位相的K理論(topological K-theory)とは、コンパクト Hausdorff 空間 $X$ 上の複素ベクトル束の同型類に直和で引き算を許した Grothendieck 群 $K(X)$ と、懸垂から作る $K^{-n}(X)$ を調べる理論である。補束の存在により $K(X)$ での等式は自明束を足した後の同型と同じになり、テンソル積で環になる。Bott の周期性定理により $\widetilde K(S^{2n})\cong\mathbb{Z}$、$\widetilde K(S^{2n+1})=0$ で、$K^*$ は次元公理以外の公理を満たす周期 $2$ の一般コホモロジー論になる。Adams 演算による Hopf 不変量 1 の問題の解決や、Atiyah–Singer の指数定理の位相的な側に使われる。
前提知識: ベクトル束, Grothendieck群, ベクトル束の直和・テンソル積, 部分束・商束・双対束
位相的K理論(topological K-theory)は、コンパクト空間 $X$ の上の複素ベクトル束の同型類に、直和を足し算として「引き算」を許して作った環 $K(X)$ を調べる理論である。ベクトル束は直和について打ち消しが効かない($E\oplus G\cong F\oplus G$ でも $E\cong F$ とは限らない)が、$K(X)$ ではその違いを「自明束を足せば同型になる」という安定同型の範囲で忘れる。その代わりに $K$ は計算しやすい関手になり、懸垂と組み合わせると、特異コホモロジーの次元公理以外の公理を満たす一般コホモロジー論になる。中心にある Bott の周期性定理は、球面の $K$ 群を $\widetilde K(S^{2n})\cong\mathbb{Z}$、$\widetilde K(S^{2n+1})=0$ と決定する。
位相的 K 理論は、Hopf 不変量 1 の写像の非存在(実数体の上の割り算のできる有限次元代数は次元 $1,2,4,8$ に限ること)や球面上のベクトル場の個数の決定に使われ、楕円型作用素の記号の類を通じて Atiyah–Singerの指数定理 の位相的な側を与える。環の代数的 K 群との関係は 代数的K理論 の記事が扱う。
この記事では、$X$ はコンパクト Hausdorff 空間とし、ベクトル束は特に断らなければ複素ベクトル束とする。ベクトル束 の記事の定義では階数は一定だが、ここでは階数が局所定数であるもの、すなわち $X$ を有限個の開かつ閉な集合に分け、それぞれの上で階数一定のベクトル束を並べたものも許す(コンパクト性により分け方は有限個で済む)。直和・テンソル積・引き戻しは各片の上で定める。$\varepsilon^n:=X\times\mathbb{C}^n$ を自明束と書く。
ベクトル束の直和・テンソル積 の命題「標準同型」により、同型類の集合 $\operatorname{Vect}(X)$ は $\oplus$ を加法、$\otimes$ を乗法、$\varepsilon^0$ を零元、$\varepsilon^1$ を単位元とする可換半環である。
可換モノイド $(\operatorname{Vect}(X),\oplus)$ の Grothendieck 群(Grothendieck群 の定義「可換モノイドのGrothendieck群」)を $K(X)$(または $K^0(X)$)と書き、$X$ の K 群という。束 $E$ の類を $[E]$ と書くと、$K(X)$ の元は $[E]-[F]$ の形に書け、$[E]-[F]=[E']-[F']$ となるのは、ある束 $G$ について $E\oplus F'\oplus G\cong E'\oplus F\oplus G$ となるときである。テンソル積は $K(X)$ に可換環の構造 $([E]-[F])([E']-[F'])=[E\otimes E']+[F\otimes F']-[E\otimes F']-[F\otimes E']$ を誘導する。
連続写像 $f\colon Y\to X$ は引き戻しにより環準同型 $f^*\colon K(X)\to K(Y)$ を与える(Grothendieck群 の定理「Grothendieck群の普遍性」)。$X$ が 1 点なら、ベクトル束は次元で決まるベクトル空間なので $\operatorname{Vect}(\mathrm{pt})=\mathbb{N}$、$K(\mathrm{pt})=\mathbb{Z}$ である。$X$ に基点 $x_0$ をとり、$i\colon\{x_0\}\to X$ を包含とするとき、$\widetilde K(X):=\ker(i^*\colon K(X)\to\mathbb{Z})$ を簡約 K 群という。定値写像 $c\colon X\to\{x_0\}$ について $i^*c^*=\mathrm{id}$ なので、$K(X)=\widetilde K(X)\oplus\mathbb{Z}$ である。実ベクトル束で同じ構成をしたものを $KO(X)$、$\widetilde{KO}(X)$ と書く(Hus94 第 9 章 Definition 3.4・3.5、pp. 116–117)。
