Theta関数(theta function)とは、複素上半平面のパラメータ $\tau$ に対し、格子 $\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ に沿う変数の移動で指数関数倍だけ変化する正則関数である。Jacobiの基本例 $\vartheta(z;\tau)=\sum_{n\in\mathbb Z}e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}$ は $1$ 周期と明示的な $\tau$ 準周期性をもち、Jacobiの三重積公式により級数表示と無限積表示が結ばれる。三重積公式は、両辺の比が二重周期的な整関数になることから証明できる。その零点は $(1+\tau)/2+\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ にあり、すべて単純である。複素解析、モジュラー形式、平方和の表現数、アーベル多様体、整数分割を結ぶ基本的な特殊関数である。
Theta関数(theta function,テータ関数)は、格子に沿った変数の移動に対して、周期的ではなく「指数関数倍だけ変化する」正則関数である。ここではその基本例であるJacobiのTheta関数を扱う。
複素上半平面を
$$
\mathbb H:=\{\tau\in\mathbb C\mid \operatorname{Im}\tau>0\}
$$
とする。
$\tau\in\mathbb H$ と $z\in\mathbb C$ に対して、JacobiのTheta関数を
$$
\vartheta(z;\tau)
:=\sum_{n\in\mathbb Z}
\exp\!\left(\pi i n^2\tau+2\pi i n z\right)
$$
で定義する。$q:=e^{\pi i\tau}$、$x:=e^{2\pi i z}$ とおけば
$$
\vartheta(z;\tau)=\sum_{n\in\mathbb Z}q^{n^2}x^n
$$
である。この記事ではこの規格化を固定する。
$\operatorname{Im}\tau>0$ なら $|q|<1$ である。したがって、$|x^n|=e^{-2\pi n\operatorname{Im}z}$ の指数は $n$ について一次でしか変わらず、$|q|^{n^2}$ の指数の二次の減衰が優勢になる。これが級数の収束を保証する。
$\vartheta(z;\tau)$ を定める級数は $\mathbb C\times\mathbb H$ の任意のコンパクト集合上で一様かつ絶対収束する。特に、$\vartheta$ は $(z,\tau)$ の正則関数である。
$K\subset\mathbb C\times\mathbb H$ をコンパクト集合とする。ある $\delta>0$ と $M>0$ が存在し、$(z,\tau)\in K$ なら
$$
\operatorname{Im}\tau\geq\delta,
\qquad
|\operatorname{Im}z|\leq M
$$
である。このとき各項に対して
$$
\left|e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}\right|
=e^{-\pi n^2\operatorname{Im}\tau-2\pi n\operatorname{Im}z}
\leq e^{-\pi\delta n^2+2\pi M|n|}
$$
が成り立つ。右辺の $\mathbb Z$ 上の和は収束する。実際、$|n|\geq 4M/\delta$ なら
$$
-\pi\delta n^2+2\pi M|n|
\leq-\frac{\pi\delta}{2}n^2
$$
であるから、収束はガウス型級数との比較から従う。WeierstrassのM判定法により局所一様絶対収束が従う。各項は $(z,\tau)$ の正則関数であるから、正則関数列の局所一様極限として $\vartheta$ も正則である。
Theta関数の特徴は、$1$ 方向には周期的で、$\tau$ 方向には準周期的なことである。準周期性とは、移動後の値が元の値の定数倍ではなく、$z$ に依存する明示的な因子を掛けたものになる性質である。
任意の $z\in\mathbb C$、$\tau\in\mathbb H$ に対して
$$
\vartheta(-z;\tau)=\vartheta(z;\tau)
$$
が成り立つ。
絶対収束するため和の添字を変更できる。$m=-n$ とおけば
$$
\begin{aligned}
\vartheta(-z;\tau)
&=\sum_{n\in\mathbb Z}e^{\pi i n^2\tau-2\pi i n z}\\
&=\sum_{m\in\mathbb Z}e^{\pi i m^2\tau+2\pi i m z}
=\vartheta(z;\tau)
\end{aligned}
$$
である。
$a,b\in\mathbb Z$ なら
$$
\vartheta(z+a+b\tau;\tau)
=e^{-\pi i b^2\tau-2\pi i b z}\vartheta(z;\tau)
$$
が成り立つ。特に
$$
\vartheta(z+1;\tau)=\vartheta(z;\tau),
\qquad
\vartheta(z+\tau;\tau)
=e^{-\pi i\tau-2\pi i z}\vartheta(z;\tau)
$$
である。
$a\in\mathbb Z$ に対して $e^{2\pi i n a}=1$ であるから、$z$ に $a$ を加えても級数の各項は変わらない。したがって $a=0$ の場合を示せばよい。
$$
\begin{aligned}
\vartheta(z+b\tau;\tau)
&=\sum_{n\in\mathbb Z}
e^{\pi i(n^2+2bn)\tau+2\pi i n z}\\
&=e^{-\pi i b^2\tau-2\pi i b z}
\sum_{n\in\mathbb Z}
e^{\pi i(n+b)^2\tau+2\pi i(n+b)z}.
