様相論理(modal logic)とは、命題論理に「必然的に」を表す演算子 $\Box$ と「可能的に」を表す $\Diamond=\lnot\Box\lnot$ を加えた論理である。Kripke 意味論では、世界の集合と到達可能関係 $R$ を用意し、$\Box\varphi$ を到達できるすべての世界で $\varphi$ が真であることと解釈する。$\Box p\to p$ が妥当なフレームはちょうど $R$ が反射的なフレーム、$\Box p\to\Box\Box p$ ならちょうど推移的なフレームであるという対応があり、 $\mathbf K$・$\mathbf{S4}$・$\mathbf{S5}$ などの体系の定理は対応する性質をもつフレームすべてで妥当な論理式と一致する。最小の体系 $\mathbf K$ は有限モデル性をもち、定理かどうかは決定可能である。
様相論理(modal logic)は、命題論理に「必然的に」「可能的に」にあたる演算子 $\Box$・$\Diamond$ を加えた論理である。$\Box\varphi$ は「$\varphi$ を知っている」「この先いつも $\varphi$」などとも読める。標準的な意味論は Kripke による関係的な意味論で、「世界」の集合とその上の二項関係を用意し、$\Box\varphi$ を「到達できるすべての世界で $\varphi$ が成り立つ」と解釈する。
様相論理の基本的な現象は、論理式の公理と関係の性質の対応 である。$\Box p\to p$ が成り立つフレームはちょうど関係が反射的なフレームであり、$\Box p\to\Box\Box p$ が成り立つのはちょうど推移的なフレームである。この記事では、正規様相論理の体系 $\mathbf K$・$\mathbf T$・$\mathbf{S4}$・$\mathbf{S5}$ を定義し、健全性、この対応定理、標準モデルによる完全性定理、$\mathbf K$ の有限モデル性と決定可能性を証明する。
命題変数 $p_0,p_1,p_2,\dots$(可算無限個)と定数 $\bot$ を 原子論理式 とする。論理式は次の規則で作られるものに限る。
$p,q$ は命題変数を表す。$\varphi$ を作る途中に現れる論理式($\varphi$ 自身を含む)を $\varphi$ の 部分論理式 といい、その有限集合を $\operatorname{Sub}(\varphi)$ と書く。
モデル $\mathcal M=(W,R,V)$ と $w\in W$ について、「$\varphi$ は $\mathcal M$ の $w$ で真」$\mathcal M,w\Vdash\varphi$ を論理式の組み立てに沿って定める。
$w$ から到達できる世界がないとき、$w$ では $\Box\varphi$ はつねに真、$\Diamond\varphi$ はつねに偽である。恒真式 $\alpha(p_1,\dots,p_n)$ の $p_i$ に任意の論理式 $\theta_i$ を一斉に代入した 恒真式の代入例 は妥当である(各世界で $\theta_i$ の真偽を $p_i$ の値として真理値表を当てはめればよい。OLT26 Lemma 49.15、p. 708)。
論理式の集合 $\Sigma$ が 正規様相論理(normal modal logic)であるとは、次を満たすことをいう。
$\mathbf K\Lambda$ は、恒真式の代入例・K 公理・$\Lambda$ の図式の形の論理式を公理とし、モーダスポネンスと必然化を規則とする導出で得られる論理式の全体と一致する(導出できる論理式の全体が正規様相論理であり、どの正規様相論理もそれを含むから。OLT26 Proposition 51.11、p. 730)。代表的な図式は次の 5 つである($\varphi$ は任意の論理式)。
$$
\begin{array}{ll}
\mathrm D:\ \Box\varphi\to\Diamond\varphi & \mathrm T:\ \Box\varphi\to\varphi\\
\mathrm B:\ \varphi\to\Box\Diamond\varphi & 4:\ \Box\varphi\to\Box\Box\varphi\\
5:\ \Diamond\varphi\to\Box\Diamond\varphi &
\end{array}
$$
伝統的に $\mathbf T=\mathbf{KT}$、$\mathbf{S4}=\mathbf{KT4}$、$\mathbf{S5}=\mathbf{KT5}$ とよぶ(OLT26 Definition 51.29、p. 738 は $\mathbf{S5}$ を $\mathbf{KTB4}$ と定める。両者が一致することは後の thm-ml-completeness の 3 から分かる。どちらも同値関係をもつフレームすべてで妥当な論理式の全体になるからである)。
