エタール空間

同義語:espace étaléétalé space層空間

概要

エタール空間(espace étalé)とは、位相空間 $X$ 上の前層 $\mathcal{F}$ の茎をすべて並べた集合 $\coprod_x\mathcal{F}_x$ に、切断 $s$ の芽の集合 $\{s_x\mid x\in U\}$ を開基とする位相を入れた空間であり、各芽を根元の点に送る射影は局所同相写像になる。この射影の連続な切断の層は $\mathcal{F}$ の層化であり、この構成によって $X$ 上の集合の層の圏と $X$ 上の局所同相写像の圏は圏同値になる。$X$ が Hausdorff でもエタール空間は Hausdorff とは限らず、実数直線上の連続関数の層では Hausdorff でないが、複素平面の開集合上の正則関数の層では一致の定理により Hausdorff になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 層, 茎, 層化, 同相写像, 圏同値

位相空間 $X$ 上の層は、開集合ごとに切断の集合を与え、それらを制限写像でつないだものである。これを 1 つの位相空間として目に見える形にしたものがエタール空間(espace étalé)である。各点 $x$ の上に茎 $\mathcal{F}_x$ を点の集まりとして並べ、切断 $s$ が定める芽の動き $x\mapsto s_x$ が連続になるように位相を入れる。すると射影 $\pi\colon\operatorname{Et}(\mathcal{F})\to X$ は局所同相写像になり、層の切断は $\pi$ の連続な切断とちょうど対応する。
この記事では、エタール空間を定義して射影が局所同相写像であることを示し、主定理として、前層のエタール空間の連続切断の層がその層化であること、および $X$ 上の集合の層の圏と $X$ 上の局所同相写像の圏が圏同値であることを証明する。続いて、エタール空間が Hausdorff になる条件を一致集合の閉性で述べ、連続関数の芽の空間が Hausdorff でないこと、正則関数の芽の空間が Hausdorff であることを示す。

定義

以下 $X$ を位相空間、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の集合の前層とする。$U$ を開集合、$s\in\mathcal{F}(U)$、$x\in U$ とするとき、$s$ の $x$ における芽を $s_x\in\mathcal{F}_x$ と書く。$s_x=t_x$ は、$x$ の開近傍 $W$ で $s|_W=t|_W$ となるものがあることを意味する(茎)。

局所同相写像と連続な切断

連続写像 $p\colon E\to X$ が局所同相写像(local homeomorphism)であるとは、$E$ の各点 $e$ が開近傍 $V$ をもち、$p(V)$ が $X$ の開集合で、$p|_V\colon V\to p(V)$ が同相写像になることをいう。開集合 $U\subset X$ 上の $p$ の連続な切断とは、連続写像 $\sigma\colon U\to E$ で $p\circ\sigma=\mathrm{id}_U$ となるものをいう。$X$ 上の局所同相写像を対象とし、$p\colon E\to X$ から $p'\colon E'\to X$ への射を $p'\circ g=p$ となる連続写像 $g\colon E\to E'$ とする圏を $\mathrm{LH}(X)$ と書く。

局所同相写像そのものの性質(判定、合成や底変換で閉じること、被覆写像になる条件など)は 局所同相写像 で扱う。

エタール空間

集合
$$ \operatorname{Et}(\mathcal{F}):=\coprod_{x\in X}\mathcal{F}_x $$
と写像 $\pi\colon\operatorname{Et}(\mathcal{F})\to X$($\mathcal{F}_x$ の元を $x$ に送る)を考える。開集合 $U$ と $s\in\mathcal{F}(U)$ に対し
$$ \langle s,U\rangle:=\{s_x\mid x\in U\},\qquad \hat{s}\colon U\to\operatorname{Et}(\mathcal{F}),\quad \hat{s}(x):=s_x $$
とおく。$\langle s,U\rangle$ の形の集合全体を開基とする位相(lem-etale-space-basis)を入れた空間 $\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ を $\mathcal{F}$ のエタール空間(espace étalé, étalé space)といい、$\pi$ をその射影という。

