Harnackの曲線定理(Harnack's curve theorem)とは、実係数の次数 $d$ の斉次多項式が定める滑らかな射影平面曲線について、実射影平面の中の実点の集合の連結成分の個数が $(d-1)(d-2)/2+1$ 以下であるという定理である。右辺は複素曲線としての種数 $g$ に $1$ を足したもので、各成分は円板の境界になる卵形線か、直線のように平面を切り離さない擬直線であり、擬直線は次数が奇数のときちょうど 1 本ある。証明では、卵形線と交わる実曲線が必ず偶数回交わることと Bézout の定理を組み合わせる。上界に達する曲線を $M$ 曲線という。
前提知識: 射影平面, Bézoutの定理, 交点数(平面曲線), 種数公式(平面曲線), Jordan曲線定理
Harnack の曲線定理(Harnack's curve theorem)とは、実係数の次数 $d$ の斉次多項式 $F(X,Y,Z)$ が定める滑らかな射影平面曲線について、実射影平面 $\mathbb{RP}^2$ の中の実点の集合の連結成分の個数が
$$
\frac{(d-1)(d-2)}{2}+1
$$
以下であるという定理である。右辺の $(d-1)(d-2)/2$ は、複素数体の上で考えた曲線の種数 $g$ に等しい(種数公式(平面曲線))。つまり実点の集合は高々 $g+1$ 個の閉曲線に分かれる。
実点の集合の各成分は円周と同相な閉曲線で、2 種類に分かれる。$\mathbb{RP}^2$ の中で円板の境界になる卵形線(楕円のような成分)と、直線のように $\mathbb{RP}^2$ を切り離さない擬直線である。次数が偶数ならすべての成分は卵形線であり、奇数なら擬直線がちょうど 1 本ある。上界に達する曲線を $M$ 曲線という。たとえば $y^2=x^3-x$ は卵形線 1 つと擬直線 1 本をもつ 3 次の $M$ 曲線であり、2 つの楕円の積を少しずらした 4 次曲線は卵形線を 4 つもつ。
証明の考え方は次のとおりである。成分が多すぎると仮定し、各卵形線に 1 点ずつ、さらに別の成分に何点かを選び、それらを通る次数 $d-2$ の実曲線をとる。卵形線は円板の境界なので、それと交わる曲線は必ず偶数回(重複度込み)交わる。交点を数えると Bézoutの定理 の $d(d-2)$ を超えてしまう。この記事では、偶奇の補題(lem-hct-parity)と擬直線の本数(prop-hct-pseudolines)を示してから主定理を証明し、次数 $4$ までの $M$ 曲線を具体的に作る。
$\mathbb{RP}^2$ を $\mathbb{R}^3\setminus\{0\}$ を $0$ でない実数倍で割った空間とし、単位球面 $S^2\subset\mathbb{R}^3$ からの写像 $v\mapsto[v]$ を考える。これは 2 対 1 の被覆で、$v$ と $-v$ が同じ点に写る。$a(v):=-v$ を対蹠写像という。$\mathbb{RP}^2$ は複素射影平面 $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ の中で、複素共役で固定される点の集合とみなせる。
$F\in\mathbb{R}[X,Y,Z]$ を次数 $d\ge1$ の斉次多項式とし、$F$ の定める $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ の曲線を $C$ と書く。$C$ が滑らかであるとは、$F$ と偏微分 $F_X,F_Y,F_Z$ が $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ に共通の零点をもたないことをいう。滑らかな平面曲線は既約である($F=F_1F_2$ なら Bézoutの定理 により $F_1=F_2=0$ の点があり、そこで偏微分はすべて $0$ になる)。$C$ の実点の集合を
$$
C(\mathbb{R}):=\{[v]\in\mathbb{RP}^2\mid F(v)=0\}
$$
とする。$C$ が滑らかなとき、その種数は $g=\frac{(d-1)(d-2)}{2}$ である(種数公式(平面曲線) の定理「平面曲線の種数公式」)。点 $p$ での 2 つの曲線の交点数 $I(p,F\cap G)$ は 交点数(平面曲線) に従い、$\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ の点で考える。
$C$ を実係数の滑らかな平面曲線とする。$\tilde C:=\{v\in S^2\mid F(v)=0\}$ は $S^2$ の滑らかな閉部分多様体で、次元は $1$ である(空でもよい)。したがって $C(\mathbb{R})$ は有限個の連結成分からなり、各成分は円周と同相な滑らかな閉曲線である。各成分 $\Gamma$ について、$\Gamma$ の $S^2$ での逆像は次のどちらかである。
