有理曲線(rational curve)とは、体 $k$ 上の代数曲線で射影直線 $\mathbb{P}^1_k$ と双有理同値なもの、すなわち関数体が 1 変数の有理関数体 $k(t)$ と同型なものであり、ほとんどすべての点を 1 つの媒介変数の有理式で表せる曲線である。次数 $d$ の既約な平面曲線が $(d-1)$ 重点をもてば、その点を通る直線の傾きを媒介変数として有理曲線になり、有理点をもつ円錐曲線や節点・尖点をもつ 3 次曲線はその例である。Lüroth の定理により、有理曲線から支配的な写像を受ける曲線も有理曲線である。代数閉体上の非特異な射影曲線では、有理であることと $\mathbb{P}^1$ と同型であること、種数が $0$ であることは同値である。
円 $x^2+y^2=1$ の点は $\bigl(\frac{1-t^2}{1+t^2},\frac{2t}{1+t^2}\bigr)$ と 1 つの媒介変数 $t$ の有理式で表され、$(-1,0)$ を除く円の点と $t$ の値がちょうど 1 対 1 に対応する。このように、ほとんどすべての点を 1 つの媒介変数の有理式でちょうど 1 回ずつ表せる曲線を 有理曲線(rational curve)という。正確には、射影直線と双有理同値な代数曲線のことであり、関数体が 1 変数の有理関数体と同型な曲線のことである。
有理曲線は代数曲線の中で最も単純な種類であり、代数閉体上の非特異な射影曲線では射影直線そのもの、種数 $0$ の曲線にあたる。この記事では、平面曲線が有理曲線になる簡単な十分条件(thm-rc-plane)を証明し、有理曲線の像や有理曲線に覆われる曲線が再び有理曲線になること(cor-rc-image)を Lüroth の定理(thm-rc-luroth)から導く。
$k$ を体とする。$k$ 上の曲線とは、代数曲線 の定義のとおり、$k$ 上分離的かつ有限型の 1 次元の整スキームのことである。曲線 $C$ の関数体 $K(C)$ は、$k$ 上の超越次数が $1$ の有限生成拡大体である。
同型 $K(C)\cong k(t)$ を 1 つ固定すると、$C$ の座標関数は $t$ の有理式で表される。これが冒頭の「1 つの媒介変数の有理式による表示」であり、双有理写像 $\mathbb{P}^1_k\dashrightarrow C$ を与える。有理曲線は 1 次元の有理多様体(双有理写像 の定義「有理多様体と単有理多様体」)にほかならない。
有理であるかどうかは体 $k$ に依存する。$k$ の代数閉包 $\bar k$ に係数を広げた $C_{\bar k}$ が整で $\bar k$ 上有理なとき、$C$ は幾何的に有理であるという。$k$ 上有理なら幾何的に有理だが、逆は成り立たない(ex-rc-no-point)。
代数閉体上では、有理曲線は、双有理な非特異射影曲線が $\mathbb{P}^1$ と同型な曲線、すなわち幾何種数が $0$ の曲線と言い換えられる。複素数体上では、その非特異射影曲線が Riemann球面 と同型であると言ってもよい(thm-rc-smooth-projective の後の段落)。
$k$ の標数を $2$ でないとする。
一方、非特異な平面 3 次曲線(たとえば標数が $2$ でない代数閉体上の $y^2=x^3-x$)は有理曲線でない(双有理写像 の例「反例:楕円曲線は有理でない」、Har77 I 演習 6.2、p. 46)。
多項式 $F\in k[x,y]$ を斉次成分に分けて $F=F_0+F_1+\cdots+F_d$($F_j$ は $j$ 次の斉次式、$F_d\ne0$)と書く。$F(0,0)=0$ のとき、$F_m\ne0$ となる最小の $m$ を、曲線 $F=0$ の原点での重複度という。重複度 $1$ の点は非特異な点、重複度 $2$ の点は 2 重点である。
$k$ を体、$F\in k[x,y]$ を次数 $d\ge2$ の既約多項式とし、曲線 $C\colon F=0$ の原点での重複度がちょうど $d-1$ であるとする。すなわち
$$
F=F_{d-1}+F_d,\qquad F_{d-1}\ne0,\ F_d\ne0
$$
とする。このとき $t:=y/x\in K(C)$ について $K(C)=k(t)$ であり、$t$ は $k$ 上超越的である。とくに $C$ は有理曲線であり、
$$
x=-\frac{F_{d-1}(1,t)}{F_d(1,t)},\qquad y=-\frac{t\,F_{d-1}(1,t)}{F_d(1,t)}
$$
が $C$ の有理式による表示を与える。
$F$ は既約なので $(F)$ は素イデアルであり、$K(C)$ は整域 $k[x,y]/(F)$ の分数体である。$x$、$y$ の類も同じ記号で書く。