\end{aligned}
$$
$m=n+b$ と置き換えると、$n$ が $\mathbb Z$ 全体を動くとき $m$ も $\mathbb Z$ 全体を動く。よって最後の和は $\vartheta(z;\tau)$ である。
上の定理は、Theta関数が格子 $\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ に対する準周期関数であることを示す。ただし、$\tau$ 方向の倍率は $z$ に依存するため、そのままでは二重周期関数ではない。
$\vartheta$ は
$$
\frac{\partial\vartheta}{\partial\tau}
=\frac{1}{4\pi i}
\frac{\partial^2\vartheta}{\partial z^2}
$$
を満たす。
収束の証明と同じガウス型の評価に $|n|^2$ を掛けても和は局所一様収束する。したがって項別微分できる。各項について
$$
\frac{\partial}{\partial\tau}
e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}
=\pi i n^2e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}
$$
であり、一方
$$
\frac{1}{4\pi i}\frac{\partial^2}{\partial z^2}
e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}
=\frac{(2\pi i n)^2}{4\pi i}
e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}
=\pi i n^2e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}
$$
である。項ごとに両辺が一致するから、和を取っても一致する。
級数表示はFourier解析に適し、積表示は零点の記述に適する。両者を結ぶのがJacobiの三重積公式である。この節では、無限積の側の性質を先に調べ、それを級数と比べることで公式を証明する。
$\tau\in\mathbb H$、$q=e^{\pi i\tau}$ とし、
$$
\Pi(z;\tau):=\prod_{m=1}^{\infty}
(1-q^{2m})
(1+q^{2m-1}e^{2\pi i z})
(1+q^{2m-1}e^{-2\pi i z})
$$
とおく。
$\tau\in\mathbb H$ を固定する。
1:$|\operatorname{Im}z|\leq M$ なら $|q^{2m-1}e^{\pm2\pi iz}|\leq|q|^{2m-1}e^{2\pi M}$ であり、$\sum_m|q|^{2m-1}<\infty$ だから、各因子の $1$ からのずれの和はコンパクト集合上で一様に収束する。したがって積は一様に絶対収束し、正則な因子の積の局所一様極限として整関数になる。
2:$e^{2\pi i(z+1)}=e^{2\pi iz}$ から第一式は明らかである。$x:=e^{2\pi iz}$ とおくと、$z\mapsto z+\tau$ で $x\mapsto q^2x$ となる。$\prod_m(1-q^{2m})$ は変わらず、
$$
\prod_{m\geq1}(1+q^{2m-1}q^2x)=\prod_{m\geq2}(1+q^{2m-1}x)=\frac{\prod_{m\geq1}(1+q^{2m-1}x)}{1+qx},
$$
$$
\prod_{m\geq1}(1+q^{2m-1}q^{-2}x^{-1})=(1+q^{-1}x^{-1})\prod_{m\geq1}(1+q^{2m-1}x^{-1})
$$
である(無限積は絶対収束するので因子を並べ替えてよい)。よって比は
$$
\frac{1+q^{-1}x^{-1}}{1+qx}=\frac{q^{-1}x^{-1}(qx+1)}{1+qx}=q^{-1}x^{-1}=e^{-\pi i\tau-2\pi iz}
$$
である($1+qx=0$ となる $z$ では両辺を連続性で比べる)。
3:$|q|<1$ だから $1-q^{2m}$ は $0$ にならない。零点は
$$
1+q^{2m-1}e^{2\pi i z}=0
\quad\text{または}\quad
1+q^{2m-1}e^{-2\pi i z}=0
$$
を満たす点から生じる。最初の式は、ある $a\in\mathbb Z$ に対して
$$
