コンパクト生成空間

同義語:compactly generated space

概要

コンパクト生成空間(compactly generated space)とは、コンパクト Hausdorff 空間からのどの連続写像で引き戻しても閉集合になる集合が閉集合であるという条件($k$-空間)と、コンパクト Hausdorff 空間の連続像がつねに閉集合であるという条件(弱 Hausdorff)を満たす位相空間である。距離空間・局所コンパクト空間・CW 複体はこれに含まれ、連続性はコンパクト Hausdorff 部分空間への制限で判定できる。任意の空間は位相を細かくする $k$ 化でこの範囲に移せ、直積と写像空間を $k$ 化して定め直すと、Hausdorff なコンパクト生成空間の間では指数法則が局所コンパクト性の仮定なしに成り立つので、ホモトピー論で位相空間の圏の代わりに使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: コンパクト空間, Hausdorff空間, 商写像, 直積位相

コンパクト生成空間(compactly generated space)とは、位相がコンパクト Hausdorff 空間からの連続写像で決まる位相空間のことである。正確には、「コンパクト Hausdorff 空間からのどの連続写像で引き戻しても閉集合になる集合は閉集合である」という条件($k$-空間)と、「コンパクト Hausdorff 空間の連続像はつねに閉集合である」という弱い分離条件(弱 Hausdorff)を合わせたものをいう。
位相空間の圏は、ホモトピー論の道具として使うには少し扱いにくい。商写像と恒等写像の直積が商写像になるとは限らず、写像空間についての指数法則 $\mathrm{Map}(X\times Y,Z)\cong\mathrm{Map}(X,\mathrm{Map}(Y,Z))$ は $Y$ が局所コンパクトでないと成り立つとは限らない(コンパクト開位相)。一方、ホモトピー群やホモロジー群は球面や単体といったコンパクト Hausdorff 空間からの写像で測られるので、コンパクト Hausdorff 空間から見えない位相の違いは不変量に影響しない。そこで、位相を「コンパクト Hausdorff 空間から見える分だけ」に細かくし直した空間に限って議論すると、直積・商・写像空間がよく振る舞うようになる。距離空間、局所コンパクト空間、CW 複体はすべてこの範囲に入る。この記事では、定義と基本性質、位相を細かくし直す操作($k$ 化)とその普遍性、局所コンパクト空間との直積の定理を証明する。

定義

この記事では、コンパクト空間であってHausdorff空間でもある空間を コンパクト Hausdorff 空間 とよび、記号 $K$ で表す。位相空間 $X$ への連続写像 $u\colon K\to X$($K$ はコンパクト Hausdorff 空間)を、$X$ への 試験写像 とよぶ。

$k$-空間とコンパクト生成空間

$X$ を位相空間とする。

  1. 部分集合 $A\subset X$ が $k$-閉集合(compactly closed)であるとは、すべての試験写像 $u\colon K\to X$ について $u^{-1}(A)$ が $K$ の閉集合であることをいう。補集合が $k$-閉集合である集合を $k$-開集合 という。
  2. $X$ が $k$-空間 であるとは、$X$ のすべての $k$-閉集合が閉集合であることをいう。
  3. $X$ が 弱 Hausdorff(weak Hausdorff)であるとは、すべての試験写像 $u\colon K\to X$ について像 $u(K)$ が $X$ の閉集合であることをいう。
  4. 弱 Hausdorff な $k$-空間を コンパクト生成空間 という。

閉集合 $A$ は、連続写像による逆像がつねに閉なので $k$-閉集合である。したがって $k$-空間とは、閉集合と $k$-閉集合がちょうど一致する空間である。補集合をとれば、$X$ が $k$-空間であることと、$k$-開集合がすべて開集合であること、すなわち「すべての試験写像 $u$ について $u^{-1}(W)$ が開集合なら $W$ は開集合」であることは同値である。

