無限次元球面

同義語:infinite-dimensional sphere

概要

無限次元球面(infinite-dimensional sphere)とは、有限次元の球面 $S^0\subset S^1\subset\cdots$ を赤道として順に含めた和集合 $S^\infty$ に、各 $S^n$ との共通部分で閉集合を判定する弱位相を入れた空間である。各次元に 2 つの半球を胞体としてもつ CW 複体で、部分複体は空集合・全体・各 $S^k$・閉じた半球に限られる。座標を 1 つずらしてから大円に沿って縮めるホモトピーにより可縮であり、一方でどの点でも可算な基本近傍系をもたないので、同じ集合にノルムの位相を入れた空間とは同相でない。実数・複素数・四元数の単位の掛け算で割ると無限次元射影空間が得られ、分類空間の普遍束の全空間として使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: CW複体, n次元球面, 可縮空間

有限次元の球面 $S^0\subset S^1\subset S^2\subset\cdots$ を赤道として次々に含めていき、その和集合をとった空間が 無限次元球面(infinite-dimensional sphere)$S^\infty$ である。各 $S^n$ は可縮でないのに、和集合 $S^\infty$ は可縮になる。無限個の座標があるので、点を「まだ使っていない座標」の方向へずらしてから一点へ縮められるからである。
$S^\infty$ は代数的位相幾何学で、群が自由に作用する可縮な空間の基本の例として現れる。対蹠写像で割れば無限次元実射影空間、複素数や四元数の単位の掛け算で割れば無限次元複素射影空間・四元数射影空間が得られ、これらは 分類空間 や Eilenberg–MacLane空間 の代表例になる(無限次元射影空間)。この記事では $S^\infty$ の位相と胞体の構造を定め、部分複体をすべて決定し、可縮性を証明する。あわせて、同じ集合にノルムの位相を入れた空間とは位相が異なることを示す。

定義

無限次元球面

有限個を除いて $0$ である実数列 $x=(x_0,x_1,x_2,\dots)$ の全体を $\mathbb{R}^\infty$ と書き、$\|x\|:=(\sum_kx_k^2)^{1/2}$ とおく。$k>n$ で $x_k=0$ となる $x$ の全体を $\mathbb{R}^{n+1}$ と同一視し、$S^n:=\{x\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\|x\|=1\}$ に通常の位相を入れる。$S^n$ は $S^{n+1}$ の赤道 $\{x_{n+1}=0\}$ である。和集合
$$ S^\infty:=\bigcup_{n\ge0}S^n=\{x\in\mathbb{R}^\infty\mid\|x\|=1\} $$
に、次の位相(弱位相)を入れたものを無限次元球面という:$A\subset S^\infty$ が閉集合であるのは、すべての $n$ について $A\cap S^n$ が $S^n$ の閉集合であるときとする。

開集合についても同じく「すべての $S^n$ との共通部分が開」が条件である。定義から、写像 $f\colon S^\infty\to Y$ が連続であることは、すべての制限 $f|_{S^n}$ が連続であることと同値である。$S^\infty$ を $\mathbb{R}^\infty$ の単位ベクトルの全体と見ることはできるが、位相はノルム $\|\ \|$ から定まる位相ではない(isph-prop-first-countable)。

有限段は閉部分空間

各 $S^n$ は $S^\infty$ の閉集合であり、$S^\infty$ からの相対位相は $S^n$ の通常の位相に一致する。

$C\subset S^n$ を $S^n$ の閉集合とする。$m\ge n$ なら $C\cap S^m=C$ はコンパクトなので、Hausdorff 空間 $S^m$ の閉集合である。$m< n$ なら $C\cap S^m$ は $S^m$ の閉集合である($S^m$ は $S^n$ の部分空間)。よって $C$ は $S^\infty$ の閉集合である。$C=S^n$ とすれば $S^n$ が閉であることがわかる。逆に $S^\infty$ の閉集合と $S^n$ の共通部分は定義により $S^n$ の閉集合なので、二つの位相は一致する。

胞体の構造

$e^0_\pm:=\{\pm e_0\}$($e_k$ は第 $k$ 成分だけが $1$ の単位ベクトル)、$k\ge1$ について $e^k_\pm:=\{x\in S^k\mid\pm x_k>0\}$($S^k$ の開いた半球)とおく。特性写像を
$$ \Phi^k_\pm\colon D^k\to S^k,\qquad\Phi^k_\pm(y_0,\dots,y_{k-1}):=\Bigl(y_0,\dots,y_{k-1},\pm\sqrt{1-\textstyle\sum_iy_i^2},0,0,\dots\Bigr) $$
とすると、$S^\infty$ はこれらの胞体をもつ CW複体 であり、その $n$ 骨格は $S^n$ である。各次元にちょうど $2$ つの胞体がある。