z=\frac12-\left(m-\frac12\right)\tau+a=\frac{1+\tau}{2}+a-m\tau
$$
と同値であり、2つ目の式は
$$
z=\frac12+\left(m-\frac12\right)\tau+a=\frac{1+\tau}{2}+a+(m-1)\tau
$$
と同値である。$m\geq1$、$a\in\mathbb Z$ を動かすと、二つの族を合わせてちょうど $\frac{1+\tau}{2}+\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ の各点が一度ずつ現れる($b:=-m\leq-1$ と $b:=m-1\geq0$ で $\mathbb Z\tau$ の係数 $b$ を重複なく尽くす)。
単純性を $z_0=(1+\tau)/2$ で確かめる。この点では $m=1$ の因子 $1+qe^{-2\pi iz}$ が $0$ になり、その $z$ に関する微分 $-2\pi iqe^{-2\pi iz}$ は $z_0$ で $2\pi i\neq0$ になる。上の数え上げから、$z_0$ で $0$ になる因子はこれ一つだけである。残りの因子の積は $z_0$ の近傍で一様に収束し、零にならない因子の積だから $z_0$ で $0$ でない。したがって $z_0$ は単純零点である。ほかの零点は $z_0$ に格子の元を加えた点であり、2 の準周期性の倍率は $0$ にならないので、単純性はそのまま移る。$\square$
$\tau\in\mathbb H$ とすると、すべての $z\in\mathbb C$ で
$$
\vartheta(z;\tau)=\Pi(z;\tau)
=\prod_{m=1}^{\infty}
(1-q^{2m})
(1+q^{2m-1}e^{2\pi i z})
(1+q^{2m-1}e^{-2\pi i z})
$$
が成り立つ。
段 1(比は $z$ によらない)。 $\tau$ を固定し、$F(z):=\vartheta(z;\tau)/\Pi(z;\tau)$ とおく。$F$ は $\Pi$ の零点以外で正則である。thm-theta-quasiperiodicity と lem-theta-product-properties の 2 により、分子と分母は $z\mapsto z+1$ と $z\mapsto z+\tau$ で同じ因子倍されるので、$F$ は $1$ と $\tau$ を周期にもつ。$\Pi$ の零点は $z_0=(1+\tau)/2$ に格子の元を加えた点で、すべて単純である。一方 $\vartheta(z_0;\tau)=0$ である(ex-theta-half-period-zero)。準周期性の倍率は $0$ にならないので、$\vartheta$ は $\Pi$ のすべての零点で $0$ になる。したがって $F$ の分母の単純零点は分子の零点で打ち消され、$F$ はその近傍で有界になり、除去可能特異点として整関数に延びる。$F$ は二重周期的な整関数だから、周期平行四辺形の閉包(コンパクト)の上で有界であり、周期性により $\mathbb C$ 全体で有界である。Liouvilleの定理(複素解析) の記事の定理「Liouville の定理」により $F$ は定数である。この定数を $c(\tau)$ と書く。
段 2($c(\tau)=c(4\tau)$)。 $z=\frac14$ と $z=\frac12$ はどちらも $\frac{1+\tau}{2}+\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ に属さない($\tau$ の係数が半整数にならない)ので、$\Pi$ はそこで $0$ でない。級数の側では $e^{2\pi in/4}=i^n$ だから
$$
\vartheta\!\left(\tfrac14;\tau\right)=\sum_{n\in\mathbb Z}i^nq^{n^2}
=\sum_{k\in\mathbb Z}(-1)^kq^{4k^2}
=\vartheta\!\left(\tfrac12;4\tau\right)
$$
である。奇数の $n$ では $n$ と $-n$ の項が $i^n+i^{-n}=0$ で打ち消し合い、偶数 $n=2k$ では $i^{2k}=(-1)^k$ となるからである。$4\tau$ に対する $q$ は $q^4$ である。
積の側では、$m$ ごとに $(1+iq^{2m-1})(1-iq^{2m-1})=1+q^{4m-2}$ だから
$$
\Pi\!\left(\tfrac14;\tau\right)=\prod_{m\geq1}(1-q^{2m})(1+q^{4m-2}).
