Galois表現のL関数

同義語:Galois表現の L 関数ガロア表現のL関数L-function of a Galois representation

概要

Galois表現のL関数(L-function of a Galois representation)とは、代数体の Galois 表現 $V$ について、素イデアル $\mathfrak{p}$ ごとに惰性群の不変部分での幾何的 Frobenius 元の固有多項式 $P_{\mathfrak{p}}(T)$ をとった積 $\prod_{\mathfrak{p}}P_{\mathfrak{p}}(N\mathfrak{p}^{-s})^{-1}$ である。$\ell$ 進表現では、$\ell$ によらない有理係数の局所因子をもつ整合系について定める。固有値の絶対値が $N\mathfrak{p}^{w/2}$ 以下なら $\operatorname{Re}s>1+w/2$ で絶対収束する。多様体の Hasse–Weil ゼータ関数はコホモロジーの L 関数の交代積である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Galois表現, Artin L関数, 分解群と惰性群, Tate捻り

Artin L関数 は、Galois 拡大の Galois 群の複素表現について、各素イデアルで Frobenius 元の固有多項式を作り、その逆数を掛け合わせた関数である。数論に現れる Galois表現 の多くは、$\ell$ 進円分指標、楕円曲線の Tate加群、多様体の ℓ進コホモロジー のように、像が無限の $\ell$ 進表現である。このような表現にも、惰性群で動かない部分の上の Frobenius 元の固有多項式から Euler 因子が作れる。これが Galois 表現の L 関数(L-function of a Galois representation)である。
$\ell$ 進表現の Euler 因子は $\mathbb{Q}_\ell$ 係数の多項式なので、複素関数にするには係数が有理数であることが要る。また、$\ell$ の上の素イデアルでは同じ作り方が使えない。そこで、素数 $\ell$ を取り替えても Euler 因子が同じ有理係数の多項式になる表現の族(整合系)を考える。この記事では、Euler 因子のよい定義、直和・Tate 捻り・完全列についての性質、絶対収束を証明し、円分指標・Artin 表現・楕円曲線・Kummer 理論から作る表現の $L$ 関数を求める。最後に Hasse–Weilゼータ関数 との関係と関数等式の予想を述べる。

分解群・惰性群・Frobenius 元

この記事を通して、$K$ は代数体、$\bar K\subset\mathbb{C}$ はその代数閉包、$G_K:=\operatorname{Gal}(\bar K/K)$ は Krull 位相を入れた絶対Galois群、$\mathcal{O}$ は $\bar K$ に含まれる代数的整数全体の環とする。$\mathcal{O}_K$ の $0$ でない素イデアル $\mathfrak{p}$ について、$\kappa(\mathfrak{p}):=\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}$、$N\mathfrak{p}:=\#\kappa(\mathfrak{p})$ とおく。$\mathcal{O}$ の素イデアル $\mathfrak{P}$ で $\mathfrak{P}\cap\mathcal{O}_K=\mathfrak{p}$ となるものがある(上昇定理 の定理「整拡大の上昇定理」)。これを 1 つとり、
$$ D_{\mathfrak{P}}:=\{\sigma\in G_K\mid\sigma(\mathfrak{P})=\mathfrak{P}\},\qquad I_{\mathfrak{P}}:=\{\sigma\in D_{\mathfrak{P}}\mid\sigma(x)\equiv x\ (\mathrm{mod}\ \mathfrak{P})\ \ (x\in\mathcal{O})\} $$
を $\mathfrak{P}$ の分解群と惰性群という(惰性群は Galois表現 の節「不分岐性と Frobenius 元」のものと同じ)。$K$ の有限次 Galois 拡大 $F\subset\bar K$ について $\mathfrak{P}_F:=\mathfrak{P}\cap\mathcal{O}_F$ と書く。

Frobenius 剰余類
  1. $I_{\mathfrak{P}}$ は $D_{\mathfrak{P}}$ の正規部分群である。
  2. すべての $x\in\mathcal{O}$ について $\varphi(x)\equiv x^{N\mathfrak{p}}\pmod{\mathfrak{P}}$ をみたす $\varphi\in D_{\mathfrak{P}}$ が存在し、そのような $\varphi$ の全体は $I_{\mathfrak{P}}$ の剰余類 $\varphi I_{\mathfrak{P}}$ である。
  3. $\mathfrak{p}$ の上の別の素イデアル $\mathfrak{P}'$ について、$\mathfrak{P}'=g(\mathfrak{P})$ となる $g\in G_K$ がある。このとき $D_{\mathfrak{P}'}=gD_{\mathfrak{P}}g^{-1}$、$I_{\mathfrak{P}'}=gI_{\mathfrak{P}}g^{-1}$ で、$g\varphi g^{-1}$ は $\mathfrak{P}'$ について 2 の条件をみたす。

2 の $\varphi$ を(算術的)Frobenius 元、その逆元を幾何的 Frobenius 元という。

要点:有限次 Galois 拡大 $F$ ごとに Frobenius 元の持ち上げの集合は空でない閉集合で、$F$ を大きくすると小さくなるので、$G_K$ のコンパクト性から共通部分が空でない。2 の剰余類の主張は定義から直接確かめる。

詳しい証明を開く

1:$\sigma\in D_{\mathfrak{P}}$、$\tau\in I_{\mathfrak{P}}$、$x\in\mathcal{O}$ とし、$y:=\sigma^{-1}(x)$ とおくと、$\sigma\tau\sigma^{-1}(x)-x=\sigma(\tau(y)-y)\in\sigma(\mathfrak{P})=\mathfrak{P}$ である。$\sigma\tau\sigma^{-1}\in D_{\mathfrak{P}}$ は明らかである。