論理式の集合 $\Gamma$ と正規様相論理 $\Sigma$ について、$\Gamma\vdash_\Sigma\varphi$ を「有限個の $\psi_1,\dots,\psi_n\in\Gamma$($n=0$ でもよい)で $\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\to\varphi$ となるものがある」と定める($n=0$ のときは $\Sigma\vdash\varphi$ と読む)。$\Gamma\vdash_\Sigma\bot$ でないとき、$\Gamma$ は $\Sigma$ 無矛盾 であるという。必然化は $\Sigma$ の定理にだけ使い、$\Gamma$ の元には使わないことに注意する(後の反例の表の 4 行目)。
到達可能関係 $R$ の読み方を変えると、$\Box$ はさまざまな意味をもつ。
| 読み方 | 世界 | $wRv$ | $\Box\varphi$ | 自然な図式 |
|---|---|---|---|---|
| 必然性 | 可能な状況 | $v$ は $w$ から見て可能 | 必然的に $\varphi$ | $\mathrm T$(必然なら真) |
| 知識 | 認識の状態 | $w$ にいる者が $v$ を排除できない | $\varphi$ を知っている | $\mathrm T$、$4$(知っていることを知っている) |
| 時間 | 時点 | $v$ は $w$ より後 | 以後いつも $\varphi$ | $4$(順序の推移性) |
| 義務 | 状況 | $v$ は $w$ で理想的 | $\varphi$ は義務 | $\mathrm D$(義務は矛盾しない) |
$W=\{w_1,w_2,w_3\}$、$R=\{(w_1,w_2),(w_1,w_3)\}$、$V(p)=\{w_1,w_2\}$、$V(q)=\{w_2\}$ とする(OLT26 Figure 49.1、p. 705 のモデル)。$w_1$ では、$w_3\not\Vdash p$ なので $w_1\not\Vdash\Box p$、$w_2\Vdash p\land q$ なので $w_1\Vdash\Diamond(p\land q)$ である。また $w_1\Vdash p$ だが $w_1\not\Vdash\Box p$ なので、$w_1$ で $p\to\Box p$ は偽である。一方 $w_3$ では、到達できる世界がないので $\Box p$ は真だが、$p$ は偽である。したがって $\Box p\to p$(図式 $\mathrm T$ の例)は $w_3$ で偽であり、このモデルで真ではない。$w_3$ が自分自身に到達できないことが原因である(thm-ml-correspondence の 2)。
恒真式の代入例 $(\varphi\land\psi)\to\varphi$ に必然化を使い、K 公理とモーダスポネンスを使うと $\mathbf K\vdash\Box(\varphi\land\psi)\to\Box\varphi$ を得る。同じ議論で、任意の正規様相論理 $\Sigma$ で 単調性「$\Sigma\vdash\varphi\to\psi$ なら $\Sigma\vdash\Box\varphi\to\Box\psi$」が成り立つ。恒真式 $\varphi\to(\psi\to\varphi\land\psi)$ に単調性と K 公理を使うと $\Sigma\vdash\Box\varphi\land\Box\psi\to\Box(\varphi\land\psi)$ も得られる。
$\Sigma$ を正規様相論理とする。$\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\to\varphi$ なら $\Sigma\vdash\Box\psi_1\land\dots\land\Box\psi_n\to\Box\varphi$ である($n=0$ のときは「$\Sigma\vdash\varphi$ なら $\Sigma\vdash\Box\varphi$」と読む)。
$n=0$ は必然化そのものである。$n\ge1$ のとき、ex-ml-k-derivation の単調性から $\Sigma\vdash\Box(\psi_1\land\dots\land\psi_n)\to\Box\varphi$ であり、同じ例の最後の形を $n-1$ 回使えば $\Sigma\vdash\Box\psi_1\land\dots\land\Box\psi_n\to\Box(\psi_1\land\dots\land\psi_n)$ である。この 2 つを恒真式の代入例 $(a\to b)\to((b\to c)\to(a\to c))$ とモーダスポネンスでつなげばよい。$\square$
