古典群のコホモロジー環

同義語:古典群のコホモロジーcohomology of classical groups

概要

古典群のコホモロジー環(cohomology of classical groups)とは、ユニタリ群 $U(n)$、特殊ユニタリ群 $SU(n)$、コンパクトシンプレクティック群 $Sp(n)$、特殊直交群 $SO(n)$ などのコンパクトな行列群の特異コホモロジー環である。$U(n)$・$SU(n)$・$Sp(n)$ の整数係数の環は奇数次の生成元の外積代数で、第 1 列をとる球面への写像のファイバー束に Leray–Hirsch の定理を当てて求まり、球面の直積と同じ環になる。$SO(n)$ の整数係数のコホモロジーは位数 $2$ の捩れをもち、$\mathbb{Z}/2$ 係数の環は鏡映の積による胞体分割から切り詰めた多項式環のテンソル積として求まる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ユニタリ群, 特殊直交群, コホモロジー環, Leray–Hirschの定理

古典群のコホモロジー環(cohomology of classical groups)は、ユニタリ群 $U(n)$、特殊ユニタリ群 $SU(n)$、コンパクトシンプレクティック群 $Sp(n)$、特殊直交群 $SO(n)$ などのコンパクトな行列群の特異コホモロジー環である。$U(n)$・$SU(n)$・$Sp(n)$ の整数係数のコホモロジー環は奇数次の生成元の外積代数になり、球面の直積と同じ環をもつ。一方 $SO(n)$ の整数係数のコホモロジーは位数 $2$ の捩れをもち、$\mathbb Z/2$ 係数のコホモロジー環は切り詰めた多項式環のテンソル積になる。
前者は球面の上のファイバー束と Leray–Hirsch の定理から、後者は鏡映の積でできる胞体の構造から求まる。

定義

$\mathbb K$ を $\mathbb R$、$\mathbb C$、四元数体 $\mathbb H$ のいずれかとする。$\mathbb K^n$ は列ベクトルの空間で、スカラーは右から掛ける。行列 $A$ の共役転置を $A^*$ と書き、$\mathbb K^n$ の内積を $\langle x,y\rangle:=x^*y=\sum_i\bar x_iy_i$ とする(四元数)。

コンパクト古典群

$n\ge1$ とする。
$$ O(n)=\{A\in M_n(\mathbb R)\mid A^*A=I\},\quad U(n)=\{A\in M_n(\mathbb C)\mid A^*A=I\},\quad Sp(n)=\{A\in M_n(\mathbb H)\mid A^*A=I\} $$
をそれぞれ直交群、ユニタリ群、コンパクトシンプレクティック群といい、$SO(n)=\{A\in O(n)\mid\det A=1\}$、$SU(n)=\{A\in U(n)\mid\det A=1\}$ を特殊直交群、特殊ユニタリ群という。どれも $M_n(\mathbb K)$ の部分空間の位相で位相群になる。

$A^*A=I$ は $A$ の列が正規直交基底をなすことと同じで、このとき $AA^*=I$ でもある。$Sp(n)$ は四元数の内積を保つ $\mathbb H^n$ の右線形変換の群であり、実数の上の斜交群 $Sp_{2n}(\mathbb R)$(古典群 の定義「形式を保つ群」)とは別の群である。低い次数では $U(1)=S^1$、$SU(1)=\{1\}$、$Sp(1)=S^3$(単位四元数の群)である。
整数係数の外積代数を次のように定める。

整数上の外積代数

奇数の次数 $\deg y_1,\dots,\deg y_k$ をもつ文字 $y_1,\dots,y_k$ について、$\Lambda_{\mathbb Z}[y_1,\dots,y_k]$ を、単項式 $y_{i_1}y_{i_2}\cdots y_{i_r}$($1\le i_1<\cdots< i_r\le k$、空の積は $1$)を基底とする自由 $\mathbb Z$ 加群に、$y_i^2=0$、$y_iy_j=-y_jy_i$ で積を入れた次数付き環とする。これを $y_1,\dots,y_k$ の上の外積代数という。

$\Lambda_{\mathbb Z}[y_1,\dots,y_k]$ は次数付き可換であり、階数は $2^k$ である。次数付き可換な環 $R$ の奇数次の元 $z_1,\dots,z_k$ が $z_i^2=0$ を満たせば、$y_i\mapsto z_i$ は環準同型 $\Lambda_{\mathbb Z}[y_1,\dots,y_k]\to R$ に一意に延びる(単項式の積は並べ替えの符号だけで決まるからである)。
以下、コホモロジーの係数を書かないときは $\mathbb Z$ とする。

$U(n)$・$SU(n)$・$Sp(n)$ のコホモロジー環

$n\ge1$ とし、下付きの添字は生成元の次数を表す($\deg x_i=i$)。次数付き環の同型
$$ \begin{aligned} H^*(U(n);\mathbb Z)&\cong\Lambda_{\mathbb Z}[x_1,x_3,\dots,x_{2n-1}],\\ H^*(SU(n);\mathbb Z)&\cong\Lambda_{\mathbb Z}[x_3,x_5,\dots,x_{2n-1}],\\ H^*(Sp(n);\mathbb Z)&\cong\Lambda_{\mathbb Z}[x_3,x_7,\dots,x_{4n-1}] \end{aligned} $$
がある($SU(1)$ では右辺は $\mathbb Z$)。生成元は、$n\ge2$ のとき次を満たすようにとれる:部分群の包含 $\iota\colon G(n-1)\to G(n)$、$B\mapsto\operatorname{diag}(1,B)$ は次数が最大のもの以外の生成元を $G(n-1)$ の同名の生成元に写し、最大の次数 $d$ の生成元は、第 1 列をとる写像 $p\colon G(n)\to S^d$ による $H^d(S^d)$ の生成元の引き戻しである。ここで $G(n)$ は $U(n)$・$SU(n)$・$Sp(n)$ のいずれかを表し、$d$ はそれぞれ $2n-1$、$2n-1$、$4n-1$ である。

