異種球面

同義語:エキゾチック球面exotic sphereMilnorの異種球面Milnor球面Milnor sphere異種な滑らかな構造exotic smooth structureMilnorのλ不変量Reebの球面定理Reeb sphere theorem

概要

異種球面(exotic sphere)とは、球面 $S^n$ と同相だが微分同相でない滑らかな閉多様体のことである。最初の例は Milnor の $7$ 次元の例で、$S^4$ の上の $S^3$ 束の全空間 $M_k$ である。$M_k$ には臨界点がちょうど 2 個の非退化な関数があり、Reeb の定理により $S^7$ と同相になる。一方、境界を張る $8$ 次元多様体の符号数と Pontryagin 数から作る $\lambda\in\mathbb{Z}/7$ は、Hirzebruch の符号数定理により滑らかな構造の不変量で、$\lambda(S^7)=0$、$\lambda(M_k)=k^2-1$ である。よって $k^2\not\equiv1\pmod 7$ の $M_k$ は $S^7$ と微分同相でなく、$S^7$ の上には少なくとも 3 つの滑らかな構造がある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 可微分多様体, 微分同相, Morse関数, Poincaré双対, カップ積

球面 $S^n$ と同相だが微分同相でない滑らかな多様体を異種球面(exotic sphere)という。位相的には同じ球面の上に、互いに移り合わない滑らかな構造が複数あるということである。最初の例は Milnor(1956)が与えた $7$ 次元の例で、$4$ 次元球面の上の $3$ 次元球面束の全空間として作られる。
Milnor の議論は 2 つの独立な部分からなる。

  1. 同相であること:全空間の上に、臨界点がちょうど 2 個で、どちらも非退化な関数を具体的に書く。このような関数をもつ閉多様体は球面と同相である(Reeb の定理)。
  2. 微分同相でないこと:$S^7$ と同じコホモロジーをもつ向き付けられた滑らかな $7$ 次元閉多様体 $M$ に対し、$M$ を境界にもつ $8$ 次元の多様体の符号数と Pontryagin 数から $\mathbb{Z}/7$ の値 $\lambda(M)$ を作る。Hirzebruch の符号数定理によって、この値は境界の張り方によらず、したがって $M$ の微分同相不変量になる。$\lambda(S^7)=0$ だが、Milnor の例では $\lambda\ne0$ となる。
    この記事では、Reeb の定理、Milnor の関数の臨界点の計算、$\lambda$ が滑らかな構造の不変量であること、例での $\lambda$ の計算を完全に証明する。証明なしに使うのは、Thom の同境の定理($7$ 次元の閉多様体が境界になること)、Hirzebruch の符号数定理、束の Pontryagin 類の計算(Milnor の Lemma 3)、Pontryagin 類の基本性質 (P1)–(P3) で、いずれも所在を示す。

定義と規約

この記事では、多様体は Hausdorff かつ第 2 可算で、「滑らか」は $C^\infty$ 級を指す。$-M$ は向き付けられた多様体 $M$ の向きを反転したものである。コホモロジーは特異コホモロジーで、係数を書かなければ $\mathbb{Z}$ とする。

異種球面

滑らかな $n$ 次元閉多様体 $\Sigma$ が $S^n$ と同相で、$S^n$ と微分同相でないとき、$\Sigma$ を $n$ 次元の異種球面という。このとき、同相写像 $\Sigma\to S^n$ で $\Sigma$ の滑らかな構造を $S^n$ に移したものを、$S^n$ の上の異種な滑らかな構造(exotic smooth structure)という。

$S^n$ の標準的な構造と「異なる」とは、構造が座標近傍の族として異なるという意味ではない。$S^n$ の同相写像 $\phi$ で構造を引き戻せば構造は変わるが、$\phi$ そのものが引き戻した構造から元の構造への微分同相写像なので、微分同相を除けば同じである。異種球面は、どの同相写像で比べても微分同相にならないものである。
符号数と Pontryagin 類を準備する。有理数体 $\mathbb{Q}$ の上の有限次元ベクトル空間 $V$ の対称双線形形式 $b$ は、基底を取り替えて対角化できる(二次形式 の定理「平方完成による対角化」)。対角成分の正の個数から負の個数を引いたものは基底によらない(Sylvester の慣性法則)。これを $b$ の符号数(signature)といい、$\sigma(b)$ と書く。
ランク $r$ の実ベクトル束 $\xi$ の第 1 Pontryagin 類 $p_1(\xi)\in H^4(\text{底空間})$ について、次の事実を使う(MS74 §15。この記事では証明しない)。

  • (P1) 束の引き戻しと可換である。とくに $B$ の中の余次元 $0$ の部分多様体 $U$(境界があってよい)について、$TU=TB\vert_U$ なので $p_1(TB)\vert_U=p_1(TU)$ である(MS74 Lemma 15.2、p. 174)。
  • (P2) 自明な束 $\varepsilon$ を足しても変わらない:$p_1(\xi\oplus\varepsilon)=p_1(\xi)$(同 Lemma 15.2)。2 つの束の Whitney 和について、$p_1(\xi\oplus\eta)-p_1(\xi)-p_1(\eta)$ は $2$ 倍すると $0$ になる元である(同 Theorem 15.3、p. 175)。
  • (P3) $p_1$ は束の向きを使わずに定義されるので、多様体の向きを反転しても $p_1$ は変わらない(同 p. 185 の注意)。
    滑らかな多様体 $B$ について $p_1(B):=p_1(TB)$ と書く。