$\Phi^k_\pm$ は $D^k$ を閉じた半球 $\bar e^k_\pm=\{x\in S^k\mid\pm x_k\ge0\}$ へ同相に写し(逆写像は第 $k$ 成分を忘れる射影)、境界 $\partial D^k$ を $S^{k-1}$ へ写す。よって $S^k$ は $S^{k-1}$ に $2$ つの $k$ 胞体を貼り付けた空間である。

詳細

各 $S^n$ は有限個の閉胞体 $\bar e^k_\pm$($k\le n$)の和で、各閉胞体はある $S^n$ に含まれる。$A\subset S^\infty$ について、すべての $(\Phi^k_\pm)^{-1}(A)$ が閉であることと、すべての $n$ で $A\cap S^n$ が閉であることは同値である。実際、$A\cap S^n$ が閉なら $(\Phi^k_\pm)^{-1}(A)=(\Phi^k_\pm)^{-1}(A\cap S^k)$ は閉であり、逆にすべての逆像が閉なら $A\cap\bar e^k_\pm=\Phi^k_\pm\bigl((\Phi^k_\pm)^{-1}(A)\bigr)$ はコンパクトで閉なので、その有限個の和 $A\cap S^n$ も閉である。よって弱位相は特性写像に関する CW 複体の位相と一致する。閉包有限性は各閉胞体が有限個の胞体の和 $S^k$ に含まれることから従う。

この胞体の構造は Hat02 p. 7 による。$S^n$ を $e^0\cup e^n$ と見る最小の構造では、$S^{n-1}\subset S^n$ が部分複体にならないので、和集合をとるには上の構造を使う。

直感

$S^n$ が可縮でないのは、$S^n$ の恒等写像を一点への写像へ連続に変形する余地がないからである。$S^\infty$ では、まず全体を座標 $1$ つ分だけずらす写像 $\sigma(x_0,x_1,\dots)=(0,x_0,x_1,\dots)$ へ変形できる。$\sigma$ の像は第 $0$ 成分が $0$ の部分にあり、北極 $e_0$ と直交するので、そこから $e_0$ へは大円に沿って一斉に動かせる。有限次元では、球面の自己写像で一点を取りこぼすものは定値写像とホモトピックなので、恒等写像をそこへ変形することはできない。$\sigma$ のように単射で等長のまま一点を取りこぼす写像は、座標が無限にあって初めて存在する。

性質

部分複体

部分複体とは、胞体の和になっている閉集合のことである(Hat02 p. 7)。$S^{-1}:=\emptyset$ とし、$k\ge0$ について閉じた半球を $D^k_\pm:=S^{k-1}\cup e^k_\pm$ と書く($D^0_\pm=\{\pm e_0\}$)。

部分複体の分類

isph-prop-cw の胞体の構造について、$S^\infty$ の部分複体は
$$ \emptyset,\qquad S^\infty,\qquad S^k\ (k\ge0),\qquad D^k_+,\ D^k_-\ (k\ge0) $$
で尽くされる。

列挙したものが部分複体であること:どれも胞体の和である。$D^k_\pm=\{x\in S^k\mid\pm x_k\ge0\}$ と $S^k$ は $S^k$ の閉集合なので、isph-prop-stage により $S^\infty$ の閉集合である。
逆に $A$ を空でない部分複体とする。$A$ が胞体 $e^k_\pm$ を含むなら、$A$ は閉なのでその閉包を含む。閉包は $S^k$ における閉包 $D^k_\pm$ に等しい($S^k$ は閉なので)。$D^k_\pm\supset S^{k-1}$ だから、$A$ は $k$ より低い次元の胞体をすべて含む。
$A$ に含まれる胞体の次元に最大値 $k$ があるとき、$A$ は $S^{k-1}$ と、$k$ 胞体の一方または両方を含み、それより高い次元の胞体を含まない。よって $A$ は $D^k_+$、$D^k_-$、$S^k$ のどれかである。次元に上限がないとき、各 $k$ について $A$ は $k$ より高い次元の胞体を含むので $S^k\subset A$ であり、$A=S^\infty$ である。

$D^k_+$ と $D^k_-$ はどちらも他方を含まないので、部分複体の全体は包含について全順序ではない。各 $D^k_\pm$ は可縮であり、$S^k$ は可縮でない。

