Whitneyの埋め込み定理(Whitney embedding theorem)とは、Hausdorff かつ第 2 可算な $n$ 次元の滑らかな多様体が、$\mathbb{R}^{2n+1}$ への閉埋め込みをもつ、すなわち $\mathbb{R}^{2n+1}$ の閉部分多様体と微分同相であるという定理である。抽象的に定義した多様体と Euclid 空間の中の図形とが同じものであることを保証する。証明では、有限個の局所座標を隆起関数で切り落として並べて単射なはめ込みを作り、Sard の定理で弦と接線の向きを避ける方向に射影して次元を $2n+1$ まで下げる。コンパクトでない場合は消尽関数を座標に加えて写像を固有にする。Whitney はさらに $\mathbb{R}^{2n}$ への埋め込みも示した。
前提知識: はめ込みと埋め込み(可微分多様体), 固有写像, Sardの定理, 隆起関数, 接束
多様体は、局所座標を貼り合わせて抽象的に定義される。一方、球面やトーラスのように Euclid 空間の中の図形として与えられる多様体もある。Whitney の埋め込み定理(Whitney embedding theorem)は、この 2 つの見方が同じものを捉えていることを保証する:$n$ 次元の滑らかな多様体は、必ず $\mathbb{R}^{2n+1}$ の閉じた部分多様体と微分同相である。周りの空間の次元 $2n+1$ は多様体によらず、次元 $n$ だけで決まる。
証明の考え方は 2 つある。1 つは「座標を並べて大きな Euclid 空間に写す」ことで、有限個の局所座標を隆起関数で切り落として並べると単射はめ込みができる。もう 1 つは「一般の方向から射影して次元を下げる」ことで、Sard の定理により、射影しても単射はめ込みのままである方向がほとんどすべてであることが分かる。コンパクトでない多様体では、像が閉集合になるように、端で値が大きくなる関数(消尽関数)を座標に 1 つ加える。
以下、多様体は Hausdorff かつ第 2 可算な $C^\infty$ 級多様体(可微分多様体)とし、写像は $C^\infty$ 級とする。$M$ は $n$ 次元とする。はめ込み・埋め込み・閉埋め込み・部分多様体の定義は はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の記事の定義による。とくに、$C^\infty$ 級写像 $F\colon M\to N$ が閉埋め込みであるとは、各点で微分 $dF_p$ が単射で、$F\colon M\to F(M)$ が部分空間位相について同相写像であり、像 $F(M)$ が $N$ の閉集合であることをいう。
$n$ 次元の多様体 $M$ に対し、閉埋め込み $F\colon M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が存在する。したがって $M$ は $\mathbb{R}^{2n+1}$ の $n$ 次元の閉部分多様体 $F(M)$ と微分同相である。
Hausdorff と第 2 可算の仮定は本質的である。たとえば長い直線は局所的には $\mathbb{R}$ と同じだが、第 2 可算でないのでどの $\mathbb{R}^N$ にも埋め込めない。次元 $2n+1$ は、この記事の方法(射影で 1 次元ずつ下げる)が与える値であり、最良とは限らない。実際、強い形の Whitney の定理は $n\ge2$ なら $\mathbb{R}^{2n}$ への埋め込みを与える。一方、$n=2$ では Klein の壺が $\mathbb{R}^3$ に埋め込めないので、$2n$ はそれ以上下げられない。この記事では $2n+1$ の場合だけを証明する。
後半は、埋め込みの像が部分多様体で $F\colon M\to F(M)$ が微分同相写像であること(はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の記事の定理「埋め込みの像は部分多様体」)による。コンパクトな $M$ については、閉集合という条件は自動的に満たされる。
証明は 3 段で行う。
$N\ge2$ とし、$S^{N-1}:=\{v\in\mathbb{R}^N\mid\lvert v\rvert=1\}$ とする。単位ベクトル $v$ について、$v$ に沿った直交射影を
$$
