Berkovich空間(Berkovich space)とは、非アルキメデス的な体の上の解析空間を、affinoid 代数などの可換 Banach 環 $A$ の有界な乗法的半ノルム全体 $\mathcal M(A)$(Berkovich スペクトル)を貼り合わせて作る空間であり、rigid 解析空間と違って通常の位相をもつ。$\mathcal M(A)$ はつねに空でないコンパクト Hausdorff 空間で、閉単位円板のスペクトルには通常の点のほかに Gauss ノルムに当たる点などが加わる。$\mathbb C_p$ のような代数閉で完備な体の上では、Berkovich 直線の点は閉円板またはその入れ子の列で表され、型 1〜4 に分類される。
Berkovich 空間(Berkovich space)は、非アルキメデス的な体の上の解析幾何を、通常の位相空間の言葉で行うための空間である。rigid解析空間 は点を affinoid 代数の極大イデアルに限るので、点の集合は完全不連結になり、関数の貼り合わせを Grothendieck 位相で制御する必要があった。Berkovich は点を 乗法的半ノルム にまで広げた。たとえば閉単位円板には、通常の点のほかに、円板そのものの「Gauss ノルム」に当たる点などが加わり、空間は弧状連結でコンパクトな Hausdorff 空間(実際には木)になる。この記事では、可換 Banach 環のスペクトル $\mathcal M(A)$ を定義し、それが空でないコンパクト Hausdorff 空間であることを証明する。さらに、代数閉で完備な体(たとえば p進複素数体 $\mathbb C_p$)の上の Berkovich 直線の点が、閉円板の入れ子によって 4 つの型に分類されることを証明する。
この記事では、環は単位元をもつとする。
環 $A$ の ノルム とは、写像 $\|\cdot\|\colon A\to\mathbb R_{\ge0}$ で、$\|f\|=0\iff f=0$、$\|f+g\|\le\|f\|+\|g\|$、$\|fg\|\le\|f\|\,\|g\|$、$\|1\|=1$ を満たすものをいう。ノルムについて完備な可換環を 可換 Banach 環 という。
$A$ の 半ノルム とは、写像 $\rho\colon A\to\mathbb R_{\ge0}$ で $\rho(1)=1$、$\rho(f+g)\le\rho(f)+\rho(g)$、$\rho(fg)\le\rho(f)\rho(g)$ を満たすものをいう。すべての $f$ で $\rho(f)\le\|f\|$ のとき 有界 といい、すべての $f,g$ で $\rho(fg)=\rho(f)\rho(g)$ のとき 乗法的 という。
可換 Banach 環 $A$ の有界な乗法的半ノルム全体の集合を $\mathcal M(A)$ と書き、$A$ の Berkovich スペクトル(解析的スペクトル)という。点 $x\in\mathcal M(A)$ の値を $|f(x)|:=x(f)$ と書く。$\mathcal M(A)$ には、すべての $f\in A$ について $x\mapsto|f(x)|$ を連続にする最も弱い位相を入れる。
記号 $|f(x)|$ は、$x$ を「$f$ の値の絶対値を測る点」とみる記法である。$x$ の核 $\mathfrak p_x:=\{f\mid |f(x)|=0\}$ は素イデアルで、$x$ は整域 $A/\mathfrak p_x$ の上の絶対値を経て、その分数体の完備化 $\mathcal H(x)$ に延びる。$f$ の $\mathcal H(x)$ での像が「$f$ の $x$ での値」であり、$|f(x)|$ はその絶対値である。
有界性を「ある定数 $C$ について $\rho(f)\le C\|f\|$」と定義する文献もあるが、乗法的なら同じことになる。実際 $\rho(f)^n=\rho(f^n)\le C\|f^n\|\le C\|f\|^n$ なので $\rho(f)\le C^{1/n}\|f\|$ で、$n\to\infty$ とすればよい。
$\mathcal M(A)$ の非アルキメデス的な場合。 体 $K$ が非アルキメデス的な絶対値について完備で、$A$ が $K$ 上の Banach 代数($K$ を含み、$K$ 上ではノルムが $|\cdot|_K$ に一致する)なら、$x\in\mathcal M(A)$ は $K$ 上で $|\cdot|_K$ に一致する。$c\in K^\times$ について $|c(x)|\le|c|_K$ と $|c^{-1}(x)|\le|c^{-1}|_K$ を掛ければ等号が出るからである。
$A$ を可換 Banach 環とする。$\mathcal M(A)$ は空でないコンパクト Hausdorff 空間である。
