半安定還元(semistable reduction)とは、離散付値体 $K$ 上の楕円曲線やアーベル多様体を整数環の上へ延ばして剰余体で還元したとき、Néron モデルの特殊ファイバーの単位成分がトーラスのアーベル多様体による拡大になり、加法群のような単冪な部分が現れないことである。楕円曲線では極小 Weierstrass 方程式の還元が滑らかか結節点をもつ場合(良い還元と乗法的還元)にあたり、尖点をもつ加法的還元は半安定でない。Grothendieck の半安定還元定理により、どのアーベル多様体も基礎体の有限次拡大の上で半安定還元をもち、楕円曲線では $j$ 不変量が整かどうかで良い還元と乗法的還元のどちらになるかが決まる。
離散付値体 $K$ 上の楕円曲線やアーベル多様体を、整数環 $R$ の上へ延ばして剰余体で「還元」すると、還元が滑らかでなくなることがある。そのとき特殊ファイバーの単位成分には、アーベル多様体の部分のほかに、乗法群のような部分(トーラス)と加法群のような部分(単冪な部分)が現れうる。半安定還元(semistable reduction)とは、加法群のような部分が現れない還元のことである。楕円曲線では、良い還元と乗法的還元を合わせたものが半安定還元で、加法的還元がそうでないものにあたる。
半安定還元の理論の中心は、どのアーベル多様体も、基礎体を有限次拡大すれば半安定還元をもつという Grothendieck の半安定還元定理である。この記事では、楕円曲線の還元の型と一般のアーベル多様体の半安定還元を定義し、剰余体の標数が $2$ でない場合に楕円曲線の半安定還元定理を完全に証明する。あわせて、良い還元と乗法的還元が基礎体の拡大で変わらないこと、剰余体の標数が $2$ でないとき還元が潜在的に良いかどうかが $j$ 不変量だけで決まることを示す。
以下、$R$ を離散付値環、$K$ をその分数体、$v$ を $K$ の正規付値($v(K^\times)=\mathbb{Z}$)、$\pi$ を一意化元、$k=R/\pi R$ を剰余体とする。
$K$ 上の楕円曲線 $E$ は Weierstrass 方程式
$$
y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6\qquad(a_i\in K)
$$
で表され、判別式 $\Delta$ と $c_4=b_2^2-24b_4$($b_2=a_1^2+4a_2$、$b_4=2a_4+a_1a_3$)が定まる。同じ $E$ の 2 つの Weierstrass 方程式は、$u\in K^\times$、$r,s,t\in K$ による座標変換 $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'+su^2x'+t$ で移りあい、このとき
$$
\Delta'=u^{-12}\Delta,\qquad c_4'=u^{-4}c_4
$$
である(Sil09 Proposition III.3.1(b)(p. 59)、Table 3.1(p. 45))。したがって $j=c_4^3/\Delta$ は方程式の取り方によらない($j$ 不変量)。$a_i$ がすべて $R$ に属する方程式を整な方程式という。$x,y$ を $u^2x,u^3y$ に置き換えると $a_i$ は $u^{-i}a_i$ になるので、整な方程式は必ずある。$\Delta$ と $c_4$ は $a_i$ の整数係数の多項式なので、整な方程式では $v(\Delta)\ge0$、$v(c_4)\ge0$ である。
$E$ の整な方程式のうち $v(\Delta)$ が最小のものを極小 Weierstrass 方程式という($v(\Delta)$ は $0$ 以上の整数なので最小値がある)。極小方程式の $\Delta$、$c_4$ について、
2 つの極小方程式は $v(\Delta)$ が等しいので、両者を結ぶ座標変換は $v(u)=0$ を満たし、$v(c_4)$ も等しい。よって還元の型は極小方程式の取り方によらない。極小方程式を $\pi$ を法として還元した $k$ 上の 3 次曲線 $\tilde E$ は、良い還元のとき滑らか、乗法的還元のとき $\bar k$ 上で結節点(2 本の接線をもつ特異点)を 1 つもち、加法的還元のとき尖点を 1 つもつ(Sil09 Proposition III.1.4(p. 45)を還元した方程式に当てる)。乗法的還元で結節点の 2 本の接線の傾きが $k$ に属するとき分裂乗法的還元、そうでないとき非分裂乗法的還元という。$\tilde E$ の非特異点のなす群 $\tilde E_{\mathrm{ns}}$ は、それぞれ楕円曲線、乗法群またはその 2 次の捻り、加法群である(Sil09 Proposition III.2.5(p. 56)・Proposition VII.5.1(p. 196))。
方程式が極小かどうかは、次の判定で見分けられることが多い。