証明の置き場所

証明は、次の節の lem-cgc-bundle と lem-cgc-extend を準備したあと、prf-cgc-main で与える。生成元の選び方は一意ではない(たとえば符号を替えてもよい)。

とくにこれらの群の整数係数のコホモロジーは捩れをもたず、$U(n)$ の Poincaré 多項式は $\prod_{i=1}^n(1+t^{2i-1})$、$Sp(n)$ のそれは $\prod_{i=1}^n(1+t^{4i-1})$ である。

直感

$G(n)$ は第 1 列 $Ae_1$ を見ることで球面 $S^d$ の上に広がり、各点の上には $G(n-1)$ の複製が乗っている。この束が積であることは使わない(積であるとも限らない)。ファイバーの生成元の次数が $d-1$ より低いので、ファイバーのコホモロジー類は全体の類に延び、コホモロジーは積 $S^d\times G(n-1)$ と同じ形になる。これをくり返すと、$U(n)$ のコホモロジー環は $S^1\times S^3\times\cdots\times S^{2n-1}$ のそれと一致する。$SO(n)$ では第 1 列で $S^{n-1}$ に写すとファイバー $SO(n-1)$ に次数 $n-2=d-1$ の類($\mathbb Z/2$ 係数)があってこの議論が使えず、実際に整数係数の捩れが現れる。

球面の上のファイバー束

以下 $(\mathbb K,G(n),d)$ は $(\mathbb C,U(n),2n-1)$、$(\mathbb C,SU(n),2n-1)$、$(\mathbb H,Sp(n),4n-1)$ のいずれかとし、$S^d\subset\mathbb K^n$ を単位球面、$e_1$ を第 1 標準基底ベクトル、$p\colon G(n)\to S^d$、$p(A):=Ae_1$ とする。$U:=S^d\setminus\{e_1\}$、$V:=S^d\setminus\{-e_1\}$ とおく。

二つの極を除いた局所自明化

$n\ge2$ とし、$G(n-1)$ を $B\mapsto\operatorname{diag}(1,B)$ で $G(n)$ の部分群とみる。連続写像 $s_U\colon U\to G(n)$、$s_V\colon V\to G(n)$ で $p\circ s_U=\mathrm{id}_U$、$p\circ s_V=\mathrm{id}_V$ となるものがあり、
$$ \Phi_U\colon U\times G(n-1)\to p^{-1}(U),\quad(v,B)\mapsto s_U(v)\operatorname{diag}(1,B) $$
とその $V$ 版 $\Phi_V$ は同相写像である。とくに $p$ はファイバー $G(n-1)$ のファイバー束である。

第 1 列を写す行列を式で与える

要点:$v\ne e_1$ に対して $w:=e_1-v$、$a:=(1-\bar v_1)^{-1}$ とおくと、$Q(v):=I-waw^*$ はユニタリで $Q(v)e_1=v$ を満たす。$-e_1$ の近くでは、$J:=\operatorname{diag}(-1,-1,1,\dots,1)$ を使って $v\mapsto Js_U(Jv)$ とする。

証明を開く

$Q(v)$ の性質.$v\in U$ なら $v_1\ne1$ である($|v_1|\le|v|=1$ で、$v_1=1$ なら他の成分は $0$ になり $v=e_1$)。$Q(v)$ の $(i,j)$ 成分は $\delta_{ij}-w_ia\bar w_j$ で、$v$ について連続である。$w^*e_1=\bar w_1=1-\bar v_1$ だから $Q(v)e_1=e_1-wa(1-\bar v_1)=e_1-w=v$ である。$Q(v)^*=I-w\bar aw^*$ であり、$w^*w=|1-v_1|^2+\sum_{i\ge2}|v_i|^2=2-2\operatorname{Re}v_1$ は実数なので$$Q^*Q=I-w(a+\bar a)w^*+w\,\bar a(w^*w)a\,w^*=I-w\bigl(a+\bar a-|a|^2w^*w\bigr)w^*.$$$a^{-1}+\bar a^{-1}=(1-\bar v_1)+(1-v_1)=w^*w$ で、$a^{-1}=\bar a/|a|^2$(四元数でも成り立つ)から $|a|^2w^*w=|a|^2(a^{-1}+\bar a^{-1})=\bar a+a$ となり、$Q^*Q=I$ である。四元数の場合も、使った可換性は実数 $w^*w$ と $|a|^2$ がすべての元と可換であることだけである。

切断.$U(n)$・$Sp(n)$ では $s_U:=Q$ とする。$SU(n)$ では $\delta(v):=\det Q(v)$($|\delta|=1$)とおき、$s_U(v):=Q(v)\operatorname{diag}(1,\dots,1,\delta(v)^{-1})$ とする。$n\ge2$ なので第 1 列は変わらず、$\det s_U=1$ である。$J$ は 3 つの群のどれにも属し $J^2=I$ である。$v\in V$ なら $Jv\ne e_1$($Je_1=-e_1$)なので $s_V(v):=Js_U(Jv)$ が定義でき、$s_V(v)e_1=J(Jv)=v$ である。

同相.$C\in G(n)$ が $Ce_1=e_1$ を満たすとする。$j\ge2$ について第 $j$ 列は第 1 列 $e_1$ に直交するので、その第 1 成分 $\langle e_1,Ce_j\rangle$ は $0$ であり、$C=\operatorname{diag}(1,B)$ と書ける。$B$ の列は正規直交で、$SU(n)$ では $\det B=\det C=1$ だから $B\in G(n-1)$ である。よって $A\mapsto\bigl(Ae_1,\ s_U(Ae_1)^{-1}A\text{ の右下の }(n-1)\text{ 次ブロック}\bigr)$ は $p^{-1}(U)\to U\times G(n-1)$ の連続写像で、$\Phi_U$ の両側の逆写像である。$V$ でも同じである。$\square$

