局所可縮空間

同義語:locally contractible space局所可縮locally contractible

概要

局所可縮空間(locally contractible space)とは、各点 $x$ と $x$ の任意の近傍 $U$ に対し、$x$ の近傍 $V\subset U$ で包含写像 $V\to U$ が $U$ の中で定値写像とホモトピックになるものがとれる位相空間のことであり、可縮な開近傍を任意に小さくとれることを求める強い流儀もある。凸集合、多様体、局所有限な単体複体の多面体、CW複体、絶対近傍レトラクトは局所可縮であり、局所可縮性は開集合とレトラクトに遺伝し、無限個の空間の直積では有限個を除く因子が可縮なときに限り保たれる。局所可縮な空間は局所弧状連結かつ半局所単連結なので、連結なら普遍被覆をもち、層コホモロジーと特異コホモロジーの一致やAlexander双対定理の仮定として使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 可縮空間, ホモトピー, 近傍

局所可縮空間は、どの点のまわりでも、十分小さな部分が少し大きな部分の中で一点に縮められる空間である。可縮空間が「空間全体が一点に縮む」という大域的な条件であるのに対し、局所可縮性は各点のごく近くだけを見る条件で、二つの間にはどちら向きの含意もない。$\mathbb{R}^n$ の開集合、多様体、CW複体、絶対近傍レトラクトは局所可縮であり、この性質があると、小さいループが縮むので普遍被覆が存在し、層コホモロジーと特異コホモロジーが一致し、Alexander 双対定理が使えるなど、代数的位相幾何学の道具が「病的でない空間」として働く。
この記事では、二つの流儀の定義とその関係を述べ、凸集合・多様体・局所有限な単体複体の多面体が局所可縮であること(thm-lcs-convex-manifold、thm-lcs-polyhedron)、開集合とレトラクトへの遺伝(thm-lcs-open-retract)とその帰結としての絶対近傍レトラクトの局所可縮性(cor-lcs-anr)、無限個の空間の直積が局所可縮になる条件(thm-lcs-product)を証明する。

定義

局所可縮空間

$X$ を位相空間、$x\in X$ とする。$x$ の任意の近傍 $U$ に対し、$x$ の近傍 $V\subset U$ と連続写像 $F\colon V\times[0,1]\to U$ で
$$ F(v,0)=v,\qquad F(v,1)=u_0\qquad(v\in V) $$
($u_0\in U$ は $v$ によらない点)となるものが存在するとき、$X$ は $x$ で局所可縮であるという。すなわち、包含写像 $V\hookrightarrow U$ が $U$ の中で定値写像とホモトピック(ホモトピー)になる。$X$ のすべての点で局所可縮であるとき、$X$ を局所可縮空間(locally contractible space)という。
これより強い条件として、$x$ の任意の近傍 $U$ に対し、可縮な開集合 $V$ で $x\in V\subset U$ となるものがとれるとき、$X$ は $x$ で可縮な開近傍の基本系をもつという。すべての点でこれが成り立つとき、$X$ は強い意味で局所可縮であるという。

近傍 $U,V$ は開集合に限ってもよい。$U$ が近傍なら $U$ に含まれる開近傍 $U^\circ$ に対して条件を使えば、$U^\circ$ の中で縮むものは $U$ の中でも縮み、$V$ が近傍なら $V$ に含まれる開近傍に $F$ を制限すればよいからである。空空間は条件を空虚に満たす。
上の定義の前半は可縮空間の記事の定義「近傍内で縮むという流儀」、絶対近傍レトラクトの記事の定理「絶対近傍レトラクトは局所可縮」、Hat02 Appendix, Theorem A.7(p. 525)の「弱い意味の局所可縮性」と同じものである。後半の強い意味は、半局所単連結空間の記事の注意「強さの連鎖」で用いている定義である。

強い意味は弱い意味を導く

強い意味で局所可縮な空間は局所可縮である。

$x$ の近傍 $U$ に対し、可縮な開集合 $V$ で $x\in V\subset U$ となるものをとる。$V$ の収縮 $H\colon V\times[0,1]\to V$($H(v,0)=v$、$H(v,1)=v_0$)を、包含 $V\subset U$ と合成して $U$ に値をとる写像とみなせば、定義の $F$ が得られる。$\square$

