Newton–Puiseuxの定理(Newton–Puiseux theorem)とは、標数 $0$ の代数閉体 $K$ について、分数冪の級数である Puiseux 級数の全体 $\bigcup_{n\ge1}K(\!(t^{1/n})\!)$ が代数閉体であり、形式的 Laurent 級数体 $K(\!(t)\!)$ の代数閉包になるという定理である。$K(\!(t)\!)$ の $n$ 次拡大は同型を除いて $K(\!(t^{1/n})\!)$ だけであり、根の級数の先頭の指数と係数は Newton 多角形の辺の傾きと辺多項式から読み取れる。幾何的には、平面曲線の原点を通る枝が $x=s^n$、$y=\varphi(s)$ の形にパラメータ表示されることを意味する。正標数では Artin–Schreier 型の多項式が反例になる。
前提知識: 形式的Laurent級数, 代数閉包, Galois理論, Hensel局所環, Newton多角形
Newton–Puiseuxの定理(Newton–Puiseux theorem)とは、標数 $0$ の代数閉体 $K$ について、分数冪の Laurent 級数(Puiseux 級数)の全体
$$
K\{\!\{t\}\!\}=\bigcup_{n\ge1}K(\!(t^{1/n})\!)
$$
が代数閉体であり、したがって形式的 Laurent 級数体 $K(\!(t)\!)$ の代数閉包である、という定理である。$K(\!(t)\!)$ 係数の多項式の根は、すべて $t$ の分数冪の級数で書ける。$K(\!(t)\!)$ の $n$ 次拡大は、同型を除いて $K(\!(t^{1/n})\!)$ だけである。
幾何的には、平面曲線 $f(x,y)=0$ の原点のまわりの枝が、$x=s^n$、$y=\varphi(s)$($\varphi$ は冪級数)の形のパラメータ表示をもつことを意味する。たとえば尖点 $y^2=x^3$ の枝は $x=s^2$、$y=s^3$ と表される。根の級数の先頭の指数と係数は、係数の位数を平面に打って得られる Newton 多角形から読み取れる。これを繰り返して級数の項を順に求める方法は Newton にさかのぼり、その名が定理に残っている(FS09 p. 498)。
この記事では、まず Puiseux 級数の体を定義し、$K(\!(t^{1/n})\!)$ が $K(\!(t)\!)$ の巡回拡大であることを示す(prop-nps-field)。次に、Tschirnhaus 変換と Hensel の補題による帰納法で主定理を証明する(thm-nps-main)。続いて Newton 多角形で根の先頭の項を求める方法を述べ(prop-nps-newton)、平面曲線の枝のパラメータ表示を導く(cor-nps-branch)。最後に、$K$ の代数閉性・標数 $0$・分母の和集合を外した反例を挙げる。
以下、$K$ を体とする。$K(\!(t)\!)$ を $K$ 係数の形式的 Laurent 級数の体とし、$0$ でない $a=\sum_ia_it^i$ の位数を $\operatorname{ord}(a):=\min\{i\mid a_i\ne0\}$、$\operatorname{ord}(0)=\infty$ とする(形式的Laurent級数 の定理「形式的Laurent級数体」「離散付値と完備性」)。
$n\ge1$ について、$t^{1/n}$ を新しい文字とし、その形式的 Laurent 級数の体を $K(\!(t^{1/n})\!)$ と書く。$t=(t^{1/n})^n$ と読むことで $K(\!(t)\!)\subset K(\!(t^{1/n})\!)$ とみなす。$n\mid n'$ なら $t^{1/n}=(t^{1/n'})^{n'/n}$ により $K(\!(t^{1/n})\!)\subset K(\!(t^{1/n'})\!)$ とみなす。これらの包含は互いに両立する。
和集合 $K\{\!\{t\}\!\}:=\bigcup_{n\ge1}K(\!(t^{1/n})\!)$ の元を、$K$ 係数の Puiseux 級数という。$0$ でない Puiseux 級数 $a=\sum_{i\ge i_0}a_it^{i/n}$($a_{i_0}\ne0$)について、$\operatorname{ord}(a):=i_0/n\in\mathbb{Q}$ をその位数、$a_{i_0}$ を先頭係数といい、$\operatorname{in}(a)$ と書く。
