Penrose図式

同義語:Penrose 図式Penrose diagram共形図式conformal diagram

概要

Penrose図式(Penrose diagram)とは、時空を時間的向き付けを保つ共形埋め込みによって Einstein 静止宇宙 $\mathbb R\times S^{n-1}$ などの中の有限な領域へ写し、その像と共形境界を、各点が球面を表す $(T,R)$ 平面の図として描いたものである。計量の正の関数倍は因果関係と光的測地線を保つので、図から因果構造を読み取れ、動径方向に進む光は 45° の線分に描かれる。Minkowski 時空は三角形 $\lvert T\rvert+R<\pi$ に写り、時間的測地線は $i^\pm$、光的測地線は光的無限遠 $\mathcal I^\pm$、空間的測地線は $i^0$ に行き着く。de Sitter 時空は正方形に写り、静止した観測者には信号の届かない事象の地平が現れる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 時空, 共形変換, Minkowski空間

時空の因果構造(どの点からどの点へ信号が届くか)は、計量を正の関数倍しても変わらない(共形変換)。そこで、無限に広がる時空を、因果構造を保ったまま有限の大きさの領域へ縮めて描くことができる。これが Penrose の共形コンパクト化であり、とくに球対称な時空を、各点が球面を表す平面の図として描いたものを Penrose 図式という。動径方向に進む光はつねに 45° の直線になり、時間的・光的・空間的な無限遠は図の縁の点や線分として目に見える形をとる。Minkowski 時空は Einstein 静止宇宙の中の三角形(2 次元では菱形)に、de Sitter 時空は正方形に描かれる。
以下、時空・因果曲線・$I^\pm$・$J^\pm$・$\le$ は 時空 の記事の定義を使う。$S^{n-1}\subset\mathbb R^n$ を単位球面、$g_{S^{n-1}}$ をその標準計量とし、北極 $N:=(1,0,\dots,0)$ からの球面上の距離を $R(\psi):=\arccos\psi^0\in[0,\pi]$($\psi=(\psi^0,\psi')\in S^{n-1}$)と書く。南極は $-N$ である。

定義

共形埋め込みと共形境界

$(M,g)$ と $(\tilde M,\tilde g)$ を同じ次元の時空とする。滑らかな写像 $\Phi\colon M\to\tilde M$ が共形埋め込みであるとは、$\Phi$ が $M$ から $\tilde M$ の開集合 $\Phi(M)$ への微分同相で、$M$ 上の滑らかな正値関数 $\Omega$ について
$$ \Phi^*\tilde g=\Omega^2g $$
を満たし、時間的向き付けを保つことをいう。このとき $\partial\Phi(M):=\overline{\Phi(M)}\setminus\Phi(M)$(閉包は $\tilde M$ でとる)を $\Phi$ による $M$ の共形境界(conformal boundary)といい、$\overline{\Phi(M)}$ がコンパクトなとき $\Phi$ を共形コンパクト化という。

共形埋め込みは、$M$ から $(\Phi(M),\tilde g)$ への共形変換(共形変換 の定義で $e^{2\rho}=\Omega^2$)である。考え方は SG15 §7.1(p. 27)、Fri04 §2.2(p. 13)による。

図式から因果関係を読む

$\Phi\colon M\to\tilde M$ を共形埋め込みとし、$W:=\Phi(M)$ を $\tilde g$ の制限で時空とみる。$p,q\in M$ について、$p\le q$ であることと $\Phi(p)\le\Phi(q)$($W$ の中の因果曲線による)であることは同値であり、$\ll$ についても同じである。また $M$ の光的測地線の像は、$W$ の光的測地線の径数を替えたものである。

$\Phi\colon(M,g)\to(W,\tilde g)$ は時間的向き付けを保つ共形変換なので、共形変換 の命題「因果的類別と直交性の保存」の 2 により、$\Phi(J^\pm(p))=J^\pm_W(\Phi(p))$、$\Phi(I^\pm(p))=I^\pm_W(\Phi(p))$ である。光的測地線については、$\Phi$ で $g$ を $W$ の上の計量 $(\Phi^{-1})^*g=\Omega^{-2}\tilde g$ に移して、同記事の系「光的測地線の共形不変性」を当てる。$\square$