P_v(y):=y-\langle y,v\rangle v\qquad(y\in\mathbb{R}^N)
$$
で定め、$v$ の直交補空間 $v^\perp$ から $\mathbb{R}^{N-1}$ への線形な等長同型 $Q_v$ を 1 つ選んで $\pi_v:=Q_v\circ P_v\colon\mathbb{R}^N\to\mathbb{R}^{N-1}$ とおく。$\pi_v$ は線形な全射で、核は直線 $\mathbb{R}v$ であり、$\lvert\pi_v(y)\rvert=\lvert P_v(y)\rvert$ である。
$M$ を $n$ 次元の多様体、$G\colon M\to\mathbb{R}^N$ を単射なはめ込みとし、$N\ge2n+2$ とする。$\pi_v\circ G\colon M\to\mathbb{R}^{N-1}$ が単射なはめ込みでないような $v\in S^{N-1}$ の全体は、$S^{N-1}$ の測度零集合(Sardの定理の記事の定義「多様体の上の測度零集合」)に含まれる。とくに、$\pi_v\circ G$ が単射なはめ込みとなる $v$ は $S^{N-1}$ で稠密に存在する。
悪い方向を 2 つの写像の像で捉える。 $\Delta:=\{(p,p)\mid p\in M\}$ は、$M$ が Hausdorff なので積多様体 $M\times M$(可微分多様体の記事の命題「積多様体」)の閉集合であり、$M\times M\setminus\Delta$ は $2n$ 次元の開部分多様体である。$G$ は単射なので $G(p)\ne G(q)$($p\ne q$)であり、
$$
\sigma\colon M\times M\setminus\Delta\to S^{N-1},\qquad\sigma(p,q):=\frac{G(p)-G(q)}{\lvert G(p)-G(q)\rvert}
$$
は $C^\infty$ 級である。次に、接束 $TM$(接束)の零でないベクトルの全体 $TM\setminus0$ は $2n$ 次元の開部分多様体である(零切断 $\{(p,0)\}$ は各自然な座標の中で $\varphi(U)\times\{0\}$ という閉集合なので、$TM$ の閉集合である)。$G$ ははめ込みなので $X\ne0$ なら $dG_p(X)\ne0$ であり、
$$
\tau\colon TM\setminus0\to S^{N-1},\qquad\tau(p,X):=\frac{dG_p(X)}{\lvert dG_p(X)\rvert}
$$
は $C^\infty$ 級である。実際、接束の記事の命題「写像の微分は滑らかな束写像」により $dG\colon TM\to T\mathbb{R}^N$ は $C^\infty$ 級であり、$T\mathbb{R}^N$ の自然な座標 $\mathbb{R}^N\times\mathbb{R}^N$ で $dG(p,X)=(G(p),dG_p(X))$ の第 2 成分は $C^\infty$ 級である。$\sigma$、$\tau$ は $\mathbb{R}^N$ への $C^\infty$ 級写像で値が部分多様体 $S^{N-1}$ に入るので、$S^{N-1}$ への写像としても $C^\infty$ 級である(はめ込みと埋め込み(可微分多様体)の記事の命題「終域を部分多様体に制限する」と例「球面」)。
Sard の定理を当てる。 $\sigma$、$\tau$ の定義域の次元は $2n$、終域 $S^{N-1}$ の次元は $N-1\ge2n+1$ である。定義域の次元が終域の次元より小さいので、微分はどの点でも全射になりえず、すべての点が臨界点であり、像全体が臨界値の集合である。Sardの定理の記事の系「多様体の間の写像に対するSardの定理」により $\sigma$ の像と $\tau$ の像は $S^{N-1}$ の測度零集合であり、その和も測度零である(同じ記事の命題「局所座標による判定」)。
像を避ければよい。 $v\notin\sigma(M\times M\setminus\Delta)\cup\tau(TM\setminus0)$ とする。$\pi_v$ は線形で核が $\mathbb{R}v$ なので、$\pi_v(y)=0$ と $y\in\mathbb{R}v$ は同値である。
