Blochの予想(Bloch's conjecture)とは、複素数体上の非特異射影曲面 $X$ で幾何種数 $p_g$ が $0$ のものについて、次数 $0$ の $0$ サイクルの有理同値類の群 $A_0(X)_0$ から Albanese 多様体への Albanese 写像の核 $T(X)$ が $0$ になる、という予想である。Albanese 写像はいつも全射なので、予想は $A_0(X)_0\cong\operatorname{Alb}(X)$ と同値である。$p_g>0$ なら $T(X)\neq0$ という Mumford の定理の逆向きにあたり、小平次元が $2$ より小さい曲面では Bloch–Kas–Lieberman が証明した。有理曲面や $C\times\mathbb P^1$ では直接確かめられる。
前提知識: 有理同値, Albanese多様体, Jacobi多様体, ブローアップ, Hodge数
Bloch の予想(Bloch's conjecture)は、複素数体上の非特異射影曲面 $X$ で幾何種数 $p_g(X)=\dim H^0(X,\Omega^2_X)$ が $0$ のものについて、次数 $0$ の $0$ サイクルの有理同値類の群 $A_0(X)_0$ が Albanese 写像によって Albanese 多様体 $\operatorname{Alb}(X)$ と同型になる、という予想である。曲線では Abel–Jacobi の定理により $A_0(X)_0$ は Jacobi 多様体と同型であり、$0$ サイクルは有限次元の多様体で記述される。曲面では Mumford が、$p_g>0$ ならこの記述が破れて $A_0(X)_0$ が「無限次元」になることを示した(有理同値の注意「反例:Mumfordの定理と0サイクルの無限次元性」)。Bloch の予想はその逆、すなわち $2$ 次の正則形式がなければ $0$ サイクルは Albanese 多様体だけで記述される、と主張する。
予想は Spencer Bloch による。小平次元(小平邦彦(Kunihiko Kodaira)の名を冠した双有理不変量)が $2$ より小さい曲面(一般の型でない曲面)では Bloch–Kas–Lieberman が証明した(BKL76)。一般の型の曲面では、個々の族ごとに証明されている段階である(Voi13 の序文)。
この記事では、予想を正確に述べ、Albanese 写像が $A_0(X)_0$ の上で全射であることを証明する。次に、$0$ サイクルの有理同値類の群が点のブローアップで変わらないことを証明し、その帰結として有理曲面で予想が成り立つことを導く。さらに曲線と射影直線の積 $C\times\mathbb P^1$ で予想が成り立つことを直接確かめる。一般の場合の既知の結果は所在付きの引用にとどめる。
$X$ を $\mathbb C$ 上の連結な非特異射影曲面とする。$p_g(X):=\dim H^0(X,\Omega^2_X)$ を幾何種数、$q(X):=\dim H^0(X,\Omega^1_X)$ を不正則数という。$0$ サイクルの有理同値は Har77 Appendix A §1(p. 426)の定義で考える。すなわち、$X$ の既約曲線 $D$ の正規化 $\nu\colon D^\nu\to D\subset X$ と $D^\nu$ 上の $0$ でない有理関数 $g$ について、$0$ サイクル $\nu_*(\operatorname{div}g)$ が生成する部分群で $0$ サイクルの群 $Z_0(X)$ を割ったものが $A_0(X)$ である。ここで閉点 $P$ について $\nu_*[P]=[\nu(P)]$ である(剰余体はどれも $\mathbb C$)。次数 $\deg\colon A_0(X)\to\mathbb Z$ は well-defined であり(同所)、その核を $A_0(X)_0$ と書く。
Albanese多様体の命題「Albanese 写像は有理同値を保つ」により、Albanese 写像を $0$ サイクルに線形に延ばしたものは準同型
$$
\mathrm{alb}_X\colon A_0(X)_0\longrightarrow\operatorname{Alb}(X),\qquad\sum_in_i[x_i]\longmapsto\sum_in_i\,\mathrm{alb}(x_i)
$$
を誘導し、これは基点の取り方によらない。その核を $T(X):=\operatorname{Ker}\mathrm{alb}_X$ と書く。$\operatorname{Alb}(X)$ は $q(X)$ 次元の複素トーラスである。
$X$ を $\mathbb C$ 上の連結な非特異射影曲面とする。$p_g(X)=0$ ならば $T(X)=0$ である。
この形は BKL76 の冒頭(p. 135)による。同所は予想を Bloch の論文に帰し、$p_g\neq0$ なら $T(X)\neq0$ であることを Mumford の定理として引く。下の thm-bloch-surjective により $\mathrm{alb}_X$ はいつも全射なので、予想は「$p_g(X)=0$ なら $\mathrm{alb}_X$ は同型」と同値である。$q(X)=0$ なら $\operatorname{Alb}(X)=0$ なので、予想は「$p_g=q=0$ なら $A_0(X)\cong\mathbb Z$、すなわち $X$ のどの 2 点も有理同値」となる。
