Brownの表現可能性定理(Brown representability theorem)とは、連結な基点付き CW 複体の上で基点付き集合に値をとる反変関手 $h$ が、ホモトピー不変で、任意個のウェッジ和を直積に写し、部分複体による分解について Mayer–Vietoris 型の貼り合わせを許すなら、ある CW 複体 $K$ と元 $u\in h(K)$ があって $[f]\mapsto f^*u$ が自然な全単射 $\langle X,K\rangle\cong h(X)$ を与える、という定理である。$K$ は $u$ を保つ基点付きホモトピー同値を除いて一意に決まる。$K$ は球面と胞体を次元ごとに貼り足して作る。応用として、コホモロジーは Eilenberg–MacLane 空間への写像で表される。
前提知識: CW複体, ホモトピー群, 表現可能関手, Whiteheadの定理
Brown の表現可能性定理(Brown representability theorem)は、連結な基点付き CW 複体の上の反変関手 $h$ が、ホモトピー不変で、ウェッジ和を直積に写し、Mayer–Vietoris 型の貼り合わせの性質をもつなら、ある CW 複体 $K$ への写像のホモトピー類の集合 $\langle X,K\rangle$ として自然に表される、という定理である。
この 3 つの性質は、$\langle-,K\rangle$ が自動的にもつものである。定理はその逆を主張しており、米田の補題 の意味での表現可能性を、ホモトピー論の言葉で確かめられる条件に置き換える。応用として、コホモロジー $H^n(-;G)$ が Eilenberg–MacLane空間 $K(G,n)$ への写像で表されること、さらに一般のコホモロジー論が Ω スペクトルで表されることが得られる。
この記事では、表現する空間 $K$ を胞体を貼り足して作り、定理(brown-thm-main)を証明する。
この記事で CW 複体というときは、$0$ 胞体を基点にもつ連結な CW 複体を指し、写像はすべて基点を保つものとする。基点付きホモトピーで類別した写像の集合を $\langle X,K\rangle$ と書く。基点付き集合とは、1 つの元を指定した集合のことである。$X\times I$ の $\{x_0\}\times I$ を 1 点につぶした空間を $X\rtimes I$ と書く(被約柱)。
CW 複体の圏から基点付き集合の圏への反変関手 $h$ が次の 3 条件を満たすとき、Brown 関手とよぶ。$f\colon X\to Y$ に対し $h(f)$ を $f^*$ と書き、包含 $A\hookrightarrow X$ による $x\in h(X)$ の像を $x|_A$ と書く。
CW 複体 $K$ と $u\in h(K)$ の組 $(K,u)$ について、
$$
T_u\colon\langle X,K\rangle\to h(X),\qquad T_u([f]):=f^*u
$$
がすべての CW 複体 $X$ で全単射になるとき、$(K,u)$ を $h$ の普遍対、$u$ を普遍元という。このとき $T_u$ は $X$ について自然な同型 $\langle-,K\rangle\cong h$ であり、$h$ は $K$ で表現されるという。
ホモトピー公理により $f^*$ は類 $[f]$ だけで決まるので、$T_u$ は矛盾なく定まる。
任意の基点付き空間 $Y$ について、$X\mapsto\langle X,Y\rangle$ は Brown 関手である(指定する元は定値写像の類)。
ホモトピー公理は合成で保たれることから明らかである。ウェッジ和からの写像とホモトピーは、各 $X_\lambda$ からの写像とホモトピーの族と一対一に対応する(ウェッジ和は直和の商空間で、$(\bigvee X_\lambda)\times I$ も $\bigsqcup(X_\lambda\times I)$ の商になる)。Mayer–Vietoris 公理:$f_A\colon A\to Y$、$f_B\colon B\to Y$ の $A\cap B$ への制限が基点付きホモトピー $H$ で結ばれているとする。$(B,A\cap B)$ に Whiteheadの定理 の命題「CW 対のホモトピー拡張性質」を使って $H$ を $B$ 全体のホモトピーに延ばすと、その終わりの写像 $f_B'$ は $f_B$ と基点付きホモトピックで、$A\cap B$ の上で $f_A$ と一致する。$A,B$ は閉集合なので、$f_A$ と $f_B'$ を貼り合わせた写像 $X\to Y$ は連続で、その類が求める元である。$\square$