$\pi\circ\hat{s}=\mathrm{id}_U$ なので、$\hat{s}$ は $\pi$ の切断であり、その像が $\langle s,U\rangle$ である。

基本集合は開基をなす

$\langle s,U\rangle$ の形の集合全体は、集合 $\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ のある位相の開基をなす。

共通の近傍に制限する

要点:2 つの基本集合に共通な芽では代表どうしが近傍で一致し、その近傍への制限が共通部分に入る基本集合を与える。

詳しい証明を開く

$\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ の各元は、ある $x$ とある切断 $s\in\mathcal{F}(U)$ による芽 $s_x$ なので、$\langle s,U\rangle$ に含まれる。次に $e\in\langle s,U\rangle\cap\langle t,V\rangle$ とすると、$e$ は茎 $\mathcal{F}_x$ の元で、$x\in U\cap V$ かつ $e=s_x=t_x$ である。したがって $x$ の開近傍 $W\subset U\cap V$ で $s|_W=t|_W$ となるものがある。$y\in W$ について $(s|_W)_y=s_y=t_y$ なので、$\langle s|_W,W\rangle\subset\langle s,U\rangle\cap\langle t,V\rangle$ であり、左辺は $e$ を含む。よって開基の条件が成り立つ。$\square$

射影は局所同相写像である

射影の局所同相性と位相の特徴づけ
  1. 各 $\hat{s}\colon U\to\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ は連続であり、$\pi$ は連続である。
  2. $\pi$ は $\langle s,U\rangle$ を $U$ の上へ同相に写し、その逆写像は $\hat{s}$ である。とくに $\pi$ は局所同相写像であり、開写像である。
  3. 各ファイバー $\pi^{-1}(x)=\mathcal{F}_x$ は、部分空間として離散空間である。
  4. $\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ の位相は、すべての $\hat{s}$ を連続にする位相のうちで最も強い位相である。したがって、写像 $g\colon\operatorname{Et}(\mathcal{F})\to Z$ が連続であることは、すべての $\hat{s}$ について $g\circ\hat{s}$ が連続であることと同値である。
芽の一致する点は開集合をなす

要点:$\hat{s}^{-1}(\langle t,V\rangle)=\{x\in U\cap V\mid s_x=t_x\}$ は開集合であり、$\pi|_{\langle s,U\rangle}$ と $\hat{s}$ は互いに逆である。

詳しい証明を開く

1:$\hat{s}^{-1}(\langle t,V\rangle)=\{x\in U\cap V\mid s_x=t_x\}$ である。$s_x=t_x$ なら $x$ の開近傍 $W$ で $s|_W=t|_W$ となり、$W$ の各点でも芽が一致するので、この集合は開集合である。開集合 $V\subset X$ について、$\pi^{-1}(V)$ は $\langle s,U\rangle$ をすべて $\langle s|_{U\cap V},U\cap V\rangle$ に取り替えた集合の和集合なので、開集合である。

2:$\pi|_{\langle s,U\rangle}$ と $\hat{s}$ は互いに逆の全単射で、どちらも 1 により連続である。$\langle s,U\rangle$ は開集合だから、$\pi$ は局所同相写像である。開基の元の像 $\pi(\langle s,U\rangle)=U$ が開集合なので、$\pi$ は開写像である。

3:$\pi^{-1}(x)\cap\langle s,U\rangle=\{s_x\}$ なので、ファイバーの各点は 1 点だけからなる相対開集合である。

4:$\mathcal{T}$ をすべての $\hat{s}$ を連続にする位相、$O\in\mathcal{T}$、$e\in O$ とする。$e=s_x$($s\in\mathcal{F}(U)$)と書くと、$W:=\hat{s}^{-1}(O)$ は $x$ を含む $U$ の開集合で、$\langle s|_W,W\rangle=\hat{s}(W)\subset O$ は $e$ を含む。よって $O$ はエタール空間の位相でも開集合である。1 により、エタール空間の位相自身はすべての $\hat{s}$ を連続にするから、それが最も強い位相である。後半は、最も強い位相の開集合が「すべての $\hat{s}$ による逆像が開であるような集合」にほかならないことから従う。$\square$

