代数的位相幾何学

同義語:algebraic topology代数トポロジー

概要

代数的位相幾何学(algebraic topology)とは、位相空間に基本群・ホモトピー群・ホモロジー群・コホモロジー群などの代数的な対象を関手として対応させ、連続写像をそれらの間の準同型に写して、空間と写像を代数の計算で調べる数学の分野である。同相な空間は同型な不変量をもつので、不変量の違いから空間が同相でないことがわかり、Brouwer の不動点定理・次元の位相不変性・Jordan 曲線定理などが導かれる。最も簡単な例として、有限グラフの有理数係数のホモロジーは、0 次の次元が連結成分の個数 $c$、1 次の次元が辺の数 − 頂点の数 + $c$ に等しい。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 連続写像, 群

代数的位相幾何学(algebraic topology)は、位相空間に群などの代数的な対象を対応させ、空間についての問いを代数の計算に置き換えて調べる数学の分野である。2 つの空間が同相でないことを示すには、両者を見分ける位相的性質が要る(同相写像)。代数的位相幾何学は、そのような性質を基本群・ホモロジー・コホモロジーといった群として系統的に作り出し、連続写像をそれらの間の準同型に写して、空間と写像を同時に調べる。
この記事では、まず不変量を作る仕組み(関手性)とホモトピーを定義し、代数的位相幾何学の主な不変量・問い・代表的な定理を記事とともに一覧にする。続いて、最も簡単な場合として有限グラフのホモロジーを計算し、その次元が頂点と辺の個数と連結成分の個数で決まることを完全に証明する。最後に、学ぶ順に記事を並べた道筋を示す。

定義

関手的な不変量

各位相空間 $X$ に群 $F(X)$ を、各連続写像 $f\colon X\to Y$ に準同型 $f_*\colon F(X)\to F(Y)$ を対応させる規則 $F$ が、

  1. 恒等写像について $(\mathrm{id}_X)_*=\mathrm{id}_{F(X)}$、
  2. 連続写像 $f\colon X\to Y$、$g\colon Y\to Z$ について $(g\circ f)_*=g_*\circ f_*$
    を満たすとき、$F$ を(位相空間の圏から群の圏への)関手という(関手)。$f_*$ を $f$ の誘導準同型という。

代数的位相幾何学とは、位相空間と連続写像に関手によって代数的な対象と準同型を対応させ、その性質を通して空間と写像を研究する数学の分野である。

同相な空間の不変量は同型

$F$ を関手とする。$X$ と $Y$ が同相ならば、$F(X)$ と $F(Y)$ は同型である。

同相写像 $f\colon X\to Y$ と逆写像 $f^{-1}$ をとる。関手の 2 条件から $f^{-1}_*\circ f_*=(f^{-1}\circ f)_*=(\mathrm{id}_X)_*=\mathrm{id}_{F(X)}$、同様に $f_*\circ f^{-1}_*=\mathrm{id}_{F(Y)}$ なので、$f_*$ は同型である。$\square$

この命題の対偶により、$F(X)$ と $F(Y)$ が同型でなければ $X$ と $Y$ は同相でない。群の同型・非同型は、空間の同相・非同相よりもはるかに判定しやすい。
主な不変量は、さらに連続変形に対しても不変である。連続写像 $f_0,f_1\colon X\to Y$ がホモトピックであるとは、連続写像 $H\colon X\times[0,1]\to Y$ で $H(x,0)=f_0(x)$、$H(x,1)=f_1(x)$ となるものがあることをいう(ホモトピー)。$g\circ f$ と $f\circ g$ がそれぞれ恒等写像とホモトピックになる $f\colon X\to Y$、$g\colon Y\to X$ があるとき、$X$ と $Y$ はホモトピー同値であるという(ホモトピー同値)。1 点とホモトピー同値な空間を可縮空間という。同相な空間はホモトピー同値だが、逆は成り立たない(閉円板は可縮だが 1 点と同相でない)。
代数的位相幾何学の主な不変量は次の 3 つである。どれもホモトピー同値な空間に同型な群を与える。

  1. ホモトピー群:基点つきの空間 $X$ について、球面 $S^n$ から $X$ への基点を保つ写像のホモトピー類のなす群 $\pi_n(X)$。$n=1$ が基本群で、閉じた道を連続変形で分類する(ホモトピー群)。
  2. ホモロジー群:空間を単体(点・線分・三角形・四面体……)の組み合わせで近似し、境界をとる操作から作るアーベル群 $H_n(X)$(ホモロジー、特異ホモロジー、単体的ホモロジー)。$H_n$ の階数は「$n$ 次元の穴」の個数を表し、Betti数 とよばれる。
  3. コホモロジー群:ホモロジーの双対で、積(カップ積)により環になる $H^n(X)$(コホモロジー、特異コホモロジー)。

