Kővári–Sós–Turánの定理(Kővári–Sós–Turán theorem)とは、整数 $s,t\ge1$ について、完全二部グラフ $K_{s,t}$ を含まない $n$ 頂点の単純グラフの辺の本数は $\frac12(t-1)^{1/s}n^{2-1/s}+\frac12(s-1)n$ 以下であり、特に $O(n^{2-1/s})$ であるという極値グラフ理論の定理である。0 と 1 の行列で全 1 の $s\times t$ 部分行列を避ける Zarankiewicz 問題の上界として得られ、行と列の組を 2 通りに数えて凸関数の Jensen の不等式で評価する。$s=2$ では有限体上の射影平面の極グラフが $(\frac12-o(1))n^{3/2}$ 本の辺をもち、指数 $3/2$ は最良である。
$n$ 頂点のグラフが、$s$ 個の頂点と $t$ 個の頂点のあいだの辺をすべてもつ形、すなわち完全二部グラフ $K_{s,t}$ を部分グラフとして含まないとき、辺の本数はどこまで多くなれるか。辺の本数は一般には $\binom n2$ まであるが、$K_{s,t}$ を禁止すると $n^{2-1/s}$ の定数倍で抑えられる。これが T. Kővári・V. T. Sós・P. Turán が 1954 年に示した Kővári–Sós–Turán の定理 である(Zha23 定理 1.4.2、p. 22)。もとは K. Zarankiewicz が 1951 年に問うた、$0$ と $1$ を並べた行列が $1$ だけからなる部分行列を含まないときの $1$ の個数の最大値の問題(Zarankiewicz問題)への答えとして得られた(同書 p. 22)。
この記事では Zarankiewicz 問題を定義し、「$s$ 個の行と、それらがすべて $1$ である列」の組を 2 通りに数え、凸関数についての Jensen の不等式で評価する証明を述べる。$s=2$ では、有限体の上の射影平面から作る極グラフ(polarity graph)が $\bigl(\frac12-o(1)\bigr)n^{3/2}$ 本の辺をもつことを構成とともに示し、指数 $3/2$ が最良であることを確かめる。
この記事では、グラフはループも平行辺ももたない有限の無向の単純グラフとする。$e(G)$ は $G$ の辺の本数、$d(v)$ は頂点 $v$ の次数(グラフ)である。$s,t\ge1$ を整数とし、$K_{s,t}$ を部の大きさが $s,t$ の完全二部グラフとする。グラフ $G$ のある部分グラフが $K_{s,t}$ とグラフ同型であるとき、$G$ は $K_{s,t}$ を 含む という。これは、互いに交わらない頂点の集合 $S,T$ で $\lvert S\rvert=s$、$\lvert T\rvert=t$、$S$ の各頂点と $T$ の各頂点がすべて隣接するものがあることと同じである。
$m\times n$ 行列 $(a_{ij})$ に、行の集合と列の集合を部とし $a_{ij}=1$ のとき行 $i$ と列 $j$ を結ぶ二部グラフを対応させると、$1$ の個数は辺の本数であり、$s\times t$ の全 $1$ 部分行列は「行の側の $s$ 頂点と列の側の $t$ 頂点からなる $K_{s,t}$」にあたる。行と列を入れ替えると $z(m,n;s,t)=z(n,m;t,s)$ であるが、$s$ と $t$ だけを入れ替えることは一般にはできない(ex-kst-orientation)。$\operatorname{ex}(n,K_{s,t})$ や $z(m,n;s,t)$ を求める問題を Zarankiewicz 問題 という。列が行に比べて十分多いときの $z(m,n;s,t)$ の正確な値、$s=t=2$ での上界とその等号が成り立つ行列、$n\le8$ での $z(n,n;2,2)$ の値は Zarankiewicz問題 で扱う。
$z(1,3;1,2)=1$、$z(1,3;2,1)=3$ である。$1\times3$ 行列が $1\times2$ の全 $1$ 部分行列をもたないなら $1$ は 1 個以下である。一方、行が 1 つしかないので $2$ 個の行は選べず、$(1,1,1)$ は $2\times1$ の全 $1$ 部分行列をもたない。
証明では、二項係数 $\binom ds$ を $d$ の凸関数に延ばして Jensenの不等式 を使う。
整数 $s\ge1$ に対し、実数 $x$ の関数を
$$
f_s(x):=\begin{cases}\dfrac{x(x-1)\cdots(x-s+1)}{s!}&(x\ge s-1),\\[2mm]0&(x< s-1)\end{cases}
$$
で定める。$f_s$ は $\mathbb R$ 上の単調非減少な凸関数であり、整数 $d\ge0$ に対して $f_s(d)=\binom ds$、$x\ge s-1$ に対して $f_s(x)\ge(x-s+1)^s/s!$ である。