この定理は Berkovich による。証明は 2 つの部分に分かれる。コンパクト Hausdorff であることは Tychonoff の定理から出る。空でないことは、有界な半ノルムの中で極小なものが乗法的になることから出る。
コンパクト Hausdorff であること。 $P:=\prod_{f\in A}[0,\|f\|]$ に積位相を入れると、Tychonoff の定理により $P$ はコンパクト Hausdorff 空間である(コンパクト空間)。$\Phi\colon\mathcal M(A)\to P$、$x\mapsto(|f(x)|)_{f\in A}$ は単射であり、$\mathcal M(A)$ の位相の定義から、$\Phi$ は $\mathcal M(A)$ から像への同相写像である。像は、すべての $f,g$ について
$$
t_1=1,\qquad t_{f+g}\le t_f+t_g,\qquad t_{fg}=t_ft_g
$$
を満たす点 $(t_f)\in P$ の全体である。各条件は有限個の座標の連続関数の等式・不等式なので、像は閉集合であり、コンパクトである。よって $\mathcal M(A)$ はコンパクト Hausdorff 空間である。
空でないこと。 $\Sigma$ を $A$ の有界な半ノルム全体とし、各点ごとの大小 $\rho\le\sigma$ で順序を入れる。$\|\cdot\|\in\Sigma$ なので $\Sigma\ne\emptyset$ である。
段 1(Zorn の補題)。全順序部分集合 $C\subset\Sigma$ について $\rho_C(f):=\inf_{\sigma\in C}\sigma(f)$ とおく。$\varepsilon>0$ について $\sigma_1(f)< \rho_C(f)+\varepsilon$、$\sigma_2(g)< \rho_C(g)+\varepsilon$ となる $\sigma_1,\sigma_2\in C$ をとり、小さい方を $\sigma$ とすると、$\rho_C(f+g)\le\sigma(f)+\sigma(g)< \rho_C(f)+\rho_C(g)+2\varepsilon$ である。積についても同様で、$\rho_C(1)=1$ なので $\rho_C\in\Sigma$ は $C$ の下界である。Zorn の補題により、$\Sigma$ には極小元 $\rho$ がある。
段 2($\rho$ は冪乗法的)。$\rho_s(f):=\inf_{n\ge1}\rho(f^n)^{1/n}$ とおく。まず、$c>\rho_s(f)$ なら、ある定数 $C_f$ があってすべての $k\ge0$ で $\rho(f^k)\le C_fc^k$ となることを示す。$\rho(f^m)^{1/m}< c$ となる $m$ をとり、$k=qm+r$($0\le r< m$)と書けば
$$
\rho(f^k)\le\rho(f^m)^q\rho(f^r)\le c^{qm}\rho(f^r)\le C_fc^k,\qquad C_f:=\max_{0\le r< m}\rho(f^r)c^{-r}
$$
である。$c>\rho_s(f)$、$c'>\rho_s(g)$ とする。$A$ は可換なので二項展開ができ、$\rho(nh)\le n\rho(h)$ を使うと
$$
\rho\bigl((f+g)^n\bigr)\le\sum_{k=0}^{n}\binom nk\rho(f^k)\rho(g^{n-k})\le C_fC_g(c+c')^n,\qquad \rho\bigl((fg)^n\bigr)\le\rho(f^n)\rho(g^n)\le C_fC_g(cc')^n
$$
である。$n$ 乗根をとって $n\to\infty$ とすると $\rho_s(f+g)\le c+c'$、$\rho_s(fg)\le cc'$ であり、$c,c'$ を下げて $\rho_s(f+g)\le\rho_s(f)+\rho_s(g)$、$\rho_s(fg)\le\rho_s(f)\rho_s(g)$ を得る。$\rho_s(1)=1$、$\rho_s\le\rho$ なので $\rho_s\in\Sigma$ であり、$\rho$ の極小性から $\rho_s=\rho$ である。よって $\rho(f)^n=\rho_s(f)^n\le\rho(f^n)\le\rho(f)^n$、すなわち $\rho(f^n)=\rho(f)^n$ である。