位相の性質

コンパクト集合は有限段に入る

$S^\infty$ のコンパクト集合 $K$ は、ある $S^n$ に含まれる。

どの $S^n$ にも含まれないとすると、狭義に増加する $n_1< n_2< \cdots$ と点 $x_j\in K\cap(S^{n_j}\setminus S^{n_j-1})$ がとれる。$A:=\{x_j\mid j\ge1\}$ の任意の部分集合 $B$ は、各 $S^m$ と有限個の点でしか交わらない($x_j\in S^m$ なら $n_j\le m$)。有限集合は Hausdorff 空間 $S^m$ の閉集合なので $B$ は閉である。よって $A$ は無限個の点からなる離散な閉集合であり、コンパクト集合 $K$ の閉集合なのでコンパクトである。これは矛盾である。

一般の CW 複体でも、コンパクト集合は有限個の胞体と交わる(Hat02 Proposition A.1, p. 520)。

可算な基本近傍系をもたない

$S^\infty$ は Hausdorff であるが、どの点でも可算な基本近傍系をもたない。とくに $S^\infty$ は距離化可能でなく、局所コンパクトでもない。

Hausdorff であること:座標 $x\mapsto x_k$ は各 $S^n$ 上で連続なので $S^\infty$ 上で連続であり、異なる 2 点はどれかの座標で値が異なる。その値を分ける開区間の逆像が、互いに交わらない近傍になる。
$p\in S^N$ とし、$p$ が可算な基本近傍系 $U_1\supset U_2\supset\cdots$ をもつとする(有限個の共通部分をとれば減少列にできる)。$k>N$ について $U_k\cap S^k$ は $S^k$ における $p$ の近傍である。$p$ と $e_k$ は直交するので $y(t):=\cos t\,p+\sin t\,e_k$ は $S^k$ の点であり、$t\to0$ で $p$ に近づく。そこで $0< t_k< \pi/2$ を小さくとって $y_k:=y(t_k)\in U_k$ とする。$y_k$ の第 $k$ 成分は $\sin t_k\ne0$ なので、$y_k\in S^m$ となるのは $m\ge k$ のときに限る。よって $A:=\{y_k\mid k>N\}$ は各 $S^m$ と有限個の点でしか交わらず、閉集合である。$p\notin A$ なので $V:=S^\infty\setminus A$ は $p$ の開近傍だが、$y_k\in U_k\setminus V$ なのでどの $U_k$ も $V$ に含まれない。これは基本近傍系であることに反する。
距離空間はどの点でも可算な基本近傍系をもつので、$S^\infty$ は距離化可能でない。$p$ がコンパクトな近傍 $K$ をもつとすると、isph-prop-compact により $K\subset S^n$ となる $n$ があり、$p$ の開近傍 $U\subset K\subset S^n$ がとれる。$U\cap S^{n+1}$ は $S^{n+1}$ の空でない開集合で赤道 $S^n$ に含まれるが、赤道は $S^{n+1}$ の内点をもたないので矛盾する。

各 $S^n$ への制限が連続なので、恒等写像 $S^\infty\to S^\infty_{\|\ \|}$(同じ集合にノルムの距離の位相を入れたもの)は連続な全単射である。isph-prop-first-countable により、これは同相写像ではない。

