Cantor立方体(Cantor cube)とは、2 点の離散空間 $\{0,1\}$ を無限基数 $\kappa$ 個掛け合わせた直積空間 $\{0,1\}^\kappa$ のことであり、コンパクト Hausdorff で、開かつ閉な筒集合からなる開基をもつ 0 次元空間である。各点の指標と重さはともに $\kappa$ に等しく、距離化可能なのは $\kappa$ が可算のときに限られ、そのとき Cantor 集合と同相になる。重さ $\kappa$ 以下の 0 次元 Hausdorff 空間はすべて $\{0,1\}^\kappa$ に埋め込め、重さ $\kappa$ 以下のコンパクト Hausdorff 空間はすべてその閉部分空間の連続像になるので、Tychonoff 立方体と並ぶ普遍空間として、基数関数の例や反例に広く使われる。
前提知識: 直積位相, Tychonoffの定理, 開基, 基数関数, Cantor集合
2 点からなる集合 $\{0,1\}$ に離散位相を入れ、それを $\kappa$ 個掛け合わせた直積空間 $\{0,1\}^\kappa$ を Cantor 立方体 という。$\kappa$ が可算無限なら、これは 3 進展開で作る Cantor集合 と同相である。$\kappa$ が非可算になると距離化できなくなるが、コンパクト Hausdorff で、開かつ閉な集合からなる開基をもつという Cantor 集合の性質はそのまま残る。
Cantor 立方体が重要なのは、それが 2 つの意味で「普遍的」だからである。1 つ目に、開かつ閉な集合からなる開基をもつ Hausdorff 空間で重さが $\kappa$ 以下のものは、どれも $\{0,1\}^\kappa$ の部分空間として実現できる。2 つ目に、重さが $\kappa$ 以下のコンパクト Hausdorff 空間は、どれも $\{0,1\}^\kappa$ の閉部分空間からの連続な全射の像になる。Tychonoff立方体 $[0,1]^\kappa$ が Tychonoff 空間全体の受け皿であるのと同じ役割を、Cantor 立方体は 0 次元の空間に対して果たす。また、点の個数・重さ・指標がすべて計算できるので、基数関数の不等式の等号の例としてよく使われる(Arhangel’skiiの不等式)。
この記事では、$D:=\{0,1\}$ に離散位相を入れた 2 点の空間を $D$ と書く。集合 $S$ について、$S$ から $D$ への写像全体 $D^S=\prod_{s\in S}D$ に直積位相を入れる。$s\in S$ への射影を $\pi_s\colon D^S\to D$、$\pi_s(x)=x_s$ と書く。
$\kappa$ を無限基数とする。濃度 $\kappa$ の集合 $S$ について、直積空間 $D^S$ を 重さ $\kappa$ の Cantor 立方体(Cantor cube)といい、$D^\kappa$ または $\{0,1\}^\kappa$、$2^\kappa$ と書く。$D^{\aleph_0}=D^{\mathbb N}$ を Cantor 空間 ともいう。
$S$ と $S'$ の濃度が等しく、$\sigma\colon S'\to S$ が全単射なら、$x\mapsto x\circ\sigma$ は $D^S$ から $D^{S'}$ への同相写像である(各座標 $x_{\sigma(s')}$ が連続なので連続であり、逆写像も同じ形である)。したがって $D^\kappa$ は同相を除いて $\kappa$ だけで決まる。添字の集合を $\kappa$ 自身や $\kappa\times\mathbb N$ のように都合よく取り替えてよい。
$F\subset S$ を有限集合、$\varphi\colon F\to D$ を写像とするとき、
$$
[\varphi]:=\{x\in D^S\mid x_s=\varphi(s)\ (s\in F)\}
$$
を 筒集合(cylinder set)という。$F=\emptyset$ のときは $[\varphi]=D^S$ である。
一般に、位相空間の部分集合で開集合かつ閉集合であるものを 開閉集合 という。開閉集合からなる開基をもつ空間を 0 次元空間(zero-dimensional space)という。
局所コンパクト Hausdorff 空間では、0 次元であることと完全不連結空間であることは同値である(完全不連結空間 の系「局所コンパクトな完全不連結空間は零次元」と、開閉集合で 2 点を分けられることから)。正則空間については、0 次元であることは小さな帰納次元が $0$ 以下であることと同値である(小さな帰納次元 の命題「0 次元の言い換え」)。