Penrose図式

$n\ge2$ とし、Einstein 静止宇宙 $E^n:=\mathbb R\times S^{n-1}$、$\hat g:=-dT^2+g_{S^{n-1}}$($\partial_T$ を未来向きとする)を考える。点 $(T,\psi)$ に平面の点 $(T,R(\psi))$ を対応させると、$0< R< \pi$ の各点には $(n-2)$ 次元の球面が対応する。共形埋め込み $\Phi\colon M\to E^n$ の像 $\Phi(M)$ と共形境界を、この $(T,R)$ 平面の図形として描いたものを $M$ の Penrose 図式(Penrose diagram)または共形図式(conformal diagram)という。

$E^n$ の動径方向の光的測地線(北極を通る大円に沿うもの)は $T\pm R=$ 一定の直線であり、Penrose 図式では 45° の線分になる。一般に、球対称な時空の動径方向の 2 次元部分を共形的にコンパクト化して平面に描いたものも Penrose 図式と呼ぶ(SG15 pp. 27–28)。

Minkowski 時空

$\mathbb L^n=(\mathbb R^n,g)$、$g=-dt^2+\lvert dx\rvert^2$($x\in\mathbb R^{n-1}$)を Minkowski 時空とする(時空 の例「Minkowski時空」)。
$$ q:=t^2-\lvert x\rvert^2,\qquad D:=\sqrt{(1+q)^2+4\lvert x\rvert^2} $$
とおく。$(1+q)^2+4\lvert x\rvert^2-(1-q)^2-4t^2=4(q+\lvert x\rvert^2-t^2)=0$ なので $D^2=(1-q)^2+4t^2$ である。$x=0$ なら $q=t^2\ge0$ なので $D>0$ である。

Minkowski時空の共形コンパクト化

$n\ge2$ とする。$(t,x)\in\mathbb L^n$ について
$$ \psi:=\Bigl(\frac{1+q}{D},\ \frac{2x}{D}\Bigr)\in S^{n-1},\qquad T\in(-\pi,\pi)\ \text{は}\ \cos T=\frac{1-q}{D},\ \sin T=\frac{2t}{D}\ \text{を満たす角} $$
とおき、$\Phi(t,x):=(T,\psi)$ と定める。

  1. $\Phi$ は $\mathbb L^n$ から $E^n$ への共形埋め込みで、$\Phi^*\hat g=\dfrac{4}{D^2}\,g$ である。
  2. 像は $W:=\{(T,\psi)\in E^n\mid\lvert T\rvert+R(\psi)< \pi\}$ である。
  3. $r:=\lvert x\rvert$、$U:=\arctan(t-r)$、$V:=\arctan(t+r)$ とおくと、$T=U+V$、$R(\psi)=V-U$ である。

