サイクルの固有押し出しと平坦引き戻し

同義語:proper pushforward and flat pullback of cycles

概要

サイクルの固有押し出しと平坦引き戻し(proper pushforward and flat pullback of cycles)とは、代数多様体の固有射 $f$ で部分多様体 $V$ を像 $f(V)$ の関数体の拡大次数倍(次元が下がれば $0$)に写す固有押し出し $f_*$ と、相対次元 $d$ の平坦射で部分多様体を逆像スキームの基本サイクルに写す平坦引き戻し $f^*$ のことである。どちらも有理同値を保ち、Chow 群の間の準同型 $f_*\colon CH_p(X')\to CH_p(X)$、$f^*\colon CH_p(X)\to CH_{p+d}(X')$ を与える。押し出しは主因子をノルムの主因子か $0$ に写し、とくに完備多様体の $0$ サイクルの次数は有理同値で不変である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 代数的サイクル, 有理同値, 固有射, 平坦射, 長さ(加群)

何を述べるか

代数的サイクルを射で動かす基本の操作は二つある。固有押し出し は、固有射 $f\colon X'\to X$ で部分多様体 $V$ を像 $f(V)$ に写し、「何対 1 か」を表す拡大次数を係数に付ける。平坦引き戻し は、平坦射で部分多様体の逆像をとり、逆像スキームの成分に長さを係数として付ける。どちらも有理同値を保つので、Chow 群の間の準同型を与える。これが Chow 群を関手として扱うための出発点である。この記事では次のことを示す。

問い答え
押し出しは有理同値を保つか固有射なら保つ。主因子 $\operatorname{div}(r)$ はノルムの主因子か $0$ に写る(thm-ppfp-pushforward)
引き戻しは有理同値を保つか相対次元が一定の平坦射なら保つ。主因子は逆像の各成分の主因子の重複度付きの和に写る(thm-ppfp-pullback)
合成とはどう関わるかどちらも合成と両立し、有限平坦射では押し出しと引き戻しの合成が次数倍になる(prop-ppfp-functorial、prop-ppfp-pullback-basic、prop-ppfp-finite-flat)
何が得られるか完備多様体の $0$ サイクルの次数が有理同値で不変になる(cor-ppfp-degree)

設定と記号

記号と規約は 代数的サイクル の記事にそろえる。$k$ は体、代数多様体 は $k$ 上分離的で有限型のスキーム、部分多様体 は既約かつ被約な閉部分スキームである。部分多様体 $V$ の関数体を $k(V)$、$V$ の生成点における局所環を $\mathcal{O}_{X,V}$ と書き、$\dim V$ は $k(V)$ の $k$ 上の超越次数である。$p$ 次元の部分多様体を基底とする自由アーベル群が $p$ サイクルの群 $Z_p(X)$ である。
次元が $p$ 以下の閉部分スキーム $Z\subset X$ に対し、$Z$ の $p$ 次元の既約成分 $V$ ごとに長さ $\ell(\mathcal{O}_{Z,V})$ を係数とする
$$ [Z]_p:=\sum_{V}\ell(\mathcal{O}_{Z,V})\,[V]\in Z_p(X) $$
を $Z$ の $p$ 次元の基本サイクル という($\mathcal{O}_{Z,V}$ は $0$ 次元の Noether 局所環なので長さは有限である)。$Z$ が純 $p$ 次元なら、代数的サイクル の定義「代数的サイクルの群」の基本サイクル $[Z]$ と同じである。
$(p+1)$ 次元の部分多様体 $V$ と $r\in k(V)^\times$ の主因子 $\operatorname{div}(r)=\sum_W\operatorname{ord}_W(r)[W]$、それらが生成する部分群 $\operatorname{Rat}_p(X)$、Chow 群 $CH_p(X)=Z_p(X)/\operatorname{Rat}_p(X)$ は 代数的サイクル の定義「位数と有理関数の因子」「有理同値の定義」のとおりである。$1$ 次元の Noether 局所整域 $A$ の商体の元 $a/b$ について $\operatorname{ord}_A(a/b):=\ell_A(A/aA)-\ell_A(A/bA)$ であり、$\operatorname{ord}_W$ は $A=\mathcal{O}_{V,W}$ の場合である。

固有押し出し

$f\colon X'\to X$ を固有射、$V\subset X'$ を $p$ 次元の部分多様体とする。固有射は閉写像なので $f(V)$ は既約な閉集合であり、被約な構造を入れて $X$ の部分多様体とみなす。$V\to f(V)$ は支配的なので $k(f(V))\subset k(V)$ となり、$\dim f(V)\le\dim V$ である。等号のとき $k(V)$ は $k(f(V))$ 上超越次数 $0$ の有限生成拡大、すなわち有限次拡大である。

固有押し出し

固有射 $f\colon X'\to X$ と $p$ 次元の部分多様体 $V\subset X'$ に対し
$$ f_*[V]:=\begin{cases}[k(V):k(f(V))]\,[f(V)]&(\dim f(V)=p)\\0&(\dim f(V)< p)\end{cases} $$
とおき、線型に拡張した群準同型 $f_*\colon Z_p(X')\to Z_p(X)$ を $f$ による 固有押し出し(proper pushforward)という。

閉埋め込み $i\colon X'\hookrightarrow X$ では $i_*[V]=[V]$ で、押し出しは $X'$ 上のサイクルを $X$ 上のサイクルとみなす操作である。

