主成分分析

同義語:principal component analysisPCA

概要

主成分分析(principal component analysis)とは、$\mathbb R^p$ のデータを中心化して標本共分散行列 $S$ を作り、その固有ベクトル $v_1,v_2,\dots$ を固有値 $\lambda_1\ge\lambda_2\ge\cdots$ の大きい順に新しい座標軸とする方法である。$v_1$ は射影したデータの分散を最大にする方向で、上位 $k$ 個の張る平面は、$k$ 次元の平面のうちで射影の分散の和を最大にし、データとの距離の 2 乗の平均を最小にする(最小値は $\lambda_{k+1}+\cdots+\lambda_p$)。主成分は中心化したデータ行列の特異値分解から読み取れ、次元の縮約やデータの要約に使われる。量の単位をそろえないと結果が変わる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 対称行列, 固有値, 特異値分解, 分散

$p$ 個の量を測った $n$ 個のデータ $x_1,\dots,x_n\in\mathbb R^p$ があるとき、散らばりの大きい方向から順に直交する座標軸を取り直し、少数の軸でデータを要約するのが 主成分分析(principal component analysis, PCA)である。新しい軸は標本共分散行列の固有ベクトルで、各軸方向の分散がその固有値になる。たとえば強く相関する 2 つの量は、ほぼ 1 本の軸で表せる(ex-pca-five)。
この記事では、主成分を定義し、公式の表にまとめたうえで、次を証明する。第 1 主成分の方向は射影したデータの分散を最大にする方向であること、上位 $k$ 個の主成分の張る部分空間は $k$ 次元の部分空間のうちで射影の分散の和を最大にし、同時に射影による誤差の 2 乗和を最小にすること(主定理)、そして主成分は中心化したデータ行列の特異値分解から読み取れること。

定義と使える条件

$n\ge2$ とし、データの平均を $\bar x:=\frac1n\sum_ix_i$、中心化したデータを $\tilde x_i:=x_i-\bar x$ とする。$\tilde x_i^{\mathsf T}$ を第 $i$ 行に並べた $n\times p$ 行列を $\tilde X$ とし、
$$ S:=\frac1n\tilde X^{\mathsf T}\tilde X=\frac1n\sum_{i=1}^n\tilde x_i\tilde x_i^{\mathsf T} $$
を 標本共分散行列 という。$S$ の $(a,b)$ 成分は $a$ 番目の量と $b$ 番目の量の共分散であり、$S$ は対称で、$u^{\mathsf T}Su=\frac1n\sum_i(u^{\mathsf T}\tilde x_i)^2\ge0$ なので半正定値である。対称行列 の定理「直交対角化できる実行列」により、$\mathbb R^p$ の正規直交基底 $v_1,\dots,v_p$ と実数 $\lambda_1\ge\lambda_2\ge\dots\ge\lambda_p\ge0$ で $Sv_j=\lambda_jv_j$ となるものがある。ベクトルの長さを $\|u\|:=\sqrt{u^{\mathsf T}u}$ と書く。

主成分

上の $v_1,\dots,v_p$、$\lambda_1\ge\dots\ge\lambda_p$ について、

  1. $v_j$ を 第 $j$ 主成分の方向(主軸)、$z_{ij}:=v_j^{\mathsf T}\tilde x_i$ を $i$ 番目のデータの 第 $j$ 主成分得点 という。
  2. $\dfrac{\lambda_j}{\lambda_1+\dots+\lambda_p}$ を第 $j$ 主成分の 寄与率、$\dfrac{\lambda_1+\dots+\lambda_k}{\lambda_1+\dots+\lambda_p}$ を第 $k$ 主成分までの 累積寄与率 という($S\ne0$ のとき)。
  3. 上位 $k$ 個の方向を並べた $p\times k$ 行列を $V_k:=(v_1\ \cdots\ v_k)$ とし、$\hat x_i:=\bar x+V_kV_k^{\mathsf T}\tilde x_i=\bar x+\sum_{j\le k}z_{ij}v_j$ を $k$ 個の主成分による 再構成 という。

