写像柱(mapping cylinder)とは、連続写像 $f\colon X\to Y$ に対し、柱 $X\times[0,1]$ の端 $X\times\{1\}$ を $f$ で $Y$ に貼り付けた商空間 $M_f$ のことである。$M_f$ は $X$ と $Y$ を交わらない閉部分空間として含み、$Y$ に強変位レトラクトするので、任意の連続写像はホモトピー拡張性質をもつ包含とホモトピー同値の合成に取り替えられる。ホモトピー拡張性質をもつ対 $(X,A)$ に $A$ 上のホモトピー同値で空間を貼り付けてもホモトピー型が変わらないことは、写像柱を挟んで証明できる。円周の任意の写像の写像柱は CW 複体であり、次数 $2$ の写像の写像柱は Möbius の帯である。
前提知識: 商空間(位相), ホモトピー同値, 変形レトラクト, コファイブレーション
連続写像 $f\colon X\to Y$ の写像柱 $M_f$ は、円柱 $X\times[0,1]$ の一方の端 $X\times\{1\}$ を $f$ で $Y$ に貼り付けた空間である。$M_f$ は $X$ と $Y$ をどちらも閉部分空間として含み、柱を $Y$ の側へ押しつぶすと $Y$ に変形レトラクトする。こうして任意の連続写像は、部分空間の包含 $X\hookrightarrow M_f$ とホモトピー同値 $M_f\to Y$ の合成に取り替えられる。包含のほうはホモトピー拡張性質をもつので、写像についての問題を「対」の問題に移して扱える。
この記事では写像柱を定義し、その基本構造と、胞体写像の写像柱と写像錐が CW 複体になること、円周の写像の写像柱が CW 複体になること、次数 $2$ の写像の写像柱が Möbiusの帯 であることを示す。主定理として、ホモトピー拡張性質をもつ対 $(X,A)$ に $A$ 上のホモトピー同値で空間を貼り付けても、ホモトピー型が変わらないことを写像柱を使って証明する。
$I=[0,1]$ とする。
連続写像 $f\colon X\to Y$ に対し、非交和 $(X\times I)\sqcup Y$ を $(x,1)\sim f(x)$($x\in X$)で割った商空間(位相)
$$
M_f:=\bigl((X\times I)\sqcup Y\bigr)\big/\bigl((x,1)\sim f(x)\bigr)
$$
を $f$ の写像柱(mapping cylinder)という。商写像を $q$ とし、
$$
i\colon X\to M_f,\ i(x):=q(x,0),\qquad j\colon Y\to M_f,\ j(y):=q(y),\qquad r\colon M_f\to Y,\ r(q(x,t)):=f(x),\ r(q(y)):=y
$$
とおく。$i(X)$ を定義域の端、$j(Y)$ を値域の端という。
$r$ は同一視と両立する連続写像から誘導されるので連続であり、$r\circ i=f$、$r\circ j=\mathrm{id}_Y$ が成り立つ。記号は Whiteheadの定理 の記事の節「写像柱」、コファイブレーション の記事の例「写像柱による分解」、写像錐(位相) の記事と同じである(Hat02 p. 2 も同じ向きに貼る)。
$q(x,t)$ を $X\times I$ の点の像、すなわち柱の上の点とみなす。$x$ を止めて $t$ を $0$ から $1$ まで動かすと、$i(x)$ から $j(f(x))$ への線分 $q(\{x\}\times I)$ をたどる。$f$ が単射でなければ、$f(x)=f(x')$ となる 2 本の線分は値域の端で 1 点に合流する。
$f\colon X\to Y$ を連続写像とする。
要点:1 は飽和した開集合・閉集合の上で商写像が同相になることから、2 は柱の座標 $t$ による分離と $Y$ の開集合の引き戻しから、3 は正方形 $I\times I$ のレトラクションを柱の各線分に使うことから従う。
1:$i$ が $i(X)$ への同相写像であることは Whiteheadの定理 の記事の命題「写像柱の性質」の 1 である。$q^{-1}(i(X))=X\times\{0\}$ と $q^{-1}(j(Y))=(X\times\{1\})\sqcup Y$ は閉集合なので、$i(X)$ と $j(Y)$ は閉集合で、交わらない。$j$ は単射である。$F\subset Y$ が閉集合なら $q^{-1}(j(F))=(f^{-1}(F)\times\{1\})\sqcup F$ は閉集合なので、$j(F)$ は閉集合であり、$j$ は閉写像として $j(Y)$ への同相写像である。$N$ は交わらない 2 つの閉集合の和なので、$X\sqcup Y$ と同相である。
2:$\tau\colon M_f\to I$ を $\tau(q(x,t)):=t$、$\tau(q(y)):=1$ で定めると連続である。柱の内部 $U:=q(X\times[0,1))$ は開集合で、$q$ は $X\times[0,1)$ から $U$ への同相写像である(同命題の 1 の証明)。$U$ の 2 点は $X\times[0,1)$ が Hausdorff なので分離できる。$q(x,t)$($t<1$)と $j(Y)$ の点は、$t< c< 1$ をとって $\tau^{-1}([0,c))$ と $\tau^{-1}((c,1])$ で分離できる。$y\ne y'$ なら、$Y$ の交わらない開集合 $V\ni y$、$V'\ni y'$ をとり、$W:=q\bigl((f^{-1}(V)\times(\tfrac12,1])\sqcup V\bigr)$ と $W'$ を同様に作る。$q^{-1}(W)=(f^{-1}(V)\times(\tfrac12,1])\sqcup V$ は開集合なので $W$ は開集合で、$W\cap W'=\emptyset$ である。
