Serreのアフィン性判定法(Serre's criterion for affineness)とは、準コンパクトなスキーム $X$ について、$X$ がアフィンスキームであることと、$X$ 上のすべての準連接なイデアル層 $\mathcal I$ で $H^1(X,\mathcal I)=0$ となることが同値であるという定理である。これは、すべての準連接層の 1 次以上のコホモロジーが消えることや、大域切断の関手が準連接層の短完全列を保つこととも同値である。証明では、コホモロジーの消滅を使って閉点での値と単位イデアルの関係式を大域切断に持ち上げる。冪零なイデアル層で切った閉部分スキームとアフィン性が一致すること(とくに Noether スキームでは被約化してもアフィン性が変わらないこと)が導かれ、Stein 空間の特徴づけの代数版にあたる。
Serreのアフィン性判定法(Serre's criterion for affineness)は、準コンパクトなスキーム $X$ がアフィンスキームであることを、$X$ 上の準連接層のコホモロジーの消滅で特徴づける定理である。アフィンスキームの上では準連接層の 1 次以上のコホモロジーがすべて消えるが、この判定法はその逆が成り立つこと、しかも準連接なイデアル層の 1 次コホモロジーが消えるだけで十分なことを述べる。
アフィン性は「大域切断の環 $\Gamma(X,\mathcal O_X)$ が $X$ を完全に覚えている」という大域的な性質であり、局所的な条件からは見えにくい。判定法は、それをコホモロジーという計算できる量に言い換える。複素解析で Stein 空間が連接層のコホモロジーの消滅で特徴づけられることの、代数幾何学での類似でもある。この記事では判定法の核心である 3 ⇒ 1 と 4 ⇒ 1 を完全に証明し、冪零な厚みを付けてもアフィン性が変わらないことを導き、射影直線・穴あきアフィン平面・無限個の点の非交和で仮定の役割を確かめる。
$X$ をスキームとし、$A:=\Gamma(X,\mathcal O_X)$ とおく。$f\in A$ について、$f$ の値 $f(x)\in\kappa(x)$ が $0$ でない点 $x$ 全体のなす開集合を $X_f$ と書く(基本開集合 の定義「スキームの上の基本開集合」)。閉集合 $T\subset X$ について、$T$ を台とする被約な閉部分スキームのイデアル層、すなわち開集合 $V$ の上で $T\cap V$ のすべての点で値が $0$ になる切断のなす準連接イデアル層を $\mathcal I_T$ と書く(閉部分スキーム の命題「被約誘導構造」)。
$X$ を準コンパクトなスキームとする。次の 4 条件は同値である。
条件 3 は、条件 2 のうち「$i=1$」と「イデアル層」だけを残したものである。条件 4 は大域切断の関手 $\Gamma(X,-)$ が準連接層の圏で完全であることを言い換えたもので、コホモロジーを使わずに述べられる。
証明の 3 ⇒ 1 と 4 ⇒ 1 は、次の 2 つの「持ち上げ」だけを使う。
まず (a)・(b) を短完全列の大域切断の全射性として書く。
$P$ は閉点なので $Y\cup\{P\}$ は閉集合である。$P$ に剰余体 $\kappa(P)$ を置いた摩天楼層を $\kappa(P)_P$ と書き、$\mathcal I_Y\to\kappa(P)_P$ を、$P$ を含む開集合 $V$ の上の切断 $s$ に値 $s(P)$ を対応させる写像で定める。その核は $Y\cup\{P\}$ のすべての点で値が $0$ になる切断の層 $\mathcal I_{Y\cup\{P\}}$ である。$P\notin Y$ で $Y$ は閉なので、$P$ の近傍で $\mathcal I_Y=\mathcal O_X$ であり、$P$ での茎の写像 $\mathcal O_{X,P}\to\kappa(P)$ は全射である。$P$ 以外の点 $x$ では、$x$ は閉集合 $\{P\}$ に入らないので $\kappa(P)_P$ の茎は $0$ である。よって
$$
0\longrightarrow\mathcal I_{Y\cup\{P\}}\longrightarrow\mathcal I_Y\longrightarrow\kappa(P)_P\longrightarrow0
$$
は完全であり(これを列 (S1) と呼ぶ)、$\Gamma(X,\kappa(P)_P)=\kappa(P)$ である。$\kappa(P)_P$ は準連接層の余核なので準連接である(準連接層 の定理「準連接層の圏の閉性」の 1)。
次に、$X=\bigcup_iX_{f_i}$ のとき、$\alpha\colon\mathcal O_X^{\oplus r}\to\mathcal O_X$、$(c_1,\dots,c_r)\mapsto\sum_if_ic_i$ を考える。各点 $x$ はある $X_{f_i}$ に入り、$f_i$ の茎は $\mathcal O_{X,x}$ の単元なので、$\alpha$ は全射である。核を $\mathcal K$ とすると $\mathcal K$ は準連接であり、