$v\in\tilde C$ とする。Euler の等式 $\langle v,\nabla F(v)\rangle=dF(v)=0$ により、$\nabla F(v)$ は $v$ に直交し、$S^2$ の $v$ での接空間に入る。$C$ が滑らかで $v$ は実の点なので $\nabla F(v)\ne0$ である。よって $\nabla F(v)$ は $F|_{S^2}$ の勾配で、$0$ は $F|_{S^2}$ の正則値である。陰関数定理(陰関数定理)により $\tilde C$ は 1 次元の滑らかな部分多様体で、閉集合なのでコンパクトである。コンパクトな 1 次元多様体は有限個の円周の和なので、$\tilde C$ の成分は有限個である。$\tilde C\to C(\mathbb{R})$ は 2 対 1 の被覆で、$C(\mathbb{R})$ の成分 $\Gamma$ の逆像はその上の 2 重被覆である。円周の 2 重被覆は自明(2 つの円周)か、連結(1 つの円周)かのどちらかである。後者では、被覆の非自明な変換が対蹠写像である。$\square$
prop-hct-structure の 1 の場合の成分 $\Gamma$ を卵形線(oval)、2 の場合を擬直線(pseudo-line)という。
$\mathbb{RP}^1\subset\mathbb{RP}^2$(実直線)は擬直線である。$S^2$ での逆像は大円で、連結である。楕円 $x^2+y^2=1$($X^2+Y^2-Z^2=0$)は卵形線である。逆像は 2 つの円 $z=\pm1/\sqrt2$ で、$z>0$ の半球と $z<0$ の半球に 1 つずつある。擬直線 $\Gamma$ は $\mathbb{RP}^2$ を切り離さない。prop-hct-pseudolines の証明で示すとおり、逆像 $\Lambda$ の補集合の 2 成分は対蹠写像 $a$ で入れ替わるので、$\mathbb{RP}^2\setminus\Gamma$ はその一方と同相で連結である。卵形線 $\Gamma$ は $\mathbb{RP}^2$ の閉円板の境界になる。実際、逆像の成分 $\Lambda$ をとり、$S^2\setminus\Lambda$ の成分のうち $a(\Lambda)$ を含まないものを $U$ とすると、Schoenfliesの定理 により $\bar U=U\cup\Lambda$ は閉円板で、$a(\Lambda)$ と交わらない。$\bar U$ は連結なので $S^2\setminus a(\Lambda)$ の 1 つの成分に入る。それが $a(U)$ なら $a(\bar U)\subset U\subset\bar U$ となり、Brouwerの不動点定理 で $a$ が不動点をもつことになって矛盾する。よって $\bar U$ と $a(\bar U)$ は交わらず、$\bar U$ は $\mathbb{RP}^2$ の中の $\Gamma$ を境界とする閉円板に同相に写る。以下の議論では、この幾何的な違いを、多項式の符号の変わり方の偶奇として使う。
$C$ を実係数の次数 $d$ の滑らかな平面曲線、$G$ を $F$ で割り切れない実係数の次数 $e$ の斉次多項式、$\Gamma$ を $C(\mathbb{R})$ の成分とする。
$$
N_\Gamma(G):=\sum_{p\in\Gamma}I(p,F\cap G)
$$
とおくと、$\Gamma$ が卵形線なら $N_\Gamma(G)$ は偶数であり、擬直線なら $N_\Gamma(G)\equiv e\pmod2$ である。とくに $G$ が卵形線 $\Gamma$ の点を通れば $N_\Gamma(G)\ge2$ である。
$F$ は既約で $G$ を割らないので、$F$ と $G$ は共通成分をもたず、交点は有限個である(Bézoutの定理)。$\Gamma$ の $S^2$ での逆像の成分を 1 つとり、滑らかな写像 $\gamma\colon\mathbb{R}\to S^2$ で、すべての $s$ で $\gamma'(s)\ne0$ となり、次をみたすものをとる。卵形線なら $\gamma$ は周期 $1$ をもち、$[0,1)$ 上で単射で、$s\mapsto[\gamma(s)]$ は $\Gamma$ への全単射である。擬直線なら $\gamma(s+1)=-\gamma(s)$ で、$[0,1)$ 上で $s\mapsto[\gamma(s)]$ が $\Gamma$ への全単射である(逆像は対蹠写像で不変な 1 つの円周なので、そう径数づけられる)。$u(s):=G(\gamma(s))$ とおく。$\gamma(0)$ を交点でない点にとると $u(0)\ne0$ で、$u(1)$ は卵形線なら $u(0)$、擬直線なら $G(-\gamma(0))=(-1)^eu(0)$ である。
