p進L関数

同義語:p-adic L-function

概要

p進L関数(p-adic L-function)とは、奇素数 $p$ と Dirichlet 指標 $\chi$ に対し、$s\in\mathbb Z_p$ の連続関数 $L_p(s,\chi)$ で、すべての整数 $n\ge1$ について $L_p(1-n,\chi)=-(1-\chi\omega^{-n}(p)p^{n-1})B_{n,\chi\omega^{-n}}/n$ をみたすものである。$\omega$ は Teichmüller 指標で、右辺は $L(1-n,\chi\omega^{-n})$ から $p$ の Euler 因子を除いた値である。久保田富雄と Leopoldt が構成したこの関数は $\chi$ ごとにただ 1 つあり、奇指標では恒等的に $0$ になる。岩澤主予想で円分体の類群と結びつく。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Dirichlet指標, 一般化Bernoulli数, Bernoulli数, p進数体, 局所体

Dirichlet $L$ 関数 $L(s,\chi)$ の負の整数での値は代数的数であり、$L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$ と一般化 Bernoulli 数で書ける(一般化Bernoulli数 の定理「$L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$」)。素数 $p$ を 1 つ固定し、これらの値を $p$ 進数とみなすと、$n$ を $p$ 進的に動かしたときに値が連続に変わるかという問いが生まれる。$p$ 進 $L$ 関数 は、この問いに肯定的に答える $p$ 進数の変数 $s\in\mathbb Z_p$ の連続関数であり、負の整数 $s=1-n$ では $L(1-n,\chi\omega^{-n})$ から $p$ における Euler 因子を取り除いた値をとる。ここで $\omega$ は Teichmüller 指標である。久保田富雄(Tomio Kubota)と H.-W. Leopoldt が 1964 年に構成したので、久保田–Leopoldt の $p$ 進 $L$ 関数 ともいう(Was82 p. vii–viii、Gre01 p. 355)。
この記事では、Teichmüller 指標と $p$ 進的な冪を準備したうえで、$p$ 進 $L$ 関数の存在・一意性・補間の公式・$s=1$ での振る舞いを証明し、奇指標では恒等的に $0$ になることを示す。また、Euler 因子を取り除くことと指標を $\omega^{-n}$ でねじることが、どちらも連続性に欠かせないことを反例で確かめる。円分体の類群との関係(岩澤主予想)と $s=1$ での値(Leopoldt予想)は、主張と所在を述べる。
以下、$p$ はとくに断らなければ奇素数とする。$\overline{\mathbb Q}$ を $\mathbb C$ の中の $\mathbb Q$ の代数閉包とし、埋め込み $\overline{\mathbb Q}\hookrightarrow\overline{\mathbb Q_p}$ を 1 つ固定する。Dirichlet 指標の値は $1$ の冪根なので、この埋め込みで $\overline{\mathbb Q_p}$ の元とみなす。指標 $\chi$ の値を $\mathbb Q_p$ に添加した体を $\mathbb Q_p(\chi)$ と書く。これは $\mathbb Q_p$ の有限次拡大なので完備である。$|\cdot|$ は $|p|=p^{-1}$ と正規化した $p$ 進絶対値を表す。

Teichmüller 指標と $p$ 進的な冪

Teichmüller 指標

局所体 の命題「Teichmüller代表元」を $\mathbb Q_p$ に当てはめると、$p$ で割り切れない整数 $a$ に対し、$\omega(a)^{p-1}=1$ かつ $\omega(a)\equiv a\pmod p$ となる $\omega(a)\in\mathbb Z_p$ がただ 1 つあり、$\omega(a)$ は $a\bmod p$ だけで決まる。

Teichmüller 指標

$p\nmid a$ なら上の $\omega(a)$、$p\mid a$ なら $\omega(a):=0$ と定めた関数 $\omega\colon\mathbb Z\to\mathbb Z_p$ を Teichmüller 指標 という。$p\nmid a$ について
$$ \langle a\rangle:=\omega(a)^{-1}a\in1+p\mathbb Z_p $$
とおく。