流儀の違い

「コンパクト生成」の定義は文献によって異なる。

  • May99 Chapter 5(p. 39)はこの記事と同じ定義(コンパクト空間は Hausdorff を含むとし、弱 Hausdorff な $k$-空間をコンパクト生成とよぶ)を採る。
  • Hat02 Appendix(pp. 523–524)は分離条件を定義に入れずに「$A\cap C$ がすべてのコンパクト集合 $C$ で $C$ の閉集合なら $A$ は閉」という形を採り、Proposition A.15(p. 531)などでは Hausdorff を別に仮定する。Eng89 §3.3(p. 152)は Hausdorff 空間のうち局所コンパクト空間の商空間として表せるものを $k$-空間とよび、同じ条件と同値であることを示している(Theorem 3.3.18)。
  • 分離条件を課さずに、この記事の $k$-空間をコンパクト生成とよぶ文献もある。
    Hausdorff 空間に対しては、これらの定義はすべて一致する(prop-cg-weak-hausdorff の 3。Hausdorff 空間のコンパクト集合はコンパクト Hausdorff な部分空間である)。

弱 Hausdorff 性

弱 Hausdorff 空間の性質
  1. Hausdorff 空間は弱 Hausdorff であり、弱 Hausdorff 空間は T1空間である。
  2. $X$ が弱 Hausdorff で $u\colon K\to X$ が試験写像ならば、部分空間 $u(K)$ はコンパクト Hausdorff 空間である。
  3. $X$ が弱 Hausdorff ならば、$A\subset X$ が $k$-閉集合であることと、$X$ のすべてのコンパクト Hausdorff 部分空間 $C$ について $A\cap C$ が $C$ の閉集合であることは同値である。

要点:1 点空間からの写像を考えると弱 Hausdorff 空間の点は閉である。2 では、像の 2 点のファイバーを $K$ の正規性で開集合 $U,V$ に分け、閉集合 $u(K\setminus U)$、$u(K\setminus V)$ の補集合で 2 点を分ける。3 は 2 により試験写像を像への写像とみればよい。

詳しい証明を開く

1:Hausdorff 空間では、コンパクト集合 $u(K)$ は閉集合である(Hausdorff空間 の命題「コンパクト部分集合の閉性」)。弱 Hausdorff 空間 $X$ の点 $x$ は、1 点空間(コンパクト Hausdorff)からの試験写像の像なので、$\{x\}$ は閉集合である。

2:$u(K)$ は連続像としてコンパクトである。Hausdorff 性を示す。$x\neq y\in u(K)$ とする。1 により $\{x\},\{y\}$ は閉なので、$u^{-1}(x)$ と $u^{-1}(y)$ は $K$ の交わらない閉集合である。コンパクト Hausdorff 空間は正規空間なので、それぞれを含む交わらない開集合 $U,V\subset K$ がある。$K\setminus U$ と $K\setminus V$ はコンパクトなので、制限 $u|_{K\setminus U}$ も試験写像であり、その像 $u(K\setminus U)$ は $X$ の閉集合である。$u(K\setminus V)$ も同様である。そこで $$ U'=u(K)\setminus u(K\setminus U),\qquad V'=u(K)\setminus u(K\setminus V) $$ とおくと、これらは $u(K)$ の開集合である。$u^{-1}(x)\subset U$ なので $x\notin u(K\setminus U)$、すなわち $x\in U'$ であり、同様に $y\in V'$ である。$z\in U'\cap V'$ があったとすると、$z\in u(K)$ なので $u^{-1}(z)\neq\emptyset$ であり、$z\notin u(K\setminus U)$ から $u^{-1}(z)\subset U$、同様に $u^{-1}(z)\subset V$ となって $U\cap V=\emptyset$ に反する。よって $U'\cap V'=\emptyset$ である。

3:$A$ が $k$-閉集合で $C$ がコンパクト Hausdorff 部分空間なら、包含写像 $C\to X$ は試験写像なので $A\cap C$ は $C$ の閉集合である。逆を示す。試験写像 $u\colon K\to X$ をとる。2 により $C=u(K)$ はコンパクト Hausdorff 部分空間なので $A\cap C$ は $C$ の閉集合であり、$u$ を $C$ への写像 $u'\colon K\to C$ とみると $u^{-1}(A)=u'^{-1}(A\cap C)$ は $K$ の閉集合である。$\square$

弱 Hausdorff は Hausdorff より弱く $T_1$ より強い条件である。どちらの含意も逆は成り立たない(ex-cg-two-limits、ex-cg-cocountable)。

例

$k$-空間の例
  1. 点列空間(点列で閉じた集合がつねに閉集合である空間)は $k$-空間である。とくに第1可算空間と距離空間は $k$-空間である。
  2. 局所コンパクト空間(Hausdorff で各点がコンパクト近傍をもつ空間)は $k$-空間である。
  3. したがって、距離空間・局所コンパクト空間は(Hausdorff なので)コンパクト生成空間である。

