adic空間(adic space)とは、R. Huber が導入した非アルキメデス的な解析空間で、完備な非アルキメデス的付値体 $K$ 上の affinoid 代数 $(A,A^+)$ の連続な付値のうち $A^+$ の上で $1$ 以下のものの同値類の空間 $\operatorname{Spa}(A,A^+)$ を、有理部分集合を基とする位相と構造層で貼り合わせたものである。点として階数 2 以上の付値も認めるため、空間はスペクトル空間になって Hausdorff でなくなり、閉単位円板では Gauss 点の閉包に階数 2 の点が現れる。その代わり、rigid 解析空間の Grothendieck 位相は通常の位相に置き換わり、準分離的な rigid 解析空間は局所的に位相的有限型な準分離的 adic 空間と同じものになる。
adic空間(adic space)は、R. Huber が導入した非アルキメデス的な解析空間で、点を「連続な付値」とする。完備な非アルキメデス的付値体 $K$ 上の Tate代数 $K\{t\}$ を例にとると、rigid解析空間 は閉単位円板の点を極大イデアル($\bar K$ の点)に限り、層の貼り合わせを Grothendieck 位相で制御する。Berkovich空間 は点を階数 1 の乗法的半ノルムまで広げて Hausdorff な空間を作る。adic 空間はさらに階数 2 以上の付値も点として認め、その代わりに点の集合を Hausdorff でないスペクトル空間にする。こうすると、rigid 幾何で「許容されない」被覆が、実際に点を覆い残している被覆として見えるようになり、Grothendieck 位相が通常の位相に置き換わる。
この記事では、完備な非アルキメデス的付値体の上の Tate 代数に話を限り、adic スペクトル $\operatorname{Spa}(A,A^+)$ と有理部分集合、構造前層と adic 空間を定義する。体の adic スペクトルが 1 点であること、閉単位円板に階数 2 の点があって Gauss 点の閉包に入り、rigid 幾何の許容されない被覆から漏れることを証明し、層になる条件と rigid 解析空間との比較定理は所在を示して引用する。
以下、$K$ は完備な非アルキメデス的付値体とする。すなわち $K$ は自明でない絶対値 $|\cdot|\colon K\to\mathbb{R}_{\ge0}$ で非アルキメデス的なもの(付値 の定義「体の絶対値」)について完備な体である。$K^\circ:=\{|x|\le1\}$、$K^{\circ\circ}:=\{|x|<1\}$ とし、$0<|\varpi|<1$ となる $\varpi\in K$ を一つ固定する。
$\Gamma$ を乗法的に書いた全順序アーベル群とし、新しい元 $0$ を $0< \delta$($\delta\in\Gamma$)、$0\cdot\delta=0$ として付け加える。環 $A$ の付値とは、写像 $|\cdot|\colon A\to\Gamma\cup\{0\}$ で
$$
|0|=0,\qquad|1|=1,\qquad|ab|=|a||b|,\qquad|a+b|\le\max\{|a|,|b|\}
$$
を満たすものをいう。$0$ でない値が生成する $\Gamma$ の部分群を値群 $\Gamma_{|\cdot|}$、$\operatorname{supp}|\cdot|:=\{a\mid|a|=0\}$ を台という。2 つの付値 $|\cdot|$、$|\cdot|'$ が同値であるとは、すべての $a,b\in A$ について $|a|\le|b|\iff|a|'\le|b|'$ となることをいう。$A$ が位相環のとき、付値が連続であるとは、すべての $\delta\in\Gamma_{|\cdot|}$ について $\{a\in A\mid|a|< \delta\}$ が $A$ の開集合であることをいう。
体 $L$ の付値は、付値 の加法付値 $v$ と、値を逆順にした $|x|\leftrightarrow v(x)$ の対応($|x|\le|y|\iff v(x)\ge v(y)$)で同じものである。値群が $\{1\}$ でなく $\mathbb{R}_{>0}$ の部分群と順序同型なとき、付値の階数は $1$ という。$K$ の絶対値は階数 1 の付値である。
台は素イデアルである。実際 $|a|=|b|=0$ なら $|a+b|\le0$、$|ra|=|r|\cdot0=0$ で、$\Gamma$ は群なので $|a||b|=0$ なら $|a|$ か $|b|$ が $0$ であり、$|1|=1$ から $1\notin\operatorname{supp}$ である。付値は $A/\operatorname{supp}$ の商体 $L$ の付値に一意に延び、その付値環 $\{x\in L\mid|x|\le1\}$(付値環)が定まる。体 $L$ の 2 つの付値は、付値環が等しければ同値である($b\ne0$ なら $|a|\le|b|$ は $a/b$ が付値環に属することと同値であり、$b=0$ なら $|a|\le|b|$ は $a=0$ と同値である)。