押し出しの関手性

固有射 $f\colon X'\to X$、$g\colon X\to X''$ について $(g\circ f)_*=g_*\circ f_*$ である。

$V\subset X'$ を $p$ 次元の部分多様体とし、$W:=f(V)$、$U:=g(W)=(g\circ f)(V)$ とおく。$\dim U\le\dim W\le p$ である。$\dim U< p$ なら両辺は $0$ である(右辺は $f_*[V]$ が $0$ か $[W]$ の倍数で、$g_*[W]=0$)。$\dim U=p$ なら $\dim W=p$ で、両辺は $[U]$ の倍数であり、係数は $[k(V):k(U)]$ と $[k(V):k(W)][k(W):k(U)]$ で、拡大次数の乗法性により等しい。$\square$

長さとノルムの補題

固有押し出しが主因子をどう写すかは、$1$ 次元局所整域の上の有限代数の長さの計算に帰着する。

有限代数上の長さ

$A$ を局所環(極大イデアル $\mathfrak{m}$)、$B$ を $A$ 加群として有限生成な $A$ 代数、$T$ を有限の長さをもつ $B$ 加群とする。$T$ は $A$ 加群としても有限の長さをもち、
$$ \ell_A(T)=\sum_{\mathfrak{q}}[B/\mathfrak{q}:A/\mathfrak{m}]\,\ell_{B_{\mathfrak{q}}}(T_{\mathfrak{q}}) $$
が成り立つ。和は $B$ の極大イデアル $\mathfrak{q}$ 全体をわたる。

要点:$B$ 加群としての組成列の各商 $B/\mathfrak{q}$ の $A$ 加群としての長さは拡大次数 $[B/\mathfrak{q}:A/\mathfrak{m}]$ で、局所化すると $\mathfrak{q}$ の商だけが残る。

詳しい証明を開く

$T$ の $B$ 加群としての組成列の商は単純 $B$ 加群で、ある極大イデアル $\mathfrak{q}_j$ について $B/\mathfrak{q}_j$ に同型である。体 $B/\mathfrak{q}_j$ は有限生成 $A$ 加群なので $A/(\mathfrak{q}_j\cap A)$ 上整であり、整な拡大の上側が体なら下側も体なので(整拡大 の命題「体であることの判定」)$\mathfrak{q}_j\cap A=\mathfrak{m}$ である。よって $B/\mathfrak{q}_j$ は $A/\mathfrak{m}$ 上の有限次元ベクトル空間で、その $A$ 部分加群は部分空間と同じなので $\ell_A(B/\mathfrak{q}_j)=[B/\mathfrak{q}_j:A/\mathfrak{m}]$ である。長さの加法性から $\ell_A(T)=\sum_j[B/\mathfrak{q}_j:A/\mathfrak{m}]$ となる。他方、局所化は完全で、$(B/\mathfrak{q}_j)_{\mathfrak{q}}$ は $\mathfrak{q}_j=\mathfrak{q}$ なら単純 $B_{\mathfrak{q}}$ 加群、$\mathfrak{q}_j\ne\mathfrak{q}$ なら $\mathfrak{q}_j\setminus\mathfrak{q}$ の元が零化しかつ可逆なので $0$ である。よって $\ell_{B_{\mathfrak{q}}}(T_{\mathfrak{q}})$ は $\mathfrak{q}_j=\mathfrak{q}$ となる $j$ の個数であり、和を $\mathfrak{q}$ ごとにまとめればよい。$\square$

有限拡大の長さとノルム

$A$ を $1$ 次元の Noether 局所整域、$K$ をその商体、$B\supset A$ を $A$ 加群として有限生成な整域、$L$ を $B$ の商体とする。$r\in B\setminus\{0\}$ について
$$ \ell_A(B/rB)=\operatorname{ord}_A\bigl(N_{L/K}(r)\bigr) $$
である。ここで $N_{L/K}(r)$ は $r$ 倍写像 $L\to L$ の $K$ 線型写像としての行列式(ノルム)である。

要点:$L$ の中の有限生成 $A$ 部分加群で $L$ を張るもの(格子)の間に「指数」を定めると、$K$ 線型同型 $\varphi$ による格子の指数の変化は $\operatorname{ord}_A(\det\varphi)$ に等しい。$\varphi$ を $r$ 倍、格子を $B$ とすればよい。

詳しい証明を開く

$A$ 上有限生成で $K$ 上で消える加群は、$0$ でない元で零化され、$0$ 次元の Noether 環 $A/aA$ 上の有限生成加群なので有限の長さをもつ。$B\otimes_AK$ は体 $K$ 上有限次元の整域なので体で、$L$ に等しい。$n:=[L:K]$ とおく。

格子 $M,M'$ について、$M\cap M'$ も格子である(Noether 性から有限生成で、$cM'\subset M$ となる $c\in A\setminus\{0\}$ をとれば $cM'\subset M\cap M'$ が $L$ を張る)。格子 $M_0\subset M\cap M'$ をとり $[M:M']:=\ell_A(M/M_0)-\ell_A(M'/M_0)$ とおくと、より小さい格子 $M_1\subset M_0$ に替えても両項に $\ell_A(M_0/M_1)$ が加わるだけなので、$M_0$ によらない。3 つの格子に共通の $M_0$ をとれば $[M:M'']+[M'':M']=[M:M']$ である。