$\omega$ は乗法的で($\omega(a)\omega(b)$ も $(p-1)$ 乗して $1$、法 $p$ で $ab$ に合同)、周期 $p$ をもつ。還元写像は $1$ の $(p-1)$ 乗根の群から $\mathbb F_p^\times$ への同型なので、$\omega$ は $(\mathbb Z/p\mathbb Z)^\times$ から位数 $p-1$ の巡回群への同型を与える。したがって $\omega$ は固定した埋め込みを通して法 $p$ の Dirichlet 指標とみなせ、導手は $p$、位数は $p-1$ である。$\omega(-1)^2=1$ と $\omega(-1)\equiv-1\not\equiv1\pmod p$ から $\omega(-1)=-1$ で、$\omega$ は奇指標である。

指標の積

2 つの指標の積は、原始指標として読む。

指標と $\omega$ の冪の積

$\chi$ を導手 $f$ の原始 Dirichlet 指標、$k$ を整数とする。原始指標 $\psi$ で、$\gcd(a,pf)=1$ をみたすすべての整数 $a$ について $\psi(a)=\chi(a)\omega(a)^k$ となるものがただ 1 つある。これを $\chi\omega^k$ と書く。さらに

  1. $\psi$ の導手 $f_\psi$ は $\operatorname{lcm}(f,p)$ を割る。
  2. $p\nmid a$ をみたすすべての整数 $a$ について $\psi(a)=\chi(a)\omega(a)^k$ である。

$m:=\operatorname{lcm}(f,p)$ とし、$\gcd(a,m)=1$ で $\eta(a):=\chi(a)\omega(a)^k$ とおくと、$\eta$ は法 $m$ の指標である。Dirichlet指標 の定理「導手の性質と付随する原始指標」の 3 により、$\eta$ を誘導する原始指標 $\psi$ がただ 1 つあり、その導手は $m$ を割る。$\gcd(a,pf)=1$ と $\gcd(a,m)=1$ は同値なので $\psi$ は条件をみたし、1 が成り立つ。一意性を示す。原始指標 $\psi'$(導手 $f'$)も条件をみたすとし、$N:=\operatorname{lcm}(m,f')$、$\gcd(a,N)=1$ で $\eta_N(a):=\eta(a)$ とおくと、$\eta_N$ は $\psi$ からも $\psi'$ からも誘導される法 $N$ の指標である。$\eta_N$ の導手を $f_N$ とすると、$\eta_N$ は法 $f'$ で定まるので同じ定理の 2 により $f_N\mid f'$ である。$\gcd(a,f')=1$、$a\equiv1\pmod{f_N}$ なら、Dirichlet指標 の補題「単数の持ち上げ」により $b\equiv a\pmod{f'}$、$\gcd(b,N)=1$ となる $b$ があり、$\psi'(a)=\psi'(b)=\eta_N(b)=1$ である。よって $\psi'$ は法 $f_N$ で定まり、原始性から $f'=f_N$ で、$\psi'$ は $\eta_N$ に付随する原始指標である。$\psi$ についても同じなので、同じ定理の 3 の一意性から $\psi=\psi'$ である。
2 を示す。$p\nmid a$ とする。$\gcd(a,f)=1$ なら $\gcd(a,m)=1$ で、$\psi(a)=\eta(a)$ である。$\gcd(a,f)>1$ なら $\chi(a)=0$ なので、$\psi(a)=0$、すなわち $\gcd(a,f_\psi)>1$ を示せばよい。$\gcd(a,f)$ の素因数 $\ell$ をとると、$p\nmid a$ から $\ell\neq p$ である。仮に $\ell\nmid f_\psi$ とし、$M:=\operatorname{lcm}(f_\psi,p)$ とおく。$M\mid m$ である。$\gcd(b,m)=1$、$b\equiv1\pmod M$ なら、$\psi(b)=1$ と $\omega(b)=1$ から $\chi(b)=\psi(b)\omega(b)^{-k}=1$ となる。よって $\chi$ から誘導された法 $m$ の指標は法 $M$ で定まり、その導手 $f$ は同じ定理の 2 により $M$ を割る。すると $\ell\mid f\mid M=\operatorname{lcm}(f_\psi,p)$ で、$\ell\neq p$ から $\ell\mid f_\psi$ となり、仮定に反する。$\square$

