平滑化理論(smoothing theory)とは、PL 多様体や位相多様体に両立する滑らかな構造の有無と個数を、分類空間のホモトピー論に帰着させる理論である。Hirsch–Mazur は、PL 多様体 $M$ の平滑化の存在を安定接束の分類写像 $M\to B\mathrm{PL}$ が $B\mathrm{O}$ に持ち上がることと同値にし、平滑化の concordance 類を $[M,\mathrm{PL}/\mathrm{O}]$ で数えた。$\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ は $i\le6$ で $0$ なので、$7$ 次元以下の PL 多様体は滑らかな構造をもち、$6$ 次元以下では一意である。位相多様体でも $5$ 次元以上で $\mathrm{TOP}/\mathrm{O}$ による同様の定理が成り立つ(Kirby–Siebenmann)。
前提知識: PL多様体, Whitehead三角形分割, 分類空間, Kervaire–Milnorの群
平滑化理論(smoothing theory)は、PL 多様体や位相多様体が、それと両立する滑らかな構造をもつかどうか、もつならそれが何通りあるかを、分類空間のホモトピー論に帰着させる理論である。PL 多様体については Hirsch と Mazur が、滑らかな構造(平滑化)の存在を「安定接束の分類写像 $M\to B\mathrm{PL}$ が $B\mathrm{O}$ に持ち上がること」と同値にし、平滑化の concordance 類をホモトピー類の集合 $[M,\mathrm{PL}/\mathrm{O}]$ で数えた。位相多様体については、$5$ 次元以上で Kirby–Siebenmann が同じ形の定理を $\mathrm{TOP}/\mathrm{O}$ で示した。
これにより、平滑化の問題は空間 $\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ のホモトピー群の問題になる。$\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ は $i\le6$ で $0$ なので、$7$ 次元以下の PL 多様体は滑らかな構造をもち、$6$ 次元以下ではそれは一意である。$7$ 次元では $\pi_7(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ が $28$ 個の元をもち、Milnor の異種 $7$ 次元球面が現れる。
この記事では、Hirsch–Mazur の平滑化定理、$\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ の消滅、Kirby–Siebenmann の分類定理は所在を示して引用する。そのうえで、低次元での存在と一意性を障害理論の議論で完全に証明し、球面の平滑化の数を異種球面の数(Kervaire–Milnor の群)と照合し、$5$〜$7$ 次元の位相多様体が滑らかな構造をもつための必要十分条件を導く。
多様体は Hausdorff かつ第 2 可算とし、断らない限り境界をもたない。滑らかな多様体 $V$ は、Whitehead 三角形分割により PL 構造を一意に定める(Whitehead三角形分割 の定理「Cairns–Whitehead の定理」)。以下、滑らかな多様体をこの PL 構造で PL 多様体とみなす。
$M$ を PL 多様体とする。
これは Rud01 Remark 3.11(pp. 33–34)の定義で、そこでは $PD(M)$ と書かれている。平滑化 $(V,h)$ があれば、$h$ で $V$ の滑らかな構造を $M$ に移して、$M$ の PL 構造と両立する滑らかな構造が得られる。位相多様体 $M$ の滑らかな構造についても、$h$ を同相写像にして同様に定義する(Rud01 Remark 3.11、KS77 Essay IV §10、p. 194)。
$B\mathrm{O}$、$B\mathrm{PL}$、$B\mathrm{TOP}$ を、それぞれ安定なベクトル束、PL $\mathbb{R}^n$ 束、位相 $\mathbb{R}^n$ 束の分類空間とし、忘却写像 $B\mathrm{O}\to B\mathrm{PL}\to B\mathrm{TOP}$ を考える(Rud01 §2、pp. 23–28)。PL 多様体 $M$ の安定接束(接 PL 束)を分類する写像を $\tau_M\colon M\to B\mathrm{PL}$ と書く。
忘却写像 $B\mathrm{O}\to B\mathrm{PL}$ をファイブレーション $p\colon E\to B\mathrm{PL}$ で置き換えたときのファイバー(ホモトピーファイバー)を $\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ と書く。同様に $B\mathrm{O}\to B\mathrm{TOP}$ のホモトピーファイバーを $\mathrm{TOP}/\mathrm{O}$ と書く。