$$
0\longrightarrow\mathcal K\longrightarrow\mathcal O_X^{\oplus r}\xrightarrow{\ \alpha\ }\mathcal O_X\longrightarrow0
$$
は準連接層の短完全列である(これを列 (S2) と呼ぶ)。(b) は、(S2) の大域切断 $A^{\oplus r}\to A$ が全射であること($1=\sum_ic_if_i$ となる $c_i\in A$ があること)と同じである。
1 ⇒ 2。 準連接層 の定理「アフィンスキーム上の消滅定理」による($X=\operatorname{Spec}B$ で $B$ が Noether 環の場合はそこで証明され、一般の $B$ については Stacks Tag 01XB にある。この記事では一般の場合を証明しない)。
1 ⇒ 3。 $i=1$ の消滅は、任意の環 $B$ について 準連接層 の系「アフィンスキーム上の 1 次コホモロジーの消滅」で証明されている。準連接なイデアル層は準連接層である。
2 ⇒ 3 は明らか。1 ⇒ 4 は 準連接層 の命題「アフィンスキーム上の大域切断の完全性」である。
4 ⇒ (a)、(b)。 (S1)・(S2) は準連接層の短完全列なので、条件 4 から大域切断の写像はどちらも全射である。
3 ⇒ (a)。 (S1) のコホモロジーの長完全列(層コホモロジー の定理「層コホモロジーの長完全列」)
$$
\Gamma(X,\mathcal I_Y)\longrightarrow\kappa(P)\longrightarrow H^1(X,\mathcal I_{Y\cup\{P\}})=0
$$
による。
3 ⇒ (b)。 $0\le j\le r$ について、$\mathcal O_X^{\oplus j}\subset\mathcal O_X^{\oplus r}$ を最初の $j$ 成分とし、$\mathcal K_j:=\mathcal K\cap\mathcal O_X^{\oplus j}$ とおく。$\mathcal K_j$ は $\mathcal K\to\mathcal O_X^{\oplus r}/\mathcal O_X^{\oplus j}$ の核なので準連接である。第 $j$ 成分への射影 $\mathcal K_j\to\mathcal O_X$ の核は $\mathcal K_{j-1}$ なので、$\mathcal K_j/\mathcal K_{j-1}$ はその像、すなわち準連接なイデアル層と同型であり、条件 3 から $H^1(X,\mathcal K_j/\mathcal K_{j-1})=0$ である。$\mathcal K_0=0$ から始めて、長完全列
$$
H^1(X,\mathcal K_{j-1})\longrightarrow H^1(X,\mathcal K_j)\longrightarrow H^1(X,\mathcal K_j/\mathcal K_{j-1})
$$
の両端が $0$ なので順に $H^1(X,\mathcal K_j)=0$ となり、$H^1(X,\mathcal K)=H^1(X,\mathcal K_r)=0$ を得る。(S2) の長完全列から $A^{\oplus r}\to A$ は全射である。
(a)、(b) ⇒ 1。 (a) で $f(P)=1$ となる $f\in\Gamma(X,\mathcal I_Y)\subset A$ をとる。$P\in X_f$ であり、$Y$ の点では $f$ の値が $0$ なので $X_f\subset U$ である。基本開集合 の命題「スキームの上の基本開集合の性質」の 1 により、$X_f=U\cap X_f$ はアフィンスキーム $U$ の基本開集合 $D_U(f|_U)$ であり、アフィンである(アフィンスキーム の命題「基本開集合はアフィン」)。
$X_f$ がアフィンとなる $f\in A$ 全体にわたる $X_f$ の和集合を $W$ とすると、$W$ は開集合で、いま見たことから $X$ のすべての閉点を含む。$X\setminus W$ が空でないとする。これは準コンパクトな空間 $X$ の閉集合なので準コンパクトであり、スキームの底空間は $T_0$ なので(閉点 の系「スキームの閉点」の証明)その部分空間も $T_0$ である。閉点 の命題「閉点の存在」により $X\setminus W$ は自分の中で閉な点 $z$ をもち、$X\setminus W$ は $X$ で閉なので $z$ は $X$ の閉点である。これは $z\notin W$ に反する。よって $W=X$ であり、$X$ は準コンパクトなので、有限個の $f_1,\dots,f_r\in A$ で $X=X_{f_1}\cup\dots\cup X_{f_r}$、各 $X_{f_i}$ がアフィンとなるものがある。