λ 不変量

λ 不変量

$M$ を向き付けられた滑らかな $7$ 次元閉多様体(連結でなくてよい)で、$H^3(M)=H^4(M)=0$ をみたすものとする。$B$ をコンパクトな向き付けられた滑らかな $8$ 次元の境界付き多様体で、向きを込めて $\partial B=M$ となるものとし、基本類を $\nu\in H_8(B,M)$ とする。対 $(B,M)$ の長完全列
$$ H^3(M)\to H^4(B,M)\xrightarrow{j}H^4(B)\to H^4(M) $$
と仮定から、$j$ は同型である。

  • $\tau(B)$:$H^4(B,M;\mathbb{Q})$ の対称双線形形式 $(a,b)\mapsto\langle a\smile b,\nu\rangle$ の符号数。
  • $q(B):=\langle(j^{-1}p_1(B))^2,\nu\rangle\in\mathbb{Z}$。
    $2q(B)-\tau(B)$ の $7$ を法とする剰余類を $\lambda(M)\in\mathbb{Z}/7$ と定める(thm-exs-lambda により $B$ によらない)。

$\partial B=M$ となる $B$ があることは、Thom の同境の定理による:向き付けられた滑らかな $7$ 次元閉多様体は、向き付けられたコンパクトな $8$ 次元多様体の境界である(Mil56 p. 399 が Thom を引いて述べる。MS74 p. 203 の同境群の表の $\Omega_7=0$。この記事では証明しない。同境 の記事も見よ)。$j$ が同型であることは、$H^3(M)=0$ から単射、$H^4(M)=0$ から全射が従うことによる。

λ は張り方によらない

def-exs-lambda の $M$ について、$\partial B_1=\partial B_2=M$ となる 2 つの $B_1,B_2$ をとると
$$ 2q(B_1)-\tau(B_1)\equiv2q(B_2)-\tau(B_2)\pmod 7 $$
である。

これは Mil56 Theorem 1(p. 399)である。証明には次の定理を使う。

λ の定義の整合性

この定理は、$\lambda(M)$ が $M$ にだけ依存し、$M$ を境界にもつ $B$ の選び方によらないことを保証する。$\lambda$ が定義として意味をもつのはこのためである。証明では、2 つの $B_i$ を境界 $M$ に沿って貼り合わせた閉多様体に、次の Hirzebruch の符号数定理を適用する。

Hirzebruch の符号数定理(8 次元)

$C$ を向き付けられた滑らかな $8$ 次元閉多様体とし、$H^4(C;\mathbb{Q})$ の形式 $(a,b)\mapsto\langle a\smile b,[C]\rangle$ の符号数を $\sigma(C)$ とすると、
$$ 45\,\sigma(C)=\langle7p_2(C)-p_1(C)^2,[C]\rangle $$
である。

これは MS74 Theorem 19.4(p. 224)の $k=2$ の場合で、$L_2=\frac1{45}(7p_2-p_1^2)$(p. 225)による。この記事では証明しない。

λ は張り方によらないこと

$B_1$ と $B_2$ を $M$ に沿って貼り合わせた閉多様体 $C:=B_1\cup_M(-B_2)$ を作る。カラーを使って滑らかな構造が入り(境界に沿った貼り合わせと連結和 の定理「貼り合わせの滑らかな構造」)、$C$ には $B_1$ の上で $\nu_1$ と、$B_2$ の上で $-\nu_2$ と一致する向きが入る(同じ記事の定理「貼り合わせと向き」)。
段 1:$C$ の $4$ 次元コホモロジー。 $C$ の中の $M$ のカラーを使った切除により、制限の写像
$$ h\colon H^4(C,M)\to H^4(B_1,M)\oplus H^4(B_2,M) $$
は同型である(切除定理)。対 $(C,M)$ の長完全列と $H^3(M)=H^4(M)=0$ から、$j_C\colon H^4(C,M)\to H^4(C)$ も同型である。したがって
$$ \rho:=(\text{制限})\colon H^4(C)\to H^4(B_1)\oplus H^4(B_2) $$
は、同型 $j_1\oplus j_2$、$h$、$j_C^{-1}$ の合成 $\rho=(j_1\oplus j_2)\circ h\circ j_C^{-1}$ なので同型である(制限と $j$ は可換)。
段 2:形式の分解。 $a\in H^4(C,M)$ が $h(a)=(a_1,a_2)$ をみたすとき、基本類 $[C]$ の $H_8(C,M)\cong H_8(B_1,M)\oplus H_8(B_2,M)$ での像は $(\nu_1,-\nu_2)$ なので、
$$ \langle(j_Ca)^2,[C]\rangle=\langle a_1^2,\nu_1\rangle-\langle a_2^2,\nu_2\rangle \qquad(1) $$
である。$\mathbb{Q}$ 係数でも同じなので、$C$ の形式は $B_1$ の形式と $B_2$ の形式の $-1$ 倍の直交和であり、
$$ \sigma(C)=\tau(B_1)-\tau(B_2). \qquad(2) $$
段 3:Pontryagin 数の分解。 $\alpha_i:=j_i^{-1}p_1(B_i)$ とおく。(P1) により $p_1(C)$ の $B_i$ への制限は $p_1(B_i)=j_i\alpha_i$ なので、段 1 の同型から $p_1(C)=j_C\bigl(h^{-1}(\alpha_1,\alpha_2)\bigr)$ である。(1) により
$$ \langle p_1(C)^2,[C]\rangle=q(B_1)-q(B_2). \qquad(3) $$
段 4:$7$ を法として。 thm-exs-hirzebruch により $45\sigma(C)+\langle p_1(C)^2,[C]\rangle=7\langle p_2(C),[C]\rangle\equiv0\pmod7$ である。$45\equiv3$ なので、$Q:=\langle p_1(C)^2,[C]\rangle$ とおくと $3\sigma(C)+Q\equiv0$、両辺を $2$ 倍して $2Q\equiv-6\sigma(C)\equiv\sigma(C)\pmod7$、すなわち $2Q-\sigma(C)\equiv0\pmod7$ である。(2)・(3) を代入すると
$$ \bigl(2q(B_1)-\tau(B_1)\bigr)-\bigl(2q(B_2)-\tau(B_2)\bigr)\equiv0\pmod7 $$
が得られる。

