代数曲面(algebraic surface)とは、体 $k$ 上の 2 次元の代数多様体であり、とくに代数閉体上の滑らかな射影曲面が主な対象である。完備で非特異な代数曲面はつねに射影的で(Zariski)、曲面の上では曲線の交点数、Riemann–Roch の定理、随伴公式が基本の道具になる。点の爆発で同じ双有理同値類に無数のモデルができる点が曲線と異なり、$(-1)$ 曲線を潰して極小曲面を選んだうえで、幾何種数・不正則数・多重種数・小平次元などの不変量で分類する。$\mathbb{P}^3$ の $d$ 次の滑らかな曲面では、小平次元は $d\le3$ で $-\infty$、$d=4$ で $0$、$d\ge5$ で $2$ である。
前提知識: 代数多様体, 因子, 標準因子, 曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理
代数曲面(algebraic surface)は、2 次元の代数多様体である。代数曲線の理論では、滑らかな射影曲線は関数体だけで同型を除いて決まり、種数という 1 つの数で大きく分類された。曲面ではこの 2 つがどちらも崩れる。点を爆発(ブローアップ)すると、関数体を変えずに別の滑らかな射影曲面ができるので、同じ双有理同値類に無限に多くの滑らかなモデルがある。また 1 つの数では足りず、幾何種数・不正則数・多重種数・標準因子の自己交点数・Picard 数などの組が要る。
代数曲面の理論の中心にあるのは、曲面の上の曲線どうしの 交点数 である。交点数を使うと、曲線の Riemann–Roch の定理は曲面の Riemann–Roch の定理に広がり(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理)、自己交点数が $-1$ の有理曲線を潰して極小な曲面を選び(Castelnuovoの収縮定理)、最後に小平次元によって曲面を大きく分類する(Enriques–小平の分類。小平次元と分類の名の小平は小平邦彦(Kunihiko Kodaira)である)。
この記事では、代数曲面の定義と、完備性と射影性の関係、曲面の数値的な不変量を述べる。そのうえで、Riemann–Roch の定理から「自己交点数が正の因子は十分大きな倍数が有効になる」ことを証明し、$\mathbb{P}^3$ の滑らかな曲面の幾何種数・不正則数・小平次元を次数で完全に決定する。最後に分類の地図を示す。
$k$ を体とする。$k$ 上の 代数曲面 とは、$k$ 上の分離的な整な有限型スキームで、次元が $2$ のものをいう。$k$ 上固有なものを 完備な 代数曲面、$k$ 上滑らかなものを 非特異な(滑らかな)代数曲面という。$k$ 上射影的で滑らかなものを 滑らかな射影曲面 という。
1 次元の場合が 代数曲線 である。$\mathbb{P}^2$、$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$、$\mathbb{P}^3$ の滑らかな超曲面、2 つの滑らかな射影曲線の積 $C_1\times C_2$ は滑らかな射影曲面の例である。アフィン平面 $\mathbb{A}^2$ は滑らかな代数曲面だが完備でない。
この記事の規約.以下、断らない限り $k$ は代数閉体とし、曲面 は $k$ 上の滑らかな射影曲面を指す。これは Har77 V 章の冒頭(p. 357)と同じ規約である。曲面 $X$ の上の 曲線 は $X$ の整な 1 次元閉部分スキームを指し、因子 $C,D$ の交点数を $C\cdot D$、$D\cdot D$ を $D^2$ と書く。$K_X$ は $X$ の標準因子、$\omega_X=\mathcal{O}_X(K_X)$ は標準層である。
$k=\mathbb{C}$ のとき、滑らかな射影曲面は 2 次元のコンパクト複素多様体(コンパクト複素曲面)を定める。逆は成り立たない。Hopf曲面 は 2 次元のコンパクト複素多様体だが、どの射影曲面からも来ない。Hopf 曲面は小平次元が $-\infty$ で第 1 Betti 数が $1$ の曲面(類 VII)の例であり(BHPV04 VI 章 §1, p. 244)、類 VII の曲面は第 1 Betti 数が奇数なので Kähler 多様体でなく(Hodge分解)、とくに射影的でない。類 VII の極小曲面の代数的次元(有理型関数体の超越次数)は $0$ か $1$ である(同 Table 10)。コンパクト複素曲面の分類は BHPV04 VI 章 定理 1.1(p. 243)にあり、代数曲面の分類はその一部として含まれる。
代数曲線では、完備な曲線はすべて射影的である。曲面では、特異点を許すかどうかで答えが分かれる。
$k$ を代数閉体とする。
1 があるので、非特異な曲面を調べるときは「完備」と「射影的」を区別しなくてよい。これが、固有射と射影射のちがい(固有射、射影射)が曲面では現れない理由である。射影性が使えると、豊富な因子 $H$ を 1 つ固定し、曲線 $C$ の「次数」を $C\cdot H$ で測ることができる。$H$ が非常に豊富なら、$C\cdot H$ は $H$ が定める射影埋め込みでの $C$ の次数で、正である(Har77 V 注意 1.6.2, p. 363)。