2:$K$ の有限次 Galois 拡大 $F$ について、$S_F$ を、$\sigma(\mathfrak{P}_F)=\mathfrak{P}_F$ かつすべての $x\in\mathcal{O}_F$ で $\sigma(x)\equiv x^{N\mathfrak{p}}\pmod{\mathfrak{P}_F}$ となる $\sigma\in G_K$ の全体とする。$N\mathfrak{p}$ 乗写像は有限体の拡大 $\kappa(\mathfrak{P}_F)/\kappa(\mathfrak{p})$ の Galois 群の元なので、分解群と惰性群 の定理「剰余体の Galois 群への全射」によりそれに写る $\operatorname{Gal}(F/K)$ の元があり、制限 $G_K\to\operatorname{Gal}(F/K)$ は全射なので(無限次Galois理論 の定理「無限次Galois理論の基本定理」)、$S_F$ は空でない。$S_F$ は開部分群 $G_F$ の剰余類の和なので閉集合である。$F\subset F'$ なら $\mathfrak{P}_{F'}\cap\mathcal{O}_F=\mathfrak{P}_F$ から $S_{F'}\subset S_F$ であり、有限個の $S_{F_i}$ の共通部分は合成体の $S$ を含むので空でない。$G_K$ はコンパクトなので、すべての $S_F$ の共通部分に元 $\varphi$ がある。$\mathcal{O}$ の各元はある $\mathcal{O}_F$ に入り、$\mathfrak{P}=\bigcup_F\mathfrak{P}_F$ なので、$\varphi\in D_{\mathfrak{P}}$ で 2 の合同式をみたす。$\varphi'$ も条件をみたせば $\varphi'(x)-\varphi(x)\in\mathfrak{P}$ なので、$\varphi^{-1}$ を施して $\varphi^{-1}\varphi'\in I_{\mathfrak{P}}$ である。逆に $\tau\in I_{\mathfrak{P}}$ なら $\varphi(\tau(x))-\varphi(x)\in\varphi(\mathfrak{P})=\mathfrak{P}$ なので、$\varphi\tau$ も条件をみたす。

3:$T_F:=\{g\in G_K\mid g(\mathfrak{P}_F)=\mathfrak{P}'_F\}$ は、分解群と惰性群 の定理「Galois 群は素イデアルに推移的に作用する」と制限の全射性から空でなく、2 と同じ理由で閉集合の減少族をなすので、共通部分の元 $g$ がある。$g(\mathfrak{P})=\bigcup_Fg(\mathfrak{P}_F)=\mathfrak{P}'$ である。共役の式は定義から直接確かめられ、$g\varphi g^{-1}(x)=g(\varphi(g^{-1}x))\equiv g((g^{-1}x)^{N\mathfrak{p}})=x^{N\mathfrak{p}}\pmod{g(\mathfrak{P})}$ である。$\square$

局所因子と L 関数

$\ell$ を素数、$E$ を $\mathbb{Q}_\ell$ の有限次拡大体または $\mathbb{C}$ とし、$V$ を $E$ 上の有限次元ベクトル空間、$\rho\colon G_K\to\mathrm{GL}(V)$ を連続な準同型(Galois表現)とする。$E$ が $\ell$ 進のときは $\mathfrak{p}$ が $\ell$ の上にないと仮定する。lem-lgr-frobenius の 1・2 により、不変部分 $V^{I_{\mathfrak{P}}}$ は $D_{\mathfrak{P}}$ で保たれ、そこへの Frobenius 元の作用は選び方によらない。

局所因子

$\pi_{\mathfrak{P}}:=\rho(\varphi)^{-1}|_{V^{I_{\mathfrak{P}}}}$ を幾何的 Frobenius 元の作用とし、
$$ P_{\mathfrak{p}}(V,T):=\det\bigl(1-T\,\pi_{\mathfrak{P}}\ \big|\ V^{I_{\mathfrak{P}}}\bigr)\in E[T] $$
を $V$ の $\mathfrak{p}$ での局所因子(の多項式)という。$P_{\mathfrak{p}}(V,T)=\prod_j(1-\lambda_jT)$ と分解したときの $\lambda_j$ を、$\mathfrak{p}$ での(幾何的)Frobenius の固有値という。

局所因子のよい定義

$P_{\mathfrak{p}}(V,T)$ は $\mathfrak{P}$ と $\varphi$ の選び方によらず、$V$ を同値な表現に替えても変わらない。$P_{\mathfrak{p}}(V,0)=1$、$\deg P_{\mathfrak{p}}(V,T)=\dim V^{I_{\mathfrak{P}}}\le\dim V$ である。$\rho$ が $\mathfrak{p}$ で不分岐なら $V^{I_{\mathfrak{P}}}=V$ で、$P_{\mathfrak{p}}(V,T)=\det(1-T\rho(\varphi)^{-1})$ である。

要点:素イデアルを $g\in G_K$ で取り替えると惰性群と Frobenius 元が $g$ で共役になり、$\rho(g)$ が 2 つの不変部分空間の間の作用を移す。