段 1・段 2 の細部

切除:$M$ の $C$ の中のカラー $N\cong M\times(-1,1)$ をとる。$H^*(C,M)\to H^*(C,N)$ の逆向きの制限は、$N$ が $M$ に変形レトラクトすることと対の長完全列(5 項補題)から同型であり、$H^*(C,N)\cong H^*(C\setminus M,N\setminus M)$ は切除による。$C\setminus M$ は $B_1\setminus M$ と $B_2\setminus M$ の非交和で、$N\setminus M$ はそれぞれの側のカラーの非交和なので、同じ議論を逆にたどって $H^*(B_1,M)\oplus H^*(B_2,M)$ と同型になる。基本類についても同じ切除の同型のもとで、$[C]$ は各 $B_i$ の上で $C$ の向きが定める基本類、すなわち $\nu_1$ と $-\nu_2$ に写る(基本類は局所的な向きで特徴づけられる。Poincaré双対 の定理「基本類の存在と一意性」と定理「Lefschetz 双対」)。

(1):カップ積は切除の同型と可換で、$H^8(C,M)\cong H^8(B_1,M)\oplus H^8(B_2,M)$ の上で $a\smile a$ は $(a_1\smile a_1,a_2\smile a_2)$ に写る。これを $(\nu_1,-\nu_2)$ で評価すれば (1) である。$j_C$ は同型なので、$C$ の形式は $H^4(C,M)$ の形式 $(a,b)\mapsto\langle a\smile b,[C]\rangle$ と同じものであり、(1) を分極すれば直交和の分解が得られる。符号数は直交和で和になり、形式を $-1$ 倍すると符号が反転するので (2) が従う。$\square$

λ の基本性質

def-exs-lambda の条件をみたす $M$、$M'$ について次が成り立つ。

  1. 向きを保つ微分同相写像 $M\to M'$ があれば $\lambda(M)=\lambda(M')$ である。
  2. $\lambda(-M)=-\lambda(M)$ である。
  3. $\lambda(M\sqcup M')=\lambda(M)+\lambda(M')$ である。
  4. $M=\partial W$ で $H^4(W,M;\mathbb{Q})=0$ となる $W$ があれば $\lambda(M)=0$ である。とくに $\lambda(S^7)=0$ である。

1:$\phi\colon M\to M'$ を向きを保つ微分同相写像、$\partial B'=M'$ とする。$B'$ の境界を $\phi^{-1}$ で $M$ と同一視したものは、向きを込めて $M$ を境界にもつ多様体であり、$\tau$ と $q$ は $B'$ そのものの量なので変わらない。thm-exs-lambda により $\lambda(M)=\lambda(M')$ である。
2:$\partial B=M$ なら $\partial(-B)=-M$ である。基本類が $-\nu$ になるので形式は $-1$ 倍になり $\tau(-B)=-\tau(B)$、(P3) により $p_1$ は変わらないので $q(-B)=-q(B)$ である。
3:$\partial B=M$、$\partial B'=M'$ なら $\partial(B\sqcup B')=M\sqcup M'$ で、コホモロジーも形式も直和に分かれ、$p_1$ も成分ごとに決まるので、$\tau$ と $q$ は和になる。
4:$B:=W$ とすると $H^4(W,M;\mathbb{Q})=0$ なので $\tau(W)=0$ である。$q(W)$ は $\mathbb{Q}$ 係数で計算しても同じ整数で、$j^{-1}p_1(W)\otimes\mathbb{Q}\in H^4(W,M;\mathbb{Q})=0$ なので $q(W)=0$ である。$S^7=\partial D^8$ で $H^4(D^8,S^7)\cong H^3(S^7)=0$ である(対の長完全列と $D^8$ の可縮性)。$\square$