Voi13 Conjecture 0.1(p. 1)は、これを対応(相関)の言葉に広げた形を述べる:非特異射影多様体 $Y$ と $X$ の積の上の余次元 $2$ のサイクル $\Gamma$ について、$\Gamma$ が $2$ 次の正則形式に $0$ として働くなら、$\Gamma$ は Albanese 写像の核の上に $0$ として働く。$\Gamma$ を $X\times X$ の対角線にとると、$q=p_g=0$ の場合の conj-bloch-main に戻る。
$X$ を $\mathbb C$ 上の連結な非特異射影多様体とする。$\mathrm{alb}_X\colon A_0(X)_0\to\operatorname{Alb}(X)$ は全射である。
記号はAlbanese多様体の定義「Albanese トーラスと Albanese 写像」に従う:$\Omega=H^0(X,\Omega^1_X)$、$\operatorname{Alb}(X)=\Omega^\vee/\Lambda_X$、基点 $x_0$、$\mathrm{alb}(x)=\bigl(\omega\mapsto\int_{x_0}^x\omega\bigr)\bmod\Lambda_X$ である。$q=\dim\Omega=0$ なら $\operatorname{Alb}(X)=0$ で主張は明らかなので、$q\ge1$ とする。
微分の計算。$x\in X$ と接ベクトル $v\in T_xX$ について $e_{x,v}\in\Omega^\vee$ を $e_{x,v}(\omega)=\omega_x(v)$ で定める。$x$ のまわりで $x'\mapsto\int_{x_0}^{x'}\omega$ は微分が $\omega$ の正則関数なので、$\operatorname{Alb}(X)$ の接空間を $\Omega^\vee$ と同一視すると、$\mathrm{alb}$ の $x$ での微分は $v\mapsto e_{x,v}$ である。Albanese多様体の定理「Albanese トーラスの普遍性」の一意性の証明で示されたとおり、$e_{x,v}$ の全体は $\Omega^\vee$ を張る(張らなければ $0$ でない $\omega$ が開集合の上で $0$ になり、一致の定理に反する)。そこで点 $x_1,\dots,x_q$ と $v_i\in T_{x_i}X$ を、$e_{x_1,v_1},\dots,e_{x_q,v_q}$ が $\Omega^\vee$ の基底になるようにとる。
和の写像。$\sigma\colon X^q\to\operatorname{Alb}(X)$、$\sigma(y_1,\dots,y_q)=\sum_i\mathrm{alb}(y_i)$ は正則写像で、点 $(x_1,\dots,x_q)$ での微分は $(w_1,\dots,w_q)\mapsto\sum_i d\,\mathrm{alb}_{x_i}(w_i)$ である。その像は $e_{x_1,v_1},\dots,e_{x_q,v_q}$ を含むので、微分は全射である。逆関数定理(陰関数定理)により、$\sigma$ の像は点 $a:=\sigma(x_1,\dots,x_q)$ の開近傍 $W$ を含む。
部分群が全体になること。$\mathrm{alb}(x)$($x\in X$)が生成する部分群を $H\subset\operatorname{Alb}(X)$ とする。$W\subset H$ なので、$W-a$ は $0$ の開近傍で $H$ に含まれる。$H$ は $0$ の開近傍を含むので、$H$ の各元の平行移動でその元の開近傍を含み、$H$ は開部分群である。開部分群の補集合はその剰余類の和なので開であり、$H$ は閉でもある。$\operatorname{Alb}(X)$ は連結なので $H=\operatorname{Alb}(X)$ である。
結論。$\operatorname{Alb}(X)$ の任意の元は $\sum_in_i\,\mathrm{alb}(y_i)$($n_i\in\mathbb Z$)と書ける。$\mathrm{alb}(x_0)=0$ なので、これは次数 $0$ の $0$ サイクル $\sum_in_i([y_i]-[x_0])$ の $\mathrm{alb}_X$ による像である。$\square$
したがって $A_0(X)_0$ は、$\operatorname{Alb}(X)$ の上に $T(X)$ を「載せた」群であり、完全列 $0\to T(X)\to A_0(X)_0\to\operatorname{Alb}(X)\to0$ がある。Bloch の予想は、$p_g=0$ なら上の段 $T(X)$ が消えると主張する。BKL76 Proposition 1(pp. 136–137)は、どの $X$ についても $T(X)$ が可除群であることを示している(この記事では証明しない)。
