Chowの定理

同義語:Chow's theoremChow の定理

概要

Chowの定理(Chow's theorem)とは、複素射影空間 $\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の閉解析的部分集合、すなわち閉集合で局所的に有限個の正則関数の共通零点になっているものは、有限個の斉次多項式の共通零点として書ける、という定理である。証明は、原点を加えた錐が $\mathbb{C}^{n+1}$ の解析的部分集合になること(Remmert–Stein の定理)と、錐を定める正則関数の斉次成分への分解による。GAGA を使えば、射影的スキームの解析化の閉解析的部分空間が構造層まで込めてただ 1 つの閉部分スキームから来ることが示され、射影多様体の間の正則写像が代数的であることが従う。射影空間の中にない集合や閉でない集合では成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影空間, 解析的集合, 複素解析空間, GAGA

複素射影空間 $\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の部分集合は、斉次多項式の共通零点として与えられれば代数的である。一方、局所的に正則関数の共通零点になっているだけの閉集合は、一見はるかに多い。Chow の定理(W.-L. Chow、1949 年、Cho49)は、両者が一致することを述べる。$\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の閉じた解析的部分集合は、有限個の斉次多項式の共通零点である。射影空間の中では、正則関数で書ける図形はすべて多項式で書ける。
この定理は、固有射を射影的な射で覆う Chowの補題 とは別の定理である。この記事では、射影空間の上の錐を使う証明と、GAGA を使う証明の 2 つを述べる。後者からは部分空間の構造層まで込めた形が得られ、射影多様体の間の正則写像が代数的であることが従う。

準備

$\pi\colon\mathbb{C}^{n+1}\setminus\{0\}\to\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ を商写像とする(射影空間)。部分集合 $A\subset\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ が 閉解析的部分集合 であるとは、$A$ が閉集合で、各点 $x\in\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ に開近傍 $U$ と有限個の正則関数 $f_1,\dots,f_r\in\mathcal{O}(U)$ があって $A\cap U=\{f_1=\cdots=f_r=0\}$ となることをいう(解析的集合 の定義「解析集合」を $\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の座標近傍で読んだもの)。$A$ が 代数的 であるとは、有限個の斉次多項式 $g_1,\dots,g_s\in\mathbb{C}[z_0,\dots,z_n]$ について
$$ A=V(g_1,\dots,g_s):=\{[z]\in\mathbb{P}^n(\mathbb{C})\mid g_1(z)=\cdots=g_s(z)=0\} $$
と書けることをいう。斉次多項式の零点であるかどうかは代表元 $z$ のとり方によらない。$A$ の 錐 を $C(A):=\pi^{-1}(A)\cup\{0\}\subset\mathbb{C}^{n+1}$ と定める。$C(A)$ は $\mathbb{C}^\times$ 倍で不変である。
開多重円板 $\Delta\subset\mathbb{C}^{n+1}$ の上の正則関数 $f$ は、中心 $0$ での冪級数展開をもち、級数は $\Delta$ の各点で絶対収束する(多重円板 の定理「冪級数展開」)。その $k$ 次の項をまとめた $k$ 次斉次多項式を $f_{(k)}$ と書く。

錐の補題と主定理

斉次な零点集合の判定

$V\subset\mathbb{C}^{n+1}$ が次の 2 条件を満たすとする。

  1. $0\in V$ であり、任意の $\lambda\in\mathbb{C}^\times$ について $\lambda V\subset V$ である。
  2. 原点を中心とする開多重円板 $\Delta$ と正則関数 $f_1,\dots,f_r\in\mathcal{O}(\Delta)$ があって、$V\cap\Delta=\{z\in\Delta\mid f_1(z)=\cdots=f_r(z)=0\}$ である。
    このとき有限個の斉次多項式 $g_1,\dots,g_s$ があって、$V=\{z\in\mathbb{C}^{n+1}\mid g_1(z)=\cdots=g_s(z)=0\}$ である。