代数的位相幾何学の主な問い

  1. 空間を見分ける。 不変量を計算し、異なれば空間は同相でない(ホモトピー同値でない)。円周の基本群は $\mathbb{Z}$(基本群 の定理「円周の基本群」)、$n\ge1$ のとき球面 $S^n$ の $H_n$ は $\mathbb{Z}$ である。$m\ne n$ のとき $\mathbb{R}^m$ と $\mathbb{R}^n$ が同相でないこと(次元の位相不変性)はホモロジーで示される。
  2. 不変量を計算する。 空間を簡単な部分に分け、部分の不変量から全体の不変量を求める。基本群には van Kampenの定理、ホモロジーには Mayer–Vietoris完全列 と完全列、さらにスペクトル系列 が使われる。代数の側の道具は ホモロジー代数 にまとめられている。
  3. 写像を調べる。 写像の誘導準同型から、写像の存在・非存在がわかる。円板から境界の円周へのレトラクションがないことから Brouwerの不動点定理 が、球面の写像の写像度 から多くの不動点・零点の存在が従う。被覆空間 の理論は、写像を持ち上げられるかどうかを基本群で判定する。
  4. ホモトピー型を分類する。 空間をホモトピー同値を除いて分類する。連結な CW複体 の間では、すべてのホモトピー群に同型を誘導する写像はホモトピー同値である(Whiteheadの定理)。球面のホモトピー群の計算(球面のホモトピー群)はこの分野の中心問題の 1 つである。

代表的な定理

定理主張の要点記事
円周の基本群$\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$基本群
van Kampen の定理和集合の基本群を部分の基本群の融合積で表すvan Kampenの定理
被覆空間の分類弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結な空間の上では、連結な被覆空間が基本群の部分群の共役類と対応する被覆空間
Mayer–Vietoris 完全列和集合のホモロジーを部分と共通部分のホモロジーでつなぐMayer–Vietoris完全列
単体的ホモロジーと特異ホモロジーの一致単体分割から計算したホモロジーは位相不変単体的ホモロジー
Brouwer の不動点定理閉円板からそれ自身への連続写像は不動点をもつBrouwerの不動点定理
Borsuk–Ulam の定理$S^n\to\mathbb{R}^n$ の連続写像はある対蹠点で等しい値をとるBorsuk–Ulamの定理
Hurewicz の定理最初の 0 でないホモトピー群とホモロジー群の関係Hurewiczの定理
Poincaré 双対性向き付けられた閉多様体のホモロジーとコホモロジーの対称性Poincaré双対性
Euler 標数とホモロジー有限胞体複体の胞体の個数の交代和は Betti 数の交代和に等しいEuler標数

代表例:グラフのホモロジー

代数的位相幾何学の考え方が最も簡単に見えるのは、1 次元の空間であるグラフの場合である。ここではグラフに線形代数だけで計算できるホモロジーを定義し、その次元を完全に求める。

定義

グラフ $\Gamma=(V,E)$ は、有限集合 $V$(頂点)と、$V$ の相異なる 2 元からなる部分集合の族 $E$(辺)の組とする。各辺 $e=\{a,b\}$ について、端点の一方を始点 $e^-$、他方を終点 $e^+$ と定めておく(この向きの選び方は以下の次元に影響しない)。頂点 $v,w$ が辺の列でつながる(グラフ の意味の歩道がある)とき同じ連結成分に属するとし、連結成分の個数を $c(\Gamma)$ と書く。
グラフの各辺を線分と思い、端点を共有する線分を貼り合わせた位相空間(商位相 で作る)を $\lvert\Gamma\rvert$ と書き、$\Gamma$ の実現という。たとえば 3 頂点と 3 辺の三角形のグラフの実現は円周と同相である。

グラフのホモロジー

$C_0$ を $V$ を基底とする $\mathbb{Q}$ 上のベクトル空間、$C_1$ を $E$ を基底とする $\mathbb{Q}$ 上のベクトル空間とし、線形写像 $\partial\colon C_1\to C_0$ を $\partial(e):=e^+-e^-$ で定める。
$$ H_0(\Gamma):=C_0/\operatorname{im}\partial,\qquad H_1(\Gamma):=\ker\partial $$
を $\Gamma$ の 0 次・1 次のホモロジーという。