$E$ の整な方程式の $\Delta$、$c_4$ について、$v(\Delta)<12$ または $v(c_4)<4$ ならば、その方程式は極小である。とくに、整な方程式が $v(\Delta)=0$ を満たせば $E$ は良い還元をもち、$v(\Delta)>0$ かつ $v(c_4)=0$ を満たせば $E$ は乗法的還元をもつ。
別の整な方程式 $\Delta'$、$c_4'$ が $v(\Delta')< v(\Delta)$ を満たしたとする。座標変換の $u$ について $v(\Delta')=v(\Delta)-12v(u)$ なので $v(u)\ge1$ であり、$v(\Delta)=v(\Delta')+12v(u)\ge12$ となる。また $v(c_4)=v(c_4')+4v(u)\ge4$ である($c_4'$ は整な方程式の $c_4$ なので $v(c_4')\ge0$)。対偶をとれば前半が従う。後半は、前半により方程式が極小なので、def-semistable-reduction-types そのものである。$\square$
一般のアーベル多様体では、Weierstrass 方程式の代わりに Néronモデル を使う。$K$ 上のアーベル多様体 $A$ の $R$ 上の Néron モデルを $\mathcal{A}$、その特殊ファイバーの単位元を含む連結成分を $\mathcal{A}_k^0$ とする。
$A$ が $R$ 上半安定還元をもつとは、$\mathcal{A}_k^0\otimes_k\bar k$ が、トーラス $T$ のアーベル多様体 $B$ による拡大になっていること、すなわち
$$
0\longrightarrow T\longrightarrow\mathcal{A}_k^0\otimes_k\bar k\longrightarrow B\longrightarrow0
$$
($T$ はトーラス、$B$ はアーベル多様体)と書けることをいう。$T=0$ の場合が良い還元である。より一般に、$S$ を Dedekind整域 のスペクトル(Dedekind スキーム)、$K$ をその関数体とするとき、$A$ が $S$ 上半安定還元をもつとは、$S$ のすべての閉点 $s$ で局所環 $\mathcal{O}_{S,s}$ 上半安定還元をもつことをいう。
この定義は Gro72 Proposition 3.2(p. 347)と Définition 3.4(p. 349)による(そこでは「単位成分の幾何的ファイバーの単冪階数が $0$」と言い表している)。$k$ が完全体なら、$\mathcal{A}_k^0$ は線型代数群 $T\times U$($T$ はトーラス、$U$ は単冪群)のアーベル多様体 $B$ による拡大 $0\to T\times U\to\mathcal{A}_k^0\to B\to0$ で(Chevalleyの構造定理、Néronモデル の注意「特殊ファイバーの構造と半安定還元」)、半安定還元は単冪な部分 $U$ が $0$ であることにあたる。
楕円曲線では、2 つの定義が一致する。
$E$ を $K$ 上の楕円曲線とする。$E$ が def-semistable-reduction-types の意味で半安定還元をもつことと、def-semistable-reduction-abelian の意味で半安定還元をもつことは同値である。
Néronモデル の定理「極小正則モデルと極小Weierstrassモデルとの関係」の 2 により、極小方程式の定めるモデル $W$ から特殊ファイバーの特異点を除いたもの $W^{\mathrm{sm}}$ は Néron モデルの単位成分 $\mathcal{E}^0$ に同型である。とくに $\mathcal{E}_k^0\cong\tilde E_{\mathrm{ns}}$ である(この同型はこの記事では証明しない)。$\tilde E_{\mathrm{ns}}\otimes_k\bar k$ は、良い還元のとき楕円曲線、乗法的還元のとき $\mathbb{G}_m$、加法的還元のとき $\mathbb{G}_a$ である(Sil09 Proposition III.2.5)。前の 2 つはトーラスのアーベル多様体による拡大(それぞれ $T=0$、$B=0$)であり、$\mathbb{G}_a$ はそうでない。実際、$\mathbb{G}_m$ から $\mathbb{G}_a$ への準同型は自明なので、そのような拡大では $T=0$ となって $\mathbb{G}_a\cong B$ がアーベル多様体になるが、$\mathbb{G}_a$ は固有でない。$\square$