曲面 $X$ について次のように定める。
$\chi(\mathcal{O}_X)=h^0-h^1+h^2$ で $h^0(\mathcal{O}_X)=1$、Serre 双対性から $h^2(\mathcal{O}_X)=h^0(\omega_X)=p_g$ である。小平次元の定義は 双有理幾何学 の定義「多重種数と小平次元」と同じで、$P_m$ がすべて $0$ の場合を $\kappa=-1$ と書く流儀もある(Har77 V §6, pp. 421–422)。$\rho(X)$ は Néron–Severi の定理により有限である(Néron–Severi群)。
$P_m$ と $\kappa$ は双有理不変量である(双有理幾何学 の定理「多重種数の双有理不変性」)。$q$ と $p_g$ も双有理不変量で、1 点の爆発では変わらず(Har77 V 注意 3.5.1, p. 388)、曲面の双有理写像は爆発とその逆の合成に分解される(Har77 V 定理 5.5, p. 412)。これに対して $K_X^2$ と $\rho(X)$ は 1 点の爆発でそれぞれ $1$ 減り、$1$ 増える(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「爆発と交点形式」)。$12\chi(\mathcal{O}_X)=K_X^2+e(X)$ は Noetherの公式 である。
| 曲面 | $q$ | $p_g$ | $K^2$ | $\kappa$ |
|---|---|---|---|---|
| $\mathbb{P}^2$ | $0$ | $0$ | $9$ | $-\infty$ |
| $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ | $0$ | $0$ | $8$ | $-\infty$ |
| K3曲面 | $0$ | $1$ | $0$ | $0$ |
| $\mathbb{P}^3$ の $d\ge5$ 次の滑らかな曲面 | $0$ | $\binom{d-1}3$ | $d(d-4)^2$ | $2$ |
$\mathbb{P}^2$ と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ の $K^2$ は Har77 V 例 1.4.4(p. 361)、小平次元は 双有理幾何学 の系「有理多様体の判定」による。$q=p_g=0$ は下の thm-asurf-hypersurface($d=1,2$ の場合。$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ は $\mathbb{P}^3$ の滑らかな 2 次曲面と同型)から従う。K3 曲面の行は、定義($\omega_X\cong\mathcal{O}_X$、したがって $K_X=0$)と K3曲面 の命題「K3曲面の数値的な不変量」による。最後の行は thm-asurf-hypersurface で証明する。
曲面 $X$ の上では、因子 $C,D$ の交点数 $C\cdot D$ が $\operatorname{Pic}X$ の対称双線形形式を定め、共通成分のない曲線どうしなら交点を重複度込みで数えた個数になる。さらに Riemann–Roch の定理
$$
\chi(\mathcal{O}_X(D))=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12\,D\cdot(D-K_X)
$$
と 随伴公式 $2p_a(C)-2=C\cdot(C+K_X)$ が成り立つ(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「交点形式」「曲面の Riemann–Roch の定理」と系「随伴公式」)。ここから、豊富な因子 $H$ と $D\cdot H=0$ をみたす因子 $D$ について $D^2\le0$ となる Hodge 指数定理(Har77 V 定理 1.9, p. 364。複素数体上では Hodge指数定理)や、豊富性の数値的判定(豊富な可逆層 の定理「Nakai–Moishezon の判定と Kleiman の判定」)が導かれる。
次の補題と命題は、曲面の上で「次数」と「大きさ」を測る基本の道具である。
$H$ を曲面 $X$ の豊富な因子、$E\neq0$ を有効因子とする。このとき $E\cdot H>0$ である。
