複素射影空間(complex projective space)とは、$\mathbb{C}^{n+1}$ の原点を通る複素直線の全体 $\mathbb{CP}^n$ で、単位球面 $S^{2n+1}$ を絶対値 $1$ の複素数の群で割った、複素 $n$ 次元のコンパクトな複素多様体である。次元 $0,2,\dots,2n$ に胞体を 1 つずつもち、$2n$ 次元の胞体は Hopf 写像で貼り付けられる。整数係数のコホモロジー環は、トートロジー直線束の双対の第 1 Chern 類 $h$ で生成される $\mathbb{Z}[h]/(h^{n+1})$ である。環の構造から、Hopf 写像 $S^3\to S^2$ が定値写像とホモトピックでないことや、座標を $d$ 乗する自己写像の写像度が $d^n$ であることがわかる。
前提知識: 射影空間, CW複体, Poincaré双対, 第1Chern類
$\mathbb{C}^{n+1}$ の原点を通る複素直線の全体を 複素射影空間(complex projective space)$\mathbb{CP}^n$ という。単位球面 $S^{2n+1}$ を絶対値 $1$ の複素数の掛け算で割った空間であり、複素 $n$ 次元のコンパクトな複素多様体になる。$\mathbb{CP}^1$ は $2$ 次元球面(Riemann 球面)である。一般の体の上の射影空間は 射影空間 で扱われている。この記事では位相と直線束の側から $\mathbb{CP}^n$ を調べる。
$\mathbb{CP}^n$ は次元 $0,2,\dots,2n$ に胞体を $1$ つずつもち、$2n$ 次元の胞体は Hopf 写像 $S^{2n-1}\to\mathbb{CP}^{n-1}$ で貼り付けられる。整数係数のコホモロジー環は、トートロジー直線束の双対 $\mathcal{O}(1)$ の 第1Chern類 $h$ で生成される切断多項式環 $\mathbb{Z}[h]/(h^{n+1})$ である。この記事では、胞体の構造とコホモロジー群を対の長完全列で求め、環の構造を Poincaré双対 で決める。応用として、Hopf 写像が定値写像とホモトピックでないこと、座標を $d$ 乗する写像の写像度が $d^n$ であることを示す。$n\to\infty$ の極限は 無限次元射影空間 で、実数・四元数の場合は 実射影空間・四元数射影空間 で扱われている。
$n\ge0$ とする。$\mathbb{C}^{n+1}\setminus\{0\}$ 上の同値関係を「$w=\lambda z$ となる $\lambda\in\mathbb{C}^\times$ がある」で定め、商位相を入れた商空間を $n$ 次元複素射影空間 $\mathbb{CP}^n$ という。$z$ の類を $[z]=[z_0:\dots:z_n]$ と書き、商写像を $q\colon\mathbb{C}^{n+1}\setminus\{0\}\to\mathbb{CP}^n$ とする。点 $[z]$ は複素直線 $\mathbb{C}z$ と一対一に対応する。$\mathbb{CP}^{n-1}\subset\mathbb{CP}^n$ を最後の成分が $0$ の点の全体とみる。
これは 射影空間 の定義「実射影空間と複素射影空間」で $K=\mathbb{C}$ としたものである。同記事の命題「球面の商としての射影空間」により、$\mathbb{CP}^n$ はコンパクト Hausdorff であり、$q$ は開写像で、$q$ の制限 $S^{2n+1}\to\mathbb{CP}^n$ は同相 $S^{2n+1}/S^1\cong\mathbb{CP}^n$ を誘導する($S^1$ は絶対値 $1$ の複素数の群)。同記事の命題「アフィン座標近傍と多様体構造」により、$U_i:=\{[z]\mid z_i\ne0\}$ と $[z]\mapsto(z_j/z_i)_{j\ne i}$ が座標近傍を与え、座標変換は正則である。
$\mathbb{CP}^n\times\mathbb{C}^{n+1}$ の部分集合
$$
\mathcal{O}(-1):=\{([z],v)\mid v\in\mathbb{C}z\}
$$
を、第 1 成分への射影によって $\mathbb{CP}^n$ 上の直線束とみたものを トートロジー直線束(tautological line bundle)という。点 $[z]$ の上のファイバーは直線 $\mathbb{C}z$ そのものである。その双対を $\mathcal{O}(1)$、$\mathcal{O}(d):=\mathcal{O}(1)^{\otimes d}$($d<0$ では $\mathcal{O}(-1)^{\otimes(-d)}$)と書く。
$$
h:=c_1(\mathcal{O}(1))\in H^2(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})