$\sigma$ は「$M$ の 2 点を結ぶ弦の向き」、$\tau$ は「$M$ の接線の向き」を集めた写像である。弦の向きに射影すると 2 点が重なり、接線の向きに射影すると接ベクトルがつぶれる。弦も接線も $2n$ 次元分しかないので、$2n+1$ 次元以上の球面 $S^{N-1}$ を埋め尽くせない。$N=2n+1$ では $\dim S^{N-1}=2n$ となってこの議論は使えず、次元はここで止まる。
線形な単射 $L\colon\mathbb{R}^N\to\mathbb{R}^{N'}$ と単射なはめ込み $G$ の合成 $L\circ G$ も単射なはめ込みである($d(L\circ G)_p=L\circ dG_p$)。したがって、単射なはめ込み $M\to\mathbb{R}^N$ が 1 つあれば、$N<2n+1$ なら座標を $0$ で埋めて、$N\ge2n+2$ なら lem-wemb-projection を $N-(2n+1)$ 回くり返して、単射なはめ込み $M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が得られる。しかも作った写像は、はじめの写像に線形写像を合成したものである。
まず、コンパクト集合の近くで単射はめ込みになる写像を、局所座標を並べて作る。
$M$ を $n$ 次元の多様体、$U\subset M$ を開集合、$K\subset U$ をコンパクト集合とする。整数 $N\ge0$、$C^\infty$ 級写像 $\Phi\colon M\to\mathbb{R}^N$、$K$ を含む開集合 $W\subset U$ で、次を満たすものが存在する。
各点 $p\in K$ について、$p$ のまわりの座標近傍 $(V_p,\varphi_p)$ を $V_p\subset U$ となるようにとる。隆起関数の記事の定理「隆起関数の存在」により、$p$ の開近傍 $W_p$ の上で $1$ となり、台がコンパクトで $V_p$ に含まれる $C^\infty$ 級関数 $\psi_p\colon M\to[0,1]$ がある。$K$ はコンパクトなので、有限個の $W_1:=W_{p_1},\dots,W_k:=W_{p_k}$ で $K$ が覆える。$V_i:=V_{p_i}$、$\varphi_i:=\varphi_{p_i}$、$\psi_i:=\psi_{p_i}$ と書き、$N:=k(n+1)$、$W:=W_1\cup\dots\cup W_k$ とおいて
$$
\Phi:=\bigl(\psi_1\varphi_1,\ \dots,\ \psi_k\varphi_k,\ \psi_1,\ \dots,\ \psi_k\bigr)\colon M\to(\mathbb{R}^n)^k\times\mathbb{R}^k=\mathbb{R}^N
$$
と定める。ここで $\psi_i\varphi_i$ は $V_i$ の上で $\psi_i\varphi_i$、$V_i$ の外で $0$ と定めた写像であり、隆起関数の記事の定理「隆起関数の存在」の後半(成分ごとに当てる)により $M$ 上の $C^\infty$ 級写像である。$W\subset\bigcup_iV_i\subset U$ である。
2. $\Phi$ は $\bigcup_i\operatorname{supp}\psi_i$ の外で $0$ であり、この集合は $U$ に含まれるコンパクト集合(有限個のコンパクト集合の和)である。
単射. $p,q\in W$ で $\Phi(p)=\Phi(q)$ とする。$p\in W_i$ となる $i$ をとると $\psi_i(q)=\psi_i(p)=1$ なので、$q\in\operatorname{supp}\psi_i\subset V_i$ である。すると $\varphi_i(p)=\psi_i(p)\varphi_i(p)=\psi_i(q)\varphi_i(q)=\varphi_i(q)$ であり、$\varphi_i$ は $V_i$ の上で単射なので $p=q$ である。
はめ込み. $p\in W_i$ とする。開集合 $W_i$ の上では $\psi_i\equiv1$ なので、$\Phi$ の成分 $\psi_i\varphi_i$ は $W_i$ の上で $\varphi_i$ に一致する。局所座標 $\varphi_i$ の微分 $d(\varphi_i)_p\colon T_pM\to\mathbb{R}^n$ は同型なので、$d\Phi_p$ の成分の 1 つが単射であり、$d\Phi_p$ は単射である。$\square$