1:有限個の Puiseux 級数は、分母の最小公倍数 $N$ について 1 つの体 $K(\!(t^{1/N})\!)$ に入る。そこで和・積・逆元をとればよい。この体は $s=t^{1/N}$ の形式的 Laurent 級数の体なので、位数の性質は $s$ の位数の性質(形式的Laurent級数 の定理「離散付値と完備性」)を $N$ で割ったものである。先頭係数の乗法性は、積の最低次の係数が最低次の係数どうしの積であることから従う。どの $K(\!(t^{1/N})\!)$ で計算しても結果は包含で両立する。
2:$s=t^{1/n}$ とおく。$K(\!(s)\!)$ の元は $\sum_{j=0}^{n-1}s^jb_j(t)$($b_j\in K(\!(t)\!)$)とただ 1 通りに書ける($s$ の指数を $n$ で割った余りで項を分ける)。よって $1,s,\dots,s^{n-1}$ は $K(\!(t)\!)$ 上の基底である。
3:代入 $s\mapsto\zeta s$ は $K(\!(s)\!)$ の環自己同型 $\sigma$ を定め、$\sigma(t)=\zeta^nt=t$ なので $K(\!(t)\!)$ の元を動かさない。$\sigma^j(s)=\zeta^js$ なので $\sigma^0,\dots,\sigma^{n-1}$ は相異なり、$\sigma^n=\mathrm{id}$ である。$H:=\langle\sigma\rangle$ は位数 $n$ の巡回群である。Galois拡大 の定理「Artinの定理」により、$K(\!(s)\!)/K(\!(s)\!)^H$ は Galois 群 $H$ の Galois 拡大で、次数は $n$ である。$K(\!(t)\!)\subset K(\!(s)\!)^H$ であり、2 から $[K(\!(s)\!):K(\!(t)\!)]=n$ なので、$K(\!(s)\!)^H=K(\!(t)\!)$ である。$\square$
主定理の証明の要は、次数を 1 つ以上下げる次の補題である。
$K$ を標数 $0$ の代数閉体、$u$ を文字とし、$n\ge2$ とする。
$$
F(Y)=Y^n+a_2Y^{n-2}+a_3Y^{n-3}+\dots+a_n\in K(\!(u)\!)[Y]
$$
($Y^{n-1}$ の項がない)で、$a_2,\dots,a_n$ のどれかが $0$ でないとする。$\lambda:=\min\{\operatorname{ord}(a_i)/i\mid a_i\ne0\}$ を既約分数 $p/q$($q\ge1$)に書き、$s:=u^{1/q}$ とおく。このとき
$$
F(s^pZ)=s^{pn}\,G(Z)
$$
となるモニック多項式 $G\in K[\![s]\!][Z]$ があり、$G=G_1G_2$ となる次数 $1$ 以上のモニック多項式 $G_1,G_2\in K[\![s]\!][Z]$ がある。
$F(s^pZ)=\sum_i a_is^{p(n-i)}Z^{n-i}$($a_0=1$、$a_1=0$)なので、$G(Z)=Z^n+\sum_{i\ge2}b_iZ^{n-i}$、$b_i:=a_is^{-pi}$ である。$s$ について位数を測ると $\operatorname{ord}_s(a_i)=q\operatorname{ord}_u(a_i)$ なので、$\lambda$ の最小性から $\operatorname{ord}_s(b_i)=q\operatorname{ord}_u(a_i)-pi\ge0$ であり、最小値をとる $i_0$ では $\operatorname{ord}_s(b_{i_0})=0$ である。よって $G\in K[\![s]\!][Z]$ である。
