、2 次元 Lorentz 計量の光的な枠と共形平坦な座標)

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