$K$ 線型同型 $\varphi\colon L\to L$ について $e(\varphi):=[M:\varphi M]$ は $M$ によらない:$[M:\varphi M]-[M':\varphi M']=[M:M']+[\varphi M':\varphi M]$ で、$\varphi$ は $A$ 加群の同型なので $[\varphi M':\varphi M]=[M':M]=-[M:M']$ である。$e(\varphi\psi)=[M:\varphi M]+[\varphi M:\varphi\psi M]=e(\varphi)+e(\psi)$ なので、$e$ は $GL_n(K)$ から $\mathbb{Z}$ への準同型である($L\cong K^n$、$M=A^n$ ととる)。$GL_n(K)$ は対角行列と基本行列 $I+aE_{ij}$($i\ne j$、$a\in K$)で生成される(行と列の基本変形による掃き出し)。$a_i\in A\setminus\{0\}$ の対角行列では $A^n/\bigoplus_ia_iA\cong\bigoplus_iA/a_iA$ から $e=\sum_i\operatorname{ord}_A(a_i)=\operatorname{ord}_A(\det)$ で、乗法性から一般の対角行列でも $e=\operatorname{ord}_A(\det)$ である。$a=b/c$($b,c\in A$)なら、第 $i$ 成分が $c$ でほかが $1$ の対角行列 $D$ について $I+aE_{ij}=D^{-1}(I+bE_{ij})D$ で、$I+bE_{ij}$ は $A^n$ を $A^n$ に写すので $e=0=\operatorname{ord}_A(1)$ である。よって $e=\operatorname{ord}_A\circ\det$ である。最後に $\varphi$ を $r$ 倍写像、$M=B$ とすれば $\ell_A(B/rB)=[B:rB]=\operatorname{ord}_A(N_{L/K}(r))$ である。$\square$

ノルムの公式

$F$ を体、$f\colon V\to W$ を $F$ 上の整な代数多様体の間の固有な全射で $\dim V=\dim W$ とし、$N\colon k(V)^\times\to k(W)^\times$ を有限次拡大 $k(V)/k(W)$ のノルムとする。任意の $r\in k(V)^\times$ について
$$ f_*\operatorname{div}(r)=\operatorname{div}\bigl(N(r)\bigr) $$
である。

要点:$Z$ の生成点の近くで $f$ は有限射なので、局所環 $A=\mathcal{O}_{W,Z}$ 上の有限な整域 $B$ に移り、左辺の係数は lem-ppfp-length により $\ell_A(B/rB)$、それは lem-ppfp-lattice により $\operatorname{ord}_A(N(r))$ になる。

詳しい証明を開く

余次元 $1$ の部分多様体 $Z\subset W$ をとり、両辺の $[Z]$ の係数を比べる。左辺の係数は、$V$ の余次元 $1$ の部分多様体 $V_i$ で $f(V_i)=Z$ となるものにわたる $\sum_i[k(V_i):k(Z)]\operatorname{ord}_{V_i}(r)$ である。右辺の係数は $\operatorname{ord}_A(N(r))$、$A:=\mathcal{O}_{W,Z}$ である。

$A$ は $1$ 次元の Noether 局所整域で、商体は $k(W)$ である。$Z$ の生成点のある開近傍 $U$ の上で $f^{-1}(U)\to U$ は有限射である(Sta26 Chow Homology, Lemma 16.2(Tag 02RM、p. 26))。$U$ をアフィンにとり $U=\operatorname{Spec}R$、$f^{-1}(U)=\operatorname{Spec}S$($S$ は有限 $R$ 代数の整域)とし、$Z$ に対応する素イデアルで局所化した $B:=S\otimes_RA$ を考える。$B$ は有限生成 $A$ 加群の整域で、商体は $k(V)$ である。$B$ の極大イデアル $\mathfrak{q}_i$ は、$V$ の点で $Z$ の生成点の上にあるもの、すなわち上の $V_i$ の生成点に一対一に対応し、$B_{\mathfrak{q}_i}=\mathcal{O}_{V,V_i}$、$B/\mathfrak{q}_i=k(V_i)$、$A/\mathfrak{m}_A=k(Z)$ である。

$r\in B\setminus\{0\}$ のとき、$B$ は $A$ 上有限なので $1$ 次元の Noether 整域で、$B/rB$ は有限の長さをもつ。lem-ppfp-length と lem-ppfp-lattice により $$\sum_i[k(V_i):k(Z)]\operatorname{ord}_{V_i}(r)=\sum_i[B/\mathfrak{q}_i:A/\mathfrak{m}_A]\,\ell_{B_{\mathfrak{q}_i}}(B_{\mathfrak{q}_i}/rB_{\mathfrak{q}_i})=\ell_A(B/rB)=\operatorname{ord}_A(N(r)) $$である。一般の $r$ は $B$ の元の商であり、両辺とも $r$ について準同型なので、主張が従う。$\square$

完備曲線上の主因子の次数

$F$ を体、$C$ を $F$ 上固有な $1$ 次元の整な代数多様体とし、$0$ サイクルの次数を閉点 $x$ について $\deg_F[x]:=[\kappa(x):F]$($\kappa(x)$ は剰余体)で定める。任意の $r\in F(C)^\times$ について $\deg_F\operatorname{div}(r)=0$ である。

要点:$r$ を $\mathbb{P}^1_F$ への写像とみてグラフの閉包 $\Gamma$ に移ると、lem-ppfp-norm により $\operatorname{div}(r)$ は $\mathbb{P}^1_F$ の $d\,([0]-[\infty])$ と次数が等しくなる。