(b) により $f_1,\dots,f_r$ は $A$ の単位イデアルを生成する。恒等写像 $A\to\Gamma(X,\mathcal O_X)$ に対応する標準的な射 $j\colon X\to\operatorname{Spec}A$(アフィンスキーム の定理「スキームからアフィンスキームへの射」)について、点 $x$ で $\kappa(j(x))\to\kappa(x)$ は体の準同型ゆえ単射なので $j^{-1}(D(f_i))=X_{f_i}$ であり、これはアフィンである。アフィン射 の命題「アフィン性の判定条件」を $j$ と $f_1,\dots,f_r$ に当てると、$X$ はアフィンスキームである。$\square$
証明の流れをまとめる。コホモロジーの消滅は「局所的に持ち上がる切断が大域的にも持ち上がる」ことを保証する。(a) では閉点での値 $1$ を大域切断に持ち上げて、閉点ごとにアフィンな $X_f$ を作り、(b) では「各点で $f_i$ のどれかが単元」という局所的な関係式 $1=\sum_ic_if_i$ を大域的な関係式に持ち上げる。最後の段は、大域切断 $f_i$ で切り出したアフィン開集合が単位イデアルを生成するならアフィンである、という判定に帰着している。
上の証明は Har77 III Theorem 3.7(pp. 215–216、$X$ が Noether スキームで、条件 3 を連接イデアル層にした形)と Liu06 Theorem 5.2.23(p. 187、$X$ が Noether であるか分離的かつ準コンパクトな場合)の筋であり、準コンパクトなスキームと準連接イデアル層についての 3 ⇒ 1 は Stacks Lemma 30.3.1(Tag 01XF、pp. 2585–2586)にある。EGA2 Théorème 5.2.1(p. 97)は、準コンパクトかつ分離的なスキーム(EGA の用語で schéma)または底空間が Noether であるプレスキームについて、上の 1・3・4 と、「すべての準連接層 $\mathcal F$ で $H^1(X,\mathcal F)=0$」、「$X_{f_\alpha}$ がアフィンで、$A$ の単位イデアルを生成する $f_\alpha\in A$ の族がある」などの条件の同値を述べている。$X$ が準コンパクトかつ準分離的なら、条件 3 は有限型の準連接イデアル層に対してだけ仮定すればよい(Stacks Lemma 30.3.2、Tag 01XG、p. 2586。この記事では証明しない)。
$X$ が Noetherスキーム なら、準連接なイデアル層は連接である。実際、アフィン開集合 $\operatorname{Spec}B$ の上で準連接イデアル層は $B$ のイデアル $\mathfrak a$ に付随する層 $\widetilde{\mathfrak a}$ であり、$B$ は Noether 環なので $\mathfrak a$ は有限生成である(連接層 の定理「Noether スキーム上の連接層の特徴づけ」)。したがって条件 3 は「任意の連接イデアル層 $\mathcal I$ について $H^1(X,\mathcal I)=0$」と同じであり、Har77 の形が得られる。
アフィン性は、冪零なイデアル層で切った閉部分スキームに移っても変わらない。判定法の条件 3 を使うと、これが短く示せる。
$X$ をスキーム、$\mathcal N\subset\mathcal O_X$ を準連接なイデアル層で、ある $m\ge1$ について $\mathcal N^m=0$ となるものとし、$\mathcal N$ が定める閉部分スキームを $Z$ とする。このとき、$X$ がアフィンであることと $Z$ がアフィンであることは同値である。
ここで $\mathcal N^j$ は $\mathcal N^{\otimes j}\to\mathcal O_X$ の像のイデアル層であり、アフィン開集合 $\operatorname{Spec}B$ の上で $\mathcal N=\widetilde{\mathfrak n}$ なら $\mathcal N^j=\widetilde{\mathfrak n^j}$ である。準連接イデアル層 $\mathcal I$ についても、$\mathcal N^j\mathcal I$ を同じく $\widetilde{\mathfrak n^j\mathfrak a}$ で定まる準連接イデアル層とする。
$X=\operatorname{Spec}B$ なら、$Z$ は $B$ のイデアル $\mathfrak n$ による $\operatorname{Spec}(B/\mathfrak n)$ であり、アフィンである(閉部分スキーム の定理「閉部分スキームと準連接イデアル層の対応」)。