$\Lambda$ を図式の集まり、$\mathsf C$ をフレームの類とし、$\Lambda$ の図式の形の論理式はすべて $\mathsf C$ で妥当であるとする。このとき $\mathbf K\Lambda\vdash\varphi$ ならば $\mathsf C\models\varphi$ である。とくに $\mathbf K\vdash\varphi$ ならば $\varphi$ は妥当である。
$\mathsf C$ で妥当な論理式の集合が正規様相論理であり、$\Lambda$ の図式の形の論理式を含むことを示せばよい($\mathbf K\Lambda$ はそのような最小のものだから)。
恒真式の代入例が妥当であることは定義の後で述べた。K 公理:$w\Vdash\Box(\varphi\to\psi)$ と $w\Vdash\Box\varphi$ なら、$wRv$ となる各 $v$ で $\varphi\to\psi$ と $\varphi$ が真なので $\psi$ も真であり、$w\Vdash\Box\psi$ である。モーダスポネンス:各世界で $\varphi$ と $\varphi\to\psi$ が真なら $\psi$ も真である。必然化:モデル $\mathcal M$ のすべての世界で $\varphi$ が真なら、どの $w$ についても到達できる世界で $\varphi$ が真なので $w\Vdash\Box\varphi$ である。$\Lambda$ の図式は仮定により妥当である。$\square$
必然化は「モデル全体で真」を保つが、「1 つの世界で真」は保たない。$\Gamma\vdash_\Sigma\varphi$ の定義で必然化を $\Gamma$ の元に使わせないのはこのためで、この定義なら、$\Sigma$ の定理がすべて真なモデルの世界 $w$ で $\Gamma$ の元がすべて真のとき、$\varphi$ も $w$ で真である。
フレームの性質を次のように名づける($u,v,w\in W$ は任意)。継続的(serial):各 $w$ に $wRv$ となる $v$ がある。反射的:$wRw$。対称的:$wRv\Rightarrow vRw$。推移的:$wRv,\ vRu\Rightarrow wRu$。Euclid 的:$wRv,\ wRu\Rightarrow vRu$。
フレーム $\mathcal F=(W,R)$ と、次の表の各行について、3 つの条件 (a) 表の図式の形の論理式がすべて $\mathcal F$ で妥当、(b) 図式の $\varphi$ を命題変数 $p$ にした論理式が $\mathcal F$ で妥当、(c) $R$ が表の性質をもつ、は同値である。
| 図式 | フレームの性質 | |
|---|---|---|
| 1 | $\mathrm D:\ \Box\varphi\to\Diamond\varphi$ | 継続的 |
| 2 | $\mathrm T:\ \Box\varphi\to\varphi$ | 反射的 |
| 3 | $\mathrm B:\ \varphi\to\Box\Diamond\varphi$ | 対称的 |
| 4 | $4:\ \Box\varphi\to\Box\Box\varphi$ | 推移的 |
| 5 | $5:\ \Diamond\varphi\to\Box\Diamond\varphi$ | Euclid 的 |
(a) ⇒ (b) は明らかである。
(c) ⇒ (a). $\mathcal F$ 上のモデルと世界 $w$ を任意にとり、図式の前件が $w$ で真なら後件も真であることを確かめる。4 で代表させる。$w\Vdash\Box\varphi$ とし、$wRv$、$vRu$ とする。推移性から $wRu$ なので $u\Vdash\varphi$。よって $v\Vdash\Box\varphi$ であり、$w\Vdash\Box\Box\varphi$。
1:$w\Vdash\Box\varphi$ とする。継続性から $wRv$ となる $v$ があり、$v\Vdash\varphi$ なので $w\Vdash\Diamond\varphi$。2:$w\Vdash\Box\varphi$ と $wRw$ から $w\Vdash\varphi$。3:$w\Vdash\varphi$ とし、$wRv$ とする。対称性から $vRw$ なので $v\Vdash\Diamond\varphi$。$v$ は任意なので $w\Vdash\Box\Diamond\varphi$。5:$w\Vdash\Diamond\varphi$ とすると、$wRu$ かつ $u\Vdash\varphi$ となる $u$ がある。$wRv$ なら Euclid 性から $vRu$ なので $v\Vdash\Diamond\varphi$。よって $w\Vdash\Box\Diamond\varphi$。