$H_1$ の元は、各辺に向きつきの係数を与えた組み合わせで、どの頂点でも「入る量」と「出る量」がつり合うもの、すなわち閉じた回路の組み合わせである。$H_0$ は、辺でつながった頂点どうしを同一視したものである。

主定理

グラフのホモロジーの次元

有限グラフ $\Gamma=(V,E)$ について、
$$ \dim H_0(\Gamma)=c(\Gamma),\qquad \dim H_1(\Gamma)=\lvert E\rvert-\lvert V\rvert+c(\Gamma) $$
である。とくに $\lvert V\rvert-\lvert E\rvert=\dim H_0(\Gamma)-\dim H_1(\Gamma)$ である。

連結成分を $K_1,\dots,K_c$($c=c(\Gamma)$)とし、線形写像 $\varphi\colon C_0\to\mathbb{Q}^c$ を、頂点 $v\in K_j$ を $\mathbb{Q}^c$ の第 $j$ 基本ベクトルに写すものとして定める。
$\varphi$ は全射である。 各 $K_j$ は空でないので、第 $j$ 基本ベクトルは $K_j$ の頂点の像である。
$\ker\varphi=\operatorname{im}\partial$ である。 辺 $e$ の両端は同じ成分に属するので $\varphi(\partial e)=\varphi(e^+)-\varphi(e^-)=0$ であり、$\operatorname{im}\partial\subset\ker\varphi$ である。逆を示す。まず、同じ成分の頂点 $v,w$ について $w-v\in\operatorname{im}\partial$ である。実際、歩道 $v=w_0,w_1,\dots,w_\ell=w$ をとると、各 $m$ について $w_m-w_{m-1}$ は辺 $\{w_{m-1},w_m\}$ の $\partial$ による像かその $-1$ 倍であり、
$$ w-v=\sum_{m=1}^{\ell}(w_m-w_{m-1}) $$
だからである。各成分 $K_j$ から頂点 $b_j$ を 1 つ選ぶ。$x=\sum_{v\in V}a_vv\in\ker\varphi$ とすると、各 $j$ について $\sum_{v\in K_j}a_v=0$ なので、
$$ x=\sum_{j=1}^{c}\sum_{v\in K_j}a_v(v-b_j)+\sum_{j=1}^{c}\Bigl(\sum_{v\in K_j}a_v\Bigr)b_j=\sum_{j=1}^{c}\sum_{v\in K_j}a_v(v-b_j) $$
となり、右辺は $\operatorname{im}\partial$ に属する。
よって $\varphi$ は同型 $H_0(\Gamma)=C_0/\operatorname{im}\partial\cong\mathbb{Q}^c$ を誘導し、$\dim H_0(\Gamma)=c$ である。また $\dim\operatorname{im}\partial=\dim C_0-\dim H_0(\Gamma)=\lvert V\rvert-c$ である(商ベクトル空間 の次元)。$\partial$ に 線形写像 の定理「次元定理の言明」を当てると
$$ \dim H_1(\Gamma)=\dim\ker\partial=\dim C_1-\dim\operatorname{im}\partial=\lvert E\rvert-\lvert V\rvert+c $$
である。最後の等式は 2 つの式の差をとればよい。$\square$

閉路 の定理「閉路空間の次元と基本閉路」は、係数を 2 元体 $\mathbb{F}_2$ にして向きを忘れた同じ形の主張を、全域森から基底を作って証明している。上の証明は基底を作らず、$H_0$ を先に求めて次元定理で $H_1$ に移る。この「低い次数を求めて次元の関係で高い次数を決める」流れは、Euler標数 の定理「鎖複体の Euler 標数」で一般の次元に広がる。
$H_1$ が 0 かどうかは、グラフが閉路(閉路:長さ 3 以上で頂点が重複しない閉じた歩道)をもつかどうかで決まる。