1:$A\subset X$ が閉でないとする。$X$ は点列空間なので、$A$ の点列 $(a_n)$ で、$A$ に属さない点 $x$ に収束するものがある。$\mathbb{N}^+:=\mathbb{N}\cup\{\infty\}$ を $\mathbb{N}$ の一点コンパクト化($\{0\}\cup\{1/(n+1)\mid n\in\mathbb{N}\}\subset\mathbb{R}$ と同相なコンパクト Hausdorff 空間)とし、$u(n)=a_n$、$u(\infty)=x$ とおく。$\infty$ の近傍は有限個を除くすべての $n$ を含む集合を含み、$a_n\to x$ なので $u$ は連続である。$u^{-1}(A)$ は $\mathbb{N}$ を含み $\infty$ を含まないが、$\infty$ は $\mathbb{N}$ の閉包に属するので、$u^{-1}(A)$ は閉集合でない。よって $A$ は $k$-閉集合でない。第1可算空間・距離空間は点列空間である(点列空間 の命題「可算性公理との階層」)。
2:$A$ を $k$-閉集合、$x\in\overline{A}$ とする。$x$ のコンパクト近傍 $C$ をとる。$C$ はコンパクト Hausdorff 部分空間なので、包含写像を試験写像とみて $A\cap C$ は $C$ の閉集合であり、$C$ は Hausdorff 空間 $X$ のコンパクト集合として閉なので、$A\cap C$ は $X$ の閉集合である。$x$ の任意の開近傍 $V$ について $V\cap\operatorname{Int}C$ も $x$ の開近傍なので $A$ と交わり、$V\cap(A\cap C)\neq\emptyset$ である。よって $x\in\overline{A\cap C}=A\cap C\subset A$ であり、$A$ は閉集合である。
3:Hausdorff 空間は弱 Hausdorff である(prop-cg-weak-hausdorff の 1)。$\square$

CW 複体もコンパクト生成空間である。CW 複体の位相は胞体の閉包たちで生成され、各胞体の閉包はコンパクトなので、CW 複体の位相はコンパクト集合で生成される(Hat02 Appendix、p. 523。CW 複体が Hausdorff であることは CW複体 の定理「CW 複体は Hausdorff」)。

反例:Hausdorff だが $k$-空間でない空間

$\mathbb{R}$ に、通常の開集合 $U$ と可算集合 $C$ による $U\setminus C$ の形の集合全体を開基とする位相を入れた空間を $X$ とする(2 つの $U\setminus C$ の共通部分は再びこの形なので開基になる)。この位相は通常の位相より細かいので $X$ は Hausdorff であり、とくに弱 Hausdorff である。
$X$ のコンパクト集合は有限集合である。実際、無限なコンパクト集合 $L$ があれば、その可算無限部分集合 $D$ をとると、各 $x\in L$ について $X\setminus(D\setminus\{x\})$ は(通常の開集合 $\mathbb{R}$ から可算集合を除いたものなので)$x$ を含む開集合で、$D$ の点を高々 1 つしか含まない。これらは $L$ を覆うが、有限個では無限集合 $D$ を覆えないので矛盾する。
よってコンパクト Hausdorff 部分空間はすべて有限集合で、有限集合は閉なので、prop-cg-weak-hausdorff の 3 により $X$ のすべての部分集合が $k$-閉集合である。一方 $\{0\}$ は開集合でない($0$ を含む開基の元 $U\setminus C$ は非可算である)ので、$X\setminus\{0\}$ は $k$-閉集合だが閉集合でない。$X$ は Hausdorff だが $k$-空間でない。

反例:$k$-空間だが弱 Hausdorff でない空間

$X=\mathbb{N}\cup\{\infty_1,\infty_2\}$ に、$\mathbb{N}$ の各点を孤立点とし、$\infty_i$ の基本近傍を $\{\infty_i\}\cup(\mathbb{N}\setminus F)$($F$ は有限集合)とする位相を入れる。点列 $0,1,2,\dots$ は $\infty_1$ と $\infty_2$ の両方に収束する(完全不連結空間 の例「反例:極限点が二つある列」と同じ空間)。各点は可算な基本近傍系をもつので、$X$ は第1可算であり、prop-cg-examples の 1 により $k$-空間である。各 1 点集合は閉なので $X$ は $T_1$ である。しかし $\mathbb{N}^+=\mathbb{N}\cup\{\infty\}$ から $n\mapsto n$、$\infty\mapsto\infty_1$ で定まる写像は連続で、その像 $\mathbb{N}\cup\{\infty_1\}$ は $\infty_2$ を閉包に含むので閉でない。よって $X$ は弱 Hausdorff でない。