$x\ne0$:$x\in(F)$ なら $F\mid x$ となるが、$\deg F=d\ge2$ なので起こらない。よって $K(C)$ の中で $x\ne0$ であり、$t:=y/x$ が定まる。
$x$ を $t$ で表す:$F_j$ は $j$ 次の斉次式なので $F_j(x,tx)=x^jF_j(1,t)$ である。$K(C)$ の中で $y=tx$ だから
$$
0=F(x,y)=x^{d-1}F_{d-1}(1,t)+x^dF_d(1,t)=x^{d-1}\bigl(F_{d-1}(1,t)+x\,F_d(1,t)\bigr)
$$
であり、$x\ne0$ なので $F_{d-1}(1,t)+x\,F_d(1,t)=0$ である。
$F_d(1,t)\ne0$:$F_d(1,t)=F_d(x,y)/x^d$ なので、$F_d(x,y)\notin(F)$ を示せばよい。$F\mid F_d$ なら、次数がどちらも $d$ なので $F_d=cF$($c\in k$)であり、$d-1$ 次の成分を比べると $0=cF_{d-1}$、したがって $c=0$、$F_d=0$ となって仮定に反する。
結論:以上から $x=-F_{d-1}(1,t)/F_d(1,t)\in k(t)$、$y=tx\in k(t)$ であり、
$$
K(C)=k(x,y)\subset k(t)\subset K(C)
$$
が成り立つ。$K(C)$ は $k$ 上超越次数 $1$ なので $t$ は $k$ 上超越的であり、$k(t)$ は 1 変数の有理関数体である。def-rc により $C$ は有理曲線である。$\square$
幾何的には、$t$ は原点を通る直線 $y=tx$ の傾きである。$F_d(1,t)\ne0$ となる $t\in k$ について、この直線と $C$ の交点は、$x^{d-1}(F_{d-1}(1,t)+xF_d(1,t))=0$ の解で、原点が $d-1$ 重に数えられ、残りの交点がちょうど 1 つある。その交点の座標が上の式である。$d=2$ の場合は、非特異な点をもつ 2 次曲線を、その点を通る直線で表示することにあたる(2次曲線の媒介変数表示)。射影平面の曲線については、$(d-1)$ 重点を座標変換で原点に移せば同じ議論が使える(Har77 I 演習 7.5 (b)、p. 55)。
有理曲線から別の曲線への定値でない写像があると、行き先も有理曲線になる。これは次の体論の定理に帰着する。
$k$ を体、$t$ を $k$ 上超越的な元とする。$k\subsetneq L\subset k(t)$ を満たす任意の体 $L$ について、$L=k(u)$ となる $u\in L\setminus k$ が存在する。とくに $L$ は $k$ 上の 1 変数の有理関数体と同型である。
証明では 有理関数体 の命題「有理関数による部分体上の次数」を使う:$u=g/h\in k(t)\setminus k$($g,h\in k[t]$ は互いに素)について、$u$ は $k$ 上超越的であり、$[k(t):k(u)]=\max(\deg g,\deg h)$ である。
$u$ の選び方:$w\in L\setminus k$ をとると $[k(t):k(w)]$ は有限なので、$n:=[k(t):L]\le[k(t):k(w)]$ も有限である。$t$ の $L$ 上の最小多項式を
$$
m(Y)=Y^n+c_{n-1}Y^{n-1}+\cdots+c_0\qquad(c_i\in L)
$$
とする。すべての $c_i$ が $k$ に属せば $t$ は $k$ 上代数的になるので、$c_i\notin k$ となる $i$ がある。$u:=c_i$ とおき、$u=g(t)/h(t)$($g,h\in k[t]$ は互いに素)、$r:=\max(\deg g,\deg h)$ とする。$k(u)\subset L$ なので $r=[k(t):k(u)]\ge[k(t):L]=n$ である。$r\le n$ を示せば $[k(t):k(u)]=[k(t):L]$ となり、$L=k(u)$ が従う。
分母を払う:$m(Y)$ の係数の分母を払い、係数の最大公約数で割って、$k[t][Y]$ の原始多項式
$$
A(t,Y)=a_n(t)Y^n+\cdots+a_0(t)=a_n(t)\,m(Y)
$$
を作る。$a_i/a_n=c_i=g/h$ で $g,h$ は互いに素なので、$a_ih=a_ng$ から $h\mid a_n$、$g\mid a_i$ である。よって $A$ の $t$ についての次数 $\deg_tA$ は $r$ 以上である。