詳しい証明を開く

$\varphi$ によらないことは上で述べた。$\mathfrak{P}'=g(\mathfrak{P})$ とすると、lem-lgr-frobenius の 3 により $\rho(g)$ は $V^{I_{\mathfrak{P}}}$ を $V^{I_{\mathfrak{P}'}}=V^{gI_{\mathfrak{P}}g^{-1}}$ に同型に写し、$\rho(g\varphi g^{-1})^{-1}\rho(g)=\rho(g)\rho(\varphi)^{-1}$ なので、2 つの行列式は等しい。同値な表現への同型も不変部分空間と Frobenius 元の作用を移す。$\pi_{\mathfrak{P}}$ は可逆なので、$\det(1-T\pi_{\mathfrak{P}})$ は定数項 $1$、次数 $\dim V^{I_{\mathfrak{P}}}$ の多項式である。最後の主張は Galois表現 の命題「惰性群による言い換え」による。$\square$

不分岐な $\mathfrak{p}$ では、Galois表現 の命題「Frobenius 元の固有多項式」の $\det(X-\rho(\varphi))$ の根の逆数が $\lambda_j$ である。

Galois 表現の L 関数
  1. $\Lambda$ を 2 つ以上の素数からなる集合とし、各 $\ell\in\Lambda$ について $\mathbb{Q}_\ell$ 上の $\ell$ 進表現 $V_\ell$ が与えられているとする。すべての $\mathfrak{p}$ と、$\mathfrak{p}$ の下にない $\ell,\ell'\in\Lambda$ について $P_{\mathfrak{p}}(V_\ell,T)=P_{\mathfrak{p}}(V_{\ell'},T)\in\mathbb{Q}[T]$ が成り立つとき、族 $V_\bullet=(V_\ell)_{\ell\in\Lambda}$ を整合系(compatible system)といい、この共通の多項式を $P_{\mathfrak{p}}(V_\bullet,T)$ と書く。
    $$ L(V_\bullet,s):=\prod_{\mathfrak{p}}P_{\mathfrak{p}}\bigl(V_\bullet,N\mathfrak{p}^{-s}\bigr)^{-1} $$
    を $V_\bullet$ の L 関数という($\mathfrak{p}$ は $\mathcal{O}_K$ の $0$ でない素イデアル全体を動く)。
  2. $E=\mathbb{C}$ のときは、$L(V,s):=\prod_{\mathfrak{p}}P_{\mathfrak{p}}(V,N\mathfrak{p}^{-s})^{-1}$ と定める。
  3. 有限集合 $S$ の外の $\mathfrak{p}$ でだけ条件が成り立つときは、$S$ の外の積を $L_S$ と書く。

$\Lambda$ は 2 つ以上の素数を含むので、$P_{\mathfrak{p}}(V_\bullet,T)$ はすべての $\mathfrak{p}$ で定まる。文献では、各 $V_\ell$ が有限個の素イデアルの外で不分岐であることと、その外の $\mathfrak{p}$ での局所因子の一致を課して整合系と呼ぶことが多い。この記事の定義は不分岐性を課さず、分岐する素イデアルも含めたすべての $\mathfrak{p}$ で一致を課す。文献の形の $L$ 関数が 3 の $L_S$ にあたる。

基本的な性質

円分指標の不分岐性

$\ell$ 進円分指標 $\chi_\ell\colon G_K\to\mathbb{Z}_\ell^\times$(Galois表現 の例「$\ell$ 進円分指標」)と、$\ell$ の上にない $\mathfrak{p}$ について、$\chi_\ell(I_{\mathfrak{P}})=1$ であり、Frobenius 元 $\varphi$ について $\chi_\ell(\varphi)=N\mathfrak{p}$ である。

要点:$\ell$ の上にない素イデアルを法とすると $1$ の $\ell^m$ 乗根は互いに合同でないので、合同式 $\sigma(\zeta)\equiv\zeta$、$\varphi(\zeta)\equiv\zeta^{N\mathfrak{p}}$ がそのまま等式になる。

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$m\ge1$ とし、$\zeta$ を $1$ の原始 $\ell^m$ 乗根とする。$1\ne\xi\in\mu_{\ell^m}$ なら $1-\xi\notin\mathfrak{P}$ である。実際、$\prod_{1\ne\xi'\in\mu_{\ell^m}}(1-\xi')$ は $(X^{\ell^m}-1)/(X-1)$ の $X=1$ での値 $\ell^m$ に等しく、$1-\xi\in\mathfrak{P}$ なら $\ell^m\in\mathfrak{P}\cap\mathbb{Z}$ となって、$\mathfrak{p}$ が $\ell$ の上にないことに反する。よって $\mu_{\ell^m}$ から $(\mathcal{O}/\mathfrak{P})^\times$ への還元は単射である。$\sigma\in D_{\mathfrak{P}}$ について $\sigma(\zeta)=\zeta^{a}$ とすると、$\sigma\in I_{\mathfrak{P}}$ なら $\zeta^a\equiv\zeta$ なので $a\equiv1\pmod{\ell^m}$、$\sigma=\varphi$ なら $\zeta^a\equiv\zeta^{N\mathfrak{p}}$ なので $a\equiv N\mathfrak{p}\pmod{\ell^m}$ である。すべての $m$ で成り立つので主張が従う。$\square$

$n\in\mathbb{Z}$ について、$V(n):=V\otimes_{\mathbb{Q}_\ell}\mathbb{Q}_\ell(n)$ は $\sigma$ を $\rho(\sigma)\chi_\ell(\sigma)^n$ で作用させた表現である(Tate捻り)。