反例:弱 Hausdorff だが Hausdorff でも $k$-空間でもない空間

非可算集合 $X$ に、補集合が可算である集合と空集合を開集合とする位相(補可算位相)を入れる。ex-cg-not-k-space と同じ議論で $X$ のコンパクト集合は有限集合であり、試験写像の像はコンパクトなので有限集合、したがって閉集合である(1 点集合は補集合が開なので閉)。よって $X$ は弱 Hausdorff である。空でない 2 つの開集合は補集合が可算なので交わり、$X$ は Hausdorff でない。すべての部分集合が $k$-閉集合だが、1 点の補集合は開集合ではあっても閉集合でないので、$X$ は $k$-空間でない。

空間Hausdorff弱 Hausdorff$T_1$$k$-空間
距離空間・局所コンパクト空間・CW 複体はいはいはいはい
ex-cg-not-k-space の空間はいはいはいいいえ
ex-cg-two-limits の空間いいえいいえはいはい
ex-cg-cocountable の補可算位相いいえはいはいいいえ

連続性の判定と $k$ 化

連続性はコンパクト Hausdorff 空間で決まる

$X$ を $k$-空間、$Y$ を位相空間とする。写像 $f\colon X\to Y$ が連続であることと、すべての試験写像 $u\colon K\to X$ について $f\circ u$ が連続であることは同値である。$X$ がコンパクト生成空間なら、これは「$X$ のすべてのコンパクト Hausdorff 部分空間 $C$ への制限 $f|_C$ が連続である」ことと同値である。

$f$ が連続なら $f\circ u$ は連続である。逆に、$B\subset Y$ を閉集合とすると、各試験写像 $u$ について $u^{-1}(f^{-1}(B))=(f\circ u)^{-1}(B)$ は閉集合なので、$f^{-1}(B)$ は $k$-閉集合であり、$X$ は $k$-空間なので閉集合である。後半:$f|_C$ がすべて連続なら、試験写像 $u$ について $u(K)=C$ はコンパクト Hausdorff 部分空間(prop-cg-weak-hausdorff の 2)で、$f\circ u=f|_C\circ u'$($u'\colon K\to C$)は連続である。逆は、包含写像が試験写像であることから従う。$\square$

$k$-空間でない空間も、位相を細かくすれば $k$-空間にできる。

$k$ 化

位相空間 $X$ の $k$-閉集合全体を閉集合系とする位相を $X$ の台集合に入れた空間を $kX$ と書く。

  1. $kX$ の位相は $X$ の位相より細かく(したがって恒等写像 $\varepsilon\colon kX\to X$ は連続であり)、$X$ への試験写像と $kX$ への試験写像は(写像として)一致する。
  2. $kX$ は $k$-空間である。$X$ が $k$-空間であることと $kX=X$ は同値である。
  3. $X$ が弱 Hausdorff なら $kX$ も弱 Hausdorff であり、したがって $kX$ はコンパクト生成空間である。
  4. (普遍性)$Z$ が $k$-空間ならば、写像 $f\colon Z\to X$ が連続であることと、同じ写像 $f\colon Z\to kX$ が連続であることは同値である。

