直径

同義語:集合の直径diameterChebyshev半径Chebyshev radius

概要

直径(diameter)とは、距離空間の部分集合 $A$ の 2 点の距離の上限 $\operatorname{diam}A=\sup\{d(x,y)\mid x,y\in A\}$ のことである(空集合は $0$ とする)。直径が有限であることは有界であることと同値で、開区間 $(0,1)$ のように上限が実現されないこともあるが、コンパクト集合では直径を実現する 2 点がある。閉包をとっても変わらず、Lipschitz 定数 $L$ の写像では高々 $L$ 倍になり、1 つの中心から測る Chebyshev 半径とは 2 倍以内で比べられる。ノルム空間では半径 $r$ の球の直径は $2r$、凸包の直径はもとの集合と同じである。一方、直径は位相では決まらず、同じ円周でも平面の距離では $2R$、円周に沿った道のりでは $\pi R$ になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 距離空間, 上限, 有界

円の直径は、中心を通る弦の長さであり、円周上の 2 点の距離のうち最も大きいものでもある。後者の見方はどんな図形にも使える。三角形なら最長の辺、正方形なら対角線、球面なら大円の直径である。一般の距離空間では、集合の 2 点の距離の 上限 を、その集合の 直径 と呼ぶ。最大値でなく上限を使うのは、開区間 $(0,1)$ のように、距離が $1$ にいくらでも近い 2 点はあるのに、距離がちょうど $1$ の 2 点はない集合があるからである。
直径は、集合が「どれだけ広がっているか」を 1 つの数で表す。有界であることは直径が有限であることと同じであり、完備性(直径が $0$ に縮む閉集合の列は 1 点で交わる)やコンパクト性(Lebesgue 数)を述べるときにも使われる。一方で、直径は位相では決まらない。同じ円周でも、平面の距離で測れば直径は $2R$、円周に沿った道のりで測れば $\pi R$ である。本記事では直径の定義と基本的な性質を述べ、閉包で変わらないこと、Lipschitz 写像での評価、和集合の評価、Chebyshev 半径との比較、コンパクト集合で直径が実現されること、ノルム空間の球と凸包の直径、Hausdorff 距離についての連続性を証明する。

定義

直径

$(X,d)$ を距離空間、$A\subset X$ とする。$A$ の 直径(diameter)を
$$ \operatorname{diam}A:=\sup\{d(x,y)\mid x,y\in A\}\in[0,\infty] $$
と定める。$A$ が空でなく 2 点間の距離が上に有界でないときは $\operatorname{diam}A=\infty$ とする。空集合については $\operatorname{diam}\emptyset:=0$ と約束する。距離を明示したいときは $\operatorname{diam}_dA$ と書く。

$x=y$ の組も上限をとる範囲に入るので、空でない $A$ について $\operatorname{diam}A\ge0$ である。次のことは定義からすぐ分かる。

  • $\operatorname{diam}A=0$ であることは、$A$ が空集合か一点集合であることと同値である。実際、$A$ に相異なる 2 点 $x,y$ があれば $\operatorname{diam}A\ge d(x,y)>0$ である。
  • $A\subset B$ なら $\operatorname{diam}A\le\operatorname{diam}B$ である(単調性)。$A$ の 2 点の距離の集合は、$B$ の 2 点の距離の集合に含まれるからである。
  • $\operatorname{diam}A<\infty$ であることは、$A$ が有界であること、すなわち $A$ がある球に含まれることと同値である。これは 有界 の記事の命題「球による定義と直径による定義」である。
    直径と並んで、集合を 1 つの中心から見た広がりも使われる。
Chebyshev 半径

$(X,d)$ を距離空間、$A\subset X$ を空でない部分集合とする。
$$ \operatorname{rad}_XA:=\inf_{c\in X}\ \sup_{a\in A}d(c,a)\in[0,\infty] $$
を、$X$ における $A$ の Chebyshev 半径(Chebyshev radius)という。