重さ(weight)$w(X)$ と指標(character)$\chi(x,X)$ は 基数関数 の定義に従う。すなわち $w(X)$ は開基の濃度の最小値と $\aleph_0$ の大きいほう、$\chi(x,X)$ は $x$ の開近傍の基本系の濃度の最小値と $\aleph_0$ の大きいほうである。
$S$ を集合とする。
1:$[\varphi]=\bigcap_{s\in F}\pi_s^{-1}(\varphi(s))$ は有限個の開集合の共通部分なので開である。$F$ 上の写像 $\psi\ne\varphi$ は有限個しかなく、$D^S\setminus[\varphi]=\bigcup_{\psi\ne\varphi}[\psi]$ なので、補集合も開であり、$[\varphi]$ は閉である。直積位相の開基は、有限個の座標 $s\in F$ で開集合 $U_s\subset D$ を指定し、残りの座標を $D$ とした集合 $\{x\mid x_s\in U_s\ (s\in F)\}$ の全体である(直積位相 の命題「直積位相の開基」)。$U_s$ は $D$ の点の和集合なので、この集合は $\varphi(s)\in U_s$ となる $\varphi\colon F\to D$ にわたる $[\varphi]$ の和集合である。よって筒集合の全体も開基である。
2:$D$ はコンパクト Hausdorff なので、直積 $D^S$ は Tychonoffの定理 によりコンパクトで、Hausdorff 空間の直積として Hausdorff である。1 により 0 次元である。
3:$\tau_a$ の各座標 $x\mapsto x_s+a_s$ は $\pi_s$ と $D$ の置換の合成なので連続であり、直積位相 の定理「直積位相の普遍性」により $\tau_a$ は連続である。$\tau_a\circ\tau_a$ は恒等写像なので、$\tau_a$ は自分自身を逆写像にもつ同相写像である。点 $a,b$ について $\tau_{a+b}$ が $a$ を $b$ に移す。
4:$D^S$ は $S$ から 2 点集合への写像全体である。$\square$
$\kappa$ を無限基数とする。$D^\kappa$ のどの点 $x$ についても
$$
\chi(x,D^\kappa)=w(D^\kappa)=\kappa
$$
である。
添字の集合を $S$($\lvert S\rvert=\kappa$)とする。筒集合 $[\varphi]$ は、$S$ の有限部分集合 $F$ と写像 $\varphi\colon F\to D$ の組で決まる。$S$ の有限部分集合は $\kappa$ 個、各 $F$ 上の写像は有限個なので、筒集合は $\kappa$ 個である。prop-ccube-basic の 1 により $w(D^\kappa)\le\kappa$ である。また、開基のうち $x$ を含むものは $x$ の基本近傍系なので、$\chi(x,D^\kappa)\le w(D^\kappa)$ である。
$\chi(x,D^\kappa)\ge\kappa$ を示す。$\mathcal V$ を $x$ の開近傍の基本系とし、$\lvert\mathcal V\rvert<\kappa$ と仮定して矛盾を導く。各 $V\in\mathcal V$ は開基の元で $x$ を含むものを含むので、$x\in[\varphi_V]\subset V$ となる筒集合を選び、$\varphi_V$ の定義域を $F_V$ とおく。$F_V$ は有限で、$\mathcal V$ の濃度は $\kappa$ 未満なので、$\bigcup_{V\in\mathcal V}F_V$ の濃度は $\kappa$ 未満である($\mathcal V$ が無限なら濃度は $\lvert\mathcal V\rvert\cdot\aleph_0=\lvert\mathcal V\rvert$ 以下、有限なら有限)。よって、どの $F_V$ にも属さない座標 $t\in S$ がある。開近傍 $W:=\pi_t^{-1}(x_t)$ は基本系の定義から、ある $V\in\mathcal V$ を含む。ところが $x$ の座標 $t$ だけを取り替えた点 $x'$ は $[\varphi_V]$ に属し($t\notin F_V$)、$W$ に属さない。これは $[\varphi_V]\subset V\subset W$ に矛盾する。$\square$
距離化可能な空間の各点は、半径 $1/n$ の開球の全体という可算な基本近傍系をもつ。$D^\kappa$ が距離化可能なら $\chi(x,D^\kappa)=\aleph_0$ であり、thm-ccube-weight により $\kappa=\aleph_0$ である。