$h$ を Brown 関手とする。
証明は節「証明」で与える。定理は Hat02 §4.E の Theorem 4E.2(p. 449)であり、証明の流れも同書 pp. 449–452 に沿う。
$K$ を求めることは、関手 $h$ の値を「写像のホモトピー類」として実現する空間を作ることである。$\langle S^i,K\rangle=\pi_i(K)$ なので、$K$ のホモトピー群は $h(S^i)$ と一致しなければならない。そこで、球面を貼り足して $\pi_i(K)\to h(S^i)$ を全射にし、同じ値をもつ 2 つの球面の類を胞体でつないで単射にする、という操作を次元ごとに繰り返す。ウェッジ公理は球面をたくさん貼り足しても $h$ の元が延びることを、Mayer–Vietoris 公理は胞体を貼っても元が延びることを保証する。
こうして得た $K$ は、球面からの写像については正しい答えを返す。一般の CW 複体 $X$ についても正しいことは、$X$ と $K$ を貼り合わせた空間に同じ構成をもう一度使い、Whiteheadの定理 で比べることで示される。
1 点 $\mathrm{pt}$ について、$h(\mathrm{pt})$ は 1 元集合である。したがって、定値写像 $c\colon X\to Y$ について $c^*$ は $h(Y)$ を $h(X)$ の指定された元へ写す。
$\mathrm{pt}\vee\mathrm{pt}=\mathrm{pt}$ で、2 つの包含はどちらも恒等写像なので、ウェッジ公理の全単射は対角写像 $h(\mathrm{pt})\to h(\mathrm{pt})\times h(\mathrm{pt})$ である。これが全射なので $h(\mathrm{pt})$ は高々 1 元で、基点付き集合なので空でない。定値写像は $\mathrm{pt}$ を経由するので、後半が従う。$\square$
対 $(K,u)$ について、$T_u\colon\pi_i(K)\to h(S^i)$ が $1\le i< n$ で全単射、$i=n$ で全射のとき $n$-普遍、すべての $n$ で $n$-普遍のとき $\pi_*$-普遍という。普遍対は $\pi_*$-普遍である。以下、胞体近似定理 から従う次の事実を使う:CW 複体 $L$ に $n+1$ 次元以上の胞体だけを貼った CW 複体 $L'$ について、包含が誘導する $\pi_i(L)\to\pi_i(L')$ は $i< n$ で同型、$i=n$ で全射である(Hat02 Corollary 4.12、p. 351)。
CW 複体 $Z$ と $z\in h(Z)$ に対し、$Z$ を部分複体として含む CW 複体 $K$ と $u\in h(K)$ で、$(K,u)$ が $\pi_*$-普遍かつ $u|_Z=z$ となるものがある。
要点:次元ごとに、全射にするための球面のウェッジと、単射にするための柱を貼り、Mayer–Vietoris 公理で元を延ばす。最後に無限次元の和を写像望遠鏡で扱う。
最初の段. $K_1:=Z\vee\bigvee_{\beta\in h(S^1)}S^1_\beta$ とする。ウェッジ公理により $u_1|_Z=z$、$u_1|_{S^1_\beta}=\beta$ となる $u_1\in h(K_1)$ があり、$S^1_\beta$ の包含の類が $\beta$ へ写るので $(K_1,u_1)$ は $1$-普遍である。