$(K,K^\circ)$ は affinoid $K$ 代数である($A_0=K^\circ$)。Tate代数 の $T_n$ は Gauss ノルム $\|\cdot\|$ についての Banach 代数で、$A_0=T_n^\circ=\{\|f\|\le1\}$ とすれば Tate $K$ 代数である。Gauss ノルムは乗法的(Tate代数 の定理「Gauss ノルムの乗法性」)なので、$\|f^n\|=\|f\|^n$ が有界であることは $\|f\|\le1$ と同値であり、$T_n^\circ$ は冪有界な元の全体に一致する。よって $(T_n,T_n^\circ)$ は位相的有限型の affinoid $K$ 代数である。
affinoid $K$ 代数 $(A,A^+)$ について、$A$ の連続な付値で、すべての $f\in A^+$ について $|f|\le1$ を満たすものの同値類の全体を $\operatorname{Spa}(A,A^+)$ と書き、adic スペクトルという。点 $x$ の代表を $f\mapsto|f(x)|$ と書く。$f_1,\dots,f_n\in A$ が単位イデアル $A$ を生成し、$g\in A$ のとき、
$$
U\Bigl(\frac{f_1,\dots,f_n}{g}\Bigr):=\{x\in\operatorname{Spa}(A,A^+)\mid |f_i(x)|\le|g(x)|\ (i=1,\dots,n)\}
$$
を有理部分集合といい、有理部分集合の全体が生成する位相を $\operatorname{Spa}(A,A^+)$ に入れる。
条件 $|f_i(x)|\le|g(x)|$ は付値の同値類の代表によらない。
$(A,A^+)$ を affinoid $K$ 代数、$X=\operatorname{Spa}(A,A^+)$ とし、$U=U(\frac{f_1,\dots,f_n}{g})$ を有理部分集合とする。
1.$\sum_ih_if_i=1$ となる $h_i\in A$ をとる。スカラー倍の連続性から $N\to\infty$ で $\varpi^Nh_i\to0$ であり、$A^+$ は $0$ の近傍なので、十分大きい $N$ ですべての $\varpi^Nh_i\in A^+$ となる。$x\in U$ について $|(\varpi^Nh_i)(x)|\le1$ だから
$$
|\varpi^N(x)|=\Bigl|\sum_i(\varpi^Nh_i)(x)f_i(x)\Bigr|\le\max_i|(\varpi^Nh_i)(x)|\,|f_i(x)|\le\max_i|f_i(x)|\le|g(x)|
$$
である。$\varpi$ は $A$ の単元なので $|\varpi^N(x)|\ne0$ である。
2.$f_1,\dots,f_n,g$ も単位イデアルを生成し、追加した条件 $|g(x)|\le|g(x)|$ は常に成り立つ。
3.2 により、$U=U(\frac{f_1,\dots,f_n}{g})$、$V=U(\frac{f'_1,\dots,f'_m}{g'})$ で $g=f_n$、$g'=f'_m$ としてよい。$\{f_if'_j\}$ は単位イデアルを生成する($\sum h_if_i=1$ と $\sum h'_jf'_j=1$ を掛ける)。$W:=U(\frac{\{f_if'_j\}_{i,j}}{gg'})$ とおき $U\cap V=W$ を示す。$x\in U\cap V$ なら $|f_if'_j(x)|\le|g(x)||g'(x)|$ である。逆に $x\in W$ とすると、1 を $W$ に当てて $|g(x)g'(x)|\ne0$、したがって $|g(x)|\ne0$、$|g'(x)|\ne0$ である。$j=m$ の条件 $|f_i(x)||g'(x)|\le|g(x)||g'(x)|$ を $0$ でない $|g'(x)|$ で割って $|f_i(x)|\le|g(x)|$、同様に $i=n$ の条件から $|f'_j(x)|\le|g'(x)|$ を得る。$X=U(\frac{1}{1})$ も有理部分集合なので、共通部分で閉じた被覆は位相の基になる。$\square$
