Kneserグラフ(Kneser graph)とは、$n$ 元集合の $k$ 元部分集合を頂点とし、交わらない 2 つを辺で結んだグラフ $\mathrm{KG}(n,k)$ のことで、$\mathrm{KG}(5,2)$ は Petersen グラフである。$\binom nk$ 頂点の $\binom{n-k}k$-正則グラフで、$n\ge2k$ なら独立数は Erdős–Ko–Rado の定理により $\binom{n-1}{k-1}$、クリーク数は $\lfloor n/k\rfloor$、彩色数は Kneser 予想により $n-2k+2$ である。$n\ge2k+1$ では自己同型群は $S_n$ と同型で、直径は $\lceil(k-1)/(n-2k)\rceil+1$、最短の奇閉路は長さ $2\lceil k/(n-2k)\rceil+1$ である。
Kneser グラフ(Kneser graph)とは、$n$ 元集合 $[n]=\{1,\dots,n\}$ の $k$ 元部分集合を頂点とし、互いに交わらない 2 つの部分集合を辺で結んだグラフのことであり、$\mathrm{KG}(n,k)$ と書く。$n=5$、$k=2$ のときが Petersenグラフ である。頂点の数は $\binom nk$ で、どの頂点の次数も $\binom{n-k}k$ である。
$[n]$ の置換はそのまま自己同型になり、どの頂点もどの辺も同じ立場にある。独立集合は「どの 2 つも交わる集合族」にほかならないので、独立数は Erdős–Ko–Radoの定理 で決まる。彩色数が $n-2k+2$ であることは Kneser予想 で、位相的な方法の出発点になった。この記事では、基本的な数と例から始め、$n\ge2k+1$ で自己同型群が対称群 $S_n$ に等しいこと、2 頂点の距離が共通部分の大きさだけで決まることとその帰結としての直径と最短の奇閉路の長さを証明し、奇グラフ・Schrijver グラフとの関係を述べる。
$n\ge1$、$1\le k\le n$ とし、$[n]$ の $k$ 元部分集合の全体を $\binom{[n]}k$ と書く。グラフはループも平行辺ももたない有限の単純グラフとし、記号は 彩色数 の記事のもの($\chi$ は彩色数、$\omega$ はクリーク数、$\alpha$ は独立数)を使う。
$\binom{[n]}k$ を頂点の集合とし、$A\cap B=\emptyset$ となる 2 頂点 $A,B$ を辺で結んだグラフを Kneser グラフ といい、$\mathrm{KG}(n,k)$ と書く。
Petersenグラフ の記事は同じグラフを $K(n,k)$ と書き、Kneser予想 の記事はこの記事と同じく $\mathrm{KG}(n,k)$ と書く。
$[n]$ の置換 $\sigma$ は、$A\mapsto\sigma(A)$ によって $\binom{[n]}k$ の置換 $\hat\sigma$ を引き起こす。
$n=5$、$k=2$ では、Petersenグラフ の記事の定理「自己同型群」と一致する。$n=2k$、$k\ge2$ では 2 は成り立たない(ex-kg-counterexamples の 1 行目)。
$n<2k$ では辺がないので $\alpha=\binom nk$ であり、$n=2k$ では最大の独立集合は補集合の対から 1 つずつ選んだ族の全体で、$k\ge2$ なら星以外にもある(Erdős–Ko–Radoの定理 の命題「$n=2k$ の場合の最大の族」)。
彩色数は Kneser予想 の定理「Kneser予想」で決まる:$k\ge1$、$n\ge2k-1$ なら $\chi(\mathrm{KG}(n,k))=n-2k+2$ である。$n-2k+2$ 色で塗れることは、最小元が $1,\dots,n-2k+1$ の集合をその最小元の色で、残りの $2k-1$ 元集合 $\{n-2k+2,\dots,n\}$ の $k$ 元部分集合を最後の色で塗ればよい。これより少ない色で塗れないことの証明には Borsuk–Ulamの定理 を使う(Kneser予想 の記事に証明がある)。$\omega=\lfloor n/k\rfloor$ と $n/k$ は $n=3k-1$ で $3$ 未満にとどまるが、$\chi=k+1$ はいくらでも大きくなる。
この節では $n\ge2k+1$ とし、$p:=n-2k\ (\ge1)$ とおく。頂点の列 $v_0,v_1,\dots,v_\ell$ で、隣り合う 2 つが隣接するものを、$v_0$ から $v_\ell$ への長さ $\ell$ の 歩道 という(頂点の重複を許す)。2 頂点の距離 $d(A,C)$ は、$A$ から $C$ への歩道の長さの最小値である(距離(グラフ) の補題「歩道からの道の取り出し」)。