段 3($\rho$ は乗法的)。$a\in A$、$\rho(a)>0$ とし、$\rho_a(g):=\lim_{n\to\infty}\rho(a^ng)/\rho(a)^n$ とおく。$\rho(a^{n+1}g)\le\rho(a)\rho(a^ng)$ なので数列は単調非増加で、極限がある。三角不等式は極限でも保たれ、$\rho(a^{2n}gh)\le\rho(a^ng)\rho(a^nh)$ から $\rho_a(gh)\le\rho_a(g)\rho_a(h)$ である。段 2 により $\rho_a(1)=\lim\rho(a^n)/\rho(a)^n=1$ であり、$n=0$ の項から $\rho_a\le\rho$ である。よって $\rho_a\in\Sigma$ で、極小性から $\rho_a=\rho$ である。したがって
$$
\rho(ag)=\rho_a(ag)=\lim_{n\to\infty}\frac{\rho(a^{n+1}g)}{\rho(a)^n}=\rho(a)\,\rho_a(g)=\rho(a)\rho(g)
$$
である。$\rho(a)=0$ なら $\rho(ag)\le\rho(a)\rho(g)=0$ である。以上で $\rho\in\mathcal M(A)$ である。$\square$
この証明は完備性を使っていない。ノルムをもつ可換環 $A$ では、$\mathcal M(A)$ は完備化 $\hat A$ のスペクトルと同じである(有界な乗法的半ノルムは $|\,|f(x)|-|g(x)|\,|\le\|f-g\|$ を満たすので、$\hat A$ へ一意に連続に延びる)。
$K$ を絶対値 $|\cdot|_K$ について完備な体とし、$A=K$、$\|\cdot\|=|\cdot|_K$ とする。$x\in\mathcal M(K)$ について、定義の後の段落と同じ計算で $|c(x)|=|c|_K$ である。よって $\mathcal M(K)$ は 1 点である。体の「点」は 1 つしかないという、代数幾何の $\operatorname{Spec}K$ と同じ状況である。
$A=\mathbb Z$ に通常の絶対値 $|\cdot|_\infty$ をノルムとして入れる。$\mathcal M(\mathbb Z)$ は次の点からなる。
要点:核が $p\mathbb Z$ なら $\mathbb F_p$ 上の値は $1$ に限られ、核が $0$ なら $\mathbb Q$ の絶対値に延びて Ostrowski の定理で分類される。
$x\in\mathcal M(\mathbb Z)$ の核 $\mathfrak p=\{n\mid |n(x)|=0\}$ は、乗法性と三角不等式から素イデアルである。$|-1(x)|^2=|1(x)|=1$ なので $|-1(x)|=1$ である。
$\mathfrak p=p\mathbb Z$ のとき:$p\nmid n$ なら Fermat の小定理により $n^{p-1}=1+pk$($k\in\mathbb Z$)で、$|pk(x)|=0$ なので三角不等式から $|n(x)|^{p-1}=|1(x)|=1$、すなわち $|n(x)|=1$ である。よって $x=|\cdot|_{p,\infty}$ である。
$\mathfrak p=0$ のとき:$|a/b|:=|a(x)|/|b(x)|$ は $\mathbb Q$ の上で矛盾なく定まり、乗法的で、$|a/b+c/d|=|(ad+bc)(x)|/|bd(x)|\le|a/b|+|c/d|$ を満たすので、$\mathbb Q$ の絶対値である。Ostrowskiの定理 の定理「Ostrowski の定理」により、これは自明な絶対値、$|\cdot|_\infty^{\alpha}$($0< \alpha\le1$)、$|\cdot|_p^{\,t}$($t>0$)のいずれかである。逆に、これらと $|\cdot|_{p,\infty}$ はどれも $\mathbb Z$ の乗法的半ノルムで、整数 $n$ で $|n|_\infty$ 以下の値をとるので有界である。$\square$
以下、$K$ を非アルキメデス的で自明でない絶対値 $|\cdot|$ について完備な代数閉体とする(たとえば $K=\mathbb C_p$)。$a\in K$、$r\ge0$ について $D(a,r):=\{z\in K\mid |z-a|\le r\}$ と書く。
多項式環 $K[T]$ の乗法的半ノルム $x$ で、$K$ 上では $|\cdot|$ に一致するもの全体を $\mathbb A^{1,\mathrm{an}}_K$ と書き、Berkovich 直線(Berkovich のアフィン直線)という。$x\mapsto|f(x)|$($f\in K[T]$)をすべて連続にする最も弱い位相を入れる。$a\in K$、$r\ge0$ と $f=\sum_ib_i(T-a)^i$ について
$$
|f(\zeta_{a,r})|:=\max_i|b_i|\,r^i
$$