逆に $D^{\mathbb N}$ を考える。$x\ne y$ で $x_n\ne y_n$ となる最小の $n$ を $n(x,y)$ と書くと、$n(x,z)\ge\min\{n(x,y),n(y,z)\}$ なので $d(x,z)\le\max\{d(x,y),d(y,z)\}$ となり、$d$ は距離である。$d(x,y)<2^{-n}$ と、$x$ と $y$ が座標 $0,1,\dots,n$ で一致することは同値である。よって $x$ を中心とする半径 $2^{-n}$ の開球は、座標 $0,\dots,n$ を $x$ と同じ値に指定した筒集合である。どの筒集合 $[\varphi]\ni x$ も、$\varphi$ の定義域が $\{0,\dots,n\}$ に含まれるような $n$ をとれば、この開球を含む。したがって $d$ の開球の全体と筒集合の全体は同じ位相を生成し、$d$ は直積位相を与える。Cantor 集合との同相は Cantor集合 の命題「直積空間との同相」である。$\square$
$\kappa>\aleph_0$ の $D^\kappa$ は、コンパクト Hausdorff で 0 次元なのに、どの点でも第1可算でない。距離化可能性を確かめるには、コンパクト性や 0 次元性ではなく、重さ(あるいは指標)を見る必要がある。
開閉集合 $U\subset X$ の特性関数 $\chi_U\colon X\to D$($U$ の上で $1$、外で $0$)は連続である。$D$ の開集合の逆像は $\emptyset,U,X\setminus U,X$ のどれかだからである。0 次元の空間は開閉集合をたくさんもつので、それらの特性関数を並べると $D^S$ への写像ができる。これが埋め込みになることを示す。まず、開基の大きさを重さまで減らせることを確かめる。
$\kappa$ を無限基数とし、$X$ を $w(X)\le\kappa$ の 0 次元空間とする。このとき $X$ は濃度 $\kappa$ 以下の、開閉集合からなる開基をもつ。
$\mathcal B$ を濃度 $\kappa$ 以下の開基とする($w(X)\le\kappa$ による)。組 $(U,V)\in\mathcal B\times\mathcal B$ のうち、$U\subset C\subset V$ となる開閉集合 $C$ が存在するものについて、そのような $C$ を 1 つ選んで $C_{U,V}$ とおく。$\mathcal C:=\{C_{U,V}\}$ の濃度は $\lvert\mathcal B\times\mathcal B\rvert\le\kappa$ 以下である。
$\mathcal C$ が開基であることを示す。$x\in W$、$W$ を開集合とする。$x\in V\subset W$ となる $V\in\mathcal B$ をとり、0 次元性から $x\in C\subset V$ となる開閉集合 $C$ をとり、さらに $x\in U\subset C$ となる $U\in\mathcal B$ をとる。この $(U,V)$ について $C_{U,V}$ は定義されていて、$x\in U\subset C_{U,V}\subset V\subset W$ である。$\square$
$\kappa$ を無限基数とする。0 次元の Hausdorff 空間 $X$ で $w(X)\le\kappa$ となるものは、$D^\kappa$ のある部分空間と同相である。逆に、$D^\kappa$ の部分空間は 0 次元の Hausdorff 空間で、重さは $\kappa$ 以下である。
lem-ccube-clopen-base により、開閉集合からなる開基 $\mathcal C$ で $\lvert\mathcal C\rvert\le\kappa$ のものがある。$\mathcal C$ を添字の集合として
$$
f\colon X\to D^{\mathcal C},\qquad f(x)_C:=\chi_C(x)\quad(C\in\mathcal C)
$$
と定める。$\lvert\mathcal C\rvert\le\kappa$ なので、$D^{\mathcal C}$ は $D^\kappa$ の部分空間 $\{y\in D^\kappa\mid y_s=0\ (s\notin\mathcal C)\}$ と同相である($\mathcal C\subset S$、$\lvert S\rvert=\kappa$ と見なす)。よって $f$ が $X$ から像 $f(X)$ への同相写像であることを示せばよい。
