リーマン接続

同義語:Riemann接続Levi-Civita接続レヴィ・チヴィタ接続

概要

リーマン接続(Riemannian connection)とは、リーマン多様体 $(M,g)$ 上の接続 $\nabla$ であって、計量的($X\,g(Y,Z)=g(\nabla_XY,Z)+g(Y,\nabla_XZ)$)かつ捩れがない($\nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y]$)もののことであり、Levi-Civita 接続ともいう。このような接続は計量から一意に定まり(リーマン幾何学の基本定理)、局所座標での接続係数が Christoffel 記号 $\Gamma^k_{ij}=\frac12g^{km}(\partial_ig_{jm}+\partial_jg_{im}-\partial_mg_{ij})$ である。リーマン接続の平行移動はベクトルの長さと角を保ち、測地線・リーマン曲率テンソルなどリーマン幾何学の基本概念はすべてこの接続から定義される。

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前提知識: リーマン多様体, アフィン接続, ベクトル場, テンソル解析

定義

以下、多様体はすべて $C^\infty$ 級とし、$M$ 上の滑らかな関数全体を $C^\infty(M)$、ベクトル場全体を $\mathfrak{X}(M)$、ベクトル場 $X,Y$ のLie括弧を $[X,Y]$ と書く。局所座標 $(x^1,\dots,x^n)$ に関する座標ベクトル場を $\partial_i:=\partial/\partial x^i$ と書き、添字の和については Einstein の総和規約(テンソル解析)を用いる。

接続と接続係数

多様体 $M$ 上の接続(アフィン接続、affine connection)とは、写像 $\nabla\colon\mathfrak{X}(M)\times\mathfrak{X}(M)\to\mathfrak{X}(M)$、$(X,Y)\mapsto\nabla_XY$ であって、次を満たすものをいう。

  1. $X$ について $C^\infty(M)$-線形:$\nabla_{fX+gX'}Y=f\nabla_XY+g\nabla_{X'}Y$($f,g\in C^\infty(M)$)。
  2. $Y$ について $\mathbb{R}$-線形かつ Leibniz 則を満たす:$\nabla_X(fY)=X(f)\,Y+f\nabla_XY$。
    $\nabla_XY$ を $Y$ の $X$ 方向の共変微分という。局所座標 $(x^i)$ に関し、$\nabla_{\partial_i}\partial_j=\Gamma^k_{ij}\partial_k$ で定まる関数 $\Gamma^k_{ij}$ を $\nabla$ の接続係数という。$\nabla_i:=\nabla_{\partial_i}$ と略記する。
捩率テンソル

多様体 $M$ 上の接続 $\nabla$ の捩率テンソル(torsion tensor)$T^\nabla$ を
$$ T^\nabla(X,Y):=\nabla_XY-\nabla_YX-[X,Y]\qquad(X,Y\in\mathfrak{X}(M)) $$
で定める(これが $(1,2)$ 型テンソル場を定めることは prop-riem-conn-torsion-tensorial で示す)。局所座標に関する成分は $T^\nabla(\partial_i,\partial_j)=T^k_{ij}\partial_k$ とおくと、$[\partial_i,\partial_j]=0$ より
$$ T^k_{ij}=\Gamma^k_{ij}-\Gamma^k_{ji} $$
である。$T^\nabla=0$ であるとき、$\nabla$ は捩れがない(torsion free)という。これは、任意の局所座標で $\Gamma^k_{ij}=\Gamma^k_{ji}$ が成り立つことと同値である。

計量的な接続

$(M,g)$ をリーマン多様体(または擬 Riemann 多様体、すなわち $g$ が各点で非退化な対称 $(0,2)$ 型テンソル場)とする。$M$ 上の接続 $\nabla$ が $g$ に関して計量的(metric compatible)であるとは、任意の $X,Y,Z\in\mathfrak{X}(M)$ に対して
$$ X\,g(Y,Z)=g(\nabla_XY,Z)+g(Y,\nabla_XZ) $$
が成り立つことをいう。$\nabla$ をテンソル場へ拡張したとき(テンソル解析)、この条件は $\nabla g=0$ と同値である。局所座標では、$g_{ij}:=g(\partial_i,\partial_j)$ に対し
$$ \partial_ig_{jk}=\Gamma^m_{ij}g_{mk}+\Gamma^m_{ik}g_{jm} $$
が成り立つことと同値である。

リーマン接続

$(M,g)$ をリーマン多様体(または擬 Riemann 多様体)とする。$M$ 上の接続 $\nabla$ であって、$g$ に関して計量的かつ捩れがないものを $(M,g)$ のリーマン接続(Riemannian connection)または Levi-Civita 接続(Levi-Civita connection)という。このような接続はただ1つ存在する(thm-riem-conn-fundamental)。リーマン接続の接続係数 $\Gamma^k_{ij}$ を $g$ の Christoffel 記号(Christoffel symbols)という。