直和・捻り・完全列

$V,W$ を $\ell$ 進表現、$\mathfrak{p}$ を $\ell$ の上にない素イデアルとする。

  1. $P_{\mathfrak{p}}(V\oplus W,T)=P_{\mathfrak{p}}(V,T)\,P_{\mathfrak{p}}(W,T)$。
  2. $P_{\mathfrak{p}}(V(n),T)=P_{\mathfrak{p}}(V,N\mathfrak{p}^{-n}T)$。とくに整合系について $L(V_\bullet(n),s)=L(V_\bullet,s+n)$。
  3. $0\to V'\to V\to V''\to0$ を表現の完全列とする。$P_{\mathfrak{p}}(V,T)$ は $P_{\mathfrak{p}}(V',T)P_{\mathfrak{p}}(V'',T)$ を $E[T]$ の中で割り切り、$V^{I_{\mathfrak{P}}}\to V''^{I_{\mathfrak{P}}}$ が全射なら(たとえば $V$ が $\mathfrak{p}$ で不分岐なら)等号が成り立つ。

要点:1 は不変部分の直和分解、2 は $\chi_\ell$ が惰性群の上で $1$ で Frobenius 元を $N\mathfrak{p}$ に写すこと、3 は $V'^{I}=V'\cap V^{I}$ と、行列式が安定な部分空間と商に分かれることによる。

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1:$(V\oplus W)^{I}=V^{I}\oplus W^{I}$($I:=I_{\mathfrak{P}}$)で、Frobenius 元はこの分解を保つ。

2:lem-lgr-cyclotomic により $\chi_\ell$ は $I$ の上で $1$ なので、$V(n)^{I}=V^{I}\otimes\mathbb{Q}_\ell(n)$ であり、$\varphi^{-1}$ はそこに $N\mathfrak{p}^{-n}\pi_{\mathfrak{P}}$ として作用する。よって $\det(1-TN\mathfrak{p}^{-n}\pi_{\mathfrak{P}})=P_{\mathfrak{p}}(V,N\mathfrak{p}^{-n}T)$ である。$T=N\mathfrak{p}^{-s}$ を代入すれば $N\mathfrak{p}^{-(s+n)}$ になる。

3:$V'^{I}=V'\cap V^{I}$ なので、$V^{I}/V'^{I}$ は $V''^{I}$ の $D_{\mathfrak{P}}$ で安定な部分空間に単射に写る。行列式は $D_{\mathfrak{P}}$ で安定な部分空間と商に分かれるので、$P_{\mathfrak{p}}(V,T)=P_{\mathfrak{p}}(V',T)\cdot\det(1-T\pi\mid V^{I}/V'^{I})$ であり、右の因子は $P_{\mathfrak{p}}(V'',T)$ を割り切る。$V^{I}\to V''^{I}$ が全射ならその因子は $P_{\mathfrak{p}}(V'',T)$ に等しい。不分岐なら $V^{I}=V$、$V''^{I}=V''$ である。$\square$

3 の等号は、分岐する素イデアルでは一般に成り立たない(ex-lgr-kummer)。

絶対収束

$w$ を実数とする。整合系 $V_\bullet$ が重さ $w$ 以下であるとは、すべての $\mathfrak{p}$ について $P_{\mathfrak{p}}(V_\bullet,T)$ の根の逆数 $\lambda$ が、どの複素数への埋め込みでも $\lvert\lambda\rvert\le N\mathfrak{p}^{w/2}$ をみたすことをいう。不分岐な $\mathfrak{p}$ で等号が成り立つとき、重さ $w$ で純という。この規約では $\mathbb{Q}_\ell(1)$ は重さ $-2$、多様体の $m$ 次コホモロジーは重さ $m$ である(節「多様体のコホモロジー」)。

絶対収束

$n\ge1$、$w\in\mathbb{R}$ とし、各 $\mathfrak{p}$ について $P_{\mathfrak{p}}(T)=\prod_{j=1}^{n_{\mathfrak{p}}}(1-\lambda_{\mathfrak{p},j}T)\in\mathbb{C}[T]$、$n_{\mathfrak{p}}\le n$、$\lvert\lambda_{\mathfrak{p},j}\rvert\le N\mathfrak{p}^{w/2}$ とする。このとき $\prod_{\mathfrak{p}}P_{\mathfrak{p}}(N\mathfrak{p}^{-s})^{-1}$ は $\operatorname{Re}s>1+w/2$ で絶対収束し、そこで正則で $0$ にならない。とくに重さ $w$ 以下の整合系 $V_\bullet$ の $L(V_\bullet,s)$ は $\operatorname{Re}s>1+w/2$ で正則で $0$ にならない。

要点:$\lvert\lambda N\mathfrak{p}^{-s}\rvert\le N\mathfrak{p}^{w/2-\sigma}< \frac12$ から対数を $2nN\mathfrak{p}^{w/2-\sigma}$ で抑え、素イデアルの和を素数の和と比べる。