$g(x):=x(x-1)\cdots(x-s+1)$ とおく。$x\ge s-1$ では $s$ 個の因数 $x-j$($0\le j\le s-1$)はどれも $0$ 以上なので、積の微分により
$$
g'(x)=\sum_{j}\prod_{k\ne j}(x-k)\ge0,\qquad g''(x)=\sum_{j\ne k}\ \prod_{l\ne j,k}(x-l)\ge0
$$
であり、$f_s$ は $[s-1,\infty)$ で非減少かつ凸である($s=1$ なら $f_1(x)=x$ である)。$(-\infty,s-1]$ では $f_s$ は定数 $0$ である($f_s(s-1)=0$)。$f_s$ は連続で、点 $s-1$ での右微分係数 $g'(s-1)/s!\ge0$ が左微分係数 $0$ 以上なので、$f_s$ の右微分係数は $\mathbb R$ 全体で非減少であり、$f_s$ は $\mathbb R$ 上で非減少かつ凸である。整数 $d$ については、$d\le s-2$ なら $f_s(d)=0=\binom ds$、$d\ge s-1$ なら定義から $f_s(d)=\binom ds$ である。最後の不等式は、$x\ge s-1$ のとき各因数が $x-j\ge x-s+1\ge0$ をみたすことによる。$\square$
多項式 $x(x-1)\cdots(x-s+1)/s!$ は、$s\ge3$ では $\mathbb R$ 全体で凸ではない。たとえば $s=3$ では 2 階導関数が $x-1$ で、$x<1$ で負になる。そのため、平均次数が $s-1$ より小さい場合も含めて Jensen の不等式を当てるには、$x< s-1$ で $0$ とした $f_s$ を使う。
$s,t,m,n\ge1$ を整数とする。
行の組から数える.$S$ を決めると、条件をみたす列は $t-1$ 個以下である($t$ 個あれば、$S$ とそれらの列が全 $1$ 部分行列をなす)。よって
$$
X\le(t-1)\binom ms\le\frac{(t-1)m^s}{s!}
$$
である。
列から数える.列 $j$ を決めると、$S$ はその列で $1$ である $d_j$ 個の行から $s$ 個を選ぶので、$X=\sum_{j=1}^n\binom{d_j}s=\sum_jf_s(d_j)$ である。lem-kst-convex により $f_s$ は凸なので、Jensenの不等式($n$ 個の列の上の一様な確率測度に当てる)により $\sum_jf_s(d_j)\ge n\,f_s(Z/n)$ である。
合わせる.$Z\le(s-1)n$ なら主張は明らかなので、$Z/n>s-1$ とする。lem-kst-convex の最後の不等式とあわせて
$$
\frac n{s!}\Bigl(\frac Zn-s+1\Bigr)^s\le n\,f_s\Bigl(\frac Zn\Bigr)\le X\le\frac{(t-1)m^s}{s!}
$$
であり、$s$ 乗根をとると $Z/n-s+1\le(t-1)^{1/s}mn^{-1/s}$、すなわち $Z\le(t-1)^{1/s}mn^{1-1/s}+(s-1)n$ である。
2. $G$ の頂点を $1,\dots,n$ と番号づけ、隣接行列 $A$($i$ と $j$ が隣接するとき $a_{ij}=1$、そうでないとき $a_{ij}=0$。特に $a_{ii}=0$)を考える。$A$ の $1$ の個数は $2e(G)$ である。行の集合 $S$($s$ 個)と列の集合 $T$($t$ 個)の交わりの成分がすべて $1$ なら、$a_{ii}=0$ なので $S\cap T=\emptyset$ であり、$S$ と $T$ は $G$ の中で $K_{s,t}$ をなす。よって $A$ は $s\times t$ の全 $1$ 部分行列をもたず、1 から
$$
2e(G)\le z(n,n;s,t)\le(t-1)^{1/s}n^{2-1/s}+(s-1)n
$$
である。$\square$
$K_{s,t}$ と $K_{t,s}$ は同型なので、グラフについては $s\le t$ として使うと指数 $2-1/s$ が小さくなる。二部グラフはどれも完全二部グラフに含まれるので、次が従う。
$H$ を辺をもつ二部グラフとし、二部分割の部の大きさを $s\le t$ とする。$H$ と同型な部分グラフをもたない $n$ 頂点のグラフの辺の本数の最大値を $\operatorname{ex}(n,H)$ と書く。このとき $\operatorname{ex}(n,H)\le\frac12(t-1)^{1/s}n^{2-1/s}+\frac12(s-1)n$ であり、$\operatorname{ex}(n,H)/\binom n2\to0$($n\to\infty$)である。