3:$L:=(I\times\{0\})\cup(\{0,1\}\times I)\subset I\times I$ とし、点 $(\tfrac12,2)$ からの放射状の射影によるレトラクション $\rho=(\rho_1,\rho_2)\colon I\times I\to L$ をとる(Hat02 p. 15)。$R\colon M_f\times I\to M_f\times I$ を $R(q(x,t),s):=\bigl(q(x,\rho_1(t,s)),\rho_2(t,s)\bigr)$、$R(q(y),s):=(q(y),s)$ で定める。$\rho$ は $\{1\}\times I$ の上で恒等写像なので、$t=1$ で $R(q(x,1),s)=(q(f(x)),s)$ となり、同一視と両立する。$I$ は局所コンパクトなので $q\times\mathrm{id}_I$ は商写像であり(Hat02 Appendix, Proposition A.17, p. 532)、$R$ は連続である。$\rho$ の値は $L$ にあるので $R$ の値は $(M_f\times\{0\})\cup(N\times I)$ に入り、$R$ はこの集合の上で恒等写像である。$N$ は閉集合なので、コファイブレーション の記事の定理「レトラクトによる判定」の 2 により $(M_f,N)$ はホモトピー拡張性質をもつ。$i(X)$ と $j(Y)$ についても、$N\times I$ の上のホモトピーをもう一方の成分では動かさないものとして延ばせばよい。$\square$
ほかの基本性質は既存の記事が証明している。この記事ではそれらを次の見出しで引く。
$X,Y$ が CW 複体で、$f$ が胞体写像(胞体近似定理 の定義「胞体写像」。すべての $n$ で $f(X^n)\subset Y^n$)なら、写像柱と写像錐は CW 複体になる。柱 $X\times I$ には直積位相を入れているので、まずその位相が胞体ごとに判定できることを確かめる。
$X$ を CW 複体とし、その胞体の特性写像を $\Phi_\alpha\colon D_\alpha\to X$($D_\alpha$ は閉球体)とする。$X\times I$ の部分集合 $G$ について、すべての $\alpha$ で $(\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)^{-1}(G)$ が $D_\alpha\times I$ の閉集合なら、$G$ は閉集合である。
要点:$X\times I$ はコンパクト集合で位相が決まる空間($k$-空間)であり、コンパクト集合は有限個の柱 $\Phi_\alpha(D_\alpha)\times I$ に収まる。
$k$-空間・$k$-閉集合・試験写像は コンパクト生成空間 の定義「$k$-空間とコンパクト生成空間」のとおりとする。
$X$ は $k$-空間である:$A\subset X$ を $k$-閉集合とすると、各特性写像 $\Phi_\alpha$ はコンパクト Hausdorff 空間 $D_\alpha$ からの試験写像なので $\Phi_\alpha^{-1}(A)$ は閉集合であり、CW複体 の定理「胞体ごとの判定」の (R1) により $A$ は閉集合である。$I$ は局所コンパクト Hausdorff 空間なので、コンパクト生成空間 の定理「局所コンパクト空間との直積」により $X\times I$ は $k$-空間である。
$G$ は $k$-閉集合である:試験写像 $u\colon K\to X\times I$ をとり、$p\colon X\times I\to X$ を射影とする。$p(u(K))$ はコンパクトなので、CW複体 の定理「コンパクト集合は有限部分複体に含まれる」により有限部分複体 $A$ に含まれる。$A$ は閉集合で胞体の和なので、その各胞体の閉包を含み、同記事の系「胞体の閉包」により $A=\bigcup_{\alpha\in\Lambda_A}\Phi_\alpha(D_\alpha)$($\Lambda_A$ は $A$ の胞体の有限集合)である。各 $\alpha\in\Lambda_A$ について $\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I$ は $D_\alpha\times I$ を $\Phi_\alpha(D_\alpha)\times I$ の上へ写すので、$G\cap(\Phi_\alpha(D_\alpha)\times I)=(\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)\bigl((\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)^{-1}(G)\bigr)$ であり、これはコンパクト空間 $D_\alpha\times I$ の閉集合の連続像なのでコンパクトである。$X$ は Hausdorff(同記事の定理「CW 複体は Hausdorff」)なので $X\times I$ も Hausdorff で(直積位相 の命題「Hausdorff性と可算公理の遺伝」)、この集合は閉集合である。よって $G\cap(A\times I)$ は有限個の閉集合の和として閉集合であり、$u(K)\subset A\times I$ なので $u^{-1}(G)=u^{-1}\bigl(G\cap(A\times I)\bigr)$ は $K$ の閉集合である。したがって $G$ は $k$-閉集合で、$X\times I$ は $k$-空間なので $G$ は閉集合である。$\square$