$1$ に近い $p$ 進数の $p$ 進的な冪

$t\in\mathbb Z_p$ と $k\ge0$ について $\binom tk:=t(t-1)\cdots(t-k+1)/k!$ とおく。$t\mapsto\binom tk$ は連続で、整数 $t\ge0$ では整数値をとる。$\mathbb Z_{\ge0}$ は $\mathbb Z_p$ で稠密で、$\mathbb Z_p$ は閉集合なので、すべての $t\in\mathbb Z_p$ で $\binom tk\in\mathbb Z_p$、すなわち $\bigl|\binom tk\bigr|\le1$ である。

$p$ 進的な冪

$u\in1+p\mathbb Z_p$ とする。$t\in\mathbb Z_p$ について
$$ u^t:=\sum_{k=0}^{\infty}\binom tk(u-1)^k,\qquad e_u(t):=\sum_{k=1}^{\infty}\frac1k\binom{t-1}{k-1}(u-1)^k $$
とおく。

  1. 2 つの級数は $t$ について一様に収束し、$t\mapsto u^t$ と $t\mapsto e_u(t)$ は $\mathbb Z_p$ 上の連続関数である。
  2. 整数 $t\ge0$ では $u^t$ は通常の冪に等しい。
  3. すべての $t\in\mathbb Z_p$ で $u^t-1=t\,e_u(t)$ であり、$e_u(0)=\sum_{k\ge1}(-1)^{k-1}(u-1)^k/k$ である。

1:$|u-1|\le p^{-1}$ と $\bigl|\binom tk\bigr|\le1$ から、第 $k$ 項の絶対値は $p^{-k}$ 以下である。また $p^{v_p(k)}\le k$ なので $|1/k|\le k$ であり、$e_u$ の第 $k$ 項の絶対値は $kp^{-k}$ 以下である。どちらの上界も $t$ によらず $0$ に収束するので、非アルキメデス的な絶対値に関する一様収束により、連続関数の和は連続である。
2:$t\ge0$ が整数なら $k>t$ で $\binom tk=0$ であり、和は二項定理による $(1+(u-1))^t$ の展開に一致する。
3:$k\ge1$ について $\binom tk=\frac tk\binom{t-1}{k-1}$ なので、$u^t-1=\sum_{k\ge1}\binom tk(u-1)^k=t\,e_u(t)$ である。$t=0$ では $\binom{-1}{k-1}=(-1)^{k-1}$ である。$\square$

$t\neq0$ では $e_u(t)=(u^t-1)/t$ であり、3 は $e_u$ がこの商の $t=0$ への連続な延長であることを述べている。$e_u(0)$ は $p$ 進対数 $\log_pu$ の級数である。$p\nmid a$ なら $\langle a\rangle\in1+p\mathbb Z_p$ なので、$\langle a\rangle^t$ と $e_{\langle a\rangle}(t)$ が定まる。

存在と一意性

$p$ 進 $L$ 関数

$\chi$ を原始 Dirichlet 指標とする。$\chi$ が自明でなければ $\mathbb Z_p$ 上の、自明なら $\mathbb Z_p\setminus\{1\}$ 上の連続関数 $L_p(s,\chi)$ で、すべての整数 $n\ge1$ について
$$ L_p(1-n,\chi)=-\bigl(1-\chi\omega^{-n}(p)\,p^{n-1}\bigr)\frac{B_{n,\chi\omega^{-n}}}{n} $$
をみたすものを、$\chi$ の $p$ 進 $L$ 関数 という。ここで $\chi\omega^{-n}$ は lem-pl-product の原始指標である。

$\chi\omega^{-n}$ の導手が $p$ と素なら $\chi\omega^{-n}(p)$ はその値、$p$ で割り切れるなら $0$ である。右辺は、一般化Bernoulli数 の定理「$L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$」により $\bigl(1-\chi\omega^{-n}(p)p^{n-1}\bigr)L(1-n,\chi\omega^{-n})$、すなわち $L(s,\chi\omega^{-n})$ の Euler 積から $p$ の因子 $(1-\chi\omega^{-n}(p)p^{-s})^{-1}$ を除いたものの $s=1-n$ での値である。