$s=0$ とおいた剰余 $\bar G\in K[Z]$ は $Z^n+\sum_{i\ge2}b_i(0)Z^{n-i}$ で、$b_{i_0}(0)\ne0$ である。$K$ は代数閉体なので $\bar G=\prod_{j=1}^n(Z-c_j)$ と分解する。すべての $c_j$ が同じ値 $c$ なら、$Z^{n-1}$ の係数は $-nc=0$ で、標数 $0$ から $c=0$、$\bar G=Z^n$ となって $b_{i_0}(0)\ne0$ に反する。よって $\bar G$ は相異なる根 $c_1\ne c_2$ をもつ。$c_1$ に等しい根の因子の積を $g_0$、残りの積を $h_0$ とすると、$\bar G=g_0h_0$ は互いに素なモニック多項式の積で、次数はどちらも $1$ 以上である。$K[\![s]\!]$ は剰余体 $K$ の局所環で、$K[\![s]\!]\cong\varprojlim_mK[s]/(s^m)$ である(形式的冪級数 の命題「係数環と局所性」「切り詰め多項式による復元」)。Hensel局所環 の定理「完備局所環での因数分解持上げ」により、$G=G_1G_2$ となるモニック多項式 $G_1,G_2$ で、剰余がそれぞれ $g_0,h_0$ で次数が同じものがある。$\square$
$K$ を標数 $0$ の代数閉体とする。
1:$K\{\!\{t\}\!\}$ の上の次数 $1$ 以上の多項式の係数は有限個なので、ある $K(\!(t^{1/m})\!)$ に入る。$u:=t^{1/m}$ とすると、$u$ についての Puiseux 級数の体 $\bigcup_nK(\!(u^{1/n})\!)=\bigcup_nK(\!(t^{1/mn})\!)$ は $K\{\!\{t\}\!\}$ と一致する。そこで次の主張を $n$ についての帰納法で示せばよい。
任意の文字 $u$ について、$K(\!(u)\!)$ 係数の $n$ 次のモニック多項式は、$u$ についての Puiseux 級数の体に根をもつ。
$n=1$ は明らかである。$n\ge2$ とし、$F(Y)=Y^n+a_1Y^{n-1}+\dots+a_n$ とする。標数 $0$ なので $Y=W-a_1/n$ と置き換えると、$W^{n-1}$ の項がない $W$ のモニック多項式 $F_1(W)$ になる。$F_1$ の $W^n$ 以外の係数がすべて $0$ なら $W=0$ が根である。そうでなければ lem-nps-split を $F_1$ に当て、$s=u^{1/q}$ と $G=G_1G_2$ を得る。$G_1$ は $K(\!(s)\!)$ 係数で次数は $n$ 未満のモニック多項式なので、帰納法の仮定により、$s$ についての Puiseux 級数の体($u$ についてのものと同じ)に根 $\eta$ をもつ。すると $F_1(s^p\eta)=s^{pn}G_1(\eta)G_2(\eta)=0$ なので、$Y=s^p\eta-a_1/n$ が $F$ の根である。
2:$K(\!(t^{1/n})\!)$ は $K(\!(t)\!)$ の $n$ 次拡大なので(prop-nps-field の 2)、$K\{\!\{t\}\!\}$ の元はすべて $K(\!(t)\!)$ 上代数的である。代数閉体で $K(\!(t)\!)$ 上代数的なので、代数閉包である(代数閉包 の定義「代数閉包」)。
3:$L$ を $n$ 次の中間体とする。$L$ は $K(\!(t)\!)$ 上有限個の元で生成されるので、ある $M=K(\!(t^{1/N})\!)$ に含まれ、$N=[M:L]\,n$ である。$K$ は 1 の原始 $N$ 乗根を含むので、prop-nps-field の 3 により $M/K(\!(t)\!)$ は位数 $N$ の巡回群を Galois 群とする Galois 拡大である。巡回群は各約数 $e$ について指数 $e$ の部分群をただ 1 つもつので、Galois理論 の定理「Galois理論の基本定理」により、$M$ の中の $n$ 次の中間体はただ 1 つである。$K(\!(t^{1/n})\!)$ はそのような中間体なので、$L=K(\!(t^{1/n})\!)$ である。$K(\!(t)\!)$ の $n$ 次拡大 $L'$ は、代数閉包 $K\{\!\{t\}\!\}$ の中へ $K(\!(t)\!)$ 上埋め込める(代数閉包 の定理「代数拡大の埋め込み」)。その像は $n$ 次の中間体なので、$L'\cong K(\!(t^{1/n})\!)$ である。$\square$