$X,Y$ を CW 複体、$f\colon X\to Y$ を胞体写像とする。$M_f$ は次の胞体からなる CW 複体であり、$i(X)$ と $j(Y)$ はその部分複体である。
要点:Hausdorff 空間と閉球体からの写像の族が CW 構造の特性写像になるための判定(Hat02 Appendix, Proposition A.2, p. 521)を使う。柱の胞体の上端は $f$ で値域に写るので、境界が次元の低い胞体に収まることに $f$ が胞体写像であることを使い、弱位相に lem-mcyl-product を使う。
判定の条件は、(a) 各写像が球体の内部を像へ同相に写し、像の胞体が互いに交わらず全体を覆うこと、(b) 各胞体の境界の像が次元の低い有限個の胞体の和に含まれること、(c) 各胞体の閉包と閉集合で交わる部分集合は閉集合であること、の 3 つである(CW複体 の記事の「閉包有限性と弱位相による特徴づけ」)。
特性写像の候補:$X$ の胞体 $e_\alpha$ の特性写像を $\Phi_\alpha\colon D_\alpha\to X$($D_\alpha=D^m$、$m=\dim e_\alpha$)、$Y$ の胞体 $e_\beta$ の特性写像を $\Psi_\beta\colon D_\beta\to Y$ とする。$m\ge0$ について、$\mu(x,s):=\max\{\|x\|,2|s|\}$ は $\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}$ のノルムで、$\mu\le1$ の集合は $D^m\times[-\tfrac12,\tfrac12]$、$\mu=1$ の集合はその境界 $(S^{m-1}\times[-\tfrac12,\tfrac12])\cup(D^m\times\{\pm\tfrac12\})$ である。$h(z):=(\|z\|/\mu(z))\,z$($z\ne0$)、$h(0):=0$ とおくと $\mu(h(z))=\|z\|$ であり、逆写像は $w\mapsto(\mu(w)/\|w\|)\,w$ である。2 つのノルムは互いに定数倍で抑えられるので、どちらも $0$ で連続である。よって $h$ に $s\mapsto s+\tfrac12$ を合成すると、同相写像 $h_m\colon D^{m+1}\to D^m\times I$ で、$S^m$ を $(S^{m-1}\times I)\cup(D^m\times\{0,1\})$ へ、内部を $\operatorname{Int}D^m\times(0,1)$ へ写すものが得られる。1〜3 の胞体の特性写像の候補を、それぞれ $j\circ\Psi_\beta$、$i\circ\Phi_\alpha$、$\Theta_\alpha:=q\circ(\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)\circ h_m\colon D^{m+1}\to M_f$ とする。$X,Y$ は Hausdorff(CW複体 の定理「CW 複体は Hausdorff」)なので、prop-mcyl-basic の 2 により $M_f$ は Hausdorff である。
(a):集合として $M_f$ は、$j(Y)$、$i(X)$、$q(X\times(0,1))$ の交わらない和である($q$ は $X\times[0,1)$ の上と $Y$ の上で単射で、$q(X\times[0,1))$ と $j(Y)$ は交わらない)。$X$ と $Y$ はそれぞれ胞体の交わらない和なので、1〜3 の胞体は互いに交わらず $M_f$ を覆う。$\Psi_\beta$ と $\Phi_\alpha$ は内部を胞体へ同相に写し(CW複体 の補題「貼り付けの基本性質」の (R2) と定理「胞体ごとの判定」の (R3))、$j$ と $i$ は像への同相写像なので(prop-mcyl-basic の 1)、$j\circ\Psi_\beta$ と $i\circ\Phi_\alpha$ は内部を $j(e_\beta)$、$i(e_\alpha)$ へ同相に写す。$\Theta_\alpha$ については、$h_m$ が内部を $\operatorname{Int}D^m\times(0,1)$ へ、$\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I$ がそれを $e_\alpha\times(0,1)$ へ同相に写し、$q$ は $X\times[0,1)$ から開集合 $q(X\times[0,1))$ への同相写像である(Whiteheadの定理 の記事の命題「写像柱の性質」の 1 の証明)ので、内部は $q(e_\alpha\times(0,1))$ へ同相に写る。
(b):$Y$ の $n$ 胞体の境界の像 $\Psi_\beta(\partial D_\beta)$ はコンパクトで骨格 $Y^{n-1}$ に含まれるので、CW複体 の定理「コンパクト集合は有限部分複体に含まれる」により有限個の胞体としか交わらず、それらは $Y^{n-1}$ の胞体なので次元は $n-1$ 以下である。これを $j$ で写せば 1 の胞体について (b) が成り立ち、2 の胞体も同様である。$\Theta_\alpha$ の境界の像は、$q(x,1)=j(f(x))$ により