1:$wRv$ となる $v$ がない $w$ があれば、どの付値でも $w\Vdash\Box p$、$w\not\Vdash\Diamond p$ となり、(b) に反する。3:$wRv$ とし、$V(p)=\{w\}$ とする。$w\Vdash p$ なので (b) から $w\Vdash\Box\Diamond p$、$wRv$ から $v\Vdash\Diamond p$ である。$p$ が真な世界は $w$ だけなので $vRw$。5:$wRv$、$wRu$ とし、$V(p)=\{u\}$ とする。$w\Vdash\Diamond p$ なので $w\Vdash\Box\Diamond p$、よって $v\Vdash\Diamond p$ であり、$p$ が真な世界は $u$ だけなので $vRu$。$\square$
(c) ⇒ (a) の議論は 1 つのモデルの中で完結しているが、(b) ⇒ (c) では付値を自由に選んだ。図式が真である モデル が性質をもつとは限らない(後の反例の表の 3 行目)。対応はフレームの水準の現象である。この定理は OLT26 Theorem 50.1(p. 716)・Theorem 50.6(p. 719)・Corollary 50.8(p. 720)にある。
thm-ml-soundness と合わせると、たとえば $\mathbf{S4}=\mathbf{KT4}$ の定理は反射的かつ推移的なすべてのフレームで、$\mathbf{S5}=\mathbf{KT5}$ の定理は反射的かつ Euclid 的なフレーム、つまり同値関係をもつフレームで妥当である(反射的かつ Euclid 的な関係は同値関係である。$wRv$ と $wRw$ から $vRw$ なので対称的、$wRv$、$vRu$ なら $vRw$、$vRu$ から $wRu$ なので推移的)。
表の性質はどれも $R$ についての一階の文で書けるが、そうでない対応もある。
Löb の図式 $\Box(\Box\varphi\to\varphi)\to\Box\varphi$ が妥当なフレームは、ちょうど $R$ が推移的で、$w_1Rw_2Rw_3R\cdots$ となる無限列をもたないフレームである。一方、この 2 つの性質を合わせたフレームの類は、コンパクト性定理(一階論理)によって一階の文では定められない(OLT26 §50.5、p. 721。この記事では証明しない)。
健全性の逆、つまり「妥当なら定理である」を、極大無矛盾集合を世界とする 標準モデル を作って示す。以下 $\Sigma$ は $\bot\notin\Sigma$ となる正規様相論理とする(論理式全体の集合も正規様相論理なので、この仮定は必要である)。$\Lambda\subset\{\mathrm D,\mathrm T,\mathrm B,4,5\}$ なら $\mathbf K\Lambda$ はこの仮定を満たす。1 点 $w$ と $wRw$ からなるフレームは表の 5 つの性質をすべてもつので、thm-ml-correspondence と thm-ml-soundness により $\mathbf K\Lambda$ の定理はそこで妥当だが、$\bot$ は妥当でないからである。
1 は、論理式を $\varphi_0,\varphi_1,\dots$ と並べ、$\varphi_k$ か $\lnot\varphi_k$ の無矛盾に保てるほうを順に加えていけば得られる。2 と 3 は $\Sigma$ が恒真式の代入例を含みモーダスポネンスで閉じていることから従う。
2. $\Delta\vdash_\Sigma\varphi$ で $\varphi\notin\Delta$ なら $\lnot\varphi\in\Delta$ であり、$\psi_1,\dots,\psi_n\in\Delta$ で $\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\to\varphi$ となるので、恒真式の代入例を使って $\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\land\lnot\varphi\to\bot$、つまり $\Delta\vdash_\Sigma\bot$ となり矛盾する。$\varphi\in\Sigma$ なら $\Delta\vdash_\Sigma\varphi$($n=0$)なので $\Sigma\subset\Delta$。$\bot\in\Delta$ なら $\Delta\vdash_\Sigma\bot$ である。$\varphi$ と $\lnot\varphi$ が両方 $\Delta$ にあれば $\Delta\vdash_\Sigma\bot$ なので、$\lnot\varphi\in\Delta\iff\varphi\notin\Delta$。残りの 3 つは、この 2 つの性質と「$\Delta\vdash_\Sigma$ で閉じている」ことから、対応する恒真式($\varphi\land\psi\to\varphi$、$\varphi\to(\psi\to\varphi\land\psi)$ など)を使って分かる。