4 の形の定義は Har77 II 演習 1.13(p. 67)で用いられている。局所同相写像の像はいつでも開集合であるが、2 で $\langle s,U\rangle$ が $U$ と同相であることから、エタール空間は「$X$ の開集合のコピーを、芽が一致する所で貼り合わせた空間」とみなせる。

局所同相写像の連続切断

連続写像 $p\colon E\to X$ に対し、開集合 $U$ に $U$ 上の連続な切断全体の集合 $\mathcal{S}_E(U)$ を対応させ、制限を写像の制限で定めると、層が得られる。連続性も $p\circ\sigma=\mathrm{id}$ も局所的に確かめられる条件であり、重なりで一致する切断は写像として一意に貼り合わさるからである。$\mathcal{S}_E$ を $p$ の切断の層という。

局所同相写像の切断の 2 つの性質

$p\colon E\to X$ を局所同相写像、$U$ を開集合、$\sigma,\tau\in\mathcal{S}_E(U)$ とする。

  1. 一致集合 $\{x\in U\mid\sigma(x)=\tau(x)\}$ は開集合である。
  2. $\sigma(U)$ は $E$ の開集合で、$p$ は $\sigma(U)$ を $U$ の上へ同相に写す。さらに、開集合 $U$ と $\sigma\in\mathcal{S}_E(U)$ を動かした $\sigma(U)$ の全体は、$E$ の開基をなす。
単射な近傍に押し込む

要点:$p$ が単射になる近傍の中で $p\circ\sigma=\mathrm{id}$ を使う。

詳しい証明を開く

1:$\sigma(x)=\tau(x)=:e$ とし、$e$ の開近傍 $V$ で $p|_V$ が単射なものをとる。$W:=\sigma^{-1}(V)\cap\tau^{-1}(V)$ は $x$ の開近傍であり、$y\in W$ では $\sigma(y),\tau(y)\in V$ かつ $p(\sigma(y))=y=p(\tau(y))$ なので $\sigma(y)=\tau(y)$ である。

2:$e=\sigma(x)$ とし、$e$ の開近傍 $V$ で $p(V)$ が開、$p|_V\colon V\to p(V)$ が同相なものをとる。$W:=\sigma^{-1}(V)\cap p(V)$ は $x$ の開近傍で、$p\circ\sigma=\mathrm{id}$ により $\sigma(W)=(p|_V)^{-1}(W)$ である。これは $V$ の開集合、したがって $E$ の開集合で、$e$ を含み $\sigma(U)$ に含まれる。よって $\sigma(U)$ は開集合である。$p|_{\sigma(U)}$ は連続な全単射で、逆写像 $\sigma$ も連続だから同相である。最後に、$e\in E$ と $e$ の開近傍 $O$ をとる。上の $V$ を $V\cap O$ に取り替えると $\sigma_0:=(p|_V)^{-1}\colon p(V)\to E$ は連続な切断で、$e\in\sigma_0(p(V))=V\subset O$ である。$\square$

1 の一致集合は開集合だが、閉集合とは限らない。このことが、下で見るエタール空間の Hausdorff 性の問題につながる。

主定理 1:連続切断は層化を与える

前層 $\mathcal{F}$ の切断 $s\in\mathcal{F}(U)$ に連続な切断 $\hat{s}\in\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})}(U)$ を対応させる写像を $\eta_U\colon\mathcal{F}(U)\to\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})}(U)$ と書く。$(s|_V)^\wedge=\hat{s}|_V$ なので、$\eta$ は前層の射である。

エタール空間の連続切断と層化
  1. 写像 $\sigma\colon U\to\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ で $\pi\circ\sigma=\mathrm{id}_U$ となるものが連続であることは、芽の族 $(\sigma(x))_{x\in U}$ が局所的に代表されること、すなわち各 $x\in U$ に開近傍 $W\subset U$ と $t\in\mathcal{F}(W)$ があって $W$ 上で $\sigma=\hat{t}$ となることと同値である。したがって $(\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})},\eta)$ は $\mathcal{F}$ の層化である。
  2. $\mathcal{F}$ が層なら、$\eta\colon\mathcal{F}\to\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})}$ は層の同型である。
連続な切断は局所的に芽の動きである