Huber は、$\operatorname{Spa}(A,A^+)$ がスペクトル空間であり、有理部分集合が準コンパクトな開集合の基で有限個の共通部分で閉じたものをなすことを示した(Sch12 Proposition 2.10、p. 9。この記事では証明しない)。$A$ の完備化 $\hat A$ に替えても $\operatorname{Spa}$ と有理部分集合は変わらない(Sch12 Proposition 2.11、p. 9)。
$\operatorname{Spa}(K,K^\circ)$ は、$K$ の絶対値 $|\cdot|$ の類だけからなる 1 点集合である。
$|\cdot|$ は値群 $|K^\times|\subset\mathbb{R}_{>0}$ の各元 $\delta$ について $\{|a|< \delta\}$ が開球なので連続であり、$K^\circ$ の上で $1$ 以下である。$x$ を $\operatorname{Spa}(K,K^\circ)$ の点とし、付値環を $V:=\{a\in K\mid|a(x)|\le1\}$ とする。$K$ は体なので台は $0$ であり、仮定から $K^\circ\subset V$ である。
$V\ne K^\circ$ と仮定し、$c\in V\setminus K^\circ$ をとる。$|c|>1$ なので、任意の $d\in K$ について $|d|\le|c|^m$ となる $m$ があり、$dc^{-m}\in K^\circ\subset V$、$c^m\in V$ から $d\in V$ である。よって $V=K$ であり、$d\ne0$ について $|d(x)|\le1$ と $|d^{-1}(x)|\le1$ から $|d(x)|=1$、すなわち $x$ は自明な付値である。その値群は $\{1\}$ で、$\{a\mid|a(x)|<1\}=\{0\}$ は開集合でない($\varpi^N\ne0$ が $0$ に収束する)から、$x$ は連続でなく矛盾する。したがって $V=K^\circ$ であり、付値環が等しいので $x$ は $|\cdot|$ と同値である。$\square$
この証明は $K$ の絶対値の階数が 1 であることを使っている。$K^\circ$ に真に含まれる開付値環 $K^+$ があれば、$K^+$ を付値環とする連続な付値(Sch12 Definition 2.26 の後の説明、p. 14)と $|\cdot|$ は、付値環が異なるので $\operatorname{Spa}(K,K^+)$ の異なる 2 点になる。
$X:=\operatorname{Spa}(T_1,T_1^\circ)$($T_1=K\{t\}$)を閉単位円板の adic スペクトルという。$f=\sum_nc_nt^n\in T_1$ の Gauss ノルムを $\|f\|=\max_n|c_n|$ とする。
Berkovich空間 の点は階数 1 の付値(乗法的半ノルム)に当たる。adic スペクトルには、それに加えて次の階数 2 の点がある。全順序アーベル群
$$
\Gamma_-:=\mathbb{R}_{>0}\times\gamma^{\mathbb{Z}},\qquad r\gamma^m< r'\gamma^{m'}\iff r< r'\ \text{または}\ (r=r'\ \text{かつ}\ m>m')
$$
を考える(積は成分ごと)。$\gamma=1\cdot\gamma^1$ は、すべての実数 $r<1$ について $r< \gamma<1$ を満たし、「$1$ より無限小だけ小さい」元である。$f\ne0$ について $n_0(f):=\min\{n\mid|c_n|=\|f\|\}$ とおく。
$|f(\eta_-)|:=\|f\|\gamma^{n_0(f)}$($f\ne0$)、$|0(\eta_-)|:=0$ と定めると、次が成り立つ。
$\Gamma_-$ の順序は $(r,-m)$ の辞書式順序なので、積と両立する全順序である。$f=\sum c_nt^n\ne0$ について、$|c_n|\gamma^n$ のうち最大のものは、$|c_n|=\|f\|$ となる $n$ のうち最小のものに対する $\|f\|\gamma^{n_0(f)}$ である。
乗法性。 $f,g\ne0$ とし、$|c|=\|f\|$、$|c'|=\|g\|$ となる $c,c'\in K$ をとって $f_1=f/c$、$g_1=g/c'$ とおく(Tate代数 の補題「剰余体への還元」の 3)。定数倍で $n_0$ は変わらない。$\|f_1\|=1$ のとき $n_0(f_1)$ は、還元 $\tilde f_1\in\tilde K[t]$ の $0$ でない最低次の項の次数 $\operatorname{ord}_0\tilde f_1$ である。還元は環準同型であり(同じ補題の 2)、$\tilde K[t]$ は整域なので $\operatorname{ord}_0(\tilde f_1\tilde g_1)=\operatorname{ord}_0\tilde f_1+\operatorname{ord}_0\tilde g_1$ である。Gauss ノルムの乗法性から $\|f_1g_1\|=1$ なので、$n_0(fg)=n_0(f_1g_1)=n_0(f)+n_0(g)$、$\|fg\|=\|f\|\|g\|$ であり、$|(fg)(\eta_-)|=|f(\eta_-)||g(\eta_-)|$ を得る。