詳しい証明を開く

$F$ 上固有な整曲線の間の全射 $h\colon C'\to C$ と $\gamma\in Z_0(C')$ について $\deg_F(h_*\gamma)=\deg_F\gamma$ である:閉点 $x'$ の像 $x$ は閉点で $\kappa(x)\subset\kappa(x')$ なので $\deg_Fh_*[x']=[\kappa(x'):\kappa(x)][\kappa(x):F]=[\kappa(x'):F]$。

$r$ が $F$ 上超越的なとき:$r$ が正則な稠密開集合 $U\subset C$ 上の射 $U\to\mathbb{P}^1_F$ のグラフの閉包を $\Gamma\subset C\times_F\mathbb{P}^1_F$ とする。$\Gamma$ は $F$ 上固有な整曲線で、第 1 射影 $\pi\colon\Gamma\to C$ は $U$ の上で同型な固有全射($F(\Gamma)=F(C)$)、第 2 射影 $g\colon\Gamma\to\mathbb{P}^1_F$ は固有である。$g(\Gamma)$ が 1 点なら $r$ はその点の剰余体($F$ 上有限次)に属して $F$ 上代数的になるので、$g$ は全射である。座標 $t$ について $g^*t=r$ で、$d:=[F(\Gamma):F(t)]$ とすると $N(t)=t^d$ である。lem-ppfp-norm を $\pi$ と $g$ に当てると $\pi_*\operatorname{div}_\Gamma(r)=\operatorname{div}_C(r)$、$g_*\operatorname{div}_\Gamma(r)=d\operatorname{div}(t)=d([0]-[\infty])$ であり、$0,\infty$ の剰余体は $F$ なので次数は $0$ である。最初の注意から $\deg_F\operatorname{div}_C(r)=\deg_F\operatorname{div}_\Gamma(r)=0$ である。

$r$ が $F$ 上代数的なとき:超越元 $s\in F(C)$ をとると $rs$ も超越的で、$\deg_F\operatorname{div}(r)=\deg_F\operatorname{div}(rs)-\deg_F\operatorname{div}(s)=0$ である。$\square$

主定理:固有押し出しは有理同値を保つ

固有押し出しは有理同値を保つ

$f\colon X'\to X$ を代数多様体の固有射とする。$(p+1)$ 次元の部分多様体 $V\subset X'$、$W:=f(V)$、$r\in k(V)^\times$ について
$$ f_*\operatorname{div}(r)=\begin{cases}\operatorname{div}\bigl(N_{k(V)/k(W)}(r)\bigr)&(\dim W=p+1)\\0&(\dim W\le p)\end{cases} $$
である。したがって $f_*(\operatorname{Rat}_p(X'))\subset\operatorname{Rat}_p(X)$ であり、$f_*$ は準同型 $f_*\colon CH_p(X')\to CH_p(X)$ を誘導する。

押し出しは閉埋め込みと両立するので(prop-ppfp-functorial)、$f$ を固有全射 $V\to W$ に取り替えてよい。$\dim W=p+1$ なら lem-ppfp-norm そのものである。
$\dim W\le p$ とする。$\operatorname{div}(r)=\sum_i\operatorname{ord}_{V_i}(r)[V_i]$ の項のうち $f_*[V_i]\ne0$ となるのは $\dim f(V_i)=p$ のときで、$f(V_i)\subset W$ だから $\dim W=p$、$f(V_i)=W$ のときに限る。よって $\dim W< p$ なら $f_*\operatorname{div}(r)=0$ であり、$\dim W=p$ なら $f_*\operatorname{div}(r)$ は $[W]$ の
$$ \sum_{f(V_i)=W}[k(V_i):k(W)]\operatorname{ord}_{V_i}(r) $$
倍である。この係数が $0$ であることを示す。$F:=k(W)$ とし、生成ファイバー $C:=V\times_W\operatorname{Spec}F$ を考える。$C$ は $V$ の局所化なので整で、$f$ の底変換として $F$ 上固有であり、$F(C)=k(V)$ である。$C$ の点は $V$ の部分多様体 $V'$ で $f(V')=W$ となるものの生成点で、$\dim V'\ge\dim W=p$ なので、$V'=V$($C$ の生成点)か $V'=V_i$(閉点)である。とくに $C$ は $1$ 次元で、閉点 $V_i$ について $\mathcal{O}_{C,V_i}=\mathcal{O}_{V,V_i}$、剰余体は $k(V_i)$ である。よって上の係数は $\deg_F\operatorname{div}_C(r)$ に等しく、lem-ppfp-curve により $0$ である。
右辺はどちらの場合も $\operatorname{Rat}_p(X)$ に属し、$\operatorname{Rat}_p(X')$ は $\operatorname{div}(r)$ の形の元で生成されるので、後半が従う。$\square$

この証明は、Sta26 Chow Homology, Lemma 20.3(Tag 02S2、pp. 33–34)と同じ筋で、生成ファイバーの曲線に帰着させる段がその中心である。

完備多様体の次数写像

$X$ を $k$ 上固有(完備)な代数多様体とする。閉点 $P$ に $\deg[P]:=[\kappa(P):k]$ を対応させる $\deg\colon Z_0(X)\to\mathbb{Z}$ は有理同値で不変であり、次数写像 $\deg\colon CH_0(X)\to\mathbb{Z}$ を誘導する。