1:$\sigma$ が連続とし、$x\in U$ をとる。$\sigma(x)=s_x$ となる $s\in\mathcal{F}(V)$ を選ぶと、$\langle s,V\rangle$ は $\sigma(x)$ の開近傍なので、$W:=\sigma^{-1}(\langle s,V\rangle)\cap V$ は $x$ の開近傍である。$y\in W$ では $\sigma(y)\in\langle s,V\rangle$ かつ $\pi(\sigma(y))=y$ なので $\sigma(y)=s_y$、すなわち $W$ 上で $\sigma=\widehat{s|_W}$ である。逆に、局所的に $\hat{t}$ と一致する写像は、prop-etale-space-local-homeomorphism の 1 により局所的に連続なので連続である。
したがって、連続な切断を「各点に芽を指定した族」とみると、$\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})}(U)$ は 層化 の定義「局所的に代表される芽の族」の集合と一致し、$\eta_U$ は $s$ をその芽の族に送る標準写像と一致する。制限はどちらも族を絞る操作である。層化 の定理「芽による層化は普遍的である」により、これは $\mathcal{F}$ の層化である。
2:単射性:$\hat{s}=\hat{t}$ なら、すべての $x$ で $s_x=t_x$ なので、各点の近傍で $s$ と $t$ は一致し、層の条件の一意性により $s=t$ である(層 の命題「切断は芽で決まる」)。全射性:$\sigma\in\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})}(U)$ とする。1 により $U$ の開被覆 $\{W_i\}$ と $t_i\in\mathcal{F}(W_i)$ で $\sigma|_{W_i}=\hat{t}_i$ となるものがある。$W_i\cap W_j$ の各点で $t_i$ と $t_j$ の芽は一致するので、単射性の議論により $t_i|_{W_i\cap W_j}=t_j|_{W_i\cap W_j}$ である。層の条件により $s|_{W_i}=t_i$ となる $s\in\mathcal{F}(U)$ があり、$\hat{s}$ と $\sigma$ は各 $W_i$ の上で一致するので $\hat{s}=\sigma$ である。$\square$

1 の形の層化の構成は Har77 II 命題・定義 1.2(p. 64)のものであり、2 と合わせて、層の切断は「茎の元を連続に選ぶこと」と言い換えられる(Har77 II 演習 1.13)。たとえば定数前層 $U\mapsto M$($U\neq\emptyset$)では、各茎が $M$ と同一視され、基本集合は $\langle m,U\rangle=U\times\{m\}$ となる。よってそのエタール空間は $X$ と離散空間 $M$ の積であり、その連続な切断は $X$ の開集合から離散空間 $M$ への連続写像、すなわち局所定数関数である。1 により、定数前層の層化は局所定数関数の層(定数層)である。定数層の側からの同じ計算は 局所系 の補題「局所定数層と被覆空間」の 1 にある。

主定理 2:層と局所同相写像の圏同値

層の射 $\varphi\colon\mathcal{F}\to\mathcal{G}$ に対し $\operatorname{Et}(\varphi)\colon\operatorname{Et}(\mathcal{F})\to\operatorname{Et}(\mathcal{G})$ を $s_x\mapsto\varphi_U(s)_x$ で定める。$\varphi$ は制限と交換するので、芽が一致すれば像の芽も一致し、この写像は矛盾なく定まる。局所同相写像の射 $g\colon E\to E'$ に対しては、$\mathcal{S}(g)\colon\mathcal{S}_E\to\mathcal{S}_{E'}$ を $\sigma\mapsto g\circ\sigma$ で定める。

層と局所同相写像の対応

$X$ を位相空間とする。$\mathcal{F}\mapsto(\pi\colon\operatorname{Et}(\mathcal{F})\to X)$ と $(p\colon E\to X)\mapsto\mathcal{S}_E$ は、$X$ 上の集合の層の圏 $\mathrm{Sh}(X)$ と $\mathrm{LH}(X)$ の間の、互いに準逆な関手を与える。とくに $\mathrm{Sh}(X)$ と $\mathrm{LH}(X)$ は圏同値であり、局所同相写像 $p\colon E\to X$ に対して、写像
$$ \varepsilon_E\colon\operatorname{Et}(\mathcal{S}_E)\to E,\qquad \sigma_x\mapsto\sigma(x) $$
は $X$ 上の同相写像である。