$\sup_{a\in A}d(c,a)$ は、$c$ を中心として $A$ を含む閉球の半径の最小値である。Chebyshev 半径は、その中心を $X$ 全体から最もよく選んだときの値である。直径が $A$ の点どうしの距離だけで決まるのに対し、Chebyshev 半径は中心を選ぶ周りの空間 $X$ にもよる(ex-diam-radius-ambient)。平面の三角形の 3 頂点については、Chebyshev 半径は 3 頂点を含む最小の円の半径であり、鋭角三角形・直角三角形では外接円の半径に等しいが、鈍角三角形では最長の辺を直径とする円の半径(最長の辺の半分)で、外接円の半径より小さい(Jungの定理 の記事の例「反例:鈍角三角形では外接円が最小でない」)。

直感

直径は「集合の中で最も離れた 2 点の隔たり」を、実現されない場合も含めて測る量である。Euclid 平面の図形の横幅や縦幅と違って、方向を選ばずにすべての 2 点を比べるので、座標のない距離空間でも意味をもつ。
直径は集合の形をほとんど覚えていない。$\mathbb{R}$ の閉区間 $[0,1]$、2 点集合 $\{0,1\}$、Cantor集合 はどれも直径 $1$ である。連結かどうか、点が何個あるか、どう並んでいるかは直径には現れない。直径が捉えるのは、集合全体を収めるのにどれだけの大きさが要るかという、最も粗い情報だけである。その粗さゆえに、写像や極限で扱いやすい。

例と反例

実数の区間と有限集合

通常の距離 $d(x,y)=\lvert x-y\rvert$ を入れた $\mathbb{R}$ で、$a< b$ とする。
$$ \operatorname{diam}[a,b]=\operatorname{diam}(a,b)=\operatorname{diam}[a,b)=b-a. $$
どの区間でも 2 点の距離は $b-a$ 以下である。$[a,b]$ では端点の組が $b-a$ を実現する。$(a,b)$ では、$0<\varepsilon<(b-a)/2$ について $a+\varepsilon,b-\varepsilon$ の距離が $b-a-2\varepsilon$ なので、上限は $b-a$ である。しかし距離がちょうど $b-a$ の 2 点は $(a,b)$ にない。
有限集合 $A$ では、2 点の組が有限個なので上限は最大値であり、直径は最も離れた 2 点の距離である。平面の三角形の 3 頂点の集合なら、直径は最長の辺の長さである(Jungの定理 の記事はこの意味の直径から始まる)。

円周の 2 つの距離

半径 $R>0$ の円周 $S=\{(R\cos\theta,R\sin\theta)\mid\theta\in\mathbb{R}\}$ を考える。

  1. 平面の Euclid 距離を制限した距離(弦の長さ)では、$\theta$ と $\varphi$ に対応する 2 点の距離は $2R\lvert\sin\frac{\theta-\varphi}2\rvert\le2R$ で、対蹠点で $2R$ になる。したがって $\operatorname{diam}S=2R$ である。これは円の直径(中心を通る弦の長さ)に一致する。
  2. 円周に沿った短い方の弧の長さを距離とすると、2 点の距離は $R\min\{\lvert\theta-\varphi\rvert,2\pi-\lvert\theta-\varphi\rvert\}$($\lvert\theta-\varphi\rvert\le2\pi$ に代表をとる)で、これは $\pi R$ 以下、対蹠点で $\pi R$ になる。したがって $\operatorname{diam}S=\pi R$ である。
    2 つの距離は同じ位相を定める(どちらでも、1 点に近づくことは角度の差が $2\pi$ の倍数に近づくことである)。同じ位相空間でも、どの距離で測るかによって直径は変わる。
離散距離と超距離
  1. 2 点以上ある集合 $X$ に離散距離($x\ne y$ なら $d(x,y)=1$)を入れると、$X$ は有限でも無限でも直径 $1$ である。直径が有限であることは、点の個数が有限であることとは関係がない。
  2. 超距離空間(強三角不等式 $d(x,z)\le\max\{d(x,y),d(y,z)\}$ を満たす距離空間)では、閉球 $\overline{B}(a,r)=\{x\mid d(a,x)\le r\}$ の 2 点 $x,y$ について $d(x,y)\le\max\{d(x,a),d(a,y)\}\le r$ なので、$\operatorname{diam}\overline{B}(a,r)\le r$ である。たとえば p進数 体 $\mathbb{Q}_p$ の閉単位球 $\mathbb{Z}_p$ は $0$ と $1$ を含み $\lvert1-0\rvert_p=1$ なので、直径はちょうど $1$ である。半径 $1$ の球の直径が $2$ にならない。
グラフの直径