これは Rud01 §2(p. 28)の定義である($\mathrm{TOP}/\mathrm{O}$ のファイブレーションは同書 §22、p. 87)。これらの空間は CW 複体のホモトピー型をもち、無限ループ空間、とくに H 空間である(同所)。したがって弧状連結な H 空間として、$\pi_1$ はホモトピー群に自明に作用し(Hat02 Example 4A.3、p. 422)、球面からの自由ホモトピー類は基点付きのホモトピー類と一致する:$[S^n,\mathrm{PL}/\mathrm{O}]=\pi_n(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$(Hat02 Proposition 4A.2、p. 422)。
$M$ を PL 多様体とする。
1 は平滑化の存在を接束の持ち上げ問題に、2 は平滑化の分類を $[M,\mathrm{PL}/\mathrm{O}]$ の元の数え上げに帰着する。したがって、$\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ のホモトピー群が分かれば、平滑化の有無と数が計算できる。以下の定理と命題は、この見方を使う。
これは Hirsch–Mazur の定理で、Rud01 Remark 6.7(p. 41)による。そこでは、PL 構造についての積構造定理・分類定理・存在定理(Rud01 Theorem 6.1、Corollary 6.2–6.4、pp. 39–41)の類似が、平滑化については次元の制限なしに成り立つと述べられている。KS77 Essay IV §10.10(pp. 198–199)も、PL を滑らかな構造と位相的な構造のあいだの理論の 1 つとして同じ枠組みで扱っている。この記事では証明しない。
$\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ は弧状連結で、$1\le i\le6$ で $\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})=0$ である。同じことだが、忘却写像 $B\mathrm{O}\to B\mathrm{PL}$ は $7$ 連結である。
$\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ は $i\le6$ では消えるが、$i=7$ では消えない。これは、7 次元球面の上に Milnor の異種な滑らかな構造が存在することに対応している。この定理は、平滑化定理と組み合わせて、低次元の多様体の平滑化の存在と一意性を調べるために使う。
これは Rud01 Remark 6.7(p. 41。「よく知られているが証明は難しい」とされ、文献が挙げられている)、KS77 Essay IV §10.10(p. 199。$B_{\mathrm{DIFF}}\to B_{\mathrm{PL}}$ は $7$ 連結)による。この記事では証明しない。低次元の背景として、$S^{n-1}$ の向きを保つ微分同相写像の群を、$D^n$ の微分同相写像に延びるものの部分群で割った群 $\Gamma_n$ は $n\le4$ で $0$ である($n=4$ は Cerf。Kos93 Ch. III §6、pp. 56–57)。
$M$ を $\dim M\ge5$ の境界のない位相多様体とし、$t_M\colon M\to B\mathrm{TOP}$ を安定接束の分類写像とする。
これは KS77 Essay IV の Classification Theorem 10.1(p. 194。$\mathrm{CAT}=\mathrm{DIFF}$ の場合)である。そこでは $\dim M\ge6$、または $\dim M=5$ で境界が与えられた構造の側に入る場合を仮定しており、境界のない $5$ 次元多様体はこれに含まれる。この記事では証明しない。$\mathrm{CAT}=\mathrm{PL}$ の場合が Kirby–Siebenmann不変量 の記事の主定理である。
この定理は、先の平滑化定理の位相多様体版にあたり、$\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ が $\mathrm{TOP}/\mathrm{O}$ に、$B\mathrm{PL}$ が $B\mathrm{TOP}$ に代わる。この記事では $\dim M\ge5$ の境界のない多様体にこの定理を使う。
平滑化定理と $\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ の消滅から、次元が低い場合の結論が障害理論で出る。まず、ホモトピー論の補題を示す。
$p\colon E\to B$ を弧状連結な空間のあいだのファイブレーションとし、ファイバー $F$ は弧状連結で、$1\le i\le k$ で $\pi_i(F)=0$ とする。$X$ を CW 複体とする。