単射にする. $(K_n,u_n)$ が $n$-普遍、$Z\subset K_n$、$u_n|_Z=z$ とする。$a\ne b$ かつ $T_{u_n}(a)=T_{u_n}(b)$ となる $\pi_n(K_n)$ の元の組 $p=(a,b)$ の全体を $P$ とし、各 $p$ について胞体的な代表元 $f_p,g_p\colon S^n\to K_n$ を選ぶ(Hat02 Theorem 4.8、p. 349)。被約柱 $S^n\rtimes I$ を $P$ の元ごとに用意し、$S^n\times\{0\}$ を $f_p$ で、$S^n\times\{1\}$ を $g_p$ で $K_n$ に貼った空間を $K'$ とする。$S^n\rtimes I$ は $S^n\times\{0,1\}$ に $(n+1)$ 胞体を 1 つ貼ったものなので、$K'$ は $K_n$ に $(n+1)$ 胞体を貼った CW 複体である。Mayer–Vietoris 公理を使う次の段落でだけ、同じ空間に $I$ を $\tfrac13,\tfrac23$ で分割した胞体構造を入れる(恒等写像は 2 つの CW 構造の間の同相写像なので、$h$ の値は対応する)。
柱の $[0,\tfrac13]\cup[\tfrac23,1]$ の部分と $K_n$ の和を $\mathcal A$、柱の $[\tfrac13,\tfrac23]$ の部分のウェッジ和を $\mathcal B$ とすると、$\mathcal A\cup\mathcal B=K'$、$\mathcal A\cap\mathcal B=\bigvee_p(S^n_{1/3}\vee S^n_{2/3})$ で、どれも連結である。$r\colon\mathcal A\to K_n$ を柱の点 $(s,t)$ を $t\le\tfrac13$ なら $f_p(s)$、$t\ge\tfrac23$ なら $g_p(s)$ へ写す写像とすると、$r$ は $K_n$ の上で恒等写像で、柱を端へ縮めるホモトピーにより包含とともに基点付きホモトピー同値を与える。$a_0:=r^*u_n$ とおく。$\mathcal B$ の各成分 $S^n\rtimes[\tfrac13,\tfrac23]$ は射影 $q_p$ で $S^n$ とホモトピー同値なので、ウェッジ公理により各成分への制限が $q_p^*f_p^*u_n$ となる $b_0\in h(\mathcal B)$ がある。$\mathcal A\cap\mathcal B$ の各球面の上で、$a_0$ は $f_p^*u_n$ または $g_p^*u_n$ に、$b_0$ は $f_p^*u_n$ に制限され、$f_p^*u_n=g_p^*u_n$ なので、ウェッジ公理(単射性)により $a_0|_{\mathcal A\cap\mathcal B}=b_0|_{\mathcal A\cap\mathcal B}$ である。Mayer–Vietoris 公理により $w|_{\mathcal A}=a_0$ となる $w\in h(K')$ があり、$w|_{K_n}=u_n$ である。
全射にする. $K_{n+1}:=K'\vee\bigvee_{\beta\in h(S^{n+1})}S^{n+1}_\beta$ とし、ウェッジ公理で $u_{n+1}|_{K'}=w$、$u_{n+1}|_{S^{n+1}_\beta}=\beta$ となる $u_{n+1}$ をとる。$K_{n+1}$ は $K_n$ に $n+1$ 次元の胞体だけを貼ったものなので、包含 $\iota$ は $i< n$ で $\pi_i$ の同型、$i=n$ で全射を誘導し、$T_{u_{n+1}}\circ\iota_*=T_{u_n}$ である。よって $T_{u_{n+1}}$ は $i< n$ で全単射、$i=n$ で全射である。$i=n$ での単射性:$T_{u_{n+1}}(a')=T_{u_{n+1}}(b')$ なら $a',b'$ は $T_{u_n}$ の値が等しい $a,b\in\pi_n(K_n)$ の像であり、$a\ne b$ なら柱 $S^n\rtimes I$ が $f_p$ と $g_p$ の基点付きホモトピーを与えるので $a'=b'$ である。$i=n+1$ での全射性は $S^{n+1}_\beta$ の類による。よって $(K_{n+1},u_{n+1})$ は $(n+1)$-普遍である。