$$\Theta_\alpha(S^m)=q\bigl(\Phi_\alpha(\partial D_\alpha)\times[0,1)\bigr)\cup i\bigl(\Phi_\alpha(D_\alpha)\bigr)\cup j\bigl(f(\Phi_\alpha(D_\alpha))\bigr)$$
である。$\Phi_\alpha(\partial D_\alpha)$ は $X^{m-1}$ の有限個の胞体 $e_\gamma$(次元 $m-1$ 以下)の和に含まれるので、第 1 項は $i(e_\gamma)$ と $q(e_\gamma\times(0,1))$ の和に含まれる。$\Phi_\alpha(D_\alpha)=e_\alpha\cup\Phi_\alpha(\partial D_\alpha)$ なので、第 2 項は $i(e_\alpha)$ と $i(e_\gamma)$ の和に含まれる。第 3 項について、$f$ は胞体写像なので $f(\Phi_\alpha(D_\alpha))\subset f(X^m)\subset Y^m$ であり、これはコンパクトなので $Y$ の有限個の胞体としか交わらず、それらは $Y^m$ の胞体なので次元は $m$ 以下である。どの胞体の次元も $m$ 以下なので、$(m+1)$ 胞体 $q(e_\alpha\times(0,1))$ について (b) が成り立つ。
(c):$F\subset M_f$ が各胞体の閉包と閉集合で交わるとする。特性写像の候補 $\Xi\colon D\to M_f$ のどれについても、$\Xi(D)$ はコンパクトなので Hausdorff 空間 $M_f$ の閉集合であり、胞体を含み、連続性からその閉包に含まれるので、胞体の閉包に等しい。よって $\Xi^{-1}(F)=\Xi^{-1}(F\cap\Xi(D))$ は閉集合である。すべての $\beta$ で $\Psi_\beta^{-1}(j^{-1}(F))=(j\circ\Psi_\beta)^{-1}(F)$ が閉集合なので、CW複体 の定理「胞体ごとの判定」の (R1) により $j^{-1}(F)$ は $Y$ の閉集合である。$G:=\{(x,t)\in X\times I\mid q(x,t)\in F\}$ とおくと、$(\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)^{-1}(G)=h_m\bigl(\Theta_\alpha^{-1}(F)\bigr)$ は同相写像 $h_m$ による閉集合の像なのですべての $\alpha$ で閉集合であり、lem-mcyl-product により $G$ は閉集合である。$q^{-1}(F)=G\sqcup j^{-1}(F)$ が閉集合なので、商位相の定義により $F$ は閉集合である。逆に $F$ が閉集合なら、各胞体の閉包との共通部分は閉集合である。
以上で (a)〜(c) が成り立ち、1〜3 の胞体と上の特性写像は $M_f$ の CW 構造を与える。$i(X)$ と $j(Y)$ は閉集合(prop-mcyl-basic の 1)で胞体の和なので、部分複体である。$\square$
$X$ を空でない CW 複体、$Y$ を CW 複体、$f\colon X\to Y$ を胞体写像とし、写像錐 $C_f$ を 写像錐(位相) の定義「写像錐」のとおりとする($CX$ の点を $[x,s]$ と書き、$s=0$ の底面を $f$ で $Y$ に貼る)。$C_f$ は、$Y$ の胞体、錐の頂点の $0$ 胞体 1 個、$X$ の各 $n$ 胞体 $e$ に対する $(n+1)$ 胞体 $\{[x,s]\mid x\in e,\ 0< s< 1\}$ からなる CW 複体であり、$Y$ はその部分複体である。
要点:写像錐(位相) の命題「写像柱との関係」により $C_f\cong M_f/i(X)$ なので、prop-mcyl-cellular-cw の CW 複体 $M_f$ を部分複体 $i(X)$ でつぶした空間に、同じ判定を当てる。
$N:=M_f/i(X)$、商写像を $\pi$、$v:=\pi(i(X))$ とする。$i(X)$ は閉集合なので $W:=M_f\setminus i(X)$ は飽和した開集合で、$\pi(W)=N\setminus\{v\}$ は開集合である。$W$ に含まれる開集合は飽和しているので、$\pi$ は $W$ から $N\setminus\{v\}$ への連続な全単射で開集合を開集合に写し、同相写像である。
Hausdorff 性:prop-mcyl-basic の証明の 2 の連続写像 $\tau\colon M_f\to I$($\tau(q(x,t))=t$、$\tau(q(y))=1$)について $\tau^{-1}(0)=i(X)$ なので、$\tau$ は連続写像 $\bar\tau\colon N\to I$ を誘導し、$\bar\tau^{-1}(0)=\{v\}$ である。$v$ と点 $p\ne v$ は、$0< c<\bar\tau(p)$ をとって $\bar\tau^{-1}([0,c))$ と $\bar\tau^{-1}((c,1])$ で分離できる。$v$ 以外の 2 点は、Hausdorff 空間 $M_f$ の開集合 $W$ の中の交わらない開集合で分離でき、その $\pi$ による像は $N$ の交わらない開集合である。