1. $f\colon X\to F$ とし、$y_0\in F$ を 1 点とする。$(X,\emptyset)$ と $(F,\{y_0\})$ に圧縮補題(Hat02 Lemma 4.6、p. 346)を当てはめる。$X$ の胞体の次元 $n$ は $0\le n\le k$ で、$\pi_n(F,\{y_0\})=\pi_n(F)=0$($n\ge1$)、$n=0$ では $F$ は弧状連結なので条件がみたされる。よって $f$ は $\{y_0\}$ への写像、すなわち定値写像にホモトピックである。
2. ファイブレーションのホモトピー完全列(Hat02 Theorem 4.41、p. 376)
$$
\pi_i(F)\to\pi_i(E)\xrightarrow{\ p_*\ }\pi_i(B)\to\pi_{i-1}(F)
$$
により、$p_*\colon\pi_i(E)\to\pi_i(B)$ は $i\le k$ で単射(左が $0$)、$i\le k+1$ で全射(右が $0$。$i=1$ では $F$ が弧状連結であることを使う)である。
$p$ の写像柱を $M_p$ とすると、$E\subset M_p$ で、$M_p$ は $B$ に変形レトラクトし、そのレトラクション $r\colon M_p\to B$ は $E$ の上で $p$ である。対 $(M_p,E)$ のホモトピー完全列(Hat02 Theorem 4.3、p. 344)
$$
\pi_i(E)\to\pi_i(M_p)\to\pi_i(M_p,E)\to\pi_{i-1}(E)\to\pi_{i-1}(M_p)
$$
で、$\pi_i(M_p)\cong\pi_i(B)$ と上の結果から、$1\le i\le k+1$ で $\pi_i(M_p,E)=0$ である。$E$ は弧状連結なので $(M_p,E)$ は $0$ 連結でもある。
$g$ と包含 $B\subset M_p$ の合成を $(X,\emptyset)\to(M_p,E)$ とみて圧縮補題を当てはめると、$X$ の胞体の次元は $k+1$ 以下なので、$E$ への写像 $g'\colon X\to E$ で、$M_p$ の中で $g$ にホモトピックなものがある。$r$ を合成すると $p\circ g'=r\circ g'\simeq r\circ g=g$ である。このホモトピーを $p$ のホモトピー持ち上げ性質で $g'$ から持ち上げると、終点の写像 $\tilde g$ が $p\circ\tilde g=g$ をみたす。$\square$
$M$ を $n$ 次元 PL 多様体とする。
$M$ は組合せ的な三角形分割をもつ(PL多様体)ので、$n$ 次元の局所有限な単体複体と同相であり、次元 $n$ の CW 複体とみなせる。thm-sm-plo-vanish により $\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ は弧状連結で $1\le i\le6$ で $\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})=0$ である。
1. 忘却写像 $B\mathrm{O}\to B\mathrm{PL}$ をファイブレーション $p\colon E\to B\mathrm{PL}$($E\simeq B\mathrm{O}$、ファイバー $\mathrm{PL}/\mathrm{O}$)で置き換える。$B\mathrm{O}$、$B\mathrm{PL}$ は弧状連結である。$n\le7=6+1$ なので、lem-sm-lift の 2($k=6$)により $\tau_M$ は $E$ に持ち上がり、したがって $B\mathrm{O}$ に持ち上がる。thm-sm-hm の 1 により $M$ は平滑化をもつ。
2. 1 により $M$ は平滑化 $(V_0,h_0)$ をもつ。$n\le6$ なので、lem-sm-lift の 1($k=6$)により写像 $M\to\mathrm{PL}/\mathrm{O}$ はすべて定値写像にホモトピックで、$[M,\mathrm{PL}/\mathrm{O}]$ は 1 点である($M$ が連結でなくても、各連結成分ごとに同じことがいえる)。thm-sm-hm の 2 により $\mathcal{S}_{\mathrm{DIFF}}(M)$ は 1 点である。$\square$
これは Rud01 Remark 6.7(p. 41)の結論で、Rud01 の序論(p. 14)は「$7$ 次元未満の PL 多様体は一意な滑らかな構造をもつ」と述べている。$3$ 次元以下では位相多様体は PL 構造を一意にもつ(Radóの定理、Moiseの定理)ので、thm-sm-lowdim と合わせて、$3$ 次元以下の位相多様体は滑らかな構造を一意にもつ。$4$ 次元では PL 多様体と滑らかな多様体の違いはないが、位相多様体とは大きく違う(E8多様体、エキゾチックR⁴)。