すべての斉次成分 $f_{j,(k)}$($1\le j\le r$、$k\ge0$)の共通零点を $W\subset\mathbb{C}^{n+1}$ とする。
$V\cap\Delta=W\cap\Delta$. $z\in\Delta$ とする。$\Delta$ は開多重円板なので、ある $\rho>1$ について、$|t|<\rho$ なら $tz\in\Delta$ である。$f_j$ の冪級数は $tz$ で絶対収束するので、同じ次数の項をまとめて
$$ f_j(tz)=\sum_{k\ge0}f_{j,(k)}(z)\,t^k\qquad(|t|<\rho) $$
を得る。右辺は $t$ の冪級数である。$z\in V$ なら、条件 1 により $|t|<1$ のすべての $t$ について $tz\in V\cap\Delta$ なので($t=0$ では $0\in V$ による)、左辺は $|t|<1$ で恒等的に $0$ であり、冪級数の係数の一意性からすべての $f_{j,(k)}(z)$ が $0$ になる。よって $z\in W$ である。逆に $z\in W\cap\Delta$ なら、$t=1$ として $f_j(z)=\sum_kf_{j,(k)}(z)=0$ なので $z\in V$ である。
$V=W$. $W$ も斉次多項式の共通零点なので $\mathbb{C}^\times$ 倍で不変である。任意の $z\in\mathbb{C}^{n+1}$ について、十分小さい $t\ne0$ で $tz\in\Delta$ となるから、$z\in V\iff tz\in V\iff tz\in W\iff z\in W$ である。
有限個にする. Hilbertの基底定理 により $\mathbb{C}[z_0,\dots,z_n]$ は Noether環 なので、すべての $f_{j,(k)}$ が生成するイデアルは、その中の有限個 $g_1,\dots,g_s$ で生成される。各 $f_{j,(k)}$ は $g_1,\dots,g_s$ の多項式係数の一次結合なので、$W$ は $g_1,\dots,g_s$ の共通零点に等しい。$\square$

Chow の定理

$\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の閉解析的部分集合 $A$ は代数的である。すなわち、有限個の斉次多項式 $g_1,\dots,g_s$ があって $A=V(g_1,\dots,g_s)$ となる。

錐の閉包に Remmert–Stein の定理を使う

$A=\emptyset$ なら $A=V(1)$ である。$A\ne\emptyset$ とし、$Z:=\pi^{-1}(A)$ とおく。
次の定理はこの記事では証明しない。Remmert–Stein の延長定理:複素空間 $M$ の解析的部分集合 $B$ と、$M\setminus B$ の解析的部分集合 $Z$ について、ある整数 $p\ge0$ で $\dim B\le p$ かつ $Z$ の各点 $x$ で $\dim(Z,x)>p$ ならば、$Z$ の $M$ での閉包は $M$ の解析的部分集合である(Dem12 第 II 章 (8.7)、p. 118)。
これを $M=\mathbb{C}^{n+1}$、$B=\{0\}$、$p=0$ に使う。$Z$ が $\mathbb{C}^{n+1}\setminus\{0\}$ の解析的部分集合であることは、$A\cap U=\{f_1=\cdots=f_r=0\}$ のとき $Z\cap\pi^{-1}(U)=\{f_1\circ\pi=\cdots=f_r\circ\pi=0\}$ で、$f_i\circ\pi$ が正則であることによる。$z\in Z$ について、$\{\lambda z\mid\lambda\in\mathbb{C}^\times\}$ は $z$ を通る 1 次元の複素部分多様体で $Z$ に含まれるので、$z$ での $Z$ の芽はこの曲線の芽を含み、$\dim(Z,z)\ge1>0$ である(次元の単調性、Dem12 第 II 章 (4.25)・(4.26)、p. 98)。よって $Z$ の閉包は $\mathbb{C}^{n+1}$ の解析的部分集合である。$Z$ は $\mathbb{C}^{n+1}\setminus\{0\}$ の閉集合で、$z\in Z$ について $tz\to0$($t\to0$)なので、閉包は $V:=Z\cup\{0\}=C(A)$ である。
$V$ は原点の近傍で有限個の正則関数の共通零点なので、原点を中心とする十分小さい開多重円板 $\Delta$ をとれば lem-chow-cone の条件 2 が成り立ち、条件 1 は $C(A)$ の定義から成り立つ。よって $V=\{g_1=\cdots=g_s=0\}$ となる斉次多項式 $g_1,\dots,g_s$ があり、$[z]\in A\iff z\in V\iff g_j(z)=0\ (\forall j)$ なので $A=V(g_1,\dots,g_s)$ である。$\square$

証明の要は、射影空間の閉解析的部分集合が $\mathbb{C}^{n+1}$ の中で「原点で閉じた錐」を与えることにある。錐であることが、正則関数の冪級数を斉次多項式に分解させる。Remmert–Stein の定理は、原点を加えても解析的であることを保証する部分を担う(Dem12 第 II 章 (8.10)、p. 121 も同じ筋である)。