$f_0,f_1\colon Y\to X$ がホモトピックなら、ベクトル束 の定理「ホモトピー不変性と分類」の 1(コンパクト Hausdorff 空間はパラコンパクト Hausdorff)を各片に当てて $f_0^*E\cong f_1^*E$ なので、$f_0^*=f_1^*$ である。とくに可縮なコンパクト空間 $X$ では $\widetilde K(X)=0$ である。
$X$ をコンパクト Hausdorff 空間、$E$ を $X$ 上のベクトル束とする。このとき $X$ 上のベクトル束 $E'$ と $N\ge0$ で $E\oplus E'\cong\varepsilon^N$ となるものが存在する。
証明は Serre–Swanの定理 の定理「Serre–Swan の定理」の 1 にある。筋は次のとおりである。コンパクト性により $E$ を自明化する有限個の開集合 $U_1,\dots,U_m$($E|_{U_i}$ の階数 $r_i$)と従属する 1 の分割 $(\rho_i)$ をとり、局所自明化の第 2 成分に $\rho_i$ を掛けて並べると、ファイバーごとに単射な束写像 $E\to\varepsilon^N$($N=\sum_ir_i$)が得られる。その像は部分束で $E$ と同型なので、$\varepsilon^N$ の標準 Hermite 計量に関する直交補を $E'$ とすればよい(部分束・商束・双対束 の定理「直交補束と商束」)。同じ主張は Hus94 第 3 章 Proposition 5.8(p. 32、有限型の束の特徴づけ)と Swa62 Corollary 5(p. 268)にある。
$X$ をコンパクト Hausdorff 空間とする。
1:$[E]-[F]$ に対し thm-ktop-complement で $F\oplus F'\cong\varepsilon^N$ をとると $[E]-[F]=[E\oplus F']-[F\oplus F']=[E\oplus F']-[\varepsilon^N]$ である。
2:$[E]=[F]$ なら、Grothendieck 群の定義によりある $G$ で $E\oplus G\cong F\oplus G$ である。$G\oplus G'\cong\varepsilon^n$ となる $G'$ を足すと $E\oplus\varepsilon^n\cong F\oplus\varepsilon^n$ を得る。逆は $[\varepsilon^n]$ を引けばよい。
3:連結なら階数は一定で、$[E]-[\varepsilon^{\operatorname{rank}E}]$ の基点での値は $0$ なので $\widetilde K(X)$ に入る。1 により $\widetilde K(X)$ の元は $[E]-[\varepsilon^N]$ と書け、基点での値が $0$ なので $\operatorname{rank}E=N$ であり、全射である。$[E]-[\varepsilon^r]=[F]-[\varepsilon^s]$ なら $[E\oplus\varepsilon^s]=[F\oplus\varepsilon^r]$ なので、2 により $E$ と $F$ は安定同型である。逆も 2 から従う。$\square$
3 は Hus94 第 9 章 Theorem 3.8(p. 117)の形である。安定同型は同型より弱い(ex-ktop-table の 3 行目)。
$X$ 上の束 $E$ の連続な切断の全体 $\Gamma(E)$ は、連続関数環 $C(X)$ 上の加群である。thm-ktop-complement により $\Gamma(E)\oplus\Gamma(E')\cong\Gamma(\varepsilon^N)=C(X)^N$ なので、$\Gamma(E)$ は有限生成射影加群(射影加群)である。逆に $C(X)$ 上の有限生成射影加群はすべてこの形で、$E\mapsto\Gamma(E)$ は束の同型類と加群の同型類の一対一対応を与える(Serre–Swanの定理 の定理「Serre–Swan の定理」の 2。Swa62 Theorem 1・Corollary 4・Theorem 2、pp. 267–268)。したがって $K(X)$ は環 $C(X)$ の $K_0$(代数的K理論 の定義「$K_0$」)と同型である。
$\mathrm{GL}_r(\mathbb{C})$ は弧状連結である。したがって $S^1$ 上の複素ベクトル束はすべて自明であり、$\widetilde K(S^1)=0$ である。
$A,B\in\mathrm{GL}_r(\mathbb{C})$ に対し $P(z):=\det((1-z)A+zB)$ は $z$ の多項式で $P(0)=\det A\ne0$ なので、零点は有限個である。$\mathbb{C}$ の中で零点を避けて $0$ から $1$ へ行く道 $z(t)$ をとれば、$(1-z(t))A+z(t)B$ は $A$ と $B$ を結ぶ $\mathrm{GL}_r(\mathbb{C})$ の道である。