$$
$\prod_m(1-q^{2m})$ を $m$ の偶奇に分けると $\prod_m(1-q^{4m})(1-q^{4m-2})$ であり、$(1-q^{4m-2})(1+q^{4m-2})=1-q^{8m-4}$ だから
$$
\Pi\!\left(\tfrac14;\tau\right)=\prod_{m\geq1}(1-q^{4m})(1-q^{8m-4}).
$$
さらに $\prod_m(1-q^{4m})=\prod_m(1-q^{8m})(1-q^{8m-4})$ だから
$$
\Pi\!\left(\tfrac14;\tau\right)=\prod_{m\geq1}(1-q^{8m})(1-q^{8m-4})^2=\Pi\!\left(\tfrac12;4\tau\right)
$$
である。最後の等号は、$q$ を $q^4$ に替え $e^{\pm2\pi i\cdot\frac12}=-1$ とした定義式そのものである。以上より
$$
c(\tau)=\frac{\vartheta(\frac14;\tau)}{\Pi(\frac14;\tau)}=\frac{\vartheta(\frac12;4\tau)}{\Pi(\frac12;4\tau)}=c(4\tau).
$$
段 3($c\equiv1$)。 段 2 を繰り返すと $c(\tau)=c(4^k\tau)$ である。$Q_k:=e^{\pi i4^k\tau}$ とおくと $|Q_k|=|q|^{4^k}\to0$ である。$|Q_k|\leq\frac12$ なら
$$
\left|\vartheta\!\left(\tfrac12;4^k\tau\right)-1\right|\leq2\sum_{n\geq1}|Q_k|^{n^2}\leq\frac{2|Q_k|}{1-|Q_k|}\to0,
$$
また $\Pi(\frac12;4^k\tau)=\prod_m(1-Q_k^{2m})(1-Q_k^{2m-1})^2$ の因子の $1$ からのずれの和 $s_k$ は $\sum_{j\geq1}3|Q_k|^j$ 以下で $0$ に収束し、$\left|\prod_m(1+a_m)-1\right|\leq e^{\sum_m|a_m|}-1$ から $|\Pi(\frac12;4^k\tau)-1|\leq e^{s_k}-1\to0$ である。よって $c(\tau)=\lim_{k\to\infty}c(4^k\tau)=1$ である。$\square$
この証明は、零点と準周期性で比を定数に落とし(段 1)、特別な点での値の比較で定数を決める(段 2・3)という形をとる。級数と積を別々に計算する方法(有限の $q$-二項定理から極限をとる方法など)もある。公式そのものは DLMF20 の式 (20.5.3) にある(そこでの変数は本記事の $\pi z$ にあたる)。
$Q=e^{2\pi i\tau}=q^2$、$x=e^{2\pi i z}$ を用いれば、同じ公式は
$$
\sum_{n\in\mathbb Z}Q^{n^2/2}x^n
=\prod_{m=1}^{\infty}
(1-Q^m)(1+xQ^{m-1/2})(1+x^{-1}Q^{m-1/2})
$$
と書ける。文献によって $q=e^{\pi i\tau}$ とするか $q=e^{2\pi i\tau}$ とするかが異なるため、指数の $2$ と $1/2$ の位置を比較するときは必ず $q$ の定義を確認する。
三重積公式と lem-theta-product-properties から、零点は格子の半周期にあることが直ちに分かる。
$\tau\in\mathbb H$ を固定する。$z\mapsto\vartheta(z;\tau)$ の零点は
$$
z\in\frac{1+\tau}{2}+\mathbb Z+\mathbb Z\tau
$$
に限られ、そのすべてが単純零点である。したがって基本平行四辺形には、境界の同一視を除いてちょうど1つの零点がある。
thm-jacobi-triple-product により $\vartheta(\cdot;\tau)=\Pi(\cdot;\tau)$ であり、$\Pi$ の零点と重複度は lem-theta-product-properties の 3 で決定した。$\square$