割り算:$B(t,Y):=g(Y)h(t)-g(t)h(Y)\in k[t,Y]$ とおく。$L[Y]$ の中で $B=h(t)\bigl(g(Y)-u\,h(Y)\bigr)$ であり、$g(Y)-uh(Y)\in L[Y]$ は $Y=t$ を根にもつので、$m(Y)$ で割り切れる。したがって $k(t)[Y]$ の中で $A\mid B$ である。$A$ は原始多項式なので、$k[t][Y]$ の中でも $A\mid B$ である。実際 $B=AQ$($Q\in k(t)[Y]$)とし、$Q=\frac{\gamma}{\delta}Q_0$($Q_0$ は原始多項式、$\gamma,\delta\in k[t]$ は互いに素)と書くと $\delta B=\gamma AQ_0$ で、Gauss の補題(一意分解整域 の定理「Gaussの補題と多項式環の一意分解性」の 1)により $AQ_0$ は原始多項式なので、係数の最大公約数を比べて $\delta\mid\gamma$、すなわち $\delta$ は定数である。
次数の比較:$u\notin k$ なので $g$ と $h$ は比例せず、$B\ne0$ である。$B=AQ$($Q\in k[t,Y]$)で、$\deg_tB\le r\le\deg_tA$ なので $\deg_tQ=0$、すなわち $Q=q(Y)\in k[Y]$ であり、$\deg_tB=\deg_tA\ge r$、したがって $\deg_tB=r$ である。$q$ が定数でないとすると、$q$ の根 $\alpha\in\bar k$ について $B(t,\alpha)=0$、すなわち $g(\alpha)h(t)=g(t)h(\alpha)$ が $\bar k[t]$ で成り立つ。$g,h$ は互いに素なので共通根をもたず、$(g(\alpha),h(\alpha))\ne(0,0)$ であり、この式は $g$ と $h$ が比例することを意味する。すると $u=g/h$ は定数となって $u\notin k$ に反する。よって $q$ は $0$ でない定数で、$\deg_YB=\deg_YA=n$ である。一方 $B(Y,t)=-B(t,Y)$ なので $\deg_YB=\deg_tB=r$ である。以上で $r=n$ が示された。$\square$
$k$ 上の曲線 $C$、$D$ について次が成り立つ。
1:双有理写像 の定理「関数体と支配的有理写像」の 1 により、支配的な有理写像 $C\dashrightarrow D$ は $k$ 上の体の埋め込み $K(D)\to K(C)\cong k(t)$ を与える。$K(D)$ は $k$ 上超越次数 $1$ なので $k$ と異なる。thm-rc-luroth により $K(D)$ の像は $k(u)$ の形で、$k$ 上の 1 変数の有理関数体と同型である。双有理写像 の定理「関数体と支配的有理写像」の 3 により $D$ は有理である。
2:1 を $C=\mathbb{P}^1_k$ に当てはめればよい。$\square$
たとえば、有理曲線 $C$ から曲線 $D$ への定値でない射は支配的なので、$D$ は有理曲線である。曲面では、代数閉体上で、拡大が分離的という条件のもとで同様の主張(Castelnuovo の定理)が成り立つが、3 次元では単有理だが有理でない多様体がある(Har77 IV 例 2.5.5 の後の注意、p. 304。V 注意 6.2.1、p. 422)。
$k$ を無限体とし、$C$ を $k$ 上の有理曲線とする。このとき $C$ の $k$ 有理点は無限個ある。
双有理写像 の命題「双有理同値と同型な開集合」の 1 により、空でない開集合 $U\subset\mathbb{P}^1_k$、$V\subset C$ と $k$ 上の同型 $U\cong V$ がある。$\mathbb{P}^1_k\setminus U$ は真の閉集合なので有限個の閉点からなり、$\mathbb{P}^1(k)$ は無限集合なので、$U$ は無限個の $k$ 有理点を含む。$k$ 上の同型は $k$ 有理点を $k$ 有理点に 1 対 1 に写すので、$V\subset C$ も無限個の $k$ 有理点を含む。$\square$
$\mathbb{Q}$ 上の円錐曲線 $C\colon x^2+y^2=3$ は $\mathbb{Q}$ 有理点をもたない(円錐曲線 の命題「有理点をもたない円錐曲線」)。prop-rc-points により、$C$ は $\mathbb{Q}$ 上有理でない。一方、$\mathbb{Q}(\sqrt3)$ 上では点 $(\sqrt3,0)$ をもつので、その点からの射影で有理になる(円錐曲線 の定理「有理点からの射影」)。とくに $C$ は幾何的に有理だが、$\mathbb{Q}$ 上有理でない。