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$\sigma:=\operatorname{Re}s>1+w/2$ とすると $\lvert\lambda_{\mathfrak{p},j}N\mathfrak{p}^{-s}\rvert\le N\mathfrak{p}^{w/2-\sigma}< N\mathfrak{p}^{-1}\le\frac12$ である。$\log P_{\mathfrak{p}}(N\mathfrak{p}^{-s})^{-1}:=\sum_j\sum_{k\ge1}(\lambda_{\mathfrak{p},j}N\mathfrak{p}^{-s})^k/k$ とおくと、その絶対値は $2n\,N\mathfrak{p}^{w/2-\sigma}$ 以下である。素数 $p$ の上の $K$ の素イデアルは $[K:\mathbb{Q}]$ 個以下でノルムは $p$ 以上なので(代数体における素イデアルの分解 の定理「基本等式」)、$\sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{w/2-\sigma}\le[K:\mathbb{Q}]\sum_pp^{w/2-\sigma}< \infty$ である($w/2-\sigma<-1$)。$\operatorname{Re}s\ge1+w/2+\delta$($\delta>0$)で一様に収束するので、和は正則関数の一様極限として正則であり(Riemannゼータ関数 の補題「正則関数の一様極限」)、その $\exp$ である積は正則で $0$ にならない。整合系では $P_{\mathfrak{p}}(V_\bullet,T)$ の次数は $\dim V_\ell$ 以下である(prop-lgr-well-defined)。$\square$

例

Tate 捻りと Dedekind ゼータ関数

$n\in\mathbb{Z}$ とし、すべての素数 $\ell$ について $V_\ell:=\mathbb{Q}_\ell(n)$ とする。lem-lgr-cyclotomic により、$\ell$ の上にない $\mathfrak{p}$ で $V_\ell$ は不分岐で、幾何的 Frobenius は $N\mathfrak{p}^{-n}$ 倍で作用するから、$P_{\mathfrak{p}}(V_\ell,T)=1-N\mathfrak{p}^{-n}T$ は $\ell$ によらない。よって $(\mathbb{Q}_\ell(n))_\ell$ は重さ $-2n$ で純な整合系で、
$$ L\bigl((\mathbb{Q}_\ell(n))_\ell,s\bigr)=\prod_{\mathfrak{p}}\frac{1}{1-N\mathfrak{p}^{-n-s}}=\zeta_K(s+n) $$
である(Dedekindゼータ関数 の定理「収束と Euler 積」)。$n=0$ では自明な表現の $L$ 関数が $\zeta_K(s)$ になる。

Artin L 関数との関係

$E=\mathbb{C}$ とする。$\rho$ はある有限次 Galois 拡大 $L/K$ の Galois 群 $G:=\operatorname{Gal}(L/K)$ を経由し(Galois表現 の定理「複素係数の表現の有限性」)、
$$ L(V,s)=L(L/K,V^\vee,s) $$
が成り立つ。右辺は双対表現 $V^\vee$ の Artin L関数 である。

要点:有限群の惰性群の不変部分の双対は双対表現の不変部分であり、Frobenius 元の作用は転置の逆に移るので、逆行列の固有多項式が双対表現の Artin の局所因子になる。

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$\mathfrak{P}_L:=\mathfrak{P}\cap\mathcal{O}_L$ とすると、$I_{\mathfrak{P}}$ の $G$ への像は $\mathfrak{P}_L$ の惰性群 $I$ に等しく(Galois表現 の命題「惰性群による言い換え」の証明の第 2 段)、$\varphi$ の像は $\mathfrak{P}_L$ の Frobenius 元である。よって $V^{I_{\mathfrak{P}}}=V^{I}$ で、$\pi_{\mathfrak{P}}=\rho(\varphi)^{-1}$ である。$e:=\lvert I\rvert^{-1}\sum_{\tau\in I}\rho(\tau)$ は $V^{I}$ への射影で、$I$ が $D_{\mathfrak{P}_L}$ の正規部分群なので $D_{\mathfrak{P}_L}$ の作用と可換である。したがって $V=V^{I}\oplus\ker e$ は $D_{\mathfrak{P}_L}$ で安定な分解で、$(V^\vee)^{I}$ は $\ker e$ を零にする線形形式の空間、すなわち $(V^{I})^\vee$ と同一視される。$V^\vee$ への $\varphi$ の作用は $\rho(\varphi)$ の転置の逆なので、$A:=\rho(\varphi)|_{V^I}$ とすると、Artin L関数 の定義「Artin L関数」の $V^\vee$ の局所因子の逆数は $\det(1-T\,{}^tA^{-1})=\det(1-TA^{-1})=P_{\mathfrak{p}}(V,T)$ である。$\square$

これは Artin L関数 の注意「幾何的 Frobenius と規約」の述べる関係で、$V$ の指標を $\chi$ とすると、$V^\vee$ の指標は $\bar\chi$ なので、$L(V,s)$ は指標 $\bar\chi$ の Artin L 関数である。

楕円曲線の 1 次コホモロジー

$E$ を $\mathbb{Q}$ 上の導手 $N$ の楕円曲線とし、$V_\ell(E):=T_\ell(E)\otimes\mathbb{Q}_\ell$(Galois表現 の例「楕円曲線の $\ell$ 進表現」)、$H^1_\ell:=V_\ell(E)^\vee$ とおく。$p\nmid\ell N$ では $V_\ell(E)$ は不分岐で、算術的 Frobenius $\varphi$ の固有多項式は $X^2-a_pX+p$ である(Galois表現 の注意「楕円曲線の表現の不分岐性」)。$\varphi^{-1}$ の $H^1_\ell$ への作用は $\rho(\varphi)$ の転置なので
$$ P_p(H^1_\ell,T)=\det\bigl(1-T\,{}^t\rho(\varphi)\bigr)=1-a_pT+pT^2 $$
で、楕円曲線のL関数 の $L_p(T)$ に等しい。悪い素数 $p\mid N$($p\ne\ell$)では、$P_p(H^1_\ell,T)$ は乗法的還元で $1-a_pT$($a_p=\pm1$)、加法的還元で $1$ で、$\ell$ によらない(Ser70 §2.4, pp. 19-08–19-09。この記事では証明しない)。よって $(H^1_\ell)_\ell$ は整合系で $L((H^1_\ell)_\ell,s)=L(E,s)$ であり、Hasse の定理により重さ $1$ で純なので、thm-lgr-convergence から $\operatorname{Re}s>3/2$ で絶対収束する。