$\Phi$ が定まり滑らかであること。 $\lvert\psi\rvert^2=\bigl((1+q)^2+4\lvert x\rvert^2\bigr)/D^2=1$ であり、$\bigl((1-q)/D,\,2t/D\bigr)$ は単位円の点である。これは $(-1,0)$ ではない($t=0$ なら $q=-\lvert x\rvert^2\le0$ で $1-q>0$)。よって $T\in(-\pi,\pi)$ が一意に定まり、半角の公式から $T=2\arctan\bigl(2t/(D+1-q)\bigr)$($D+1-q>0$)なので $T$ は滑らかである。
3 の等式。 $u:=t-r$、$v:=t+r$ とおくと $uv=q$、$u+v=2t$、$v-u=2r$ であり、$(1+u^2)(1+v^2)=(1-uv)^2+(u+v)^2=D^2$ である。$U\in(-\pi/2,\pi/2)$ なので $e^{iU}=(1+iu)/\sqrt{1+u^2}$ であり、
$$ e^{i(U+V)}=\frac{(1+iu)(1+iv)}{D}=\frac{(1-q)+2it}{D},\qquad e^{i(V-U)}=\frac{(1+iv)(1-iu)}{D}=\frac{(1+q)+2ir}{D} $$
である。$U+V\in(-\pi,\pi)$ なので $T=U+V$ である。$V-U\in[0,\pi)$ で $\cos(V-U)=(1+q)/D=\psi^0$ なので $R(\psi)=V-U$ であり、$\sin R(\psi)=2r/D$ である。
2 と単射性。 3 により $\lvert T\rvert+R=\lvert U+V\rvert+V-U=\max\{2V,-2U\}< \pi$ なので $\Phi(\mathbb L^n)\subset W$ である。逆に $(T,\psi)\in W$ について $R:=R(\psi)$ とおくと $R< \pi$ であり、$U:=(T-R)/2$、$V:=(T+R)/2$ は $(-\pi/2,\pi/2)$ に入り $U\le V$ である。$u:=\tan U$、$v:=\tan V$、$t:=(u+v)/2$、$r:=(v-u)/2\ge0$ とし、$R>0$ なら $x:=r\,\psi'/\lvert\psi'\rvert$($\lvert\psi'\rvert=\sin R>0$)、$R=0$ なら $x:=0$ とおくと、3 と $2x/D=\sin R\cdot x/r=\psi'$ により $\Phi(t,x)=(T,\psi)$ である。また $\Phi(t,x)$ から $T,R$、したがって $U,V,t,r$ が決まり、$r>0$ なら $x/r=\psi'/\lvert\psi'\rvert$ も決まるので、$\Phi$ は単射である。
1 の等式。 $x\ne0$ の点では、極座標 $x=r\omega$($\omega\in S^{n-2}$)で $g=-du\,dv+r^2g_{S^{n-2}}$ と書ける(Warped積多様体 の例「極座標によるEuclid空間」。$n=2$ では球面の項はない)。$W$ の $0< R< \pi$ の部分では、$\psi=(\cos R,\sin R\,\omega)$ と書くと $g_{S^{n-1}}=dR^2+\sin^2R\,g_{S^{n-2}}$(同じ例)なので、$T=U+V$、$R=V-U$ により $\hat g=-4\,dU\,dV+\sin^2R\,g_{S^{n-2}}$ である。上で見たとおり $\Phi$ はこれらの座標で $(t,r,\omega)\mapsto(U+V,V-U,\omega)$ であり、$dU=du/(1+u^2)$、$dV=dv/(1+v^2)$、$\sin^2R=4r^2/D^2$ から
$$ \Phi^*\hat g=-\frac{4\,du\,dv}{D^2}+\frac{4r^2}{D^2}g_{S^{n-2}}=\frac4{D^2}\,g $$
を得る。両辺は $\mathbb L^n$ 上の滑らかなテンソル場で、稠密な開集合 $\{x\ne0\}$ の上で一致するので、全体で一致する。
共形埋め込みであること。 $\Phi^*\hat g$ が非退化なので $d\Phi$ は各点で単射であり、次元が等しいので $\Phi$ は局所微分同相、とくに開写像である。2 と単射性により $\Phi$ は開集合 $W$ への全単射なので、$W$ への微分同相である。$\mathbb L^n$ は連結なので、共形変換 の命題「因果的類別と直交性の保存」の 2 により $\Phi$ は時間的向き付けを全体で保つか全体で反転する。$\Phi(t,0)=(2\arctan t,N)$ なので $d\Phi(\partial_t)=\frac{2}{1+t^2}\partial_T$ は未来向きであり、$\Phi$ は向き付けを保つ。$\square$

$\overline W=\{\lvert T\rvert+R\le\pi\}$ なので、共形境界は $\{\lvert T\rvert+R(\psi)=\pi\}$ であり、次のように分かれる。

部分$E^n$ の中の位置名前
$i^\pm$$(\pm\pi,N)$未来・過去の時間的無限遠
$\mathcal I^\pm$$T=\pm(\pi-R(\psi))$、$0< R(\psi)< \pi$未来・過去の光的無限遠
$i^0$$(0,-N)$空間的無限遠