$W:=U\cap V$ の上では、$\Phi_V^{-1}\circ\Phi_U(v,B)=(v,t(v)B)$ となる連続写像 $t\colon W\to G(n-1)$ がある($\operatorname{diag}(1,t(v)):=s_V(v)^{-1}s_U(v)$ は $e_1$ を固定するので、上の証明により $G(n-1)$ の元である)。

低い次数の類の延長

$n\ge2$ とし、$F:=G(n-1)$ は弧状連結で、各 $H^q(F)$ は有限生成自由加群であるとする。$0\le q< d-1$ と $y\in H^q(F)$ について、$c\in H^q(G(n))$ で
$$ \Phi_U^*\bigl(c|_{p^{-1}(U)}\bigr)=\mathrm{pr}_F^*y,\qquad\Phi_V^*\bigl(c|_{p^{-1}(V)}\bigr)=\mathrm{pr}_F^*y $$
を満たすものがある($\mathrm{pr}_F$ は $F$ への射影)。とくに、各点 $v$ の上のファイバーを $\Phi_U(v,\cdot)$ または $\Phi_V(v,\cdot)$ で $F$ と同一視すると $c$ のファイバーへの制限は $y$ であり、部分群の包含 $\iota\colon F\to G(n)$ についても $\iota^*c=y$ である。

二つの開集合の Mayer–Vietoris 完全列

要点:$W$ は $S^{d-1}$ にホモトピー同値なので、$q< d-1$ では $H^q(W\times F)\to H^q(F)$ が同型であり、貼り合わせ $(v,B)\mapsto(v,t(v)B)$ は $H^q(W\times F)$ に恒等写像を引き起こす。よって両側の $\mathrm{pr}_F^*y$ は共通部分で一致し、Mayer–Vietoris 完全列から全体の類になる。

証明を開く

$W\times F$ のコホモロジー.$W=S^d\setminus\{\pm e_1\}$ は、$v_s:=(v-s\operatorname{Re}(v_1)e_1)/|v-s\operatorname{Re}(v_1)e_1|$($0\le s\le1$)により、$\operatorname{Re}u_1=0$ となる単位ベクトル $u$ のなす $d-1$ 次元球面に変位レトラクトする(分母が $0$ になるのは $v$ が $e_1$ の実数倍のとき、すなわち $v=\pm e_1$ のときだけである)。$H^*(F)$ は各次数で有限生成自由なので、Leray–Hirschの定理(一般の係数環) の補題「積空間のクロス積」により $H^q(W\times F)\cong\bigoplus_aH^a(W)\otimes H^{q-a}(F)$ である。$0< a< d-1$ では $H^a(W)\cong H^a(S^{d-1})=0$ なので、$q< d-1$ では $\mathrm{pr}_F^*\colon H^q(F)\to H^q(W\times F)$ は同型であり、点 $v_0\in W$ での包含 $i_{v_0}\colon F\to W\times F$、$B\mapsto(v_0,B)$ が誘導する $i_{v_0}^*$ はその逆写像である。

貼り合わせの作用.$\tau:=\Phi_V^{-1}\circ\Phi_U$ とおく。$\tau\circ i_{v_0}=i_{v_0}\circ L$、$L(B):=t(v_0)B$ である。$F$ は弧状連結なので $I$ から $t(v_0)$ への道 $\gamma$ があり、$(B,s)\mapsto\gamma(s)B$ は $\mathrm{id}_F$ から $L$ へのホモトピーである。よって $i_{v_0}^*\tau^*=L^*i_{v_0}^*=i_{v_0}^*$ であり、$q< d-1$ では $i_{v_0}^*$ が同型なので $\tau^*$ は $H^q(W\times F)$ の恒等写像である。

延長.$\alpha:=(\Phi_U^{-1})^*\mathrm{pr}_F^*y\in H^q(p^{-1}(U))$、$\beta:=(\Phi_V^{-1})^*\mathrm{pr}_F^*y\in H^q(p^{-1}(V))$ とおく。$p^{-1}(W)$ への制限を $\Phi_U$ で $W\times F$ に引き戻すと、$\alpha$ は $\mathrm{pr}_F^*y$、$\beta$ は $\tau^*\mathrm{pr}_F^*y=\mathrm{pr}_F^*y$ になる。よって $\alpha$ と $\beta$ は $p^{-1}(W)$ で一致する。開被覆 $G(n)=p^{-1}(U)\cup p^{-1}(V)$ の Mayer–Vietoris 完全列$$H^q(G(n))\to H^q(p^{-1}(U))\oplus H^q(p^{-1}(V))\to H^q(p^{-1}(W))$$(2 つ目の写像は制限の差。Hat02 §3.1、p. 203)の完全性から、両方への制限が $\alpha$、$\beta$ になる $c$ がある。

部分群への制限.$e_1\in V$ であり、$s_V(e_1)^{-1}=\operatorname{diag}(1,t_0)$($t_0\in F$)とおくと $\iota(B)=\Phi_V(e_1,t_0B)$ である。左からの $t_0$ 倍は上と同じく $\mathrm{id}_F$ にホモトピックなので、$\iota^*c=y$ である。$\square$

主定理の証明

$n$ についての帰納法

要点:$n=1$ では $G(1)$ は $S^1$、$S^3$、1 点である。$n\ge2$ では、ファイバー $F=G(n-1)$ の生成元の次数はどれも $d-1$ より小さいので、lem-cgc-extend により全体の類 $c_i$ に延び、その積 $c_I$ は各ファイバーで基底に制限する。Leray–Hirsch の定理から、$\eta$ を $H^d(S^d)$ の生成元、$a:=p^*\eta$ として $\{c_I\}\cup\{c_Ia\}$ が $H^*(G(n))$ の $\mathbb Z$ 基底になる。捩れがないので奇数次の類の平方は $0$ であり、環は外積代数になる。