交点 $p=[\gamma(s_0)]\in\Gamma$ での $u$ の零の位数を調べる。射影座標を実の線形変換で取り替えて、$p$ がアフィン部分 $Z\ne0$ にあり、$F_Y(p)\ne0$ とする($p$ は $C$ の滑らかな点なので、ある偏微分が $0$ でない)。陰関数定理により、$p=(x_0,y_0)$ の近くで複素曲線 $C$ は $y=\phi(x)$ のグラフで、$\phi$ は $x_0$ の近くで正則、実軸上で実数値である。このとき $x-x_0$ は局所環 $\mathcal{O}_{C,p}$ の一意化元で、$g:=G(x,y,1)$ の $C$ への制限は $(x-x_0)^mw$($w$ は $\mathcal{O}_{C,p}$ の単元、$m=I(p,F\cap G)$)と書ける(交点数(平面曲線) の性質 (viii))。$y=\phi(x)$ を代入すると $g(x,\phi(x))=(x-x_0)^mw(x,\phi(x))$ で、$w(x_0,y_0)\ne0$ である。$s_0$ の近くで $\gamma(s)=\lambda(s)\,(x(s),\phi(x(s)),1)$ と書け、$\lambda$ は $0$ にならない実数値の連続関数、$x(s)$ は $x(s_0)=x_0$ で微分が $0$ でない実数値の滑らかな関数である。よって $u(s)=\lambda(s)^e\,(x(s)-x_0)^m\,w(x(s),\phi(x(s)))$ であり、$u$ は $s_0$ の前後で、$m$ が奇数なら符号を変え、偶数なら変えない。
$[0,1]$ の上で $u$ の零点は有限個で、そこを通るたびの符号の変化を合わせると、$u(1)$ と $u(0)$ の符号の比は $(-1)^{\#\{m\text{ が奇数の交点}\}}=(-1)^{N_\Gamma(G)}$ である。卵形線ではこれが $1$、擬直線では $(-1)^e$ なので主張を得る。卵形線で交点が 1 つでもあれば、$N_\Gamma(G)$ は正の偶数なので $2$ 以上である。$\square$
$C$ を実係数の次数 $d$ の滑らかな平面曲線とする。$C(\mathbb{R})$ の擬直線は高々 1 本で、その本数は $d$ と偶奇が一致する。すなわち $d$ が偶数ならすべての成分は卵形線であり、$d$ が奇数なら擬直線がちょうど 1 本ある。
$d=1$ なら $C(\mathbb{R})$ は実直線そのもので、擬直線 1 本である。$d\ge2$ とし、実直線 $L$ をとる。$F$ は既約で次数 $2$ 以上なので $L$ と共通成分をもたず、Bézout の定理により $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ での交点数の和は $d$ である。$F$ と $L$ は実係数なので、交点 $p$ と複素共役 $\bar p$ の交点数は等しい。よって実でない交点からの寄与は偶数で、実の交点数の和 $\sum_\Gamma N_\Gamma(L)$ は $d$ と偶奇が一致する。lem-hct-parity($e=1$)により、この和は擬直線の本数と偶奇が一致する。
擬直線が 2 本 $\Gamma_1,\Gamma_2$ あったとして矛盾を導く。$\Gamma_i$ の $S^2$ での逆像 $\Lambda_i$ は対蹠写像 $a$ で不変な単純閉曲線で、$\Lambda_1\cap\Lambda_2=\emptyset$ である。$S^2\setminus\Lambda_1$ の点から平面へ立体射影すると、Jordan曲線定理 により $S^2\setminus\Lambda_1$ はちょうど 2 つの連結成分 $U,V$ をもち、$a$ はそれらを入れ替えるか、それぞれを保つ。$a(U)=U$ とする。射影の中心を $V$ にとると $U$ は有界な内部に写り、Schoenfliesの定理 によりその閉包 $U\cup\Lambda_1$ は閉円板と同相である。$a$ はこの閉円板からそれ自身への連続写像なので、Brouwerの不動点定理 により不動点をもつが、$a(v)=-v\ne v$ なので矛盾である。よって $a(U)=V$ である。$\Lambda_2$ は連結で $\Lambda_1$ と交わらないので $U$ か $V$ に含まれ、$a(\Lambda_2)=\Lambda_2$ なので両方に含まれることになり、矛盾である。$\square$
$F\in\mathbb{R}[X,Y,Z]$ を次数 $d\ge1$ の斉次多項式とし、$F$ の定める平面曲線 $C$ は滑らかであるとする。このとき $C(\mathbb{R})$ の連結成分の個数は