$A,C\in\binom{[n]}k$、$s:=\lvert A\cap C\rvert$、$\ell\ge0$ とする。
$\ell$ についての帰納法で、「$\ell$ での 1 $\Rightarrow$ $\ell$ での 2 $\Rightarrow$ $\ell+1$ での 1」を示す。$\ell=0$ での 1 は、長さ $0$ の歩道があることが $A=C$、すなわち $s=k$ と同じであることによる。
長さ $\ell'+1$ の歩道 $A\to C$ があることは、ある $D$ について長さ $\ell'$ の歩道 $A\to D$ があり $D\cap C=\emptyset$ であることと同じである。$D$ は $n-k$ 元集合 $[n]\setminus C$ の $k$ 元部分集合を動く。$[n]\setminus C$ のうち $A$ に属する元は $k-s$ 個、属さない元は $n-2k+s=p+s$ 個である。
$\ell$ での 1 $\Rightarrow$ $\ell$ での 2.$\ell$ での 1 により、条件は $k-\lvert A\cap D\rvert\le\ell p$ となる $D$ があることである。$\lvert A\cap D\rvert$ の最大値は $\min\{k,k-s\}=k-s$($A\setminus C$ を含む $D$ をとる)なので、条件は $k-(k-s)=s\le\ell p$ である。
$\ell$ での 2 $\Rightarrow$ $\ell+1$ での 1.$\ell$ での 2 により、条件は $\lvert A\cap D\rvert\le\ell p$ となる $D$ があることである。$\lvert A\cap D\rvert$ の最小値は、$D$ に $A$ に属さない元をできるだけ入れて $\max\{0,k-(p+s)\}$ なので、条件は $k-s-p\le\ell p$、すなわち $k-s\le(\ell+1)p$ である。$\square$
$n\ge2k+1$、$p=n-2k$ とする。相異なる頂点 $A,C$ について $s=\lvert A\cap C\rvert$ とおくと
$$
d(A,C)=\min\Bigl\{\,2\Bigl\lceil\frac{k-s}p\Bigr\rceil,\ 2\Bigl\lceil\frac sp\Bigr\rceil+1\Bigr\}
$$
である。とくに $\mathrm{KG}(n,k)$ は連結で、その直径は $\bigl\lceil\frac{k-1}{p}\bigr\rceil+1$ である。
距離の式は lem-kg-walk から直ちに従う:長さ $2\ell$ の歩道がある最小の $\ell$ は $\lceil(k-s)/p\rceil$、長さ $2\ell+1$ の歩道がある最小の $\ell$ は $\lceil s/p\rceil$ である。$a:=\lceil(k-s)/p\rceil$、$b:=\lceil s/p\rceil$、$M:=\lceil(k-1)/p\rceil$ とおく。$0\le s\le k-1$ で、どの $s$ もある 2 頂点の共通部分の大きさとして現れる($2k-s\le n$)。
上界.$a\le b$ なら $\min\{2a,2b+1\}\le2a\le a+b$、$a\ge b+1$ なら $\min\{2a,2b+1\}\le2b+1\le a+b$ なので、距離は $a+b$ 以下である。$s=0$ なら距離は $1\le M+1$ である。$s\ge1$ なら $b=\lfloor(s-1)/p\rfloor+1$ で、$\lceil x\rceil+\lfloor y\rfloor\le\lceil x+y\rceil$ により $a+b\le\lceil(k-s)/p+(s-1)/p\rceil+1=M+1$ である。
下界.$k=1$ なら $M=0$ で、$\mathrm{KG}(n,1)=K_n$($n\ge3$)の直径は $1$ である。$k\ge2$ なら $M\ge1$ で、距離が $M+1$ 以上の 2 頂点を作る。
$M=2r$($r\ge1$)のとき、$M$ の定義から $(2r-1)p< k-1\le2rp$ である。$s:=(r-1)p+1$ とおくと $1\le s\le(2r-1)p+1\le k-1$ であり、$(r-1)p< s\le rp$ から $b=r$、$k-s>(2r-1)p-(r-1)p=rp$ から $a\ge r+1$ である。よって距離は $\min\{2a,2r+1\}=2r+1=M+1$ である。