確率変数のベクトル $\boldsymbol X$ の共分散行列 $\Sigma$ について同じことをしたものを 母集団の主成分 といい、以下の prop-pca-scores・thm-pca-variance・thm-pca-subspace は、$\frac1n\sum_i$ を期待値に、$\tilde x_i$ を $\boldsymbol X-E[\boldsymbol X]$ に、$S$ を $\Sigma$ に替えて同じく成り立つ(証明も同じ)。$S$ の代わりに $\frac1{n-1}\tilde X^{\mathsf T}\tilde X$ を使う流儀もあり(分散 の記事で「標本分散」と呼ぶのはこの $n-1$ で割る量である)、固有値が $\frac n{n-1}$ 倍になるだけで、主成分の方向・得点・寄与率は変わらない。
主成分分析を使ってよい条件は次のとおりである。

  1. 中心化:平均 $\bar x$ を引いてから計算する(引かないと最初の軸が平均の方向を向くことがある。反例の表)。
  2. 尺度:量の単位がそろっていないとき(長さと重さなど)は、各量をその標準偏差で割って 標準化 してから計算する。標準化したデータの標本共分散行列は 相関行列 である。単位を替えると主成分は変わる(ex-pca-units)。
  3. 一意性:$\lambda_j$ が重複していなければ、$v_j$ は符号を除いて一意に決まる。上位 $k$ 個の張る部分空間は、$\lambda_k>\lambda_{k+1}$ なら一意に決まる(thm-pca-subspace)。
  4. 線形性:主成分分析が見つけるのは、データを近似する 平面(アフィン部分空間) である。曲がった形に並んだデータは、少数の主成分では要約できない(反例の表)。

公式の表

量公式条件根拠
第 $j$ 主成分得点の平均$\frac1n\sum_iz_{ij}=0$—prop-pca-scores
第 $j$ 主成分得点の分散$\frac1n\sum_iz_{ij}^2=\lambda_j$—prop-pca-scores
得点どうしの共分散$\frac1n\sum_iz_{ij}z_{il}=0$$j\ne l$prop-pca-scores
全分散$\frac1n\sum_i\Vert \tilde x_i\Vert ^2=\operatorname{tr}S=\lambda_1+\dots+\lambda_p$—prop-pca-scores
射影の分散の最大値$\max_{\Vert u\Vert =1}\frac1n\sum_i(u^{\mathsf T}\tilde x_i)^2=\lambda_1$—thm-pca-variance
$k$ 個での再構成誤差$\frac1n\sum_i\Vert x_i-\hat x_i\Vert ^2=\lambda_{k+1}+\dots+\lambda_p$$1\le k\le p$thm-pca-subspace
特異値分解との関係$\tilde X=\sum_j\sigma_ju_jv_j^{\mathsf T}$ なら $\lambda_j=\sigma_j^2/n$、$(z_{1j},\dots,z_{nj})^{\mathsf T}=\sigma_ju_j$$j\le\min(n,p)$prop-pca-svd
2 変数の固有値$S=\begin{pmatrix}a&b\\b&c\end{pmatrix}$ で $\lambda_{1,2}=\frac{a+c}2\pm\sqrt{\bigl(\frac{a-c}2\bigr)^2+b^2}$$p=2$固有多項式 $t^2-(a+c)t+ac-b^2$
2 変数の第 1 主軸$v_1\propto(b,\ \lambda_1-a)^{\mathsf T}$$p=2$、$b\ne0$$(S-\lambda_1I)v_1=0$ の第 1 行

主定理と証明

主成分得点の平均と共分散
  1. すべての $j$ で $\frac1n\sum_iz_{ij}=0$ である。
  2. $\frac1n\sum_iz_{ij}z_{il}=\lambda_j$($j=l$)、$0$($j\ne l$)である。すなわち主成分得点どうしは無相関で、第 $j$ 主成分得点の分散は $\lambda_j$ である。
  3. $\frac1n\sum_i\|\tilde x_i\|^2=\operatorname{tr}S=\lambda_1+\dots+\lambda_p$ である。