定義の流儀
  1. 弱い意味の定義では、$V$ を縮めるホモトピーは $V$ の外に出てよく、$V$ 自身が可縮である必要もない。強い意味では各点に任意に小さい可縮な開近傍がある。文献によって「局所可縮」がどちらを指すかが異なるので、引用する結果ごとにどちらの意味かを確かめる必要がある。この記事では、無印の「局所可縮」は弱い意味を指し、強い意味が要るところはそのように書く。
  2. 「各点が可縮な近傍を少なくとも一つもつ」という条件は局所可縮性ではない。くし空間は空間全体が可縮なので、どの点も可縮な近傍(空間全体)をもつが、局所可縮でない(可縮空間の記事の注意「大域と局所を分ける四例」)。「任意に小さい」近傍がとれることが局所可縮性の要である。
  3. 弱い意味の局所可縮性から強い意味の局所可縮性が一般に従うかどうかは、この記事では扱わない。以下の例(凸集合・多様体・単体複体・CW 複体)はすべて強い意味で局所可縮である。

直感

$\mathbb{R}^n$ の点のまわりの小さな球は、中心へ向かって直線的に縮められる。局所可縮性は、この「小さく見れば穴がない」という性質だけを取り出したものである。円周 $S^1$ は全体としては穴をもつが、各点の近くの小さな弧は線分なので縮み、局所可縮である。逆にハワイの耳飾りでは、一点に向かって小さくなる円が無限個集まっているので、その点のどんなに小さい近傍にも縮まない円が入り込み、局所可縮にならない。局所可縮な空間では「小さいループ・小さい球面は小さい範囲で縮む」ので、特異鎖を細かく分けて局所的に処理する議論(被覆空間の構成、層コホモロジーとの比較、双対定理)がうまく働く。

例

凸集合と多様体
  1. 実ノルム空間 $E$ の凸集合 $C$($E$ からの相対位相を入れる)と、$C$ の開集合は、強い意味で局所可縮である。
  2. 境界があってもよい位相多様体は、強い意味で局所可縮である。

1:$O$ を $C$ の開集合、$x\in O$ とし、$U$ を $x$ の近傍とする。$O\cap U$ は $x$ の近傍なので、$r>0$ を十分小さくとれば $B:=\{y\in C\mid\|y-x\|< r\}$ は $O\cap U$ に含まれる($C$ の相対位相の定義)。$B$ は $C$ の開集合であり、開球と凸集合 $C$ の共通部分なので凸である。$H(y,t):=(1-t)y+tx$ とおくと、$y\in B$ と $t\in[0,1]$ について、凸性により $H(y,t)\in B$ である。$H$ はノルム空間の演算の連続性により連続で、$H(y,0)=y$、$H(y,1)=x$ なので、$B$ は可縮である。
2:$M$ を $n$ 次元の位相多様体(境界があってもよい)とし、$x\in M$、$U$ を $x$ の開近傍とする。$x$ の開近傍 $W$ と、$W$ から $C:=\mathbb{R}^n$ または閉半空間 $C:=\mathbb{H}^n=\{y\in\mathbb{R}^n\mid y_n\ge0\}$ の開集合 $\varphi(W)$ への同相写像 $\varphi$ がある(座標近傍)。どちらの $C$ も凸集合である。$\varphi(W\cap U)$ は凸集合 $C$ の開集合なので、1 により、$\varphi(x)$ の可縮な開近傍 $B\subset\varphi(W\cap U)$ がある。$V:=\varphi^{-1}(B)$ は $W$ の開集合、したがって $M$ の開集合で、$B$ と同相なので可縮であり、$x\in V\subset U$ である。$\square$

