Segre埋め込み(Segre embedding)とは、射影空間の積 $\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ の点 $([a],[b])$ に、斉次座標の積 $a_ib_j$ をすべて並べた点 $[ab^{\mathsf T}]\in\mathbb{P}^{mn+m+n}$ を対応させる写像である。この写像は単射で、像は階数 $1$ の行列の比の全体、すなわち $2\times2$ 小行列式がすべて $0$ になる点の集合であり、その定義イデアルは小行列式で生成される素イデアルである。像は次元 $m+n$、次数 $\binom{m+n}{m}$ の射影多様体で、これにより射影多様体の積が射影多様体になる。$m=n=1$ の像は $\mathbb{P}^3$ の非特異な 2 次曲面であり、スキームの射としては閉埋め込みで、射影射の合成が射影射になることの鍵である。
射影直線の 2 点 $[a_0:a_1]$、$[b_0:b_1]$ の組に、積を並べた点 $[a_0b_0:a_0b_1:a_1b_0:a_1b_1]$ を対応させると、$\mathbb{P}^3$ の 2 次曲面 $z_{00}z_{11}=z_{01}z_{10}$ の点が得られる。Segre 埋め込み(Segre embedding)は、これを一般化して、射影空間の積 $\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ の点に、斉次座標どうしの積 $a_ib_j$ をすべて並べた点を対応させる写像である。
積を $(m+1)\times(n+1)$ 行列 $ab^{\mathsf T}$ に並べると、像は階数 $1$ の行列の比の全体であり、$2\times2$ 小行列式がすべて $0$ になる点の集合になる(thm-segre-image)。さらに、像の定義イデアルはちょうど $2\times2$ 小行列式で生成される(thm-segre-ideal)。このおかげで射影空間の積が射影多様体になり、射影多様体の積も射影多様体として扱える。次元は $m+n$、次数は $\binom{m+n}{m}$ である(cor-segre-degree)。
$k$ を代数閉体とし、射影多様体の節「古典的な射影多様体」と同じく $\mathbb{P}^m=\mathbb{P}^m(k)$ に Zariski 位相を入れる。$m,n\ge1$ とし、$\mathbb{P}^m$ の斉次座標を $x_0,\dots,x_m$、$\mathbb{P}^n$ の斉次座標を $y_0,\dots,y_n$ とする。
$$
N:=(m+1)(n+1)-1=mn+m+n
$$
とおき、$\mathbb{P}^N$ の斉次座標を $z_{ij}$($0\le i\le m$、$0\le j\le n$)と書く。$\mathbb{P}^N$ の点 $[z_{ij}]$ を、$(m+1)\times(n+1)$ 行列 $Z=(z_{ij})$ の $0$ でない定数倍を同一視したもの $[Z]$ と思う。
写像
$$
\sigma_{m,n}\colon\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n\to\mathbb{P}^N,\qquad([a],[b])\mapsto[(a_ib_j)_{i,j}]=[ab^{\mathsf T}]
$$
を Segre 埋め込みという。ここで $a=(a_0,\dots,a_m)^{\mathsf T}$、$b=(b_0,\dots,b_n)^{\mathsf T}$ は列ベクトルである。$k$ 代数の準同型
$$
\theta\colon k[z_{ij}\mid 0\le i\le m,\ 0\le j\le n]\to k[x_0,\dots,x_m,y_0,\dots,y_n],\qquad z_{ij}\mapsto x_iy_j
$$
の核を $\mathfrak{b}_{m,n}$ と書く。像 $\Sigma_{m,n}:=\sigma_{m,n}(\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n)$ を Segre 多様体という。
$\sigma_{m,n}$ は定義できる。$a\ne0$、$b\ne0$ なら $a_i\ne0$、$b_j\ne0$ となる $i,j$ があり、$a_ib_j\ne0$ なので値は $\mathbb{P}^N$ の点である。また $\lambda,\mu\in k^\times$ について $(\lambda a)(\mu b)^{\mathsf T}=\lambda\mu\,ab^{\mathsf T}$ なので、値は代表のとり方によらない。