1:$\sum_iz_{ij}=v_j^{\mathsf T}\sum_i\tilde x_i=0$ である(中心化したので $\sum_i\tilde x_i=0$)。2:$\frac1n\sum_iz_{ij}z_{il}=v_j^{\mathsf T}\bigl(\frac1n\sum_i\tilde x_i\tilde x_i^{\mathsf T}\bigr)v_l=v_j^{\mathsf T}Sv_l=\lambda_lv_j^{\mathsf T}v_l$ で、$v_1,\dots,v_p$ は正規直交である。3:$\|\tilde x_i\|^2=\operatorname{tr}(\tilde x_i\tilde x_i^{\mathsf T})$ なので左辺は $\operatorname{tr}S$ である。$V:=(v_1\ \cdots\ v_p)$、$\Lambda:=\operatorname{diag}(\lambda_1,\dots,\lambda_p)$ とすると $S=V\Lambda V^{\mathsf T}$、$V^{\mathsf T}V=I$ なので $\operatorname{tr}S=\operatorname{tr}(\Lambda V^{\mathsf T}V)=\operatorname{tr}\Lambda$ である。$\square$

分散を最大にする方向

単位ベクトル $u\in\mathbb R^p$ への射影 $u^{\mathsf T}\tilde x_i$ の分散 $\frac1n\sum_i(u^{\mathsf T}\tilde x_i)^2$ は $u^{\mathsf T}Su$ に等しく、

  1. $\max_{\|u\|=1}u^{\mathsf T}Su=\lambda_1$ であり、最大値をとるのは $u$ が固有値 $\lambda_1$ の固有ベクトルのときに限る。
  2. $2\le k\le p$ について、$v_1,\dots,v_{k-1}$ のすべてに直交する単位ベクトル $u$ の中で、$u^{\mathsf T}Su$ の最大値は $\lambda_k$ で、$u=v_k$ のときにとる。

$\frac1n\sum_i(u^{\mathsf T}\tilde x_i)^2=u^{\mathsf T}\bigl(\frac1n\sum_i\tilde x_i\tilde x_i^{\mathsf T}\bigr)u=u^{\mathsf T}Su$ である。$u=\sum_jc_jv_j$ と展開すると $\sum_jc_j^2=\|u\|^2=1$ で、$u^{\mathsf T}Su=\sum_j\lambda_jc_j^2$ である。
1:$\sum_j\lambda_jc_j^2\le\lambda_1\sum_jc_j^2=\lambda_1$ で、等号は $\lambda_j< \lambda_1$ となる $j$ でつねに $c_j=0$ のとき、すなわち $u$ が固有値 $\lambda_1$ の固有空間に入るときに限る。$u=v_1$ で等号が成り立つ。
2:$u$ が $v_1,\dots,v_{k-1}$ に直交すれば $c_1=\dots=c_{k-1}=0$ なので、$u^{\mathsf T}Su=\sum_{j\ge k}\lambda_jc_j^2\le\lambda_k$ であり、$u=v_k$ で等号が成り立つ。$\square$

$u^{\mathsf T}Su$ は $S$ の Rayleigh 商であり、1 は 対称行列 の節「Rayleigh 商と固有値」の内容と同じである。主成分は「分散が最大の方向を選び、それに直交する中で分散が最大の方向を選び、…」と 1 本ずつ選んだ軸である。次の主定理は、$k$ 本をまとめて選んでも同じ答になることを示す。

主成分の張る部分空間の最適性

$1\le k\le p$ とし、$W$ を $W^{\mathsf T}W=I_k$ を満たす $p\times k$ 行列(列が正規直交)とする。$WW^{\mathsf T}$ は $W$ の列の張る部分空間への直交射影である。

  1. 射影の分散の和について $\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}SW)=\frac1n\sum_i\|W^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2\le\lambda_1+\dots+\lambda_k$ であり、$W=V_k$ で等号が成り立つ。
  2. 射影の誤差について $\frac1n\sum_i\|\tilde x_i-WW^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2\ge\lambda_{k+1}+\dots+\lambda_p$ であり、$W=V_k$ で等号が成り立つ($k=p$ なら右辺は $0$)。
  3. $k< p$ かつ $\lambda_k>\lambda_{k+1}$ なら、1 の等号が成り立つのは $W$ の列の張る部分空間が $v_1,\dots,v_k$ の張る部分空間に等しいときに限る。
  4. 任意の $a\in\mathbb R^p$ について $\frac1n\sum_i\|(x_i-a)-WW^{\mathsf T}(x_i-a)\|^2\ge\frac1n\sum_i\|\tilde x_i-WW^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2$ である。すなわち、$k$ 次元のアフィン部分空間 $a+(W$ の列空間$)$ でデータを近似するとき、平均 $\bar x$ を通るものが最良である。