1 の主張は BPR16 Theorem 2.114(p. 86)にある。そこでは実閉体 $R$ について $R$ 係数の Puiseux 級数の体が実閉体になること(同 Theorem 2.113)を Newton 多角形で示し、$C=R[\sqrt{-1}]$ に移している。この記事の証明は、Newton 多角形の傾きが最大の辺、すなわち位数が最小の根に当たる情報($\lambda$)だけを使い、残りを Hensel の補題に任せている。
1 の証明で $q$ は、根を分けていく途中で現れる分母である。どの分母が現れるかは 3 から分かる。$K(\!(t)\!)$ 係数の既約な $n$ 次多項式の根は $K(\!(t^{1/n})\!)$ に入る(根が生成する体は $n$ 次の中間体だから)。したがって、一般の $n$ 次多項式の根はすべて $K(\!(t^{1/N})\!)$ に入る。ここで $N$ は $1,2,\dots,n$ の最小公倍数である。
主定理は根の存在を述べるだけだが、根の級数は Newton 多角形で上から順に求められる。$f=\sum_{i=0}^na_iY^i\in K\{\!\{t\}\!\}[Y]$($n\ge1$、$a_0a_n\ne0$)とし、点 $(i,\operatorname{ord}(a_i))$ から Newton多角形 の定義「Newton多角形」のとおりに $f$ の Newton 多角形を作る。傾き $\mu$ の辺の長さを $\ell_f(\mu)$ とする。$\gamma:=-\mu$、$\beta:=\min_i\bigl(\operatorname{ord}(a_i)+i\gamma\bigr)$ とおき、
$$
\varphi_\mu(X):=\sum_{i:\ \operatorname{ord}(a_i)+i\gamma=\beta}\operatorname{in}(a_i)X^i\in K[X]
$$
をその辺の辺多項式という。和に現れる $i$ は、ちょうどその辺の上にある点の添字である。
$K$ を標数 $0$ の代数閉体とし、$f$ を上のとおりとする。
1:thm-nps-main により $f$ は $K\{\!\{t\}\!\}$ で 1 次式の積に分解する。$\operatorname{ord}$ は $K\{\!\{t\}\!\}$ の実数値の付値なので(prop-nps-field の 1)、Newton多角形 の定理「根の付値と Newton多角形」を係数体 $K\{\!\{t\}\!\}$、$L=K\{\!\{t\}\!\}$ として当てればよい。
2:$0$ でない $g=\sum_ig_iX^i\in K\{\!\{t\}\!\}[X]$ について、$v(g):=\min_i\operatorname{ord}(g_i)$ とし、$\operatorname{in}(g):=\sum_{\operatorname{ord}(g_i)=v(g)}\operatorname{in}(g_i)X^i\in K[X]$ とおく。$\operatorname{in}(gh)=\operatorname{in}(g)\operatorname{in}(h)$ である。実際、$gh$ の $X^k$ の係数 $\sum_ig_ih_{k-i}$ の $t^{v(g)+v(h)}$ の係数は、$\operatorname{in}(g)\operatorname{in}(h)$ の $X^k$ の係数に等しい。$K[X]$ は整域なので $\operatorname{in}(g)\operatorname{in}(h)\ne0$ であり、$v(gh)=v(g)+v(h)$ となる。
$f=a_n\prod_j(Y-y_j)$ と書き、$Y=t^\gamma X$ を代入する。左辺の $X^i$ の係数は $a_it^{i\gamma}$ なので、$v(f(t^\gamma X))=\beta$、$\operatorname{in}(f(t^\gamma X))=\varphi_\mu$ である。右辺の各因子 $t^\gamma X-y_j$ の $\operatorname{in}$ は、$\operatorname{ord}(y_j)>\gamma$ なら $X$、$\operatorname{ord}(y_j)<\gamma$ なら $-\operatorname{in}(y_j)$、$\operatorname{ord}(y_j)=\gamma$ なら $X-\operatorname{in}(y_j)$ である。乗法性から