$M=2r+1$($r\ge0$)のとき、$2rp< k-1\le(2r+1)p$ である。$s:=rp+1$ とおくと $1\le s\le k-1$ であり、$b=r+1$、$k-s>2rp-rp=rp$ から $a\ge r+1$ である。よって距離は $\min\{2a,2r+3\}\ge2r+2=M+1$ である。$\square$
$n=2k$ では、prop-kg-basic の 3 により $k\ge2$ なら連結でない(直径は $\infty$)。
始点と終点が同じ歩道を閉じた歩道という。長さ $L$ の奇閉路は長さ $L$ の閉じた歩道である。逆に、奇数の長さの閉じた歩道のうち(始点も動かして)長さが最小のもの $v_0,\dots,v_L$ は閉路である。実際、$0\le i< j\le L$、$(i,j)\ne(0,L)$ で $v_i=v_j$ なら、$v_i,\dots,v_j$ と $v_0,\dots,v_i,v_{j+1},\dots,v_L$ は長さ $j-i$ と $L-(j-i)$ の閉じた歩道で、どちらも $L$ より短く、一方は奇数の長さである。ループがないので $L\ne1$、よって $L\ge3$ である。したがって求める長さは奇数の長さの閉じた歩道の長さの最小値であり、lem-kg-walk の 2 を $C=A$($s=k$)に当てると、どの始点 $A$ についても $2\lceil k/p\rceil+1$ である。$n\ge3k$ は $p\ge k$ と同じで、このとき長さは $3$ である。$\square$
$\mathrm{KG}(5,2)$ では $p=1$ で、thm-kg-distance により、交わる 2 頂点($s=1$)の距離は $\min\{2,3\}=2$、直径は $\lceil1/1\rceil+1=2$ である。cor-kg-odd-girth により最短の奇閉路の長さは $5$ である。thm-kg-alpha により独立数は $\binom41=4$、クリーク数は $2$ で、彩色数は $5-4+2=3$ である。これらは Petersenグラフ の記事の命題「共通の隣接頂点と内周」(内周 $5$、直径 $2$)と命題「Petersen グラフの彩色数」、独立集合 の記事の例「Petersen グラフの独立数」と一致する。
$k\ge1$ について $O_k:=\mathrm{KG}(2k+1,k)$ を 奇グラフ(odd graph)という。$p=1$ なので、上の結果から次が分かる。
| 量 | $O_k=\mathrm{KG}(2k+1,k)$ |
|---|---|
| 頂点の数・次数 | $\binom{2k+1}k$、$k+1$ |
| 独立数・クリーク数 | $\binom{2k}{k-1}$、$2$($k\ge2$) |
| 彩色数 | $3$ |
| 直径 | $k$ |
| 最短の奇閉路 | $2k+1$ |
$O_1=K_3$、$O_2$ は Petersen グラフ、$O_3=\mathrm{KG}(7,3)$ は 35 頂点の 4-正則グラフで直径 $3$ である。奇グラフは距離正則グラフの代表的な族であり、文献によっては添字をずらして、$2k-1$ 元集合の $k-1$ 元部分集合からなるグラフを $O_k$ と書き、Petersen グラフを $O_3$ とする(vDKT16 §2.2.3、p. 9)。
小さい Kneser グラフの不変量を、この記事の結果から求めると次のようになる。
| $(n,k)$ | 頂点 | 次数 | $\alpha$ | $\omega$ | $\chi$ | 直径 | 最短の奇閉路 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $(5,2)$ | $10$ | $3$ | $4$ | $2$ | $3$ | $2$ | $5$ |
| $(6,2)$ | $15$ | $6$ | $5$ | $3$ | $4$ | $2$ | $3$ |
| $(7,2)$ | $21$ | $10$ | $6$ | $3$ | $5$ | $2$ | $3$ |
| $(7,3)$ | $35$ | $4$ | $15$ | $2$ | $3$ | $3$ | $7$ |
| $(8,3)$ | $56$ | $10$ | $21$ | $2$ | $4$ | $2$ | $5$ |
| $(9,4)$ | $126$ | $5$ | $56$ | $2$ | $3$ | $4$ | $9$ |
$(8,3)$ は三角形をもたないのに彩色数が $4$ の例であり(Kneser予想 の例「三角形を含まないのに彩色数が大きい」)、直径は $2$ と小さい。