連結なグラフの頂点集合に、2 頂点を結ぶ道の辺の数の最小値を距離として入れる(距離(グラフ))。この距離空間での頂点集合全体の直径が、グラフの直径である。$n\ge2$ 頂点の完全グラフの直径は $1$、$n$ 頂点の道グラフの直径は $n-1$、$n$ 頂点の閉路グラフの直径は $\lfloor n/2\rfloor$ である(距離(グラフ) の記事の例)。

Chebyshev 半径は周りの空間による

$A=\{-1,1\}$ とする。

  1. $X=\mathbb{R}$ の中では、中心 $c=0$ から両点までの距離が $1$ で、どの $c$ でも $\max\{\lvert c+1\rvert,\lvert c-1\rvert\}\ge1$ なので、$\operatorname{rad}_{\mathbb{R}}A=1$ である。
  2. $X=A$ 自身の中では、中心は $-1$ か $1$ しか選べず、どちらでも他方までの距離が $2$ なので、$\operatorname{rad}_AA=2$ である。
    直径はどちらでも $2$ である。Chebyshev 半径は周りの空間を小さくすると大きくなりうる。

基本的な性質

閉包と直径

閉包で直径は変わらない

距離空間 $(X,d)$ の任意の部分集合 $A$ について、閉包 $\overline{A}$ の直径は $A$ の直径に等しい:
$$ \operatorname{diam}\overline{A}=\operatorname{diam}A. $$

$A\subset\overline{A}$ なので単調性から $\operatorname{diam}A\le\operatorname{diam}\overline{A}$ である。逆を示す。$A=\emptyset$ なら $\overline{A}=\emptyset$ なので等しい。$A\ne\emptyset$ とし、$\operatorname{diam}A<\infty$ の場合を考える($\infty$ なら示すことはない)。$x,y\in\overline{A}$ と $\varepsilon>0$ をとる。距離空間では開球が近傍の基本系をなすので、閉包の点 $x$ の開球 $B(x,\varepsilon)$ は $A$ と交わる。$a\in A\cap B(x,\varepsilon)$、$b\in A\cap B(y,\varepsilon)$ をとると、三角不等式により
$$ d(x,y)\le d(x,a)+d(a,b)+d(b,y)<\operatorname{diam}A+2\varepsilon $$
である。$\varepsilon>0$ は任意なので $d(x,y)\le\operatorname{diam}A$ であり、$x,y$ について上限をとれば $\operatorname{diam}\overline{A}\le\operatorname{diam}A$ を得る。$\square$

内部をとる操作では直径は増えない(単調性)が、減ることはある。$\mathbb{Q}\cap[0,1]$ の直径は $1$ だが、$\mathbb{R}$ での内部は空で直径は $0$ である。

写像と直径

Lipschitz 写像による評価

$f\colon(X,d_X)\to(Y,d_Y)$ を定数 $L>0$ の Lipschitz連続 な写像、すなわちすべての $x,x'\in X$ について $d_Y(f(x),f(x'))\le L\,d_X(x,x')$ を満たす写像とする。このとき任意の $A\subset X$ について
$$ \operatorname{diam}f(A)\le L\operatorname{diam}A $$
である(右辺が $\infty$ のときは主張は自明である)。

$f(A)$ の 2 点は $f(x),f(x')$($x,x'\in A$)と書けて、$d_Y(f(x),f(x'))\le L\,d_X(x,x')\le L\operatorname{diam}A$ である。$f(A)$ の 2 点について上限をとればよい。$A=\emptyset$ なら $f(A)=\emptyset$ で両辺は $0$ である。$\square$

距離を保つ写像(等長写像)では両辺が等しい。これは 等長写像 の記事の命題「点列と直径の保存」である。連続であるだけ、あるいは一様連続であるだけでは、この評価はもちろん、有界性さえ保たれない。