$2\times2$ 小行列式
$$
\Delta_{ij,i'j'}:=z_{ij}z_{i'j'}-z_{ij'}z_{i'j}\qquad(0\le i< i'\le m,\ 0\le j< j'\le n)
$$
が生成するイデアルを $I_2$ と書く。$\theta(z_{ij}z_{i'j'})=x_iy_jx_{i'}y_{j'}=\theta(z_{ij'}z_{i'j})$ なので $I_2\subset\mathfrak{b}_{m,n}$ である。
$\sigma_{m,n}$ は単射であり、
$$
\Sigma_{m,n}=\{[Z]\in\mathbb{P}^N\mid\operatorname{rank}Z=1\}=V_+(I_2)
$$
が成り立つ。さらに $[Z]\in\Sigma_{m,n}$ で $z_{ij}\ne0$ なら、$[Z]=\sigma_{m,n}([a],[b])$ となる $[a]$ は $Z$ の第 $j$ 列、$[b]$ は $Z$ の第 $i$ 行で与えられる。
像は階数 1:$a,b\ne0$ なら $ab^{\mathsf T}$ の第 $j$ 列は $b_ja$ で、すべて $a$ の倍数であり、$0$ でない列がある。よって $\operatorname{rank}ab^{\mathsf T}=1$ である。
階数 1 なら像に入る:$\operatorname{rank}Z=1$ とし、$z_{ij}\ne0$ となる $(i,j)$ をとる。$Z$ の列空間は $1$ 次元で、第 $j$ 列 $c:=(z_{0j},\dots,z_{mj})^{\mathsf T}\ne0$ が張る。よって第 $l$ 列は $c$ の倍数 $\beta_lc$ と書け、第 $i$ 成分を比べると $z_{il}=\beta_lz_{ij}$ である。$b:=(z_{i0},\dots,z_{in})^{\mathsf T}$(第 $i$ 行)とおくと $\beta_l=z_{il}/z_{ij}$ なので
$$
Z=\frac{1}{z_{ij}}\,c\,b^{\mathsf T}
$$
であり、$[Z]=\sigma_{m,n}([c],[b])$ となる。$c$ の第 $i$ 成分と $b$ の第 $j$ 成分は $z_{ij}\ne0$ なので、$c,b\ne0$ である。
小行列式:$0$ でない行列の階数が $1$ であることは、階数が $2$ 以上でないこと、すなわち $2\times2$ 小行列式がすべて $0$ であることと同値である。$[Z]$ は $Z\ne0$ を表すので、$\operatorname{rank}Z=1$ と $[Z]\in V_+(I_2)$ は同値である。
単射性:$\sigma_{m,n}([a],[b])=\sigma_{m,n}([a'],[b'])$ とすると、$ab^{\mathsf T}=\lambda a'b'^{\mathsf T}$($\lambda\ne0$)である。両辺の列空間を比べると $ka=ka'$、行空間を比べると $kb^{\mathsf T}=kb'^{\mathsf T}$ なので、$[a]=[a']$、$[b]=[b']$ である。最後の主張は上の「階数 1 なら像に入る」の構成そのものである。$\square$
この証明が示すように、像の点 $[Z]$ から元の点の組を取り出すには、$0$ でない成分を含む列と行を読めばよい。根号を使わないので、標数によらない。
thm-segre-image は像を集合として決めた。この節の定理(thm-segre-ideal)は、像の上で消える斉次多項式がすべて $2\times2$ 小行列式から生じることを述べる。そのために、単項式の「行の添字」と「列の添字」を分けて数える。$z$ の単項式 $M=z_{i_1j_1}z_{i_2j_2}\cdots z_{i_ej_e}$ に対し、行の添字の多重集合 $R(M):=\{i_1,\dots,i_e\}$ と列の添字の多重集合 $C(M):=\{j_1,\dots,j_e\}$ を考える。$\theta(M)=x_{i_1}\cdots x_{i_e}\,y_{j_1}\cdots y_{j_e}$ であり、この単項式は組 $(R(M),C(M))$ を決め、逆に組から決まる。
$z$ の単項式 $M$、$M'$ が $R(M)=R(M')$、$C(M)=C(M')$ を満たせば、$M\equiv M'\pmod{I_2}$ である。