1。 $w_j:=\|W^{\mathsf T}v_j\|^2$ とおく。$W^{\mathsf T}SW=\sum_j\lambda_j(W^{\mathsf T}v_j)(W^{\mathsf T}v_j)^{\mathsf T}$ なので $\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}SW)=\sum_j\lambda_jw_j$ である。$P:=WW^{\mathsf T}$ は対称で $P^2=P$ なので、任意の $y$ で $\|W^{\mathsf T}y\|^2=y^{\mathsf T}Py=\|Py\|^2\le\|y\|^2$ であり($y=Py+(y-Py)$ は直交する和)、$0\le w_j\le1$ である。また $V=(v_1\ \cdots\ v_p)$ は直交行列なので $\sum_jw_j=\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}VV^{\mathsf T}W)=\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}W)=k$ である。したがって
$$ \sum_j\lambda_jw_j-\sum_{j\le k}\lambda_j=-\sum_{j\le k}(\lambda_j-\lambda_k)(1-w_j)-\sum_{j>k}(\lambda_k-\lambda_j)w_j+\lambda_k\Bigl(\sum_jw_j-k\Bigr) $$
で、右辺の最後の項は $0$、残りの 2 つの和はどちらも $0$ 以上なので、左辺は $0$ 以下である。$W=V_k$ なら $w_j=1$($j\le k$)、$0$($j>k$)で等号が成り立つ。$\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}SW)=\frac1n\sum_i\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}\tilde x_i\tilde x_i^{\mathsf T}W)=\frac1n\sum_i\|W^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2$ である。
2。 $\tilde x_i=P\tilde x_i+(\tilde x_i-P\tilde x_i)$ は直交する和で、$\|P\tilde x_i\|=\|W^{\mathsf T}\tilde x_i\|$($W^{\mathsf T}W=I_k$)なので、$\|\tilde x_i-P\tilde x_i\|^2=\|\tilde x_i\|^2-\|W^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2$ である。平均をとると、prop-pca-scores の 3 から左辺は $\operatorname{tr}S-\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}SW)$ で、1 から $\lambda_{k+1}+\dots+\lambda_p$ 以上である。
3。 1 の等号が成り立つとすると、$\sum_{j>k}(\lambda_k-\lambda_j)w_j=0$ である。$j>k$ では $\lambda_k-\lambda_j\ge\lambda_k-\lambda_{k+1}>0$ なので $w_j=0$、すなわち $W$ の各列は $v_{k+1},\dots,v_p$ に直交し、$W$ の列空間は $v_1,\dots,v_k$ の張る $k$ 次元の部分空間に含まれる。次元が等しいので一致する。逆に列空間が一致すれば、$P$ と $V_kV_k^{\mathsf T}$ は同じ部分空間への直交射影なので等しく、$\operatorname{tr}(W^{\mathsf T}SW)=\operatorname{tr}(SP)=\operatorname{tr}(SV_kV_k^{\mathsf T})=\lambda_1+\dots+\lambda_k$ である。
4。 $Q:=I-P$ とおくと $Q(x_i-a)=Q\tilde x_i+Q(\bar x-a)$ であり、$\sum_i\tilde x_i=0$ なので交差項の和は $0$ になり、$\sum_i\|Q(x_i-a)\|^2=\sum_i\|Q\tilde x_i\|^2+n\|Q(\bar x-a)\|^2$ である。$\square$