構造射 $\pi\colon X\to\operatorname{Spec}k$ は固有で、$\pi_*[P]=[\kappa(P):k]\,[\operatorname{Spec}k]$ なので $\deg=\pi_*$ である。$\operatorname{Spec}k$ には $1$ 次元の部分多様体がないので $\operatorname{Rat}_0(\operatorname{Spec}k)=0$ であり、thm-ppfp-pushforward により $\pi_*(\operatorname{Rat}_0(X))=0$ である。$\square$

$k$ が代数閉体で $X\subset\mathbb{P}^n$ が射影的なら、閉点の次数はどれも $1$ で、射影多様体の次数 の意味の点の次数とも一致する。$\mathbb{P}^n$ の一般の次元のサイクルについて、射影多様体としての次数が有理同値で不変であることは 有理同値 の定理「射影空間のChow群」で扱う。

平坦引き戻し

射 $f\colon X'\to X$ が 相対次元 $d$ の平坦射 であるとは、平坦射 であって、空でないファイバーがすべて純 $d$ 次元(すべての既約成分が $d$ 次元)であることをいう。このとき、$X$ の $p$ 次元の部分多様体 $V$ について、逆像スキーム $f^{-1}(V)=V\times_XX'$ の既約成分はどれも $V$ を支配し、次元が $p+d$ である(Sta26 Chow Homology, Lemma 13.1(Tag 02R8、p. 22)。次元についての主張は、$f^{-1}(V)\to V$ も相対次元 $d$ の平坦射なので、Har77 III, Corollary 9.6(p. 257)からも従う)。とくに $\dim f^{-1}(V)\le p+d$ である。

平坦引き戻し

相対次元 $d$ の平坦射 $f\colon X'\to X$ と $p$ 次元の部分多様体 $V\subset X$ に対し
$$ f^*[V]:=[f^{-1}(V)]_{p+d}\in Z_{p+d}(X') $$
とおき、線型に拡張した $f^*\colon Z_p(X)\to Z_{p+d}(X')$ を 平坦引き戻し(flat pullback)という。

開埋め込み $j\colon U\hookrightarrow X$ は相対次元 $0$ の平坦射で、$j^*[V]=[V\cap U]$($V\cap U=\emptyset$ なら $0$)である。射影 $X\times\mathbb{A}^d\to X$ は相対次元 $d$ の平坦射で、$V\times\mathbb{A}^d$ は整なので $[V]\mapsto[V\times\mathbb{A}^d]$ である。
係数の計算には、平坦な局所準同型で長さがどう変わるかを使う。

平坦な局所準同型と長さ

$A\to B$ を Noether 局所環の平坦な局所準同型とし、$\ell_B(B/\mathfrak{m}_AB)< \infty$ とする。有限の長さの $A$ 加群 $M$ について
$$ \ell_B(M\otimes_AB)=\ell_A(M)\,\ell_B(B/\mathfrak{m}_AB) $$
である。

$\ell_A(M)$ についての帰納法で示す。$\ell_A(M)=0$ なら両辺は $0$ である。$\ell_A(M)\ge1$ なら、単純部分加群 $M'\cong A/\mathfrak{m}_A$ による完全列 $0\to M'\to M\to M''\to0$ がある。$B$ は平坦なので $0\to M'\otimes B\to M\otimes B\to M''\otimes B\to0$ は完全で、長さの加法性と $M'\otimes_AB\cong B/\mathfrak{m}_AB$、帰納法の仮定から主張が従う。$\square$

引き戻しの基本性質

$f\colon X'\to X$ を相対次元 $d$ の平坦射とする。

  1. 次元が $p$ 以下の閉部分スキーム $Z\subset X$ について $f^*[Z]_p=[f^{-1}(Z)]_{p+d}$ である。
  2. $g\colon X''\to X'$ が相対次元 $e$ の平坦射なら、$f\circ g$ は相対次元 $d+e$ の平坦射で(Sta26 Chow Homology, Lemma 14.3(Tag 02RD、p. 24))、$(f\circ g)^*=g^*\circ f^*$ である。

要点:成分ごとに、局所環の平坦な局所準同型 $\mathcal{O}_{X,W}\to\mathcal{O}_{X',W'}$ に lem-ppfp-flat-length を当てる。2 は 1 を $g$ に当てる。

詳しい証明を開く

1:$W'$ を $f^{-1}(Z)$ の $(p+d)$ 次元の既約成分とし、$W$ を $f(W')$ の閉包とする。$W'$ は $f^{-1}(W)$ のある既約成分に含まれ、その次元は $\dim W+d$ なので $\dim W\ge p$ である。$W\subset Z$ かつ $\dim Z\le p$ だから、$W$ は $Z$ の $p$ 次元の既約成分である。逆に、$Z$ の $p$ 次元の既約成分 $V$ について $f^{-1}(V)$ の成分で $W'$ を含むのは $V=W$ のときだけである。$A:=\mathcal{O}_{X,W}$、$B:=\mathcal{O}_{X',W'}$ とおくと $A\to B$ は平坦な局所準同型で、$\mathcal{O}_{f^{-1}(W),W'}=B/\mathfrak{m}_AB$、$\mathcal{O}_{f^{-1}(Z),W'}=B\otimes_A\mathcal{O}_{Z,W}$ である。$W'$ は $f^{-1}(W)$ の既約成分なので $B/\mathfrak{m}_AB$ は $0$ 次元で、長さは有限である。左辺の $[W']$ の係数は $\ell_A(\mathcal{O}_{Z,W})\,\ell_B(B/\mathfrak{m}_AB)$、右辺の係数は $\ell_B(B\otimes_A\mathcal{O}_{Z,W})$ で、lem-ppfp-flat-length によりこれらは等しい。