$L/K$ を有限次拡大、$R_L$ を $R$ の $L$ における整閉包とする。$R_L$ は Dedekind整域 で、$R$ の極大イデアルの上にある素イデアルは有限個である(Liu06 Proposition 4.1.31、p. 122)。その 1 つ $\mathfrak{P}$ での局所化 $R_w:=(R_L)_{\mathfrak{P}}$ は $R$ を支配する離散付値環で、正規付値 $w$ は $K$ の上で $w=e\,v$($e\ge1$ は分岐指数)を満たす。$E_L:=E\otimes_KL$ の $R_w$ 上の還元の型を、$E$ の $w$ での還元の型と呼ぶ。
$E$ が $R$ 上良い還元(乗法的還元)をもつならば、任意の有限次拡大 $L/K$ と $L$ の任意の $w$ について、$E$ は $w$ で良い還元(乗法的還元)をもつ。
$R$ 上の極小方程式は $R_w$ 上でも整な方程式で、同じ $\Delta$、$c_4$ をもち、$w(\Delta)=e\,v(\Delta)$、$w(c_4)=e\,v(c_4)$ である。良い還元なら $w(\Delta)=0$、乗法的還元なら $w(\Delta)>0$ かつ $w(c_4)=0$ なので、lem-semistable-reduction-minimal の後半から結論が従う。$\square$
加法的還元はこの性質をもたず、拡大によって良い還元や乗法的還元に変わりうる(ex-semistable-reduction-potentially-good、ex-semistable-reduction-potentially-multiplicative)。どちらに変わるかは次の主定理が決める。
剰余体 $k$ の標数が $2$ でないとし、$E$ を $K$ 上の楕円曲線とする。$K$ の有限次分離拡大 $L$ で、$L$ のすべての $w$($R$ の上にあるもの)について $E$ が $w$ で半安定還元をもつものが存在する。さらに、
段 1(Legendre 標準形)。 $k$ の標数が $2$ でないので $2\in R^\times$ であり、$K$ の標数も $2$ でない。$y$ を $y-(a_1x+a_3)/2$ に置き換えると、$E$ は $y^2=f(x)$($f$ はモニックな 3 次式)と表される。この方程式では $\Delta=16\operatorname{disc}(f)\ne0$ なので $f$ は相異なる根 $e_1,e_2,e_3$ をもち、$K_1:=K(e_1,e_2,e_3)$ は $K$ の有限次分離拡大である。$\alpha:=e_2-e_1$、$\beta:=e_3-e_1$ とおき、$L:=K_1(\sqrt{\alpha},\sqrt{\beta})$ とする。標数が $2$ でないので $L/K$ も分離的である。$L$ 上で $x=\alpha x'+e_1$、$y=\alpha^{3/2}y'$ と置くと、$f(x)=\alpha^3x'(x'-1)(x'-\lambda)$ より
$$
y'^2=x'(x'-1)(x'-\lambda),\qquad\lambda:=\beta/\alpha\ne0,1
$$
を得る。同様に $x=\beta x''+e_1$、$y=\beta^{3/2}y''$ と置けば、$\lambda$ を $1/\lambda$ に替えた方程式を得る。
段 2(不変量の計算)。 方程式 $y^2=x(x-1)(x-\mu)$($\mu\ne0,1$)では $a_2=-(1+\mu)$、$a_4=\mu$、ほかの $a_i$ は $0$ なので
$$
\Delta=16\mu^2(\mu-1)^2,\qquad c_4=16(\mu^2-\mu+1),\qquad j=\frac{2^8(\mu^2-\mu+1)^3}{\mu^2(\mu-1)^2}
$$
である。
段 3(場合分け)。 $L$ の $w$ を 1 つ固定する。$w(\lambda)<0$ なら $1/\lambda$ の方程式を使うことで、$w(\lambda)\ge0$ としてよい。このとき方程式は $R_w$ 上整であり、$16\in R_w^\times$ である。
段 4($j$ による判別)。 段 3 で良い還元の場合、極小方程式の $\Delta$ が単元なので $w(j)=3w(c_4)-w(\Delta)\ge0$ である。乗法的還元の場合、$w(c_4)=0$、$w(\Delta)>0$ なので $w(j)=-w(\Delta)<0$ である。$j\in K$ で $w(j)=e\,v(j)$ だから、$v(j)\ge0$ なら乗法的還元は起こらず良い還元であり、$v(j)<0$ なら良い還元は起こらず乗法的還元である。$\square$
$L$ の作り方から $[L:K]\le24$ である。剰余体の標数が $2$ の場合も、$v(j)\ge0$ なら潜在的に良い還元、$v(j)<0$ なら潜在的に乗法的還元をもつ。Liu06 Lemma 10.2.31・Proposition 10.2.33(pp. 500–502)は、標数が $3$ でない場合(標数 $2$ を含む)に $v^2+(au+b)v=u^3$ の形の方程式を使って示している(この記事では証明しない)。Sil09 Proposition VII.5.4・VII.5.5(p. 197)も同じ主張で、そこでは $K$ は完備で剰余体が完全体と仮定されている。