$E$ を $S^1$ 上の階数 $r$ の束とし、$q\colon[0,1]\to S^1$、$q(t)=e^{2\pi it}$ とおく。$q^*E$ は可縮な底空間の上の束なので自明であり(ベクトル束 の定理「ホモトピー不変性と分類」の 1)、連続な写像 $f_1,\dots,f_r\colon[0,1]\to E$ で、各 $t$ で $f_1(t),\dots,f_r(t)$ が $E_{q(t)}$ の基底になるものがある。$f(1)$ と $f(0)$ はともに $E_{q(0)}$ の基底なので、$f_j(1)=\sum_if_i(0)A_{ij}$ となる $A\in\mathrm{GL}_r(\mathbb{C})$ がある。$I$ から $A^{-1}$ への道 $B(t)$ をとり、$f'_j(t):=\sum_if_i(t)B(t)_{ij}$ とおくと、$f'$ も各点で基底であり、$f'(1)=f(0)AA^{-1}=f(0)=f'(0)$ である。$q$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全射なので商写像であり、$f'$ は $S^1$ 上の連続な切断の組、すなわち大域的な枠を与える。ベクトル束 の命題「自明性の判定」により $E$ は自明である。よって $\operatorname{Vect}(S^1)=\mathbb{N}$、$K(S^1)=\mathbb{Z}$、$\widetilde K(S^1)=0$ である。$\square$
実ベクトル束では事情が異なる。$\mathrm{GL}_r(\mathbb{R})$ は行列式の符号で 2 つの成分に分かれ、$S^1$ 上の Möbius 束 $M$ は $\varepsilon^k$ を足しても自明にならない(ベクトル束の直和・テンソル積 の命題「Möbius 束は安定的にも自明でない」)。cor-ktop-stable の 3 により $[M]-1\ne0$ であり、実際 $\widetilde{KO}(S^1)\cong\mathbb{Z}/2$ である(Hus94 第 9 章 Corollary 5.2、p. 121)。
$\mathbb{C}\mathrm{P}^1=S^2$ の上では、トートロジー直線束 $\gamma=\{(\ell,v)\mid v\in\ell\}\subset\varepsilon^2$(Chern類 の定義「複素射影空間の超平面類」の $\gamma_1=\mathcal{O}(-1)$)が基本の束である。
$\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ 上で $\gamma\oplus\gamma\cong(\gamma\otimes\gamma)\oplus\varepsilon^1$ である。したがって $x:=[\gamma]-1\in\widetilde K(\mathbb{C}\mathrm{P}^1)$ について $x^2=0$ であり、しかも $x\ne0$ である。
$\varepsilon^2$ に標準 Hermite 内積を入れると、$\gamma$ は部分束で、部分束・商束・双対束 の定理「直交補束と商束」により $\varepsilon^2\cong\gamma\oplus\gamma^\perp$ であり、$\gamma^\perp$ は直線束である。両辺の行列式束をとると、ベクトル束の直和・テンソル積 の命題「直和の行列式束」により
$$
\varepsilon^1\cong\det\varepsilon^2\cong\det(\gamma\oplus\gamma^\perp)\cong\gamma\otimes\gamma^\perp
$$
である。同じ記事の命題「標準同型」の 2・3・5 により
$$
\gamma\oplus\gamma\cong\gamma\otimes\varepsilon^2\cong\gamma\otimes(\gamma\oplus\gamma^\perp)\cong(\gamma\otimes\gamma)\oplus(\gamma\otimes\gamma^\perp)\cong(\gamma\otimes\gamma)\oplus\varepsilon^1
$$
である。$K(\mathbb{C}\mathrm{P}^1)$ に移すと $2[\gamma]=[\gamma]^2+1$、すなわち $x^2=[\gamma]^2-2[\gamma]+1=0$ である。
$x\ne0$ を示す。第 1 Chern 類は Whitney の和公式により $c_1(E\oplus F)=c_1(E)+c_1(F)$ を満たし、自明束では $0$ である(1 点からの引き戻し)。よって $E\mapsto c_1(E)$ はモノイド準同型 $\operatorname{Vect}(\mathbb{C}\mathrm{P}^1)\to H^2(\mathbb{C}\mathrm{P}^1;\mathbb{Z})$ で、Grothendieck群 の定理「Grothendieck群の普遍性」により群準同型 $c_1\colon K(\mathbb{C}\mathrm{P}^1)\to H^2(\mathbb{C}\mathrm{P}^1;\mathbb{Z})$ に延びる。$\gamma$ は $\mathcal{O}(1)$ の双対なので、Chern類 の定義「Chern類の公理的定義」の正規化と系「直線束の全Chern類と双対」により $c_1(x)=c_1(\gamma)=-h\ne0$($h$ は超平面類)である。$\square$