直感

多様体上の接続は、接ベクトルを曲線に沿って「平行に運ぶ」規則(平行移動)を与える機構であり、理論上はどのように定めてもよい。しかし Euclid空間の平行移動は「ベクトルの長さと2つのベクトルのなす角を変えない」という性質をもち、リーマン多様体上でこの性質を引き継ぐ接続が計量的な接続である。計量条件だけでは接続は一意に定まらない(rem-riem-conn-counterexample)が、さらに「捩れがない」という条件(prop-riem-conn-vanishing-coefficients により、各点のまわりで接続係数が消える座標がとれること、すなわち各点の近くで Euclid 空間の平行移動に 1 次の精度で近似できること)を課すと、接続は計量から一意に定まる。これがリーマン接続であり、リーマン曲率テンソル・測地線などリーマン幾何学のほとんどすべての概念がこの接続を用いて定義される。

例と反例

Euclid 空間の標準計量

$M=\mathbb{R}^n$ に標準計量 $g=\sum_i(dx^i)^2$($g_{ij}=\delta_{ij}$)を入れる。$g_{ij}$ は定数なので prop-riem-conn-christoffel より $\Gamma^k_{ij}=0$ であり、リーマン接続は
$$ \nabla_XY=X(Y^i)\,\partial_i\qquad(Y=Y^i\partial_i) $$
すなわち成分ごとの方向微分である。このとき $Y$ が定ベクトル場($Y^i$ が定数)であることと $\nabla Y=0$ とは同値であり、リーマン接続の平行移動は Euclid 幾何の通常の平行移動に一致する。

2次元球面

半径 $1$ の球面 $S^2$ から北極・南極と1本の子午線を除いた部分に極座標 $(\theta,\phi)$($0<\theta<\pi$、$0<\phi<2\pi$)をとると、標準計量は
$$ g=d\theta^2+\sin^2\theta\,d\phi^2 $$
と表される。$g_{\theta\theta}=1$、$g_{\phi\phi}=\sin^2\theta$、$g_{\theta\phi}=0$ を prop-riem-conn-christoffel に代入すると、Christoffel 記号のうち $0$ でないものは
$$ \Gamma^\theta_{\phi\phi}=-\sin\theta\cos\theta,\qquad \Gamma^\phi_{\theta\phi}=\Gamma^\phi_{\phi\theta}=\cot\theta $$
であり、$\Gamma^\theta_{\theta\theta}=\Gamma^\theta_{\theta\phi}=\Gamma^\phi_{\theta\theta}=\Gamma^\phi_{\phi\phi}=0$ である。例えば $\Gamma^\theta_{\phi\phi}=\frac12g^{\theta\theta}(2\partial_\phi g_{\phi\theta}-\partial_\theta g_{\phi\phi})=-\frac12\partial_\theta(\sin^2\theta)=-\sin\theta\cos\theta$ である。

3次元双曲空間

3次元の双曲空間 $H^3$ から原点、極軸(北極・南極の方向を通る1本の直線)および1枚の子午面を除いた部分に測地極座標 $(\rho,\theta,\phi)$($\rho>0$、$0<\theta<\pi$、$0<\phi<2\pi$)をとると、計量は
$$ g=d\rho^2+\sinh^2\rho\,(d\theta^2+\sin^2\theta\,d\phi^2) $$
と表される。Christoffel 記号のうち $0$ でないものは、添字の対称性 $\Gamma^k_{ij}=\Gamma^k_{ji}$ を除いて
$$ \begin{align*} \Gamma^\rho_{\theta\theta}&=-\sinh\rho\cosh\rho, & \Gamma^\rho_{\phi\phi}&=-\sinh\rho\cosh\rho\,\sin^2\theta, & \Gamma^\theta_{\rho\theta}&=\coth\rho,\\ \Gamma^\theta_{\phi\phi}&=-\sin\theta\cos\theta, & \Gamma^\phi_{\rho\phi}&=\coth\rho, & \Gamma^\phi_{\theta\phi}&=\cot\theta \end{align*} $$
である。

Schwarzschild 計量

リーマン接続の定義と存在・一意性は擬 Riemann 計量に対してもそのまま成り立つ(rem-riem-conn-pseudo)。4次元Lorentz 多様体(時空)の例である Schwarzschild 時空の座標 $(t,r,\theta,\phi)$($r>2m$、$m>0$ は定数)に関して計量は
$$ g=-\Bigl(1-\frac{2m}{r}\Bigr)dt^2+\Bigl(1-\frac{2m}{r}\Bigr)^{-1}dr^2+r^2(d\theta^2+\sin^2\theta\,d\phi^2) $$
である(Wald84 Ch. 6)。Christoffel 記号のうち $0$ でないものは、添字の対称性を除いて
$$ \begin{align*} \Gamma^t_{tr}&=\frac{m}{r^2-2mr}, & \Gamma^r_{tt}&=\frac{m(r-2m)}{r^3}, & \Gamma^r_{rr}&=-\frac{m}{r^2-2mr},\\ \Gamma^r_{\theta\theta}&=2m-r, & \Gamma^r_{\phi\phi}&=(2m-r)\sin^2\theta, & \Gamma^\theta_{r\theta}&=\frac1r,\\ \Gamma^\theta_{\phi\phi}&=-\sin\theta\cos\theta, & \Gamma^\phi_{r\phi}&=\frac1r, & \Gamma^\phi_{\theta\phi}&=\cot\theta \end{align*} $$
である。例えば $f(r):=1-2m/r$ とおくと $\Gamma^r_{tt}=-\frac12g^{rr}\partial_rg_{tt}=\frac12ff'=\frac12\Bigl(1-\frac{2m}{r}\Bigr)\frac{2m}{r^2}=\frac{m(r-2m)}{r^3}$ である。