主定理の段 4 から、$K$ 上の還元の型と $j$ 不変量の関係が読み取れる。
$k$ の標数が $2$ でないとする。$E$ が潜在的良還元をもつ(ある有限次拡大 $L'$ と $L'$ のある $w'$ で良い還元をもつ)ことと、$v(j)\ge0$ であることは同値である。$v(j)<0$ のとき、$E$ はどの有限次拡大のどの $w'$ でも良い還元をもたない。
$v(j)\ge0$ なら主定理の 1 による。逆に $E$ が $L'$ の $w'$ で良い還元をもつなら、$R_{w'}$ 上の極小方程式の $\Delta'$ は単元で $c_4'$ は整なので $j=c_4'^3/\Delta'\in R_{w'}$ であり、$e'v(j)=w'(j)\ge0$ から $v(j)\ge0$ である。後半はこの対偶である。$\square$
以下、$p$ を奇素数、$K=\mathbb{Q}_p$、$R=\mathbb{Z}_p$ とする。$L=\mathbb{Q}_p(\sqrt{p})$ は分岐指数 $2$ の拡大で、その付値 $w$ は $w(p)=2$ を満たす。
$E\colon y^2=x^3-p^2x$ を考える。$a_4=-p^2$ なので $\Delta=-64a_4^3=64p^6$、$c_4=-48a_4=48p^2$ である。$v(\Delta)=6<12$ なので方程式は極小(lem-semistable-reduction-minimal)で、$v(c_4)\ge2>0$ だから $E$ は $\mathbb{Q}_p$ 上加法的還元をもつ。$j=1728$ は整なので、cor-semistable-reduction-potential-good により潜在的良還元をもつ。実際、$L$ 上で $x=px'$、$y=p^{3/2}y'$ と置くと $p^3y'^2=p^3x'^3-p^3x'$、すなわち $y'^2=x'^3-x'$ となり、この方程式の判別式 $64$ は $R_w$ の単元なので、$E$ は $w$ で良い還元をもつ。$2$ 等分点 $(0,0)$、$(\pm p,0)$ はすべて $\mathbb{Q}_p$ 上にあるので、2 等分点の体 $\mathbb{Q}_p(E[2])=\mathbb{Q}_p$ の上ではまだ加法的還元である。
$E\colon y^2=x(x-p)(x-p^2)$ を考える。根は $0,p,p^2$ なので
$$
\Delta=16\bigl(p\cdot p^2\cdot(p^2-p)\bigr)^2=16p^8(p-1)^2,\qquad c_4=16(p^2+p^4-p^3)=16p^2(p^2-p+1)
$$
である。$v(\Delta)=8<12$ より方程式は極小で、$v(c_4)=2>0$ だから加法的還元をもつ。$v(j)=3\cdot2-8=-2<0$ なので、thm-semistable-reduction-elliptic の 2 と cor-semistable-reduction-potential-good により、$E$ はどの拡大でも良い還元をもたず、半安定還元になるときは乗法的還元である。実際、$L$ 上で $x=pX$、$y=p^{3/2}Y$ と置くと $p^3Y^2=p^3X(X-1)(X-p)$、すなわち Legendre 標準形 $Y^2=X(X-1)(X-p)$($\lambda=p$、$w(\lambda)=2>0$)となり、主定理の証明の段 3 により $E$ は $w$ で乗法的還元をもつ。この $E$ も 2 等分点がすべて $\mathbb{Q}_p$ 上にあるので、段 1 の平方根の添加を省くと半安定還元が得られない例になっている。
分裂乗法的還元の例は Néronモデル の例「分裂乗法的還元をもつ楕円曲線と成分群」にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $K$ 上で良い還元または乗法的還元をもつこと(prop-semistable-reduction-base-change の仮定) | $y^2=x^3-p^2x$(ex-semistable-reduction-potentially-good) | 還元の型が拡大で変わらないこと($\mathbb{Q}_p$ 上は加法的、$w$ では良い還元) |
| 有限次拡大をとること(thm-semistable-reduction-elliptic) | $y^2=x(x-p)(x-p^2)$(ex-semistable-reduction-potentially-multiplicative) | $K$ 自身の上で半安定還元をもつこと |