GAGA による形と帰結

GAGA を使うと、集合としてだけでなく、構造層を込めた閉解析的部分空間が代数化できる。$X$ を $\mathbb{C}$ 上の射影的スキーム、$X^{an}$ をその解析化とする。以下では GAGA の定理「Serre の GAGA」(Ser56 Théorème 1–3。この記事では証明しない)の 3 つの主張、すなわち (1) 連接層のコホモロジーの比較写像が同型、(2) 連接層の間の射の集合が解析化で全単射、(3) 連接解析層がすべて連接層の解析化、と、GAGA の命題「解析化の完全性と忠実性」(解析化は完全で、連接層 $\mathcal{F}$ について $\mathcal{F}^{an}=0$ なら $\mathcal{F}=0$)を使う。

射影空間の閉解析的部分空間は代数的

$X$ を $\mathbb{C}$ 上の射影的スキームとする。$X^{an}$ の任意の閉解析的部分空間 $Z$ に対し、$X$ の閉部分スキーム $Y$ で $Y^{an}=Z$ となるものがただ 1 つ存在する。

イデアル層を代数化する

$Z$ を定めるイデアル層 $\mathcal{I}\subset\mathcal{O}_{X^{an}}$ は局所有限生成であり、岡の連接定理 により $\mathcal{O}_{X^{an}}$ は連接なので、$\mathcal{I}$ は連接解析層である。GAGA の (3) により $\mathcal{I}\cong\mathcal{J}^{an}$ となる連接層 $\mathcal{J}$ があり、(2) により合成 $\mathcal{J}^{an}\cong\mathcal{I}\hookrightarrow\mathcal{O}_{X^{an}}=\mathcal{O}_X^{an}$ はある射 $u\colon\mathcal{J}\to\mathcal{O}_X$ の解析化である。解析化は完全なので $(\ker u)^{an}=\ker(u^{an})=0$ であり、忠実性から $\ker u=0$ である。$u$ の像を改めて $\mathcal{J}$ とおくと、$\mathcal{J}$ は $\mathcal{O}_X$ のイデアル層で $\mathcal{J}^{an}=\mathcal{I}$ である。$Y$ を $\mathcal{J}$ の定める閉部分スキームとすれば、完全性から $(\mathcal{O}_X/\mathcal{J})^{an}=\mathcal{O}_{X^{an}}/\mathcal{I}$ なので $Y^{an}=Z$ である。
一意性:イデアル層 $\mathcal{J}_1,\mathcal{J}_2$ がともに $\mathcal{J}_i^{an}=\mathcal{I}$ を満たすとする。和 $\mathcal{J}'=\mathcal{J}_1+\mathcal{J}_2$ は $\mathcal{J}_1\oplus\mathcal{J}_2\to\mathcal{O}_X$ の像なので、完全性から $\mathcal{J}'^{an}=\mathcal{J}_1^{an}+\mathcal{J}_2^{an}=\mathcal{I}$ である。よって $(\mathcal{J}'/\mathcal{J}_1)^{an}=\mathcal{I}/\mathcal{I}=0$ で、忠実性から $\mathcal{J}'=\mathcal{J}_1$ である。同様に $\mathcal{J}'=\mathcal{J}_2$ なので $\mathcal{J}_1=\mathcal{J}_2$ である。$\square$

$X=\mathbb{P}^n$ とし、閉解析的部分集合 $A$ の上で消える正則関数の芽のイデアル層(Cartanの連接定理 により連接)で定まる被約な部分空間に cor-chow-subspace を当てはめると、$A$ は閉部分スキーム $Y$ の閉点の集合、すなわち斉次多項式の共通零点になる。これは thm-chow-main の別証明であり、Ser56 §19 の Proposition 13(p. 29)の証明である。錐による証明が Remmert–Stein の定理を使うのに対し、こちらは GAGA を使う。

正則写像は代数的

$X,Y$ を $\mathbb{C}$ 上の射影的スキームとする。解析化 $f\mapsto f^{an}$ は、スキームの射 $X\to Y$ の集合から複素解析空間の射 $X^{an}\to Y^{an}$ の集合への全単射である。とくに、射影多様体の間の正則写像はすべて代数的な射から来る。