2 と 4 から、$k$ 次元のアフィン部分空間で $n$ 個の点を最小 2 乗の意味で近似する問題の答は、平均 $\bar x$ を通り $v_1,\dots,v_k$ の張る平面であり、誤差の 2 乗の平均は捨てた固有値の和である(ESL17 §14.5.1、(14.49)〜(14.54)(pp. 534–535)の定式化)。1 と 2 は同じ量を 2 つの側から見たもので、全分散 $\operatorname{tr}S$ が「平面に沿った分散」と「平面からの誤差」に分かれる。

特異値分解からの主成分

$\tilde X=U\Sigma V^{\mathsf T}$ を特異値分解とし、特異値を $\sigma_1\ge\dots\ge\sigma_q$($q:=\min(n,p)$)、$U$ の列を $u_1,\dots,u_n$、$V$ の列を $v_1,\dots,v_p$ とする。このとき $v_1,\dots,v_p$ は $S$ の正規直交な固有ベクトルで、固有値は $\lambda_j=\sigma_j^2/n$($j\le q$)、$\lambda_j=0$($j>q$)である。さらに $j\le q$ なら第 $j$ 主成分得点を並べたベクトルは $\tilde Xv_j=\sigma_ju_j$ である。

$S=\frac1nV\Sigma^{\mathsf T}U^{\mathsf T}U\Sigma V^{\mathsf T}=V\bigl(\frac1n\Sigma^{\mathsf T}\Sigma\bigr)V^{\mathsf T}$ で、$\Sigma^{\mathsf T}\Sigma$ は対角成分が $\sigma_1^2,\dots,\sigma_q^2,0,\dots,0$ の $p$ 次の対角行列なので、$Sv_j=\lambda_jv_j$ である。$\tilde Xv_j=U\Sigma V^{\mathsf T}v_j=U\Sigma e_j=\sigma_ju_j$ である($e_j$ は第 $j$ 単位ベクトル)。$\square$

Frobenius ノルムでの最良の低階数近似

$1\le k\le p$ とし、$B$ を階数 $k$ 以下の任意の $n\times p$ 行列とすると、$\|\tilde X-B\|_F^2\ge n(\lambda_{k+1}+\dots+\lambda_p)$ であり、$B=\tilde XV_kV_k^{\mathsf T}$($k\le q$ なら $\sum_{j\le k}\sigma_ju_jv_j^{\mathsf T}$)で等号が成り立つ。

$B$ の第 $i$ 行を $b_i^{\mathsf T}$ とすると、$b_i$ はすべて $B$ の行空間に入り、その次元は $k$ 以下である。それを含む $k$ 次元の部分空間をとり、その正規直交基底を列に並べた行列を $W$ とすると、$\tilde x_i-WW^{\mathsf T}\tilde x_i$ はその部分空間に直交するので、$\|\tilde x_i-b_i\|^2=\|\tilde x_i-WW^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2+\|WW^{\mathsf T}\tilde x_i-b_i\|^2\ge\|\tilde x_i-WW^{\mathsf T}\tilde x_i\|^2$ である。$i$ について足して thm-pca-subspace の 2 を使えばよい。等号の場合も同じ 2 による($k\le q$ のときの形は prop-pca-svd から $\tilde XV_kV_k^{\mathsf T}=\sum_{j\le k}\sigma_ju_jv_j^{\mathsf T}$)。$\square$

prop-pca-svd により $n(\lambda_{k+1}+\dots+\lambda_p)=\sigma_{k+1}^2+\dots+\sigma_q^2$ である($k\ge q$ なら $0$)。作用素ノルムでの同じ型の結果は 特異値分解 の定理「作用素ノルムでの最良の低階数近似」にある。