2 つの自然同型を作る

関手であること。 $\operatorname{Et}(\varphi)\circ\hat{s}=\widehat{\varphi_U(s)}$ は連続なので、prop-etale-space-local-homeomorphism の 4 により $\operatorname{Et}(\varphi)$ は連続であり、$\pi$ と両立する。恒等射と合成が保たれることは定義から明らかである。$g\circ\sigma$ は連続で $p'\circ g\circ\sigma=p\circ\sigma=\mathrm{id}$ なので、$\mathcal{S}(g)$ は層の射である。
$\mathcal{F}\cong\mathcal{S}_{\operatorname{Et}(\mathcal{F})}$。 thm-etale-space-sheafification の 2 により $\eta$ は同型であり、$\mathcal{S}(\operatorname{Et}(\varphi))(\hat{s})=\operatorname{Et}(\varphi)\circ\hat{s}=\widehat{\varphi(s)}=\eta(\varphi(s))$ なので $\varphi$ について自然である。
$\varepsilon_E$ は同相写像である。 矛盾なく定まること:$\sigma_x=\tau_x$ なら $\sigma$ と $\tau$ は $x$ の近傍で一致するので $\sigma(x)=\tau(x)$。単射性:$\sigma(x)=\tau(x)$ なら lem-etale-space-sections-open の 1 により $\sigma$ と $\tau$ は $x$ の近傍で一致し、$\sigma_x=\tau_x$ である。全射性:$e\in E$ に対し、lem-etale-space-sections-open の 2 の証明の $\sigma_0=(p|_V)^{-1}$ は $\sigma_0(p(e))=e$ を満たす。$\varepsilon_E$ は $X$ 上の写像であり、基本集合 $\langle\sigma,U\rangle$ を $\sigma(U)$ に写す。逆に $\varepsilon_E^{-1}(\sigma(U))=\langle\sigma,U\rangle$ である。実際、$\tau(x)=\sigma(u)$ なら両辺を $p$ で写して $x=u$、したがって $\tau(x)=\sigma(x)$ であり、単射性の議論から $\tau_x=\sigma_x$ となる。$\{\langle\sigma,U\rangle\}$ は $\operatorname{Et}(\mathcal{S}_E)$ の開基、$\{\sigma(U)\}$ は $E$ の開基(lem-etale-space-sections-open の 2)であり、全単射 $\varepsilon_E$ はこの 2 つの開基を互いに対応させるので、同相写像である。
自然性。 $g\colon E\to E'$ について $\varepsilon_{E'}\bigl(\operatorname{Et}(\mathcal{S}(g))(\sigma_x)\bigr)=\varepsilon_{E'}\bigl((g\circ\sigma)_x\bigr)=g(\sigma(x))=g(\varepsilon_E(\sigma_x))$ である。
以上で、$\mathcal{S}\circ\operatorname{Et}\cong\mathrm{id}_{\mathrm{Sh}(X)}$ と $\operatorname{Et}\circ\mathcal{S}\cong\mathrm{id}_{\mathrm{LH}(X)}$ が自然同型として得られた。$\square$

この圏同値のもとで、茎 $\mathcal{F}_x$ はファイバー $\pi^{-1}(x)$ に対応する。局所定数層が被覆空間に対応すること(局所系 の補題「局所定数層と被覆空間」の 2)は、この対応を局所定数層に制限したものである。アーベル群の層 $\mathcal{F}$ では、ファイバー積 $\operatorname{Et}(\mathcal{F})\times_X\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ 上の加法 $(s_x,t_x)\mapsto(s+t)_x$ が連続になる。点 $(s_x,t_x)$($s,t\in\mathcal{F}(U)$)の近傍 $\{(s_y,t_y)\mid y\in W\}$($W\subset U$)は $\langle(s+t)|_W,W\rangle$ に写るからである。