$H$ の辺はすべて 2 つの部を結ぶので、$H$ はその 2 つの部を部とする $K_{s,t}$ の部分グラフである。したがって $K_{s,t}$ を含むグラフは $H$ も含み、対偶をとると、$H$ を含まないグラフは $K_{s,t}$ も含まない。よって $\operatorname{ex}(n,H)\le\operatorname{ex}(n,K_{s,t})$ であり、あとは thm-kst-main の 2 と、$n^{2-1/s}/\binom n2\to0$ による。$\square$
$s=t=2$ のとき、thm-kst-main の 2 は $\operatorname{ex}(n,K_{2,2})\le\frac12n^{3/2}+\frac12n$ を与える。この上界の主要項は、有限体の上の射影平面から作るグラフで達成される。以下、射影平面 の記事の記号に従い、可換体 $K$ の上の射影平面 $\mathbb P^2(K)$ の点は $K^3$ の 1 次元部分空間、直線は 2 次元部分空間であり、$0$ でないベクトル $x$ が張る点を $[x]$、$0$ でない $a\in K^3$ について $L(a):=\{[x]\mid a_1x_1+a_2x_2+a_3x_3=0\}$ を直線とする。
$q$ を素数の冪とし、$\mathbb F_q$ を $q$ 元の有限体とする。$x,y\in\mathbb F_q^3$ に対し $x\cdot y:=x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3$ とおく。$\mathbb P^2(\mathbb F_q)$ の点の全体を頂点集合とし、相異なる 2 点 $[x],[y]$ を $x\cdot y=0$ のときに結んだグラフを $\mathrm{ER}_q$ と書き、極グラフ(polarity graph)という。
$x\cdot y=0$ かどうかは $x,y$ をスカラー倍しても変わらないので、隣接関係は点だけで決まる。$[y]$ が $[x]$ と隣接することは、$[y]\ne[x]$ かつ $[y]$ が直線 $L(x)$ の上にあることと同じである。点 $[x]$ に直線 $L(x)$ を対応させる写像は射影幾何で極(polarity)と呼ばれる対応で、名前はこれによる(Zha23 p. 41)。
$x\ne0$ なら $y\mapsto x\cdot y$ は $\mathbb F_q^3$ 上の $0$ でない線形汎関数なので、その核は 2 次元部分空間、すなわち直線 $L(x)$ である。
$t\ge2$ とする。$n\to\infty$ のとき
$$
\Bigl(\frac12-o(1)\Bigr)n^{3/2}\le\operatorname{ex}(n,K_{2,2})\le\operatorname{ex}(n,K_{2,t})\le\Bigl(\frac{\sqrt{t-1}}2+o(1)\Bigr)n^{3/2}
$$
である。特に $\operatorname{ex}(n,K_{2,2})=\bigl(\frac12+o(1)\bigr)n^{3/2}$ であり、$s=2$ では thm-kst-main の指数 $3/2$ は最良である。さらに、$n\ge9$ なら $\operatorname{ex}(n,K_{2,t})>n^{3/2}/128$ である。
$K_{2,2}$ は $K_{2,t}$ の部分グラフなので、$K_{2,2}$ を含まないグラフは $K_{2,t}$ も含まず(prf-kst-bipartite と同じ対偶)、真ん中の不等式が成り立つ。右の不等式は thm-kst-main の 2 を $s=2$ で使った $\operatorname{ex}(n,K_{2,t})\le\frac12\sqrt{t-1}\,n^{3/2}+\frac12n$ による。
左の不等式を示す。素数 $p$ が $p\le\sqrt n-1$ をみたせば、$p^2+p+1\le(\sqrt n-1)^2+(\sqrt n-1)+1=n-\sqrt n+1\le n$ である。$\mathrm{ER}_p$ に孤立した頂点を $n-(p^2+p+1)$ 個加えた $n$ 頂点のグラフは $K_{2,2}$ を含まない($K_{2,2}$ の頂点はどれも次数 $2$ なので、孤立した頂点は使えない)。prop-kst-polarity により
$$
\operatorname{ex}(n,K_{2,2})\ge\frac12p(p^2+p+1)>\frac{p^3}2
$$
である。$\varepsilon>0$ を任意にとる。素数定理 の系「短い区間の素数」により、$n$ が十分大きければ $\frac{\sqrt n-1}{1+\varepsilon}< p\le\sqrt n-1$ となる素数 $p$ があるので、