$$
を 超平面類(hyperplane class)という。
$U_i$ の上で $\sigma_i([z]):=([z],z/z_i)$ は $\mathcal{O}(-1)$ の至るところ $0$ でない切断で、$U_i\cap U_j$ の上で $\sigma_j=(z_i/z_j)\,\sigma_i$ となる。変換関数 $z_i/z_j$ は正則なので、$\mathcal{O}(-1)$ は正則直線束である。線形形式 $\ell\colon\mathbb{C}^{n+1}\to\mathbb{C}$ はファイバーへの制限によって $\mathcal{O}(1)$ の正則な切断 $([z],v)\mapsto\ell(v)$ を定める。座標 $z_0$ から得られる切断は超平面 $\{z_0=0\}$ の上でちょうど $1$ 位の零をもつので、$\mathcal{O}(1)$ を 超平面束 ともいう。
$\mathbb{CP}^n$ の点は $\mathbb{C}^{n+1}$ の直線である。$z_n\ne0$ の点は $[w:1]$($w\in\mathbb{C}^n$)とただ一通りに書けるので、$\mathbb{CP}^n$ は $\mathbb{C}^n$ に、無限遠の点の全体 $\mathbb{CP}^{n-1}=\{z_n=0\}$ を付け加えた空間である。$\mathbb{C}^n$ は開いた $2n$ 次元の胞体なので、これを繰り返すと $\mathbb{CP}^n=\mathbb{C}^0\sqcup\mathbb{C}^1\sqcup\cdots\sqcup\mathbb{C}^n$ という偶数次元の胞体への分割が得られる。奇数次元の胞体がないので、胞体の境界写像はすべて $0$ になり、コホモロジーは偶数次でだけ $\mathbb{Z}$ になる。
環の構造は、部分空間の交わりとして見るとわかりやすい。$h$ は超平面 $\{z_0=0\}$ を表す類で、$h^k$ は $k$ 個の超平面の交わり、すなわち余次元 $k$ の線形部分空間 $\mathbb{CP}^{n-k}$ を表す。$n$ 個の一般の超平面はちょうど $1$ 点で交わるので $h^n$ は点の類であり、$n+1$ 個の一般の超平面は交わらないので $h^{n+1}=0$ である。この記事では、交わりの議論を使わず、Poincaré双対 で同じ結論を得る。
$n\ge1$ とし、$p:=[0:\dots:0:1]$、$S^{2n-1}\subset\mathbb{C}^n$ を単位球面とする。
1.$w\in\mathbb{C}^n$、$|w|\le1$ について $\Phi(w):=[w_0:\dots:w_{n-1}:\sqrt{1-|w|^2}\,]$ とおく。$\Phi$ は閉球体 $D^{2n}$ から $\mathbb{CP}^n$ への連続写像で、境界 $|w|=1$ の上では $q(w)\in\mathbb{CP}^{n-1}$ に等しい。$z_n\ne0$ の点 $[z]$ については、$z$ を $|z|=1$ に正規化し、さらに絶対値 $1$ の複素数 $\bar z_n/|z_n|$ を掛けると第 $n$ 成分が正の実数になる。このような代表はただ $1$ つである(二つの代表が $\mu\in S^1$ で移り合い、どちらの第 $n$ 成分も正の実数なら $\mu=1$)。よって $\Phi$ は開球体を $\mathbb{CP}^n\setminus\mathbb{CP}^{n-1}$ の上へ全単射に写す。$\Phi$ と包含からなる写像 $D^{2n}\sqcup\mathbb{CP}^{n-1}\to\mathbb{CP}^n$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全射なので商写像であり、同一視されるのはちょうど $w\in\partial D^{2n}$ と $q(w)$ である。これが前半であり、$\mathbb{CP}^0$ が $1$ 点であることから帰納法で CW 複体の構造が得られる。さらに $\mathbb{CP}^n/\mathbb{CP}^{n-1}$ は $D^{2n}/\partial D^{2n}\cong S^{2n}$ と同相である。
2.$[z]\ne p$ なら $(z_0,\dots,z_{n-1})\ne0$ である。$H([z],t):=[z_0:\dots:z_{n-1}:(1-t)z_n]$($0\le t\le1$)とおくと、右辺は代表の取り替えで変わらず、$q$ が開写像なので $q\times\mathrm{id}_{[0,1]}$ は商写像であり、$H$ は連続である。$H(\cdot,0)$ は恒等写像、$H(\cdot,1)$ の像は $\mathbb{CP}^{n-1}$ に入り、$\mathbb{CP}^{n-1}$ の点は $H(\cdot,t)$ で動かない。$\square$