ある $m\ge1$ で $mH$ は非常に豊富なので、$|mH|$ が定める閉埋め込み $X\hookrightarrow\mathbb{P}^N$ をとる。$E$ の既約成分 $E_1,\dots,E_r$ はそれぞれ曲線なので、$E_i$ を含む超平面全体は超平面全体の空間 $(\mathbb{P}^N)^\vee$ の真の線形部分空間をなす。$k$ は無限体なので、どの $E_i$ も含まない超平面 $L$ がとれる。$H':=L\cap X\in|mH|$ は $E$ と共通成分をもたないので、曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「交点形式」の 3 により $E\cdot H'$ は $E\cap H'$ の各点の局所交点数の和である。$\mathbb{P}^N$ の中の曲線 $E_i$ と超平面 $L$ は必ず交わるので、$E\cap H'\neq\emptyset$ で、各点の局所交点数は正である。よって $m(E\cdot H)=E\cdot H'>0$ である。$\square$
$H$ を曲面 $X$ の豊富な因子、$D$ を $D^2>0$ かつ $D\cdot H>0$ をみたす因子とする。このとき、ある $n_0$ があって、すべての整数 $n\ge n_0$ について
$$
h^0(X,\mathcal{O}_X(nD))\ \ge\ \frac{D^2}2\,n^2-\frac{D\cdot K_X}2\,n+\chi(\mathcal{O}_X)
$$
が成り立つ。とくに十分大きな $n$ で $nD$ は有効因子と線形同値であり、ある $c>0$ について $h^0(\mathcal{O}_X(nD))\ge cn^2$ である。
Serre 双対性により $h^2(\mathcal{O}_X(nD))=h^0(\mathcal{O}_X(K_X-nD))$ である。$n>(K_X\cdot H)/(D\cdot H)$ なら $(K_X-nD)\cdot H<0$ である。このとき $K_X-nD$ が $0$ でない大域切断をもつと、$K_X-nD$ は有効因子 $E$ と線形同値になり、lem-asurf-effective-ample($E=0$ なら $E\cdot H=0$)から $(K_X-nD)\cdot H=E\cdot H\ge0$ となって矛盾する。よってそのような $n$ で $h^2(\mathcal{O}_X(nD))=0$ である。Riemann–Roch の定理を $nD$ に使い、$h^1\ge0$ を捨てると
$$
h^0(\mathcal{O}_X(nD))\ \ge\ h^0-h^1+h^2=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12\,nD\cdot(nD-K_X)
$$
であり、これが主張の不等式である。右辺は $D^2>0$ を主係数とする $n$ の 2 次式なので、十分大きな $n$ で $\frac{D^2}4n^2$ 以上、とくに正である。$h^0(\mathcal{O}_X(nD))>0$ なら $0$ でない切断の零因子が $nD$ と線形同値な有効因子である。$\square$
これは Har77 V 系 1.8(p. 363)の内容である。命題の結論 $h^0(nD)\ge cn^2$ は、$D$ が 巨大(big)であることを意味する(川又–Viehwegの消滅定理 で使う)。仮定の $D\cdot H>0$ は外せない($D$ を $-D$ に替えても $D^2$ は変わらない)。
$\mathbb{P}^3$ の滑らかな曲面では、すべての不変量が次数だけで決まる。$m\in\mathbb{Z}$ について $N(m):=\binom{m+3}3=\frac{(m+1)(m+2)(m+3)}6$($m\ge0$)、$N(m):=0$($m<0$)とおく。$N(m)$ は 4 変数の $m$ 次斉次多項式の空間の次元で、$h^0(\mathbb{P}^3,\mathcal{O}(m))=N(m)$、すべての $m$ で $H^1(\mathbb{P}^3,\mathcal{O}(m))=H^2(\mathbb{P}^3,\mathcal{O}(m))=0$ である(Har77 III 定理 5.1 (a)(b), p. 225)。
$X=V(F)\subset\mathbb{P}^3$ を $d\ge1$ 次の滑らかな曲面とする。
$F$ を掛ける写像は層の完全列 $0\to\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n-d)\xrightarrow{F}\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n)\to\mathcal{O}_X(n)\to0$ を与える。そのコホモロジー長完全列の一部
$$
0\to H^0(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n-d))\to H^0(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n))\to H^0(\mathcal{O}_X(n))\to H^1(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n-d))=0