1. 論理式は可算個なので $\varphi_0,\varphi_1,\dots$ と並べる。$\Gamma_0=\Gamma$ とし、$\Gamma_k\cup\{\varphi_k\}$ が $\Sigma$ 無矛盾なら $\Gamma_{k+1}=\Gamma_k\cup\{\varphi_k\}$、そうでなければ $\Gamma_{k+1}=\Gamma_k\cup\{\lnot\varphi_k\}$ とする。$\Gamma_k$ が無矛盾なら $\Gamma_{k+1}$ も無矛盾である。実際、$\Gamma_k\cup\{\varphi_k\}$ と $\Gamma_k\cup\{\lnot\varphi_k\}$ がともに矛盾すれば、$\Gamma_k$ の有限個の元の連言 $\gamma$ で $\Sigma\vdash\gamma\land\varphi_k\to\bot$、$\Sigma\vdash\gamma\land\lnot\varphi_k\to\bot$ となり、恒真式の代入例で $\Sigma\vdash\gamma\to\bot$ となる。$\Delta=\bigcup_k\Gamma_k$ は各 $\varphi_k$ か $\lnot\varphi_k$ を含み、矛盾の導出に使う元は有限個なのである $\Gamma_k$ に収まるので、$\Delta$ は無矛盾である。$\Gamma=\emptyset$ は $\bot\notin\Sigma$ により無矛盾なので、$W^\Sigma$ は空でない。
3. $\Diamond\varphi\notin\Delta$ なら $\lnot\lnot\Box\lnot\varphi\in\Delta$ なので 2 により $\Box\lnot\varphi\in\Delta$、よって $\lnot\varphi\in\Box^{-1}\Delta\subset\Delta'$ となり、$\varphi\in\Delta'$ と合わせて $\Delta'$ が矛盾する。$\square$
$\Delta\in W^\Sigma$ と論理式 $\varphi$ について、$\Box\varphi\notin\Delta$ ならば、$\Delta R^\Sigma\Delta'$ かつ $\varphi\notin\Delta'$ となる $\Delta'\in W^\Sigma$ がある。
$\Box^{-1}\Delta\cup\{\lnot\varphi\}$ が $\Sigma$ 無矛盾であることを示せば、lem-ml-mcs の 1 でそれを含む極大無矛盾集合 $\Delta'$ がとれ、$\Box^{-1}\Delta\subset\Delta'$、$\lnot\varphi\in\Delta'$ となる。無矛盾性は lem-ml-rk から従う。
矛盾するとすると、$\psi_1,\dots,\psi_n\in\Box^{-1}\Delta$ で $\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\land\lnot\varphi\to\bot$、恒真式の代入例により $\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\to\varphi$ となる。lem-ml-rk により $\Sigma\vdash\Box\psi_1\land\dots\land\Box\psi_n\to\Box\varphi$ であり、$\Box\psi_i\in\Delta$ なので lem-ml-mcs の 2 から $\Box\varphi\in\Delta$ となって仮定に反する。$\square$
すべての論理式 $\varphi$ と $\Delta\in W^\Sigma$ について、$\mathcal M^\Sigma,\Delta\Vdash\varphi\iff\varphi\in\Delta$。
$\varphi$ の組み立てに関する帰納法による。$\Box\psi$ の場合が要で、$\Box\psi\notin\Delta$ のとき lem-ml-existence を使う。