貼り付け写像 $S^{2n-1}\to\mathbb{CP}^{n-1}$ は Hopf 束の射影である。$n=2$ では $S^3\to\mathbb{CP}^1\cong S^2$ となり、これが Hopfファイブレーション である。同じ構造は Hat02 Example 0.6(pp. 6–7)にあり、無限次元射影空間 の定理「位相と胞体の構造」は実数・複素数・四元数を一度に扱っている。
係数 $\mathbb{Z}$ を省く。cps-prop-cw の 2 により $\mathbb{CP}^{n-1}$ は $\mathbb{CP}^n$ の開集合 $\mathbb{CP}^n\setminus\{p\}$ の変形レトラクトなので、$(\mathbb{CP}^n,\mathbb{CP}^{n-1})$ は良い対であり、商写像は同型 $\tilde H^k(\mathbb{CP}^n/\mathbb{CP}^{n-1})\cong H^k(\mathbb{CP}^n,\mathbb{CP}^{n-1})$ を与える(Hat02 Proposition 2.22(p. 124)のコホモロジー版)。cps-prop-cw の 1 により左辺は $\tilde H^k(S^{2n})$ で、$k=2n$ のとき $\mathbb{Z}$、それ以外で $0$ である。対の長完全列
$$
H^k(\mathbb{CP}^n,\mathbb{CP}^{n-1})\to H^k(\mathbb{CP}^n)\xrightarrow{\ i^*\ }H^k(\mathbb{CP}^{n-1})\to H^{k+1}(\mathbb{CP}^n,\mathbb{CP}^{n-1})
$$
の両端は $k\le2n-2$ で $0$ なので、$i^*$ は同型である。これが 2 である。1 は $n$ の帰納法で示す。$n=0$ は $1$ 点である。$n\ge1$ のとき、$k\le2n-2$ では 2 と帰納法の仮定による。$k=2n-1$ では左端が $0$、$H^{2n-1}(\mathbb{CP}^{n-1})=0$ なので $H^{2n-1}(\mathbb{CP}^n)=0$ である。$k=2n$ では $0=H^{2n-1}(\mathbb{CP}^{n-1})\to\mathbb{Z}\to H^{2n}(\mathbb{CP}^n)\to H^{2n}(\mathbb{CP}^{n-1})=0$ から $H^{2n}(\mathbb{CP}^n)\cong\mathbb{Z}$、$k>2n$ では $0$ である。ホモロジーも同じ議論で求まる。Euler 標数は $0$ でない偶数次の個数 $n+1$ である。
3.単連結であることは 射影空間 の定理「被覆写像と基本群」の 2 による。連結な閉多様体で $H_{2n}(\mathbb{CP}^n)\cong\mathbb{Z}\ne0$ なので、向き付け可能である(向き付け可能でない連結閉多様体の最上次の整係数ホモロジーは $0$。Hat02 Theorem 3.26(p. 236))。$\square$
1 と 2 は 第1Chern類 の例「射影空間の超平面束」で証明されている($\langle h,[\ell]\rangle=1$ となる生成元が $c_1(\mathcal{O}(1))$ であり、$\operatorname{Pic}(\mathbb{CP}^n)$ は $\mathcal{O}(1)$ で生成される無限巡回群である)。$c_1(\mathcal{O}(-1))=-h$ は同記事の系「双対束と冪の第1Chern類」による。3:$i^*\mathcal{O}(-1)=\{([z],v)\mid z_n=0,\ v\in\mathbb{C}z\}$ は $\mathbb{CP}^{n-1}$ のトートロジー直線束そのものであり、双対をとっても同じである。第 1 Chern 類は引き戻しと可換なので(同記事の命題「引き戻しとの両立」)、$i^*h$ は $\mathbb{CP}^{n-1}$ の超平面類である。4:$|v|=1$、$v\in\mathbb{C}z$ なら $[z]=[v]$ なので、$([z],v)\mapsto v$ は単位円周束から $S^{2n+1}$ への同相で、逆は $v\mapsto([v],v)$ である。射影はこの同相で $q$ に対応する。$\square$
$n\ge0$ とする。カップ積について
$$
H^*(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}[h]/(h^{n+1}),\qquad|h|=2
$$