反例:連続写像・一様連続写像は直径を制御しない
  1. $f\colon(0,1)\to\mathbb{R}$、$f(x)=1/x$ は連続であるが、直径 $1$ の集合 $(0,1)$ を直径 $\infty$ の集合 $(1,\infty)$ に写す。$f$ は Lipschitz 連続でない($x\to0$ で傾きが限りなく大きくなる)。
  2. 自然数全体 $\mathbb{N}$ に離散距離 $d_1$ を入れた空間から、通常の距離 $d_2(m,n)=\lvert m-n\rvert$ を入れた $\mathbb{N}$ への恒等写像 $\mathrm{id}$ を考える。$d_1(m,n)<\frac12$ なら $m=n$ なので、$\delta=\frac12$ がどの $\varepsilon>0$ にも使えて、$\mathrm{id}$ は一様連続である。しかし直径 $1$ の集合 $\mathbb{N}$ を直径 $\infty$ の集合に写す。
    どちらも「$f$ は連続(一様連続)」を満たし「$\operatorname{diam}f(A)\le L\operatorname{diam}A$ となる定数 $L$ がある」を満たさない例であり、prop-diam-lipschitz の Lipschitz の仮定を連続性や一様連続性に弱められないことを示す。

直径が位相で決まらないことは、次の命題でもっとはっきりする。どんな距離も、同じ位相を定めたまま直径を $1$ 以下にできる。

直径が 1 以下の同値な距離

$(X,d)$ を距離空間とし、$d'(x,y):=\min\{1,d(x,y)\}$ とおく。$d'$ は $X$ の距離であり、$d$ と同じ位相を定める。$d'$ についてはどの部分集合の直径も $1$ 以下である。

要点:三角不等式は場合分けで確かめ、位相の一致は「半径 $1$ 以下の開球が 2 つの距離で同じ」ことから従う。

詳しい証明を開く

$d'$ が非負で対称であり、$d'(x,y)=0$ と $x=y$ が同値であることは $d$ の性質から従う。三角不等式 $d'(x,z)\le d'(x,y)+d'(y,z)$ を示す。右辺のどちらかの項が $1$ なら、左辺は $1$ 以下なので成り立つ。どちらも $1$ 未満なら、右辺は $d(x,y)+d(y,z)\ge d(x,z)\ge d'(x,z)$ である。

$0< r\le1$ なら、$d'(x,y)< r$ と $d(x,y)< r$ は同値なので、半径 $1$ 以下の開球は $d$ と $d'$ で一致する。どちらの距離でも、開集合とは各点を中心とするある半径の開球を含む集合であり、その半径は $1$ 以下にとり直せるので、開集合の全体は一致する。最後の主張は $d'\le1$ から従う。$\square$

$\mathbb{R}$ に $d'$ を入れると $\operatorname{diam}_{d'}\mathbb{R}=1$ であるが、通常の距離では $\operatorname{diam}\mathbb{R}=\infty$ である。有界性は直径で決まるので、有界性も位相的な性質ではない。この命題は Engelking89 の Theorem 4.1.3(p. 250)にある。同じ頁で直径が定義され、$\operatorname{diam}\overline{A}=\operatorname{diam}A$ が述べられている。

和集合の直径

2 つの集合 $A,B$ の距離を $\operatorname{dist}(A,B):=\inf\{d(a,b)\mid a\in A,\ b\in B\}$ と書く($A,B$ は空でないとする)。

和集合の直径

距離空間の空でない部分集合 $A,B$ について
$$ \operatorname{diam}(A\cup B)\le\operatorname{diam}A+\operatorname{dist}(A,B)+\operatorname{diam}B $$
である。とくに $A\cap B\ne\emptyset$ なら $\operatorname{diam}(A\cup B)\le\operatorname{diam}A+\operatorname{diam}B$ である。

右辺が $\infty$ なら示すことはないので、$\operatorname{diam}A,\operatorname{diam}B<\infty$ とする。$A\cup B$ の 2 点 $x,y$ をとる。両方が $A$ に属すれば $d(x,y)\le\operatorname{diam}A$、両方が $B$ に属すれば $d(x,y)\le\operatorname{diam}B$ で、どちらも右辺以下である。$x\in A$、$y\in B$ とする(逆も同様)。任意の $a\in A$、$b\in B$ について、三角不等式から
$$ d(x,y)\le d(x,a)+d(a,b)+d(b,y)\le\operatorname{diam}A+d(a,b)+\operatorname{diam}B $$
である。$a,b$ について下限をとれば $d(x,y)\le\operatorname{diam}A+\operatorname{dist}(A,B)+\operatorname{diam}B$ を得る。$x,y$ について上限をとればよい。$A\cap B$ に点があれば $\operatorname{dist}(A,B)=0$ である。$\square$