古典的な障害理論の言葉では、$\tau_M$ を $B\mathrm{O}$ に持ち上げる障害は $H^{i+1}(M;\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O}))$ に、2 つの持ち上げの違いは $H^i(M;\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O}))$ に現れる(KS77 Essay IV §10.8–10.9、p. 197 は $\mathrm{TOP}/\mathrm{CAT}$ について同じ形の障害理論を述べ、係数がねじれないことも示している)。$i\le6$ でこれらの係数が消えるので、$n\le7$ では障害がなく、$n\le6$ では違いもない。prf-thm-sm-lowdim はこの議論を、胞体ごとの障害を使わずに圧縮補題で書いたものである。
$n\ge5$ とする。PL 多様体 $S^n$($\partial\Delta^{n+1}$)の平滑化を考える。Rud01 Example 3.13(pp. 34–35)は、$S^n$ の平滑化の concordance 類と、$n$ 次元ホモトピー球面の群 $\Theta_n$(Kervaire–Milnorの群)の元とのあいだの全単射を与えている:平滑化 $(\Sigma,h)$ に、写像度 $1$ の $h$ で向きを付けた $\Sigma$ の類を対応させる。
$n\ge5$ とする。
1. 前半は Rud01 Example 3.13 の全単射による。$S^n$ は標準的な滑らかな構造による平滑化 $(S^n,\mathrm{id})$ をもつので、thm-sm-hm の 2 により $\mathcal{S}_{\mathrm{DIFF}}(S^n)$ は $[S^n,\mathrm{PL}/\mathrm{O}]$ と一対一に対応し、後者は $\pi_n(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ に等しい(def-sm-plo の後の注意)。
2. $\Theta_7$ は位数 $28$ の巡回群である(Kervaire–Milnorの群 の構造定理の後の注意)。1 により平滑化の concordance 類は $28$ 個ある。$n\ge5$ では、$\Theta_n$ の元は $S^n$ と同相な向き付けられた滑らかな閉多様体の、向きを保つ微分同相類と一対一に対応する(Kervaire–Milnorの群 の系「$n\ge5$ での解釈」)ので、後者も $28$ 個である。
向きを考えない場合を数える。向き付けられた $\Sigma$、$\Sigma'$ について、向きを考えずに微分同相であることは、$\Sigma'$ が $\Sigma$ か $-\Sigma$ と向きを保って微分同相であること、すなわち $\Theta_7$ で $[\Sigma']=[\Sigma]$ または $[\Sigma']=[-\Sigma]=-[\Sigma]$ であることと同値である(逆元が向きの反転で与えられることは Kervaire–Milnorの群 の補題「逆元」)。したがって求める個数は、$\mathbb{Z}/28$ を $a\sim-a$ で割った集合の元の個数である。$a=-a$、すなわち $2a=0$ となるのは $a=0,14$ の $2$ 個で、残りの $26$ 個は $\{a,-a\}$ の $13$ 組に分かれる。よって $2+13=15$ 個である。$\square$
これは Rud01 Example 3.13(pp. 34–35)の結論と一致する。平滑化の concordance 類($28$ 個)と多様体の微分同相類($15$ 個)の違いは、平滑化が「$S^n$ との同一視 $h$」まで込めて数えることによる:写像度 $-1$ の微分同相写像 $\rho\colon S^7\to S^7$ について、$(\Sigma,h)$ と $(\Sigma,\rho\circ h)$ は、$\Sigma$ の類が $0$、$14$ でなければ concordant でない(同所)。
Kervaire–Milnor の表(KM63 p. 504)と照合すると、$S^n$ の平滑化の concordance 類の個数($=\lvert\pi_n(\mathrm{PL}/\mathrm{O})\rvert$)は次のようになる。
| $n$ | $5$ | $6$ | $7$ | $8$ | $9$ | $10$ | $11$ | $12$ | $13$ | $14$ | $15$ | $16$ | $17$ | $18$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $\lvert\Theta_n\rvert$ | $1$ | $1$ | $28$ | $2$ | $8$ | $6$ | $992$ | $1$ | $3$ | $2$ | $16256$ | $2$ | $16$ | $16$ |