証明を開く

3 つの群をまとめて $n$ についての帰納法で示す。主張に「$G(n)$ は弧状連結」を加える。

$n=1$. $U(1)=S^1$、$Sp(1)=S^3$、$SU(1)=\{1\}$ なので、$H^*$ はそれぞれ $\Lambda_{\mathbb Z}[x_1]$、$\Lambda_{\mathbb Z}[x_3]$、$\mathbb Z$ で、どれも弧状連結である(Mayer–Vietoris完全列 の命題「球面のホモロジー」と 普遍係数定理)。

$n-1$ から $n$ へ. $n\ge2$ とし、$F:=G(n-1)$ について主張が成り立つとする。$F$ の生成元の次数の最大値は、$U(n-1)$・$SU(n-1)$ では $2n-3$、$Sp(n-1)$ では $4n-5$ で、どれも $d-1$ より小さい($SU(1)$ では生成元がない)。

弧状連結性. $p^{-1}(U)\cong U\times F$ と $p^{-1}(V)\cong V\times F$(lem-cgc-bundle)は弧状連結な空間の積なので弧状連結で、共通部分 $p^{-1}(W)$ は空でないから、$G(n)$ は弧状連結である。

ファイバーの基底の延長. $F$ の各生成元 $x_i$ に lem-cgc-extend を当てて $c_i\in H^i(G(n))$ を選ぶ。相異なる生成元の積 $x_I:=x_{i_1}\cdots x_{i_r}$($i_1<\cdots< i_r$)は $H^*(F)$ の基底であり、ファイバーへの制限は環準同型なので、$c_I:=c_{i_1}\cdots c_{i_r}$ のどのファイバーへの制限も $x_I$ である。すなわち $\{c_I\}$ は各ファイバーで基底に制限する。

Leray–Hirsch の定理. $H^*(F)$ は各次数で有限生成自由なので、ファイバー束 $p$ に Leray–Hirschの定理(一般の係数環) の定理「任意の底空間と係数環での Leray–Hirsch の定理」を当てて、$H^*(G(n))$ は $\{c_I\}$ を基底とする自由 $H^*(S^d)$ 加群である。$H^*(S^d)=\mathbb Z\cdot1\oplus\mathbb Z\eta$($\deg\eta=d$)なので、$a:=p^*\eta$ とおくと$$\{c_I\}\cup\{c_Ia\}$$が $H^*(G(n))$ の $\mathbb Z$ 基底である。とくに $H^*(G(n))$ は捩れをもたない。

環の構造. $c_i$ と $a$ はどれも奇数次である。次数付き可換性(コホモロジー環 の定理「コホモロジー環の基本性質」)から $c_i^2=-c_i^2$、すなわち $2c_i^2=0$ であり、捩れがないので $c_i^2=0$ である。また $a^2=p^*(\eta^2)$ で、$\eta^2\in H^{2d}(S^d)=0$ だから $a^2=0$ である。よって $x_i\mapsto c_i$、$x_d\mapsto a$ は環準同型 $\Lambda_{\mathbb Z}[\dots,x_d]\to H^*(G(n))$ を定め(def-cgc-exterior の後の注意)、外積代数の単項式の基底 $x_I$、$x_Ix_d$ を $\mathbb Z$ 基底 $c_I$、$c_Ia$ に写すので同型である。生成元の次数は、$U(n)$ では $1,3,\dots,2n-3$ に $d=2n-1$ が加わり、$SU(n)$ では $3,\dots,2n-3$ に $2n-1$、$Sp(n)$ では $3,7,\dots,4n-5$ に $4n-1$ が加わる。lem-cgc-extend により $\iota^*c_i=x_i$ である。$\square$

球面の積との比較

$n\ge1$ について、$H^*(U(n);\mathbb Z)$ は $H^*(S^1\times S^3\times\cdots\times S^{2n-1};\mathbb Z)$ と、$H^*(Sp(n);\mathbb Z)$ は $H^*(S^3\times S^7\times\cdots\times S^{4n-1};\mathbb Z)$ と次数付き環として同型である。また $H^*(U(n);\mathbb Z)\cong H^*(SU(n);\mathbb Z)\otimes H^*(S^1;\mathbb Z)$ である。

球面の積のコホモロジー環は、各球面の生成元の引き戻しの上の外積代数である(Künneth公式 の定理「コホモロジー環の Künneth の公式」を因子ごとにくり返し当てる。球面 2 つの場合は同記事の例「球面の積」。どの次数も奇数なので外積代数になる)。生成元の次数を比べると thm-cgc-main の右辺と一致する。最後の主張も外積代数の生成元の次数を比べればよい。$\square$

最後の同型は、$U(n)$ が空間として $SU(n)\times U(1)$ と同相であること(ユニタリ群 の命題「行列式による分解」)とも合う。ただし $n\ge2$ なら群としては $U(n)$ は直積に分かれない(同記事の系「$\mathrm{U}(n)$ は直積に分かれない」)ので、コホモロジー環は群の構造の違いを見分けない。

特殊直交群の $\mathbb Z/2$ 係数のコホモロジー環

$\mathbb F_2:=\mathbb Z/2$ とし、$P^i:=\mathbb{RP}^i$ を $\mathbb R^{i+1}=\langle e_1,\dots,e_{i+1}\rangle\subset\mathbb R^n$ の直線の空間とみる(実射影空間)。$0$ でない $v\in\mathbb R^n$ について $r(v)$ を超平面 $v^\perp$ に関する鏡映とし、$\rho(v):=r(v)r(e_1)\in SO(n)$ とおく。$\rho(v)$ は直線 $[v]$ だけで決まるので写像 $\rho\colon P^{n-1}\to SO(n)$ を定め、$\rho([e_1])=I$ である。直積
$$ \rho\colon\mathcal W:=P^{n-1}\times P^{n-2}\times\cdots\times P^1\to SO(n),\qquad(v_1,\dots,v_{n-1})\mapsto\rho(v_1)\cdots\rho(v_{n-1}) $$
も同じ記号で書く。$n>i_1>\cdots>i_m>0$ を満たす列 $I=(i_1,\dots,i_m)$(空の列も含む)を許容列という。