等号が成り立つ例もある。$\mathbb{R}$ の $A=[0,1]$、$B=[3,5]$ では、左辺は $5$、右辺は $1+2+2=5$ である。一方、共通点も集合間の距離も考えないと評価はできない。$A=\{0\}$、$B=\{100\}$ はどちらも直径 $0$ だが、$A\cup B$ の直径は $100$ である。
帰納法により、$A_1,\dots,A_n$ が隣どうし交わる($A_i\cap A_{i+1}\ne\emptyset$)なら
$$ \operatorname{diam}(A_1\cup\cdots\cup A_n)\le\operatorname{diam}A_1+\cdots+\operatorname{diam}A_n $$
である。$A_1\cup\cdots\cup A_{k}$ と $A_{k+1}$ は $A_k\cap A_{k+1}$ の点を共有するので、prop-diam-union の後半をくり返し使えばよい。小さな集合を鎖のようにつないで、全体の広がりを見積もるときに使う。

Chebyshev 半径との比較

直径とChebyshev 半径

距離空間 $(X,d)$ の空でない部分集合 $A$ について
$$ \operatorname{rad}_XA\le\operatorname{diam}A\le2\operatorname{rad}_XA $$
である。どちらの不等式も、等号が成り立つ場合がある(下の例)。

左の不等式:$a_0\in A$ を 1 つとり、中心の候補を $c=a_0$ とすると、すべての $a\in A$ について $d(a_0,a)\le\operatorname{diam}A$ なので $\sup_{a\in A}d(a_0,a)\le\operatorname{diam}A$ である。下限は 1 つの候補の値以下なので、$\operatorname{rad}_XA\le\operatorname{diam}A$ である。
右の不等式:任意の $c\in X$ と $x,y\in A$ について、三角不等式から
$$ d(x,y)\le d(x,c)+d(c,y)\le2\sup_{a\in A}d(c,a) $$
である。$x,y$ について上限をとると $\operatorname{diam}A\le2\sup_{a\in A}d(c,a)$ で、これがすべての $c\in X$ で成り立つので、$c$ について下限をとれば $\operatorname{diam}A\le2\operatorname{rad}_XA$ を得る。$\square$

ex-diam-radius-ambient の $A=\{-1,1\}$ では、$X=A$ のとき $\operatorname{rad}_AA=2=\operatorname{diam}A$ で左が等号、$X=\mathbb{R}$ のとき $\operatorname{diam}A=2=2\operatorname{rad}_{\mathbb{R}}A$ で右が等号である。Euclid 平面の中の有限個(2 個以上)の点の集合 $A$ については、左の評価は $\operatorname{rad}_{\mathbb{R}^2}A\le\operatorname{diam}A/\sqrt3$ まで改良でき、正三角形の 3 頂点がこの評価の等号の場合である。これが Jungの定理 であり、証明はその記事にある。右の評価とあわせると $\operatorname{diam}A/2\le\operatorname{rad}_{\mathbb{R}^2}A\le\operatorname{diam}A/\sqrt3$ で、この範囲のどこにあるかは点の配置による(正方形の 4 頂点では左端の $\operatorname{diam}A/2$ になる)。

コンパクト集合の直径

コンパクト集合では直径が実現される

$K$ を距離空間 $(X,d)$ の空でないコンパクト(コンパクト空間)な部分集合とする。このとき $\operatorname{diam}K<\infty$ であり、
$$ d(x,y)=\operatorname{diam}K $$
となる 2 点 $x,y\in K$ が存在する。

距離空間では、コンパクト性と点列コンパクト性は同値である(点列コンパクト の記事の定理「距離空間における同値性」)。よって $K$ の点列は $K$ の点に収束する部分列をもつ。
$s:=\operatorname{diam}K\in[0,\infty]$ とおく。上限の定義により、$K$ の点列 $(x_n)$、$(y_n)$ で $d(x_n,y_n)\to s$ となるものがとれる($s=\infty$ なら $d(x_n,y_n)>n$ となるものをとる)。$(x_n)$ の部分列 $(x_{n_k})$ で $x\in K$ に収束するものをとり、さらに $(y_{n_k})$ の部分列 $(y_{n_{k_j}})$ で $y\in K$ に収束するものをとる。部分列の部分列も $x$ に収束するので、$j\to\infty$ で $x_{n_{k_j}}\to x$、$y_{n_{k_j}}\to y$ である。三角不等式から
$$ \lvert d(x_m,y_m)-d(x,y)\rvert\le d(x_m,x)+d(y_m,y) $$
なので、$m=n_{k_j}$ として $d(x_{n_{k_j}},y_{n_{k_j}})\to d(x,y)$ である。左辺の列は $s$ に収束する列の部分列なので、$s=d(x,y)$ である。とくに $s$ は有限である。$\square$