因子の順序を並べ替えて、$M=\prod_{s=1}^ez_{i_sj_s}$、$M'=\prod_{s=1}^ez_{i_sj'_s}$ と行の添字の列 $(i_1,\dots,i_e)$ を共通にできる。$C(M)=C(M')$ なので、$(j'_1,\dots,j'_e)$ は $(j_1,\dots,j_e)$ を置換 $\pi$ で並べ替えたもの $j'_s=j_{\pi(s)}$ である。置換は互換の積なので、$\pi$ が互換 $(s\ t)$ の場合に示せばよい。このとき $M$ と $M'$ は因子 $z_{i_sj_s}z_{i_tj_t}$ と $z_{i_sj_t}z_{i_tj_s}$ だけが異なり、残りの因子の積を $P$ とすると
$$
M-M'=P\,(z_{i_sj_s}z_{i_tj_t}-z_{i_sj_t}z_{i_tj_s})
$$
である。括弧の中は、$i_s=i_t$ または $j_s=j_t$ なら $0$ である。そうでなければ、$i:=\min(i_s,i_t)$、$i':=\max(i_s,i_t)$、$j:=\min(j_s,j_t)$、$j':=\max(j_s,j_t)$ とおくと $\Delta_{ij,i'j'}$ か $-\Delta_{ij,i'j'}$ に等しい。どちらの場合も $M-M'\in I_2$ である。$\square$
$\mathfrak{b}_{m,n}=I_2$ である。$\mathfrak{b}_{m,n}$ は斉次素イデアルで、無関係イデアル $(z_{ij})_{i,j}$ を含まない。したがって $\Sigma_{m,n}=V_+(\mathfrak{b}_{m,n})$ は $\mathbb{P}^N$ の射影多様体であり、その斉次イデアルは $I_2$ である。
$\mathfrak{b}_{m,n}\subset I_2$:$f\in\mathfrak{b}_{m,n}$ を単項式の一次結合 $f=\sum_Mc_MM$ に書く。組 $\tau=(R,C)$ ごとに、$(R(M),C(M))=\tau$ となる単項式 $M$ を 1 つ選んで $M_\tau$ とする。lem-segre-swap により
$$
f\equiv\sum_\tau\Bigl(\sum_{(R(M),C(M))=\tau}c_M\Bigr)M_\tau\pmod{I_2}
$$
である。$\theta$ を施すと $0=\theta(f)=\sum_\tau\bigl(\sum c_M\bigr)\theta(M_\tau)$ で、$\theta(M_\tau)$ は組 $\tau$ ごとに異なる単項式なので、各係数 $\sum c_M$ は $0$ である。よって $f\in I_2$ である。逆の包含は定義の直後に見た。
斉次素イデアル:$\theta$ は $z$ の次数 $e$ の斉次多項式を $x,y$ の双次数 $(e,e)$ の多項式に写す。$g\in\mathfrak{b}_{m,n}$ を斉次成分 $g=\sum_eg_e$ に分けると、$\theta(g_e)$ は全次数 $2e$ の成分なので、$\theta(g)=0$ から各 $\theta(g_e)=0$ が従う。よって $\mathfrak{b}_{m,n}$ は斉次である。$k[z]/\mathfrak{b}_{m,n}$ は整域 $k[x,y]$ の部分環と同型なので整域であり、$\mathfrak{b}_{m,n}$ は素イデアルである。$\theta(z_{00})=x_0y_0\ne0$ なので $z_{00}\notin\mathfrak{b}_{m,n}$ である。
像:thm-segre-image により $\Sigma_{m,n}=V_+(I_2)=V_+(\mathfrak{b}_{m,n})$ である。無関係イデアルを含まない斉次素イデアルの零点集合は射影多様体であり、その斉次イデアルは射影零点定理(射影多様体 の定理「射影零点定理」)により $\sqrt{\mathfrak{b}_{m,n}}=\mathfrak{b}_{m,n}=I_2$ である。$\square$
この証明は $\theta$ の核を、体の性質を使わずに求めている。したがって $\mathfrak{b}_{m,n}=I_2$ は任意の可換環 $A$ 上の多項式環 $A[z_{ij}]$ でも成り立つ。
$\Sigma_{m,n}$ の斉次座標環 $S(\Sigma_{m,n})=k[z]/\mathfrak{b}_{m,n}$ は、$\theta$ によって $k[x,y]$ の部分環
$$
\bigoplus_{e\ge0}k[x]_e\otimes_kk[y]_e
$$
と同型である。ここで $k[x]_e$ は $x$ の次数 $e$ の斉次多項式の空間である。実際、$\theta$ の像の次数 $e$ の部分は、$|\alpha|=|\beta|=e$ を満たす単項式 $x^\alpha y^\beta$ で張られる($x^\alpha$ の添字の列と $y^\beta$ の添字の列を 1 つずつ組にすれば、$x^\alpha y^\beta$ は $z$ の単項式の像になる)。