逆像とファイバー積

$f\colon X\to Y$ を連続写像、$\mathcal{G}$ を $Y$ 上の層とする。ファイバー積 $P:=\{(x,e)\in X\times\operatorname{Et}(\mathcal{G})\mid f(x)=\pi(e)\}$(直積位相の部分空間)の第 1 射影 $q\colon P\to X$ は局所同相写像であり、その切断の層 $\mathcal{S}_P$ は逆像 $f^{-1}\mathcal{G}$ と同型である。

茎で比べる

要点:$t\in\mathcal{G}(V)$ から切断 $x\mapsto(x,t_{f(x)})$ を作り、茎の上で全単射であることを確かめる。

詳しい証明を開く

局所同相性:$(x,e)\in P$ とし、$e\in B:=\langle t,V\rangle$ とする。$N:=P\cap(f^{-1}(V)\times B)$ は $(x,e)$ の開近傍で、$q|_N\colon N\to f^{-1}(V)$ は全単射、逆写像 $x'\mapsto(x',t_{f(x')})$ は連続なので、同相写像である。

層の同型:$f(U)\subset V$ のとき $t\in\mathcal{G}(V)$ に切断 $x\mapsto(x,t_{f(x)})\in\mathcal{S}_P(U)$ を対応させる。$t$ を $f(U)$ を含む小さい開集合へ制限しても芽は変わらないので、これは前層の射 $f_p^{-1}\mathcal{G}\to\mathcal{S}_P$ を与え、層化の普遍性により層の射 $\theta\colon f^{-1}\mathcal{G}\to\mathcal{S}_P$ が得られる。層化は茎を変えず、thm-etale-space-equivalence の $\varepsilon_P$ により $\sigma_x\mapsto\sigma(x)$ は茎 $(\mathcal{S}_P)_x$ からファイバー $q^{-1}(x)=\{x\}\times\mathcal{G}_{f(x)}$ への全単射である。この同一視のもとで $\theta_x$ は $t$ の類を $t_{f(x)}$ に送る写像であり、これは 層 の命題「順像は層、逆像の茎」の証明で全単射と示された写像である。よって 層 の命題「層の射の茎による判定」により $\theta$ は同型である。$\square$

エタール空間の Hausdorff 性

射影 $\pi$ は局所同相写像なので、$\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ は局所的には $X$ の開集合と同じ形をしている。しかし $X$ が Hausdorff 空間でも、$\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ は Hausdorff とは限らない。違いは、2 つの切断の芽が一致する点の集合 $A(s,t):=\{x\in U\mid s_x=t_x\}$($s,t\in\mathcal{F}(U)$)に現れる。これはつねに開集合である(prop-etale-space-local-homeomorphism の証明の 1)。

エタール空間が Hausdorff になる条件

$X$ を Hausdorff空間、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の前層とする。$\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ が Hausdorff であることと、任意の開集合 $U$ と $s,t\in\mathcal{F}(U)$ について $A(s,t)$ が $U$ の閉集合であることとは同値である。

一致集合の境界点で芽が分離できない

Hausdorff なら:$A(s,t)$ は 2 つの連続写像 $\hat{s},\hat{t}\colon U\to\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ が一致する点の集合であり、値域が Hausdorff なので閉集合である。
逆:$e\neq e'$ を $\operatorname{Et}(\mathcal{F})$ の 2 点とする。$\pi(e)\neq\pi(e')$ なら、$X$ の互いに交わらない開近傍の $\pi$ による逆像が $e,e'$ を分離する。$\pi(e)=\pi(e')=x$ なら、代表を共通の開集合 $U$ に制限して $e=s_x$、$e'=t_x$($s,t\in\mathcal{F}(U)$)と書ける。$x\notin A(s,t)$ で $A(s,t)$ は閉集合なので、$x$ の開近傍 $W\subset U$ で $W\cap A(s,t)=\emptyset$ となるものがある。このとき $\langle s|_W,W\rangle$ と $\langle t|_W,W\rangle$ は交わらない(共通の元は $s_y=t_y$ となる $y\in W$ を与える)ので、$e,e'$ は分離される。$\square$