λ が 0 でなければ異種

def-exs-lambda の条件をみたす $M$ で $\lambda(M)\ne0$ なら、次が成り立つ。

  1. $M$ は $S^7$ と(向きを保つかどうかによらず)微分同相でない。
  2. $M$ から $M$ 自身への向きを逆にする微分同相写像はない。

1:微分同相写像 $\phi\colon M\to S^7$ があれば、$\phi$ は $M$ から $S^7$ か $-S^7$ への向きを保つ微分同相写像である。prop-exs-lambda-properties の 1・2・4 から $\lambda(M)=\pm\lambda(S^7)=0$ となり、仮定に反する。
2:向きを逆にする微分同相写像 $M\to M$ は、$M$ から $-M$ への向きを保つ微分同相写像なので、$\lambda(M)=\lambda(-M)=-\lambda(M)$、すなわち $2\lambda(M)=0$ となる。$\mathbb{Z}/7$ では $2$ が可逆なので $\lambda(M)=0$ となり、仮定に反する。$\square$

2 は Mil56 Corollary 2(p. 401)である。$S^7$ には鏡映という向きを逆にする微分同相写像があるので、2 からも 1 が分かる。

Reeb の定理

2 枚の円板の和

コンパクト空間 $X$ が閉集合 $A$、$B$ の和で、同相写像 $\alpha\colon A\to D^n$、$\beta\colon B\to D^n$ が $A\cap B=\alpha^{-1}(S^{n-1})=\beta^{-1}(S^{n-1})$ をみたすなら、$X$ は $S^n$ と同相である。

$g:=\alpha\circ\beta^{-1}\vert_{S^{n-1}}\colon S^{n-1}\to S^{n-1}$ は同相写像である。$\Phi\colon X\to S^n\subset\mathbb{R}^n\times\mathbb{R}$ を
$$ \Phi(x):=\begin{cases}\bigl(\alpha(x),\sqrt{1-\lvert\alpha(x)\rvert^2}\bigr)&(x\in A),\\[2pt]\bigl(t\,g(u),-\sqrt{1-t^2}\bigr)&(x\in B,\ \beta(x)=tu,\ t\in[0,1],\ u\in S^{n-1})\end{cases} $$
で定める($t=0$ のときは $u$ によらず $(0,-1)$)。$B$ の側の式は錐の上の写像 $tu\mapsto tg(u)$ で、$\lvert tg(u)\rvert=t$ なので $t\to0$ でも連続である。$x\in A\cap B$ では $\beta(x)=u\in S^{n-1}$、$t=1$ で、$g(u)=\alpha(x)$ なので 2 つの式は一致する。$A$、$B$ は閉集合なので $\Phi$ は連続である。$A$ は上半球へ、$B$ は下半球へ全単射に写り、両者の共通部分 $A\cap B$ は赤道へ全単射に写るので、$\Phi$ は全単射である。コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射なので、$\Phi$ は同相写像である。$\square$

Reeb の定理

$M$ を滑らかな $n$ 次元閉多様体($n\ge1$)とし、滑らかな関数 $f\colon M\to\mathbb{R}$ の臨界点がちょうど 2 個で、どちらも非退化であるとする。このとき $M$ は $S^n$ と同相である。

Mil56 Theorem 2(p. 401)はより強く「$1$ 点を除いて微分同相な同相写像がある」と述べ、Reeb によると注記している。

Reeb の定理

$M$ はコンパクトなので $f$ は最小値と最大値をとり、そこは臨界点である。$M$ は 2 点より多くの点をもつので $f$ は定数でなく、最小点 $p$ と最大点 $p'$ は異なり、臨界点はこの 2 つだけである。$a:=f(p)< b:=f(p')$ とおき、$M^c:=f^{-1}((-\infty,c])$ と書く。
段 1:両端の近くは円板。 Morse関数 の定理「Morseの補題」と命題「指数と極値」により、$p$ の座標近傍 $\varphi$ で $f=a+\lvert\varphi\rvert^2$ となるものがあり、十分小さい $\varepsilon>0$ について $M^{a+\varepsilon}=\varphi^{-1}(\{\lvert x\rvert\le\sqrt\varepsilon\})$ は閉円板と同相である。同様に $f^{-1}([b-\varepsilon,\infty))$ も閉円板と同相で、どちらも境界は球面 $f^{-1}(a+\varepsilon)$、$f^{-1}(b-\varepsilon)$ に写る。

$\varepsilon$ の選び方

$\varphi\colon U\to\mathbb{R}^n$、$\varphi(p)=0$ とし、$r>0$ を $\{\lvert x\rvert\le r\}\subset\varphi(U)$ となるようにとる。コンパクト集合 $M\setminus\varphi^{-1}(\{\lvert x\rvert< r\})$ の上で $f>a$ なので、その上の $f$ の最小値を $a+\delta$($\delta>0$)とする。$0< \varepsilon< \min(\delta,r^2)$ なら、$f(x)\le a+\varepsilon$ となる点は $\varphi^{-1}(\{\lvert x\rvert< r\})$ の中にあり、そこでは $f=a+\lvert\varphi\rvert^2$ なので、$M^{a+\varepsilon}=\varphi^{-1}(\{\lvert x\rvert\le\sqrt\varepsilon\})$ である。最大点 $p'$ の側も、座標で $f=b-\lvert y\rvert^2$ となることから同じである。