$S(\Sigma_{m,n})$ の Hilbert 関数は
$$
h(e)=\dim_kS(\Sigma_{m,n})_e=\binom{m+e}{m}\binom{n+e}{n}\qquad(e\ge0)
$$
である。したがって $\dim\Sigma_{m,n}=m+n$、$\deg\Sigma_{m,n}=\binom{m+n}{m}$ である。
上の同型により $S(\Sigma_{m,n})_e\cong k[x]_e\otimes_kk[y]_e$ で、$\dim k[x]_e=\binom{m+e}{m}$、$\dim k[y]_e=\binom{n+e}{n}$ である。$\binom{m+e}{m}=\frac{(e+1)(e+2)\cdots(e+m)}{m!}$ は $e$ の $m$ 次多項式で最高次の係数は $\frac1{m!}$ なので、$h(e)$ は $e$ の $m+n$ 次多項式で、最高次の係数は $\frac{1}{m!\,n!}$ である。射影多様体の次元は Hilbert 多項式の次数に等しく、次数は Hilbert 多項式の最高次の係数に次元の階乗を掛けたものである(Har77 I 定理 7.5 と次数の定義、pp. 51–52。Hilbert多項式 の定義「Hilbert 多項式と次数」)。よって $\dim\Sigma_{m,n}=m+n$、$\deg\Sigma_{m,n}=\frac{(m+n)!}{m!\,n!}=\binom{m+n}{m}$ である。$\square$
たとえば $\Sigma_{1,1}\subset\mathbb{P}^3$ は次数 $2$ の曲面、$\Sigma_{1,2}\subset\mathbb{P}^5$ は次数 $3$ の $3$ 次元多様体である。$\dim\Sigma_{m,n}=m+n< N$($m,n\ge1$)なので、$\sigma_{m,n}$ は全射ではない。
$\sigma_{m,n}$ は単射なので、$\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ を $\Sigma_{m,n}$ と同一視して、射影多様体の構造を入れることができる(Har77 I 演習 3.16、p. 22)。このとき $\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ の閉集合は、双斉次多項式で記述される。$x$ について $d$ 次、$y$ について $e$ 次の斉次多項式を 双次数 $(d,e)$ の双斉次多項式 という。その零点は、代表のとり方によらずに $\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ の部分集合を定める。
$Y\subset\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ について、$\sigma_{m,n}(Y)$ が $\Sigma_{m,n}$ の閉集合であることと、$Y$ が双斉次多項式の族の共通零点であることは同値である。
$z$ の次数 $e$ の斉次多項式 $G$ について、$G(ab^{\mathsf T})=\theta(G)(a,b)$ であり、$\theta(G)$ は双次数 $(e,e)$ の双斉次多項式である。よって $\sigma_{m,n}^{-1}(V_+(G))$ は $\theta(G)$ の零点である。$\Sigma_{m,n}$ の閉集合は $\Sigma_{m,n}\cap V_+(T)$($T$ は斉次多項式の集合)の形なので、その逆像は双斉次多項式の族 $\theta(T)$ の共通零点である。
逆に、$F$ を双次数 $(d,e)$ の双斉次多項式とし、$d\le e$ とする($d\ge e$ の場合も同様)。$a\ne0$ ならある $a_i\ne0$ なので、$F(a,b)=0$ と「すべての $i$ で $a_i^{e-d}F(a,b)=0$」は同値である。$x_i^{e-d}F$ は双次数 $(e,e)$ で、双次数 $(e,e)$ の単項式は $z$ の次数 $e$ の単項式の像なので、$x_i^{e-d}F=\theta(G_i)$ となる斉次多項式 $G_i$ がある。よって $F$ の零点は $\sigma_{m,n}^{-1}\bigl(V_+(G_0,\dots,G_m)\bigr)$ で、その像は $\Sigma_{m,n}$ の閉集合である。族の共通零点は閉集合の共通部分なので、やはり像は閉集合である。$\sigma_{m,n}$ は $\Sigma_{m,n}$ への全単射なので、2 つの向きを合わせて主張を得る。$\square$