$\bot$ と命題変数は lem-ml-mcs の 2 と $V^\Sigma$ の定義から、$\lnot,\land,\lor,\to$ は帰納法の仮定と lem-ml-mcs の 2 から従う。$\varphi=\Box\psi$ とする。$\Box\psi\in\Delta$ なら、$\Delta R^\Sigma\Delta'$ となる各 $\Delta'$ で $\psi\in\Box^{-1}\Delta\subset\Delta'$、帰納法の仮定から $\Delta'\Vdash\psi$ なので $\Delta\Vdash\Box\psi$。$\Box\psi\notin\Delta$ なら lem-ml-existence により $\Delta R^\Sigma\Delta'$、$\psi\notin\Delta'$ となる $\Delta'$ があり、帰納法の仮定から $\Delta'\not\Vdash\psi$ なので $\Delta\not\Vdash\Box\psi$。$\square$
$\mathrm D$:$\Box^{-1}\Delta$ が無矛盾なら、それを含む $\Delta'$ が $\Delta R^\Sigma\Delta'$ を満たす。矛盾するとすると $\psi_i\in\Box^{-1}\Delta$ で $\Sigma\vdash\psi_1\land\dots\land\psi_n\to\bot$、lem-ml-rk から $\Box\bot\in\Delta$ となる。$\mathrm D$ から $\Diamond\bot=\lnot\Box\lnot\bot\in\Delta$ だが、$\lnot\bot$ は恒真式なので必然化で $\Box\lnot\bot\in\Sigma\subset\Delta$ となり矛盾する。
$\mathrm B$:$\Delta R^\Sigma\Delta'$ とし、$\Box\psi\in\Delta'$ なのに $\psi\notin\Delta$ とする。$\lnot\psi\in\Delta$ と $\mathrm B$ から $\Box\Diamond\lnot\psi\in\Delta$、よって $\Diamond\lnot\psi=\lnot\Box\lnot\lnot\psi\in\Delta'$。一方 $\psi\to\lnot\lnot\psi$ に lem-ml-rk を使うと $\Box\lnot\lnot\psi\in\Delta'$ となり矛盾する。よって $\Delta'R^\Sigma\Delta$。
$5$:$\Delta_1R^\Sigma\Delta_2$、$\Delta_1R^\Sigma\Delta_3$ とし、$\Box\psi\in\Delta_2$ なのに $\psi\notin\Delta_3$ とする。$\lnot\psi\in\Delta_3$ なので lem-ml-mcs の 3 から $\Diamond\lnot\psi\in\Delta_1$、$5$ から $\Box\Diamond\lnot\psi\in\Delta_1$、よって $\lnot\Box\lnot\lnot\psi\in\Delta_2$。$\mathrm B$ の場合と同じく $\Box\lnot\lnot\psi\in\Delta_2$ なので矛盾する。よって $\Delta_2R^\Sigma\Delta_3$。
標準モデルの構成とこれらの補題は OLT26 Chapter 52(Lindenbaum の補題 p. 745、Definition 52.11 p. 748、Proposition 52.12 p. 749、Theorem 52.14・Corollary 52.15 p. 750、Theorem 52.16・52.17 pp. 750–751)にある(同書は $\Diamond$ を記号とし、$\Diamond p\leftrightarrow\lnot\Box\lnot p$ を公理に加える)。どの正規様相論理もフレームの類について完全なわけではない(同 §52.8 末尾、p. 753)。
標準モデルは無限である。そこで、与えられた論理式の部分論理式だけを見分けるように世界を同一視して、有限のモデルに縮める。
モデル $\mathcal M=(W,R,V)$ と、部分論理式で閉じた論理式の集合 $\Gamma$ をとる。$u\equiv v$ を「すべての $\psi\in\Gamma$ について $u\Vdash\psi\iff v\Vdash\psi$」で定め、$u$ の同値類を $[u]$ と書く。$W^*=\{[u]\mid u\in W\}$、
$$
[u]R^*[v]\iff u'Rv'\ \text{となる}\ u'\in[u],\ v'\in[v]\ \text{がある},\qquad V^*(p)=\{[u]\mid u\in V(p)\}