段 2:あいだには臨界点がない。 $f^{-1}([a+\varepsilon,b-\varepsilon])$ はコンパクトで臨界点を含まないので、ハンドル分解 の定理「臨界点のない区間」により、$M$ の微分同相写像 $\Psi$ で $\Psi(M^{b-\varepsilon})=M^{a+\varepsilon}$ となるものがある。$\Psi$ は境界付き多様体 $M^{b-\varepsilon}$ の境界 $f^{-1}(b-\varepsilon)$ を $M^{a+\varepsilon}$ の境界 $f^{-1}(a+\varepsilon)$ に写すので、段 1 と合わせて、同相写像 $\alpha\colon M^{b-\varepsilon}\to D^n$ で $\alpha^{-1}(S^{n-1})=f^{-1}(b-\varepsilon)$ となるものがある。
段 3:貼り合わせ。 $A:=M^{b-\varepsilon}$、$B:=f^{-1}([b-\varepsilon,\infty))$ は閉集合で、$M=A\cup B$、$A\cap B=f^{-1}(b-\varepsilon)$ である。段 1・段 2 の同相写像は lem-exs-two-disks の条件をみたすので、$M$ は $S^n$ と同相である。$\square$

Milnor の 7 次元の例

四元数全体を $\mathbb{H}\cong\mathbb{R}^4$ とし、$\lvert u\rvert$ を絶対値、$\operatorname{Re}u$ を実部、$S^3=\{\lvert v\rvert=1\}$、$D^4=\{\lvert v\rvert\le1\}$ とする。$\lvert uv\rvert=\lvert u\rvert\lvert v\rvert$、$\operatorname{Re}(uv)=\operatorname{Re}(vu)$ であり、単位四元数 $v$ について $v^{-1}=\bar v$、$\operatorname{Re}(v^{-1})=\operatorname{Re}v$ である。

Milnor の多様体 $M_k$ と $B_k$

$k$ を奇数とし、$h:=(1+k)/2$、$j:=(1-k)/2$(整数で、$h+j=1$、$h-j=k$)とおく。写像
$$ \phi_k\colon(\mathbb{H}\setminus0)\times D^4\to(\mathbb{H}\setminus0)\times D^4,\qquad(u,v)\mapsto(u',v'):=\Bigl(\frac{u}{\lvert u\rvert^2},\ \frac{u^hvu^j}{\lvert u\rvert}\Bigr) $$
は微分同相写像で(逆写像は $(u',v')\mapsto\bigl(u'/\lvert u'\rvert^2,\ \lvert u\rvert u^{-h}v'u^{-j}\bigr)$、ただし $u=u'/\lvert u'\rvert^2$)、$\lvert v'\rvert=\lvert v\rvert$ である。$\mathbb{H}\times D^4$ の 2 つの複製を $\phi_k$ で貼り合わせた $8$ 次元の境界付き多様体を $B_k$、その境界($\mathbb{H}\times S^3$ の 2 つの複製を $\phi_k$ で貼ったもの)を $M_k$ とする。

$u\mapsto u/\lvert u\rvert^2$ は 2 つの立体射影の座標変換なので、第 1 成分への射影は $\pi\colon B_k\to S^4$ を定め、$B_k$ は $S^4$ の上の $D^4$ 束、$M_k$ は $S^3$ 束である(Hausdorff 性は、$\pi$ で異なる点に写る 2 点は $S^4$ の開集合の逆像で分けられ、同じ点に写る 2 点は同じ座標近傍に入ることから分かる)。これは Mil56 §3(pp. 402–404)の $\xi_{h,j}$ の $4$ 次元円板束と球面束であり、$v\mapsto sv$($s\in[0,1]$)は $B_k$ を零切断 $\{v=0\}\cong S^4$ に変形レトラクトする。

Milnor の関数

$M_k$ の上の関数 $f$ を、1 つ目の座標 $(u,v)\in\mathbb{H}\times S^3$ では
$$ f(u,v)=\frac{\operatorname{Re}v}{\sqrt{1+\lvert u\rvert^2}}, $$
2 つ目の座標 $(u',v')$ では $w:=u'(v')^{-1}$ とおいて $f=\operatorname{Re}w/\sqrt{1+\lvert w\rvert^2}$ で定めると、$f$ は矛盾なく定まる滑らかな関数で、臨界点は $(u,v)=(0,\pm1)$ の 2 個だけであり、どちらも非退化である。

要点:重なりの上で $w=u^hv^{-1}u^{-h}/\lvert u\rvert$ となり、2 つの式が一致する。2 つ目の座標では $f$ は $\operatorname{Re}w$ 方向に真に増加するので臨界点がなく、1 つ目の座標では $v$ が $S^3$ の高さ関数の臨界点 $\pm1$ でなければならず、そのとき $u=0$ となる。