計算の手順

  1. 中心化:平均 $\bar x$ を計算し、$\tilde x_i=x_i-\bar x$ を行に並べた $\tilde X$ を作る。
  2. 尺度の決定:量の単位がそろっていなければ、各列をその標準偏差 $s_a=\sqrt{S_{aa}}$ で割る(相関行列を使う)。
  3. 固有値分解:$S=\frac1n\tilde X^{\mathsf T}\tilde X$ の固有値と正規直交な固有ベクトルを求め、固有値の大きい順に $\lambda_j$、$v_j$ と並べる。$S$ を作らずに $\tilde X$ の特異値分解から $\lambda_j=\sigma_j^2/n$、$v_j$ を読んでもよい(prop-pca-svd)。
  4. 次元の選択:累積寄与率が目標(たとえば $0.9$)を超える最小の $k$ を選ぶ。$\lambda_k=\lambda_{k+1}$ となる $k$ では部分空間が一意に決まらないので避ける(thm-pca-subspace の 3)。
  5. 得点と再構成:$z_{ij}=v_j^{\mathsf T}\tilde x_i$($j\le k$)を計算する。再構成 $\hat x_i=\bar x+\sum_{j\le k}z_{ij}v_j$ の誤差の 2 乗の平均は $\lambda_{k+1}+\dots+\lambda_p$ である。
    固有ベクトルの符号は任意なので、得点の符号にも意味はない。解釈するときは $v_j$ の成分(各量の重み)の大きさと相対的な符号を見る。

例題

5 点の 2 次元データ

問い:$(-2,-1)$、$(-1,-1)$、$(0,0)$、$(1,1)$、$(2,1)$ の主成分を求め、第 1 主成分だけで再構成したときの誤差を求める。
使う公式:公式の表の 2 変数の固有値と第 1 主軸、thm-pca-subspace の 2。
答え:$\bar x=0$、$S=\begin{pmatrix}2&6/5\\6/5&4/5\end{pmatrix}$、$\lambda_{1,2}=\frac75\pm\frac{3\sqrt5}5$($\lambda_1\approx2.741641$、$\lambda_2\approx0.058359$)、寄与率 $\approx0.979157$。第 1 主軸は $v_1\approx(0.850651,\ 0.525731)^{\mathsf T}$($x$ 軸から $\approx31.7175^\circ$)、得点は $\approx-2.227033,\ -1.376382,\ 0,\ 1.376382,\ 2.227033$。再構成の誤差の 2 乗の平均は $\lambda_2\approx0.058359$。

途中の計算を開く

$\sum x_i^2=10$、$\sum y_i^2=4$、$\sum x_iy_i=6$ を $5$ で割って $S$ を得る。$\frac{a+c}2=\frac75$、$\bigl(\frac{a-c}2\bigr)^2+b^2=0.36+1.44=1.8=\frac95$ で $\sqrt{9/5}=\frac{3\sqrt5}5$。$v_1\propto(b,\lambda_1-a)=(1.2,\ 0.741641)$ を正規化する($\tan$ の値は $0.618034$)。得点の 2 乗の平均は $\lambda_1$ に一致する(prop-pca-scores)。

単位を替えると主成分が変わる

問い:ex-pca-five の $y$ を 10 倍した単位で測った場合と、標準化した場合の第 1 主軸を比べる。
使う公式:公式の表の 2 変数の公式。
答え:$y$ を 10 倍すると $S=\begin{pmatrix}2&12\\12&80\end{pmatrix}$、$\lambda_1\approx81.804412$、第 1 主軸は $x$ 軸から $\approx81.4486^\circ$ で、ほぼ $y$ 軸に沿う(寄与率 $\approx0.997615$)。標準化すると相関行列は $\begin{pmatrix}1&r\\r&1\end{pmatrix}$、$r=\frac{3\sqrt{10}}{10}\approx0.948683$ で、固有値は $1\pm r$、第 1 主軸は $(1,1)^{\mathsf T}/\sqrt2$($45^\circ$)、寄与率 $\frac{1+r}2\approx0.974342$ である。元の単位では $31.7175^\circ$ だったので、3 つの答はすべて違う。

途中の計算を開く

$y$ を 10 倍すると共分散は 10 倍、$y$ の分散は 100 倍になる。$\lambda_1=41+\sqrt{39^2+144}=41+\sqrt{1665}$、$v_1\propto(12,\ \lambda_1-2)$。相関係数は $r=\frac{6/5}{\sqrt{2\cdot4/5}}=\frac{6/5}{\sqrt{8/5}}$。2 次の相関行列 $\begin{pmatrix}1&r\\r&1\end{pmatrix}$ は $r>0$ なら $(1,1)^{\mathsf T}$ を固有値 $1+r$ の固有ベクトルにもつ。