$p$ 進 $L$ 関数の存在と一意性

$p$ を奇素数、$\chi$ を導手 $f$ の原始 Dirichlet 指標とする。

  1. $\chi$ の $p$ 進 $L$ 関数 $L_p(s,\chi)$ がただ 1 つ存在し、値は $\mathbb Q_p(\chi)$ に属する。
  2. $F$ を $p$ と $f$ の公倍数とすると、$s\neq1$ について
    $$ L_p(s,\chi)=\frac1F\cdot\frac1{s-1}\sum_{\substack{1\le a\le F\\ p\nmid a}}\chi(a)\,\langle a\rangle^{1-s}\sum_{j=0}^{\infty}\binom{1-s}{j}\Bigl(\frac Fa\Bigr)^jB_j\qquad(\ast) $$
    が成り立ち、内側の級数は収束する。
  3. $\chi$ が自明なら $\displaystyle\lim_{s\to1}(s-1)L_p(s,\chi)=1-\frac1p$ である。

$(\ast)$ は Was82 Theorem 5.11(p. 57)の式で、同書はさらに $L_p(s,\chi)$ が $|s|< p^{(p-2)/(p-1)}$ の円板上の解析関数($\chi$ が自明なら $s=1$ を除く)であることを示している。ここでは $s\in\mathbb Z_p$ に限り、連続性を直接示す。

要点:$(\ast)$ の右辺を $s\in\mathbb Z_p$ の連続関数として書き直し、$s=1-n$ を代入すると二項展開により Bernoulli 多項式が現れ、一般化Bernoulli数 の定理「導手の倍数による表示」から補間の式が出る。一意性は負の整数が $\mathbb Z_p$ で稠密なことによる。

詳しい証明を開く

段 1(評価)。$B_0=1$、$B_1=-\frac12$ で、$3$ 以上の奇数 $j$ では $B_j=0$、正の偶数 $j$ では Bernoulli数 の系「Bernoulli数の分母」により分母は平方因子をもたない。$p$ は奇素数なので、すべての $j$ で $|B_j|\le p$ である。$p\mid F$、$p\nmid a$ から $|(F/a)^j|\le p^{-j}$ であり、$|\binom{1-s}j|\le1$ なので、$(\ast)$ の内側の級数の第 $j$ 項は $p^{1-j}$ 以下で、級数は収束する。

段 2(連続な形への書き直し)。$j\ge1$ について $\binom{1-s}{j}=\frac{1-s}{j}\binom{-s}{j-1}$ なので、 $\displaystyle A_a(s):=\sum_{j=1}^{\infty}\frac1j\binom{-s}{j-1}\Bigl(\frac Fa\Bigr)^jB_j$ とおくと、$(\ast)$ の内側の級数は $1+(1-s)A_a(s)$ に等しい。$A_a$ の第 $j$ 項は $jp^{1-j}$ 以下($|1/j|\le j$)なので、$A_a$ は $\mathbb Z_p$ 上の連続関数である。よって $s\neq1$ で、$(\ast)$ の右辺を $\Phi(s)$ と書くと $\displaystyle \Phi(s)=\frac1F\sum_{a}\chi(a)\Bigl(\frac{\langle a\rangle^{1-s}}{s-1}-\langle a\rangle^{1-s}A_a(s)\Bigr)$ である(和は $1\le a\le F$、$p\nmid a$ にわたる。以下同じ)。

$\chi$ が自明でないとき、$\sum_a\chi(a)=0$ である。実際、$\sum_{a=1}^{F}\chi(a)$ は $\chi$ の $F/f$ 周期分の和なので $0$ である(Dirichlet指標 の定理「指標の個数と直交関係」)。$p\mid f$ なら $\chi(pb)=0$、$p\nmid f$ なら $f\mid F/p$ で $\sum_{b=1}^{F/p}\chi(pb)=\chi(p)\sum_{b=1}^{F/p}\chi(b)=0$ なので、$p$ の倍数を除いた和も $0$ である。したがって lem-pl-power の 3 で $t=1-s$ とすると $\displaystyle \Phi(s)=\frac1F\sum_a\chi(a)\Bigl(\frac{\langle a\rangle^{1-s}-1}{s-1}-\langle a\rangle^{1-s}A_a(s)\Bigr)=-\frac1F\sum_a\chi(a)\Bigl(e_{\langle a\rangle}(1-s)+\langle a\rangle^{1-s}A_a(s)\Bigr)$ であり、右辺は $s=1$ も含めて $\mathbb Z_p$ 上で連続である。これで $\Phi$ は $\mathbb Z_p$ 上の連続関数に延びる。$\chi$ が自明なら $(s-1)\Phi(s)=\frac1F\sum_a\langle a\rangle^{1-s}\bigl(1+(1-s)A_a(s)\bigr)$ が $\mathbb Z_p$ 上で連続で、$\Phi$ は $\mathbb Z_p\setminus\{1\}$ で連続である。値は $\mathbb Q_p(\chi)$ の元の収束和なので、$\mathbb Q_p(\chi)$ に属する。