コンパクトでない集合では、直径が有限でも実現されるとは限らない($(0,1)$、ex-diam-intervals)。完備な空間の有界閉集合でも足りない。数列空間 $\ell^2$(2 乗和が有限な実数列の全体、$\|x\|^2=\sum_kx_k^2$)で、第 $n$ 成分だけが $c_n:=1-\frac1{n+1}$ で他が $0$ の点を $p_n$($n\ge1$)とし、$P:=\{p_n\mid n\ge1\}$ とおく。$m\ne n$ なら
$$ \|p_m-p_n\|^2=c_m^2+c_n^2<2 $$
であり、$m,n\to\infty$ で右辺は $2$ に近づくので、$\operatorname{diam}P=\sqrt2$ だが、距離がちょうど $\sqrt2$ の 2 点はない。$c_n\ge\frac12$ なので相異なる 2 点の距離は $\frac1{\sqrt2}$ 以上であり、$P$ の点列が収束するなら途中から一定なので、$P$ は閉集合である。$\ell^2$ は完備なので $P$ も完備であり、有界でもあるが、コンパクトでない。
直径は、コンパクト性や完備性の特徴づけにも現れる。

  • 距離空間が完備であることは、直径が $0$ に収束する空でない閉集合の減少列が必ずちょうど 1 点で交わることと同値である(完備距離空間 の記事の命題「閉集合の減少列による特徴づけ」)。点列が Cauchy 列であることは、第 $N$ 項以後の値の集合の直径が $0$ に収束することと同値である(Cauchy列 の記事の命題「尾部の直径による特徴づけ」)。
  • コンパクト距離空間の開被覆 $\mathcal{U}$ には Lebesgue 数 $\delta>0$ がある(点列コンパクト の記事の補題「点列コンパクト距離空間のLebesgue数」)。このとき直径が $\delta$ 未満の集合 $A$ は、ある $U\in\mathcal{U}$ に含まれる。実際、$a\in A$ をとると $A\subset B(a,\delta)$ であり、$B(a,\delta)$ はある $U$ に含まれる。単体の細分や道の分割で「十分細かく分ければ各部分は 1 つの開集合に入る」という議論は、この形で使われる。

ノルム空間の球と凸包

ノルム空間では、線形構造のおかげで直径がきれいに計算できる。以下、$V$ を実または複素のノルム空間とし、$d(x,y)=\|x-y\|$ とする。

ノルム空間の球の直径

$V\ne\{0\}$ とする。任意の $a\in V$ と $r>0$ について、開球 $B(a,r)$ と閉球 $\overline{B}(a,r)$ の直径はどちらも $2r$ である。

$B(a,r)\subset\overline{B}(a,r)$ であり、閉球の 2 点 $x,y$ について $\|x-y\|\le\|x-a\|+\|a-y\|\le2r$ なので、$\operatorname{diam}B(a,r)\le\operatorname{diam}\overline{B}(a,r)\le2r$ である。$V\ne\{0\}$ なので、ノルムが $1$ のベクトル $u$ がある($v\ne0$ をとり $u=v/\|v\|$)。$0< t< r$ について $a+tu$ と $a-tu$ はどちらも $B(a,r)$ に属し、その距離は $\|2tu\|=2t$ である。よって $\operatorname{diam}B(a,r)\ge2t$ で、$t\to r$ として $\operatorname{diam}B(a,r)\ge2r$ を得る。$\square$