連続関数の芽の空間は Hausdorff でない

$\mathbb{R}$ 上の連続関数の層 $\mathcal{C}$ で、$f(x):=\max(x,0)$ と $g:=0$ をとる。$0$ のどの近傍にも $f\neq0$ となる点があるので $f_0\neq g_0$ であり、$x<0$ では $f_x=g_x$、$x>0$ では $f_x\neq g_x$ なので $A(f,g)=(-\infty,0)$ である。これは $\mathbb{R}$ の閉集合でないので、prop-etale-space-hausdorff により $\operatorname{Et}(\mathcal{C})$ は Hausdorff でない。実際、$f_0$ と $g_0$ のどの近傍も、負の点 $y$ の芽 $f_y=g_y$ を共有する。$\mathcal{C}^\infty$ 関数の層でも、$x\le0$ で $0$、$x>0$ で $e^{-1/x}$ となる関数と $0$ を比べると同じことが起こる(層 の注意「エタール空間の出典」)。

正則関数の芽の空間は Hausdorff である

$D\subset\mathbb{C}$ を開集合(連結とは限らない)、$\mathcal{O}$ を $D$ 上の正則関数の層とする。$\operatorname{Et}(\mathcal{O})$ は Hausdorff 空間である。

一致の定理で一致集合が閉じる

$s,t\in\mathcal{O}(U)$ とし、$y\in U$ を $A(s,t)$ の閉包の点とする。$y$ を中心とし $U$ に含まれる開円板 $\Delta$ は連結で、$A(s,t)$ の点 $z$ を含む。$z$ の近傍で $s=t$ なので、$s|_\Delta$ と $t|_\Delta$ は $\Delta$ の空でない開集合で一致し、一致の定理 の定理「平面の領域上の一致の定理」により $\Delta$ 全体で一致する。よって $s_y=t_y$、すなわち $y\in A(s,t)$ であり、$A(s,t)$ は閉集合である。$D$ は Hausdorff なので、prop-etale-space-hausdorff により結論が従う。$\square$

$\pi$ を座標とみると、$\operatorname{Et}(\mathcal{O})$ は局所的に $D$ の開集合と同相な Hausdorff 空間であり、正則関数の芽をつないでいく解析接続は、この空間の中の道として理解できる。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
$\mathcal{F}$ が層(thm-etale-space-sheafification の 2)2 点の離散空間 $X=\{a,b\}$ 上の定数前層(空でない開集合に集合 $M$、空集合に 1 点。$M$ は 2 個以上の元をもつ)$\eta_X$ が全射であること(連続な切断は $M\times M$ だけあるが $\mathcal{F}(X)=M$)
$p$ が局所同相写像(thm-etale-space-equivalence)射影 $p\colon\mathbb{R}\times[0,1]\to\mathbb{R}$$\varepsilon_E$ が単射であること(値 $0$ をとる相異なる芽が同じ点に写る)
一致集合が閉(prop-etale-space-hausdorff)$\mathbb{R}$ 上の連続関数の層エタール空間が Hausdorff であること
各行の確かめ

1 行目:$X$ は離散なので $\{a\}$、$\{b\}$ は開集合で、茎はどちらも $M$、$\operatorname{Et}(\mathcal{F})=X\times M$(離散空間)である。$X$ 上の連続な切断は $a,b$ での値を独立に選べるので $M\times M$ 個あるが、$\eta_X$ の像は値が等しい切断 $|M|$ 個だけである。2 行目:$p$ のファイバー $\{x\}\times[0,1]$ は離散でないので $p$ は局所同相写像でない(prop-etale-space-local-homeomorphism の 3 と対比)。$x=0$ で、連続な切断 $y\mapsto(y,0)$ と $y\mapsto(y,\min(|y|,1))$ は $0$ での芽が異なるが、$\varepsilon_E$ はどちらの芽も点 $(0,0)$ に送る。3 行目は ex-etale-space-continuous-germs である。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II 命題・定義 1.2(p. 64、層化の構成)、II 演習 1.13(p. 67、前層のエタール空間)

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