$k$ が代数閉体で $C$ が非特異な射影曲線のときは、有理であることがいくつかの言い換えをもつ。
一般の曲線 $C$(特異点があってもよく、射影的でなくてもよい)については、$k$ が代数閉体なら、$C$ と双有理な非特異射影曲線 $\tilde C$ が同型を除いてただ 1 つある(存在は Har77 I 系 6.11、p. 45、一意性は 代数曲線 の注意「双有理な非特異射影曲線は同型である」)。$\tilde C$ の種数を $C$ の幾何種数という。したがって $k$ が代数閉体なら、$C$ が有理であることは $\tilde C\cong\mathbb{P}^1$、すなわち $C$ の幾何種数が $0$ であることと同値である。$k=\mathbb{C}$ なら $\tilde C$ はコンパクト Riemann面 であり、種数 $0$ のコンパクト Riemann 面は Riemann 球面と同型である(種数 の命題「種数 $0$ のコンパクトなリーマン面」)。
ex-rc-cubics の 3 次曲線は、平面 3 次曲線としての算術種数は $1$ だが(Har77 I 演習 7.2 (b)、p. 54:$d$ 次平面曲線の算術種数は $\frac{(d-1)(d-2)}2$)、有理曲線であり、幾何種数は $0$ である。有理性を決めるのは幾何種数の方である。既約な平面曲線の幾何種数は、算術種数から特異点ごとの寄与を引いて求められる(種数公式(平面曲線) の定理「平面曲線の種数公式」)。
代数曲面を調べるとき、曲面に含まれる有理曲線は特別な役割をもつ。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $(d-1)$ 重点をもつ(thm-rc-plane) | 非特異な平面 3 次曲線 $y^2=x^3-x$ | 有理であること |
| 重複度がちょうど $d-1$(同) | $\mathbb{R}$ 上の $x^2+y^2=0$(原点の重複度 $2=d$) | $\mathbb{R}$ 上有理であること |
| $k$ 有理点をもつ(ex-rc-conic の 2) | $\mathbb{Q}$ 上の $x^2+y^2=3$ | $\mathbb{Q}$ 上有理であること |
| 非特異(thm-rc-smooth-projective) | 節点をもつ 3 次曲線 | $\mathbb{P}^1$ と同型であること |
| 射影的(同) | $\mathbb{A}^1$ | $\mathbb{P}^1$ と同型であること |
| 1 次元(cor-rc-image の 2) | 単有理だが有理でない 3 次元多様体 | 単有理なら有理であること |
要点:各行の対象が外した条件以外を満たし、結論が成り立たないことを確かめる。
1. $y^2=x^3-x$(標数 $2$ でない代数閉体上)は既約で、原点は非特異な点(重複度 $1$)であり、2 重点をもたない。有理でないことは 双有理写像 の例「反例:楕円曲線は有理でない」と Har77 I 演習 6.2(p. 46)による。
2. $F=x^2+y^2$ は $\mathbb{R}$ 上既約(一次式の積なら、$x$ では割り切れないので $y-ax$($a\in\mathbb{R}$)の形の一次式で割り切れ、$x^2+a^2x^2=0$ から $1+a^2=0$ となる)で、$d=2$、原点の重複度は $2$ である。$t=y/x$ は $K(C)$ の中で $t^2=-1$ を満たす。$\mathbb{R}(s)$ には平方が $-1$ になる元がない($f^2=-g^2$ を満たす $0$ でない実係数多項式 $f,g$ があれば、最高次の係数を比べて正の数と負の数が等しくなる)ので、$K(C)$ は $\mathbb{R}(s)$ と同型でない。
3. ex-rc-no-point のとおり。
4. 節点をもつ 3 次曲線は ex-rc-cubics により有理で、原点が特異点なので非特異な $\mathbb{P}^1$ と同型でない。
5. $\mathbb{A}^1$ は非特異で有理だが、射影的でないので $\mathbb{P}^1$ と同型でない($\mathbb{A}^1$ の大域関数の環は $k[t]$、$\mathbb{P}^1$ では $k$)。
6. 複素数体上には、単有理だが有理でない 3 次元多様体がある(Clemens–Griffiths による 3 次超曲面の例など。Har77 IV 例 2.5.5 の後の注意、p. 304 とそこに挙げられた文献)。この記事では証明しない。
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