段 3(補間)。$n\ge1$、$s=1-n$ とする。$\binom nj=0$($j>n$)なので内側の和は有限和であり、lem-pl-power の 2 により $\langle a\rangle^n$ は通常の冪である。$\psi:=\chi\omega^{-n}$ とおくと、lem-pl-product の 2 により $\chi(a)\langle a\rangle^n=\chi(a)\omega(a)^{-n}a^n=\psi(a)a^n$ である。一般化Bernoulli数 の命題「Bernoulli多項式の基本性質」の 1 により $\displaystyle a^n\sum_{j=0}^{n}\binom nj\Bigl(\frac Fa\Bigr)^jB_j=F^n\sum_{j=0}^{n}\binom njB_j\Bigl(\frac aF\Bigr)^{n-j}=F^nB_n\Bigl(\frac aF\Bigr)$ なので、$\Phi(1-n)=-\frac{F^{n-1}}n\sum_{a}\psi(a)B_n(a/F)$ である。$\psi$ の導手は $\operatorname{lcm}(f,p)$ を割るので $F$ を割る。一般化Bernoulli数 の定理「導手の倍数による表示」により $F^{n-1}\sum_{a=1}^{F}\psi(a)B_n(a/F)=B_{n,\psi}$ である。$p$ の倍数 $a=pb$($1\le b\le F/p$)の寄与は、$p\mid f_\psi$ なら $\psi(pb)=0$ で $0$ であり、$p\nmid f_\psi$ なら $f_\psi\mid F/p$ なので同じ定理を法 $F/p$ で使って $\displaystyle F^{n-1}\sum_{b=1}^{F/p}\psi(p)\psi(b)B_n\Bigl(\frac b{F/p}\Bigr)=\psi(p)p^{n-1}\Bigl(\frac Fp\Bigr)^{n-1}\sum_{b=1}^{F/p}\psi(b)B_n\Bigl(\frac b{F/p}\Bigr)=\psi(p)p^{n-1}B_{n,\psi}$ である。よって $\Phi(1-n)=-\frac1n\bigl(1-\psi(p)p^{n-1}\bigr)B_{n,\psi}$ であり、$\Phi$ は定義の補間の式をみたす。

段 4(一意性)。$\{1-n\mid n\ge1\}=\{0,-1,-2,\dots\}$ は $\mathbb Z_p$ で稠密である($x\in\mathbb Z_p$ と $k$ について、$-x$ を法 $p^k$ で代表する整数 $m\in[0,p^k)$ をとれば $|x-(-m)|\le p^{-k}$)。開集合 $\mathbb Z_p\setminus\{1\}$ の中でも稠密である。2 つの連続関数が稠密な集合で一致すれば全体で一致するので、$p$ 進 $L$ 関数はただ 1 つであり、それは $\Phi$ に等しい。とくに $(\ast)$ の右辺は $F$ の選び方によらない。

段 5($s=1$)。$\chi$ が自明なら、段 2 の連続関数 $(s-1)\Phi(s)$ の $s=1$ での値は $\frac1F\sum_a\langle a\rangle^0=\frac1F\#\{1\le a\le F\mid p\nmid a\}=1-\frac1p$ である。$\square$

段 2 のとおり、$\chi$ が自明でなければ $s=1$ でも有限の値をもち、自明なら $s=1$ に「留数」$1-1/p$ をもつ。これは $\zeta(s)$ の $s=1$ での留数 $1$ に Euler 因子 $1-p^{-1}$ を掛けたものにあたる(Was82 Theorem 5.11、p. 57)。