胞体:$N$ の胞体を、$0$ 胞体 $\{v\}$ と、$M_f$ の 1・3 の胞体 $c$ の像 $\pi(c)$(特性写像は $\pi\circ\Xi_c$、$\Xi_c$ は $c$ の特性写像)とする。(a):$M_f$ の 2 の胞体は $i(X)$ に、1・3 の胞体は $W$ に含まれ、$\pi|_W$ は同相写像なので、$\pi\circ\Xi_c$ は内部を $\pi(c)$ へ同相に写し、これらの胞体と $\{v\}$ は互いに交わらず $N$ を覆う。(b):$\Xi_c$ の境界の像は次元の低い有限個の胞体の和に含まれ、そのうち $i(X)$ に含まれる胞体は $\pi$ で $v$ に写る。$c$ が $0$ 胞体なら境界は空であり、$c$ の次元が $1$ 以上なら $v$ の次元 $0$ はそれより低い。(c):$F\subset N$ が $N$ の各胞体の閉包と閉集合で交わるとし、$M_f$ の胞体 $c$ をとる。$c\subset i(X)$ なら、$c$ の閉包 $\bar c$ も閉集合 $i(X)$ に含まれ、$\bar c\cap\pi^{-1}(F)$ は $v\in F$ なら $\bar c$、そうでなければ空集合なので閉集合である。$c\subset W$ なら、$\pi(\bar c)$ はコンパクトなので Hausdorff 空間 $N$ の閉集合であり、$\pi(c)$ を含み $\pi(c)$ の閉包に含まれるので、$\pi(c)$ の閉包に等しい。よって $\bar c\cap\pi^{-1}(F)=\bar c\cap\pi^{-1}\bigl(F\cap\pi(\bar c)\bigr)$ は閉集合である。どちらの場合も $\Xi_c^{-1}(\pi^{-1}(F))=\Xi_c^{-1}(\bar c\cap\pi^{-1}(F))$ は閉集合なので、CW複体 の定理「胞体ごとの判定」の (R1) により $\pi^{-1}(F)$ は $M_f$ の閉集合であり、商位相の定義により $F$ は閉集合である。逆向きは prop-mcyl-cellular-cw の証明と同じである。
以上で $N$ は CW 複体である。$j(Y)$ は $i(X)$ と交わらない閉集合で飽和しているので、$\pi(j(Y))$ は閉集合で胞体の和であり、部分複体である。写像錐(位相) の命題「写像柱との関係」の同相写像 $N\cong C_f$ は $q(x,t)\mapsto[x,1-t]$、$q(y)\mapsto y$ から誘導されるので、$\pi(j(e))$ を $Y$ の胞体 $e$ に、$v$ を錐の頂点に、$\pi(q(e\times(0,1)))$ を $\{[x,s]\mid x\in e,\ 0< s< 1\}$ に写す。$\square$
2 つの命題は Hat02 Chapter 0 の商の CW 構造(p. 8)と §3.F の写像柱の CW 構造(p. 312)で述べられている事実である。次節の prop-mcyl-circle-cw は、$f$ が胞体写像でない場合にも円周の写像の写像柱が CW 複体になることを、胞体を直接貼って示している。
任意の連続写像 $f\colon S^1\to S^1$ について、$M_f$ は $0$ 胞体 2 個、$1$ 胞体 3 個、$2$ 胞体 1 個からなる CW 複体である。$f$ は胞体写像である必要はない。
要点:$1$ 骨格を「定義域の円周・値域の円周・1 本の線分」のグラフにとり、柱の残りを正方形 1 枚として貼る。上辺の接着写像 $f$ は値域の円周、すなわち $1$ 骨格に値をもてば十分である。
$S^1\subset\mathbb{C}$、$x_0:=1$、$w_0:=f(x_0)$、$c(u):=e^{2\pi iu}$ とする。prop-mcyl-basic の 2 により $M_f$ は Hausdorff であり、コンパクト空間 $(S^1\times I)\sqcup S^1$ の像なのでコンパクトである。$v:=i(x_0)$、$w:=j(w_0)$ とし、$G:=i(S^1)\cup q(\{x_0\}\times I)\cup j(S^1)$ とおく。
$G$ について:3 本の区間 $[0,1]$ から $G$ への写像 $u\mapsto i(c(u))$、$u\mapsto q(x_0,u)$、$u\mapsto j(w_0c(u))$ と $\{v,w\}$ の包含をあわせると、連続な全射が得られる。$q$ は $S^1\times[0,1)$ の上と $S^1$ の上で単射で、柱の内部と値域の端は交わらないので、同じ点に写る組は端点と $v$ または $w$ の組だけである。$G$ はコンパクト Hausdorff 空間 $M_f$ の閉集合なので、CW複体 の記事の補題「貼り付けた空間であることの確かめ方」により、$G$ は $\{v,w\}$ に $1$ 胞体を 3 個貼った空間である。
$M_f$ について:正方形 $[0,1]^2$(円板と同相)から $M_f$ への写像 $g(u,t):=q(c(u),t)$ と $G$ の包含をあわせると、連続な全射が得られる。$g$ は開正方形を $q\bigl((S^1\setminus\{x_0\})\times(0,1)\bigr)$ へ単射に写し、この集合は $G$ と交わらない。正方形の周は、下辺が $u\mapsto i(c(u))$、上辺が $u\mapsto j(f(c(u)))$、左右の辺が $t\mapsto q(x_0,t)$ に写り、どれも $G$ に入る。したがって同じ点に写る組は「周の点とその $G$ での像」の組であり、同じ補題により $M_f$ は $G$ に $2$ 胞体を 1 個、周の写像を接着写像として貼った空間である。接着写像は $1$ 骨格 $G$ に値をもてばよく、胞体写像である必要はないので、上辺の $f\circ c$ が値域の円周を任意に動いてもよい。有限次元なので弱位相の条件は自動的に成り立つ。$\square$