極限. $K:=\bigcup_nK_n$ とする。被約積で作った写像望遠鏡 $T:=\bigcup_iK_i\rtimes[i,i+1]\subset K\rtimes[1,\infty)$ について、射影 $\pi\colon T\to K$ は基点付きホモトピー同値である(Hat02 §4.E、p. 451。Lemma 2.34 の証明、p. 138 と同じ議論)。$i$ が奇数の $K_i\rtimes[i,i+1]$ の和を $\mathcal A$、偶数のものの和を $\mathcal B$ とすると、どちらも $K_i$ とホモトピー同値なもののウェッジ和で、$\mathcal A\cap\mathcal B=\bigvee_iK_i\times\{i+1\}$ である。ウェッジ公理で各 $K_i\rtimes[i,i+1]$ への制限が射影による $u_i$ の引き戻しとなる元を $\mathcal A$、$\mathcal B$ の上にとると、$u_{i+1}|_{K_i}=u_i$ なので $\mathcal A\cap\mathcal B$ の上で一致し、Mayer–Vietoris 公理で $t\in h(T)$ が得られる。$\pi$ のホモトピー逆写像 $\sigma$ について $u:=\sigma^*t$ とおくと、$K_n$ を $T$ の高さ $n$ に入れる包含 $j_n$ について $\sigma|_{K_n}=\sigma\circ\pi\circ j_n\simeq j_n$ なので $u|_{K_n}=j_n^*t=u_n$ である。
球面とそのホモトピーの像はコンパクトなので有限部分複体に、したがってある $K_m$ に入る(CW複体 の定理「コンパクト集合は有限部分複体に含まれる」)。$i< n$ なら $\pi_i(K_n)\to\pi_i(K)$ は同型で $T_u$ と $T_{u_n}$ は可換なので、$T_u\colon\pi_i(K)\to h(S^i)$ は全単射である。$\square$
$(K,u)$ を $\pi_*$-普遍な対、$(X,A)$ を基点を含む部分複体 $A$ との CW 対($X,A$ は連結)とする。$x\in h(X)$ と写像 $f\colon A\to K$ が $f^*u=x|_A$ を満たせば、$f$ の延長 $g\colon X\to K$ で $g^*u=x$ となるものがある。
まず $f$ が胞体的な場合を示す。$A\times I\sqcup K$ で $(a,1)$ と $f(a)$ を同一視し(写像柱)、さらに $\{a_0\}\times I$ を 1 点につぶした被約写像柱を $M$ とする。$M$ は $A=A\times\{0\}$ と $K$ を部分複体として含む CW 複体で、$r\colon M\to K$、$r(a,t):=f(a)$ は $K$ の上で恒等写像、$r|_A=f$ であり、$(a,t,s)\mapsto(a,t+s(1-t))$ が誘導するホモトピーにより、包含 $K\hookrightarrow M$ とともに基点付きホモトピー同値を与える。
$Z:=X\cup_AM$($X$ と $M$ を $A$ で貼った CW 複体)とする。$x|_A=f^*u=(r^*u)|_A$ なので、Mayer–Vietoris 公理により $z|_X=x$、$z|_M=r^*u$ となる $z\in h(Z)$ がある。brown-lem-construct により、$Z$ を部分複体にもつ $\pi_*$-普遍な $(K',u')$ で $u'|_Z=z$ となるものがある。包含 $j\colon M\hookrightarrow K'$ について $T_{u'}\circ j_*=T_{r^*u}=T_u\circ r_*$ であり、$T_{u'}$、$T_u$、$r_*$ はすべての $\pi_i$ で全単射なので、$j_*$ も全単射、すなわち $j$ は弱ホモトピー同値である。Whiteheadの定理 の 2 により $M$ は $K'$ の強変位レトラクトであり、レトラクション $\rho\colon K'\to M$ は $M$ を止めたホモトピーで $j\circ\rho\simeq\mathrm{id}$ を満たす。$g:=r\circ\rho|_X$ とおくと、$A\subset M$ なので $g|_A=r|_A=f$ であり、ホモトピー公理から
$$
g^*u=(\rho|_X)^*r^*u=(\rho|_X)^*j^*u'=\bigl((j\circ\rho)|_X\bigr)^*u'=u'|_X=z|_X=x .