単射性の証明で成分 $\psi_1,\dots,\psi_k$ が効いている。$\psi_i\varphi_i$ だけを並べると、$V_i$ の外の点 $q$ と、$\varphi_i(p)=0$ となる点 $p\in W_i$ が区別できない。
$n$ 次元のコンパクトな多様体 $M$ に対し、閉埋め込み $M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が存在する。
lem-wemb-local を $K=U=M$ に当てると、$W=M$ となり、単射なはめ込み $\Phi\colon M\to\mathbb{R}^N$ が得られる。前節の最後に述べたとおり、座標を $0$ で埋めるか lem-wemb-projection をくり返し当てることで、単射なはめ込み $F\colon M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が得られる。$M$ はコンパクトなので、はめ込みと埋め込み(可微分多様体)の記事の命題「コンパクトな多様体からの単射はめ込みは閉埋め込み」により $F$ は閉埋め込みである。$\square$
コンパクトでない多様体では 2 つのことが変わる。有限個の座標近傍では覆えないこと、単射なはめ込みが埋め込みになるとは限らないこと(はめ込みと埋め込み(可微分多様体)の記事の例「反例:8 の字」)である。1 つ目は消尽関数で $M$ をコンパクトな帯に分けて解決し、2 つ目は消尽関数を座標に加えて写像を固有にすることで解決する。隆起関数の記事の定理「滑らかな消尽関数の存在」により、$C^\infty$ 級関数 $f\colon M\to[1,\infty)$ で、すべての $c\in\mathbb{R}$ について $\{f\le c\}$ がコンパクトとなるもの(消尽関数)がある。以下この $f$ を固定する。
$n$ 次元の多様体 $M$ に対し、単射なはめ込み $M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が存在する。
要点:$M$ を $f$ の値でコンパクトな帯 $A_j=\{j\le f\le j+1\}$ に分け、各帯の近くで lem-wemb-local と lem-wemb-projection により $\mathbb{R}^{2n+1}$ への単射はめ込みを作る。偶数番目の帯どうし、奇数番目の帯どうしは離れているので、それぞれを足し合わせてよい。$f$ も並べると全体が単射はめ込みになり、最後にもう一度射影する。
帯とその近傍.整数 $j\ge1$ について $A_j:=f^{-1}([j,j+1])$、$U_j:=f^{-1}((j-\tfrac12,\ j+\tfrac32))$ とおく。$A_j$ はコンパクト集合 $\{f\le j+1\}$ の閉部分集合なのでコンパクトで、開集合 $U_j$ に含まれる。$f\ge1$ なので $A_1,A_2,\dots$ は $M$ を覆う。区間 $(j-\tfrac12,j+\tfrac32)$ と $(j'-\tfrac12,j'+\tfrac32)$ は $\lvert j-j'\rvert\ge2$ なら交わらないので、そのとき $U_j\cap U_{j'}=\emptyset$ である。
各帯の近くの単射はめ込み.lem-wemb-local を $K=A_j$、$U=U_j$ に当て、$\Phi_j\colon M\to\mathbb{R}^{N_j}$ と開集合 $W_j$($A_j\subset W_j\subset U_j$)を得る。$\Phi_j|_{W_j}$ は開部分多様体 $W_j$ からの単射なはめ込みなので、前節の最後の注意により、線形写像 $L_j\colon\mathbb{R}^{N_j}\to\mathbb{R}^{2n+1}$ で $L_j\circ\Phi_j|_{W_j}$ が単射なはめ込みとなるものがある。$L_j$ は線形なので、$L_j\circ\Phi_j$ も $U_j$ に含まれるコンパクト集合の外で $0$ である。