零点が基本平行四辺形にちょうど一つであることは、偏角の原理からも確かめられる。基本平行四辺形の周に沿って $\vartheta'/\vartheta$ を積分すると、向かい合う辺の寄与は準周期性の対数微分 $-2\pi i$ の分だけずれ、合計が $2\pi i$ になる。したがって零点の個数(重複度込み)は $1$ である。三重積による証明はこれに加えて零点の位置を与える。
文献では、次の4関数をまとめてJacobi Theta関数と呼ぶことが多い。
$$
\begin{aligned}
\vartheta_1(z;\tau)
&=-i\sum_{n\in\mathbb Z}(-1)^n
e^{\pi i(n+1/2)^2\tau+2\pi i(n+1/2)z},\\
\vartheta_2(z;\tau)
&=\sum_{n\in\mathbb Z}
e^{\pi i(n+1/2)^2\tau+2\pi i(n+1/2)z},\\
\vartheta_3(z;\tau)
&=\sum_{n\in\mathbb Z}
e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z},\\
\vartheta_4(z;\tau)
&=\sum_{n\in\mathbb Z}(-1)^n
e^{\pi i n^2\tau+2\pi i n z}.
\end{aligned}
$$
この記事の $\vartheta$ は $\vartheta_3$ である。定義から
$$
\vartheta_4(z;\tau)=\vartheta_3\!\left(z+\frac12;\tau\right)
$$
である。また $\vartheta_1$ は奇関数で $z\in\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ に単純零点をもち、$\vartheta_2, \vartheta_3, \vartheta_4$ は $z$ の偶関数である。DLMF20 の §20.2 は同じ 4 関数を変数 $\pi z$ で書いており(たとえば式 (20.2.3) は $\vartheta_3$ を $1+2\sum_{n\geq1}q^{n^2}\cos(2nz)$ と表す)、本記事の $\vartheta_j(z;\tau)$ は DLMF の $\theta_j(\pi z|\tau)$ にあたる。
$t>0$ として $\tau=it$ とおくと
$$
\vartheta(0;it)
=\sum_{n\in\mathbb Z}e^{-\pi t n^2}
=1+2\sum_{n=1}^{\infty}e^{-\pi t n^2}>1
$$
である。これはGauss関数の整数点での値の和である。Poissonの和公式を当てると変換公式
$$
\vartheta(0;i/t)=\sqrt t\,\vartheta(0;it)\qquad(t>0)
$$
が得られ、より一般に $\vartheta(0;-1/\tau)=\sqrt{\tau/i}\,\vartheta(0;\tau)$(平方根は $\tau=it$ で正の値をとる主枝)が成り立つ(Neu99 第 VII 章 (1.5)、p. 425。この記事では証明しない)。この変換公式は Riemann ゼータ関数の関数等式の証明に使われる(同書 (1.3)・(1.6)、pp. 422–425)。$t=1$ では両辺が一致し、$t\to0$ では $\vartheta(0;it)\sim1/\sqrt t$ となって、和の大部分が多くの項に分散することが分かる。
$$
\vartheta\!\left(\frac{1+\tau}{2};\tau\right)=0
$$
である。これは級数表示で $n$ 番目と $-n-1$ 番目の項が打ち消し合うことから直接確かめられる。三重積公式の証明はこの事実を使うので、ここでは三重積に頼らずに示す。
$z=(1+\tau)/2$ を代入した級数の $n$ 番目は
$$
e^{\pi i n^2\tau+\pi i n(1+\tau)}
=(-1)^n e^{\pi i(n^2+n)\tau}
$$
である。$-n-1$ 番目は
$$
(-1)^{-n-1}e^{\pi i((-n-1)^2+(-n-1))\tau}