この節では $k$ を代数閉体とし、曲面とは $k$ 上の非特異射影曲面のこととする。$0$ サイクルの有理同値は前節と同じく Har77 Appendix A §1 の定義で考える(剰余体はどれも $k$)。$X$ の閉点 $p$ でのブローアップを $\pi\colon\widetilde X\to X$ とし、例外曲線 $E:=\pi^{-1}(p)$ とする。$\widetilde X$ は曲面であり、$E\cong\mathbb P^1$ であり、$\pi$ は $\widetilde X\setminus E$ を $X\setminus\{p\}$ に同型に写す(Har77 V Proposition 3.1、p. 386。ブローアップ)。
上の記号で、閉点 $\tilde x$ を $\pi(\tilde x)$ に写す準同型 $\pi_*\colon Z_0(\widetilde X)\to Z_0(X)$ は同型 $\pi_*\colon A_0(\widetilde X)\to A_0(X)$ を誘導し、次数を保つ。
(i) 有理同値の生成元。生成元 $\nu_*(\operatorname{div}g)$ は、正規化 $D^\nu$(非特異射影曲線)の上の主因子を押し出したものであり、その次数は $0$ である(Har77 II Corollary 6.10)。非特異な曲線 $D$ では $\nu=\mathrm{id}$ にとれるので、$D$ の上で線形同値な因子は $X$ の上で有理同値である。特に $D\cong\mathbb P^1$ なら、$\operatorname{Pic}^0(\mathbb P^1)=0$(Har77 II Proposition 6.4)により、$D$ のどの 2 点も有理同値である。
(ii) $\pi_*$ は有理同値を保つ。$\widetilde X$ の既約曲線 $D'$ と、その正規化 $\nu'\colon D'^\nu\to\widetilde X$、$g\in k(D'^\nu)^\times$ をとる。$D'=E$ なら、$\nu'_*(\operatorname{div}g)$ の点はすべて $p$ に写り、次数は $0$ なので、$\pi_*\nu'_*(\operatorname{div}g)=0$ である。$D'\neq E$ なら、$\pi$ は $D'$ を曲線 $D:=\pi(D')$ に双有理に写し、$\pi\circ\nu'\colon D'^\nu\to D$ は正規な曲線から $D$ への有限な双有理射なので $D$ の正規化である。よって $\pi_*\nu'_*(\operatorname{div}g)=(\pi\circ\nu')_*(\operatorname{div}g)$ は $X$ の有理同値の生成元である。したがって $\pi_*$ は $A_0(\widetilde X)\to A_0(X)$ を誘導する。点の像の剰余体は $k$ なので次数を保つ。
(iii) 逆向きの写像。$e\in E$ を 1 つ固定し、$\varphi\colon Z_0(X)\to A_0(\widetilde X)$ を、$x\neq p$ には $\pi^{-1}(x)$ のただ 1 つの点の類を、$p$ には $[e]$ を対応させて線形に延ばす。(i) により $E$ のどの点 $e'$ も $[e']=[e]$ を満たすので、すべての $w\in Z_0(\widetilde X)$ について
$$
\varphi(\pi_*w)=[w]\quad\text{in}\ A_0(\widetilde X)\qquad(\ast)
$$
である(点ごとに確かめればよい)。
(iv) $\varphi$ は有理同値を保つ。$X$ の既約曲線 $D$、その正規化 $\nu\colon D^\nu\to X$、$g\in k(D^\nu)^\times$ をとる。$D':=\overline{\pi^{-1}(D\setminus\{p\})}$($D$ の強変換)は $\widetilde X$ の既約曲線で、$\pi$ は $D'$ を $D$ に双有理に写す。双有理写像 $D^\nu\dashrightarrow D'$ は、$D^\nu$ が非特異な曲線で $D'$ が射影的なので射 $\nu'\colon D^\nu\to D'\subset\widetilde X$ に延び(Har77 I Proposition 6.8)、$\pi\circ\nu'$ と $\nu$ は稠密な開集合の上で一致するので等しい。$\nu'$ は正規な曲線から $D'$ への有限な双有理射なので $D'$ の正規化である。$(\ast)$ から
$$
\varphi(\nu_*(\operatorname{div}g))=\varphi\bigl(\pi_*\nu'_*(\operatorname{div}g)\bigr)=[\nu'_*(\operatorname{div}g)]=0
$$
である。よって $\varphi$ は $\bar\varphi\colon A_0(X)\to A_0(\widetilde X)$ を誘導する。