$$
\varphi_\mu(X)=\operatorname{in}(a_n)\,X^{e}\prod_{\operatorname{ord}(y_j)<\gamma}\bigl(-\operatorname{in}(y_j)\bigr)\prod_{\operatorname{ord}(y_j)=\gamma}\bigl(X-\operatorname{in}(y_j)\bigr)
$$
($e$ は位数が $\gamma$ より大きい根の個数)となり、2 が従う。$\square$
根 $y=ct^\gamma+\cdots$ の次の項を求めるには、$Y=t^\gamma(c+Y_1)$ と置き換えた多項式の Newton 多角形で、傾きが負の辺を同じように調べる。これが Newton の方法である(FS09 pp. 498–499、BPR16 Lemma 2.117, p. 89)。この手順を続けたとき、現れる指数の分母が有界にとどまることも示せる(BPR16 の Theorem 2.113 の証明, pp. 91–92。この記事では証明しない)。
$K$ を標数 $0$ の代数閉体、$f\in K(\!(x)\!)[y]$ を次数 $n\ge1$ の既約多項式、$c$ をその最高次の係数、$\zeta$ を 1 の原始 $n$ 乗根とする。このとき $\varphi\in K(\!(s)\!)$ があって
$$
f=c\prod_{k=0}^{n-1}\bigl(y-\varphi(\zeta^kx^{1/n})\bigr)
$$
となり、$n$ 個の根 $\varphi(\zeta^kx^{1/n})$ は相異なる。$f\in K[\![x]\!][y]$ がモニックなら $\varphi\in K[\![s]\!]$ にとれる。
thm-nps-main の 1 から $f$ は $K\{\!\{x\}\!\}$ に根 $y_0$ をもつ。$f$ は既約なので $K(\!(x)\!)(y_0)$ は $n$ 次の中間体であり、主定理の 3 から $K(\!(x^{1/n})\!)$ に等しい。$s:=x^{1/n}$ とおくと $y_0=\varphi(s)$($\varphi\in K(\!(s)\!)$)と書ける。prop-nps-field の 3 の $\sigma$ について $\sigma^k(y_0)=\varphi(\zeta^ks)$ は $f$ の根である。$0< k< n$ で $\sigma^k(y_0)=y_0$ なら、$\sigma^k$ は $y_0$ が生成する $K(\!(s)\!)$ 全体を動かさず、$\sigma^k\ne\mathrm{id}$ に反する。よって $n$ 個の根は相異なり、$\deg f=n$ から主張の分解を得る。
$f=y^n+b_1y^{n-1}+\dots+b_n$($b_i\in K[\![x]\!]$)で $\operatorname{ord}(y_0)<0$ なら、$\operatorname{ord}(y_0^n)=n\operatorname{ord}(y_0)$ は各 $\operatorname{ord}(b_iy_0^{n-i})\ge(n-i)\operatorname{ord}(y_0)$ より真に小さく、$f(y_0)=0$ に反する。よって $\operatorname{ord}(y_0)\ge0$ で、$\varphi\in K[\![s]\!]$ である。$\square$
$f(x,y)\in K[x,y]$ を $K(\!(x)\!)[y]$ の中で既約因子に分けると、位数が正の根をもつ因子ごとに、原点を通る枝 $x=s^n$、$y=\varphi(s)$($\varphi(0)=0$)が 1 本ずつ得られる(共役な根は位数が等しいので、因子ごとに根の位数は一定である)。$n=1$ の枝は $y$ が $x$ の冪級数で書けるグラフの形の枝で、$n\ge2$ の枝では $n$ 個の根が $\sigma$ で巡回的に入れ替わる。$K=\mathbb{C}$ では、これは原点のまわりを 1 周すると根が入れ替わることに当たる。$K=\mathbb{C}$ で $f$ が $\mathbb{C}(x)[y]$ で平方因子をもたなければ、これらの級数は原点の近くで収束する。代数関数 の定理「Puiseux 展開」が与える $\deg_yf$ 個の相異なる収束 Laurent 級数の根は形式的な根でもあり、根は高々 $\deg_yf$ 個なので、両者は一致するからである。