$$
g+1=\frac{(d-1)(d-2)}{2}+1
$$
以下である。
$d=1$ なら $C(\mathbb{R})$ は実直線で、成分は 1 つである。$d=2$ で成分が 2 つ以上あるとすると、prop-hct-pseudolines によりそれらは卵形線である。2 つの卵形線から 1 点ずつとって、その 2 点を通る実直線 $L$ をとる。lem-hct-parity により $L$ はそれぞれの卵形線と重複度込みで 2 回以上交わり、実の交点数の和は $4$ 以上になる。これは Bézout の定理の $2\cdot1=2$ に反する。
$d\ge3$ とし、成分が $g+2$ 個以上あると仮定する。prop-hct-pseudolines により擬直線は高々 1 本なので、相異なる卵形線 $O_1,\dots,O_{g+1}$ と、それらと異なるもう 1 つの成分 $\Gamma$ がとれる。各 $O_i$ から 1 点 $q_i$ を、$\Gamma$ から相異なる $d-3$ 点をとる。点の総数は
$$
N:=(g+1)+(d-3)=\frac{(d-1)(d-2)}{2}+d-2=\frac{(d-2)(d+1)}{2}
$$
である。実係数の次数 $d-2$ の斉次多項式の空間は $\binom{d}{2}=\frac{d(d-1)}{2}=N+1$ 次元で、$N$ 個の点を通るという条件は $N$ 個の 1 次方程式なので、それらをすべて通る $0$ でない実係数の $G$ がある。$\deg G=d-2< d$ なので $F$ は $G$ を割らず、$F$ は既約なので共通成分はない。
lem-hct-parity により $N_{O_i}(G)\ge2$ であり、$\Gamma$ の上の $d-3$ 個の交点はそれぞれ交点数 $1$ 以上を与える。よって
$$
\sum_{p\in C(\mathbb{R})}I(p,F\cap G)\ge2(g+1)+(d-3)=(d-1)(d-2)+d-1=(d-1)^2
$$
である。一方 Bézout の定理により $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ のすべての交点の交点数の和は $d(d-2)=(d-1)^2-1$ で、実の交点だけの和はそれ以下である。これは矛盾である。$\square$
Bézout の定理は Ful08 §5.3(p. 57)にあり、次数 $d-2$ の曲線の空間の次元の数え方は同書 §5.2, Theorem 1(p. 56)と同じである。証明では、卵形線に 1 点を課すだけで交点が 2 つ得られることが本質である。$d=3$ では $\Gamma$ の上に点を選ばず、$g+1=2$ 個の卵形線を通る直線をとっている。
$C$ を実係数の次数 $d$ の滑らかな平面曲線とする。$d$ が偶数なら $C(\mathbb{R})$ は高々 $\frac{(d-1)(d-2)}{2}+1$ 個の卵形線からなり、$d$ が奇数なら 1 本の擬直線と高々 $\frac{(d-1)(d-2)}{2}$ 個の卵形線からなる。
thm-hct-main と prop-hct-pseudolines を合わせる。$\square$
上界は次のように並ぶ。
| 次数 $d$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ | $7$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 種数 $g$ | $0$ | $0$ | $1$ | $3$ | $6$ | $10$ | $15$ |
| 成分の個数の上界 $g+1$ | $1$ | $1$ | $2$ | $4$ | $7$ | $11$ | $16$ |
実係数の滑らかな平面曲線 $C$ で、$C(\mathbb{R})$ の成分の個数がちょうど $g+1$ であるものを $M$ 曲線という。
次数 $4$ までの $M$ 曲線を具体的に作る。$d=1$ の直線と $d=2$ の $X^2+Y^2=Z^2$(卵形線 1 つ)は $M$ 曲線である。一方 $X^2+Y^2+Z^2=0$ は実点をもたない滑らかな 2 次曲線で、成分は $0$ 個である。
$C\colon Y^2Z=X^3-XZ^2$ とする。$x^3-x$ は相異なる根 $-1,0,1$ をもつので $C$ は滑らかな 3 次曲線である(無限遠の点 $[0:1:0]$ での局所方程式 $z-x^3+xz^2$ は 1 次の項 $z$ をもつ)。アフィン部分の実点は $y^2=x(x-1)(x+1)\ge0$、すなわち $-1\le x\le0$ または $x\ge1$ の部分にある。前者は閉曲線(卵形線)で、後者は無限遠の点 $[0:1:0]$ を加えると閉じて擬直線になる。成分は $2=g+1$ 個で、$C$ は $M$ 曲線である。