とくに $\mathbb{R}^n$ とその開集合、閉円板 $D^n$、球面 $S^n$、トーラスは強い意味で局所可縮である。球面 $S^n$ は局所可縮だが可縮でない(可縮空間の記事の注意「有限次元球面による反例」)ので、局所可縮性は可縮性を導かない。
次に、単体を貼り合わせた空間を考える。$\mathbb{R}^N$ の幾何的単体複体 $K$ が局所有限であるとは、$|K|$ の各点が、$K$ の有限個の単体としか交わらない $\mathbb{R}^N$ の近傍をもつことをいう(局所有限(位相))。このとき多面体 $|K|$ の弱位相は $\mathbb{R}^N$ からの相対位相と一致する(PL多様体の記事の節「多面体と PL 写像」)ので、$|K|$ には相対位相を入れて考える。各点 $x\in|K|$ はただ一つの単体の内部(開単体)に属する(単体複体の記事の補題「各点の台」)。

局所有限な単体複体の多面体

$K$ を $\mathbb{R}^N$ の局所有限な幾何的単体複体とする。点 $x\in|K|$ に対し、$x$ を含む単体 $\sigma\in K$ の開単体 $\operatorname{int}\sigma$ 全体の和集合を $\operatorname{St}(x)$($x$ の開星状体)とおく。

  1. $\operatorname{St}(x)$ は $|K|$ の開集合であり、各 $y\in\operatorname{St}(x)$ について線分 $[y,x]$ は $\operatorname{St}(x)$ に含まれる。
  2. $|K|$ は強い意味で局所可縮である。

1(開集合であること):$|K|\setminus\operatorname{St}(x)=\bigcup\{\tau\in K\mid x\notin\tau\}$ を示す。点 $z\in|K|$ の台を $\rho$($z\in\operatorname{int}\rho$ となる唯一の単体)とする。開単体どうしは交わらないので、$z\in\operatorname{St}(x)$ であることは $x\in\rho$ と同値である。$z\notin\operatorname{St}(x)$ なら $x\notin\rho$ であり、$z\in\rho$ なので $z$ は右辺に属する。逆に $z\in\tau$、$x\notin\tau$ なら、$z$ の台 $\rho$ は $\tau$ の面($\tau$ の中での $z$ の重心座標が正である頂点の張る面)なので $x\notin\rho$ となり、$z\notin\operatorname{St}(x)$ である。右辺は、局所有限な閉集合の族(各単体はコンパクトなので $|K|$ の閉集合である)の部分族の合併なので閉集合である(開被覆の記事の命題「局所有限な族の閉包」)。よって $\operatorname{St}(x)$ は開集合である。
1(線分):$y\in\operatorname{int}\sigma$、$x\in\sigma$ とする。$0\le s< 1$ について $(1-s)y+sx$ の $\sigma$ での重心座標は、$y$ の重心座標(すべて正)の $1-s>0$ 倍と $x$ の重心座標(すべて $0$ 以上)の $s$ 倍の和なので、すべて正であり、この点は $\operatorname{int}\sigma\subset\operatorname{St}(x)$ に属する。$s=1$ の点 $x$ は、$x$ の台が $x$ を含むので $\operatorname{St}(x)$ に属する。
2:$U$ を $x$ の $|K|$ における近傍とし、$r>0$ を $\{z\in|K|\mid\|z-x\|< r\}\subset U$ となるようにとる。$V:=\{z\in\operatorname{St}(x)\mid\|z-x\|< r\}$ は 1 により $|K|$ の開集合で、$x\in V\subset U$ である。$y\in V$ なら線分 $[y,x]$ は $\operatorname{St}(x)$ に含まれ、開球は凸なので開球にも含まれるから、$[y,x]\subset V$ である。よって $H(y,t):=(1-t)y+tx$ は $V\times[0,1]$ から $V$ への連続写像で、$H(y,0)=y$、$H(y,1)=x$ を満たし、$V$ は可縮である。$\square$

CW 複体

任意のCW複体の各点は、任意に小さい可縮な開近傍をもつ。すなわち CW 複体は強い意味で局所可縮である(Hat02 Appendix, Proposition A.4, p. 522)。この記事ではこの命題を証明しない。証明は、点 $x$ のまわりに骨格ごとに少しずつ太らせた開近傍 $N_\varepsilon(x)$ を作り、各胞体の中で特性写像の半径方向に押し戻して、$N_\varepsilon(x)$ を $x$ の小さな開球へ、さらに $x$ へ変形レトラクトするものである。単体複体の多面体(弱位相)は CW 複体なので、この命題は局所有限でない単体複体も含む。