一般の距離空間では、半径 $r$ の球の直径は $2r$ 以下だが、真に小さいこともある(閉球 の記事の命題「直径と中心の移動」と、その直前の注意)。離散距離では $r>1$ の球は空間全体で直径 $1$ であり、超距離空間の閉球の直径は $r$ 以下である(ex-diam-discrete-ultrametric)。「半径 $r$ の球の直径は $2r$」は線形構造による性質である。
$A\subset V$ の有限個の点の凸結合 $\lambda_1a_1+\cdots+\lambda_na_n$($\lambda_i\ge0$、$\lambda_1+\cdots+\lambda_n=1$)の全体を $\operatorname{conv}A$ と書き、$A$ の 凸包 という。$V=\mathbb{R}^n$ のときは、これは $A$ を含む最小の凸集合に等しい(凸集合 の記事の定理「凸包と凸結合」)。

凸包の直径

$A\subset V$ について $\operatorname{diam}(\operatorname{conv}A)=\operatorname{diam}A$ である。

$A\subset\operatorname{conv}A$ なので $\operatorname{diam}A\le\operatorname{diam}(\operatorname{conv}A)$ である。逆を示す。$A=\emptyset$ なら両辺 $0$ なので、$A\ne\emptyset$ とし、$s:=\operatorname{diam}A<\infty$ としてよい。
まず、点 $y\in V$ を固定し、すべての $a\in A$ について $\|a-y\|\le t$ なら、すべての $z\in\operatorname{conv}A$ について $\|z-y\|\le t$ であることを示す。$z=\sum_i\lambda_ia_i$ と書くと、$\sum_i\lambda_i=1$ なので $z-y=\sum_i\lambda_i(a_i-y)$ であり、
$$ \|z-y\|\le\sum_i\lambda_i\|a_i-y\|\le\sum_i\lambda_it=t $$
である。
$z,w\in\operatorname{conv}A$ をとる。各 $a\in A$ について、$A$ のすべての点は $a$ から距離 $s$ 以内にあるので、上の事実($y=a$、$t=s$)により $\|w-a\|\le s$ である。これがすべての $a\in A$ で成り立つので、上の事実($y=w$、$t=s$)をもう一度使って $\|z-w\|\le s$ を得る。よって $\operatorname{diam}(\operatorname{conv}A)\le s$ である。$\square$

たとえば平面の凸多角形(周と内部をあわせた領域)は頂点の有限集合の凸包なので、その直径は頂点どうしの距離の最大値である。三角形の領域の直径は最長の辺の長さ、正方形の領域の直径は対角線の長さである。

Hausdorff 距離と直径

距離空間 $(X,d)$ の空でない有界な部分集合 $A,B$ について、点と集合の距離 $\operatorname{dist}(x,B):=\inf_{b\in B}d(x,b)$ を使って
$$ d_H(A,B):=\max\Bigl\{\sup_{a\in A}\operatorname{dist}(a,B),\ \sup_{b\in B}\operatorname{dist}(b,A)\Bigr\} $$
とおく。これを $A$ と $B$ の Hausdorff 距離 という。$d_H(A,B)< r$ なら、$A$ の各点から距離 $r$ 未満のところに $B$ の点があり、$B$ の各点から距離 $r$ 未満のところに $A$ の点がある。

直径は Hausdorff 距離について連続

空でない有界な部分集合 $A,B$ について
$$ \lvert\operatorname{diam}A-\operatorname{diam}B\rvert\le2\,d_H(A,B) $$
である。

要点:$A$ の 2 点をそれぞれ近くの $B$ の点に取り替え、三角不等式を 2 回使う。

詳しい証明を開く

$h:=d_H(A,B)$ とおき、$\varepsilon>0$ をとる。$a,a'\in A$ について、$\operatorname{dist}(a,B)\le h$ なので $d(a,b)< h+\varepsilon$ となる $b\in B$ があり、同様に $d(a',b')< h+\varepsilon$ となる $b'\in B$ がある。三角不等式から

$$d(a,a')\le d(a,b)+d(b,b')+d(b',a')<\operatorname{diam}B+2h+2\varepsilon$$

である。$a,a'$ について上限をとり、$\varepsilon\to0$ とすると $\operatorname{diam}A\le\operatorname{diam}B+2h$ である。$A$ と $B$ を入れ替えれば $\operatorname{diam}B\le\operatorname{diam}A+2h$ も得られる。$\square$