Kummer 理論から作る表現

$q$ を素数とし、$\ell\ne q$ を素数とする。$1$ の原始 $\ell^m$ 乗根 $\zeta_m:=e^{2\pi i/\ell^m}$ と $q$ の正の実数の $\ell^m$ 乗根 $\alpha_m:=q^{1/\ell^m}$ をとると、$\zeta_{m+1}^\ell=\zeta_m$、$\alpha_{m+1}^\ell=\alpha_m$ である。$\sigma\in G_{\mathbb{Q}}$ について $\sigma(\alpha_m)=\zeta_m^{c_m(\sigma)}\alpha_m$ となる $c_m(\sigma)\in\mathbb{Z}/\ell^m\mathbb{Z}$ が定まる(Kummer理論)。$\ell$ 乗して比べると $c_{m+1}\equiv c_m\pmod{\ell^m}$ なので $c(\sigma):=(c_m(\sigma))_m\in\mathbb{Z}_\ell$ が定まり、$\sigma(\tau(\alpha_m))$ の計算から $c(\sigma\tau)=c(\sigma)+\chi_\ell(\sigma)c(\tau)$ である。したがって
$$ \rho(\sigma):=\begin{pmatrix}\chi_\ell(\sigma)&c(\sigma)\\0&1\end{pmatrix}\in\mathrm{GL}_2(\mathbb{Z}_\ell) $$
は準同型で、法 $\ell^m$ での核は $G_{\mathbb{Q}(\zeta_m,\alpha_m)}$ なので連続である(Galois表現 の補題「連続性の判定」)。これを $V(q)_\ell$ と書く。$e_1$ の張る直線が部分表現 $\mathbb{Q}_\ell(1)$ で、完全列 $0\to\mathbb{Q}_\ell(1)\to V(q)_\ell\to\mathbb{Q}_\ell\to0$ がある。局所因子は次のとおりである。

  • $p\ne q$、$p\ne\ell$:$V(q)_\ell$ は $p$ で不分岐で、$P_p=(1-p^{-1}T)(1-T)$。
  • $p=q$:$V(q)_\ell^{I}=\mathbb{Q}_\ell e_1$ で、$P_q=1-q^{-1}T$。
    したがって $(V(q)_\ell)_{\ell\ne q}$ は重さ $0$ 以下の整合系で、
    $$ L\bigl(V(q)_\bullet,s\bigr)=\zeta(s+1)\,\zeta(s)\,(1-q^{-s}) $$
    である。一方 $\mathbb{Q}_\ell(1)\oplus\mathbb{Q}_\ell$ の $L$ 関数は $\zeta(s+1)\zeta(s)$(ex-lgr-tate-twist)で、$q$ での因子だけが異なる。
    局所因子の確かめを開く

    $p\ne q,\ell$ とし、$\sigma\in I_{\mathfrak{P}}$ とする。lem-lgr-cyclotomic により $\chi_\ell(\sigma)=1$ である。$\alpha_m^{\ell^m}=q\notin\mathfrak{P}$ なので $\alpha_m\notin\mathfrak{P}$ であり、$\sigma(\alpha_m)-\alpha_m=(\zeta_m^{c_m(\sigma)}-1)\alpha_m\in\mathfrak{P}$ から $\zeta_m^{c_m(\sigma)}-1\in\mathfrak{P}$ である。lem-lgr-cyclotomic の証明により $\zeta_m^{c_m(\sigma)}=1$、すなわち $c_m(\sigma)=0$ である。よって $\rho(I_{\mathfrak{P}})=1$ で不分岐であり、Frobenius 元 $\varphi$ について $\rho(\varphi)=\begin{pmatrix}p&c(\varphi)\\0&1\end{pmatrix}$ だから、$\rho(\varphi)^{-1}$ の固有値は $p^{-1},1$ である。

    $p=q$ とする。$X^\ell-q$ は $q$ について Eisenstein 多項式なので、$q$ は $\mathbb{Q}(\alpha_1)$ で完全分岐する(Eisenstein多項式 の系「代数体での分岐と指数」)。$\mathbb{Q}(\alpha_1)$ は $\ker\rho$ の固定体に含まれる($\rho(\sigma)=1$ なら $c_1(\sigma)=0$)ので、$\rho$ は $q$ で不分岐でなく、Galois表現 の命題「惰性群による言い換え」により $\rho(I_{\mathfrak{P}})\ne1$ である。$\chi_\ell$ は $I_{\mathfrak{P}}$ で $1$ なので、$\sigma\in I_{\mathfrak{P}}$ について $\rho(\sigma)=\begin{pmatrix}1&c(\sigma)\\0&1\end{pmatrix}$ で、$c(\sigma)\ne0$ となる $\sigma$ がある。$\rho(\sigma)(xe_1+ye_2)=(x+c(\sigma)y)e_1+ye_2$ なので、不変部分は $y=0$、すなわち $\mathbb{Q}_\ell e_1$ である。$\varphi$ は $e_1$ に $\chi_\ell(\varphi)=q$ 倍で作用するので、$\pi_{\mathfrak{P}}$ は $q^{-1}$ 倍である。