$n\ge3$ の Penrose 図式は、$(T,R)$ 平面の三角形 $\{0\le R< \pi,\ \lvert T\rvert+R< \pi\}$ である。辺 $R=0$ は軸 $x=0$、2 本の斜辺が $\mathcal I^\pm$ で、斜辺の交点が $i^0$、軸の両端が $i^\pm$ である(Fri04 §2.4、p. 19)。

測地線の行き着く先

$p\in\mathbb L^n$、$w\in\mathbb R^n\setminus\{0\}$ とし、延長不可能な測地線 $\gamma(s)=p+sw$($s\in\mathbb R$)を考える。

  1. $w$ が未来向き時間的なら、$s\to\infty$ で $\Phi(\gamma(s))\to i^+$、$s\to-\infty$ で $\Phi(\gamma(s))\to i^-$ である。
  2. $w$ が未来向き光的なら、$s\to\infty$ で $\Phi(\gamma(s))$ は $\mathcal I^+$ の点に、$s\to-\infty$ で $\mathcal I^-$ の点に収束する。
  3. $w$ が空間的なら、$s\to\pm\infty$ のどちらでも $\Phi(\gamma(s))\to i^0$ である。

$\gamma(s)=(t(s),x(s))$、$w=(w^0,w')$ と書く。$\Phi$ は $\cos T=(1-q)/D$、$\sin T=2t/D$、$\psi=\bigl((1+q)/D,2x/D\bigr)$ で決まるので、これらの極限を調べる。$T\in(-\pi,\pi)$ なので、$(\cos T,\sin T)$ が単位円の点 $e^{i\alpha}$($\alpha\in[-\pi,\pi]$)に収束し、$\alpha=\pm\pi$ のときは $\sin T$ の符号が一定なら、$T$ は $\alpha$ に収束する。
1.$q(s)=\bigl((w^0)^2-\lvert w'\rvert^2\bigr)s^2+O(s)$ で係数は正、$\lvert x(s)\rvert=O(s)$ なので $D=q\,(1+o(1))$ である。よって $\cos T\to-1$、$\sin T=2t/D\to0$ で、$s$ が大きければ $t>0$、$\sin T>0$ なので $T\to\pi$ である。$\psi^0=(1+q)/D\to1$ なので $\psi\to N$ である。$s\to-\infty$ では $t< 0$ なので $T\to-\pi$ である。
2.$w^0=\lvert w'\rvert>0$ である。$a:=t(0)^2-\lvert x(0)\rvert^2$、$b:=t(0)w^0-x(0)\cdot w'$ とおくと $q(s)=a+2bs$ であり、$\lvert x(s)\rvert^2=(w^0)^2s^2+O(s)$ なので、$\kappa:=\sqrt{b^2+(w^0)^2}>0$ について $D/\lvert s\rvert\to2\kappa$ である。$s\to\infty$ では
$$ \cos T\to-\frac b\kappa,\qquad\sin T\to\frac{w^0}\kappa,\qquad\psi\to\psi_*:=\Bigl(\frac b\kappa,\frac{w'}\kappa\Bigr) $$
である。$\lvert b\rvert< \kappa$ なので $R_*:=R(\psi_*)\in(0,\pi)$、$\sin R_*=\lvert w'\rvert/\kappa=w^0/\kappa$ であり、$(\cos T,\sin T)\to(\cos(\pi-R_*),\sin(\pi-R_*))$ と $\pi-R_*\in(0,\pi)$ から $T\to\pi-R_*$ である。よって $\Phi(\gamma(s))\to(\pi-R_*,\psi_*)\in\mathcal I^+$ である。$s\to-\infty$ の場合は、等長写像 $(t,x)\mapsto(-t,x)$ が $\Phi$ の式で $(T,\psi)\mapsto(-T,\psi)$ に対応すること($q$、$D$ は $t$ について偶、$\sin T$ は奇)を使い、$\gamma$ を $s\mapsto(-t(-s),x(-s))$ に替えて今の結果を当てる。
3.$q(s)=-\bigl(\lvert w'\rvert^2-(w^0)^2\bigr)s^2+O(s)\to-\infty$、$\lvert x(s)\rvert=O(s)$ なので $D=\lvert q\rvert(1+o(1))$ である。よって $\cos T=(1-q)/D\to1$ で $T\to0$、$\psi^0=(1+q)/D\to-1$ で $\psi\to-N$ である。$\square$