と定める。$r=0$ なら $|f(\zeta_{a,0})|=|f(a)|$ である。
$x\in\mathbb A^{1,\mathrm{an}}_K$ は強三角不等式を満たす。整数 $m$ について $|m\cdot1(x)|=|m\cdot1|\le1$ なので、$|(f+g)^N(x)|\le\sum_k|f(x)|^k|g(x)|^{N-k}\le(N+1)\max\{|f(x)|,|g(x)|\}^N$ の $N$ 乗根をとって $N\to\infty$ とすればよい。
要点:重みつきの最大係数が最初に現れる次数どうしの積が、積の係数の中でただ 1 つ最大になる。
1:$S:=T-a$ とし、$g=\sum c_iS^i$、$h=\sum d_jS^j$ について $M_g:=\max|c_i|r^i$ を最初に達成する添字を $i_0$、$h$ について同様に $j_0$ とする。$gh$ の $S^{i_0+j_0}$ の係数 $\sum_{i+j=i_0+j_0}c_id_j$ のうち、$(i_0,j_0)$ の項だけが重みつきで $M_gM_h$ に等しく、ほかの項は $i< i_0$ か $j< j_0$ なので狭義に小さい。強三角不等式の等号の場合から、この係数の重みつきの値は $M_gM_h$ であり、ほかの係数は $M_gM_h$ 以下なので $|gh(\zeta_{a,r})|=M_gM_h$ である($r=0$ なら $|g(a)h(a)|$ で明らか)。三角不等式と $|1|=1$、$K$ 上で $|\cdot|$ に一致することは定義から明らかである。$T-c=S+(a-c)$ なので $|(T-c)(\zeta_{a,r})|=\max\{r,|a-c|\}$ で、乗法性から公式が出る。
2:$|(T-c)(\zeta_{a,r})|=\max\{r,|a-c|\}$ の $c\in K$ にわたる最小値は $r$($c=a$ で達成)で、最小値を達成する $c$ の全体は $D(a,r)$ である。よって $\zeta_{a,r}$ から $r$ と $D(a,r)$ が決まる。逆に $r=s$、$|a-b|\le r$ なら、すべての $c$ で $\max\{r,|a-c|\}=\max\{r,|b-c|\}$ なので、1 の公式により一致する。
3:$D(b,s)\subset D(a,r)$ なら $|a-b|\le r$ であり、$s\le r$ でもある($s>r$ とすると、$K$ は代数閉なので $|K^\times|$ は $\mathbb R_{>0}$ で稠密で、$r< |z-b|\le s$ となる $z\in K$ がある。このとき $|z-a|=|z-b|>r$ となり、包含に反する)。よって $\max\{s,|b-c|\}\le\max\{r,|a-c|\}$ である。1 の公式から従う。$\square$
$r>0$ のとき、$\zeta_{a,r}$ は円板 $D(a,r)$ の上の関数の最大値 $\sup_{z\in D(a,r)}|f(z)|$ を測る点とみなせる($r\in|K^\times|$ のときは Tate代数 の Gauss ノルムを変数変換したものである)。$\zeta_{0,1}$ を Gauss 点 という。
$x\in\mathbb A^{1,\mathrm{an}}_K$ は、次のどちらか一方にちょうど当てはまる。
1 の点を、$r=0$ のとき 型 1、$r\in|K^\times|$ のとき 型 2、$r>0$ かつ $r\notin|K^\times|$ のとき 型 3 といい、2 の点を 型 4 という。型 1 の点は $K$ の元 $a$($f\mapsto|f(a)|$)にほかならない。
$a\in K$ について $r(a):=|(T-a)(x)|$ とおく。強三角不等式により
$$
|a-b|=|((T-b)-(T-a))(x)|\le\max\{r(a),r(b)\}\qquad(\ast)
$$
である。よって $r(a)\le r(b)$ なら $a\in D(b,r(b))$ で、$D(a,r(a))\subset D(b,r(b))$ となり、円板 $D(a,r(a))$($a\in K$)は包含で全順序をなす。また $T-c=(T-a)+(a-c)$ から
$$
r(c)\le\max\{r(a),|a-c|\}\qquad(\ast\ast)
$$
である。$K$ は代数閉なので $K[T]$ の元は 1 次式の積であり、乗法的半ノルムは定数と $T-c$ での値で決まる。以下 $E:=\bigcap_{a\in K}D(a,r(a))$ とおく。