開集合・レトラクト・直積

局所可縮性は任意の部分空間には遺伝しない($\mathbb{R}$ は局所可縮だが有理数全体 $\mathbb{Q}$ はそうでない。可縮空間の記事の注意「局所可縮性の非保存」)。開集合とレトラクトには遺伝する。

開集合とレトラクト

$X$ を位相空間とする。

  1. $X$ が局所可縮(強い意味で局所可縮)ならば、$X$ の開集合も局所可縮(強い意味で局所可縮)である。
  2. $X$ が局所可縮で、$A\subset X$ が $X$ の近傍レトラクト、すなわち $A$ を含む開集合 $N$ と連続写像 $r\colon N\to A$ で $r(a)=a$($a\in A$)となるものがあるならば、$A$ は局所可縮である。とくに $X$ のレトラクトは局所可縮である。

1:$O$ を $X$ の開集合、$x\in O$、$U$ を $O$ における $x$ の近傍とする。$O$ が開集合なので $U$ は $X$ における $x$ の近傍でもある。$X$ の局所可縮性から得られる $x$ の近傍 $V\subset U$ とホモトピー $F\colon V\times[0,1]\to U$ は、$V\subset O$ なので $O$ における近傍とそのホモトピーでもある。強い意味の場合も、$X$ の可縮な開集合 $V\subset U$ は $O$ の可縮な開集合である。
2:まず $N$ は 1 により局所可縮である。$a\in A$ とし、$U$ を $A$ における $a$ の開近傍とする。$r$ は連続なので $r^{-1}(U)$ は $N$ の開集合で、$r(a)=a\in U$ より $a$ を含む。$N$ の局所可縮性により、$N$ における $a$ の近傍 $V'\subset r^{-1}(U)$ と、$F\colon V'\times[0,1]\to r^{-1}(U)$ で $F(v,0)=v$、$F(v,1)=c$(定点)となるものがある。$V:=V'\cap A$ は $A$ における $a$ の近傍であり、$v\in V$ なら $v=r(v)\in U$ なので $V\subset U$ である。
$$ G(v,t):=r\bigl(F(v,t)\bigr)\qquad(v\in V,\ t\in[0,1]) $$
とおくと、$G$ は $U$ に値をとる連続写像で、$G(v,0)=r(v)=v$、$G(v,1)=r(c)$ は $v$ によらない。よって $A$ は $a$ で局所可縮である。レトラクトは $N=X$ の場合である。$\square$

2 の議論は Hat02 Appendix(pp. 526–527)の Theorem A.7 の証明の後半と同じものである。この定理から、絶対近傍レトラクトの局所可縮性が従う。

絶対近傍レトラクトは局所可縮

絶対近傍レトラクト(ANR)は局所可縮である。

$X$ を ANR とする。絶対近傍レトラクトの記事の定理「凸集合への閉埋め込み」により、ノルム空間の凸集合 $K$ と、$X$ から $K$ の閉集合 $h(X)$ への同相写像 $h$ がある。$K$ は距離化可能なので、ANR の定義により $h(X)$ は $K$ の近傍レトラクトである。$K$ は thm-lcs-convex-manifold の 1 により局所可縮なので、thm-lcs-open-retract の 2 により $h(X)$ は局所可縮であり、これと同相な $X$ も局所可縮である。$\square$

これは絶対近傍レトラクトの記事の定理「絶対近傍レトラクトは局所可縮」の主張であり、同記事で外部の定理として用いている埋め込み定理だけを仮定した証明になっている。逆向きについては次が知られている:$\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合 $K$ について、$K$ が局所可縮であることと、$K$ が $\mathbb{R}^n$ のある近傍のレトラクトであることは同値である(Hat02 Appendix, Theorem A.7, p. 525)。この記事では「局所可縮 $\Rightarrow$ 近傍レトラクト」の向きを証明しない。逆の向きは thm-lcs-open-retract の 2 である。
有限個の局所可縮空間の直積は局所可縮である(可縮空間の記事の命題「局所可縮性を保つ二つの構成」)。無限個の直積では、因子の大部分が可縮でなければならない。