$f=y^3-xy+x^3$ とし、$t=x$ として $K(\!(x)\!)[y]$ の多項式とみる。点は $(0,3)$、$(1,1)$、$(3,0)$ で、Newton 多角形は傾き $-2$・長さ $1$ の辺と、傾き $-\frac12$・長さ $2$ の辺からなる。
第 2 項の計算を確かめる。
$y=x^2+z$ とおくと $f=x^6+(3x^4-x)z+3x^2z^2+z^3$ で、$z$ の位数が $2$ より大きいとき最低次の項は $x^6-xz$ なので $z=x^5+\cdots$ である。$y=x^{1/2}+z$ とおくと $f=2xz+3x^{1/2}z^2+z^3+x^3$ で、最低次の項は $2xz+x^3$ なので $z=-\frac12x^2+\cdots$ である。$y=-x^{1/2}+z$ でも同様に $z=-\frac12x^2+\cdots$ となる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $K$ が代数閉体 | $K=\mathbb{R}$、$Y^2+1$ | $K\{\!\{t\}\!\}$ が代数閉体であること |
| $K$ の標数が $0$ | $K=\overline{\mathbb{F}}_p$、$Y^p-Y-t^{-1}$ | $K\{\!\{t\}\!\}$ が代数閉体であること |
| 分母を限らない和集合をとる | $K(\!(t^{1/N})\!)$ と $Y^{N+1}-t$ | 1 つの $K(\!(t^{1/N})\!)$ が代数閉体であること |
| $f$ が既約(cor-nps-branch) | $y^2-x^2$ | 根が 1 つの $\varphi$ の共役 $\varphi(\pm x^{1/2})$ で尽くされること |
各行を確かめる。
1 行目:根 $y$ があれば $\operatorname{ord}(y^2)=\operatorname{ord}(-1)=0$ から $\operatorname{ord}(y)=0$ で、先頭係数 $c\in\mathbb{R}$ は $c^2=-1$ をみたすが、そのような実数はない。
2 行目:$y^p-y=t^{-1}$ となる Puiseux 級数 $y$ があるとする。$\operatorname{ord}(y)\ge0$ なら左辺の位数は $0$ 以上で矛盾するので、$\operatorname{ord}(y)<0$ であり、左辺の位数は $p\operatorname{ord}(y)$ となって $\operatorname{ord}(y)=-1/p$ である。先頭係数 $c$ は $c^p=1$ をみたし、標数 $p$ では $c=1$ である。$z_0:=y$ とし、$z_k:=z_{k-1}-t^{-1/p^k}$ とおく。標数 $p$ では $(a+b)^p=a^p+b^p$ なので、帰納的に $z_k^p-z_k=t^{-1/p^k}$ であり、同じ議論で $\operatorname{ord}(z_k)=-1/p^{k+1}$ となる。$y=\sum_{j=1}^kt^{-1/p^j}+z_k$ の右辺で $z_k$ 以外の項の指数は $-1/p^{k+1}$ より小さいので、$y$ は $t^{-1/p^{k+1}}$ の項を $0$ でない係数でもつ。これがすべての $k$ で成り立つので、$y$ の指数の分母は有界でなく、$y$ はどの $K(\!(t^{1/N})\!)$ にも入らない。
3 行目:$K(\!(t^{1/N})\!)$ の元の位数は $\frac1N\mathbb{Z}$ に入るが、根の位数は $\frac{1}{N+1}$ でなければならない。
4 行目:$y^2-x^2=(y-x)(y+x)$ は既約でない。$\varphi(s)$ を $\pm s^2$ としても $\varphi(\pm x^{1/2})$ は同じ根を 2 回与えるだけで、根 $x$ と $-x$ の両方は得られない。
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