である。すなわち $0\le k\le n$ について $h^k$ は $H^{2k}(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})$ の生成元であり、$h^{n+1}=0$ である。
係数 $\mathbb{Z}$ を省く。$n$ の帰納法で「$0\le k\le n$ について $h^k$ は $H^{2k}(\mathbb{CP}^n)$ を生成する」を示す。$n=0$ は $h^0=1$ なので成り立ち、$n=1$ は cps-prop-hyperplane の 1 である。$n\ge2$ とする。
$k\le n-1$ の場合:$2k\le2n-2$ なので、cps-prop-groups の 2 により $i^*\colon H^{2k}(\mathbb{CP}^n)\to H^{2k}(\mathbb{CP}^{n-1})$ は同型である。$i^*$ はカップ積を保ち、cps-prop-hyperplane の 3 により $i^*h$ は $\mathbb{CP}^{n-1}$ の超平面類なので、$i^*(h^k)=(i^*h)^k$ は帰納法の仮定により $H^{2k}(\mathbb{CP}^{n-1})$ を生成する。よって $h^k$ は $H^{2k}(\mathbb{CP}^n)$ を生成する。
$k=n$ の場合:cps-prop-groups の 3 により $\mathbb{CP}^n$ は向き付け可能な連結閉多様体なので、基本類 $[\mathbb{CP}^n]\in H_{2n}(\mathbb{CP}^n)$ を一つ選ぶ。コホモロジーは捩れをもたないので、Poincaré双対 の命題「整係数のカップ積の対」により、$\langle a,b\rangle:=(a\smile b)([\mathbb{CP}^n])$ が定める対
$$
H^2(\mathbb{CP}^n)\times H^{2n-2}(\mathbb{CP}^n)\to\mathbb{Z}
$$
はユニモジュラーである。両側は階数 $1$ の自由アーベル群で、それぞれ $h$ と $h^{n-1}$ で生成される(前段)。$1\times1$ のユニモジュラー行列は $\pm1$ なので、$h^n([\mathbb{CP}^n])=\langle h,h^{n-1}\rangle=\pm1$ である。$H_{2n}(\mathbb{CP}^n)=\mathbb{Z}[\mathbb{CP}^n]$ でホモロジーは自由なので、普遍係数定理により $\theta\mapsto\theta([\mathbb{CP}^n])$ は同型 $H^{2n}(\mathbb{CP}^n)\to\mathbb{Z}$ である。したがって $h^n$ は $H^{2n}(\mathbb{CP}^n)$ を生成する。
最後に $h^{n+1}\in H^{2n+2}(\mathbb{CP}^n)=0$ である。$h\mapsto h$ で定まる環準同型 $\mathbb{Z}[h]/(h^{n+1})\to H^*(\mathbb{CP}^n)$ は、各次数 $2k$($0\le k\le n$)で $\mathbb{Z}h^k$ を $H^{2k}$ の上へ同型に写し、その他の次数では両辺が $0$ なので、同型である。$\square$
複素構造の定める向きをとると $h^n([\mathbb{CP}^n])=+1$ である。微分形式では、Fubini–Study 形式 $\omega_{\mathrm{FS}}$ について $h$ の実係数の像は $[\omega_{\mathrm{FS}}/\pi]$ で、$\int_{\mathbb{CP}^n}(\omega_{\mathrm{FS}}/\pi)^n=1$ となる(積分の値は Fubini–Study計量 の命題「体積」による。$h$ との一致と向きの符号は $n=1$ の積分と直線への制限から従う。この段落の主張はこの記事では証明しない)。主定理は Hat02 Theorem 3.19(p. 220)にもある。同書はそこで、点の近傍を二つの座標部分空間の積とみて Künneth の公式の特別な場合に帰着して示し、Example 3.40(p. 250)で Poincaré 双対による証明を与えている。$n\to\infty$ の極限 $H^*(\mathbb{CP}^\infty;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}[h]$ は 無限次元射影空間 の定理「無限次元射影空間のコホモロジー環」で導かれている。
$\mathbb{CP}^2$ は $S^2\vee S^4$ とホモトピー同値でない。したがって Hopf 写像 $\eta\colon S^3\to S^2\cong\mathbb{CP}^1$、$\eta(z_0,z_1)=[z_0:z_1]$ は定値写像とホモトピックでない。