$n=5,6$ で $1$ であることは thm-sm-plo-vanish と整合する。$n=7$ は $\pi_i(\mathrm{PL}/\mathrm{O})$ が消えない最初の次数で、thm-sm-lowdim の一意性が $7$ 次元で成り立たなくなることは、Milnor の異種 $7$ 次元球面(異種球面)として現れる。
$M$ を $5\le\dim M\le7$ の境界のない位相多様体とする。$M$ が滑らかな構造をもつための必要十分条件は、Kirby–Siebenmann 不変量 $\kappa(M)\in H^4(M;\mathbb{Z}/2)$ が $0$ であることである。
$M$ が滑らかな構造をもてば、Whitehead 三角形分割により PL 構造をもち(Whitehead三角形分割 の定理「Cairns–Whitehead の定理」)、PL 構造をもつ多様体では $\kappa(M)=0$ である(Kirby–Siebenmann不変量 の定理「Kirby–Siebenmann の定理」の 1)。
逆に $\kappa(M)=0$ とする。$\dim M\ge5$ なので $M$ は PL 構造をもつ(同じ定理の 2)。$\dim M\le7$ なので、thm-sm-lowdim の 1 によりこの PL 多様体は平滑化 $(V,h)$ をもつ。同相写像 $h\colon V\to M$ で $V$ の滑らかな構造を $M$ に移せばよい。$\square$
たとえば $E_8$ 多様体 $V$ とトーラスの積 $V\times T^k$($k=1,2,3$)は $\kappa\ne0$ なので滑らかな構造をもたない(Kirby–Siebenmann不変量 の命題「$E_8$ 多様体と Euclid 空間・トーラスの積」)。$8$ 次元以上では $\kappa(M)=0$ でも滑らかな構造をもつとは限らない。PL 構造をもち滑らかな構造をもたない多様体は $8$ 次元からある(Man16 §2.4 末の図、p. 7)。よく知られた例は Kervaire の $10$ 次元の多様体である(Kervaire多様体)。
4 の最後の主張は次のように確かめられる。偽トーラス $T'$ の平滑化 $(V,h)$ をとる。$V$ は $h$ を通じて $T^5$ と同相である。$V$ が $T^5$ と微分同相なら、Whitehead 三角形分割の一意性により、$V$ の PL 構造は $T^5$ の PL 構造と PL 同相で、$h$ を合成すると $T'$ と $T^5$ が PL 同相になり、$T'$ の選び方に反する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 次元が $6$ 以下(一意性) | $S^7$ | 平滑化は concordance を除いて一意 |
| 次元が $7$ 以下(存在) | Kervaire の $10$ 次元多様体 | PL 多様体は平滑化をもつ |
| 次元が $5$ 以上(thm-sm-ks の 1) | 交叉形式 $E_8\oplus E_8$ の単連結閉 $4$ 次元多様体 $N$ | $t_M$ が $B\mathrm{O}$ に持ち上がれば滑らかな構造をもつ |
| 次元が $5$ 以上(thm-sm-ks の 2) | $\mathbb{R}^4$ | $[M,\mathrm{TOP}/\mathrm{O}]$ が 1 点なら滑らかな構造は一意 |
| PL 構造をもつ(cor-sm-top の $\kappa=0$) | $V\times S^1$($V$ は $E_8$ 多様体) | $5$ 次元の位相多様体は滑らかな構造をもつ |
| concordance 類で数える | $S^7$ と同相な多様体 | 平滑化の個数は多様体の微分同相類の個数 |
1・2・4・5・6 行目は、それぞれ prop-sm-spheres、Kervaire多様体 の定理「Kervaire の定理(滑らかな構造をもたない PL 多様体)」、ex-sm-euclid の 3、cor-sm-top の後の注意、prop-sm-spheres の 2 による。3 行目の確認を開く。
交叉形式が $E_8\oplus E_8$ の単連結閉 $4$ 次元位相多様体 $N$ は存在し、Kirby–Siebenmann 不変量は $0$ で、$N$ 自身は滑らかな構造をもたないが $N\times\mathbb{R}$ は滑らかな構造をもつ(Freedmanの定理 の例「主定理から分かる多様体」の 2 と補足「安定な平滑化」)。$N\times\mathbb{R}$ の接束はベクトル束の構造をもち、その $N\times0$ への制限は $N$ の接マイクロバンドルと自明な直線束の和である(Kirby–Siebenmann不変量 の命題「κ の基本性質」の 3 の証明)。安定な分類写像は自明な束を足しても変わらないので、$t_N$ は $B\mathrm{O}$ に持ち上がる。それでも $N$ は滑らかな構造をもたないので、thm-sm-ks の 1 は $4$ 次元では成り立たない。
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