=-(-1)^n e^{\pi i(n^2+n)\tau}
$$
であり、両者の和は0である。整数全体は $n\leftrightarrow -n-1$ という2元軌道に分解され、級数は絶対収束するから、項を2つずつ組にして足すことができる。よって全体の和は0である。$\square$
$\vartheta(z;\tau)$ は $1$ を周期にもつが、$\tau$ は周期ではない。実際、
$$
\frac{\vartheta(z+\tau;\tau)}{\vartheta(z;\tau)}
=e^{-\pi i\tau-2\pi i z}
$$
は $z$ に依存する。したがってTheta関数をそのまま二重周期関数の例とするのは誤りである。一方、Theta関数の比からは真の二重周期関数を構成できる。たとえば $a\in\mathbb C$ に対し
$$
f(z):=\frac{\vartheta(z-a;\tau)\,\vartheta(z+a;\tau)}{\vartheta(z;\tau)^2}
$$
とおくと、thm-theta-quasiperiodicity により分子の二つの因子は $z\mapsto z+\tau$ でそれぞれ $e^{-\pi i\tau-2\pi i(z\mp a)}$ 倍され、その積 $e^{-2\pi i\tau-4\pi iz}$ は分母の倍率と一致する。よって $f$ は $1$ と $\tau$ を周期にもつ有理型関数であり、thm-theta-zeros により $a\notin\mathbb Z+\mathbb Z\tau$ なら $f$ は定数でない(分母は $z=\frac{1+\tau}{2}$ で 2 位の零点をもつが、分子はそこで $0$ にならない)。
Theta関数の定理がどの仮定に依存しているかを表にまとめる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\operatorname{Im}\tau>0$ | $\tau=0$ の級数 $\sum_n e^{2\pi inz}$ | 級数の収束($z=0$ で各項が $1$) |
| $\tau$ 方向の倍率が $1$ であること | $\vartheta$ そのもの(倍率 $e^{-\pi i\tau-2\pi iz}$) | $\tau$ を周期にもつこと |
| 零点の個数を合わせること | $\vartheta(z)$ と $\vartheta(z)^2$ の比 | 比が $\tau$ を周期にもつこと |
| 同じ $q$ の規格化 | 左辺を $\sum_n q^{n^2}x^n$($q=e^{\pi i\tau}$)とし、右辺に $Q=e^{2\pi i\tau}$ の形の積 $\prod_m(1-Q^m)(1+xQ^{m-1/2})(1+x^{-1}Q^{m-1/2})$ の $Q$ を $q$ に替えたものを置く | 両辺の等号 |
1 行目:$\tau=0$ では各項の絶対値が $e^{-2\pi n\operatorname{Im}z}$ で、$z=0$ では $1$ だから級数は収束しない。$\operatorname{Im}\tau>0$ による二次の減衰(prop-theta-convergence)が本質的である。2 行目は ex-theta-not-elliptic による。3 行目:$\vartheta(z)/\vartheta(z)^2=1/\vartheta(z)$ の倍率は $e^{\pi i\tau+2\pi iz}$ で $1$ でないので、二重周期関数にならない。二重周期関数を作るには、ex-theta-not-elliptic のように分子と分母の Theta 因子の個数と移動量の和をそろえる必要がある。4 行目:$x=1$ で展開すると左辺は $1+2q+\cdots$、右辺は $\vartheta(0;\tau/2)=1+2q^{1/2}+\cdots$ となり、$q^{1/2}$ の項で食い違う。どちらの規格化の式も単独では正しく、誤りは二つを混ぜることから生じる(下の記法上の注意)。
Theta関数は次の複数の分野を結ぶ。
Theta関数には複数の互いに整合する記法がある。とくに次を確認しないまま公式を混ぜてはならない。
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