cps-thm-ring により、$H^2(\mathbb{CP}^2;\mathbb{Z})$ の生成元 $h$ の平方は $H^4(\mathbb{CP}^2;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ の生成元である。一方 $X=S^2\vee S^4$ では、カップ積 の命題「一点和のカップ積」により、$a\in H^2(X;\mathbb{Z})$ の平方は $S^2$ と $S^4$ への制限の平方の組に対応し、$H^4(S^2)=0$、$H^2(S^4)=0$ なので $0$ である。次数付き環の同型は $H^2$ の生成元を $H^2$ の生成元に写して平方を保つので、二つのコホモロジー環は同型でなく、空間はホモトピー同値でない。
cps-prop-cw により $\mathbb{CP}^2=\mathbb{CP}^1\cup_\eta e^4$ である。$\eta$ が定値写像とホモトピックなら、貼り付け写像をホモトピーで取り替えてもホモトピー型は変わらないので(Hat02 Proposition 0.18(p. 16))、$\mathbb{CP}^2$ は定値写像で $4$ 胞体を貼った $S^2\vee S^4$ とホモトピー同値になり、前半に反する。$\square$
$h^2$ が $H^4(\mathbb{CP}^2)$ を生成することは、$\eta$ の Hopf 不変量が $\pm1$ であることにほかならない(コホモロジー環 の定義「Hopf 不変量」)。
$f\colon\mathbb{CP}^n\to\mathbb{CP}^n$ を連続写像とし、$f^*h=dh$($d\in\mathbb{Z}$)とする。
1:$f^*$ はカップ積を保つので $f^*(h^k)=(f^*h)^k=d^kh^k$ である。$h^n$ は $H^{2n}$ の生成元なので(cps-thm-ring)、$f^*$ は $H^{2n}\cong\mathbb{Z}$ の上で $d^n$ 倍である。
2:$z\ne0$ なら $(z_0^d,\dots,z_n^d)\ne0$ で、$z$ を $\lambda z$ に替えると右辺は $\lambda^d$ 倍になるので、$f_d$ は矛盾なく定まり、アフィン座標では多項式の比で書けるので正則である。$\mathcal{O}(1)$ の切断 $z_0$ を引き戻すと $z_0^d$ になる。その零点の因子は超平面 $H=\{z_0=0\}$ の $d$ 倍なので、$f_d^*\mathcal{O}(1)\cong\mathcal{O}(dH)\cong\mathcal{O}(d)$ である(第1Chern類 の例「射影空間の超平面束」の最後の主張)。第 1 Chern 類は引き戻しと可換なので、$f_d^*h=c_1(f_d^*\mathcal{O}(1))=c_1(\mathcal{O}(d))=dh$ である(cps-prop-hyperplane の 2)。あとは 1 による。$\square$
この写像を例にした計算は Hat02 §3.2 演習 6(p. 229)にある。同じ論法で、$f^*$ が各 $H^{2k}$ に $d^k$ 倍で作用することから、$n$ が偶数なら $\mathbb{CP}^n$ のどの自己写像も不動点をもつことが Lefschetz の不動点定理から従う(不動点性 の定理「複素射影空間の不動点性」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $n$ が有限であること | $\mathbb{CP}^\infty$ | $h^{n+1}=0$、閉多様体であること |
| $4$ 胞体の貼り付け写像が Hopf 写像であること | 定値写像で貼った $S^2\vee S^4$ | $2$ 次の生成元の平方が $H^4$ を生成すること |
| 係数を複素数にすること(実数に替える) | $\mathbb{RP}^2$ | 整数係数のコホモロジーが捩れをもたないこと |
胞体の構造は Hat02 Example 0.6(pp. 6–7)、コホモロジー環は Theorem 3.19(p. 220)と Example 3.40(p. 250)、Hopf 束は Example 4.44(p. 377)、写像度の計算は §3.2 演習 6(p. 229)にある。向き付けは Theorem 3.26(p. 236)、良い対の商は Proposition 2.22(p. 124)、貼り付け写像の取り替えは Proposition 0.18(p. 16)による。cps-prf-cw・cps-prf-groups・cps-prf-ring・cps-prf-degree は、この記事で組み立てた証明である。
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