基本的な性質

奇指標では恒等的に $0$

$\chi$ が奇指標なら、すべての $s\in\mathbb Z_p$ で $L_p(s,\chi)=0$ である。

$n\ge1$ とし、$\psi:=\chi\omega^{-n}$ とおく。$\omega(-1)=-1$ と lem-pl-product の 2 から $\psi(-1)=\chi(-1)\omega(-1)^{-n}=(-1)^{n+1}$ である。一般化Bernoulli数 の命題「偶奇が合わないときの消滅」により、$\psi$ の偶奇は $n$ と合わないので $B_{n,\psi}=0$ である。ただし $\psi$ が自明で $n=1$ のときは例外だが、そのとき $\psi(p)=1$ で Euler 因子 $1-\psi(p)p^0$ が $0$ になる。よって $L_p(1-n,\chi)=0$ がすべての $n\ge1$ で成り立つ。奇指標は自明でないので $L_p(s,\chi)$ は $\mathbb Z_p$ 上で連続であり、prf-pl-main の段 4 と同じく稠密性から恒等的に $0$ である。$\square$

したがって意味のある $p$ 進 $L$ 関数は偶指標のものである。$n\equiv0\pmod{p-1}$ なら $\omega^{-n}$ は自明なので、
$$ L_p(1-n,\chi)=\bigl(1-\chi(p)p^{n-1}\bigr)L(1-n,\chi)\qquad(n\ge1,\ n\equiv0\pmod{p-1}) $$
である。とくに $\chi=\omega^j$($j$ は偶数)、$n\equiv j\pmod{p-1}$ なら $\chi\omega^{-n}$ は自明で、$n$ は $2$ 以上の偶数なので
$$ L_p(1-n,\omega^j)=-\bigl(1-p^{n-1}\bigr)\frac{B_n}n=\bigl(1-p^{n-1}\bigr)\zeta(1-n) $$
となる。$j\equiv0\pmod{p-1}$ のとき $\omega^j$ は自明で、$s=1$ に thm-pl-main の 3 の振る舞いをもつ。岩澤理論 の節「主予想と $p$ 進 $L$ 関数」が使う $L_p(s,\omega^j)$ はこの関数である(Gre01 p. 355)。一般に、$L_p(s,\chi)$ は $p-1$ 個の関数 $L(s,\chi\omega^{k})$($k=0,\dots,p-2$)の負の整数での値を、$n$ の法 $p-1$ の類ごとに縫い合わせたものである(Was82 p. 57 の注意)。

さらに知られていること

以下はこの記事では証明しない。

  • Kummer の合同式:$L_p(s,\chi)$ の $s-1$ についての冪級数展開の係数の評価から、Kummerの合同式 とその一般化が得られる(Was82 Theorem 5.12・Corollary 5.13・Corollary 5.14、pp. 59–61)。たとえば $n$ が奇数で $n\not\equiv-1\pmod{p-1}$ なら $B_{1,\omega^n}\equiv B_{n+1}/(n+1)\pmod p$ である(同 Corollary 5.15、p. 61)。
  • 岩澤の冪級数:$\chi\neq1$ を偶指標とし、導手が $d$ または $pd$($p\nmid d$)であるとする。このとき、$\chi$ の値を $\mathbb Z_p$ に添加した環 $\mathcal O$ 係数の冪級数 $f(T)\in\mathcal O[\![T]\!]$ があって、$L_p(s,\chi)=f\bigl((1+pd)^s-1\bigr)$ と書ける(岩澤健吉(Kenkichi Iwasawa)による。Was82 Theorem 7.10、p. 123。同書は導手に $p$ の高い冪を含む指標も含めて述べている)。この冪級数が 岩澤理論 の岩澤加群の特性多項式と一致するというのが 岩澤主予想 である。
  • $s=1$ での値:$\chi\neq1$ が偶指標なら、$L_p(1,\chi)$ は Gauss 和と $p$ 進対数 $\log_p(1-\zeta_f^a)$ の 1 次結合で表される(Was82 Theorem 5.18、p. 63)。総実なアーベル体 $K$ では、$L_p(1,\chi)$($\chi$ は $K$ に対応する自明でない指標)の積が類数と $p$ 進単数規準で表され(同 Theorem 5.24、p. 71)、$L_p(1,\chi)\neq0$ が従う(同 Corollary 5.30、p. 74)。$p$ 進単数規準が $0$ でないことは Leopoldt予想 の一つの形である。
  • $p=2$:$p$ を法とする代わりに $q=4$ を法として同じ構成ができる(Was82 Theorem 5.11、p. 57。$\omega$ は法 $4$ の指標になる)。