    各 $\mathfrak{p}$ で局所因子は $\ell$ によらず、根の逆数は $1$ か $p^{-1}$ なので重さ $0$ 以下である。積は $p\ne q$ で $(1-p^{-1-s})^{-1}(1-p^{-s})^{-1}$、$p=q$ で $(1-q^{-1-s})^{-1}$ なので、主張の式になる。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
$\mathfrak{p}$ が $\ell$ の上にない(def-lgr-local-factor)$K=\mathbb{Q}$、$V=\mathbb{Q}_\ell(1)$、$\mathfrak{p}=(\ell)$局所因子が $\ell$ によらないこと
$V$ が $\mathfrak{p}$ で不分岐(prop-lgr-basic の 3 の等号)ex-lgr-kummer の $V(q)_\ell$ と $p=q$完全列で局所因子が積になること
$\operatorname{Re}s>1+w/2$(thm-lgr-convergence)$(\mathbb{Q}_\ell(-k))_\ell$($k\ge0$)、$s=1+k$$L$ 関数がそこで正則であること
反例の確認
表の各行の確認を開く

1. $\chi_\ell$ は $\ell$ で不分岐でない(Galois表現 の例「円分指標の Frobenius 元」)ので、Galois表現 の命題「惰性群による言い換え」により $\chi_\ell(I_{\mathfrak{P}})\ne1$ であり、1 次元の $V$ では $V^{I_{\mathfrak{P}}}=0$、定義の式は $1$ になる。一方 $\ell'\ne\ell$ の $\mathbb{Q}_{\ell'}(1)$ の $\ell$ での局所因子は $1-\ell^{-1}T$ である(ex-lgr-tate-twist)。$\mathfrak{p}$ の下の素数と同じ $\ell$ の表現を使うと、$\zeta(s+1)$ の $\ell$ での因子が失われる。

2. ex-lgr-kummer の確かめにより、$q$ での局所因子は $V(q)_\ell$ で $1-q^{-1}T$、部分 $\mathbb{Q}_\ell(1)$ と商 $\mathbb{Q}_\ell$ で $1-q^{-1}T$ と $1-T$ である。$V^{I}=\mathbb{Q}_\ell e_1$ は商の不変部分 $\mathbb{Q}_\ell$ に全射しない。$V(q)_\ell$ は $q$ で不分岐でない。

3. ex-lgr-tate-twist により $L$ 関数は $\zeta(s-k)$ で、重さ $2k$ で純である。$\zeta(s-k)$ は $s=1+k=1+w/2$ に極をもつ(Riemannゼータ関数)。$\operatorname{Re}s>1+w/2$ の半平面は、それ以上左へ広げられない。

多様体のコホモロジー

$X$ を $K$ 上の滑らかな射影多様体とし、$H^m_\ell:=H^m(X_{\bar K},\mathbb{Q}_\ell)$ に $G_K$ を構造の輸送で作用させた $\ell$ 進表現を考える(Ser70 §2.3, p. 19-07、ℓ進コホモロジー)。$X$ は有限集合 $S$ の外で良い還元をもつとする(Hasse–Weilゼータ関数 の節「数体上の多様体」)。

良い還元での局所因子

$\mathfrak{p}\notin S$ で、$\mathfrak{p}$ が $\ell$ の上にないとする。$H^m_\ell$ は $\mathfrak{p}$ で不分岐で、$P_{\mathfrak{p}}(H^m_\ell,T)$ は還元 $\mathcal{X}_{\mathfrak{p}}$ の多項式 $P_{m,\mathfrak{p}}(T)$(Hasse–Weilゼータ関数 の定理「Deligne の定理」)に等しい。とくに係数は $\ell$ によらない整数で、$H^m_\ell$ は $\mathfrak{p}$ で重さ $m$ で純である。

定理の所在

この記事では証明しない。良い還元では $\ell$ 進コホモロジーが還元のコホモロジーと同一視され、惰性群は自明に作用し、局所因子は還元の Frobenius の固有多項式になる(Ser70 §2.3 の注意 3, p. 19-08)。係数と固有値は Deligne の定理による(Del74 Théorème (1.6), p. 276)。

したがって $(H^m_\ell)_\ell$ は $S$ の外で整合系であり、$L_S(H^m,s)$ は thm-lgr-convergence により $\operatorname{Re}s>1+m/2$ で正則で $0$ にならない。Hasse–Weilゼータ関数 の定理「収束と極」の 2 により、Hasse–Weil ゼータ関数は
$$ \zeta_S(X,s)=\prod_{m=0}^{2\dim X}L_S(H^m,s)^{(-1)^m} $$
と分解する。たとえば $\mathbb{P}^1_K$ では $H^0_\ell=\mathbb{Q}_\ell$、$H^1_\ell=0$、$H^2_\ell\cong\mathbb{Q}_\ell(-1)$(Tate捻り の例「射影直線の2次コホモロジー」)なので、ex-lgr-tate-twist から $\zeta_{K,S}(s)\zeta_{K,S}(s-1)$ が得られ、Hasse–Weilゼータ関数 の系「基本的な性質」の 4 と合う。
悪い還元の素イデアルでも $P_{\mathfrak{p}}(H^m_\ell,T)$ は定義される。それについて次が予想されている。