可縮性

無限次元球面の可縮性

$S^\infty$ は可縮空間である。すなわち、恒等写像から定値写像へのホモトピーがある。

ずらしてから大円に沿って縮める

ずらしの写像 $\sigma\colon\mathbb{R}^\infty\to\mathbb{R}^\infty$、$\sigma(x_0,x_1,x_2,\dots):=(0,x_0,x_1,\dots)$ は線形でノルムを保ち、$\mathbb{R}^{n+1}$ を $\mathbb{R}^{n+2}$ に写す。
第 1 段:$x\in S^\infty$、$t\in[0,1]$ について $v_t(x):=(1-t)x+t\sigma(x)$ とおく。$v_t(x)\ne0$ である。実際 $t=0,1$ では $\|v_t(x)\|=1$ である。$0< t< 1$ のとき、$x_m\ne0$ となる最小の $m$ をとると、$\sigma(x)$ の第 $m$ 成分は $x_{m-1}=0$($m=0$ なら $0$)なので、$v_t(x)$ の第 $m$ 成分は $(1-t)x_m\ne0$ である。よって
$$ F(x,t):=\frac{v_t(x)}{\|v_t(x)\|} $$
は $S^\infty$ の値をとり、$F(\cdot,0)=\mathrm{id}$、$F(\cdot,1)=\sigma|_{S^\infty}$ である。
第 2 段:$\sigma(x)$ の第 $0$ 成分は $0$ なので、$\sigma(x)$ と $e_0$ は直交する単位ベクトルである。よって
$$ G(x,t):=\cos\tfrac{\pi t}{2}\,\sigma(x)+\sin\tfrac{\pi t}{2}\,e_0 $$
は $S^\infty$ の値をとり、$G(\cdot,0)=\sigma|_{S^\infty}$、$G(\cdot,1)$ は定値写像 $e_0$ である。
連続性:$F$、$G$ の $S^n\times[0,1]$ への制限は、$S^{n+1}$ に値をとる有限次元の式で与えられるので連続である。$[0,1]$ はコンパクトなので、直積 $S^\infty\times[0,1]$ は胞体 $e^k_\pm\times e^j$ をもつ CW 複体であり、その位相は直積位相に一致する(Hat02 Theorem A.6, p. 524)。したがって $W\subset S^\infty\times[0,1]$ が開であることは、すべての $n$ で $W\cap(S^n\times[0,1])$ が開であることと同値であり、$F^{-1}(U)\cap(S^n\times[0,1])=(F|_{S^n\times[0,1]})^{-1}(U)$ から $F$ は連続である。$G$ も同じである。$F$ のあとに $G$ をつないだホモトピーが、恒等写像から定値写像 $e_0$ へのホモトピーを与える。

この 2 段の構成は Hat02 Example 1B.3(p. 88)にある。一度に $e_0$ へ向けて $(1-t)x+te_0$ と縮めると、$x=-e_0$、$t=1/2$ で $0$ を通るので正規化できない。第 1 段は、点をすべて $-e_0$ から遠ざけるための準備である。

ホモトピー群とホモロジー

すべての $k\ge0$ について $\pi_k(S^\infty)=0$、任意の係数で $\tilde H_k(S^\infty;G)=0$ である。各包含 $S^n\hookrightarrow S^\infty$ は定値写像とホモトピックである。

可縮な空間のホモトピー群と被約ホモロジー群は一点のものと同じで、$0$ である(ホモトピー不変性)。包含 $i$ は $\mathrm{id}\circ i$ であり、$\mathrm{id}$ が定値写像とホモトピックなので $i$ もそうである。

一方 $\tilde H_n(S^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ なので(n次元球面 の定理「ホモロジー群とコホモロジー群」)、どの $S^n$ も可縮でない。可縮でない部分複体の増大列の和が可縮になる例である。弱可縮 の命題「増大列の和」は、各包含 $S^n\hookrightarrow S^{n+1}$ が定値写像とホモトピックであることから同じ結論を導いている(同記事の例「球面の増大列」)。

自由な作用と商

$\mathbb{F}$ を $\mathbb{R}$、$\mathbb{C}$、四元数体 $\mathbb{H}$(四元数)のどれかとし、$d:=\dim_{\mathbb{R}}\mathbb{F}\in\{1,2,4\}$ とおく。有限個を除いて $0$ である $\mathbb{F}$ の元の列の全体 $\mathbb{F}^\infty$ の単位球面 $S(\mathbb{F}^\infty)$ に、$S(\mathbb{F}^{n+1})\cong S^{d(n+1)-1}$ についての弱位相を入れる。

複素・四元数の単位球面

各成分を実部・虚部(四元数では $4$ つの実成分)に並べる写像 $\rho\colon\mathbb{F}^\infty\to\mathbb{R}^\infty$ は、同相写像 $S(\mathbb{F}^\infty)\to S^\infty$ を与える。とくに $S(\mathbb{F}^\infty)$ は可縮である。

$\rho$ はノルムを保つ全単射で、$S(\mathbb{F}^{n+1})$ を $S^{d(n+1)-1}$ の上へ同相に写す。$B\subset S^\infty$ について、すべての $m$ で $B\cap S^m$ が閉であることと、$m=d(n+1)-1$ の形のすべての $m$ で閉であることは同値である。実際、$m\le d(n+1)-1$ なら $B\cap S^m=(B\cap S^{d(n+1)-1})\cap S^m$ であり、$S^m$ は $S^{d(n+1)-1}$ の部分空間だからである。よって $\rho$ は弱位相の閉集合どうしを対応させる。可縮性は isph-thm-contractible から従う。