$$
とおいたモデル $\mathcal M^*=(W^*,R^*,V^*)$ を、$\mathcal M$ の $\Gamma$ による 最小のフィルトレーション という。
$\psi=p\in\Gamma$ のとき、$[w]\in V^*(p)$ なら $w\equiv u$ となる $u\in V(p)$ があり、$p\in\Gamma$ なので $w\Vdash p$ である。逆は定義から。結合子の場合は帰納法の仮定と真理値表による。$\psi=\Box\chi$ とする。$w\Vdash\Box\chi$ で $[w]R^*[v]$ なら、$u'Rv'$ となる $u'\equiv w$、$v'\equiv v$ がある。$\Box\chi\in\Gamma$ なので $u'\Vdash\Box\chi$、よって $v'\Vdash\chi$、$\chi\in\Gamma$ なので $v\Vdash\chi$、帰納法の仮定から $[v]\Vdash\chi$。よって $[w]\Vdash\Box\chi$。逆に $[w]\Vdash\Box\chi$ で $wRv$ なら $[w]R^*[v]$ なので $[v]\Vdash\chi$、帰納法の仮定から $v\Vdash\chi$。よって $w\Vdash\Box\chi$。
世界が $\{1,\dots,m\}$($m\le2^{|\operatorname{Sub}(\varphi)|}$)のモデルで、付値を $\varphi$ に現れる命題変数だけについて決めたものは有限個しかない(ほかの変数の付値は $\varphi$ の真偽に影響しない)。そのすべてで $\varphi$ の真偽を計算し、偽になる世界がなければ、上の議論により $\mathbf K\vdash\varphi$ であり、あれば thm-ml-soundness により $\mathbf K\not\vdash\varphi$ である。$\square$
この方法は OLT26 Chapter 53(Definition 53.4・Theorem 53.5 p. 757、Definition 53.7 p. 759、Proposition 53.12 p. 760、Proposition 53.14 p. 761)による。$\mathbf{S4}$ などでは、推移性などを保つように $R^*$ の取り方を工夫する(同 Theorem 53.18、p. 762。$\mathbf{S5}$ の決定可能性は同 Theorem 53.17)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\mathrm T$ の妥当性に要る反射性 | 1 点 $w$、$R=\emptyset$、$V(p)=\emptyset$ | $\Box p\to p$ が $w$ で真 |
| $4$ の妥当性に要る推移性 | $W=\{u,v\}$、$R=\{(u,v),(v,u)\}$、$V(p)=\{v\}$ | $\Box p\to\Box\Box p$ が $u$ で真 |
| 対応定理の「フレームで妥当」(モデルで真に弱める) | 2 行目の $W,R$ の上で、各命題変数が $u,v$ で同じ値をとるモデル | 「$\mathrm T$ の例がすべて真なら反射的」 |
| 必然化を定理だけに使うこと | $W=\{u,v\}$、$R=\{(u,v)\}$、$V(p)=\{u\}$ で、前提 $p$ から $\Box p$ を導く | 「前提が真の世界では結論も真」 |
1 行目:$w$ から到達できる世界がないので $w\Vdash\Box p$ だが $w\not\Vdash p$。2 行目:$u$ から到達できるのは $v$ だけで $v\Vdash p$ なので $u\Vdash\Box p$。$v$ から到達できるのは $u$ で $u\not\Vdash p$ なので $v\not\Vdash\Box p$、よって $u\not\Vdash\Box\Box p$。$R$ は対称的だが推移的でない($uRv$、$vRu$ だが $uRu$ でない)。3 行目:各命題変数が $u,v$ で同じ値をとるので、論理式の組み立てに関する帰納法で、すべての論理式が $u$ と $v$ で同じ真偽をもつ($\Box\psi$ は $u$ では $v$ での $\psi$ の値、$v$ では $u$ での値になるから)。よって $\Box\psi\to\psi$ はどちらの世界でも真だが、$R$ は反射的でない(OLT26 Proposition 50.2、p. 717)。4 行目:$u\Vdash p$ だが $u\not\Vdash\Box p$。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する