$$
一般の $f$ は、$A$ の基点を止めて胞体的な $f'$ とホモトピックにできる(Hat02 Theorem 4.8、p. 349)。$f'^*u=f^*u$ なので $f'$ の延長 $g'$ で $g'^*u=x$ となるものがある。$(X,A)$ のホモトピー拡張性質で $f'$ から $f$ へのホモトピーを $g'$ から始まる $X$ 上のホモトピーに延ばし、終わりの写像を $g$ とすれば、$g|_A=f$、$g^*u=g'^*u=x$ である。$\square$
1:brown-lem-construct を $Z=\mathrm{pt}$ に使って $\pi_*$-普遍な $(K,u)$ をとり、$T_u\colon\langle X,K\rangle\to h(X)$ が全単射であることを示す。
全射:$x\in h(X)$ に対し、brown-lem-extension を $A=\{x_0\}$、$f$ を基点への写像として使う。brown-lem-point により $f^*u=x|_A$ は自動的に成り立つので、$g^*u=x$ となる $g\colon X\to K$ がある。
単射:$f_0^*u=f_1^*u$ とする。CW 対 $(X\rtimes I,\ X\times\{0,1\})$ に brown-lem-extension を使う。$X\times\{0,1\}=X\vee X$ は連結で、$f_0\vee f_1$ は $X\vee X$ からの写像である。$x:=\mathrm{pr}^*f_0^*u$($\mathrm{pr}\colon X\rtimes I\to X$ は射影)とおくと、$x$ の 2 つの端への制限はどちらも $f_0^*u=f_1^*u$ であり、ウェッジ公理(単射性)により $x|_{X\vee X}=(f_0\vee f_1)^*u$ である。よって $f_0\vee f_1$ は $X\rtimes I\to K$ に延び、これは $f_0$ から $f_1$ への基点付きホモトピーである。
2:$T_{u'}\colon\langle K,K'\rangle\to h(K)$ は全単射なので、$\phi^*u'=u$ となる $\phi\colon K\to K'$ が類としてただ 1 つある。同様に $\psi^*u=u'$ となる $\psi\colon K'\to K$ がある。$(\psi\circ\phi)^*u=u=\mathrm{id}^*u$ で $T_u$ は単射なので $\psi\circ\phi\simeq\mathrm{id}_K$、同様に $\phi\circ\psi\simeq\mathrm{id}_{K'}$ である。$\square$
$Y$ を弧状連結な基点付き空間とすると、$h:=\langle-,Y\rangle$ は Brown 関手である(brown-prop-necessary)。普遍対 $(K,u)$ の $u$ は写像 $u\colon K\to Y$ で、$T_u(f)=u\circ f$ である。$X=S^i$ とすれば $u_*\colon\pi_i(K)\to\pi_i(Y)$ がすべての $i\ge1$ で全単射なので、$u$ は弱ホモトピー同値、すなわち $Y$ の CW近似 である。
$n\ge1$、$G$ をアーベル群とし、$h(X):=H^n(X;G)$($0$ を指定する)とおく。ホモトピー不変性、ウェッジ公理(Hat02 p. 202 の公理 (3)。連結な $X$ では $n\ge1$ の被約コホモロジーと一致する)、Mayer–Vietoris 公理(部分複体についての Mayer–Vietoris 完全列、同書 p. 449)が成り立つので、普遍対 $(K,u)$ がある。$\pi_i(K)\cong h(S^i)$ は $i=n$ で $G$ と集合として一対一、それ以外では 1 点なので、$K$ は $K(\pi,n)$ の形の Eilenberg–MacLane空間 である。全単射 $\pi_n(K)\to G$ が群の同型であることと、$\langle X,K(G,n)\rangle\cong H^n(X;G)$ の直接の証明は Hat02 Theorem 4.57(p. 393)にある(この記事では証明しない)。
基点付き CW 複体の上の被約コホモロジー論 $(\tilde h^n)_{n\in\mathbb{Z}}$ に対し、CW 複体の列 $K_n$ と弱ホモトピー同値 $K_n\to\Omega K_{n+1}$ があって、自然な同型 $\tilde h^n(X)\cong\langle X,K_n\rangle$ が成り立つ(Hat02 Theorem 4E.1、p. 448。この記事では証明しない)。