直積の局所可縮性

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を空でない位相空間の族とし、$X:=\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda$ に直積位相を入れる。$X$ が局所可縮であることと、次の 2 条件がともに成り立つことは同値である。

  1. すべての $X_\lambda$ は局所可縮である。
  2. 有限個を除くすべての $\lambda$ について、$X_\lambda$ は可縮である。

射影を $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ と書く。
1・2 $\Rightarrow$ 局所可縮:$x=(x_\lambda)\in X$ と $x$ の近傍 $U$ をとる。$U$ は基本開集合 $\prod_{\lambda\in S}U_\lambda\times\prod_{\lambda\notin S}X_\lambda$($S$ は有限集合、$U_\lambda$ は $X_\lambda$ の開集合)を含む。$T:=S\cup\{\lambda\mid X_\lambda\text{ は可縮でない}\}$ は 2 により有限集合であり、$\lambda\in T\setminus S$ については $U_\lambda:=X_\lambda$ とおく。$\lambda\in T$ については、1 により $x_\lambda$ の近傍 $V_\lambda\subset U_\lambda$ と $F_\lambda\colon V_\lambda\times[0,1]\to U_\lambda$($F_\lambda(\cdot,0)$ が包含、$F_\lambda(\cdot,1)$ が定値 $c_\lambda$)をとる。$V_\lambda$ は開集合にとってよい。$\lambda\notin T$ については $X_\lambda$ の収縮 $F_\lambda\colon X_\lambda\times[0,1]\to X_\lambda$($F_\lambda(\cdot,1)$ が定値 $c_\lambda$)をとり、$V_\lambda:=X_\lambda$ とおく(各 $\lambda$ について一つずつ選ぶので選択公理を用いる)。$V:=\prod_\lambda V_\lambda$ は $T$ が有限なので $x$ の開近傍であり、
$$ F(v,t):=\bigl(F_\lambda(v_\lambda,t)\bigr)_{\lambda\in\Lambda} $$
とおくと、各成分 $(v,t)\mapsto F_\lambda(p_\lambda(v),t)$ が連続なので $F\colon V\times[0,1]\to X$ は連続であり(直積位相の普遍性)、値は $\prod_{\lambda\in T}U_\lambda\times\prod_{\lambda\notin T}X_\lambda\subset U$ に入る。$F(v,0)=v$、$F(v,1)=(c_\lambda)_\lambda$ なので、$X$ は $x$ で局所可縮である。
局所可縮 $\Rightarrow$ 1:$\mu\in\Lambda$ を固定し、各 $\lambda\neq\mu$ について点 $q_\lambda\in X_\lambda$ を選ぶ。$s\colon X_\mu\to X$ を、第 $\mu$ 成分が $y$、それ以外の第 $\lambda$ 成分が $q_\lambda$ の点 $s(y)$ で定めると、$s$ は連続で $p_\mu\circ s=\operatorname{id}$ である。よって $s(X_\mu)$ は $X$ のレトラクト(レトラクション $s\circ p_\mu$)であり、thm-lcs-open-retract の 2 により局所可縮である。$s$ は $X_\mu$ から $s(X_\mu)$ への同相写像(逆写像は $p_\mu$ の制限)なので、$X_\mu$ も局所可縮である。
局所可縮 $\Rightarrow$ 2:点 $x\in X$ をとり、局所可縮性を近傍 $U:=X$ に使って、$x$ の近傍 $V$ と $F\colon V\times[0,1]\to X$($F(v,0)=v$、$F(v,1)=c$)をとる。$V$ は基本開集合 $\prod_{\lambda\in S}V_\lambda\times\prod_{\lambda\notin S}X_\lambda$($S$ は有限)を含む。$\mu\notin S$ とし、$j\colon X_\mu\to X$ を、第 $\mu$ 成分が $y$、それ以外の成分が $x$ と同じ点 $j(y)$ で定める。$j$ は連続で、$j(X_\mu)$ は上の基本開集合、したがって $V$ に含まれる。$G(y,t):=p_\mu\bigl(F(j(y),t)\bigr)$ は連続で、$G(y,0)=y$、$G(y,1)=p_\mu(c)$ なので $X_\mu$ は可縮である。よって $X_\lambda$ が可縮でない $\lambda$ は有限集合 $S$ に含まれる。$\square$