鏡映の積による胞体分割

$n\ge2$ とする。$P^i$ の標準の胞体分割(各次元に 1 つずつの胞体 $e^i$)と $\mathcal W$ の積の胞体分割について、次が成り立つ。

  1. $SO(n)$ には、許容列 $I$ ごとに 1 つの $\sum_ki_k$ 次元の胞体 $e^I=e^{i_1}\cdots e^{i_m}$($P^{n-1}\subset SO(n)$ の胞体 $e^{i_k}$ の群の積)をもつ CW 構造がある。空の列には 0 胞体 $\{I\}$ が対応する。
  2. $\rho\colon\mathcal W\to SO(n)$ は胞体写像であり、$SO(n)$ の各胞体は $\mathcal W$ のある胞体の同相な像である。
  3. $\mathcal W$ の $i$ 胞体 $e^{a_1}\times\cdots\times e^{a_{n-1}}$ のうち、正の $a_k$ が 2 つ以上あるものの $\rho$ による像は、胞体 $e^i$($I=(i)$)を含まない $SO(n)$ の部分複体に入る。
胞体分割の出典

1・2 は Hat02 Proposition 3D.1(p. 295)とその証明(pp. 295–296)である。3 は同書の包含 $P^iP^i\subset P^iP^{i-1}$、$P^iP^j\subset P^jP^i$($i< j$。p. 296)から従い、Theorem 3D.2 の証明(p. 297)で使われている:積の因子を次元の大きい順に並べ替え、同じ次元が重なれば次元が下がるので、像は相異なる $j_1>\cdots>j_k$($j_1+\cdots+j_k\le i$)についての $P^{j_1}\cdots P^{j_k}$ に入る。和が $i$ より小さければこの部分複体に $i$ 次元の胞体はない。和が $i$ なら重なりは起きていないので $k\ge2$ であり、その $i$ 次元の胞体は $e^{(j_1,\dots,j_k)}$ だけである。この記事では 1・2 を証明しない。

$\mathbb F_2$ 係数の胞体余鎖として、$e^i$ に $1$、ほかの $i$ 胞体に $0$ を与えるものが定める類を $\beta_i\in H^i(SO(n);\mathbb F_2)$($1\le i\le n-1$)とし、$i\ge n$ では $\beta_i:=0$ とおく。

$SO(n)$ の $\mathbb F_2$ 係数のコホモロジー環

$n\ge2$ とし、奇数 $i< n$ について $p_i$ を $ip_i\ge n$ となる最小の $2$ の冪とする。

  1. 許容列 $I$ を動かすとき、$\beta_I:=\beta_{i_1}\cdots\beta_{i_m}$ は $H^*(SO(n);\mathbb F_2)$ の基底であり、$\beta_i^2=\beta_{2i}$($1\le i< n$)が成り立つ。とくに $\dim H^*(SO(n);\mathbb F_2)=2^{n-1}$ で、Poincaré 多項式は $\prod_{i=1}^{n-1}(1+t^i)$ である。
  2. 次数付き環の同型
    $$ H^*(SO(n);\mathbb F_2)\cong\bigotimes_{i< n,\ i\text{ は奇数}}\mathbb F_2[\beta_i]/(\beta_i^{p_i}) $$
    がある。
鏡映の積への引き戻し

要点:$\mathbb F_2$ 係数では $\mathcal W$ も $SO(n)$ も胞体余鎖の微分が $0$ で、$\rho^*$ は単射になる。$\mathcal W$ のコホモロジーは切り詰めた多項式環で、$\rho^*\beta_i=\sum_{j\ge i}\alpha_j^i$ と計算できる。これらの積が 1 次独立であることを、添字の小さい順に変数を消して示す。

証明を開く

微分と $\rho^*$.$P^j$ の $\mathbb F_2$ 係数の胞体境界は $0$ である(実射影空間 の定理「実射影空間のホモロジー」の証明で、境界の係数は $0$ か $2$)。積の胞体の境界は因子の境界の和なので(Hat02 Proposition 3B.1、p. 269)、$\mathcal W$ の胞体境界も $0$ である。thm-cgc-cells の 2 により胞体鎖写像 $\rho_\#$ は全射なので、$SO(n)$ の鎖 $z=\rho_\#w$ について $\partial z=\rho_\#\partial w=0$ となり、$SO(n)$ の胞体境界も $0$ である。よって両方の空間で $\mathbb F_2$ 係数のコホモロジーは胞体余鎖そのもので、$\rho^*$ は全射 $\rho_\#$ の双対として単射である。とくに $\dim H^*(SO(n);\mathbb F_2)$ は胞体の個数、すなわち $\{1,\dots,n-1\}$ の部分集合の個数 $2^{n-1}$ に等しい。

$\mathcal W$ の環と $\rho^*\beta_i$.$H^*(P^j;\mathbb F_2)=\mathbb F_2[\alpha]/(\alpha^{j+1})$(実射影空間 の定理「$\mathbb{Z}/2$ 係数のコホモロジー環」)と体係数の Künneth の公式(Künneth公式 の定理「コホモロジー環の Künneth の公式」)から、因子 $P^j$ の生成元の引き戻しを $\alpha_j$ とすると $A:=H^*(\mathcal W;\mathbb F_2)=\mathbb F_2[\alpha_1,\dots,\alpha_{n-1}]/(\alpha_1^2,\alpha_2^3,\dots,\alpha_{n-1}^n)$ であり、単項式 $\alpha_1^{a_1}\cdots\alpha_{n-1}^{a_{n-1}}$ は胞体 $e^{a_1}\times\cdots$ の双対の類である。$\rho^*\beta_i$ の胞体 $\sigma$ での値は $\rho_\#\sigma$ の $e^i$ の係数である。$\sigma$ の正の次元の因子が因子 $P^j$ の $e^i$ だけなら、$\rho$ は $\sigma$ を $e^i$ の上に同相に写すので値は $1$ である($j\ge i$ が必要)。正の因子が 2 つ以上なら、thm-cgc-cells の 3 により値は $0$ である。よって$$\rho^*\beta_i=b_i:=\sum_{j=i}^{n-1}\alpha_j^i .$$