超距離不等式。 $f,g,f+g\ne0$ とし(他の場合は明らか)、$M:=\max\{\|f\|,\|g\|\}$ とおく。$\|f+g\|< M$ なら、$|(f+g)(\eta_-)|$ の実数部分が $M$ より小さいので $\max\{|f(\eta_-)|,|g(\eta_-)|\}$ より小さい。$\|f+g\|=M$ なら、$\|h\|=M$ となる $h\in\{f,g\}$ についての $n_0(h)$ の最小値を $n^*$ とすると、$n< n^*$ では $f,g$ の $t^n$ の係数の絶対値がどちらも $M$ 未満なので $f+g$ の係数も $M$ 未満であり、$n_0(f+g)\ge n^*$ である。よって $|(f+g)(\eta_-)|=M\gamma^{n_0(f+g)}\le M\gamma^{n^*}=\max\{|f(\eta_-)|,|g(\eta_-)|\}$ である。$|1(\eta_-)|=1$ は明らかである。
連続性。 値群の元 $\delta=s\gamma^m$($s>0$)と $f_0\in T_1$ で $|f_0(\eta_-)|< \delta$ のものをとる。$\|h\|< s$ なら $|h(\eta_-)|$ の実数部分が $s$ 未満なので $|h(\eta_-)|< \delta$ であり、$|(f_0+h)(\eta_-)|\le\max\{|f_0(\eta_-)|,|h(\eta_-)|\}< \delta$ である。よって $\{f\mid|f(\eta_-)|< \delta\}$ は開集合である。
$T_1^\circ$ の上で $1$ 以下。 $\|f\|<1$ なら $|f(\eta_-)|<1$、$\|f\|=1$ なら $|f(\eta_-)|=\gamma^{n_0(f)}\le1$ である。$t$ は $\|t\|=1$、$n_0(t)=1$ なので $|t(\eta_-)|=\gamma$ である。
2.値が $\mathbb{R}_{\ge0}$ に入る付値 $|\cdot|'$ が $\eta_-$ と同値だとする。同値性は $\le$ を保つので、その否定である $<$ も保つ。すべての $N\ge1$ について、$\Gamma_-$ の中で実数部分を比べると $|\varpi(\eta_-)|=|\varpi|< \gamma^N=|t^N(\eta_-)|$ なので、実数の不等式 $|\varpi|'<|t|'^N$ がすべての $N$ で成り立つ。また $|t(\eta_-)|<1$ から $|t|'<1$ であり、$N\to\infty$ で $|t|'^N\to0$ となって、$|\varpi|'>0$($\varpi$ は単元)に反する。
3.$\eta_-$ を含む有理部分集合 $U(\frac{f_1,\dots,f_n}{g})$ をとる。$|g(\eta_-)|\ne0$ なので $g\ne0$、$\|g\|>0$ である。$|f_i(\eta_-)|\le|g(\eta_-)|$ の実数部分を比べて $\|f_i\|\le\|g\|$ であり、$\eta\in U$ である。prop-adic-rational の 3 により有理部分集合は位相の基なので、$\eta_-$ のどの開近傍も $\eta$ を含む。$\eta$ では $\|1\|\le\|t\|$ が成り立つが $\eta_-$ では $1\le\gamma$ が成り立たないので $\eta_-\ne\eta$ であり、$\eta_-$ と $\eta$ は開集合で分離できない。$\square$
$X$ の有理部分集合 $U(\frac1t)=\{x\mid|t(x)|=1\}$ と、$0<|c|<1$ となる $c\in K$ についての $U(\frac{t,c}{c})=\{x\mid|t(x)|\le|c|\}$ は、すべての古典的な点を覆うが、合わせても $X$ を覆わない。実際 $\eta_-$ はどれにも属さない。