$$
から 2 を得る。また $H^1(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n))\to H^1(\mathcal{O}_X(n))\to H^2(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^3}(n-d))$ の両端が $0$ なので 1 を得る($n=0$ が $q=0$)。
3.$\omega_X\cong\mathcal{O}_X(d-4)$ は随伴公式と $\omega_{\mathbb{P}^3}\cong\mathcal{O}(-4)$ から従う(Har77 II 例 8.20.3, p. 183。Noetherの公式 の例「$\mathbb{P}^3$ の超曲面」にも確かめがある)。2 を $n=d-4$ に使うと $p_g=N(d-4)-N(-4)=N(d-4)$ で、$d\ge4$ なら $\binom{d-1}3$、$d\le3$ なら $0$($\binom{d-1}3$ も $0$)である。
4.$P_m=h^0(\mathcal{O}_X(m(d-4)))$ である。$d\le3$ なら $m(d-4)<0$ で、2 から $P_m=0$、よって $\kappa=-\infty$ である。$d=4$ なら $P_m=h^0(\mathcal{O}_X)=N(0)-N(-4)=1$ で、$\kappa=0$ である。$d\ge5$ とする。$n\ge d-3$ なら $N(n)$ と $N(n-d)$ はどちらも 3 次式の値で、展開すると
$$
N(n)-N(n-d)=\frac d2\,n^2+\frac{d(4-d)}2\,n+\frac{d(d^2-6d+11)}6
$$
である。$m\ge2$ なら $n=m(d-4)\ge2d-8\ge d-3$ なので、これに $n=m(d-4)$ を代入して整理すると主張の式を得る(定数項は $1+\binom{d-1}3$ に等しい)。$d(d-4)^2>0$ なので $P_m/m^2$ は有界で、$P_m/m$ は有界でない。よって $\kappa=2$ である。$\square$
$P_m$ の式は、$m\ge2$ で $H^1(\mathcal{O}_X(mK_X))=H^2(\mathcal{O}_X(mK_X))=0$ となるので、Riemann–Roch の定理 $\chi(mK_X)=\chi(\mathcal{O}_X)+\frac12m(m-1)K_X^2$ と一致する($K_X^2=d(d-4)^2$ は Noetherの公式 の例「$\mathbb{P}^3$ の超曲面」)。次数ごとに見ると、$d=1$ は $\mathbb{P}^2$、$d=2$ は $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ と同型な 2次曲面、$d=3$ の 3 次曲面は $\mathbb{P}^2$ の 6 点の爆発と同型で有理曲面であり(Har77 V 注意 4.7.1, p. 401。この記事では証明しない)、$d=4$ は K3曲面(K3曲面 の命題「滑らかな4次曲面はK3曲面」)、$d\ge5$ では $K_X=(d-4)H$ が豊富で、一般型の曲面である。
滑らかな射影曲線のあいだの双有理写像は同型に延びるが、曲面ではそうならない。曲面 $Y$ の点 $P$ の爆発 $\pi\colon\tilde Y\to Y$ は $Y\setminus\{P\}$ の上で同型な双有理射で、$P$ の逆像は $E\cong\mathbb{P}^1$、$E^2=-1$ となる曲線である(ブローアップ、曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「爆発と交点形式」)。このような曲線を $(-1)$ 曲線 といい、$(-1)$ 曲線をもたない曲面を 極小曲面 という。
極小曲面は、小平次元によって次のように大きく分類される。これを Enriques–小平の分類 という(Federigo Enriques と小平邦彦にちなむ)。以下は $k$ が代数閉体で、$\kappa=0,1$ の行では標数が $2,3$ でない場合の Har77 V §6 定理 6.1–6.5(pp. 421–422)の要約であり、この記事では証明しない。
| $\kappa(X)$ | 曲面の種類 | 代表例 |
|---|---|---|
| $-\infty$ | 有理曲面または線織曲面 | $\mathbb{P}^2$、$C\times\mathbb{P}^1$ |
| $0$ | K3 曲面、Enriques 曲面、2 次元のアーベル多様体、双楕円曲面(超楕円曲面ともいう) | 4 次曲面、Enriques曲面 |
| $1$ | 楕円曲面(ほとんどすべてのファイバーが楕円曲線になる曲線への射をもつ) | 楕円曲面 |
| $2$ | 一般型の曲面 | $\mathbb{P}^3$ の $5$ 次以上の滑らかな曲面 |