2 つの射影 $p_1\colon\Sigma_{m,n}\to\mathbb{P}^m$、$p_2\colon\Sigma_{m,n}\to\mathbb{P}^n$ も座標で書ける。開集合 $\{z_{ij}\ne0\}$ の上で、thm-segre-image により $p_1([Z])$ は第 $j$ 列、$p_2([Z])$ は第 $i$ 行であり、どちらも座標が $z$ の一次式なので射である。
$[a]\in\mathbb{P}^m$、$[b]\in\mathbb{P}^n$ に対し $\Lambda_a:=\sigma_{m,n}(\{[a]\}\times\mathbb{P}^n)$、$\Lambda'_b:=\sigma_{m,n}(\mathbb{P}^m\times\{[b]\})$ とおく。
1:$a\ne0$ を固定すると、$k^{n+1}\to M_{(m+1)\times(n+1)}(k)$、$b\mapsto ab^{\mathsf T}$ は線形で、$a\ne0$ なので単射である。その像は $n+1$ 次元の部分空間なので、射影化した $\Lambda_a$ は $n$ 次元の線形部分空間である。$\Lambda'_b$ も同様である。和集合になることは定義から明らかである。
2、3:$\sigma_{m,n}$ の単射性(thm-segre-image)による。$\Lambda_a\cap\Lambda_{a'}$ の点は $\sigma_{m,n}([a],[b])=\sigma_{m,n}([a'],[b'])$ と書けるので $[a]=[a']$ である。$\Lambda_a\cap\Lambda'_b$ の点は $\sigma_{m,n}([a],[b''])=\sigma_{m,n}([a''],[b])$ と書けるので、$[a'']=[a]$、$[b'']=[b]$ となり、その点は $\sigma_{m,n}([a],[b])$ に限る。逆にこの点は両方に属する。$\square$
$m=n=1$ では $N=3$ で、$2\times2$ 行列 $Z$ の小行列式は $\det Z$ ただ 1 つである。thm-segre-ideal により
$$
\Sigma_{1,1}=V_+(z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10})\subset\mathbb{P}^3
$$
は非特異な 2 次曲面であり、cor-segre-degree のとおり次数は $2$、次元は $2$ である。prop-segre-fibers の $\Lambda_a$、$\Lambda'_b$ は直線で、2 次曲面は 2 つの直線族で覆われる。同じ族の 2 直線は交わらず、異なる族の 2 直線はちょうど 1 点で交わる。2 次曲面の上の直線がこの 2 族に尽きることは 2次曲面 で示される。
$m=1$、$n=2$ では $N=5$ で、$\Sigma_{1,2}\subset\mathbb{P}^5$ は
$$
Z=\begin{pmatrix}z_{00}&z_{01}&z_{02}\\ z_{10}&z_{11}&z_{12}\end{pmatrix}
$$
の 3 つの $2\times2$ 小行列式で定まる $3$ 次元の多様体で、次数は $\binom{3}{1}=3$ である。prop-segre-fibers により、$\Sigma_{1,2}$ は互いに交わらない平面 $\Lambda_a$($[a]\in\mathbb{P}^1$)の 1 径数の族の和集合である。
$m=n$ とし、対角線 $\Delta=\{([a],[a])\}\subset\mathbb{P}^n\times\mathbb{P}^n$ を考える。$([a],[b])\in\Delta$ は $a$ と $b$ が比例すること、すなわちすべての $i,j$ で $a_ib_j-a_jb_i=0$ であることと同値である。$x_iy_j-x_jy_i$ は双次数 $(1,1)$ の双斉次多項式なので、prop-segre-closed により $\Delta$ は閉集合である。
像は $\sigma_{n,n}(\Delta)=\{[aa^{\mathsf T}]\}=\Sigma_{n,n}\cap V_+(z_{ij}-z_{ji}\mid i< j)$ である。実際、$ab^{\mathsf T}$ が対称なら、列空間を比べて $a$ と $b$ は比例する。対称行列の成分 $z_{ij}$($i\le j$)を座標とすれば、これは Veronese埋め込み の命題「階数 1 の対称行列」の $2$ 次の Veronese 多様体 $\nu_2(\mathbb{P}^n)$ である。$n=1$ では、$\Sigma_{1,1}$ を平面 $z_{01}=z_{10}$ で切った 2 次曲線 $z_{00}z_{11}=z_{01}^2$ になる。