$\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ は 2 次元球面と同相なので、$x$ は $\widetilde K(S^2)$ の元を与える。次の Bott の周期性定理によれば、$x$ は $\widetilde K(S^2)$ の生成元である。
$X$ をコンパクト Hausdorff 空間とする。$a\otimes b\mapsto\mathrm{pr}_1^*a\cdot\mathrm{pr}_2^*b$ で定まる準同型
$$
K(X)\otimes K(S^2)\to K(X\times S^2)
$$
は同型であり、$K(S^2)$ は $1$ と $[\gamma]$ を基底とする自由アーベル群である。帰結として、すべての $n\ge0$ について
$$
\widetilde K(S^{2n})\cong\mathbb{Z},\qquad\widetilde K(S^{2n+1})=0
$$
であり、$n\ge1$ のとき $\widetilde K(S^{2n})$ の生成元 $\beta_n$ は $\beta_n^2=0$ を満たす。
この記事では証明しない(Hus94 第 11 章 Theorem 1.2、p. 141 と Theorem 5.5、p. 150)。同書は基底に標準直線束の類を使うが、$\gamma\otimes\gamma^\perp\cong\varepsilon^1$(prf-ktop-cp1)から $\gamma^\perp$ は $\gamma$ の双対束と同型で $[\gamma^\perp]=2-[\gamma]$ なので、どちらの直線束を使っても同じ基底を張る。$K(S^2)$ の環構造は、thm-ktop-cp1 により $K(S^2)=\mathbb{Z}[x]/(x^2)$ である。実の場合は周期が $8$ になり、$KO(X)\otimes KO(S^8)\to KO(X\times S^8)$ が同型である(同 Theorem 1.2)。
基点つきコンパクト空間 $X$ の簡約懸垂を $\Sigma X$ とし、$n\ge0$ について
$$
\widetilde K^{-n}(X):=\widetilde K(\Sigma^nX),\qquad K^{-n}(X):=\widetilde K^{-n}(X_+)
$$
とおく($X_+$ は $X$ に離れた基点を付け加えた空間)。閉部分空間 $A\subset X$ については $K(X,A):=\widetilde K(X/A)$ と定める。$(X,A)$ が有限 CW 複体とその部分複体の対なら、
$$
\widetilde K(X/A)\to\widetilde K(X)\to\widetilde K(A)
$$
は完全であり、懸垂を使って左へ延ばした長完全列が得られる(Hus94 第 10 章 Proposition 2.1、p. 125、Theorem 2.8、p. 127)。Bott の周期性定理により、$x=[\gamma]-1$ との積 $\widetilde K(X)\to\widetilde K(\Sigma^2X)$ は同型である(Hus94 第 11 章 Theorem 1.3、p. 141)。そこで $K^{n}:=K^{n-2}$ によりすべての整数 $n$ に $K^n$ を延ばすと、周期 $2$ の理論 $K^*$ が得られる。こうして $K^*$ は、特異コホモロジーの Eilenberg–Steenrod の公理(特異コホモロジー)のうち次元公理以外を満たし、1 点の値は $K^0(\mathrm{pt})=\mathbb{Z}$、$K^{-1}(\mathrm{pt})=\widetilde K(S^1)=0$ である(Fre21 §2.4、p. 9)。この意味で K 理論は一般コホモロジー論の代表例であり、Brownの表現可能性定理 の意味で表現される。実際、有限連結 CW 複体 $X$ について
$$
\widetilde K(X)\cong[X,BU],\qquad K(X)\cong[X,\mathbb{Z}\times BU]
$$
である。ここで $BU=\bigcup_n\mathrm{Gr}_n(\mathbb{C}^{2n})$ であり、対応は分類写像による引き戻しで与えられる(Hus94 第 9 章 Theorem 4.5・Remark 4.6、pp. 119–120。$\mathrm{Gr}_n$ の上の普遍束は Stiefel多様体 の記事の系「分類空間の模型」)。周期性はスペクトルの言葉では スペクトル(ホモトピー論) の例「K 理論のスペクトル」の形になる。