$k$-閉集合全体が閉集合系の公理を満たすことを確かめる。$\emptyset$ と $X$ は $k$-閉集合であり、逆像は有限個の和と任意個の共通部分を保つので、$k$-閉集合の有限個の和と任意個の共通部分は $k$-閉集合である。
1:閉集合は $k$-閉集合なので、$kX$ の位相は $X$ の位相より細かい。$u\colon K\to X$ が試験写像なら、$kX$ の閉集合 $A$($X$ の $k$-閉集合)について $u^{-1}(A)$ は定義により閉なので、$u\colon K\to kX$ も連続である。逆は $u=\varepsilon\circ u$ から従う。
2:$A$ を $kX$ の $k$-閉集合とする。1 により、$X$ へのすべての試験写像 $u$ は $kX$ への試験写像でもあるので $u^{-1}(A)$ は閉集合であり、$A$ は $X$ の $k$-閉集合、すなわち $kX$ の閉集合である。後半は定義から明らかである。
3:$u\colon K\to kX$ を試験写像とすると、1 により $u\colon K\to X$ も試験写像であり、$u(K)$ は $X$ の閉集合である。$kX$ の位相は細かいので、$u(K)$ は $kX$ でも閉集合である。
4:$f\colon Z\to kX$ が連続なら $f=\varepsilon\circ f$ も連続である。逆に $f\colon Z\to X$ が連続で、$A$ を $X$ の $k$-閉集合とする。$Z$ への試験写像 $v\colon K\to Z$ について $f\circ v$ は $X$ への試験写像なので、$v^{-1}(f^{-1}(A))=(f\circ v)^{-1}(A)$ は閉集合である。よって $f^{-1}(A)$ は $Z$ の $k$-閉集合であり、$Z$ は $k$-空間なので閉集合である。$\square$

4 は、$k$-空間全体のなす充満部分圏 $\mathbf{K}$ から位相空間の圏 $\mathbf{Top}$ への包含関手 $J$ に対し、$k$ が右随伴(随伴関手)であることを述べている:自然な全単射
$$ \mathbf{K}(Z,kX)\cong\mathbf{Top}(JZ,X) $$
があり、余単位は連続な恒等写像 $\varepsilon\colon kX\to X$ である。$X$ と $kX$ は同じ試験写像をもつので、ホモトピー群や特異ホモロジー群(球面や単体からの写像で定まる不変量)は $X$ と $kX$ で変わらない。

直積

$k$-空間の直積空間は(直積位相のままでは)$k$-空間とは限らない(rem-cg-product-counterexample)。次の定理は、一方の因子が局所コンパクトなら直積位相のままでよいことを示す。

局所コンパクト空間との直積

$X$ を $k$-空間、$L$ を局所コンパクト空間(Hausdorff)とする。このとき直積空間 $X\times L$(直積位相)は $k$-空間である。

$W\subset X\times L$ を $k$-開集合とし、$W$ が開集合であることを示す。$(x_0,l_0)\in W$ とする。
段 1:$W_{x_0}:=\{l\in L\mid(x_0,l)\in W\}$ は $L$ の開集合である。実際、$L$ への試験写像 $v\colon K\to L$ について、$k\mapsto(x_0,v(k))$ は $X\times L$ への試験写像なので、その逆像 $v^{-1}(W_{x_0})$ は $K$ の開集合である。よって $W_{x_0}$ は $L$ の $k$-開集合であり、$L$ は $k$-空間(prop-cg-examples の 2)なので開集合である。
段 2:$l_0\in W_{x_0}$ であり、$L$ は局所コンパクト Hausdorff なので、$l_0$ のコンパクト近傍 $N$ で $N\subset W_{x_0}$ となるものがある(局所コンパクト空間 の定理「コンパクト近傍の同値な形」の 4)。$N$ はコンパクト Hausdorff である。
段 3:$V:=\{x\in X\mid\{x\}\times N\subset W\}$ とおくと、段 2 より $x_0\in V$ である。$V$ が $X$ の $k$-開集合であることを示す。試験写像 $u\colon K\to X$ をとる。$K\times N$ はコンパクト Hausdorff であり(Tychonoffの定理、直積位相 の命題「Hausdorff性と可算公理の遺伝」)、$u\times\iota\colon K\times N\to X\times L$($\iota$ は包含写像)は試験写像なので、$O:=(u\times\iota)^{-1}(W)$ は $K\times N$ の開集合である。$u^{-1}(V)=\{k\in K\mid\{k\}\times N\subset O\}$ である。$k\in u^{-1}(V)$ とすると、各 $n\in N$ について $(k,n)\in P_n\times Q_n\subset O$ となる開集合 $P_n\subset K$、$Q_n\subset N$ がある。$N$ はコンパクトなので有限個の $Q_{n_1},\dots,Q_{n_r}$ で覆われ、$P:=P_{n_1}\cap\dots\cap P_{n_r}$ は $k$ を含む開集合で $P\times N\subset O$ を満たす。よって $P\subset u^{-1}(V)$ であり、$u^{-1}(V)$ は開集合である。$X$ は $k$-空間なので $V$ は開集合である。
段 4:$V\times\operatorname{Int}N$ は $(x_0,l_0)$ を含む $X\times L$ の開集合であり、$V$ の定義から $W$ に含まれる。$(x_0,l_0)\in W$ は任意だったので、$W$ は開集合である。$\square$