$$
\frac{\operatorname{ex}(n,K_{2,2})}{n^{3/2}}>\frac1{2(1+\varepsilon)^3}\Bigl(1-\frac1{\sqrt n}\Bigr)^3
$$
である。右辺は $n\to\infty$ で $\frac1{2(1+\varepsilon)^3}$ に近づき、$\varepsilon$ は任意なので、左の不等式が従う。
最後の主張は、素数定理の代わりに Bertrandの仮説 で $p$ を選べば得られる。
$n\ge9$ なら $\sqrt n-1\ge2$ なので $k:=\lfloor(\sqrt n-1)/2\rfloor\ge1$ である。Bertrand の仮説により $k< p\le2k$ となる素数 $p$ があり、$p\le2k\le\sqrt n-1$、$p\ge k+1>(\sqrt n-1)/2\ge\sqrt n/4$($\sqrt n\ge2$ による)である。上と同じく $\operatorname{ex}(n,K_{2,t})\ge\operatorname{ex}(n,K_{2,2})>p^3/2>(\sqrt n/4)^3/2=n^{3/2}/128$ である。$\square$
二部グラフの形の問題 $z(n,n;2,2)$ では、射影平面の点と直線の接続行列が上界にちょうど一致する。
$s\ge3$ では、辺をランダムに選んでから $K_{s,t}$ を壊す確率的方法で、指数が $2-1/s$ に近い下界が得られる。
$s,t\ge2$ を整数とし、$\alpha:=\dfrac{s+t-2}{st-1}$ とおく。$n\ge2$ なら
$$
\operatorname{ex}(n,K_{s,t})\ge\frac1{16}n^{2-\alpha}
$$
である。ここで $\alpha>1/s$ であり、$s$ を固定して $t\to\infty$ とすると $\alpha\to1/s$ である。
要点:各辺を確率 $p=\frac12n^{-\alpha}$ で独立に選んだランダムグラフ(Erdős–Rényiのランダムグラフ の $G(n,p)$)では、$K_{s,t}$ の個数の期待値が辺の本数の期待値の半分以下になるので、$K_{s,t}$ ごとに辺を 1 本除いても多くの辺が残る。
$0< \alpha\le1$ なので $0< p\le\frac12$ である。$n$ 頂点の各組を確率 $p$ で独立に辺としたランダムグラフ $G$ を考える。辺の本数の期待値は $p\binom n2\ge pn^2/4$ である($n\ge2$)。互いに交わらない頂点の集合の組 $(S,T)$($\lvert S\rvert=s$、$\lvert T\rvert=t$)で $S$ と $T$ のあいだの $st$ 組がすべて辺であるものの個数を $Y$ とすると、組 $(S,T)$ は $n^{s+t}$ 個以下で、それぞれが条件をみたす確率は $p^{st}$ なので、期待値の線形性により $\mathbb E[Y]\le n^{s+t}p^{st}$ である。$s+t-st\alpha=2-\alpha$(両辺に $st-1$ を掛けると、どちらも $2st-s-t$)なので $n^{s+t}p^{st}=2^{-st}n^{2-\alpha}\le\frac1{16}n^{2-\alpha}$($st\ge4$)であり、$pn^2/4=\frac18n^{2-\alpha}$ とあわせて $\mathbb E[e(G)-Y]\ge\frac1{16}n^{2-\alpha}$ である。よって $e(G)-Y\ge\frac1{16}n^{2-\alpha}$ となる $G$ がある(確率的方法 の命題「存在の原理」)。条件をみたす組 $(S,T)$ ごとに、$S$ と $T$ のあいだの辺を 1 本ずつ除くと、除く辺は $Y$ 本以下で、残ったグラフは $K_{s,t}$ を含まず、辺を $\frac1{16}n^{2-\alpha}$ 本以上もつ。
最後に、$\alpha>1/s$ は $s(s+t-2)>st-1$、すなわち $(s-1)^2>0$ と同じであり、$t\to\infty$ で $\alpha=\frac{s+t-2}{st-1}\to\frac1s$ である。$\square$