brown-thm-spectra の証明では、各 $\tilde h^n$ を連結な $X$ に制限したものに brown-thm-main を使って $K_n$ を作り、懸垂同型 $\tilde h^n(X)\cong\tilde h^{n+1}(\Sigma X)$ と随伴 $\langle\Sigma X,K_{n+1}\rangle\cong\langle X,\Omega K_{n+1}\rangle$(ループ空間)から写像 $K_n\to\Omega K_{n+1}$ を得る。逆に、このような列は $X\mapsto\langle X,K_n\rangle$ によって被約コホモロジー論を定める(May99 Chapter 22 §2、p. 178)。通常のコホモロジーでは $K_n=K(G,n)$ であり、$\Omega K(G,n+1)$ が $K(G,n)$ であること(ループ空間 の例「Eilenberg–MacLane 空間のループ空間」)がこの列のつながりを与える。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| ウェッジ公理(無限個のウェッジ和についても全単射) | $h(X)=H^1(X;\mathbb{Z})\otimes\mathbb{Q}$ | $h$ は表現される |
| Mayer–Vietoris 公理 | $h(X)=\{x\in H^2(X;\mathbb{Z})\mid x\smile x=0\}$ | $h$ は表現される |
1 行目:ホモトピー公理は明らかである。Mayer–Vietoris 公理は、整数係数の Mayer–Vietoris 完全列の $H^1(X)\to H^1(A)\oplus H^1(B)\to H^1(A\cap B)$ の部分の完全性から、$\mathbb{Q}$ とのテンソル積が完全性を保つことにより従う。有限個のウェッジ和についての公理も、有限直積とテンソル積が交換するので成り立つ。しかし $X=\bigvee_{k\ge1}S^1$ では $H^1(X;\mathbb{Z})\cong\prod_k\mathbb{Z}$ であり(Hat02 p. 202)、$h(X)=(\prod_k\mathbb{Z})\otimes\mathbb{Q}\to\prod_k\mathbb{Q}$ の像は分母が有界な列だけからなるので、$(1,\tfrac12,\tfrac13,\dots)$ は像にない。表される関手は brown-prop-necessary により無限個のウェッジ和についての公理を満たすので、$h$ は表されない。
2 行目:$f^*(x\smile x)=f^*x\smile f^*x$ なので $h$ は関手で、ホモトピー公理を満たす。ウェッジ和の制限はコホモロジー環の同型 $\tilde H^*(\bigvee X_\lambda)\cong\prod\tilde H^*(X_\lambda)$ を与えるので(Hat02 Example 3.14、pp. 213–214)、$x\smile x=0$ は各成分で $x_\lambda\smile x_\lambda=0$ となることと同値であり、ウェッジ公理が成り立つ。$h$ が $(K,u)$ で表されたとする。$h(S^3)=H^2(S^3)=0$ なので $\pi_3(K)$ は自明で、$h(S^2)=H^2(S^2)\cong\mathbb{Z}$ なので $\alpha^*u$ が生成元となる $\alpha\colon S^2=\mathbb{CP}^1\to K$ がある。$\mathbb{CP}^2$ は $\mathbb{CP}^1$ に 4 胞体を接着写像 $\eta\colon S^3\to S^2$ で貼ったもので(Hopf写像)、$\alpha\circ\eta$ は $\pi_3(K)=0$ により定値写像とホモトピックなので、$\alpha$ は $\beta\colon\mathbb{CP}^2\to K$ に延びる。$\beta^*u\in h(\mathbb{CP}^2)$ の $\mathbb{CP}^1$ への制限は生成元なので、$\beta^*u$ は $H^2(\mathbb{CP}^2)$ の生成元 $\pm\alpha_2$ であるが、$\alpha_2\smile\alpha_2\ne0$(カップ積 の例「代表的なコホモロジー環」)なので $\beta^*u\notin h(\mathbb{CP}^2)$ となり矛盾する。よって $h$ は表されず、brown-thm-main により $h$ は Mayer–Vietoris 公理を満たさない。
brown-thm-main の 2 が与えるのは、$u$ を保つホモトピー同値がホモトピーを除いて一意であることであり、$K$ のホモトピー同値類が $h$ だけで決まることである。$K$ の自己同値で $u$ を保たないものはいくらでもありうる(たとえば $K(\mathbb{Z},n)$ で $-1$ 倍を誘導する写像)。また、定理は CW 複体の上の関手についてのものであり、CW 複体でない空間 $X$ に対して $\langle X,K\rangle$ が $h$ の自然な拡張と一致するとは主張していない。
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