こうして、自由に運動する観測者は $i^-$ から $i^+$ へ、光は $\mathcal I^-$ から $\mathcal I^+$ へ、空間的な測地線は $i^0$ から $i^0$ へ走る。測地線でない時間的曲線は $i^+$ に行くとは限らない(下の反例の表)。

2次元の図式と共形境界の取り方

$n=2$ では thm-penrose-diagram-minkowski の像 $W$ は円柱 $\mathbb R\times S^1$ の中の菱形で、左右の端点がともに $i^0=(0,-N)$ の 1 点に重なる。一方、$u=t-x$、$v=t+x$ として $\Phi_2(t,x):=(\arctan u,\arctan v)$ を $(\mathbb R^2,-dU\,dV)$(座標を替えた 2 次元 Minkowski 時空)への写像とみると、$du\,dv=dt^2-dx^2$ から
$$ \Phi_2^*(-dU\,dV)=\frac{-du\,dv}{(1+u^2)(1+v^2)}=\frac{1}{(1+u^2)(1+v^2)}\,g $$
であり、$\Phi_2$ は正方形 $(-\pi/2,\pi/2)^2$ への共形埋め込みになる。こちらでは左右の空間的無限遠 $(\pm\pi/2,\mp\pi/2)$ は別の点である。このように共形境界は埋め込みの選び方によりうる(Fri04 p. 14 は 4 次元の Minkowski 時空について、共形境界の構造は計量から決まる一方、境界の先へ延ばした共形多様体は一意に決まらないことを注意している。上の 2 次元の例では、閉包でとった共形境界そのものが埋め込みの選び方で変わる)。

de Sitter 時空

$H>0$ とし、$dS^n:=\mathbb R\times S^{n-1}$、$g=-dt^2+H^{-2}\cosh^2(Ht)\,g_{S^{n-1}}$ を de Sitter 時空とする(時空 の例「de Sitter時空」の $n$ 次元版。$\partial_t$ を未来向きとする)。

de Sitter時空の Penrose 図式

$\tau(t):=2\arctan\bigl(\tanh(Ht/2)\bigr)$ とおき、$\Phi(t,\psi):=(\tau(t),\psi)$ と定める。$\Phi$ は $dS^n$ から $E^n$ への共形埋め込みで、
$$ \Phi^*\hat g=\frac{H^2}{\cosh^2(Ht)}\,g,\qquad\Phi(dS^n)=(-\pi/2,\pi/2)\times S^{n-1} $$
である。したがって $dS^n$ の Penrose 図式は正方形 $\{\lvert T\rvert< \pi/2,\ 0\le R\le\pi\}$ であり、共形境界 $\mathcal I^\pm:=\{T=\pm\pi/2\}$ は空間的な超曲面(各点が球面 $S^{n-1}$ 全体)である。

$\tanh(Ht/2)\in(-1,1)$ なので $\tau(t)\in(-\pi/2,\pi/2)$ であり、
$$ \tau'(t)=2\cdot\frac{(H/2)\cosh^{-2}(Ht/2)}{1+\tanh^2(Ht/2)}=\frac{H}{\cosh^2(Ht/2)+\sinh^2(Ht/2)}=\frac{H}{\cosh(Ht)}>0 $$
である。$t\to\pm\infty$ で $\tau\to\pm\pi/2$ なので、$\tau$ は $\mathbb R$ から $(-\pi/2,\pi/2)$ への微分同相であり、$\Phi$ は $(-\pi/2,\pi/2)\times S^{n-1}$ への微分同相である。$\Phi^*\hat g=-\tau'(t)^2dt^2+g_{S^{n-1}}=\frac{H^2}{\cosh^2(Ht)}\bigl(-dt^2+H^{-2}\cosh^2(Ht)g_{S^{n-1}}\bigr)$ であり、$d\Phi(\partial_t)=\tau'\partial_T$ は未来向きである。$\square$