足し合わせる.$E:=\sum_{j\text{ 偶数}}L_j\circ\Phi_j$、$O:=\sum_{j\text{ 奇数}}L_j\circ\Phi_j$ とおく。各点 $p$ は、$f(p)\in[j,j+1]$ となる $j$ について開集合 $U_j$ に含まれ、$U_j$ の上で $0$ でありうる項は $\lvert j'-j\rvert\le1$ の高々 3 つなので、和は局所的に有限和であり、$E$、$O$ は $C^\infty$ 級である。さらに $j$ が偶数なら、$U_j$ の上では偶数番目の項のうち $j'=j$ 以外はすべて $0$ なので $E=L_j\circ\Phi_j$ である。奇数についても同様である。
$\Psi:=(E,O,f)\colon M\to\mathbb{R}^{4n+3}$ は単射なはめ込み.単射:$\Psi(p)=\Psi(q)$ なら $f(p)=f(q)$ なので、$p,q\in A_j$ となる共通の $j$ がある。$j$ が偶数なら $E(p)=L_j\Phi_j(p)$、$E(q)=L_j\Phi_j(q)$ であり、$p,q\in A_j\subset W_j$ で $L_j\circ\Phi_j$ は $W_j$ の上で単射なので $p=q$ である。$j$ が奇数なら $O$ で同様である。はめ込み:$p\in A_j$($j$ は偶数とする)なら、開集合 $W_j\subset U_j$ の上で $E=L_j\circ\Phi_j$ なので $dE_p$ は単射であり、$d\Psi_p$ も単射である。奇数も同様である。
次元を下げる.$4n+3\ge2n+2$ なので、前節の最後の注意により $\Psi$ に線形写像を合成して単射なはめ込み $M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が得られる。$\square$
この段階の写像は固有とは限らないので、像への同相写像とは限らない。そこで消尽関数をもう一度座標に加え、最後の射影の方向を「$f$ の軸」から離して選ぶ。
lem-wemb-injective-immersion の単射なはめ込み $F\colon M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ をとる。$\beta(x):=x/\sqrt{1+\lvert x\rvert^2}$ は $\mathbb{R}^{2n+1}$ から開単位球 $\{\lvert y\rvert<1\}$ への微分同相写像である(逆写像は $y\mapsto y/\sqrt{1-\lvert y\rvert^2}$)。$y:=\beta\circ F$ とおき、
$$
G:=(y,\ f)\colon M\to\mathbb{R}^{2n+1}\times\mathbb{R}=\mathbb{R}^{2n+2}
$$
と定める。$y$ は単射なはめ込みなので $G$ も単射なはめ込みである。
射影の方向を選ぶ. $e:=(0,\dots,0,1)\in S^{2n+1}$ とする。lem-wemb-projection($N=2n+2$)により、$\pi_v\circ G$ が単射なはめ込みでない方向 $v$ の全体は測度零であり、2 点 $\pm e$ を加えても測度零である。その補集合は稠密なので空でなく、$\pi_v\circ G\colon M\to\mathbb{R}^{2n+1}$ が単射なはめ込みで $v\ne\pm e$ となる $v$ がとれる。
固有であること. $v=(w,c)$($w\in\mathbb{R}^{2n+1}$、$c\in\mathbb{R}$)と書くと、$\lvert w\rvert^2+c^2=1$ で $v\ne\pm e$ なので $\lvert c\rvert<1$ である。$p\in M$ について $\lvert y(p)\rvert<1$、$f(p)\ge1$ なので
$$
\lvert\langle G(p),v\rangle\rvert=\lvert\langle y(p),w\rangle+f(p)c\rvert\le1+\lvert c\rvert f(p)
$$
であり、
$$
\lvert\pi_v(G(p))\rvert^2=\lvert G(p)\rvert^2-\langle G(p),v\rangle^2\ge f(p)^2-\bigl(1+\lvert c\rvert f(p)\bigr)^2=(1-c^2)f(p)^2-2\lvert c\rvert f(p)-1