1 次独立性.$S\subset\{1,\dots,n-1\}$ について $b_S:=\prod_{i\in S}b_i$ とおく。$k=n,n-1,\dots,1$ の順に「$S\subset\{k,\dots,n-1\}$ を動く $b_S$ は 1 次独立」を示す。$k=n$ では $b_\emptyset=1$ だけである。$k$ のとき、関係式を $b_kX+Y=0$($X,Y$ は $S\subset\{k+1,\dots,n-1\}$ の $b_S$ の 1 次結合)と書く。$i>k$ の $b_i$ は $\alpha_k$ を含まない。$A$ は $\alpha_k$ 以外の変数の生成する部分環 $A'$ 上 $1,\alpha_k,\dots,\alpha_k^k$ を基底とする自由加群であり、$b_k=\alpha_k^k+(A'\text{ の元})$、$X,Y\in A'$ だから、$\alpha_k^k$ の係数を見て $X=0$ を得る。帰納法の仮定から $X$ の係数はすべて $0$ で、残る $Y=0$ からも係数がすべて $0$ である。

結論.$\rho^*$ は単射なので $\beta_S$($S$ を減少列に並べたものが許容列)も 1 次独立で、個数 $2^{n-1}$ が次元に等しいから基底である。標数 $2$ では $b_i^2=\sum_j\alpha_j^{2i}$ であり、$j<2i$ の項は $\alpha_j^{2i}=0$ なので $b_i^2=b_{2i}$($2i\ge n$ なら $0$)となる。$\rho^*$ の単射性から $\beta_i^2=\beta_{2i}$ である。これをくり返すと $\beta_i^{2^a}=\beta_{i2^a}$($i2^a\ge n$ なら $0$)であり、$j< n$ を $j=i2^a$($i$ 奇数)と一意に書けば、相異なる $\beta_j$ の積は $\prod_{i\text{ 奇数}}\beta_i^{r_i}$($0\le r_i< p_i$)と一対一に対応する($r_i$ の 2 進展開)。よって 2 の右辺から左辺への自然な準同型は基底を基底に写し、同型である。$\square$

低い次数の特殊直交群
  1. $n=3$:$p_1=4$ なので $H^*(SO(3);\mathbb F_2)\cong\mathbb F_2[\beta_1]/(\beta_1^4)$ である。これは $SO(3)\cong\mathbb{RP}^3$(Hat02 pp. 293–294)と合う。
  2. $n=4$:$p_1=4$、$p_3=2$ なので $\mathbb F_2[\beta_1]/(\beta_1^4)\otimes\mathbb F_2[\beta_3]/(\beta_3^2)$ である。
  3. $n=5$:$p_1=8$、$p_3=2$ なので $\mathbb F_2[\beta_1]/(\beta_1^8)\otimes\mathbb F_2[\beta_3]/(\beta_3^2)$ で、次元は $16$ である。
  4. $n=7$:$p_1=8$、$p_3=4$、$p_5=2$ なので $\mathbb F_2[\beta_1,\beta_3,\beta_5]/(\beta_1^8,\beta_3^4,\beta_5^2)$ で、次元は $64$ である。

$SO(3)$ と $S^1\times S^2$ は、$\mathbb F_2$ 係数のコホモロジー群がどの次数でも等しい(次数 $0$ から $3$ で $\mathbb F_2$)が、$SO(3)$ では次数 $1$ の生成元の平方が $0$ でなく、$S^1\times S^2$ では $0$ である。コホモロジー群が同じでも環は違いうる。

特殊直交群の整数係数のコホモロジー

整数係数では、$SO(n)$ のコホモロジーに位数 $2$ の捩れが現れる。

整数係数の加法的な構造

$n\ge2$ とする。

  1. $H^*(SO(n);\mathbb Z)$ は $\mathbb Z$ と $\mathbb Z/2$ の有限個の直和である。
  2. 捩れ部分 $T$ による商環 $H^*(SO(n);\mathbb Z)/T$ は、$n=2k+1$ なら次数 $3,7,\dots,4k-1$、$n=2k+2$ なら次数 $3,7,\dots,4k-1$ と $2k+1$ の生成元の上の外積代数である。
加法的な構造の出典

1 は Hat02 Proposition 3D.3(p. 299)、2 は同書 Proposition 3D.4(p. 300。そこでは自由部分の Pontryagin 環と、その双対の Hopf 代数が外積代数であることとして述べられている)による。この記事では証明しない。

捩れの積は $\mathbb F_2$ 係数の環と Bockstein 準同型から読み取れる。$\kappa\colon H^*(-;\mathbb Z)\to H^*(-;\mathbb F_2)$ を係数の還元、$\delta\colon H^q(-;\mathbb F_2)\to H^{q+1}(-;\mathbb Z)$ を係数の短完全列 $0\to\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z\to\mathbb F_2\to0$ の連結準同型とし、$\beta:=\kappa\circ\delta$ を Bockstein 準同型とする(Bockstein準同型、Hat02 p. 303)。$\beta$ は $\beta(ab)=\beta(a)b+a\beta(b)$ を満たし(同書 p. 304)、$SO(n)$ では $\beta(\beta_{2i-1})=\beta_{2i}$、$\beta(\beta_{2i})=0$ である(同書 Example 3E.7、p. 308)。