$f\colon S^1\to S^1$、$f(z)=z^2$ とし、Möbius の帯を Möbiusの帯 の記事の定義のとおり $M=([0,1]\times[-1,1])/\bigl((0,\tau)\sim(1,-\tau)\bigr)$ とする。同相写像 $\Phi\colon M_f\to M$ で、定義域の端 $i(S^1)$ を縁 $\partial M$ に、値域の端 $j(S^1)$ を芯の円周 $C$ に写すものがある。
要点:定義域の円周を 2 つの半円に分け、それぞれの線分を帯の上半分・下半分の縦の線分に写す。
$u\in[0,1]$、$t\in I$ について $$ \Phi\bigl(q(e^{2\pi iu},t)\bigr):=\begin{cases}[2u,\ 1-t]&(0\le u\le\tfrac12),\\ [2u-1,\ t-1]&(\tfrac12\le u\le1),\end{cases}\qquad\Phi\bigl(q(e^{2\pi iv})\bigr):=[v,0]\quad(v\in[0,1]) $$ とおく。$u=\tfrac12$ では $[1,1-t]=[0,t-1]$、$u=0$ と $u=1$ では $[0,1-t]=[1,t-1]$、$v=0$ と $v=1$ では $[0,0]=[1,0]$ なので矛盾なく定まる。$t=1$ では値 $[2u,0]$ または $[2u-1,0]$ が $\Phi(q(f(e^{2\pi iu})))=\Phi(q(e^{4\pi iu}))$ と一致するので、同一視とも両立する。閉区間ごとの式を貼り合わせたものなので $\Phi$ は連続である。
$M$ の点 $[s,\tau]$ は、$\tau>0$ なら $u=s/2$、$t=1-\tau$ の点の、$\tau<0$ なら $u=(s+1)/2$、$t=1+\tau$ の点の、$\tau=0$ なら値域の端の点 $q(e^{2\pi is})$ の像であり、これらは $M_f$ の点として一意に決まるので $\Phi$ は全単射である。$M_f$ はコンパクト、$M$ は Hausdorff(Möbiusの帯 の記事の命題「別の作り方と $\mathbb{R}^3$ への埋め込み」)なので $\Phi$ は同相写像である。$t=0$ の点は $[2u,1]$ または $[2u-1,-1]$、すなわち縁に、$j(S^1)$ は $\tau=0$ の芯に写る。$\square$
$g\colon S^1\sqcup S^1\to S^1$ を、第 1 成分では恒等写像、第 2 成分では $z\mapsto z^2$ とする。$M_g$ は 2 次元の CW 複体で、円環 $S^1\times I$ と Möbius の帯をともに変形レトラクトとして含む。
$M_g$ が CW 複体であることは prop-mcyl-circle-cw の証明と同じである(定義域の円周ごとに線分 1 本と正方形 1 枚を貼る)。$P_k:=q\bigl((S^1_k\times I)\sqcup S^1\bigr)$($k=1,2$)とおくと、$P_k$ は飽和した閉集合の像なので閉集合であり、$q$ の制限は商写像だから、$P_1$ は恒等写像の写像柱、$P_2$ は $z\mapsto z^2$ の写像柱と同相である。ex-mcyl-basic の 1 と prop-mcyl-mobius により、$P_1$ は円環、$P_2$ は Möbius の帯である。$P_1\cap P_2=j(S^1)$ である。$P_2$ の上で値域の端への強変位レトラクション $D$(前節)を使い、$P_1$ の上では動かさないホモトピーを考える。2 つは $j(S^1)$ の上で一致し、$P_1\times I$ と $P_2\times I$ は閉集合なので、貼り合わせて連続である。これは $M_g$ を $P_1$ に強変位レトラクトする。$P_1$ と $P_2$ の役割を入れ替えれば $P_2$ についても同じである。$\square$
部分空間 $A\subset X$ と連続写像 $f\colon A\to B$ について、$B$ に $X$ を $f$ で貼り付けた空間を
$$
B\cup_fX:=(B\sqcup X)\big/\bigl(a\sim f(a)\ (a\in A)\bigr)
$$
とし、商写像を $\pi$、$X\to B\cup_fX$ を $k(x):=\pi(x)$ と書く。$f$ がホモトピー同値なら、$k$ もホモトピー同値であってほしい。ホモトピー拡張性質があればそうなる。
対 $(X,A)$ がホモトピー拡張性質をもち、$f\colon A\to B$ がホモトピー同値ならば、$k\colon X\to B\cup_fX$ はホモトピー同値である。
証明では $f$ の写像柱 $M_f$(記号は def-mcyl-main の $X,Y$ を $A,B$ に読み替える)を挟んだ空間
$$
Z:=(M_f\sqcup X)\big/\bigl(i(a)\sim a\ (a\in A)\bigr)
$$
を使う。商写像を $\rho$ とし、$\kappa\colon X\to Z$、$\kappa(x):=\rho(x)$ とおく。$Z$ は $X$ の $A$ の部分に柱 $A\times I$ を立て、その先を $f$ で $B$ に貼った空間である。$X\xrightarrow{\kappa}Z\xrightarrow{p}B\cup_fX$ と分けて、それぞれがホモトピー同値であることを示す。