$$
となる。$1-c^2>0$ なので、右辺は $f(p)\to\infty$ のとき $\infty$ に発散する。したがって各 $R>0$ に対し、$f(p)>c_R$ ならば $\lvert\pi_v(G(p))\rvert>R$ となる定数 $c_R$ がある。$K\subset\mathbb{R}^{2n+1}$ をコンパクト集合とし、$K$ が半径 $R$ の閉球に含まれるとすると、$(\pi_v\circ G)^{-1}(K)$ は閉集合で、コンパクト集合 $\{f\le c_R\}$ に含まれるので、コンパクトである。よって $\pi_v\circ G$ は固有写像である。
結論. $\pi_v\circ G$ は固有な単射はめ込みなので、固有写像の記事の定理「固有な単射はめ込みは閉埋め込み」により閉埋め込みである。$\square$
最後の射影で $v=e$ を選ぶと $f$ の座標が消え、固有性が失われうる。$v\ne\pm e$ としておけば、射影した後も「$f$ が大きい点は原点から遠い」ことが残る。
開区間 $M=(0,1)$ の包含 $(0,1)\hookrightarrow\mathbb{R}$ は埋め込みだが、像は閉集合でない。$f(t):=\dfrac{1}{t(1-t)}$ は $M$ 上の消尽関数である:$c\ge4$ なら $\{f\le c\}$ は $t(1-t)\ge1/c$ を満たす閉区間であり、$c<4$ なら空集合である。$t\mapsto(t,f(t))$ は $f$ のグラフへの写像で、$\lvert(t,f(t))\rvert\ge f(t)$ なので固有であり、固有写像の記事の定理「固有な単射はめ込みは閉埋め込み」により閉埋め込みである。像は $\mathbb{R}^2$ の閉集合で、$t\to0$、$t\to1$ で上に伸びる曲線である。一般の場合の証明の $G=(y,f)$ はこの構成と同じ考え方である。
単位円 $C:=\{(x_1,x_2,0)\mid x_1^2+x_2^2=1\}\subset\mathbb{R}^3$ を $v=(1,0,0)$ に沿って平面 $v^\perp=\{x_1=0\}$ へ射影すると、$(x_1,x_2,0)\mapsto(x_2,0)$ となる。これは $(\pm\sqrt{1-x_2^2},x_2,0)$ の 2 点を同じ点に写すので単射でなく、点 $(0,\pm1,0)$ では接ベクトル $(\pm1,0,0)$ を $0$ に写すのではめ込みでもない。$v$ は $C$ の弦 $(1,0,0)-(-1,0,0)$ の向きであり、点 $(0,1,0)$ での接線の向きでもある。つまり $v$ は lem-wemb-projection の証明の $\sigma$ の像と $\tau$ の像の両方に入っている。一方、$C$ の弦と接線の向きはすべて平面 $\{x_3=0\}$ の中にあるので、$v=(0,0,1)$ に沿った射影は $C$ をそのまま平面に写し、埋め込みである。
定理が与える次元 $2n+1$ は上限であって、多くの多様体はもっと低い次元に埋め込める。球面 $S^n$ は定義から $\mathbb{R}^{n+1}$ の閉部分多様体である。実射影平面 $\mathbb{R}P^2$($n=2$)については、
$$
F([a]):=\frac{1}{\lvert a\rvert^2}\bigl(a_0^2-a_1^2,\ a_0a_1,\ a_0a_2,\ a_1a_2\bigr)\qquad(a=(a_0,a_1,a_2)\ne0)
$$
が閉埋め込み $\mathbb{R}P^2\to\mathbb{R}^4$ を与え、$2n+1=5$ より低い $2n=4$ 次元に埋め込める。
右辺は $a$ を $ta$($t\ne0$)に替えても変わらないので $F$ は well-defined である。$\mathbb{R}P^2$ の座標近傍 $U_i=\{a_i\ne0\}$(可微分多様体の記事の例「実射影空間と複素射影空間」)では $a_i=1$ の代表元がとれ、成分は他の 2 つの座標の多項式を正の多項式で割ったものなので、$F$ は $C^\infty$ 級である。