詳しい証明を開く

矛盾なく定まること。重なり $u\ne0$ で $v'^{-1}=\lvert u\rvert u^{-j}v^{-1}u^{-h}$ なので、$1-j=h$ を使うと $w=u'v'^{-1}=\frac{u}{\lvert u\rvert^2}\cdot\lvert u\rvert u^{-j}v^{-1}u^{-h}=u^{h}v^{-1}u^{-h}/\lvert u\rvert$ である。$\operatorname{Re}(u^hv^{-1}u^{-h})=\operatorname{Re}(v^{-1})=\operatorname{Re}v$、$\lvert w\rvert=1/\lvert u\rvert$ なので、$\operatorname{Re}w/\sqrt{1+\lvert w\rvert^2}=(\operatorname{Re}v/\lvert u\rvert)/\sqrt{1+1/\lvert u\rvert^2}=\operatorname{Re}v/\sqrt{\lvert u\rvert^2+1}$ となり、2 つの式は一致する。

2 つ目の座標には臨界点がない。$(u',v')\mapsto(w,v')=(u'v'^{-1},v')$ は $\mathbb{H}\times S^3$ の微分同相写像(逆は $(w,v')\mapsto(wv',v')$)なので、$(w,v')$ も座標である。この座標で $f=g(w):=w_0/\sqrt{1+\lvert w\rvert^2}$($w_0=\operatorname{Re}w$)であり、$\partial g/\partial w_0=(1+\lvert w\rvert^2-w_0^2)/(1+\lvert w\rvert^2)^{3/2}>0$ なので、微分は $0$ にならない。

1 つ目の座標の臨界点。2 つ目の座標に入らない点は $u=0$ の点だけなので、臨界点は 1 つ目の座標の中にある。$u$ を固定すると $v\mapsto\operatorname{Re}v$ は $S^3$ の高さ関数で、その臨界点は $v=\pm1$ だけである(Morse関数 の例「2 次形式と球面の高さ関数」)。よって臨界点では $v=\pm1$ で、このとき $\partial f/\partial u=\mp u/(1+\lvert u\rvert^2)^{3/2}=0$ から $u=0$ である。逆に $(0,\pm1)$ では両方の偏微分が $0$ になる。

非退化性。$(0,1)$ の近くで $v=(\sqrt{1-\lvert y\rvert^2},y)$($y\in\mathbb{R}^3$)を座標にとると $f=\sqrt{1-\lvert y\rvert^2}\,(1+\lvert u\rvert^2)^{-1/2}=1-\tfrac12\lvert y\rvert^2-\tfrac12\lvert u\rvert^2+(\text{3 次以上})$ なので、Hesse 行列は $-I_7$ で非退化(最大点)である。$(0,-1)$ では符号が反転し、Hesse 行列は $I_7$(最小点)である。$\square$

関数と計算は Mil56 Lemma 5 の証明(pp. 403–404)による。Milnor は、臨界点がちょうど 2 個で非退化であることを「容易に確かめられる」として省いており、$w$ の式も書いていない。

Milnor の束の Pontryagin 類

$\iota\in H^4(S^4)$ を生成元、$\pi\colon B_k\to S^4$ を射影とすると、$p_1(B_k)=\pm2k\,\pi^*\iota$ である。

Pontryagin 類の係数の役割

$B_k$ は $S^4$ の上の円板束なので $S^4$ に変形レトラクトし、$H^4(B_k)\cong H^4(S^4)\cong\mathbb{Z}$ である。したがって $p_1(B_k)$ はこの群の元として整数 $\pm2k$ で表される。この係数が、次の命題で $\lambda(M_k)$ を $k$ から計算するときに使われる。

これは Mil56 Lemma 3(p. 402)と、Lemma 3・Lemma 4 の証明(p. 403)による。この記事では証明しない。Milnor は $TB_k$ をファイバーに接する束と $\pi^*TS^4$ の Whitney 和に分けて (P2) を使い、係数を $k=1$($B_1$ は四元数射影平面 $\mathbb{H}P^2$ から $8$ 次元の胞体を除いたもの)での $p_1(\mathbb{H}P^2)$ の値(Hirzebruch)から決めている。

$M_k$ の λ

$k$ を奇数とする。$M_k$ は $S^7$ と同相である。$B_k$ の向きを $\tau(B_k)=1$ となるように選び、$M_k=\partial B_k$ に境界の向きを入れると、
$$ \lambda(M_k)\equiv k^2-1\pmod 7 $$
である。

$M_k$ は閉多様体で(コンパクトな $S^4$ の上のコンパクトなファイバーの束)、lem-exs-morse と thm-exs-reeb により $S^7$ と同相である。とくに $H^3(M_k)=H^4(M_k)=0$ で、$\lambda(M_k)$ が定義される。
$B_k$ は零切断 $S^4$ に変形レトラクトするので、$x:=\pi^*\iota$ は $H^4(B_k)\cong\mathbb{Z}$ の生成元であり、$a:=j^{-1}(x)$ は $H^4(B_k,M_k)\cong\mathbb{Z}$ の生成元である。Lefschetz 双対により $\langle a\smile a,\nu\rangle=\pm1$ となるので、$\tau(B_k)=\pm1$ であり、向きを取り替えて $\tau(B_k)=1$、すなわち $\langle a^2,\nu\rangle=1$ とできる。