連続性:各座標 $\pi_C\circ f=\chi_C$ が連続なので、直積位相 の定理「直積位相の普遍性」により $f$ は連続である。
単射性:$x\ne y$ とする。$X$ は Hausdorff なので $X\setminus\{y\}$ は $x$ を含む開集合であり、$x\in C\subset X\setminus\{y\}$ となる $C\in\mathcal C$ がある。$f(x)_C=1\ne0=f(y)_C$ である。
像への開写像であること:$C\in\mathcal C$ について
$$
f(C)=f(X)\cap\pi_C^{-1}(1)
$$
である。$\subset$ は定義から明らかである。$\supset$ は、$f(x)\in\pi_C^{-1}(1)$ なら $\chi_C(x)=1$、すなわち $x\in C$ だからである。右辺は $f(X)$ の開集合である。$X$ の開集合は $\mathcal C$ の元の和集合であり、$f$ は単射なので和集合を保つ。よって $f$ は $X$ の開集合を $f(X)$ の開集合に移す。
以上で $f\colon X\to f(X)$ は連続な開全単射、すなわち同相写像である。
逆の主張:$Y\subset D^\kappa$ とする。$Y$ は Hausdorff 空間の部分空間なので Hausdorff である。筒集合と $Y$ の共通部分は $Y$ の開閉集合で、その全体は $Y$ の開基である。筒集合は $\kappa$ 個なので(thm-ccube-weight の証明)、$w(Y)\le\kappa$ である。$\square$
定理の仮定の Hausdorff 性は $T_0$ 性(異なる 2 点の一方だけを含む開集合があること)に弱めてよい。0 次元の空間では、2 点のうち $x$ だけを含む開集合 $U$ があれば、$x\in C\subset U$ となる $C\in\mathcal C$ がとれて $y\notin C$ となり、$C$ と $X\setminus C$ が $x$ と $y$ を分けるからである。
コンパクト性を加えると、部分空間の代わりに閉部分空間が得られる。コンパクト Hausdorff で 0 次元の空間は Stone空間 と呼ばれ、Stone双対性 によって Boole代数 と対応する。
$\kappa$ を無限基数とする。位相空間 $X$ について、次は同値である。
1 ならば、thm-ccube-universal の埋め込み $f$ の像 $f(X)$ はコンパクトなので、Hausdorff 空間 $D^\kappa$ の中で閉である。2 ならば、コンパクト空間 $D^\kappa$ の閉部分集合はコンパクトであり、残りは thm-ccube-universal の逆の主張による。$\square$
有理数の空間 $\mathbb Q$ と無理数の空間 $\mathbb R\setminus\mathbb Q$ は、どちらも $D^{\mathbb N}$、したがって Cantor集合 の部分空間と同相である。どちらも第2可算なので重さは $\aleph_0$ であり、端点が無理数($\mathbb Q$ の場合)または有理数($\mathbb R\setminus\mathbb Q$ の場合)の開区間との共通部分の全体が開閉集合からなる開基になる。たとえば $\mathbb Q\cap(a,b)$ は、$a,b$ が無理数なら $\mathbb Q\cap[a,b]$ に等しいので閉でもある。thm-ccube-universal を $\kappa=\aleph_0$ で使えばよい。
0 次元でない空間は Cantor 立方体に埋め込めないが、連続な全射の像としては現れる。鍵は、Cantor 空間が区間 $[0,1]$ の上に連続に写ることである。
$c\colon D^{\mathbb N}\to[0,1]$、$c(x):=\sum_{n=0}^{\infty}x_n2^{-(n+1)}$ は連続な全射である。
$x,y$ が座標 $0,\dots,n-1$ で一致すれば $\lvert c(x)-c(y)\rvert\le\sum_{k\ge n}2^{-(k+1)}=2^{-n}$ である。座標 $0,\dots,n-1$ を $x$ に合わせた筒集合は $x$ の近傍なので、$c$ は連続である。$t\in[0,1]$ は 2 進展開 $t=\sum_n x_n2^{-(n+1)}$($x_n\in\{0,1\}$)をもつので($t=1$ では $x_n=1$ がすべての $n$)、$c$ は全射である。$\square$