直線束と切断で表す

要点:射影空間への射を直線束とそれを生成する切断の組で表し、GAGA で組ごと代数化する。一般の $Y$ へは cor-chow-subspace の一意性で降ろす。

詳しい証明を開く

$Y=\mathbb{P}^m$ の場合.スキームの射 $f\colon X\to\mathbb{P}^m$ は、可逆層 $\mathcal{L}=f^*\mathcal{O}(1)$ とそれを生成する大域切断 $s_i=f^*z_i$($0\le i\le m$)の組と、同型を除いて 1 対 1 に対応する(Har77 II.7.1)。正則写像 $h\colon X^{an}\to\mathbb{P}^m(\mathbb{C})$ も同様に、正則直線束 $L=h^*\mathcal{O}(1)^{an}$ とそれを生成する切断 $t_i=h^*z_i$ の組と対応し、この対応は解析化と両立する。

全射性:$h$ に対し、GAGA の (3) により $L\cong\mathcal{L}^{an}$ となる連接層 $\mathcal{L}$ がある。閉点 $x$ で $\mathcal{L}_x\otimes\mathcal{O}_{X^{an},x}$ は階数 1 の自由加群であり、$\mathcal{O}_{X^{an},x}$ は $\mathcal{O}_{X,x}$ 上忠実平坦(GAGA の命題「局所環の平坦性」)なので、有限生成加群 $\mathcal{L}_x$ は平坦、したがって階数 1 の自由加群である。自由になる点の集合は開集合で閉点をすべて含むので、$\mathcal{L}$ は可逆層である。GAGA の (1) を $q=0$ で使うと $t_i=s_i^{an}$ となる $s_i\in H^0(X,\mathcal{L})$ があり、$\mathcal{O}_X^{m+1}\xrightarrow{(s_i)}\mathcal{L}$ の余核は解析化すると $0$ なので $0$ である。よって $(\mathcal{L},(s_i))$ の定める $f$ は $f^{an}=h$ を満たす。

単射性:$f^{an}=g^{an}$ なら、$f^*\mathcal{O}(1)$ と $g^*\mathcal{O}(1)$ の解析化の間に切断を保つ同型 $\varphi$ がある。GAGA の (2) により $\varphi=\psi^{an}$ となる $\psi$ があり、$\psi$ の核と余核は解析化すると $0$ なので $\psi$ は同型である。$\psi(f^*z_i)$ と $g^*z_i$ は解析化が一致するので、(2) の単射性により一致する。Har77 II.7.1 の一意性から $f=g$ である。

一般の $Y$.$Y\subset\mathbb{P}^m$ を閉埋め込みとし、$h\colon X^{an}\to Y^{an}$ を $\mathbb{P}^m(\mathbb{C})$ への写像とみて、上で $f\colon X\to\mathbb{P}^m$ をとる。閉部分スキーム $f^{-1}(Y)$ の解析化は、局所的にはどちらも $Y$ の定義式を $f$ で引き戻した関数で定まるので、閉解析的部分空間 $(f^{an})^{-1}(Y^{an})=X^{an}$ である。cor-chow-subspace の一意性から $f^{-1}(Y)=X$、すなわち $f$ は $Y$ を経由する。単射性は $\mathbb{P}^m$ への合成で $\mathbb{P}^m$ の場合に帰着する。$\square$

双正則なら代数的に同型

$X,Y$ を $\mathbb{C}$ 上の射影的スキームとし、$h\colon X^{an}\to Y^{an}$ を複素解析空間の同型とする。このとき $h=g^{an}$ となるスキームの同型 $g\colon X\to Y$ がただ 1 つある。とくに、コンパクト複素空間の上に射影的スキームの構造は同型を除いて高々 1 つしかない。

cor-chow-morphisms により $h=g^{an}$、$h^{-1}=g'^{an}$ となる射 $g\colon X\to Y$、$g'\colon Y\to X$ がある。$(g'\circ g)^{an}=\mathrm{id}=\mathrm{id}_X^{an}$ なので、同系の単射性から $g'\circ g=\mathrm{id}_X$ であり、同様に $g\circ g'=\mathrm{id}_Y$ である。$\square$