$E\ne\emptyset$ の場合。 $e\in E$ をとる。すべての $c$ について $e\in D(c,r(c))$ なので、$(\ast\ast)$ より $r(e)\le\max\{r(c),|c-e|\}=r(c)$ である。すると $|(T-c)(\zeta_{e,r(e)})|=\max\{r(e),|e-c|\}\le r(c)$ であり、$(\ast\ast)$($a=e$)から逆向きの不等式も成り立つ。よってすべての $c$ で $|(T-c)(\zeta_{e,r(e)})|=r(c)=|(T-c)(x)|$ で、$x=\zeta_{e,r(e)}$ である。
$E=\emptyset$ の場合。 $\rho:=\inf_ar(a)$ とおく。$r(a_0)=\rho$ となる $a_0$ があれば、すべての $a$ で $D(a_0,r(a_0))\subset D(a,r(a))$ となって $a_0\in E$ なので、そのような $a_0$ はない。$r(a_1)\ge r(a_2)\ge\cdots\to\rho$ となる $a_n$ をとり、$r_n:=r(a_n)>\rho\ge0$ とおく。円板 $D(a_n,r_n)$ は減少列である。共通部分に点 $z$ があれば、各 $a$ について $r_n< r(a)$ となる $n$ をとると $D(a_n,r_n)\subset D(a,r(a))$ なので $z\in E$ となり矛盾する。よって共通部分は空である。$c\in K$ を固定し、$r_n< r(c)$ となる $n$ を考えると、$(\ast)$ から $|a_n-c|\le r(c)$ で $|(T-c)(\zeta_{a_n,r_n})|=\max\{r_n,|a_n-c|\}\le r(c)$、$(\ast\ast)$ から逆向きも成り立つ。よって十分大きい $n$ で $|(T-c)(\zeta_{a_n,r_n})|=|(T-c)(x)|$ であり、乗法性から各 $f$ について $|f(\zeta_{a_n,r_n})|$ は十分大きい $n$ で $|f(x)|$ に等しい。
逆と、2 つの場合が排他的であること。 共通部分が空な減少列 $D(a_n,r_n)$ をとる。prop-bk-disc-points の 3 により $|f(\zeta_{a_n,r_n})|$ は $n$ について非増加なので、極限 $|f(x)|$ がある。乗法性・三角不等式・$K$ 上の値は極限でも保たれるので $x\in\mathbb A^{1,\mathrm{an}}_K$ である。$x=\zeta_{a,r}$ と仮定する。$a$ は共通部分に属さないので、ある $N$ で $|a-a_N|>r_N$ である。一方、$m\ge N$ なら $a_m\in D(a_N,r_N)$ なので $|(T-a_N)(\zeta_{a_m,r_m})|=\max\{r_m,|a_m-a_N|\}\le r_N$ で、極限をとって $|(T-a_N)(x)|\le r_N$ である。ところが $|(T-a_N)(\zeta_{a,r})|=\max\{r,|a-a_N|\}>r_N$ であり、矛盾する。$\square$
$K$ が球完備(閉球の減少列の共通部分がつねに空でない)なら型 4 の点はない。$K=\mathbb C_p$ では型 4 の点が存在する。
前半は thm-bk-classification の 2 の定義から明らかである。後半は、p進複素数体 の定理「$\mathbb C_p$ は球完備でない」により共通部分が空な閉球の減少列があるので、thm-bk-classification の最後の主張から従う。$\square$
Tate代数 $K\{T\}$ に Gauss ノルム $\|\sum b_iT^i\|:=\max|b_i|$ を入れると、可換 Banach 環になる。
$x\mapsto x|_{K[T]}$ は、$\mathcal M(K\{T\})$ から $\{x\in\mathbb A^{1,\mathrm{an}}_K\mid |T(x)|\le1\}$ への同相写像である。とくに後者はコンパクト Hausdorff 空間である。Gauss 点 $\zeta_{0,1}$ は Gauss ノルムそのものに対応する。
要点:$|T(x)|\le1$ なら $x$ は Gauss ノルムについて 1-Lipschitz なので、稠密な $K[T]$ から $K\{T\}$ へ一意に延びる。