2:$p$ 次元の部分多様体 $V\subset X$ について、$(f\circ g)^{-1}(V)=g^{-1}(f^{-1}(V))$ であり、$f^{-1}(V)$ は次元が $p+d$ 以下の閉部分スキームなので、1 を $g$ に当てて $(f\circ g)^*[V]=[g^{-1}(f^{-1}(V))]_{p+d+e}=g^*[f^{-1}(V)]_{p+d}=g^*f^*[V]$ である。$\square$

主因子の引き戻し

1次元局所環の長さの分解

$B$ を $1$ 次元の Noether 局所環、$x\in B$ を非零因子で $B/xB$ が有限の長さをもつものとする。$B$ の極小素イデアルを $\mathfrak{q}_1,\dots,\mathfrak{q}_s$ とすると
$$ \ell_B(B/xB)=\sum_{j=1}^s\ell_{B_{\mathfrak{q}_j}}(B_{\mathfrak{q}_j})\,\ell_B\bigl(B/(\mathfrak{q}_j+xB)\bigr) $$
である。

要点:有限生成加群 $M$ で $M/xM$ が有限の長さをもつものについて、$e(M):=\ell(M/xM)-\ell(\ker(x\colon M\to M))$ は短完全列について加法的である。$B$ を $B/\mathfrak{p}$ を商とするフィルトレーションで分解して $e$ を数える。

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$x$ 倍の核 $K(M)$ は $x$ で零化されるので、その台は $\operatorname{Supp}M\cap V(x)=\operatorname{Supp}(M/xM)$(中山の補題)に含まれ、極大イデアルだけなので有限の長さをもつ。$0\to M'\to M\to M''\to0$ が完全で $M/xM$ が有限の長さなら、$M'$、$M''$ も同じ条件を満たし(台が $\operatorname{Supp}M\cap V(x)$ に含まれる)、蛇の補題の完全列 $0\to K(M')\to K(M)\to K(M'')\to M'/xM'\to M/xM\to M''/xM''\to0$ の長さの交代和が $0$ であることから $e(M)=e(M')+e(M'')$ である。

$B$ は商が $B/\mathfrak{p}_i$($\mathfrak{p}_i$ は素イデアル)のフィルトレーションをもつ。$\dim B=1$ なので素イデアルは極大イデアル $\mathfrak{m}$ と極小素イデアルだけである。$e(B/\mathfrak{m})=1-1=0$ である。極小素イデアル $\mathfrak{q}$ について $x\notin\mathfrak{q}$($x\in\mathfrak{q}$ なら $V(x)\supset V(\mathfrak{q})$ が $1$ 次元となり、$B/xB$ が有限の長さであることに反する)なので、$x$ は整域 $B/\mathfrak{q}$ の上で単射で、$e(B/\mathfrak{q})=\ell(B/(\mathfrak{q}+xB))$ である。フィルトレーションを $\mathfrak{q}_j$ で局所化すると、$(B/\mathfrak{m})_{\mathfrak{q}_j}=0$、$\mathfrak{q}\ne\mathfrak{q}_j$ なら $(B/\mathfrak{q})_{\mathfrak{q}_j}=0$、$(B/\mathfrak{q}_j)_{\mathfrak{q}_j}$ は剰余体なので、商に $B/\mathfrak{q}_j$ が現れる回数は $\ell(B_{\mathfrak{q}_j})$ である。加法性から $e(B)=\sum_j\ell(B_{\mathfrak{q}_j})\ell(B/(\mathfrak{q}_j+xB))$ で、$x$ は非零因子なので $e(B)=\ell(B/xB)$ である。$\square$

主因子の平坦引き戻し

$V$ を $(p+1)$ 次元の整な代数多様体、$f\colon X'\to V$ を相対次元 $d$ の平坦射、$r\in k(V)^\times$ とする。$X'$ の既約成分を $X'_1,\dots,X'_m$、その重複度を $n_j:=\ell(\mathcal{O}_{X',X'_j})$ とし、$r$ の $k(X'_j)$ での像を $r_j$ とする($X'_j$ は $V$ を支配するので $k(V)\subset k(X'_j)$)。このとき
$$ f^*\operatorname{div}(r)=\sum_{j=1}^mn_j\operatorname{div}_{X'_j}(r_j)\in Z_{p+d}(X') $$
である。

要点:$W'$ の像の閉包 $W$ が余次元 $1$ のとき、両辺の係数は局所環 $B=\mathcal{O}_{X',W'}$ の長さ $\ell_B(B/aB)$ の 2 通りの表し方で、lem-ppfp-flat-length と lem-ppfp-components により一致する。

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$X'$ の $(p+d)$ 次元の部分多様体 $W'$ をとり、$W$ を $f(W')$ の閉包とする。prop-ppfp-pullback-basic の証明と同じく $\dim W\ge p$ で、$W=V$ か、$W$ は $V$ の余次元 $1$ の部分多様体である。

$W=V$ のとき、左辺の $[W']$ の係数は $0$ である(左辺の成分はどれも余次元 $1$ の部分多様体の逆像に含まれる)。右辺でも、$W'$ の生成点は $V$ の生成点の上にあるので $r_j$ はそこで単元であり、係数は $0$ である。