$\kappa$ を無限基数とし、$Y$ を $w(Y)\le\kappa$ のコンパクト Hausdorff 空間とする。このとき、$D^\kappa$ の閉部分空間 $F$ と、$F$ から $Y$ への連続な全射がある。
$\lvert\kappa\times\mathbb N\rvert=\kappa$ なので、$D^\kappa$ は $D^{\kappa\times\mathbb N}$ と同相である(def-ccube の後の注意)。$D^{\kappa\times\mathbb N}$ の点 $x$ を、$\alpha<\kappa$ ごとの列 $x^{(\alpha)}:=(x_{(\alpha,n)})_{n\in\mathbb N}\in D^{\mathbb N}$ の族と見て、
$$
g\colon D^{\kappa\times\mathbb N}\to[0,1]^\kappa,\qquad g(x)_\alpha:=c\bigl(x^{(\alpha)}\bigr)
$$
と定める。各座標 $g(\cdot)_\alpha$ は、座標 $\{\alpha\}\times\mathbb N$ への射影と $c$ の合成なので連続であり(lem-ccube-binary)、$g$ は連続である。$t\in[0,1]^\kappa$ が与えられたら、各 $\alpha$ で $c(x^{(\alpha)})=t_\alpha$ となる $x^{(\alpha)}$ を選べば $g(x)=t$ となるので、$g$ は全射である。
コンパクト Hausdorff 空間は Tychonoff 空間なので(Tychonoff空間 の命題「コンパクト Hausdorff 空間は Tychonoff 空間」)、位相空間の埋め込み定理 の定理「Tychonoffの埋め込み定理」により、$Y$ は $[0,1]^\kappa$ の部分空間 $Y'$ と同相である。$Y'$ はコンパクトなので閉であり、$F:=g^{-1}(Y')$ は $D^{\kappa\times\mathbb N}$ の閉集合である。$g$ は全射なので、$g$ の制限 $F\to Y'$ は連続な全射である。これに $Y'\cong Y$ を合成すればよい。$\square$
$\kappa=\aleph_0$ とすると、コンパクト距離化可能空間は Cantor 集合の閉部分集合からの連続な全射の像であることが分かる。コンパクト距離空間は可分で、可算な稠密集合の点を中心とする有理数半径の開球が開基になるので、重さが $\aleph_0$ だからである(位相空間の埋め込み定理 の系「コンパクト距離化可能空間」の証明)。たとえば $[0,1]$ は lem-ccube-binary により Cantor 空間全体の像である。
無限基数 $\kappa$ について、$D^\kappa\times D^\kappa$ と $(D^\kappa)^{\mathbb N}$ はどちらも $D^\kappa$ と同相である。一般に集合 $S,T$ について、$(x,y)\mapsto$「$S$ の上で $x$、$T$ の上で $y$ をとる写像」は $D^S\times D^T$ から $D^{S\sqcup T}$ への同相写像であり、$(x^{(t)})_{t\in T}\mapsto\bigl((s,t)\mapsto x^{(t)}_s\bigr)$ は $(D^S)^T$ から $D^{S\times T}$ への同相写像である。どちらも全単射で、両側の各座標が相手側の 1 つの座標の射影になっているので、直積位相 の定理「直積位相の普遍性」により両方向に連続である。あとは $\lvert\kappa\sqcup\kappa\rvert=\lvert\kappa\times\mathbb N\rvert=\kappa$ を使えばよい。
$\mathfrak c:=2^{\aleph_0}$ とする。$D^{\mathfrak c}$ は重さが $\mathfrak c>\aleph_0$ なので第2可算でないが、可分空間である。
添字の集合を $\mathbb R$ とする($\lvert\mathbb R\rvert=\mathfrak c$)。端点が有理数で互いに交わらない有限個の開区間 $I_1,\dots,I_k$ と $\varepsilon\in D^k$ の組ごとに、点 $p\in D^{\mathbb R}$ を「$r\in I_j$ なら $p_r=\varepsilon_j$、どの $I_j$ にも属さなければ $p_r=0$」で定める。このような組は可算個なので、点 $p$ の全体 $P$ は可算である。空でない筒集合 $[\varphi]$($\varphi$ の定義域を $\{r_1,\dots,r_m\}$ とする)が与えられたら、$r_j$ を含み互いに交わらない有理数端点の開区間 $I_j$ をとり、$\varepsilon_j:=\varphi(r_j)$ とおくと、対応する $p$ は $[\varphi]$ に属する。筒集合は開基なので、$P$ は稠密である。$\square$