位数 $2$ の捩れだけをもつ空間

空間 $X$ の各 $H^q(X;\mathbb Z)$ が $\mathbb Z$ と $\mathbb Z/2$ の有限個の直和であるとし、捩れ部分を $T$ とする。

  1. $\kappa$ は $T$ の上で単射であり、$\kappa(T\cap H^q)=\beta\bigl(H^{q-1}(X;\mathbb F_2)\bigr)$ である。
  2. $\ker\beta=\operatorname{im}\kappa$ であり、$H^q$ の自由部分の階数は $\dim\ker\beta-\dim\operatorname{im}\beta$(次数 $q$)に等しい。
係数の長完全列

長完全列 $H^q(X;\mathbb Z)\xrightarrow{2}H^q(X;\mathbb Z)\xrightarrow{\kappa}H^q(X;\mathbb F_2)\xrightarrow{\delta}H^{q+1}(X;\mathbb Z)\xrightarrow{2}H^{q+1}(X;\mathbb Z)$ を使う。$H^q\cong\mathbb Z^r\oplus(\mathbb Z/2)^t$ なら $\ker\kappa=2H^q=2\mathbb Z^r$ で、これは $T$ と $0$ でしか交わらないので $\kappa|_T$ は単射である。$\operatorname{im}\delta=\ker(2)$ は位数 $2$ の元の全体、すなわち $H^{q+1}$ の $T$ の部分である。よって $\operatorname{im}\beta=\kappa(\operatorname{im}\delta)=\kappa(T\cap H^{q+1})$ であり、$\kappa$ は $\operatorname{im}\delta\subset T$ で単射なので $\ker\beta=\ker\delta=\operatorname{im}\kappa$ である。最後に $\dim\operatorname{im}\kappa=r+t$、$\dim\kappa(T\cap H^q)=t$ から自由部分の階数 $r$ が得られる。$\square$

$SO(5)$ と $SO(7)$ の整数係数のコホモロジー環

$\beta_1,\beta_3,\beta_5$ を $a,b,c$ と書く。次数付き可換な環の生成元と、その還元 $\kappa$ を次のように選ぶ($x$、$v$ は捩れの類で、$x=\delta(a)$、$v=\delta(ac)$。$y,z,w$ は自由部分の生成元を、還元が下の値になるよう捩れの類で補正したもの)。

群生成元(次数)還元
$SO(5)$$x$ (2)、$y$ (3)、$z$ (7)$a^2$、$a^3+b$、$a^7$
$SO(7)$$x$ (2)、$y$ (3)、$z$ (7)、$v$ (7)、$w$ (11)$a^2$、$a^3+b$、$a^7$、$a^2c+ab^2$、$b^2c+a^6c+a^5b^2$

このとき、次数付き可換な自由環 $\mathcal F[\dots]$(奇数次の元は反可換で、その平方は位数 $2$ の元になりうる)の商として
$$ \begin{aligned} H^*(SO(5);\mathbb Z)&\cong\mathcal F[x,y,z]/(2x,\ x^4,\ y^4,\ z^2,\ xz,\ x^3-y^2),\\ H^*(SO(7);\mathbb Z)&\cong\mathcal F[x,y,z,v,w]/(2x,\ 2v,\ x^4,\ y^4,\ z^2,\ v^2,\ w^2,\ xz,\ vz,\ vw,\ y^2w,\ x^3y^2v,\ y^2z-x^3v,\ xw-y^2v) \end{aligned} $$
である。とくに $SO(5)$ では奇数次の自由な類 $y$ の平方 $y^2=x^3$ が $0$ でない。$SO(5)$ の環は Hat02 Example 3E.7(p. 309)にある。

$\mathbb F_2$ 係数の有限の計算

要点:lem-cgc-bockstein により、捩れの類は還元で決まり、自由部分の生成元は $\ker\beta$ の元で $\operatorname{im}\beta$ に入らないものとして還元が決まる。関係式はどれも両辺の差が捩れの類なので、還元して $\mathbb F_2$ 係数の環で確かめればよい。

確かめ方を開く

生成元.$H^*(SO(5);\mathbb F_2)=\mathbb F_2[a,b]/(a^8,b^2)$、$H^*(SO(7);\mathbb F_2)=\mathbb F_2[a,b,c]/(a^8,b^4,c^2)$(ex-cgc-so-small)で、$\beta a=a^2$、$\beta b=a^4$、$\beta c=b^2$ であり、$\beta$ は導分である。$\kappa(x)=\beta a=a^2$、$\kappa(v)=\beta(ac)=a^2c+ab^2$ である。各次数で $\ker\beta$ と $\operatorname{im}\beta$ を求めると、自由部分の階数は $SO(5)$ で次数 $0,3,7,10$、$SO(7)$ で次数 $0,3,7,10,11,14,18,21$ に 1 ずつで、thm-cgc-so-integral の 2 と合う。次数 $3,7,11$ では自由部分の階数が $1$ で、$\ker\beta/\operatorname{im}\beta$ は 1 次元である。その次数の $H^q/T$ の生成元 $e$ の還元は $\ker\beta=\operatorname{im}\kappa$ に属し、$\operatorname{im}\beta=\kappa(T)$ には属さない(属せば $e\in T+\ker\kappa=T+2H^q$ となり、$e$ は $H^q/T$ の生成元でない)。表の $y,z,w$ の還元も $\ker\beta$ に属し $\operatorname{im}\beta$ に属さないので、$e$ の還元との差は $\operatorname{im}\beta=\kappa(T)$ に入り、$e$ に捩れの類を足して還元を表の値にできる。捩れの全次元は $\dim\operatorname{im}\beta$ の和で、$SO(5)$ で $6$、$SO(7)$ で $28$ である。