$E_1:=X^2+4Y^2-4Z^2$、$E_2:=4X^2+Y^2-4Z^2$ とし、
$$
F:=E_1E_2+Z^4
$$
とおく。$F$ の定める 4 次曲線 $C$ は滑らかで、$C(\mathbb{R})$ はちょうど 4 つの卵形線からなる。したがって $C$ は $M$ 曲線である。
要点:2 つの楕円の外側どうし・内側どうしでない 4 つの「花びら」の領域にそれぞれ成分があり、Harnack の上界と合わせてちょうど 4 つになる。
滑らかであることは、連立方程式 $F=F_X=F_Y=F_Z=0$ が $\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ に解をもたないことであり、$X=1$、$Y=1$、$Z=1$ の各アフィン部分で多項式の消去(Gröbner 基底の計算)により確かめられる。無限遠 $Z=0$ では $F=(X^2+4Y^2)(4X^2+Y^2)$ は実の $(X,Y)\ne(0,0)$ で正なので、実点はアフィン部分 $z=1$ にだけある。そこで $h:=e_1e_2$、$e_1=x^2+4y^2-4$、$e_2=4x^2+y^2-4$ とおくと、$C(\mathbb{R})=\{h=-1\}$ である。
$h<0$ となるのは $e_1,e_2$ のちょうど一方が負のときで、その集合は互いに交わらない 4 つの有界な開集合($e_1<0< e_2$ の $x>0$ の部分と $x<0$ の部分、$e_2<0< e_1$ の $y>0$ の部分と $y<0$ の部分)の和である。これを花びらと呼ぶ。$C(\mathbb{R})$ の各成分は連結で $h<0$ の集合に含まれるので、1 つの花びらに含まれる。点 $(3/2,0)$ では $e_1=-7/4$、$e_2=5$ で $h=-35/4<-1$ であり、線分 $\{(x,0)\mid3/2\le x<2\}$ はこの花びらに含まれ、$x\to2$ で $h\to0$ である。中間値の定理により、この花びらは $C(\mathbb{R})$ と交わる。$h$ は $x\mapsto-x$、$y\mapsto-y$ と $x\leftrightarrow y$($e_1$ と $e_2$ が入れ替わる)で不変なので、ほかの 3 つの花びらも同様である。よって成分は 4 つ以上あり、thm-hct-main により $g+1=4$ 個以下なので、ちょうど 4 つである。次数が偶数なので、すべて卵形線である(prop-hct-pseudolines)。$\square$
この例のように、交わる曲線の積に小さい項を足して交点をほどき、成分の個数を増やすのが $M$ 曲線を作る基本的な方法である。足す項の符号が大切で、この例では $h<0$ となる 4 つの花びらに成分が現れるように符号を選んでいる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 射影平面で成分を数える | 双曲線 $xy=1$ | 成分の個数が $g+1=1$ 以下($\mathbb{R}^2$ では 2 つ) |
| 交点を重複度込みで数える(lem-hct-parity) | 円 $x^2+y^2=1$ と直線 $y=1$ | 卵形線との交点の個数が偶数(交点は 1 点) |
| 成分が卵形線(lem-hct-parity) | ex-hct-cubic の擬直線と直線 $Y=0$ | 交点数の和が偶数(和は $1$) |
各行を確かめる。
1 行目:$XY=Z^2$ は滑らかな 2 次曲線で $g=0$ である。$\mathbb{R}^2$ の中の実点 $\{xy=1\}$ は 2 本の枝からなるが、$\mathbb{RP}^2$ では無限遠の 2 点 $[1:0:0]$、$[0:1:0]$ を加えて 1 つの閉曲線になる。定理が数えるのは射影平面の中の成分である。
2 行目:直線 $y=1$ は円と点 $(0,1)$ だけで交わり、そこで接している。交点数は $2$ で($x^2+y^2-1$ に $y=1$ を代入すると $x^2$)、重複度込みなら偶数である。
3 行目:$Y=0$ と $C$ の交点は $X^3-XZ^2=0$ の 3 点 $[-1:0:1]$、$[0:0:1]$、$[1:0:1]$ で、交点数はそれぞれ $1$ である(3 点で和が $3=\deg F$)。前の 2 点は卵形線、最後の 1 点は擬直線の上にあり、擬直線での和は $1$ で奇数である。lem-hct-parity の擬直線の場合 $N_\Gamma\equiv e=1$ と合っている。
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