Riemann 球面の正則な自己写像

正則写像 $h\colon\mathbb{P}^1(\mathbb{C})\to\mathbb{P}^1(\mathbb{C})$ は、cor-chow-morphisms によりスキームの射 $\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$ から来る。その射に対応する可逆層は $\mathcal{O}(d)$ と同型で(Har77 II.6.17)、大域切断で生成されるので $d\ge0$ であり、それを生成する 2 つの切断は共通零点をもたない $d$ 次斉次多項式 $p(z_0,z_1)$、$q(z_0,z_1)$ である(Har77 II.5.13)。よって $h([z_0:z_1])=[p(z_0,z_1):q(z_0,z_1)]$ と書ける。アフィン座標 $w=z_1/z_0$ で見れば、Riemann球面上の正則写像(有理型関数)は有理関数である。

小平の埋め込み定理 は、正の直線束をもつコンパクト複素多様体を射影空間の閉複素部分多様体として埋め込む。その像に cor-chow-subspace を当てはめると閉部分スキームの解析化なので、そのような多様体は射影多様体の解析化である。

反例

thm-chow-main の仮定は「射影空間の中にある」「閉集合である」「複素解析的である」の 3 つである。1 つずつ外すと結論が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
射影空間の中にあること$\mathbb{C}^2$ の閉集合 $\Gamma=\{(z,w)\mid w=e^z\}$多項式の共通零点として書けること
閉集合であること$\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ の部分集合 $\Gamma'=\{[1:z:e^z]\mid z\in\mathbb{C}\}$斉次多項式の共通零点として書けること
複素解析的であること$\mathbb{P}^1(\mathbb{C})$ の円周 $S=\{[1:z]\mid z\bar z=1\}$斉次多項式の共通零点として書けること
表の確かめ

1 行目. $\Gamma$ は正則関数 $w-e^z$ の零点集合なので $\mathbb{C}^2$ の閉解析的部分集合である。多項式 $F_1,\dots,F_s$ の共通零点が $\Gamma$ に等しいとすると、$\Gamma\ne\mathbb{C}^2$ なので $0$ でない $F=F_j$ がある。$F(z,w)=\sum_{m=0}^Ma_m(z)w^m$($a_m\in\mathbb{C}[z]$、$a_M\ne0$)と書くと、すべての $z$ で $\sum_ma_m(z)e^{mz}=0$ である。$e^{Mz}$ で割って $z$ を正の実数の方向に $+\infty$ へ送ると、$m< M$ の項 $a_m(z)e^{(m-M)z}$ は $0$ に収束するので $a_M(z)\to0$ となるが、$0$ でない多項式は $0$ に収束しない。矛盾である。
2 行目. $\Gamma'$ は開集合 $U_0=\{z_0\ne0\}\cong\mathbb{C}^2$ の中では閉解析的部分集合 $\Gamma$ に一致し、各点の近傍で正則関数の零点になっている。もし $\Gamma'=V(g_1,\dots,g_s)$ なら、$\Gamma=\Gamma'\cap U_0$ は多項式 $g_j(1,z,w)$ の共通零点になり、1 行目に反する。したがって $\Gamma'$ は $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ の閉集合ではなく、その閉包も(Chow の定理により)解析的部分集合ではない。
3 行目. $S$ はコンパクトなので閉集合であり、実解析的な方程式 $|z|^2=1$ で定まる。$\mathbb{P}^1(\mathbb{C})$ の代数的部分集合 $V(g_1,\dots,g_s)$ は、$0$ でない $g_j$ があれば、2 変数の斉次多項式が 1 次式の積に分解することから有限集合であり、すべての $g_j$ が $0$ なら全体である。$S$ は無限集合で全体でもないので代数的でない。

射影空間に入らないコンパクト複素多様体は、Chow の定理の対象外である。たとえば一般の 2 次元複素トーラスは有理型関数が定数しかなく、どの射影的スキームの解析化でもない(GAGA の例「反例:射影空間に入らないコンパクト複素多様体」)。

関連項目

参考文献

[1]
Wei-Liang Chow, On compact complex analytic varieties, American Journal of Mathematics, 1949, 主定理(射影空間の閉解析的部分集合の代数性)
[2]
Jean-Pierre Serre, Géométrie algébrique et géométrie analytique, Annales de l'Institut Fourier, 1956, §12 Théorème 1・2(p. 19)・Théorème 3(p. 20)、§19 Proposition 13・14(p. 29)・Proposition 15(pp. 29–30)
[4]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II.5.13(射影空間の $\mathcal{O}(n)$ の大域切断)、II.6.17($\operatorname{Pic}\mathbb{P}^n\cong\mathbb{Z}$)、II.7.1(射影空間への射と生成する切断)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する