$H_1$ と閉路

有限グラフ $\Gamma$ について、$H_1(\Gamma)\ne0$ であることと、$\Gamma$ が閉路をもつことは同値である。

閉路 $w_0,w_1,\dots,w_{\ell-1},w_0$ があるとし、$w_\ell:=w_0$、$f_m:=\{w_{m-1},w_m\}$($1\le m\le\ell$)とおく。頂点が重複しないので $f_1,\dots,f_\ell$ は相異なる辺である。$f_m^-=w_{m-1}$ なら $\varepsilon_m:=1$、そうでなければ $\varepsilon_m:=-1$ とすると $\varepsilon_m\partial f_m=w_m-w_{m-1}$ なので、$z:=\sum_m\varepsilon_mf_m$ は $\partial z=\sum_{m=1}^{\ell}(w_m-w_{m-1})=w_\ell-w_0=0$ を満たす。$z$ は相異なる基底の $\pm1$ 倍の和なので $0$ でなく、$H_1(\Gamma)\ne0$ である。
逆に $0\ne z=\sum_{e}a_ee\in\ker\partial$ とし、$a_e\ne0$ となる辺の集合を $F$ とする。$F$ の辺の端点となる頂点 $v$ について、$\partial z$ の $v$ の係数は「$e^+=v$ となる $e\in F$ の $a_e$ の和」から「$e^-=v$ となる $e\in F$ の $a_e$ の和」を引いたもので、これは $0$ である。$v$ を端点にもつ $F$ の辺が 1 本だけなら、この係数は $\pm a_e\ne0$ となる。よって、$F$ の辺の端点全体と $F$ からなるグラフは空でなく、すべての頂点の次数が 2 以上なので、閉路 の定理「最小次数と長い閉路」により閉路をもつ。これは $\Gamma$ の閉路である。$\square$

木の判定

連結な有限グラフ $\Gamma$ が木である(閉路をもたない)ことは、$\lvert E\rvert=\lvert V\rvert-1$ と同値である。

$c(\Gamma)=1$ なので thm-at-graph-homology により $\dim H_1(\Gamma)=\lvert E\rvert-\lvert V\rvert+1$ である。prop-at-cycle により、$\Gamma$ が閉路をもたないことは $\dim H_1(\Gamma)=0$、すなわち $\lvert E\rvert=\lvert V\rvert-1$ と同値である。$\square$

位相不変量としての意味

ここまでは頂点と辺の組み合わせの計算である。これが空間 $\lvert\Gamma\rvert$ の位相だけで決まる量であることは、次の一般論による。
各辺に向きを与えたグラフの実現 $\lvert\Gamma\rvert$ は、点と線分からなる単体的な構造($\Delta$ 複体)をもち、def-at-graph-homology はその単体的ホモロジーを有理数係数で計算したものである。単体的ホモロジーは空間の特異ホモロジーと同型であり(単体的ホモロジー の定理「単体的ホモロジーと特異ホモロジーの一致」、Hat02 Theorem 2.27、p. 128)、特異ホモロジーは関手なので prop-at-invariance により位相不変量である。この記事ではこの一致を証明しない。

グラフの Euler 標数は位相不変量

有限グラフ $\Gamma,\Gamma'$ の実現 $\lvert\Gamma\rvert$ と $\lvert\Gamma'\rvert$ が同相ならば、$\lvert V\rvert-\lvert E\rvert=\lvert V'\rvert-\lvert E'\rvert$ である。

上の一致は整数係数で述べられているので、まず整数係数の場合と比べる。整数係数の $\partial\colon\mathbb{Z}^E\to\mathbb{Z}^V$ の核 $Z$ は自由アーベル群であり(自由アーベル群 の部分群)、$\ker\partial$ の元に係数の分母の公倍数を掛ければ $Z$ に入るので、$Z$ は $\ker\partial$ を $\mathbb{Q}$ 上張る。$Z$ の基底は $\mathbb{Q}$ 上でも 1 次独立なので、$Z$ の階数は $\dim H_1(\Gamma)$ に等しい。整数係数の $\mathbb{Z}^V/\partial(\mathbb{Z}^E)$ は、thm-at-graph-homology の証明と同じ写像で $\mathbb{Z}^{c}$ と同型である。よって $\dim H_0(\Gamma)$、$\dim H_1(\Gamma)$ は $\lvert\Gamma\rvert$ の整数係数の特異ホモロジー $H_0$、$H_1$ の階数に等しく、同相な空間では等しい。thm-at-graph-homology の最後の等式から結論が従う。$\square$

同じ不変量をもつグラフ
  1. 三角形(3 頂点・3 辺)と四角形(4 頂点・4 辺)の実現はどちらも円周と同相で、$\lvert V\rvert-\lvert E\rvert=0$、$\dim H_0=\dim H_1=1$ である。辺の途中に頂点を 1 つ足しても、頂点と辺が 1 つずつ増えるだけで $\lvert V\rvert-\lvert E\rvert$ は変わらない。
  2. 2 つの三角形が 1 頂点を共有する 8 の字のグラフ(5 頂点・6 辺)と、2 頂点 $a,b$ を長さ 2 の 3 本の道 $a$–$x$–$b$、$a$–$y$–$b$、$a$–$z$–$b$ で結んだ $\theta$ 字のグラフ(5 頂点・6 辺)は、どちらも $\dim H_0=1$、$\dim H_1=2$ である。