一般に、超平面 $\sum_{i,j}c_{ij}z_{ij}=0$ を $\sigma_{m,n}$ で引き戻すと、双一次形式 $a^{\mathsf T}Cb=0$($C=(c_{ij})$)になる。$\Sigma_{m,n}$ の超平面切断は、$\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n$ の双次数 $(1,1)$ の超曲面と対応する。
ここまでの議論は代数閉体上の点で行ったが、同じ式はスキームの射を定める。任意のスキーム $Y$ について、ファイバー積 $\mathbb{P}^m_Y\times_Y\mathbb{P}^n_Y$ から $\mathbb{P}^N_Y$ への射が、開集合 $D_+(x_i)\times D_+(y_j)$ の上で $z_{kl}/z_{ij}\mapsto(x_k/x_i)(y_l/y_j)$ によって貼り合わさって定まり、これは閉埋め込みである。この主張と証明は 射影射 の命題「Segre埋め込みは閉埋め込みである」にある。そこから次のことが従う。
$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ と $\mathbb{P}^2$ はどちらも $2$ 次元の射影多様体だが、同型でない。$\mathbb{P}^2$ の 2 つの曲線($1$ 次元の既約閉集合)はかならず交わる(Har77 I 定理 7.2(射影次元定理)、p. 48)。一方 $\Sigma_{1,1}$ の中の 2 直線 $\Lambda_a$、$\Lambda_{a'}$($[a]\ne[a']$)は曲線であり、prop-segre-fibers の 2 により交わらない。同型写像は曲線を曲線に写し、交わらないことを保つので、同型はありえない。
$\mathbb{P}^1$ の Zariski 位相の閉集合は全体と有限集合である。$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ に位相の直積を入れると、全体と異なる閉集合 $F$ の補集合はある空でない開集合 $U\times V$($U$、$V$ は有限集合の補集合)を含むので、
$$
F\subset\bigl((\mathbb{P}^1\setminus U)\times\mathbb{P}^1\bigr)\cup\bigl(\mathbb{P}^1\times(\mathbb{P}^1\setminus V)\bigr)
$$
となり、$F$ は有限個の「縦の直線」$\{p\}\times\mathbb{P}^1$ と「横の直線」$\mathbb{P}^1\times\{q\}$ に含まれる。対角線 $\Delta$ はそれぞれの直線と 1 点でしか交わらないので、$\Delta$ がこの形の集合に含まれれば $\Delta$ は有限集合になる。$k$ は無限体なので $\Delta$ は無限集合であり、$\Delta$ は位相の直積では閉集合でない。一方 ex-segre-diagonal により、Segre 埋め込みで入れた位相では $\Delta$ は閉集合である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $2\times2$ 小行列式をすべて課す | $m=1$、$n=2$ で $z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10}$ だけを課す。点 $z_{00}=z_{12}=1$、ほかの座標 $0$ | 零点集合が像 $\Sigma_{m,n}$ に一致すること |
| 積 $a_ib_j$ をすべて並べる | $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$、$([a],[b])\mapsto[a_0b_0:a_1b_1]$ | すべての点で定義されること |
| 双斉次多項式を使う | $x_0+y_0$ の「零点」 | 零点が代表のとり方によらないこと |
| Segre 埋め込みで入れた位相を使う | 位相の直積と対角線(ex-segre-topology) | 対角線が閉集合であること |
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