段 1:$i(A)$ は $M_f$ の強変位レトラクトである。 Whiteheadの定理 の記事の命題「写像柱の性質」により $r$ はホモトピー同値で、$j\circ r\simeq\mathrm{id}_{M_f}$ である。よって $i\simeq j\circ r\circ i=j\circ f$ であり、ホモトピー同値の合成 $j\circ f$ にホモトピックな $i$ もホモトピー同値である。$i$ は $A$ から $i(A)$ への同相写像なので(prop-mcyl-basic の 1)、包含 $i(A)\hookrightarrow M_f$ はホモトピー同値である。$i(A)$ は閉集合で、$(M_f,i(A))$ はホモトピー拡張性質をもつ(prop-mcyl-basic の 3)。コファイブレーション の記事の定理「ホモトピー同値なコファイブレーション」により、$i(A)$ は $M_f$ の強変位レトラクトである。すなわち、$i(A)$ の点を動かさないホモトピー $K\colon M_f\times I\to M_f$ で $K_0=\mathrm{id}$、$K_1(M_f)\subset i(A)$ となるものがある。
段 2:$\kappa$ はホモトピー同値である。 $L\colon Z\times I\to Z$ を、$L(\rho(m),t):=\rho(K(m,t))$($m\in M_f$)、$L(\rho(x),t):=\rho(x)$($x\in X$)で定める。$K$ は $i(A)$ の点を動かさないので、$i(a)\sim a$ の両側で値は $\rho(i(a))$ に一致する。$I$ は局所コンパクトなので $\rho\times\mathrm{id}_I$ は商写像であり(Hat02 Appendix, Proposition A.17, p. 532)、$L$ は連続である。$\sigma\colon Z\to X$ を $\sigma(\rho(m)):=i^{-1}(K_1(m))$、$\sigma(\rho(x)):=x$ で定めると、$\sigma(\rho(i(a)))=a$ なので矛盾なく定まり、連続である。$\sigma\circ\kappa=\mathrm{id}_X$ であり、$\kappa\circ\sigma=L_1\simeq L_0=\mathrm{id}_Z$ である($m\in M_f$ では $\kappa(i^{-1}(K_1(m)))=\rho(K_1(m))$)。よって $\kappa$ はホモトピー同値である。
段 3:つぶす写像 $p$。 $p\colon Z\to B\cup_fX$ を $p(\rho(m)):=\pi(r(m))$、$p(\rho(x)):=\pi(x)$ で定める。$p(\rho(i(a)))=\pi(f(a))=\pi(a)$ なので矛盾なく定まり、連続である。定義から $p\circ\kappa=k$ である。
段 4:$p$ のホモトピー逆写像。 $D\colon M_f\times I\to M_f$ を値域の端への強変位レトラクション $D(q(a,s),t):=q(a,s+(1-s)t)$、$D(q(b),t):=q(b)$ とする。$X$ への写像 $\kappa$ と $A$ の上のホモトピー $h(a,t):=\rho(q(a,t))$ は $h(a,0)=\rho(i(a))=\kappa(a)$ を満たすので、$(X,A)$ のホモトピー拡張性質により、$F\colon X\times I\to Z$ で $F_0=\kappa$、$F(a,t)=\rho(q(a,t))$ となるものがある。$F_1(a)=\rho(q(a,1))=\rho(j(f(a)))$ である。そこで $g\colon B\cup_fX\to Z$ を $g(\pi(b)):=\rho(j(b))$、$g(\pi(x)):=F_1(x)$ で定めると、$a\sim f(a)$ の両側で値が一致し、連続である。
$g\circ p\simeq\mathrm{id}_Z$:$G\colon Z\times I\to Z$ を $G(\rho(m),t):=\rho(D(m,t))$、$G(\rho(x),t):=F(x,t)$ で定める。$m=i(a)$ では $\rho(D(q(a,0),t))=\rho(q(a,t))=F(a,t)$ なので矛盾なく定まり、段 2 と同じ理由で連続である。$G_0=\mathrm{id}_Z$ である。$D_1(m)=j(r(m))$ なので $G_1(\rho(m))=\rho(j(r(m)))=g(p(\rho(m)))$、また $G_1(\rho(x))=F_1(x)=g(p(\rho(x)))$ であり、$G_1=g\circ p$ である。
$p\circ g\simeq\mathrm{id}$:$H\colon(B\cup_fX)\times I\to B\cup_fX$ を $H(\pi(b),t):=\pi(b)$、$H(\pi(x),t):=p(F(x,t))$ で定める。$x=a\in A$ では $p(F(a,t))=p(\rho(q(a,t)))=\pi(r(q(a,t)))=\pi(f(a))$ なので、$a\sim f(a)$ の両側で値が一致し、$\pi\times\mathrm{id}_I$ が商写像であることから連続である。$H_0(\pi(x))=p(\kappa(x))=\pi(x)$ なので $H_0=\mathrm{id}$ である。$p(g(\pi(b)))=\pi(r(j(b)))=\pi(b)$、$p(g(\pi(x)))=p(F_1(x))$ なので $H_1=p\circ g$ である。