例 2 の 2 つの空間は同相でない。8 の字の共有頂点を除くと 2 つの連結成分に分かれるが、$\theta$ 字はどの 1 点を除いても連結のままである。同相写像 $f$ は 1 点 $p$ を除いた空間を、$f(p)$ を除いた空間へ同相に写すので(同相写像 の命題「部分空間への制限」)、連結成分の個数が食い違う。一方、2 つはホモトピー同値であり(どちらも辺を 1 本ずつつぶすと 2 つの円周を 1 点でつないだ空間になる。Hat02 Example 0.7、p. 11)、ホモロジーは同型である。ホモロジーはホモトピー同値で変わらない不変量なので、ホモトピー同値だが同相でない空間を見分けられない。
連結なグラフの基本群は、全域木(全域木)に含まれない辺の本数 $\lvert E\rvert-\lvert V\rvert+1$ 個の元で生成される自由群であり(Hat02 Proposition 1A.2、p. 84)、そのアーベル化の階数が $\dim H_1$ に等しい。この記事ではこの事実を証明しない。

反例:仮定を外すと崩れること

cor-at-tree の証明が示したのは、「$\Gamma$ が連結な有限グラフならば、$\dim H_1(\Gamma)=0$ と $\lvert E\rvert=\lvert V\rvert-1$ は同値」ということである。この仮定は、(a) $\Gamma$ が連結であること、(b) $\Gamma$ が 1 次元の対象(頂点と辺だけ)であること、の 2 つを含む。1 つずつ外すと、同値性が成り立たなくなる。

外す条件反例成り立たなくなること
(a) 連結であること三角形と孤立した 1 頂点を合わせたグラフ(4 頂点・3 辺)$\lvert E\rvert=\lvert V\rvert-1$ だが、$c=2$ なので thm-at-graph-homology により $\dim H_1=1\ne0$(三角形が閉路)
(b) 1 次元であること3 頂点・3 辺に 2 次元の面を 1 枚貼った塗りつぶした三角形(連結)可縮なので 1 次のホモロジーは 0 だが、$\lvert E\rvert=3\ne\lvert V\rvert-1=2$。面が回路の境界になり、$\dim H_1=\lvert E\rvert-\lvert V\rvert+c$ が成り立たない

(b) の行は、2 次元の単体があると $H_1$ が $\ker\partial$ を面の境界の像で割ったものになることを表している。このとき thm-at-graph-homology の最後の等式は、面の個数 $n_2$ を加えた $\lvert V\rvert-\lvert E\rvert+n_2=\dim H_0-\dim H_1+\dim H_2$ に置き換わる(Euler標数)。塗りつぶした三角形では $3-3+1=1-0+0$ である。

学ぶ順の道筋

代数的位相幾何学は、次の順に記事をたどると学べる。

  1. 準備:位相空間・連続写像・同相写像・商位相・連結空間・コンパクト空間(全体は 位相幾何学 が見渡す)。代数の側では 群・アーベル群・自由群・ベクトル空間・線形写像。
  2. ホモトピーと基本群:ホモトピー → ホモトピー同値・可縮空間 → 基本群 → 被覆空間 → van Kampenの定理。応用として Brouwerの不動点定理・Borsuk–Ulamの定理。
  3. ホモロジー:鎖複体・完全列 → 単体的ホモロジー → 特異ホモロジー → Mayer–Vietoris完全列 → CW複体 → Euler標数・Betti数。応用として 次元の位相不変性・Jordan曲線定理・写像度。
  4. コホモロジーと多様体:コホモロジー → 特異コホモロジー → Poincaré双対性 → de Rhamの定理。
  5. その先:ホモトピー群 → Hurewiczの定理・Whiteheadの定理 → 球面のホモトピー群、スペクトル系列、特性類、ホモロジー代数。
    2 と 3 はおおむね並行して学べる。上の代表例の定理は、1 の線形代数だけで証明できる。

歴史

1895 年から 1904 年にかけて Poincaré は「Analysis Situs」とその補遺で、基本群と、空間の穴の個数を数える Betti 数を導入し、代数的位相幾何学の出発点を作った。1920 年代に E. Noether の影響のもとで、Betti 数は数ではなくホモロジー群として扱われるようになり、1940 年代には Eilenberg と Steenrod がホモロジーを公理で特徴づけた。関手と圏の言葉(圏、関手)は、Eilenberg と Mac Lane がこの分野の自然な写像を記述するために導入したものである。

関連項目

参考文献

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