(v) 互いに逆。$(\ast)$ から $\bar\varphi\circ\pi_*=\mathrm{id}$ である。点 $x\neq p$ では $\pi_*\varphi(x)=[x]$、$\pi_*\varphi(p)=\pi_*[e]=[p]$ なので $\pi_*\circ\bar\varphi=\mathrm{id}$ である。$\square$
曲面 $X$ が射影平面 $\mathbb P^2$ と双有理なら、$\deg\colon A_0(X)\to\mathbb Z$ は同型であり、$A_0(X)_0=0$ である。特に $k=\mathbb C$ なら $T(X)=0$ である。
曲面の双有理写像はブローアップとその逆の有限列に分解される(Har77 V Theorem 5.5、p. 412。この記事では証明しない)。thm-bloch-blowup により各段で $A_0$ は次数を保って同型なので、$A_0(X)\cong A_0(\mathbb P^2)$ が次数と両立して成り立つ。$\mathbb P^2$ の 2 点 $x,y$ は直線 $L\cong\mathbb P^1$ に乗るので、prf-bloch-blowup の (i) により有理同値である。よって $A_0(\mathbb P^2)$ は 1 点の類で生成され、その次数は $1$ なので $\deg$ は同型である。$A_0(X)_0=\operatorname{Ker}\deg=0$ であり、$T(X)\subset A_0(X)_0$ も $0$ である。$\square$
同じ議論で、双有理な曲面の間で $A_0$ は次数と両立する同型をもつ。BKL76 p. 135 は「予想は $X$ について双有理的である」と述べたうえで、一般の型でない曲面の場合を、有理曲面・線織曲面・楕円ファイブレーションをもつ曲面に分けて扱っている。
$C$ を $\mathbb C$ 上の連結な非特異射影曲線とし、$X:=C\times\mathbb P^1$ とする。このとき $p_g(X)=0$ であり、$T(X)=0$ である。
$p_g=0$。$\omega\in H^0(X,\Omega^2_X)$ をとる。点 $c\in C$ と $v\in T_cC$ について、ファイバー $\{c\}\times\mathbb P^1$ に沿ったベクトル場 $(v,0)$ との縮約 $\iota_{(v,0)}\omega$ をファイバーに制限すると、$\mathbb P^1$ の上の正則 $1$ 形式になる(局所座標 $z,w$ で $\omega=f(z,w)\,dz\wedge dw$ と書くと、それは $f(c,w)\,dw$ に $v$ の成分を掛けたものである)。$H^0(\mathbb P^1,\Omega^1)=0$(Albanese多様体の定理「Albanese トーラスの普遍性」の後の注意で、$\mathbb P^n$ について $H^{1,0}=0$)なので、これは $0$ である。よって $\omega$ は $T_cC$ と $T\mathbb P^1$ の組で $0$ になり、$2$ 次元の接空間の上の交代形式として $0$ である。
Albanese 多様体。基点を $(c_0,0)$ にとる。$u\colon C\to\operatorname{Jac}(C)=\operatorname{Alb}(C)$ を $c_0$ を基点とする Abel–Jacobi 写像とすると、$(\operatorname{Jac}(C),u\circ\mathrm{pr}_1)$ は複素トーラスへの写像について Albanese多様体の定理「Albanese トーラスの普遍性」と同じ普遍性をもつ。実際、複素トーラス $T'$ への正則写像 $\varphi\colon X\to T'$ で $\varphi(c_0,0)=0$ のものをとると、各 $c$ について $t\mapsto\varphi(c,t)$ は $\mathbb P^1$ から複素トーラスへの正則写像なので定数である($\operatorname{Alb}(\mathbb P^1)=0$。同記事の定理の後の注意)。よって $\varphi=\varphi_1\circ\mathrm{pr}_1$、$\varphi_1:=\varphi(\cdot,0)$ であり、$C$ の普遍性から $\varphi_1=\psi\circ u$ となる準同型 $\psi$ がただ 1 つある。$\mathrm{pr}_1$ は全射なので $\psi$ は $\varphi$ からも一意に決まる。普遍性で定まる対象は一意なので、$\operatorname{Alb}(X)=\operatorname{Jac}(C)$、$\mathrm{alb}=u\circ\mathrm{pr}_1$ と同一視できる。
$0$ サイクル。$i_0\colon C\to X$、$c\mapsto(c,0)$ とする。$C$ は非特異なので、$C$ 上の主因子 $\operatorname{div}g$ について $i_{0*}(\operatorname{div}g)$ は $X$ の有理同値の生成元である($i_0$ が $i_0(C)$ の正規化)。よって $i_{0*}\colon A_0(C)\to A_0(X)$ が定まり、次数を保つ。各点 $(c,t)$ は、ファイバー $\{c\}\times\mathbb P^1\cong\mathbb P^1$ の上で $(c,0)$ と有理同値なので(prf-bloch-blowup の (i))、$i_{0*}$ は全射である。