例

自明な指標と $p=3$

$p=3$、$\chi=1$ とする。$\omega$ の位数は $2$ なので、$n$ が偶数なら $\omega^{-n}=1$ で
$$ L_3(1-n,1)=-(1-3^{n-1})\frac{B_n}n . $$
$n=2$ では $B_2=\frac16$ から $L_3(-1,1)=-(1-3)\cdot\frac1{12}=\frac16$ である。これは $(1-3)\zeta(-1)=(-2)\cdot(-\frac1{12})$ に等しい。$n$ が奇数なら $\omega^{-n}=\omega$ で、$\omega$ は奇指標なので $B_{n,\omega}$ は $n$ が奇数のとき $0$ とは限らない。たとえば $n=1$ では $L_3(0,1)=-(1-\omega(3))B_{1,\omega}=-B_{1,\omega}$ で、一般化Bernoulli数 の系「小さな番号の値」の 2 により $B_{1,\omega}=\frac13(\omega(1)+2\omega(2))=\frac13(1-2)=-\frac13$ なので、$L_3(0,1)=\frac13$ である。

留数

$\chi=1$ のとき、thm-pl-main の 3 により $(s-1)L_p(s,1)\to1-\frac1p$($s\to1$)である。複素の $\zeta(s)$ では $(s-1)\zeta(s)\to1$ であり、$p$ 進の側では Euler 因子 $1-p^{-1}$ がちょうど掛かる。

反例

thm-pl-main の補間の式に現れる 2 つの修正、すなわち Euler 因子 $1-\chi\omega^{-n}(p)p^{n-1}$ を掛けることと、指標を $\omega^{-n}$ でねじることは、どちらも外せない。

外す条件反例成り立たなくなること
Euler 因子を掛ける$p=3$、偶数 $n$ について $n\mapsto\zeta(1-n)$$n=2$ で $3$ 進的に連続になること
指標を $\omega^{-n}$ でねじる$p=3$、$n\ge2$ について $n\mapsto-(1-3^{n-1})B_n/n$$n=2$ で $3$ 進的に連続になること
反例の確かめ

どちらの行も ex-pl-trivial-3 の $L_3(s,1)$ の連続性を使う。
1 行目:$n_k:=2+2\cdot3^k$ とおくと、$n_k$ は偶数で、$3$ 進的に $n_k\to2$ である。$L_3(s,1)$ は $s=-1$ で連続なので $L_3(1-n_k,1)\to L_3(-1,1)=\frac16$ である。一方 $L_3(1-n_k,1)=(1-3^{n_k-1})\zeta(1-n_k)$ で、$|3^{n_k-1}|\to0$ なので $\zeta(1-n_k)\to\frac16$ となる。しかし $\zeta(-1)=-\frac1{12}\neq\frac16$ なので、$n\mapsto\zeta(1-n)$(偶数 $n$)は $n=2$ で連続でない。
2 行目:$m_k:=2+3^k$ は $3$ 以上の奇数で $B_{m_k}=0$ なので、関数の値は $0$ である。一方 1 行目の $n_k$ での値は $L_3(1-n_k,1)\to\frac16$ である。$m_k\to2$、$n_k\to2$ なのに極限が異なるので、この関数は $n=2$ で連続でない。奇数 $n$ では $\omega^{-n}=\omega$ に替えた値 $-(1-\omega(3)3^{n-1})B_{n,\omega}/n$ を使えば、thm-pl-main により連続な関数が得られる。

関連項目

参考文献

[1]
Lawrence C. Washington, Introduction to Cyclotomic Fields, Springer-Verlag, Graduate Texts in Mathematics 83, 1982, 序文(p. vii–viii)、Chapter 5(§5.1 の $\langle a\rangle^s$、p. 52。Theorem 5.11 と注意、p. 57、証明 pp. 57–58。Theorem 5.12・Corollary 5.13、pp. 59–60。Corollary 5.14・5.15、p. 61。Theorem 5.18、p. 63。Theorem 5.24、p. 71。Corollary 5.30、p. 74)、Theorem 7.10(p. 123)

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