$W$ が余次元 $1$ のとき、$A:=\mathcal{O}_{V,W}$($1$ 次元の Noether 局所整域)、$B:=\mathcal{O}_{X',W'}$ とおく。$A\to B$ は平坦な局所準同型で、$W'$ は $f^{-1}(W)$ の既約成分なので $B/\mathfrak{m}_AB$ は有限の長さをもち、$B$ は $1$ 次元である。$B$ の極小素イデアル $\mathfrak{q}_j$ は $W'$ を含む $X'_j$ に対応し、$\ell(B_{\mathfrak{q}_j})=n_j$、$B/\mathfrak{q}_j=\mathcal{O}_{X'_j,W'}$ である。$r=a/b$($a,b\in A\setminus\{0\}$)と書き、$a$ について示せば十分である。左辺の係数は $\operatorname{ord}_A(a)\,\ell_B(B/\mathfrak{m}_AB)$ で、lem-ppfp-flat-length により $\ell_B(B/aB)$ に等しい。$A$ の非零因子 $a$ は平坦性により $B$ の非零因子で、$B/aB=B\otimes_AA/aA$ は有限の長さをもつ。lem-ppfp-components により $$\ell_B(B/aB)=\sum_jn_j\,\ell\bigl(\mathcal{O}_{X'_j,W'}/a\mathcal{O}_{X'_j,W'}\bigr)=\sum_jn_j\operatorname{ord}_{W'}(a|_{X'_j}) $$であり、これは右辺の $[W']$ の係数である。$\square$

主定理:平坦引き戻しは有理同値を保つ

平坦引き戻しは有理同値を保つ

$f\colon X'\to X$ を相対次元 $d$ の平坦射とする。$f^*(\operatorname{Rat}_p(X))\subset\operatorname{Rat}_{p+d}(X')$ であり、$f^*$ は準同型 $f^*\colon CH_p(X)\to CH_{p+d}(X')$ を誘導する。

$\operatorname{Rat}_p(X)$ の生成元 $i_*\operatorname{div}_V(r)$($i\colon V\hookrightarrow X$ は $(p+1)$ 次元の部分多様体の包含、$r\in k(V)^\times$)について示せばよい。$X'_V:=f^{-1}(V)=V\times_XX'$ とし、$f_V\colon X'_V\to V$、$i'\colon X'_V\hookrightarrow X'$ をとる。$f_V$ は底変換なので平坦で、ファイバーは $f$ のファイバーなので相対次元は $d$ である。$V$ の部分多様体 $Z$ について、$f^{-1}(Z)$ と $f_V^{-1}(Z)$ は $X'$ の同じ閉部分スキームで、基本サイクルの係数は閉部分スキームの局所環だけで決まるので、$f^*i_*=i'_*f_V^*$ である。lem-ppfp-div により $f_V^*\operatorname{div}_V(r)=\sum_jn_j\operatorname{div}_{X'_j}(r_j)$ で、各 $X'_j$ は $X'$ の $(p+d+1)$ 次元の部分多様体なので、これを $i'_*$ で $X'$ に移したものは $\operatorname{Rat}_{p+d}(X')$ に属する。$\square$

Sta26 Chow Homology, Lemma 20.1・Lemma 20.2(Tag 0EPH・02S1、pp. 32–33)も同じ筋で、lem-ppfp-components にあたる長さの計算は同章 Lemma 3.2(p. 6)である。

押し出しと引き戻しの組み合わせ

有限平坦射の押し出しと引き戻し

$f\colon X'\to X$ を有限射で、$f_*\mathcal{O}_{X'}$ が階数 $n$ の局所自由層であるもの(次数 $n$ の有限局所自由射)とする。$f$ は固有で、相対次元 $0$ の平坦射であり、$\alpha\in Z_p(X)$ について
$$ f_*f^*\alpha=n\,\alpha $$
である。

要点:$V$ の生成点で局所化すると、係数は階数 $n$ の自由加群 $B$ の $B/\mathfrak{m}_AB$ の長さで、lem-ppfp-length により $n$ になる。

詳しい証明を開く

有限射は固有で(有限射)、ファイバーは有限集合なので空でなければ純 $0$ 次元であり、$f_*\mathcal{O}_{X'}$ が局所自由なので平坦である。$p$ 次元の部分多様体 $V\subset X$ について示す。$A:=\mathcal{O}_{X,V}$、$B:=(f_*\mathcal{O}_{X'})_V$ とおくと、$B$ は階数 $n$ の自由 $A$ 加群で、$f^{-1}(V)$ の $V$ の生成点の上の部分は $\operatorname{Spec}(B/\mathfrak{m}_AB)$ である。$B$ の極大イデアル $\mathfrak{q}$ は $f^{-1}(V)$ の $p$ 次元の既約成分 $V'$ に対応し、$\mathcal{O}_{f^{-1}(V),V'}=(B/\mathfrak{m}_AB)_{\mathfrak{q}}$、$k(V')=B/\mathfrak{q}$、$f(V')=V$ である。よって $f_*f^*[V]$ の $[V]$ の係数は $\sum_{\mathfrak{q}}[B/\mathfrak{q}:A/\mathfrak{m}_A]\,\ell\bigl((B/\mathfrak{m}_AB)_{\mathfrak{q}}\bigr)$ で、lem-ppfp-length により $\ell_A(B/\mathfrak{m}_AB)=\dim_{k(V)}(B/\mathfrak{m}_AB)=n$ に等しい。$\square$