関係式.$2x=2v=0$ は $x,v$ が $\delta$ の像であることから、奇数次の元の平方 $y^2,z^2,v^2,w^2$ は次数付き可換性から位数 $2$ である。よって並べた関係式はどれも両辺の差が捩れの類であり、lem-cgc-bockstein の 1 から、還元が $0$ であることを確かめればよい。たとえば $\kappa(y)^2=a^6+b^2$ で、$SO(5)$ では $b^2=0$ から $\kappa(y^2)=a^6=\kappa(x^3)$ である。$SO(7)$ では $\kappa(y^2z)=a^7b^2=\kappa(x^3v)$、$\kappa(xw)=a^2b^2c+a^7b^2=\kappa(y^2v)$ で、残りの関係式も同様の展開で還元が $0$ になる。

同型.関係式を使うと、商環の元は、自由な単項式($SO(5)$ では $1,y,z,yz$、$SO(7)$ では $y^\epsilon z^\eta w^\theta$、$\epsilon,\eta,\theta\in\{0,1\}$)の整数係数の 1 次結合と、位数 $2$ の単項式($SO(5)$ では $x,x^2,x^3,xy,x^2y,x^3y$ の 6 個、$SO(7)$ では $x^iy^j$($0\le i,j\le3$、$(i,j)\ne(0,0),(0,1)$)と $x^iy^jv$($0\le i,j\le3$、$(i,j)\ne(3,2),(3,3)$)の 28 個)の $\mathbb F_2$ 係数の 1 次結合で書ける($SO(7)$ では $w$ を含む単項式を $xw=y^2v$、$y^2w=0$、$vw=0$ で、$z$ を含む単項式を $xz=vz=0$、$y^2z=x^3v$ で減らす)。位数 $2$ の単項式の還元は $\mathbb F_2$ 係数で 1 次独立であり、個数が捩れの全次元に等しいので $T$ の基底である。自由な単項式は、$T$ を法として thm-cgc-so-integral の 2 の外積代数の基底に写る。よって商環から $H^*(SO(n);\mathbb Z)$ への準同型は全単射である。還元の 1 次独立性と $\ker\beta$・$\operatorname{im}\beta$ の次元は、$64$ 次元($SO(5)$ では $16$ 次元)の $\mathbb F_2$ ベクトル空間での有限の計算である。$\square$

$SO(7)$ の関係式の形は生成元の選び方に依存する。たとえば $w$ を $w+x^2v$ に替えると、$x(w+x^2v)=y^2v+x^3v$ となる一方、$y^2(w+x^2v)$ の還元は $a^6b^2c\ne0$ になり、$y^2w=0$ の形は保たれない。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
群が $U(n)$・$SU(n)$・$Sp(n)$ のどれかであること$SO(3)\cong\mathbb{RP}^3$$H^2(SO(3);\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2$ で、整数係数のコホモロジーが外積代数にならない
延長する類の次数が $d-1$ より小さいこと(lem-cgc-extend)Hopf 束 $S^1\to S^3\to S^2$ファイバーの次数 $1=d-1$ の生成元が全空間の類に延びず、$H^*(S^3)$ は $H^*(S^2)\otimes H^*(S^1)$ と同型でない
コホモロジーが捩れをもたないこと(奇数次の類の平方が $0$ になる議論)$SO(5)$ の次数 $3$ の自由な類 $y$$y^2=x^3\ne0$
反例の確かめ
  1. $SO(3)\cong\mathbb{RP}^3$(Hat02 pp. 293–294)であり、$H_1(\mathbb{RP}^3)\cong\mathbb Z/2$、$H_2(\mathbb{RP}^3)=0$(実射影空間 の定理「実射影空間のホモロジー」)だから、普遍係数定理 により $H^2(\mathbb{RP}^3;\mathbb Z)\cong\operatorname{Ext}(\mathbb Z/2,\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2$ である。整数上の外積代数は自由 $\mathbb Z$ 加群なので、$H^*(SO(3);\mathbb Z)$ はどの外積代数とも同型でない。同じ形の束 $SO(2)\to SO(3)\to S^2$(第 1 列をとる写像)では、ファイバー $SO(2)=S^1$ の生成元の次数 $1$ が $d-1=1$ に等しく、lem-cgc-extend の仮定を満たさない。
  2. Hopf 束 $S^3\to S^2$(Hopfファイブレーション)はファイバー $S^1$ のファイバー束である。$H^1(S^3)=0$ なので、$H^1(S^1)$ の生成元に制限する $H^1(S^3)$ の類はない。延長できたとすれば Leray–Hirsch の定理から $H^1(S^3)\cong H^0(S^2)\otimes H^1(S^1)\cong\mathbb Z$ となり矛盾する。ここでは $d=2$ で、生成元の次数 $1$ は $d-1$ に等しい。
  3. ex-cgc-so5-so7 により $y^2=x^3$ で、$\kappa(x^3)=a^6\ne0$ だから $y^2\ne0$ である。$2y^2=0$ は次数付き可換性から成り立つが、$H^6(SO(5);\mathbb Z)$ に位数 $2$ の元があるので $y^2=0$ とは結論できない。

補足

  • $SO(n)$ は有限 CW 複体(thm-cgc-cells)で位相群なので、有理数係数のコホモロジー環は奇数次の生成元の外積代数である(H空間 の系「有理コホモロジー」)。これは thm-cgc-so-integral の 2 の外積代数を $\mathbb Q$ 上に延ばしたものと合う。
  • $SO(n)$ の胞体分割は Stiefel 多様体 $V_k(\mathbb R^n)$ に一般化され、その $\mathbb F_2$ 係数のコホモロジーも同じように求まる(Stiefel多様体、Hat02 §3.D、p. 301 以降)。
  • 古典群の分類空間のコホモロジーは多項式環になる(古典群の分類空間のコホモロジー)。$U(n)$ の外積代数の生成元の次数 $2i-1$ は、$BU(n)$ の多項式環の生成元の次数 $2i$ を $1$ だけ下げたものである。

関連項目

参考文献

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