この定理で $X$ に分離条件は要らない($X$ が Hausdorff の場合は Hat02 Proposition A.15、p. 531)。また、弱 Hausdorff 空間 $X,Y$ の直積 $X\times Y$ は弱 Hausdorff である。実際、試験写像 $u\colon K\to X\times Y$ について、射影の像 $C_1=p_X(u(K))$、$C_2=p_Y(u(K))$ はコンパクト Hausdorff な閉集合であり(prop-cg-weak-hausdorff の 2)、$u(K)$ は Hausdorff 空間 $C_1\times C_2$ のコンパクト集合として $C_1\times C_2$ の閉集合、したがって閉集合 $C_1\times C_2$ を通して $X\times Y$ の閉集合である。よって $X$ がコンパクト生成空間なら $X\times L$ もコンパクト生成空間である。特に $L=[0,1]$ をとると、コンパクト生成空間 $X$ の上のホモトピー $X\times[0,1]\to Y$ の連続性は、prop-cg-continuity によりコンパクト Hausdorff 部分空間ごとに確かめればよい。
$k$-空間の圏 $\mathbf{K}$ での直積は、直積位相を $k$ 化したものである。

$k$-空間の圏の直積

$X,Y$ を $k$-空間とし、$X\times_kY:=k(X\times Y)$ とおく。射影 $p_X\colon X\times_kY\to X$、$p_Y\colon X\times_kY\to Y$ は連続であり、任意の $k$-空間 $Z$ と連続写像 $f\colon Z\to X$、$g\colon Z\to Y$ に対し、$p_X\circ h=f$、$p_Y\circ h=g$ を満たす連続写像 $h\colon Z\to X\times_kY$ がただ 1 つ存在する。$Y$ が局所コンパクト空間なら $X\times_kY=X\times Y$ である。

$p_X$ は直積位相の射影と恒等写像 $\varepsilon\colon k(X\times Y)\to X\times Y$ の合成なので連続である。$f,g$ に対し、写像 $h=(f,g)\colon Z\to X\times Y$ は直積位相の普遍性(直積位相 の定理「直積位相の普遍性」)により連続であり、$Z$ は $k$-空間なので prop-cg-k-ification の 4 により $h\colon Z\to k(X\times Y)$ も連続である。$p_X\circ h=f$、$p_Y\circ h=g$ を満たす写像は集合の写像として $(f,g)$ に限るので一意である。最後の主張は thm-cg-product-locally-compact と prop-cg-k-ification の 2 による。$\square$

反例:$k$-空間の直積

直積位相のままでは $k$-空間の直積は $k$-空間とは限らない。$\mathbb{R}$ から点 $1/2,1/3,1/4,\dots$ を除いた部分空間 $Y_1$ と、$\mathbb{R}$ の正の整数全体を 1 点につぶした商空間 $Y_2$ は、どちらも Hausdorff な $k$-空間だが、$Y_1\times Y_2$ は $k$-空間でない(Eng89 Example 3.3.29、p. 154。この記事では証明しない)。$Y_2$ は局所コンパクトでないので、thm-cg-product-locally-compact の仮定を満たさない。$k$-空間 2 つの直積が $k$-空間でない例を最初に与えたのは Dowker(1952)である(Eng89 §3.3 の歴史の注、p. 155)。$k$-空間の圏で直積を $k(X\times Y)$ と定め直すのは、この欠点を補うためである。

写像空間と指数法則

コンパクト生成空間 $X,Y$ に対し、連続写像全体 $C(X,Y)$ に、$X$ のコンパクト Hausdorff 部分空間 $C$ と $Y$ の開集合 $U$ による $\{f\mid f(C)\subset U\}$ を準開基とする位相(コンパクト開位相で使うコンパクト集合をコンパクト Hausdorff 部分空間に限ったもの)を入れて $k$ 化した空間を $\mathrm{Map}(X,Y)$ と書く。

指数法則

Hausdorff なコンパクト生成空間 $X,Y,Z$ について、$F\mapsto\widehat F$、$\widehat F(x)(y)=F(x,y)$ は同相写像
$$ \mathrm{Map}(X\times_kY,Z)\cong\mathrm{Map}(X,\mathrm{Map}(Y,Z)) $$
を与える。