指数 $2-\alpha$ は $2-1/s$ にはならない。thm-kst-main の指数が最良かどうかは一般には分かっておらず、$\operatorname{ex}(n,K_{s,t})\ge cn^{2-1/s}$($s\le t$)となる定数 $c>0$ があるという予想は、$K_{2,t}$(thm-kst-c4)と $K_{3,t}$、および $t>(s-1)!$ の場合に正しいことが知られており、最初の未解決の場合は $K_{4,4}$ である(Zha23 予想 1.4.4、p. 24)。$K_{3,3}$ では、有限体の上の 3 次元空間の「球面」を使う Brown の構成で $\operatorname{ex}(n,K_{3,3})\ge\bigl(\frac12-o(1)\bigr)n^{5/3}$ となる(同書 定理 1.10.5、p. 41)。$t>(s-1)!$ の場合は有限体のノルム写像を使う構成による(同書 定理 1.10.7・系 1.10.8、p. 42)。この記事ではこれらを証明しない。
| $(s,t)$ | 上界(thm-kst-main) | 下界 | 指数 |
|---|---|---|---|
| $(1,t)$ | $\frac12(t-1)n$ | $(t-1)$-正則グラフ($(t-1)n$ が偶数のとき)で $\frac12(t-1)n$ | $1$(一致) |
| $(2,2)$ | $\frac12n^{3/2}+\frac12n$ | 極グラフ(thm-kst-c4)で $\bigl(\frac12-o(1)\bigr)n^{3/2}$ | $3/2$(定数まで一致) |
| $(2,t)$ | $\frac12\sqrt{t-1}\,n^{3/2}+\frac12n$ | $\operatorname{ex}(n,K_{2,2})$ 以上 | $3/2$ |
| $(s,t)$、$s,t\ge2$ | $O(n^{2-1/s})$ | $\frac1{16}n^{2-\alpha}$(prop-kst-random) | 一般には未解決 |
次の表の各行は、この記事の主張の仮定を 1 つだけ外したときに結論が成り立たなくなる例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-kst-main の 2 の「平行辺をもたない」 | 2 頂点を $N$ 本の平行辺で結んだ多重グラフ | $K_{2,2}$ を含まないが、辺の本数 $N$ はいくらでも大きい |
| def-kst-polarity で使う形 $x\cdot y$ が非退化であること | $x_1y_1+x_2y_2$ が $0$ のときに結んだグラフ | $K_{2,2}$ を含まない(prop-kst-polarity の 2) |
| prop-kst-incidence の 2 の「$n=q^2+q+1$」 | $n=2$ | 1 の上界の等号 |
| lem-kst-convex の「$x< s-1$ で $0$ とする」 | $s=3$ の多項式 $x(x-1)(x-2)/6$ | $\mathbb R$ 上で凸 |
1 行目:$K_{2,2}$ は 4 個の頂点をもつので、2 頂点の多重グラフには現れない。
2 行目:$x\cdot y$ の代わりに $B(x,y):=x_1y_1+x_2y_2$ を使う。$B$ は退化していて、$x=(0,0,1)$ なら $B(x,y)=0$ がすべての $y$ で成り立つので、点 $[0:0:1]$ はほかのすべての点と隣接する。点 $[1:0:0]$ の隣接頂点は $y_1=0$ の点 $[0:a:b]$ である。したがって $[0:0:1]$ と $[1:0:0]$ の共通の隣接頂点は $[0:1:b]$($b\in\mathbb F_q$)の $q\ge2$ 個あり、$K_{2,2}$ ができる。$x\mapsto B(x,{-})$ が単射でないために、prf-kst-polarity の 2 の「2 つの線形汎関数が 1 次独立である」という段が破れる。
3 行目:$2\times2$ 行列が $2\times2$ の全 $1$ 部分行列をもたないことは、成分のどれかが $0$ であることなので $z(2,2;2,2)=3$ であり、上界 $\frac22(1+\sqrt5)>3$ に届かない。$4n-3$ が平方数でなければ上界は整数ですらない。
4 行目:rem-kst-convex-warning のとおり、2 階導関数 $x-1$ が $x<1$ で負である。
最初の表の $(1,t)$ の下界は、各頂点の次数が $t-1$ の $n$ 頂点のグラフで、$(t-1)n$ が偶数で $t\le n$ なら存在する。頂点を円周上に等間隔に並べ、$t-1$ が偶数なら各頂点を両隣から $(t-1)/2$ 個ずつの頂点と結び、$t-1$ が奇数なら(このとき $n$ は偶数)両隣から $(t-2)/2$ 個ずつと真向かいの頂点と結べばよい。$K_{1,t}$ を含まないことは次数が $t-1$ 以下であることと同じなので(ex-kst-small)、この場合は上界が正確な値である。
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