Chern 指標 Chern類 の注意「Chern指標・Todd類の性質とRiemann–Roch」のとおり、Chern 指標 $\operatorname{ch}$ は直和を和に、テンソル積を積に送るので、環準同型 $\operatorname{ch}\colon K(X)\to H^{\mathrm{even}}(X;\mathbb{Q})$ に延びる。球面 $S^{2n}$($n\ge1$)では $\operatorname{ch}$ は $\widetilde K(S^{2n})$ を $H^{2n}(S^{2n};\mathbb{Z})\subset H^{2n}(S^{2n};\mathbb{Q})$ の上へ同型に写す(Hus94 第 20 章 Theorem 9.6、p. 308)。$S^2$ では $\operatorname{ch}(x)=c_1(\gamma)$ であり、thm-ktop-cp1 の $x\ne0$ はこの $n=1$ の場合にあたる。
λ 環と Adams 演算 外冪 $\lambda^k[E]:=[\bigwedge^kE]$ により $K(X)$ は λ 環になり(λ環 の定理「ベクトル束の $K$ 群は $\lambda$ 環」)、そこから Adams 演算 $\psi^k$ が定まる(同記事の定義「Adams演算の定義」)。
$\widetilde K(S^2)$ の元 $x=[\gamma]-1$ について $\psi^k(x)=kx$($k\ge1$)である。
直線束 $\gamma$ の類は線元であり(λ環 の例「ベクトル束の $K$ 群」)、$1=[\varepsilon^1]$ も線元である。λ環 の命題「Adams演算の基本性質」の 2・3 により $\psi^k$ は加法的で、線元 $\ell$ について $\psi^k(\ell)=\ell^k$ なので、$\psi^k(x)=[\gamma]^k-1=(1+x)^k-1$ である。thm-ktop-cp1 の $x^2=0$ により二項展開の 2 次以上の項は消え、$\psi^k(x)=kx$ である。$\square$
一般に $\psi^k$ は $\widetilde K(S^{2n})$ の上で $k^n$ 倍として働く(Hus94 第 13 章 Theorem 11.2、p. 188)。この $k^n$ という係数と $\psi^2\psi^3=\psi^3\psi^2$ のような関係式を組み合わせると、Adams と Atiyah による次の定理が得られる:$S^{2m-1}\to S^m$ で Hopf 不変量が $1$ の写像があるのは $m=2,4,8$ のときに限る(Hus94 第 15 章 Theorem 4.3、p. 215。この記事では証明しない)。系として、正の次元の球面で H 空間の構造をもつのは $S^1,S^3,S^7$ に限り、$\mathbb{R}^n$ に零因子のない双線形な積があるのは $n=1,2,4,8$ に限る(同 Corollary 4.4・4.5、pp. 215–216)。後者の 4 つの次元は $\mathbb{R}$、$\mathbb{C}$、四元数、八元数で実現される。
指数定理 閉多様体 $X$ 上の楕円型作用素の記号は、余接束の単位円板束を単位球面束で割った空間の簡約 K 群 $K^0(T^*X,T^*X\setminus0)$ の元を定める。指数をこの元の関数として位相的に書く公式が Atiyah–Singerの指数定理 であり、その証明の一方の道筋は K 理論の Thom 同型と Bott の周期性に基づく。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 係数体が $\mathbb{C}$(prop-ktop-circle) | $S^1$ 上の実 Möbius 束 $M$ | $S^1$ 上のベクトル束は自明($\widetilde K(S^1)=0$) |
| 底空間がコンパクト(thm-ktop-complement) | 離散空間 $\mathbb{N}$ 上の、点 $n$ で階数 $n$ の束 | 補束 $E'$ が存在する |
| 自明束を足すこと(cor-ktop-stable の 2) | $S^2$ 上の実束 $TS^2$ と $\varepsilon^2$ | $[E]=[F]$ なら $E\cong F$ |
1 行目:上で見たとおり $M\oplus\varepsilon^k$ は自明でないので、$M$ は自明でなく、$\widetilde{KO}(S^1)$ の中で $[M]-1\ne0$ である。
2 行目:$E\oplus E'\cong\varepsilon^N$ なら、点 $n$ で階数を比べて $n\le N$ がすべての $n$ で成り立つことになり、矛盾する。この束は $\mathbb{N}$ の各点の上で自明であり、局所自明性は満たしている。
3 行目:ベクトル束 の命題「球面の接束は安定的に自明」により $TS^2\oplus\varepsilon^1\cong\varepsilon^3=\varepsilon^2\oplus\varepsilon^1$ なので、$KO(S^2)$ で $[TS^2]=[\varepsilon^2]$ である。一方、毛玉の定理 により $TS^2$ は零点のない切断をもたないので自明でない。
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