係数 $2$ は小さくできない。$\mathbb{R}$ の $A=\{0\}$、$B=\{-1,1\}$ では $d_H(A,B)=1$、直径の差は $2$ である。この命題により、有界な集合の列 $A_n$ が $A$ に Hausdorff 距離で近づく($d_H(A_n,A)\to0$)とき、直径も $\operatorname{diam}A_n\to\operatorname{diam}A$ と収束する。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
コンパクト(thm-diam-compact)$(0,1)\subset\mathbb{R}$;$\ell^2$ の閉集合 $P$直径を実現する 2 点がある
Lipschitz(prop-diam-lipschitz)$1/x$ on $(0,1)$;離散距離から通常の距離への恒等写像$\operatorname{diam}f(A)\le L\operatorname{diam}A$
共通点・集合間の距離(prop-diam-union)$\{0\}$ と $\{100\}$$\operatorname{diam}(A\cup B)\le\operatorname{diam}A+\operatorname{diam}B$
ノルム空間(prop-diam-normed-ball)離散距離の空間の $B(a,2)$;$\mathbb{Z}_p\subset\mathbb{Q}_p$半径 $r$ の球の直径は $2r$
距離そのもの(位相だけ)$\mathbb{R}$ の通常の距離と $\min\{1,d\}$;円周の弦と弧直径は位相で決まる
反例の確認
  1. 1 行目:$(0,1)$ は ex-diam-intervals、$P$ は thm-diam-compact の後の段落で確かめた。どちらも有界だが、コンパクトでない。$(0,1)$ は「有界なら直径が実現される」を、$P$(完備な空間 $\ell^2$ の閉集合)は「完備な空間の有界閉集合なら直径が実現される」を破る。
  2. 2 行目:ex-diam-continuous-counterexample で確かめた。どちらの写像も連続(後者は一様連続)だが、Lipschitz 連続でない。
  3. 3 行目:どちらも直径 $0$ の空でない集合で、共通点がなく、集合間の距離は $100$ である。
  4. 4 行目:離散距離の空間(2 点以上)では $B(a,2)=X$ で直径は $1<4$ である。$\mathbb{Z}_p$ は $\mathbb{Q}_p$ の閉球 $\overline{B}(0,1)$ で直径 $1<2$ である(ex-diam-discrete-ultrametric)。どちらの距離もノルムから来ていない。
  5. 5 行目:prop-diam-bounded-metric と ex-diam-circle で確かめた。同じ位相を定める 2 つの距離で、直径が異なる。破る含意は「直径は位相だけで決まる」である。

補足

直径を使う問題と定理
  1. Jung の定理:Euclid 平面の直径 $d$ の有限点集合は半径 $d/\sqrt3$ の円に収まる(Jungの定理)。
  2. Borsuk の問題:直径 $d$ の図形を、直径が $d$ より小さい部分に分けるには何個あれば足りるかを問う(Borsukの問題)。$n$ 次元で $n+1$ 個に分けられるという予想には、次元が高いと反例がある。
  3. グラフの直径:連結グラフの直径は頂点集合の直径であり、偏心度・半径とともにグラフの基本的な量である。有限連結グラフでも $\operatorname{rad}G\le\operatorname{diam}G\le2\operatorname{rad}G$ が成り立つ(距離(グラフ) の記事の命題「半径と直径の不等式」)。グラフの半径は中心を頂点の中から選ぶので、prop-diam-radius で $X=A$(頂点集合)とした場合にあたる。
  4. 直径と測度:$\mathbb{R}^n$ の直径 $d$ の集合を覆うには一辺 $2d$ の立方体 1 つで足りる(集合の 1 点を中心にとる)。集合を直径の小さい集合で覆い、直径の $s$ 乗の和の下限をとると Hausdorff 測度が得られ、集合の次元を測る道具になる。
直径と半径の呼び名

距離空間の球 $\overline{B}(a,r)$ の「半径」$r$ は中心からの距離の上界として与えた数であり、直径の半分として定めた量ではない(閉球)。ノルム空間では球の直径は $2r$ になるが(prop-diam-normed-ball)、一般の距離空間では $2r$ より小さいことがある。集合の「半径」の意味では、Chebyshev 半径(def-diam-chebyshev-radius)や、中心を集合の中から選ぶ半径(グラフの半径)が使われる。

関連項目

参考文献

[1]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, 1989, §4.1, p. 250(直径 δ(A) の定義、δ(∅)=0、δ(A)=δ(Ā)、有界の定義)、Theorem 4.1.3(p. 250、同値な距離で 1 以下に有界なもの)

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