等相関の共分散行列

問い:$p$ 個の量の分散がどれも $1$、どの 2 つの相関も $\rho$($0< \rho< 1$)である母集団、すなわち $\Sigma=(1-\rho)I_p+\rho\mathbf 1\mathbf 1^{\mathsf T}$ の主成分を求める。
答え:$\lambda_1=1+(p-1)\rho$、$v_1=\mathbf 1/\sqrt p$(全部の量の平均の方向)、$\lambda_2=\dots=\lambda_p=1-\rho$ で、第 1 主成分の寄与率は $\frac{1+(p-1)\rho}p$ である。$p=4$、$\rho=\frac12$ なら $\lambda_1=2.5$、寄与率 $0.625$ である。$p\ge3$ なら、第 2 主成分以降は $\mathbf 1$ に直交する方向ならどれでもよく、一意に決まらない。

途中の計算を開く

$\Sigma\mathbf 1=(1-\rho)\mathbf 1+\rho p\mathbf 1=(1+(p-1)\rho)\mathbf 1$。$\mathbf 1^{\mathsf T}u=0$ なら $\Sigma u=(1-\rho)u$。$0< \rho$ なので $1+(p-1)\rho>1-\rho$($p\ge2$)。

使える条件と反例

外す条件反例成り立たなくなること
$\lambda_2>\lambda_3$(第 2 主成分の一意性)6 点 $(\pm2,0,0)$、$(0,\pm1,0)$、$(0,0,\pm1)$$S=\operatorname{diag}(\frac43,\frac13,\frac13)$ で、第 1 主成分は $e_1$ に決まるが、第 2 主成分は $e_2,e_3$ の張る平面のどの単位ベクトルでもよい
中心化する4 点 $(9,0)$、$(11,0)$、$(10,\pm2)$$S=\operatorname{diag}(\frac12,2)$ の第 1 主軸は $y$ 方向だが、中心化しない $\frac1n\sum_ix_ix_i^{\mathsf T}=\operatorname{diag}(\frac{201}2,2)$ の第 1 固有ベクトルは平均の向きの $x$ 方向になる
量の単位をそろえるex-pca-units単位の選び方で第 1 主軸が $31.7^\circ$、$81.4^\circ$、$45^\circ$ と変わる
データが平面の近くにある放物線 $y=x^2$ 上の 5 点 $(0,0)$、$(\pm1,1)$、$(\pm2,4)$点は 1 次元の曲線上にあるのに $S=\operatorname{diag}(2,\frac{14}5)$ で、第 1 主成分($y$ 方向、$\lambda_1>\lambda_2$ で一意)による再構成の誤差は $\lambda_2=2$、全分散の $\frac5{12}$ が残る

よくある誤り

誤り正しくはなぜ
平均を引かずに $\frac1n X^{\mathsf T}X$ の固有ベクトルを使う$\tilde X$ から $S$ を作る反例の表の 2 行目
単位の違う量をそのまま並べる標準化して相関行列を使うex-pca-units
寄与率を $\lambda_j/\lambda_1$ とする$\lambda_j/(\lambda_1+\dots+\lambda_p)$def-pca-main の 2
$\frac1n$ と $\frac1{n-1}$ で主成分が変わると思う方向・得点・寄与率は同じで、固有値だけが $\frac n{n-1}$ 倍定義の後の注意
得点の符号に意味を読む$v_j$ と $-v_j$ はどちらも主軸固有ベクトルの符号は任意

補足

確率変数のベクトルが多変量正規分布 $N(\mu,\Sigma)$($\Sigma$ は正則)に従うとき、密度の等高線は楕円体で、その主軸の方向が $\Sigma$ の主成分の方向、半径の比が $\sqrt{\lambda_j}$ の比である(多変量正規分布 の定理「多変量正規分布の密度」の指数の部分 $(x-\mu)^{\mathsf T}\Sigma^{-1}(x-\mu)$ を固有ベクトルの座標で書けばわかる)。主成分得点を説明変数に使う回帰(主成分回帰)は、説明変数が多く互いに相関が強いときの 回帰分析 の工夫の 1 つである(ESL17 §3.5.1(p. 79))。

関連項目

参考文献

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