逆に $Z$ がアフィンだとする。各点 $x$ で茎 $\mathcal N_x$ は $\mathcal N_x^m=0$ を満たすので極大イデアルに含まれ、$\mathcal O_{X,x}/\mathcal N_x\ne0$ である。よって $Z$ の底空間は $X$ 全体であり、閉埋め込み $i\colon Z\to X$ は底空間の同相写像である。とくに $X$ は $Z$ と同じく準コンパクトである。thm-sca-main の条件 3 を確かめる。
$\mathcal I$ を準連接なイデアル層とし、$0\le j\le m$ について $\mathcal I_j:=\mathcal N^j\mathcal I$ とおく。$\mathcal I_0=\mathcal I$、$\mathcal I_m=0$ であり、$\mathcal Q_j:=\mathcal I_j/\mathcal I_{j+1}$ は $\mathcal N$ で消える準連接層である。アフィン開集合 $\operatorname{Spec}B$ の上で $\mathcal N=\widetilde{\mathfrak n}$、$\mathcal Q_j=\widetilde M$ とすると $\mathfrak nM=0$ であり、$\mathcal Q_j$ は $Z\cap\operatorname{Spec}B=\operatorname{Spec}(B/\mathfrak n)$ の上の $B/\mathfrak n$ 加群 $M$ に付随する層と、アーベル群の層として同じものである。こうして $\mathcal Q_j$ は、同じ底空間の上の $Z$ の準連接層 $\mathcal G_j$ と見なせる。$\mathcal O_X$ 加群層や $\mathcal O_Z$ 加群層としてのコホモロジーはアーベル群の層としてのコホモロジーと一致するので(脆弱層 の系「加群層のコホモロジーとの一致」)、
$$
H^1(X,\mathcal Q_j)=H^1(Z,\mathcal G_j)=0
$$
である(右の消滅は $Z$ がアフィンであることと 準連接層 の系「アフィンスキーム上の 1 次コホモロジーの消滅」による)。
$j=m-1,m-2,\dots,0$ の順に、短完全列 $0\to\mathcal I_{j+1}\to\mathcal I_j\to\mathcal Q_j\to0$ の長完全列
$$
H^1(X,\mathcal I_{j+1})\longrightarrow H^1(X,\mathcal I_j)\longrightarrow H^1(X,\mathcal Q_j)=0
$$
を使うと、$H^1(X,\mathcal I_m)=0$ から始めて $H^1(X,\mathcal I_j)=0$ が順に従い、$H^1(X,\mathcal I)=0$ を得る。thm-sca-main の 3 ⇒ 1 により $X$ はアフィンである。$\square$
$X$ を Noether スキームとする。$X$ がアフィンであることと、付随する被約スキーム $X_{\mathrm{red}}$ がアフィンであることは同値である。
$X_{\mathrm{red}}\to X$ は冪零元の層 $\mathcal N_X$ が定める閉埋め込みである(被約スキーム の定理「付随する被約スキームの構成」)ので、$\mathcal N_X$ は準連接なイデアル層である(閉部分スキーム の定理「閉部分スキームと準連接イデアル層の対応」)。$X$ を有限個のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}B_1,\dots,\operatorname{Spec}B_s$ で覆うと、各 $B_l$ は Noether 環なので冪零根基 $\operatorname{nil}(B_l)$ は有限生成であり、生成元 $g_1,\dots,g_t$ をそれぞれ $g_\nu^{e}=0$ とすれば $\operatorname{nil}(B_l)^{t(e-1)+1}=0$ である。$\operatorname{Spec}B_l$ の上で $\mathcal N_X=\widetilde{\operatorname{nil}(B_l)}$(同じ定理の 2)なので、$m$ を十分大きくとると $\mathcal N_X^m=0$ となる。prop-sca-nilpotent を当てればよい。$\square$
この系は Har77 III 第 3 節演習 3.1(p. 216)に演習として扱われている。Noether 性は、冪零元の層が冪零であることを保証するためだけに使った。
$k$ を体とし、射影直線 $\mathbb P^1_k$ を $U_0=\operatorname{Spec}k[t]$ と $U_1=\operatorname{Spec}k[u]$ を $U_0\cap U_1$ 上 $u=t^{-1}$ で貼り合わせたものとする。$P$ を $U_0$ の $t=0$、$Q$ を $U_1$ の $u=0$ の閉点とする。