$1$ は単位イデアルを生成し、$X$ の点では $|t(x)|\le1$($t\in T_1^\circ$)なので、$U(\frac1t)=\{1\le|t(x)|\}=\{|t(x)|=1\}$ である。$t,c$ は($c$ が単元なので)単位イデアルを生成する。古典的な点 $a\in K^\circ$ は、$|a|=1$ なら $U(\frac1t)$ に、$0<|a|<1$ なら $c=a$ のものに、$a=0$ なら任意の $c$ のものに属する。一方 $|t(\eta_-)|=\gamma$ は $1$ と異なり、$\Gamma_-$ の中で $|c|< \gamma$ なので $|t(\eta_-)|\le|c|$ でもない。$\square$
rigid 幾何では、閉単位円板を $\{|t|=1\}$ と半径 $1$ 未満の閉円板の全体で覆う被覆は、古典的な点をすべて覆うが許容被覆ではない(Sch12 p. 13。許容被覆と Grothendieck 位相は rigid解析空間 を参照)。adic スペクトルでは、この被覆が $\eta_-$ を覆い残していることとして見える(同じ箇所の注意)。$K$ が完備で代数閉なとき、$X$ の点は 5 種類に分類され、古典的な点・円板 $\{|t-a|\le r\}$($0< r\le1$)の上の sup ノルム($r\in|K^\times|$ か否かで 2 種類)・入れ子の円板の列の極限が階数 1 の点で、残りが上の $\eta_-$ のような階数 2 の点である(Sch12 Example 2.20、pp. 11–12。この記事では証明しない)。
$(A,A^+)$ を affinoid $K$ 代数、$X=\operatorname{Spa}(A,A^+)$、$U=U(\frac{f_1,\dots,f_n}{g})$ を有理部分集合とする。prop-adic-rational の 1 により $U$ の上で $|g(x)|\ne0$ なので、$U$ の上では $g$ を可逆にし $f_i/g$ を「絶対値 $1$ 以下の関数」とみなしてよい。そこで $A[1/g]$ の部分環 $A[\frac{f_1}{g},\dots,\frac{f_n}{g}]$ に $A_0[\frac{f_1}{g},\dots,\frac{f_n}{g}]$ の $K^\times$ 倍を $0$ の近傍の基とする位相を入れ、$A^+[\frac{f_1}{g},\dots,\frac{f_n}{g}]$ の整閉包を添えて完備化した affinoid $K$ 代数を
$$
\bigl(\mathcal{O}_X(U),\mathcal{O}_X^+(U)\bigr):=\Bigl(A\Bigl\langle\frac{f_1}{g},\dots,\frac{f_n}{g}\Bigr\rangle,\ B\Bigr)
$$
と書く。これは $U$ だけで決まり($\operatorname{Spa}$ が $U$ を経由する完備 affinoid 代数への写像についての普遍性による)、一般の開集合 $W$ には $W$ に含まれる有理部分集合 $U$ についての逆極限 $\mathcal{O}_X(W):=\varprojlim\mathcal{O}_X(U)$ で延ばす(Sch12 Definition 2.13・Proposition 2.14、pp. 9–10)。各点 $x$ の付値は茎 $\mathcal{O}_{X,x}$ に延び、$\mathcal{O}_{X,x}$ は局所環である(Sch12 Proposition 2.15、p. 10)。
$\mathcal{O}_X$ は一般には層になるとは限らない。$A$ が強 Noether(すべての $n$ で $A\langle t_1,\dots,t_n\rangle$ が Noether 環)なら層になり(Sch12 Theorem 2.17、p. 10、Huber の定理として引用)、位相的有限型の $A$ は強 Noether である(同箇所)。perfectoid 代数のように強 Noether でない場合にも層になることがある(Sch12 Theorem 6.3、p. 30)。いずれもこの記事では証明しない。
位相空間 $X$ と、その上の完備な位相 $K$ 代数の層 $\mathcal{O}_X$ で $(X,\mathcal{O}_X)$ が局所環付き空間になるもの、および各点 $x$ での茎 $\mathcal{O}_{X,x}$ の連続な付値 $f\mapsto|f(x)|$ の組を考える。射は、局所環付き空間の射で、$\mathcal{O}_X$ の上で連続な $K$ 代数の準同型を与え、付値と両立するものとする。$\mathcal{O}_X$ が層になる affinoid $K$ 代数 $(A,A^+)$ から作った $(\operatorname{Spa}(A,A^+),\mathcal{O}_X,(|\cdot(x)|)_x)$ と同型な組を affinoid adic 空間、局所的に affinoid adic 空間である組を $K$ 上の adic 空間という(Sch12 Definition 2.18、p. 11)。