de Sitter時空の事象の地平

$\gamma(t):=(t,N)$ を北極に静止する観測者の世界線とする(Warped積多様体 の命題「葉とファイバーの幾何」の 1 により時間的測地線である)。このとき
$$ \bigcup_{t\in\mathbb R}J^-(\gamma(t))=\{(t,\psi)\in dS^n\mid\tau(t)+R(\psi)< \pi/2\} $$
である。特に、南極に静止する観測者の世界線 $(t,-N)$ の点は、どの時刻にも $\gamma$ の因果的過去に入らず、そこから出た信号は $\gamma$ に届かない。

$W:=(-\pi/2,\pi/2)\times S^{n-1}$ とする。prop-penrose-diagram-causal により、$\Phi(J^-(\gamma(t)))$ は $W$ の中の因果曲線で定めた $J^-_W(\tau(t),N)$ に等しい。$E^n$ の因果曲線に沿って $T$ は単調なので、$W$ の 2 点を結ぶ $E^n$ の因果曲線は $W$ にとどまり、$J^-_W(z)=J^-_{E^n}(z)\cap W$ である。$S^{n-1}$ は完備なので、Globally Hyperbolic時空 の例「完備な空間をもつ静的積時空」の証明により
$$ J^-_{E^n}(T_0,N)=\{(T,\psi)\mid R(\psi)\le T_0-T\} $$
である($R(\psi)$ は $\psi$ と $N$ の球面上の距離)。$T_0$ を $(-\pi/2,\pi/2)$ にわたらせて和をとると、$R(\psi)\le T_0-T$ となる $T_0< \pi/2$ があることは $R(\psi)< \pi/2-T$ と同値なので($\Leftarrow$ は $T_0:=T+R(\psi)$ ととる)、主張を得る。南極では $R=\pi$ で、$\tau(t)+\pi< \pi/2$ となる $t$ はない。$\square$

正方形の図式で、$\gamma$ は左辺 $R=0$、南極の観測者は右辺 $R=\pi$ であり、$\gamma$ に信号を送れる領域は $\mathcal I^+$ の左端 $(\pi/2,N)$ から右下へ引いた 45° の線 $T+R=\pi/2$ の下側である。この線が $\gamma$ の事象の地平であり、Minkowski 時空との違いは、共形時間 $\tau$ の値域が有界なことから生じる。

反例:条件を外すと

外す条件反例成り立たなくなること
$\gamma$ が測地線一様に加速する観測者 $c(\sigma)=(\sinh\sigma,\cosh\sigma\,e_1)$未来向き時間的な曲線の像が $i^+$ に収束する(prop-penrose-diagram-endpoints の 1)
共形時間の値域が有界(de Sitter 時空)Minkowski 時空の慣性系の観測者 $(t,0)$観測者の因果的過去が時空の一部にとどまる(cor-penrose-diagram-de-sitter-horizon)

1 行目:$e_1=(1,0,\dots,0)\in\mathbb R^{n-1}$ とすると $c$ は未来向き時間的で、$q=\sinh^2\sigma-\cosh^2\sigma=-1$、$D=2\cosh\sigma$ である。よって $\cos T=1/\cosh\sigma\to0$、$\sin T=\tanh\sigma\to1$ で $T\to\pi/2$、$\psi=(0,e_1)$ は一定で $R(\psi)=\pi/2$ である。極限 $(\pi/2,(0,e_1))$ は $T=\pi-R$ を満たし、$\mathcal I^+$ の点である。2 行目:任意の $(s,y)\in\mathbb L^n$ について $t\ge s+\lvert y\rvert$ なら $(s,y)\le(t,0)$ なので、和集合は $\mathbb L^n$ 全体である。

関連項目

参考文献

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