$k$ を体、$X=\mathbb A^2_k\setminus\{0\}$ とする。穴あきアフィン平面 の定理「穴あきアフィン平面の構造層のコホモロジー」により、$H^1(X,\mathcal O_X)$ は $x^{-a}y^{-b}$($a,b\ge1$)を基底とする無限次元の $k$ ベクトル空間で、とくに $0$ でない。$\mathcal O_X$ 自身が準連接なイデアル層なので、判定法の 1 ⇒ 3 により $X$ はアフィンでない。ここでは構造層だけで非アフィン性が検出できる。
$k$ を体とし、$X=\bigsqcup_{n\in\mathbb N}\operatorname{Spec}k$ を可算無限個の点の非交和とする。$X$ の底空間は離散空間で、開集合は $\mathbb N$ の部分集合 $S$ である。$X$ 上のアーベル群の層 $\mathcal F$ は $\mathcal F(S)=\prod_{n\in S}\mathcal F_n$ を満たすので、制限写像は射影であり全射である。よってすべての層が脆弱層であり、$i\ge1$ で $H^i(X,\mathcal F)=0$ である(層コホモロジー の定理「脆弱層の非輪状性」)。したがって条件 2・3・4 はすべて成り立つ。しかし $X$ は準コンパクトでないのでアフィンでない。判定法の「準コンパクト」は外せない。
$k$ を体、$X=\mathbb A^1_k=\operatorname{Spec}k[x]$、$O$ を原点とする。開集合 $V$ に対し、$O\in V$ なら原点での芽が $0$ になる切断、$O\notin V$ なら $V$ 上のすべての切断を集めたイデアル層を $\mathcal J$ とする($\mathbb A^1_k\setminus\{O\}$ からの構造層の零延長)。原点での芽をとる写像から完全列
$$
0\longrightarrow\mathcal J\longrightarrow\mathcal O_X\longrightarrow(\mathcal O_{X,O})_O\longrightarrow0
$$
を得る(右は原点に $\mathcal O_{X,O}=k[x]_{(x)}$ を置いた摩天楼層)。$\Gamma(X,\mathcal O_X)=k[x]\to k[x]_{(x)}$ は全射でない。実際 $1/(x-1)$ が多項式 $g$ の像なら $(x-1)g=1$ が $k[x]$ で成り立ち、次数が合わない。よって長完全列から $H^1(X,\mathcal J)\ne0$ である。$X$ はアフィンなので、条件 3 のイデアル層の準連接性は外せない(1 ⇒ 3 が準連接でないイデアル層に対しては成り立たない)。$\mathcal J$ が準連接でないことは、$\Gamma(X,\mathcal J)=0$ なのに $\mathcal J\ne0$ であることからも分かる。
各行は、左の条件だけを外したものである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $X$ が準コンパクト | 可算無限個の点の非交和 | 条件 2〜4 から $X$ がアフィンであることを導くこと |
| 条件 3 の「すべての準連接イデアル層」(構造層だけにする) | $\mathbb P^1_k$ | $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ から $X$ がアフィンであることを導くこと |
| 条件 3 のイデアル層が準連接 | $\mathbb A^1_k$ の零延長のイデアル層 $\mathcal J$ | アフィンスキーム上でイデアル層の $H^1$ が消えること |
解析幾何との類似。 複素解析空間では、Stein 空間の上で連接解析層の 1 次以上のコホモロジーが消え(Stein空間 の定理「Stein 空間の Cartan の定理 A・B」)、逆に連接層のコホモロジーの消滅から Stein 性が従う。Serre の判定法はこの代数版にあたる(Har77 III Remark 3.7.1、p. 216)。
使いどころ。 判定法は、アフィン性を直接示しにくい状況で使われる。典型は、アフィンスキームから Noether スキームへの有限全射があれば終域もアフィンであるという Chevalleyのアフィン性定理 で、終域の連接層のコホモロジーの消滅を示してこの判定法に帰着させる。prop-sca-nilpotent も同じ型の応用で、冪零元を除いたスキームのアフィン性から元のスキームのアフィン性を引き出す。
アフィン射への応用。 射 $f\colon X\to S$ がアフィン射であることは $S$ のアフィン開被覆の各元の逆像がアフィンであることで判定できるので(アフィン射 の命題「アフィン性は終域上の局所的性質」)、各逆像にこの判定法を当てることができる。
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