無限次元トーラスと Hilbert 立方体
  1. 可算個の円周の直積 $\prod_{n\ge1}S^1$ は局所可縮でない。各因子 $S^1$ は局所可縮だが可縮でない(可縮空間の記事の注意「有限次元球面による反例」)ので、thm-lcs-product の条件 2 が成り立たない。証明が示すとおり、どの点のどんなに小さい近傍 $V$ にも、空間全体の中で定値写像とホモトピックでない円周 $j(S^1)$ が含まれる。
  2. 可算個の閉区間の直積 $\prod_{n\ge1}[0,1]$(Hilbert 立方体)は局所可縮である。各因子は凸集合なので局所可縮かつ可縮だからである。
  3. 二点離散空間 $\{0,1\}$ の可算個の直積(Cantor集合と同相)は局所可縮でない。各因子は離散空間として局所可縮だが、弧状連結でないので可縮でない。

ホモトピー論とコホモロジーでの役割

局所可縮な空間では、他の局所的な条件が自動的に成り立つ。

  • 局所可縮な空間は局所弧状連結空間である(可縮空間の記事の命題「局所可縮性と道」)。したがって局所連結でもある。
  • 局所可縮な空間は半局所単連結空間である。点 $x$ の近傍 $U$ の中で縮む近傍 $V$ をとると、$V$ の中のループは $U$ の中で、したがって空間全体の中で定値ループとホモトピックになるからである(絶対近傍レトラクトの記事の注意「反例:Hawaiianイヤリングと正弦曲線」の 1 に、基点の扱いを含めた証明がある)。
普遍被覆の存在

連結な局所可縮空間 $X$ は弧状連結であり、普遍被覆をもつ。とくに連結な多様体・連結な CW 複体・連結な ANR は普遍被覆をもつ。

上の一つ目により $X$ は局所弧状連結であり、連結かつ局所弧状連結な空間は弧状連結である(弧状連結空間の記事の定理「連結性からの回復」)。上の二つ目により $X$ は半局所単連結である。弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結な空間は普遍被覆をもつ(半局所単連結空間の記事の定理「普遍被覆の存在(引用)」、Hat02 §1.3, pp. 63–65)。後半は thm-lcs-convex-manifold、rem-lcs-cw、cor-lcs-anr による。$\square$

局所可縮性は、層コホモロジーを特異コホモロジーで計算するための標準的な仮定でもある。

層コホモロジーとの一致

$X$ をパラコンパクト Hausdorff 空間で、強い意味で局所可縮なものとし、$A$ をアーベル群とする。定数層 $\underline{A}$ の層コホモロジーと特異コホモロジーの間に自然な同型 $H^n(X,\underline{A})\cong H^n(X;A)$ がある。

定理の扱い

この記事では証明しない。特異コホモロジーの記事の定理「層コホモロジーとの一致」による。位相多様体・CW 複体はパラコンパクト Hausdorff で強い意味で局所可縮なので、この定理が使える(多様体の de Rhamの定理 や、複素多様体の第1Chern類を特異コホモロジーの類とみなすときに用いられる)。局所可縮性がないと一致は一般に成り立たない。たとえば位相幾何学者の正弦曲線の記事の注意「ワルシャワ円との関係」のワルシャワ円 $W$ では、特異コホモロジー $H^1(W;\mathbb{Z})$ は $0$ であるが、Čechコホモロジー $\check{H}^1$ は $\mathbb{Z}$ である。

Alexander 双対定理

$K$ を球面 $S^n$ の空でないコンパクト真部分集合で、局所可縮なものとする。すべての $i$ について $\tilde H_i(S^n\setminus K;\mathbb{Z})\cong\tilde H^{n-i-1}(K;\mathbb{Z})$ が成り立つ。