結論。$z\in T(X)$ をとる。$i_{0*}$ は次数を保って全射なので $z=i_{0*}(w)$、$w\in A_0(C)_0$ と書ける。$\mathrm{alb}=u\circ\mathrm{pr}_1$ と $\mathrm{pr}_1\circ i_0=\mathrm{id}_C$ から $0=\mathrm{alb}_X(z)=u(w)$ である。$C$ の種数が $1$ 以上なら、Jacobi多様体の定理「Abel–Jacobiの定理」により $u\colon A_0(C)_0=\operatorname{Pic}^0(C)\to\operatorname{Jac}(C)$ は同型なので $w=0$ である。種数が $0$ なら $C\cong\mathbb P^1$ で $A_0(C)_0=0$ なので $w=0$ である。よって $z=0$ である。$\square$
$q(C\times\mathbb P^1)$ は $C$ の種数に等しく、$A_0(X)_0\cong\operatorname{Jac}(C)$ は $0$ でなくてよい。予想が述べるのは $A_0(X)_0$ が $0$ になることではなく、Albanese 多様体を超える部分 $T(X)$ が消えることである。
| 曲面の種類 | 結果 | 所在 |
|---|---|---|
| $p_g>0$ | $T(X)\neq0$(Mumford の定理) | BKL76 p. 135 が引く。有理同値 |
| 小平次元 $<2$ かつ $p_g=0$ | $T(X)=0$ | BKL76 pp. 135–140 |
| Enriques曲面 | どの 2 点も有理同値 | BKL76 p. 135 |
| Catanese 曲面・Barlow 曲面(一般の型、$p_g=q=0$) | $A_0(X)\cong\mathbb Z$ | Voi13 序文(p. 1) |
ここで小平次元は、標準束 $K_X$ の冪の切断の空間 $H^0(X,K_X^{\otimes n})$ の次元の増え方で定める(BKL76 p. 135 は同じ量を、環 $\bigoplus_{n>0}H^0(X,K_X^{\otimes n})$ の $\operatorname{Proj}$ の次元として書く)。小平次元が $2$ の曲面を一般の型という。BKL76 の証明は、$-\infty$ の場合を有理曲面と $C\times\mathbb P^1$ に双有理なものに分け(cor-bloch-rational、prop-bloch-ruled にあたる)、$0$ と $1$ の場合は $X$ が楕円ファイブレーションをもつことを使って、ある $N\neq0$ で $N\cdot T(X)=0$ を示し、可除性と合わせて $T(X)=0$ を得る。この記事では証明しない。一般の型の曲面については、Voi13 の序文が、積の曲線で有理的に支配される場合や、Godeaux 曲面の一般の元などの族ごとの結果を挙げている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| conj-bloch-main の $p_g=0$ | 2 つの楕円曲線の積 $E\times E'$($p_g\neq0$) | $T(X)=0$(Mumford の定理による。この記事では証明しない) |
| thm-bloch-surjective で $0$ サイクル(点の整数係数の和)を使うこと | 種数 $2$ の曲線 $C$ と $\mathrm{alb}\colon C\to\operatorname{Jac}(C)$ | 全射性(像は $2$ 次元のトーラスの中の曲線) |
| thm-bloch-blowup の「$0$ サイクル」 | 余次元 $1$ のサイクルの群 $A^1=\operatorname{Pic}$ | 不変性($\operatorname{Pic}\widetilde X\cong\operatorname{Pic}X\oplus\mathbb Z$。Har77 V Proposition 3.2、p. 386) |
1 行目について、$E=\mathbb C/\Lambda$、$E'=\mathbb C/\Lambda'$ の座標 $z,w$ の微分は平行移動で不変なので、$dz\wedge dw$ は $E\times E'$ の上の $0$ でない正則 $2$ 形式であり、$p_g\neq0$ である。2 行目の像が全体でないのは、コンパクトな $1$ 次元の複素多様体の正則写像による像が $2$ 次元の複素トーラスの中の $1$ 次元の解析的集合(測度 $0$)だからである。3 行目では、$A^1$ にはブローアップで直和成分 $\mathbb Z$ が加わり、thm-bloch-blowup の結論が余次元 $1$ では成り立たない。
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