$\langle a\smile a,\nu\rangle=\pm1$ の計算

$H_3(B_k)=0$、$H_4(B_k)\cong\mathbb{Z}$ である。Poincaré双対 の定理「Lefschetz 双対」により $\nu\frown a$ は $H_4(B_k)$ の生成元であり、普遍係数定理(Hat02 Theorem 3.2、p. 195)により $H^4(B_k)\cong\operatorname{Hom}(H_4(B_k),\mathbb{Z})$ なので $\langle x,\nu\frown a\rangle=\pm1$ である。相対類と絶対類のカップ積は $j$ と可換なので $a\smile a=a\smile x$ であり、カップ積とキャップ積の関係(Hat02 p. 249 の式 $(*)$)により $\langle a\smile x,\nu\rangle=\langle x,\nu\frown a\rangle=\pm1$ である。$H^4(B_k,M_k;\mathbb{Q})$ は $1$ 次元なので、形式の符号数はこの値の符号である。


lem-exs-p1 により $j^{-1}p_1(B_k)=\pm2k\,a$ なので $q(B_k)=4k^2\langle a^2,\nu\rangle=4k^2$ である。よって
$$ 2q(B_k)-\tau(B_k)=8k^2-1\equiv k^2-1\pmod7.\qquad\square $$

Milnor の異種 7 次元球面

$k$ を奇数とし、$k^2\not\equiv1\pmod7$ とする。このとき $M_k$ は $S^7$ と同相だが、$S^7$ と微分同相でない。すなわち $M_k$ は異種球面である。

Milnor の異種 7 次元球面

prop-exs-lambda-mk により $M_k$ は $S^7$ と同相で、$\lambda(M_k)\equiv k^2-1\not\equiv0\pmod7$ である。cor-exs-nonzero の 1 により、$M_k$ は $S^7$ と微分同相でない。$\square$

これは Mil56 Theorem 3(p. 403)である。証明なしに使ったのは、Thom の同境の定理($\lambda$ の定義で $B$ の存在を保証する部分。$M_k$ では $B_k$ が具体的にあるので、実はここでは不要である)、thm-exs-hirzebruch、lem-exs-p1、Pontryagin 類の基本性質 (P1)–(P3) である。

互いに微分同相でない 3 つの構造

$S^7$、$M_3$、$M_5$ は互いに同相だが、どの 2 つも(向きによらず)微分同相でない。したがって $S^7$ の上には、微分同相を除いて少なくとも 3 つの滑らかな構造がある。

prop-exs-lambda-mk により $\lambda(M_3)\equiv8\equiv1$、$\lambda(M_5)\equiv24\equiv3\pmod7$ であり、$\lambda(S^7)=0$ である。微分同相写像 $X\to Y$ は $X$ から $Y$ か $-Y$ への向きを保つ微分同相写像なので、prop-exs-lambda-properties の 1・2 から $\lambda(X)=\pm\lambda(Y)$ となるはずである。ところが $\mathbb{Z}/7$ の中で $\{0\}$、$\{1,6\}$、$\{3,4\}$ は互いに交わらない。$\square$

例

$k=1$ の場合

$k=1$ では $(h,j)=(1,0)$ で、$\phi_1(u,v)=(u/\lvert u\rvert^2,uv/\lvert u\rvert)$ である。$B_1$ は四元数射影平面 $\mathbb{H}P^2$ から $8$ 次元の胞体を除いたもので、$M_1$ は標準的な $S^7$ と微分同相である(Mil56 p. 403。$k=-1$ でも同じ)。prop-exs-lambda-mk の値も $\lambda(M_1)\equiv0$ で矛盾しない。$\lambda(M_k)=0$ となるのは $k\equiv\pm1\pmod7$ のときで、たとえば $M_{13}$ について $\lambda$ は何も教えない。

$\lambda$ の値の表

prop-exs-lambda-mk の $k^2-1\bmod7$ は、$k\bmod7$ だけで決まる。

$k\bmod 7$$0$$\pm1$$\pm2$$\pm3$
$\lambda(M_k)$$6$$0$$3$$1$
例$M_7$$M_1$、$M_{13}$$M_5$、$M_9$$M_3$、$M_{11}$

向きを反転すると値は $-1$ 倍になるので、向きを問わない分類では $\{0\}$、$\{1,6\}$、$\{3,4\}$ の 3 組が区別される。$M_7$ と $M_3$ は $\lambda$ の値が $-1$ と $1$ で、$\lambda$ だけでは $M_7$ と $-M_3$ が微分同相かどうかは分からない。