商として現れる空間
  1. $\mathbb{F}$ の絶対値 $1$ の元の群 $S(\mathbb{F})=S^0,S^1,S^3$ は、右からの掛け算 $x\mapsto x\lambda$ で $S(\mathbb{F}^\infty)$ に自由に作用する。商は無限次元射影空間 $\mathbb{RP}^\infty$、$\mathbb{CP}^\infty$、$\mathbb{HP}^\infty$ である(無限次元射影空間)。
  2. $\mathbb{F}=\mathbb{R}$ のとき、商写像 $S^\infty\to\mathbb{RP}^\infty$ は 2 重の被覆空間であり(無限次元射影空間 の命題「単位球面からの射影は束」)、$S^\infty$ は可縮なので単連結である。よってこれは普遍被覆で、$\pi_1(\mathbb{RP}^\infty)\cong\mathbb{Z}/2$、$k\ge2$ で $\pi_k(\mathbb{RP}^\infty)=0$ となる(Hat02 Example 1B.3, p. 88)。
  3. $S^\infty\to\mathbb{RP}^\infty$、$S(\mathbb{C}^\infty)\to\mathbb{CP}^\infty$ は、それぞれ位数 $2$ の群と円周群の普遍束である(分類空間 の例「位数 2 の群と無限次元実射影空間」「円周群と無限次元複素射影空間」)。全空間が可縮であることが、普遍束であることの要点になっている。
  4. $m\ge2$ について、$1$ の原始 $m$ 乗根 $\zeta$ の掛け算で $\mathbb{Z}/m$ を $S(\mathbb{C}^\infty)$ に作用させた商は無限次元のレンズ空間で、$K(\mathbb{Z}/m,1)$ になる(Hat02 Example 1B.4, p. 88)。作用が被覆空間の作用であることは、$x$ を中心とするノルムの半径 $\varepsilon< \min_{0< j< m}|\zeta^j-1|/2$ の球と $S(\mathbb{C}^\infty)$ の共通部分(各段で開なので開集合)を $U$ とすると、$\zeta^jU$($0\le j< m$)が互いに交わらないことからわかる。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
無限個の段の和をとること有限次元の球面 $S^n$可縮であること(isph-thm-contractible)
弱位相を入れること同じ集合 $S^\infty$ にノルムの距離の位相を入れた空間コンパクト集合が有限段に入ること(isph-prop-compact)
部分複体が閉集合であること開いた半球 $e^1_+$ だけからなる胞体の和isph-thm-subcomplex の一覧に入ること
反例の確かめ
  1. $\tilde H_n(S^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}\ne0$ なので $S^n$ は可縮でない。
  2. $x_k:=\cos(1/k)\,e_0+\sin(1/k)\,e_k$($k\ge1$)とおくと、$\|x_k-e_0\|\to0$ なので、ノルムの位相では $\{e_0\}\cup\{x_k\mid k\ge1\}$ は収束列とその極限からなるコンパクト集合である。$x_k$ の第 $k$ 成分は $0$ でないので、この集合はどの $S^n$ にも含まれない。なお、この空間でも isph-prf-contractible の式はノルムについて連続なので、可縮性は保たれる。弱位相では同じ集合 $\{x_k\}$ が閉集合になり、$x_k$ は $e_0$ に収束しない。
  3. $e^1_+=\{x\in S^1\mid x_1>0\}$ の閉包は $D^1_+$ で、$\pm e_0$ を含む。よって $e^1_+$ は閉集合でなく、部分複体でない。

補足

Hilbert 空間の単位球面

実 Hilbert空間 $\ell^2$ の単位球面にノルムの位相を入れた空間も可縮である(可縮空間 の例「二つの無限次元球面」)。これは $S^\infty$ とは位相の異なる空間で、isph-prop-first-countable により $S^\infty$ と同相でない。代数的位相幾何学で $S^\infty$ と書くときは、この記事の弱位相の空間を指す。

文献

$S^\infty$ の胞体の構造は Hat02 p. 7、部分複体の決定と可縮性は同書 Chapter 0 の演習 15・16(p. 19)、可縮性の 2 段の構成は Example 1B.3(p. 88)、直積の位相は Theorem A.6(p. 524)、コンパクト集合については Proposition A.1(p. 520)にある。isph-thm-subcomplex・isph-prop-compact・isph-prop-first-countable の証明は、この記事で組み立てたものである。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, Chapter 0, p. 7(無限次元球面の胞体の構造)、Chapter 0 演習 15・16(p. 19)、Example 1B.3・1B.4(p. 88)、Proposition A.1(p. 520)、Theorem A.6(p. 524)

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