| 2 等分点の座標に加えて平方根を添加すること(主定理の証明の段 1) | $y^2=x(x-p)(x-p^2)$($\mathbb{Q}_p(E[2])=\mathbb{Q}_p$) | 2 等分点の体の上で半安定還元をもつこと |
| $v(j)\ge0$(cor-semistable-reduction-potential-good) | $y^2=x(x-p)(x-p^2)$($v(j)=-2$) | 潜在的良還元をもつこと |
$S$ を連結な正則 Noether スキームで次元 $1$ のもの、$K$ をその関数体、$A$ を $K$ 上のアーベル多様体とする。$K$ の有限次 Galois 拡大 $K'$ で、$A\otimes_KK'$ が $S$ の $K'$ における正規化 $S'$ の上で半安定還元をもつものが存在する。
Gro72 Théorème 3.6(p. 351)による(この記事では証明しない)。Liu06 Remark 10.4.25(p. 543)にも言明がある。楕円曲線の場合が thm-semistable-reduction-elliptic で、そこでは方程式を直接変形したが、一般の場合の証明は次の Galois 的な判定法に帰着させる。
Gro72 Proposition 3.5(p. 350)の (i) と (iv) の同値である(この記事では証明しない)。$I$ の作用が自明であることが良い還元と同値であるという Néronモデル の定理「Néron–Ogg–Shafarevichの判定法」の、半安定版にあたる。Gro72 は thm-semistable-reduction-grothendieck を、この判定法によって「$I$ のある開部分群の作用が 2 段の単冪になる」という主張(Corollaire 3.7、p. 352)に帰着させている。開部分群は有限次拡大の惰性群にあたるので、その拡大の上で 2 が成り立つ。
半安定還元は、基礎体の拡大で保たれる。$A$ が $S$ 上半安定還元をもてば、$S$ を支配する $S'$ への基底変換で Néron モデルの単位成分は Néron モデルの単位成分に移る(Gro72 Corollaire 3.3、p. 348)。ただし成分群は拡大で大きくなりうる(Gro72 3.3.2、p. 349)。楕円曲線では prop-semistable-reduction-base-change がこれにあたる。$K$ が完備で剰余体が完全体のとき、分裂乗法的還元をもつ $E$ の $E(K)/E_0(K)$($E_0(K)$ は非特異点に還元する点の部分群)は位数 $v(\Delta)$ の巡回群である(Sil09 Theorem VII.6.1、p. 200。この記事では証明しない)。分岐指数 $e$ の完備な拡大では、prop-semistable-reduction-base-change の証明のとおり同じ方程式が極小のままで、結節点の接線の傾きも剰余体に入ったままなので、この位数は $w(\Delta)=e\,v(\Delta)$ に増える。
代数閉体上の代数曲線が半安定であるとは、被約で、特異点が通常 2 重点だけであることをいう(Liu06 Definition 10.3.1・10.3.2、p. 506)。Dedekind スキーム $S$ の関数体上の滑らかな射影曲線 $C$ が閉点 $s$ で半安定還元をもつとは、$\mathcal{O}_{S,s}$ 上の $C$ のモデルで、半安定曲線の族(特殊ファイバーの幾何的ファイバーが半安定な平坦射影曲線)になっているものが存在することをいう(Liu06 Definition 10.3.27、p. 515)。
楕円曲線の乗法的還元では、極小方程式の還元が結節点を 1 つもつ 3 次曲線であり、これは半安定曲線である。幾何的に連結な種数 $2$ 以上の滑らかな射影曲線については、有限次分離拡大の上で安定還元(半安定還元に、射影直線の成分がほかの成分と 3 点以上で交わるという条件を加えたもの)をもつという Deligne–Mumford の定理 がある(Liu06 Theorem 10.4.3、p. 533。この記事では証明しない)。さらに、種数 $2$ 以上の曲線が安定還元をもつことと、そのヤコビ多様体が半安定還元をもつことは同値である(Liu06 Remark 10.4.26(p. 543)が Deligne–Mumford の定理 2.4 として述べている。この記事では証明しない)。この同値と thm-semistable-reduction-grothendieck から Deligne–Mumford の定理が得られる。
半安定還元は、Néron モデルの成分群の位数(玉河数)の計算、Birch–Swinnerton-Dyer 予想の局所因子(Birch–Swinnerton-Dyer予想)、半安定な族を使った曲線束の研究など、数論幾何の多くの場面で、還元を扱いやすい形にそろえる最初の段階として使われる。
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