$\kappa=-\infty$ は $P_{12}(X)=0$ と同値で、極小曲面について $\kappa=0$ は $12K_X\sim0$ と同値である(同 定理 6.1, 6.3)。有理性については Castelnuovo の判定法 があり、曲面 $X$ が有理曲面であることは $p_a(X):=\chi(\mathcal{O}_X)-1=0$ かつ $P_2(X)=0$ と同値である(同 定理 6.2。$P_2=0$ なら $p_g=0$ なので、この条件は $q=P_2=0$ と同じである)。複素数体上では、射影的でない曲面も含めたコンパクト複素曲面が 10 の類に分類されている(BHPV04 VI 章 定理 1.1, Table 10, pp. 243–244)。重複ファイバー は $\kappa=0,1$ の曲面の楕円曲面としての構造を調べる道具であり、変形理論 は同じ類の曲面の連続族を調べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-asurf-zariski の 1 の非特異性 | 特異点をもつ完備な曲面(同定理の 2) | 完備ならば射影的であること |
| thm-asurf-zariski の 1 の次元 $2$ | 完備で非特異な 3 次元多様体(同定理の 3) | 完備ならば射影的であること |
| prop-asurf-big の $D^2>0$ | $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ の $(2,-1)$ 型の因子 | $nD$ が有効因子と線形同値になること |
| prop-asurf-big の $D\cdot H>0$ | $D=-H$ | $nD$ が有効因子と線形同値になること |
| thm-asurf-hypersurface の滑らかさ($d=4$) | 滑らかな平面 4 次曲線の上の錐 | 曲面の双有理類の小平次元が $0$ であること |
3 行目.$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ の 2 つの方向のファイバーの類を $l,m$ とすると $l^2=m^2=0$、$l\cdot m=1$ で、$\operatorname{Pic}=\mathbb{Z}l\oplus\mathbb{Z}m$ である(Har77 V 例 1.4.3, p. 361)。$(a,b)$ 型の曲線 $C\sim al+bm$ について、$C$ を成分に含まないファイバーと交わらせると $a=C\cdot m\ge0$、$b=C\cdot l\ge0$ なので、有効因子の類は $a,b\ge0$ をみたす。$H=l+m$ は豊富で、$D=2l-m$ について $D\cdot H=2-1=1>0$、$D^2=2\cdot2\cdot(-1)=-4<0$ である。$nD=2nl-nm$ は $n\ge1$ で $m$ の係数が負なので、有効因子と線形同値にならない。
4 行目.$D^2=H^2>0$ だが $D\cdot H=-H^2<0$ である。$-nH$ が有効因子 $E$ と線形同値なら lem-asurf-effective-ample から $E\cdot H\ge0$ だが、$-nH\cdot H<0$ なので矛盾する。
5 行目.$f(x_0,x_1,x_2)$ を滑らかな平面 4 次曲線 $C=V(f)\subset\mathbb{P}^2$ の方程式とし、$Y=V(f)\subset\mathbb{P}^3$(座標 $x_0,\dots,x_3$)とする。$Y$ は 4 次曲面で、点 $[0:0:0:1]$ で特異である。開集合 $Y\cap\{x_0\neq0\}$ は、方程式に $x_3$ が現れないので $(C\cap\{x_0\neq0\})\times\mathbb{A}^1$ と同型であり、$Y$ は $C\times\mathbb{P}^1$ と双有理同値である。$\omega_{C\times\mathbb{P}^1}\cong p_1^*\omega_C\otimes p_2^*\mathcal{O}(-2)$(Har77 II 演習 8.3)なので、$\omega^{\otimes m}$ の大域切断を各ファイバー $\{c\}\times\mathbb{P}^1$ に制限すると $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-2m)$ の切断になって $0$ である。よってすべての $m\ge1$ で $P_m(C\times\mathbb{P}^1)=0$、$\kappa=-\infty$ で、$Y$ と双有理同値な滑らかな射影曲面の小平次元はすべて $-\infty$ である(双有理幾何学 の定理「多重種数の双有理不変性」)。滑らかな 4 次曲面なら $\kappa=0$ だった。
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