$0< 2k< n$ とする。$[n]$ の元を円周に $1,2,\dots,n$ の順に並べたとき、隣り合う 2 元($i$ と $i+1$、および $n$ と $1$)をともには含まない $k$ 元集合を 安定な $k$ 元集合という。安定な $k$ 元集合の全体が $\mathrm{KG}(n,k)$ の中で張る誘導部分グラフを Schrijver グラフ といい、$\mathrm{SG}(n,k)$ と書く。
安定な $k$ 元集合は、長さ $n$ の閉路グラフ $C_n$ の $k$ 元の独立集合と同じものである。
$k\ge1$ とする。$\mathrm{SG}(2k+1,k)$ は長さ $2k+1$ の閉路 $C_{2k+1}$ と同型である。
$[2k+1]$ を $\mathbb Z/(2k+1)\mathbb Z$ と同一視する。安定な $k$ 元集合 $A$ の元を円周の順に並べると、隣り合う元の間隔($k$ 個)はどれも $2$ 以上で、合計が $2k+1$ なので、ちょうど 1 つが $3$ で残りは $2$ である。間隔 $3$ の直後の元を $a$ とすれば $A=A_a:=\{a,a+2,\dots,a+2(k-1)\}$ であり、逆に各 $A_a$($a\in\mathbb Z/(2k+1)\mathbb Z$)は安定である。$A_a$ は相異なる $2k+1$ 個の集合である($a$ は「直前の元が $a-3$」として $A_a$ から決まる)。$2$ の逆数 $h:=k+1$ を掛ける写像 $x\mapsto hx$ は $\mathbb Z/(2k+1)\mathbb Z$ の全単射で、$A_a$ を長さ $k$ の区間 $I_a:=\{ha,ha+1,\dots,ha+k-1\}$ に写す。長さ $k$ の 2 つの区間 $\{c,\dots,c+k-1\}$、$\{c',\dots,c'+k-1\}$ が交わらないことは $c'-c\in\{k,k+1\}$ と同じなので、$A_a$ と $A_b$ が隣接することは $h(b-a)\equiv\pm k$、すなわち $b-a\equiv\pm2k\equiv\mp1$ と同じである。よって $A_a$ を $a$ の順に並べると、隣り合う番号どうしだけが隣接し、$C_{2k+1}$ になる。$\square$
A. Schrijver は、$\chi(\mathrm{SG}(n,k))=n-2k+2$ であり、どの頂点を除いた誘導部分グラフも彩色数がこれより小さいこと(頂点臨界性)を示した(MZ04 p. 15。この記事では証明しない)。$\mathrm{KG}(n,k)$ から多くの頂点を除いても彩色数は下がらず、$\mathrm{SG}(n,k)$ まで減らしたところで初めて、どの 1 頂点を除いても下がるようになる。prop-kg-sg-cycle はこの定理の最も簡単な場合で、奇閉路 $C_{2k+1}$ の彩色数は $3=(2k+1)-2k+2$ であり、1 頂点を除くと道になって 2 色で塗れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-kg-aut の 2 の $n\ge2k+1$ | $\mathrm{KG}(4,2)$ | $\operatorname{Aut}\cong S_n$ |
| thm-kg-alpha の 1 の $n\ge2k$ | $\mathrm{KG}(3,2)$ | $\alpha=\binom{n-1}{k-1}$ |
| thm-kg-alpha の 1 の後半の $n>2k$ | $\mathrm{KG}(4,2)$ の独立集合 $\{12,13,23\}$ | 最大の独立集合が星に限ること |
| thm-kg-distance の $n\ge2k+1$ | $\mathrm{KG}(4,2)$ | 連結であること |
1 行目:$\mathrm{KG}(4,2)$ は 3 本の辺が端点を共有しないグラフ(ex-kg-small の 1)なので、3 本の辺を任意に並べ替え、各辺の両端を独立に入れ替えてよく、自己同型は $3!\cdot2^3=48$ 個ある。$\lvert S_4\rvert=24$ なので $\operatorname{Aut}\not\cong S_4$ である。prf-kg-aut では、最大の独立集合が星に限ることを使う段が崩れる。
2 行目:$\mathrm{KG}(3,2)$ は辺をもたない 3 頂点のグラフなので $\alpha=3$ だが、$\binom{2}{1}=2$ である。
3 行目:$\{12,13,23\}$ のどの 2 つも交わり、元は $3=\binom31$ 個で最大だが、3 つすべてに共通な元はなく、星ではない。
4 行目:prop-kg-basic の 3 により、$\mathrm{KG}(4,2)$ は 3 つの連結成分をもつ。
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