affinoid adic 空間 $\operatorname{Spa}(A,A^+)$ への射は、$(\hat A,\hat A^+)$ から大域切断への連続な準同型と一対一に対応する(Sch12 Proposition 2.19、p. 11)。rigid 解析空間との関係は次のとおりである。
$K$ 上の rigid 解析空間 $Y$ に adic 空間 $Y^{\mathrm{ad}}$ を対応させる充満忠実な関手があり、affinoid 空間 $\operatorname{Sp}A$ を $\operatorname{Spa}(A,A^\circ)$ に送る。これは準分離的な rigid 解析空間の圏と、局所的に位相的有限型な準分離的 adic 空間の圏の同値を与える。$Y$ が準分離的なら、$Y$ の準コンパクトな許容開集合と $Y^{\mathrm{ad}}$ の準コンパクト開集合は一対一に対応し、準コンパクトな許容開集合の族が許容被覆であることは、対応する開集合が $Y^{\mathrm{ad}}$ を覆うことと同値である。
この定理は Huber による(Sch12 Theorem 2.21 とその後の説明、pp. 12–13)。この記事では証明しない。$K$ が代数閉なら、$T_1$ の極大イデアルは $K^\circ$ の点に対応するので、prop-adic-noncover は、許容でない被覆が対応する開集合で $Y^{\mathrm{ad}}$ を覆わない例になっている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 付値の連続性(def-adic-spa、prop-adic-spa-field) | $K$ の自明な付値 $\lvert a\rvert_0=1$($a\ne0$) | $K^\circ$ の上で $1$ 以下の付値として数えると、$\operatorname{Spa}(K,K^\circ)$ に $K$ の絶対値と異なる 2 点目が入る |
| $A^+$ の上で $\lvert f\rvert\le1$(def-adic-spa) | thm-adic-rank-two-point の $\gamma$ を、すべての実数 $r>1$ について $1< \gamma'< r$ となる $\gamma'$ に替えた付値 | 連続な付値だが $\lvert t\rvert=\gamma'>1$ となり、閉単位円板の外の点が数えられる |
| $f_1,\dots,f_n$ が単位イデアルを生成(prop-adic-rational の 1) | $X=\operatorname{Spa}(T_1,T_1^\circ)$ の $\{x\mid\lvert t(x)\rvert\le\lvert t(x)\rvert\ne0\}$($f_1=g=t$) | 古典的な点 $a=\varpi^N$ がすべて属し、$\lvert g(a)\rvert=\lvert\varpi\rvert^N$ は下から押さえられない |
要点:1 行目は連続性の定義から、2 行目は thm-adic-rank-two-point の証明で最小を最大に替えて、3 行目は古典的な点 $\varpi^N$ で確かめられる。
1 行目:自明な付値は値群が $\{1\}$ で、$\{a\mid|a|_0<1\}=\{0\}$ は開集合でないので連続でない(prf-adic-spa-field)。$|a|_0\le1$ は $K^\circ$ の上で成り立つ。台はどちらも $0$ だが付値環が $K$ と $K^\circ$ で異なるので $|\cdot|$ とは同値でない。2 行目:$\Gamma'=\mathbb{R}_{>0}\times\gamma'^{\mathbb{Z}}$ に、$r\gamma'^m< r'\gamma'^{m'}$ を「$r< r'$、または $r=r'$ かつ $m< m'$」で定める順序を入れ、$|f|':=\|f\|\gamma'^{N_0(f)}$($N_0(f)$ は $|c_n|=\|f\|$ となる最大の $n$)とおく。thm-adic-rank-two-point の証明で、最低次の項の次数を還元 $\tilde f$ の次数に、最小を最大に替えると、同じく連続な付値であることがわかる。$t\in T_1^\circ$ だが $|t|'=\gamma'>1$ である。3 行目:$t$ は単位イデアルを生成しない($T_1/(t)\cong K\ne0$)。古典的な点 $a=\varpi^N$ では $|t(a)|=|\varpi|^N\ne0$ なので条件を満たし、$N$ を大きくすると $|g(a)|$ はいくらでも小さくなる。$\square$
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