単射.$\lvert a\rvert=1$ の代表元 $a=(x,y,z)$ で考える。$F$ の値から $r:=x^2+y^2=\sqrt{(x^2-y^2)^2+4(xy)^2}$ が決まり、$x^2=(r+(x^2-y^2))/2$、$y^2=(r-(x^2-y^2))/2$、$z^2=1-r$ が決まる。$z\ne0$ なら、$a$ と $-a$ の一方をとって $z>0$ とすると $z=\sqrt{1-r}$、$x=(xz)/z$、$y=(yz)/z$ が決まる。$z=0$ なら、$x\ne0$ のとき $x>0$ として $x=\sqrt{x^2}$、$y=(xy)/x$ が決まり、$x=0$ のとき $y=\pm1$ である。いずれも $a$ は符号を除いて決まるので、$F$ は単射である。
はめ込み.商写像 $\pi\colon\mathbb{R}^3\setminus\{0\}\to\mathbb{R}P^2$ は、$U_2$ の上で $\pi(a)=(a_0/a_2,a_1/a_2)$ と表されて Jacobi 行列の階数が $2$ なので、沈め込みである($U_0,U_1$ でも同様)。$\pi(ta)=\pi(a)$ なので $d\pi_a(a)=0$ であり、$d\pi_a$ の核は $\mathbb{R}a$ である。$\Phi:=F\circ\pi$、$q(a):=(a_0^2-a_1^2,a_0a_1,a_0a_2,a_1a_2)$ とすると $\Phi=q/\lvert a\rvert^2$ である。$dF_{\pi(a)}(\xi)=0$、$\xi\ne0$ とすると、$\lvert a\rvert=1$ として $d\pi_a(u)=\xi$ となる $u$ をとり、$u$ から $a$ 方向の成分を引いた $u'\perp a$ も $d\pi_a(u')=\xi$ を満たし、$u'\ne0$ で $d\Phi_a(u')=0$ となる。$u'\perp a$、$\lvert a\rvert=1$ では $d\Phi_a(u')=dq_a(u')$ であり、$a=(x,y,z)$、$u'=(v_1,v_2,v_3)$ とすると$$dq_a(u')=\bigl(2xv_1-2yv_2,\ yv_1+xv_2,\ zv_1+xv_3,\ zv_2+yv_3\bigr)$$である。これが $0$ なら、第 1・2 成分から $(x^2+y^2)v_1=(x^2+y^2)v_2=0$ が出る。$x^2+y^2>0$ なら $v_1=v_2=0$ で、第 3・4 成分から $xv_3=yv_3=0$、よって $v_3=0$ である。$x=y=0$ なら $z=\pm1$ で、$u'\perp a$ から $v_3=0$、第 3・4 成分から $v_1=v_2=0$ である。いずれも $u'=0$ となって矛盾する。
$\mathbb{R}P^2$ はコンパクトなので、はめ込みと埋め込み(可微分多様体)の記事の命題「コンパクトな多様体からの単射はめ込みは閉埋め込み」により $F$ は閉埋め込みである。$\square$
| 外す条件・強める結論 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 多様体の Hausdorff 性 | 2 つの原点をもつ直線 | $\mathbb{R}^N$ への埋め込みが存在する |
| 多様体の第 2 可算性 | 長い直線 | $\mathbb{R}^N$ への埋め込みが存在する |
| 次元を $2n+1$ から $n$ に下げる | 円周 $S^1$($n=1$) | $\mathbb{R}^1$ への埋め込みが存在する |
| 次元を $2n+1$ から $2n-1$ に下げる | $\mathbb{R}P^2$($n=2$) | $\mathbb{R}^3$ への埋め込みが存在する(成り立たないことはこの記事では証明しない) |
Whitney は 1936 年の論文で、滑らかな多様体が $\mathbb{R}^{2n+1}$ の解析的な部分多様体と同相であることを示した(Whi36 Theorem 1、p. 654)。1944 年には、はめ込みの自己交差を 2 つずつ打ち消す方法(Whitney のトリック)によって、次元を $2n$ に下げた(Whi44 p. 220 の序文)。
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