Serre の予想 C5–C7

$\mathfrak{p}$ を $\ell$ の上にない素イデアルとする。

  1. $P_{\mathfrak{p}}(H^m_\ell,T)$ の係数は整数で、$\ell$ によらない。
  2. その根の逆数 $\lambda$ は、$0\le m(\lambda)\le m$ をみたす整数 $m(\lambda)$ について $\lvert\lambda\rvert=N\mathfrak{p}^{m(\lambda)/2}$ をみたす。
  3. $H^m_\ell$ が $\mathfrak{p}$ で不分岐なら、すべての $m(\lambda)$ は $m$ に等しい。

これは Ser70 §2.3(p. 19-07)の予想 $C_5$・$C_6$・$C_7$ で、アーベル多様体の $H^1$ では正しい(同 p. 19-09。ex-lgr-elliptic)。1 と 2 が成り立てば $(H^m_\ell)_\ell$ は重さ $m$ 以下の整合系で、$L(H^m,s)$ は $\operatorname{Re}s>1+m/2$ で正則である。

導手と関数等式の予想

$\ell$ 進表現 $V$ と $\ell$ の上にない $\mathfrak{p}$ について、$\varepsilon(\mathfrak{p}):=\dim V-\dim V^{I_{\mathfrak{P}}}$ とおく。惰性群の野性的な部分の作用から定まる非負整数 $\delta(\mathfrak{p})$(Swan 導手。野性分岐とSwan導手)を加えた $f(\mathfrak{p}):=\varepsilon(\mathfrak{p})+\delta(\mathfrak{p})$ を導手の指数という(Ser70 §2.1 の (8)・(10)・(11), pp. 19-05–19-06)。像が有限のときは Artin導手 の指数と一致する(同 p. 19-06 の注意 3)。不分岐な $\mathfrak{p}$ では $f(\mathfrak{p})=0$ である。
$H^m_\ell$ の導手を $\mathfrak{f}:=\sum_{\mathfrak{p}}f(\mathfrak{p})\,\mathfrak{p}$、$B_m$ を $m$ 次 Betti 数として $A:=N(\mathfrak{f})\,\lvert d_K\rvert^{B_m}$ とおく(同 (26)・(27)・(29), p. 19-12)。$\Gamma_{\mathbb{C}}(s):=(2\pi)^{-s}\Gamma(s)$、$\Gamma_{\mathbb{R}}(s):=\pi^{-s/2}\Gamma(s/2)$ とし、無限素点 $v$ の Γ 因子を $X$ の複素点の $H^m$ の Hodge 数 $h^{p,q}$ から定める。複素素点では
$$ \Gamma_v(s)=\prod_{p,q}\Gamma_{\mathbb{C}}\bigl(s-\min(p,q)\bigr)^{h^{p,q}} $$
で、実素点では複素共役で $h^{n,n}$ を 2 つに分けた式を使う(同 §3 の (22)・(25), pp. 19-09–19-11)。

関数等式

conj-lgr-serre の 1 と、導手の指数 $f(\mathfrak{p})$ が $\ell$ によらないこと(Ser70 §2.3 の予想 $C_3$、p. 19-07)を仮定し、$L(H^m,s)$ をすべての素イデアルの因子の積とする。
$$ \xi(s):=A^{s/2}\,L(H^m,s)\prod_{v\mid\infty}\Gamma_v(s) $$
は $\mathbb{C}$ 全体の有理型関数に延び、ある $w\in\{\pm1\}$ について $\xi(s)=w\,\xi(m+1-s)$ をみたす。

これは Ser70 §4 の予想 $C_9$(p. 19-13)である。$X=\operatorname{Spec}K$、$m=0$ では、$A=\lvert d_K\rvert$、Γ 因子は実素点で $\Gamma_{\mathbb{R}}(s)$、複素素点で $\Gamma_{\mathbb{C}}(s)$ で、Hecke による Dedekind ゼータ関数の関数等式になる(Dedekindゼータ関数 の注意「全平面への延長と関数等式」。$\Gamma_{\mathbb{C}}$ の定数倍の違いは両辺に共通)。$\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線、$m=1$ では、$h^{1,0}=h^{0,1}=1$ から $\Gamma_\infty=\Gamma_{\mathbb{C}}$、$A=N$ で、$\xi(s)=\Lambda(E,s)$ となり、予想は 楕円曲線のL関数 の定理「関数等式」(モジュラー性定理による)である(Ser70 pp. 19-13–19-14)。

関連項目

参考文献

[1]
Jean-Pierre Serre, Facteurs locaux des fonctions zêta des variétés algébriques (définitions et conjectures), Séminaire Delange–Pisot–Poitou, Théorie des nombres 11 (1969–1970), no. 2, exposé 19, pp. 19-01–19-15, 1970, (4)(収束)p. 19-03、§2.1 の (8)・(10)・(11)(導手の指数)pp. 19-05–19-06、§2.2 (13)(幾何的 Frobenius と局所因子)pp. 19-06–19-07、§2.3 の予想 C5–C7 と注意 3 pp. 19-07–19-08、§2.4(楕円曲線)pp. 19-08–19-09、§3(Γ 因子)pp. 19-09–19-11、§4(導手・予想 C9・例)pp. 19-11–19-14
[2]
Pierre Deligne, La conjecture de Weil. I, Publications Mathématiques de l'IHÉS 43, pp. 273–307, 1974, Théorème (1.6), p. 276

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