$M_3$ は向きを逆にする微分同相写像をもたない

$\lambda(M_3)=1\ne0$ なので、cor-exs-nonzero の 2 により、$M_3$ の微分同相写像はすべて向きを保つ。$M_3$ と同相な $S^7$ には鏡映 $(x_1,\dots,x_8)\mapsto(-x_1,x_2,\dots,x_8)$ という向きを逆にする微分同相写像があるので、「向きを逆にする自己微分同相写像をもつ」という性質は、同相写像では保たれるとは限らない滑らかな性質である。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
閉多様体(Reeb の定理)$\mathbb{R}$ の上の $x^3-3x$臨界点がちょうど 2 個で非退化なら球面と同相
写像が微分同相(同相写像に弱める)同相写像 $M_3\to S^7$$\lambda$ の値が一致する
微分同相写像が向きを保つ恒等写像 $M_3\to-M_3$$\lambda$ の値が一致する
$k^2\not\equiv1\pmod7$$M_1$$M_k$ は $S^7$ と微分同相でない
反例:閉でない多様体

$f(x)=x^3-3x$ は $f'(x)=3(x^2-1)$、$f''(x)=6x$ なので、$\mathbb{R}$ の上の臨界点は $x=\pm1$ の 2 個で、どちらも非退化である。しかし $\mathbb{R}$ はコンパクトでないので $S^1$ と同相でない。破れる条件は「閉多様体」で、thm-exs-reeb の証明では、コンパクト性から $f$ が最小値と最大値をとり、2 つの臨界点が最小点と最大点になることを使っていた。ここでは $x=-1$ は極大点、$x=1$ は極小点だが、$f$ は最大値も最小値ももたない。

反例:同相写像では λ は保たれない

prop-exs-lambda-mk により $M_3$ と $S^7$ は同相で、$\lambda(M_3)=1\ne0=\lambda(S^7)$ である。同相写像 $M_3\to S^7$ は向きを保つように選べる(必要なら $S^7$ の鏡映を合成する)が、$\lambda$ は一致しない。破れる条件は「写像が微分同相」で、prop-exs-lambda-properties の 1 の証明では、$S^7$ を境界にもつ滑らかな多様体を $M_3$ を境界にもつ滑らかな多様体と見なすために、境界の同一視が滑らかであることを使っていた。同相写像で貼ると、得られる空間には $p_1$ を定める滑らかな構造がない。

反例:向きを逆にする微分同相

恒等写像 $M_3\to-M_3$ は向きを逆にする微分同相写像で、$\lambda(-M_3)=-1\ne1=\lambda(M_3)$ である(prop-exs-lambda-properties の 2)。破れる条件は「向きを保つ」で、$\lambda$ は向き付けられた多様体の不変量である。

反例:$k=1$

ex-exs-hopf のとおり $M_1$ は $S^7$ と微分同相である。破れる条件は $k^2\not\equiv1\pmod7$ で、thm-exs-main の証明ではこの条件から $\lambda(M_k)\ne0$ を得ていた。

補足

  • $7$ 次元の分類:$S^7$ と同相な滑らかな多様体の向きを保つ微分同相類は、連結和で位数 $28$ の巡回群をなす(KM63 p. 504 の表(証明は続編)、Kos93 Ch. X §6、pp. 216–219)。群の定義と、$\lambda$ がこの群から $\mathbb{Z}/7$ への準同型になることは Kervaire–Milnorの群 の記事で扱う。
  • $S^6$ の微分同相写像:thm-exs-main から、$S^6$ の向きを保つ微分同相写像で、恒等写像に滑らかにイソトピックでないものがあることが従う(Mil56 Theorem 5、p. 404)。$M_k$ は 2 枚の $7$ 次元円板を境界の微分同相写像で貼ったもの(ねじれ球面)の形に書けるからである(同 Corollary 3、p. 402)。また、$S^7$ の上の滑らかな構造で $D^8$ に延びないものがある(同 Corollary 4、p. 403)。
  • 滑らかな構造をもたない PL 多様体:$B_k$ に境界 $M_k$ の錐を足した $8$ 次元の空間を、$M_k$ が組合せ的に $S^7$ であることを使って三角形分割すると、$k$ によっては三角形分割と両立する滑らかな構造をもたない PL 多様体が得られる(MS74 §20 の Example 2、pp. 247–248。そこでは束を、全空間の $p_1$ が生成元の $k$ 倍($k\equiv2\pmod4$)となるものとして指定している)。$10$ 次元では、どんな滑らかな構造ももたない PL 多様体が知られている(Kervaire多様体)。
  • 構造の階層の中で:異種球面は、同じ PL 多様体の上に異なる滑らかな構造がありうることを示す(多様体の構造の階層)。一方、$n\ge5$ ではホモトピー球面はすべて $S^n$ と同相である(一般次元のPoincaré予想)。

関連項目

参考文献

[2]
John W. Milnor, James D. Stasheff, Characteristic Classes, Annals of Mathematics Studies 76, Princeton University Press, 1974, §15 Lemma 15.2(p. 174)、Theorem 15.3(p. 175);§16 向きの反転と Pontrjagin 数の注意(p. 185);§17 同境群の表(Ω_7=0、p. 203);§19 符号数の定義・Signature Theorem 19.4(p. 224)、L 多項式(p. 225);§20 Example 2(pp. 247–248)
[5]
Antoni A. Kosinski, Differential Manifolds, Pure and Applied Mathematics 138, Academic Press, 1993, Ch. X §6:(6.2) Proposition と bP^8 = Z_28(p. 216)、Θ^7 = Z_28(pp. 218–219)

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