定理の出典と通常の圏との違い

この記事では thm-cg-exponential-law を証明しない。証明は Ste67 Theorem 5.6(pp. 141–142)にある。そこでは、まず集合の全単射 $C(Y\times X,Z)\cong C(X,C(Y,Z))$ が同相であることを示し(同論文 (5.7))、両辺に $k$ 化を施して結論を得ている。弱 Hausdorff なコンパクト生成空間についても同じ形の主張が May99 Chapter 5 §2(p. 41)に述べられている(同書は証明を読者に任せている)。通常の位相空間の圏では、指数法則は $Y$ が局所コンパクト Hausdorff であるという仮定のもとで述べられる(コンパクト開位相 の定理「指数法則」)。コンパクト生成空間の圏ではこの仮定が要らない。スマッシュ積と写像空間の随伴をコンパクト生成空間の圏で扱う方法は スマッシュ積 の注意「コンパクト生成空間での扱い」にある。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
$X$ が $k$-空間であること(prop-cg-continuity)ex-cg-not-k-space の空間 $X$ から離散空間 $kX$ への恒等写像コンパクト Hausdorff 部分空間(有限集合)への制限がすべて連続でも、写像が連続であること
弱 Hausdorff 性(prop-cg-weak-hausdorff の 2)ex-cg-two-limits の空間への試験写像 $\mathbb{N}^+\to X$試験写像の像が閉集合であること
因子 $L$ の局所コンパクト性(thm-cg-product-locally-compact)rem-cg-product-counterexample の $Y_1\times Y_2$直積位相の直積が $k$-空間であること
Hausdorff 性(prop-cg-examples の 3 で使う)ex-cg-two-limits の空間(第1可算)第1可算空間がコンパクト生成空間であること($k$-空間ではあるが弱 Hausdorff でない)

1 行目について:ex-cg-not-k-space の空間では $kX$ は離散空間である(すべての部分集合が $k$-閉集合)。恒等写像 $X\to kX$ の有限集合への制限は、有限集合の部分空間位相が離散(Hausdorff な有限空間)なので連続だが、恒等写像自体は $\{0\}$ の逆像が開でないので連続でない。

補足

  • 歴史:$k$-空間の概念は Gale(1950)の論文で導入され、そこでは Hurewicz に帰されている。$kX$ の構成は D. E. Cohen(1954)、連続性の判定(prop-cg-continuity の Hausdorff の場合)は Kelley(1955)による(Eng89 §3.3 の歴史の注、p. 155)。
  • CW 複体の直積:2 つの CW 複体の直積に直積の胞体を入れた CW 構造の位相は、一般には直積位相より細かく、ちょうど $k(X\times Y)$ になる。一方が局所コンパクトであるか、両方の胞体が可算個なら直積位相と一致する(Hat02 Theorem A.6、p. 524)。
  • 商との相性:$k$-空間の商空間は $k$-空間である。$p\colon X\to Y$ を商写像、$X$ を $k$-空間とし、$A\subset Y$ を $k$-閉集合とすると、$X$ への試験写像 $v$ について $p\circ v$ は $Y$ への試験写像なので $v^{-1}(p^{-1}(A))$ は閉であり、$p^{-1}(A)$ は閉、したがって $A$ は閉である。商空間の弱 Hausdorff 性は自動的には保たれない。たとえば $\mathbb{R}\sqcup\mathbb{R}$ で $0$ 以外の対応する点を同一視した商空間(原点を 2 つもつ直線)では、一方の原点を通る $[-1,1]$ の像は他方の原点を閉包に含むので閉でない。局所コンパクト空間との直積が商写像を保つことは 局所コンパクト空間 の命題「局所コンパクト因子と商写像」にある。

関連項目

参考文献

[1]
J. P. May, A Concise Course in Algebraic Topology, Chicago Lectures in Mathematics, University of Chicago Press, 1999, Chapter 5(§1 定義と例、p. 39;§2 指数法則の命題(証明なし)、p. 41)
[2]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, Appendix(CW 複体のコンパクト生成性、p. 523;Theorem A.6、p. 524;Proposition A.15、p. 531)
[3]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, 1989, §3.3(k-空間の定義と Theorem 3.3.18、p. 152;Example 3.3.29、p. 154;歴史の注、p. 155)

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