定理の扱い

この記事では証明しない。Hat02 §3.3, Corollary 3.45(p. 255)による。そこでの証明は、$K$ が $\mathbb{R}^N$ のある近傍のレトラクトであること(Hat02 Appendix, Theorem A.7)を通して局所可縮性を使っており、この記事の弱い意味の局所可縮性で足りる。局所可縮性は外せない。ワルシャワ円 $W\subset\mathbb{R}^2\subset S^2$ では、$S^2\setminus W$ は二つの弧状連結成分をもつので $\tilde H_0(S^2\setminus W;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ であるが、$W$ は単連結なので $H^1(W;\mathbb{Z})=0$ である(Hat02 §3.3, p. 256)。Poincaré双対の記事でも、コンパクトで局所可縮な部分集合についての同じ形の双対が述べられている。

局所可縮性はホモトピー型の性質ではない。くし空間は一点とホモトピー同値であるが局所可縮でない(可縮空間の記事の注意「弱可縮性との区別」)。CW 複体とホモトピー同値な空間が局所可縮とは限らないのはこのためである。一方、ホモトピー不変量を計算するときには、局所可縮な空間(とくに CW 複体)で置き換えることが多い。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
局所可縮性(局所弧状連結性だけを仮定)ハワイの耳飾り $\mathbb{H}$半局所単連結であること、普遍被覆をもつこと
近傍を任意に小さくとれることくし空間 $C$可縮な近傍をもつ点の集まりが局所可縮であること
有限個を除く因子の可縮性(thm-lcs-product)$\prod_{n\ge1}S^1$局所可縮な空間の直積が局所可縮であること
部分空間が開集合またはレトラクトであること(thm-lcs-open-retract)$\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}$部分空間が局所可縮であること
局所可縮性(thm-lcs-alexander)ワルシャワ円 $W\subset S^2$$\tilde H_0(S^2\setminus W)\cong\tilde H^1(W)$
空間そのものを変えないこと(ホモトピー同値で移す)くし空間 $C$ と一点局所可縮性がホモトピー型で決まること
反例の確かめ

1 行目:$\mathbb{H}$ は局所弧状連結である(ハワイの耳飾りの記事の命題「弧状連結性と局所弧状連結性」)が、半局所単連結でない(半局所単連結空間の記事の命題「Hawaiianイヤリングは半局所単連結でない」)。局所可縮な空間は半局所単連結なので、$\mathbb{H}$ は局所可縮でない。普遍被覆をもつ空間は半局所単連結である(Hat02 §1.3, p. 63)から、$\mathbb{H}$ は弧状連結・局所弧状連結であるにもかかわらず普遍被覆をもたない。
2 行目:$C$ は可縮なので、どの点も可縮な近傍 $C$ をもつ。しかし $C$ は点 $(0,1)$ で局所可縮でない(くし空間の記事の注意「反例:可縮でも局所可縮とは限らない」。弱い意味の局所可縮性についても証明されている)。
3 行目:ex-lcs-products の 1 による。
4 行目:$\mathbb{R}$ は thm-lcs-convex-manifold により局所可縮であり、$\mathbb{Q}$ が局所可縮でないことは可縮空間の記事の注意「局所可縮性の非保存」の 1 による。$\mathbb{Q}$ は $\mathbb{R}$ の開集合でもレトラクトでもない(レトラクトなら $\mathbb{R}$ の連続像として連結になるが、$\mathbb{Q}$ は連結でない)。
5 行目:rem-lcs-alexander-source による。
6 行目:2 行目と、可縮な空間は一点とホモトピー同値であること(可縮空間の記事の命題「一点とのホモトピー同値による特徴づけ」)による。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.3, pp. 63–65(半局所単連結性と普遍被覆の構成)、§3.3 Corollary 3.45, p. 255、p. 256(ワルシャワ円での Alexander 双対の破れ)、Appendix Proposition A.4, p. 522(CW 複体の局所可縮性)、Theorem A.7, pp. 525–527(ユークリッド空間のコンパクト集合と近傍レトラクト)

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