以上で $p$ はホモトピー同値であり、$k=p\circ\kappa$ はホモトピー同値の合成としてホモトピー同値である。$\square$
この定理は Hat02 Exercise 27(Chapter 0, p. 20)の主張で、同所のヒントは $X$ を写像柱 $M_f$ の中に置いて考えることである。
$(X,A)$ がホモトピー拡張性質をもち、$A$ が空でなく可縮なら、商写像 $X\to X/A$ はホモトピー同値である。
$B$ を一点とすると $f\colon A\to B$ はホモトピー同値で、$B\cup_fX=X/A$、$k$ は商写像である。thm-mcyl-attach を当てはめればよい。$\square$
この系は コファイブレーション の記事の定理「可縮な部分空間をつぶす商写像」と同じ主張で、そちらは写像柱を使わずに示している。
貼り付けの側も同じ性質を受け継ぐ。$(X,A)$ がホモトピー拡張性質をもてば、任意の $f\colon A\to B$ について $(B\cup_fX,B)$ もホモトピー拡張性質をもつ(証明は 写像錐(位相) の記事の補題「貼り合わせとホモトピー拡張性質」の証明の後半と同じで、そこでは $A$ が閉集合であることを使っていない。Hat02 Exercise 28, p. 20)。
Möbiusの帯 の縁は帯のレトラクトでない。prop-mcyl-mobius により、これは次数 $2$ の写像の写像柱が定義域の端にレトラクトしないということであり、次のように一般化される。
$n\ge1$ とし、$f\colon S^n\to S^n$ を写像度 $m$ の写像で $|m|\ne1$ とする。$M_f$ から定義域の端 $i(S^n)$ へのレトラクションは存在しない。
レトラクション $\varphi\colon M_f\to i(S^n)$ があるとし、包含を $\iota\colon i(S^n)\hookrightarrow M_f$ とする。$\varphi\circ\iota=\mathrm{id}$ なので、$n$ 次のホモロジーで $\varphi_*\circ\iota_*=\mathrm{id}$ である。同相写像 $i\colon S^n\to i(S^n)$ と同型 $r_*\colon H_n(M_f)\to H_n(S^n)$ で両側を $H_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$ に取り替えると、$r\circ\iota\circ i=r\circ i=f$ なので、$\iota_*$ は $f_*$、すなわち $m$ 倍写像 $\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ になり、$\varphi_*$ は準同型 $\lambda\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ になって $\lambda\circ(m\,\cdot)=\mathrm{id}$ を満たす。すると $1=\lambda(m)=m\lambda(1)$ となり、$m$ は $1$ の約数で $|m|=1$ である。これは仮定に反する。$\square$
Hat02 p. 148 は $m>1$ の場合を、対 $(M_f,S^n)$ の短完全列が分裂しないことから示している。$n=1$、$m=2$ が Möbius の帯の場合である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $(X,A)$ のホモトピー拡張性質(thm-mcyl-attach) | $A_0:=\{0\}\cup\{1/n\mid n\ge1\}\subset[0,1]$ の包含 $\iota$ の写像錐 $X:=C_\iota$ と、その中の錐 $A:=CA_0$、$B$ は一点 | $A$ は可縮で $f\colon A\to B$ はホモトピー同値だが、$k\colon C_\iota\to C_\iota/CA_0$ はホモトピー同値でない |
| $f$ がホモトピー同値(thm-mcyl-attach) | $A=X=S^1$、$B$ は一点 | $(X,A)$ はホモトピー拡張性質をもつが、$k\colon S^1\to\{*\}$ はホモトピー同値でない |
| $\lvert m\rvert\ne1$(prop-mcyl-no-retraction) | $f=\mathrm{id}_{S^n}$($m=1$) | $M_f\cong S^n\times I$ は $S^n\times\{0\}$ にレトラクトする(射影 $(x,t)\mapsto(x,0)$) |
1 行目の確かめ:$CA_0$ は $C_\iota$ の閉集合で、可縮である(錐(位相) の記事の命題「錐は可縮」)。$C_\iota/CA_0$ は $[0,1]/A_0$ と同相である(写像錐(位相) の記事の定理「包含の写像錐と商空間」の証明の後半。そこではホモトピー拡張性質を使っていない)。同記事の例「反例:収束列の包含」により、$H_1(C_\iota)$ は可算で $H_1([0,1]/A_0)$ は非可算なので、$C_\iota$ と $C_\iota/CA_0$ はホモトピー同値でない。thm-mcyl-attach により、$(C_\iota,CA_0)$ はホモトピー拡張性質をもたない。
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