$x\in\mathcal M(K\{T\})$ は $K$ 上で $|\cdot|$ に一致し(定義の後の段落)、$|T(x)|\le\|T\|=1$ なので、制限は右辺に属する。逆に $x$ が右辺に属すれば、強三角不等式から $|f(x)|\le\max|b_i||T(x)|^i\le\|f\|$($f\in K[T]$)であり、$\bigl||f(x)|-|g(x)|\bigr|\le\|f-g\|$ である。$K[T]$ は $K\{T\}$ で稠密なので(Tate代数)、$x$ は $K\{T\}$ 上の連続関数に一意に延び、極限で乗法性・三角不等式・有界性が保たれる。延長の一意性から写像は全単射である。位相については、$f\in K\{T\}$ と $\|f-g\|< \varepsilon$ となる多項式 $g$ について、すべての $x$ で $\bigl||f(x)|-|g(x)|\bigr|< \varepsilon$ なので、$x\mapsto|f(x)|$ は右辺の位相で連続な関数の一様極限であり連続である。よって 2 つの位相は一致する。コンパクト Hausdorff であることは thm-bk-spectrum による。$\square$
thm-bk-classification と合わせると、閉単位円板の Berkovich スペクトルは、$D(0,1)$ の各点(型 1)、$D(0,1)$ に含まれる各閉円板 $D(a,r)$($0< r\le1$)に対応する点(型 2・3)、型 4 の点からなる。極大イデアルの集合 $\operatorname{Sp}K\{T\}$(Tate代数 の命題「極大イデアルと閉単位多重円板の点」により、$K$ が代数閉なら閉単位円板 $D(0,1)$ の点と対応する)は、型 1 の点として $\mathcal M(K\{T\})$ に含まれる。$a\in D(0,1)$ について $r\mapsto\zeta_{a,r}$($0\le r\le1$)は、$|f(\zeta_{a,r})|=\max_i|b_i|r^i$ が $r$ の連続関数なので連続であり、型 1 の点 $a$ と Gauss 点を結ぶ道になる。
$K$ が代数閉で完備なとき、Berkovich 射影直線 $\mathbb P^{1,\mathrm{an}}_K$($\mathbb A^{1,\mathrm{an}}_K$ に 1 点 $\infty$ を加えたもの)はコンパクトな実の木である(Duc24 (3.4.16)–(3.4.17)、p. 184)。型 1 と型 4 の点は端点(分岐が 1 本)、型 3 の点は分岐が 2 本、型 2 の点は剰余体の射影直線の点の個数だけ分岐する(同 (3.4.17.2)–(3.4.17.3)、p. 184)。2 つの型 1 の点 $a,b$ を結ぶ弧は $\{\zeta_{a,r}\}_{0\le r\le|a-b|}\cup\{\zeta_{b,r}\}_{0\le r\le|a-b|}$ である(同 (3.4.21)、p. 185)。Duc24 は型を剰余体と値群によって定義し((3.3.2)、pp. 176–177)、この記事の円板による記述と一致することを示している((3.4.18)、p. 185)。これらはこの記事では証明しない。
Berkovich は affinoid 代数のスペクトルを貼り合わせて、一般の $K$ 解析空間を定義した。パラコンパクトな狭義 $K$ 解析空間の圏は、準分離的で有限型の affinoid 被覆をもつ rigid $K$ 解析空間の圏と同値である(Ber93 Theorem 1.6.1、pp. 35–36。この記事では証明しない)。この同値で、rigid 解析空間の点は Berkovich 空間の点のうち $\mathcal H(x)$ が $K$ 上有限なもの(affinoid 代数の極大イデアル)に対応し、許容開集合と許容被覆は、Berkovich 空間の狭義 affinoid 領域との交わりによって定まる(Ber93 §1.6, p. 35)。詳しくは rigid解析空間 の注意「Berkovich 空間と adic 空間」を参照。点を増やすことで Grothendieck 位相が通常の位相に置き換わることが、Berkovich 空間の利点である。
次の表は、この記事の定理の仮定を 1 つずつ外したときに何が崩れるかを示す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-bk-spectrum の可換性 | $A=M_2(K)$(行列環、成分の最大値ノルム) | $\mathcal M(A)\ne\emptyset$ |
| thm-bk-classification の $K$ が代数閉 | $K=\mathbb Q_p$、$x(f):=\lvert f(\sqrt p)\rvert$ | $x$ が $\zeta_{a,r}$($a\in K$)か型 4 であること |
| prop-bk-closed-disc の $\lvert T(x)\rvert\le1$ | $K=\mathbb C_p$、$x=\zeta_{0,p}$ | $K\{T\}$ への連続な延長 |
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