2 点集合 $\{0,1\}$ に、空集合と全体のほかには一方の 1 点だけを開集合とする位相(Sierpiński 空間の位相)を入れた空間の $\kappa$ 乗が Alexandroff立方体 である。台集合は $D^\kappa$ と同じだが、$D$ の位相のほうが細かいので、恒等写像 $D^\kappa\to$(Alexandroff 立方体)は連続な全単射になる。Alexandroff 立方体は Hausdorff でないので、この写像は同相写像ではない。コンパクト Hausdorff の $D^\kappa$ から非 Hausdorff 空間への連続な全単射の例である。
$X=D^\kappa$($\kappa$ は無限基数)では、$\lvert X\rvert=2^\kappa$、$\chi(X)=w(X)=\kappa$(thm-ccube-weight)、Lindelöf 数は $\aleph_0$(コンパクトなので)である。したがって $\lvert X\rvert=2^{\chi(X)L(X)}$ となり、Arhangel’skiiの不等式 $\lvert X\rvert\le2^{\chi(X)L(X)}$ の等号が成り立つ。$\kappa=\aleph_0$ では、第1可算コンパクト Hausdorff 空間で濃度がちょうど $2^{\aleph_0}$ の例になる。
thm-ccube-universal と thm-ccube-image の仮定を 1 つずつ外すと、次のように結論が成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 0 次元(thm-ccube-universal) | 区間 $[0,1]$(Hausdorff、重さ $\aleph_0$) | $D^{\mathbb N}$ に埋め込めない。$D^{\mathbb N}$ の 2 点以上の部分空間は開閉集合で 2 点を分けられるので連結でないが、$[0,1]$ は連結である |
| Hausdorff($T_0$)(thm-ccube-universal) | 2 点の密着位相の空間(開基 $\{X\}$ は開閉集合からなる) | どの $D^\kappa$ にも埋め込めない。$D^\kappa$ の部分空間は Hausdorff である |
| $w(X)\le\kappa$(thm-ccube-universal) | 濃度 $\kappa^+$ の離散位相の空間(0 次元、Hausdorff、重さ $\kappa^+$) | $D^\kappa$ に埋め込めない。$D^\kappa$ の部分空間の重さは $\kappa$ 以下である(点の個数は $2^\kappa\ge\kappa^+$ あり、足りないのは点ではない) |
| コンパクト(thm-ccube-image) | 実数直線 $\mathbb R$(Hausdorff、重さ $\aleph_0$) | $D^{\mathbb N}$ の閉部分空間の連続像にならない。閉部分空間はコンパクトで、その連続像もコンパクトだからである |
Eng89 は Cantor 立方体を $D^{\mathfrak m}$($\mathfrak m\ge\aleph_0$)と書き、$D^{\aleph_0}$ を Cantor 集合と呼ぶ(§2.3、p. 84)。指標が $\mathfrak m$ であること(Theorem 2.3.24、p. 84)、重さ $\mathfrak m$ のコンパクト空間が $D^{\mathfrak m}$ の閉部分空間の連続像であること(Theorem 3.2.2、p. 137)、$D^{\mathfrak m}$ が重さ $\mathfrak m$ の 0 次元空間の普遍空間であること(Theorem 6.2.16、p. 363)が、それぞれ証明つきで述べられている。同書は 0 次元空間を開閉集合の開基をもつ空でない $T_1$ 空間と定め(§6.2、p. 360)、コンパクト空間に Hausdorff 性を含めているので、この記事では Hausdorff 性を仮定として明示した。同書の Theorem 3.2.2 の証明は Alexandroff立方体 を経由する。
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