固有押し出しと平坦引き戻しは、ファイバー積の図式の上で可換である:$f\colon X'\to X$ が固有、$g\colon Y\to X$ が相対次元 $d$ の平坦射で、$f'\colon X'\times_XY\to Y$、$g'\colon X'\times_XY\to X'$ を底変換とすると、$g^*f_*=f'_*g'^*$ である(Sta26 Chow Homology, Lemma 15.1(Tag 02RG、p. 25)。この記事では証明しない)。代数的同値についても同じ形の関手性が成り立つ(代数的同値 の定理「押し出しと引き戻し」)。

例

2乗写像

$k$ を標数が $2$ でない代数閉体とし、$f\colon\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$、$[s:t]\mapsto[s^2:t^2]$ とする。始域の座標を $u=t/s$、終域の座標を $v=t/s$ とすると $v=u^2$ で、$f$ は次数 $2$ の有限局所自由射である。

  • 押し出し:$f_*[\mathbb{P}^1]=[k(u):k(v)]\,[\mathbb{P}^1]=2[\mathbb{P}^1]$ である。
  • 引き戻し:$c\ne0$ のとき $v=c$ の逆像は $u=\pm\sqrt c$ の 2 点(長さ $1$ ずつ)、$v=0$ の逆像は $k[u]/(u^2)$ で長さ $2$ なので、$f^*[c]=[\sqrt c]+[-\sqrt c]$、$f^*[0]=2[0]$ である。どちらも $f_*f^*[\,\cdot\,]=2[\,\cdot\,]$ となり、prop-ppfp-finite-flat と合う。
  • ノルム:$r=u-1$ の主因子は $[1]-[\infty]$ である。$u$ の $k(v)$ 上の共役は $\pm u$ なので $N(u-1)=(u-1)(-u-1)=1-v$ で、その主因子は $[1]-[\infty]$ である。$f_*([1]-[\infty])=[1]-[\infty]$(各点の剰余体は $k$)なので、lem-ppfp-norm の等式 $f_*\operatorname{div}(r)=\operatorname{div}(N(r))$ が確かめられる。
射影直線との積

射影 $q\colon X\times\mathbb{P}^1\to X$ は固有である。$X\times\mathbb{P}^1$ の $(p+1)$ 次元部分多様体 $\mathcal{V}$ で $\mathcal{V}\to\mathbb{P}^1$ が支配的なものをとり、$t$ を $\mathbb{P}^1$ の座標とすると、$\operatorname{div}_{\mathcal{V}}(t)$ は $0$ と $\infty$ の上のファイバーの基本サイクルの差であり、thm-ppfp-pushforward によりその $q_*$ は $\operatorname{Rat}_p(X)$ に属する。これが 有理同値 の命題「射影直線の族による有理同値の特徴づけ」の一方の向きである。

反例:条件を外すと

thm-ppfp-pushforward と thm-ppfp-pullback の条件を 1 つずつ外す。$t$ は $\mathbb{A}^1$ の座標である。

外す条件反例成り立たなくなること
$f$ が固有(押し出し)構造射 $\mathbb{A}^1\to\operatorname{Spec}k$$[0]=\operatorname{div}(t)$ は有理同値で $0$ だが、定義の式で押し出すと $[\operatorname{Spec}k]\ne0$ になる
$f$ が平坦(引き戻し)原点の閉埋め込み $i\colon\operatorname{Spec}k\to\mathbb{A}^1$$[0]-[1]=\operatorname{div}\bigl(t/(t-1)\bigr)$ は有理同値で $0$ だが、逆像の基本サイクルは $[\operatorname{Spec}k]\ne0$
ファイバーが純 $d$ 次元(引き戻し)$\mathbb{A}^1\sqcup\mathbb{A}^2\to\mathbb{A}^1$($\mathbb{A}^1$ 上は恒等写像、$\mathbb{A}^2$ 上は第 1 射影)点の逆像は $1$ 点と直線の和で、$f^*[P]$ を一つの次元のサイクルとして定められない
表の反例の確かめ

1 行目:$\mathbb{A}^1\to\operatorname{Spec}k$ は有限型で分離的だが、固有でない(固有射)。$\operatorname{Spec}k$ には $1$ 次元の部分多様体がないので $CH_0(\operatorname{Spec}k)=\mathbb{Z}$ で、$[\operatorname{Spec}k]$ は $0$ でない。同じ理由で、完備でない多様体では $0$ サイクルの次数は有理同値で不変でなく、cor-ppfp-degree の「完備」は外せない。
2 行目:$i$ は閉埋め込みなので固有で、空でないファイバーは $1$ 点(純 $0$ 次元)である。$\mathcal{O}_{\mathbb{A}^1,0}\to k$ は $t$ を $0$ に写すが、$t$ は $\mathcal{O}_{\mathbb{A}^1,0}$ の非零因子で $k$ の上では零因子なので、平坦でない。$i^{-1}(0)=\operatorname{Spec}k$(長さ $1$)、$i^{-1}(1)=\emptyset$ で、$CH_0(\operatorname{Spec}k)=\mathbb{Z}$ の元として $1\ne0$ である。
3 行目:各成分の上で平坦なので平坦だが、点 $P$ のファイバーは $\{P\}\sqcup(\{P\}\times\mathbb{A}^1)$ で、$0$ 次元と $1$ 次元の成分が混ざる。

関連項目

参考文献

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