反例:計量条件・捩れなし条件の一方だけでは一意でない
  1. 計量的だが捩れをもつ接続。$M=\mathbb{R}^3$ に標準計量 $g$ を入れ、$\nabla$ を ex-riem-conn-euclidean のリーマン接続、$\times$ を外積とし、$\nabla'_XY:=\nabla_XY+X\times Y$ とおく。$X\times Y$ は $X,Y$ について $C^\infty(M)$-双線形なので $\nabla'$ は接続であり、$g(X\times Y,Z)+g(Y,X\times Z)=0$(内積と外積の関係 $g(X\times Y,Z)=\det(X,Y,Z)$ の $Y,Z$ に関する反対称性)から $\nabla'$ は計量的である。しかし $T^{\nabla'}(X,Y)=T^\nabla(X,Y)+X\times Y-Y\times X=2X\times Y\neq0$ なので捩れがある。
  2. 捩れがないが計量的でない接続。$M=\mathbb{R}$ に標準計量を入れ、$\nabla'_{\partial}\partial:=\partial$(接続係数 $\Gamma^1_{11}=1$)で接続を定める。1 次元では添字が1つしかないので $\Gamma^1_{11}=\Gamma^1_{11}$ より捩れはない。しかし $\partial\,g(\partial,\partial)=\partial(1)=0$ に対し $2g(\nabla'_\partial\partial,\partial)=2$ なので計量的でない。
    したがって、計量条件と捩れなし条件の両方を課して初めて接続が計量から一意に定まる(thm-riem-conn-fundamental)。

性質

捩率のテンソル性

任意の接続 $\nabla$ に対し、$T^\nabla(X,Y)$ は $X,Y$ のそれぞれについて $C^\infty(M)$-線形であり、$X,Y$ について反対称である。したがって $T^\nabla$ は $(1,2)$ 型テンソル場を定める。

反対称性は定義から明らかである。$f\in C^\infty(M)$ に対し、$[fX,Y]=f[X,Y]-Y(f)X$ であるから
$$ T^\nabla(fX,Y)=f\nabla_XY-\nabla_Y(fX)-[fX,Y]=f\nabla_XY-Y(f)X-f\nabla_YX-f[X,Y]+Y(f)X=fT^\nabla(X,Y) $$
である。$Y$ についての線形性は反対称性から従う。$C^\infty(M)$-多重線形な写像 $\mathfrak{X}(M)\times\mathfrak{X}(M)\to\mathfrak{X}(M)$ が各点の値だけで決まるテンソル場を定めることは テンソル解析 による。$\square$

Koszul 公式

$(M,g)$ 上の接続 $\nabla$ が計量的かつ捩れがないならば、任意の $X,Y,Z\in\mathfrak{X}(M)$ に対して次が成り立つ。
$$ 2g(\nabla_XY,Z)=X\,g(Y,Z)+Y\,g(Z,X)-Z\,g(X,Y)+g([X,Y],Z)-g([X,Z],Y)-g([Y,Z],X). $$

計量条件から
$$ \begin{align*} X\,g(Y,Z)&=g(\nabla_XY,Z)+g(Y,\nabla_XZ),\\ Y\,g(Z,X)&=g(\nabla_YZ,X)+g(Z,\nabla_YX),\\ Z\,g(X,Y)&=g(\nabla_ZX,Y)+g(X,\nabla_ZY) \end{align*} $$
である。上の2式を加えて下の式を引くと
$$ X\,g(Y,Z)+Y\,g(Z,X)-Z\,g(X,Y)=g(\nabla_XY+\nabla_YX,Z)+g(Y,\nabla_XZ-\nabla_ZX)+g(X,\nabla_YZ-\nabla_ZY) $$
となる。捩れがないので $\nabla_XZ-\nabla_ZX=[X,Z]$、$\nabla_YZ-\nabla_ZY=[Y,Z]$、$\nabla_YX=\nabla_XY-[X,Y]$ であり、これらを代入して整理すると主張の式を得る。$\square$

リーマン幾何学の基本定理

リーマン多様体(または擬 Riemann 多様体)$(M,g)$ 上には、計量的かつ捩れのない接続がただ1つ存在する。すなわちリーマン接続は存在して一意である。

一意性:$\nabla,\nabla'$ がともに計量的かつ捩れがないとすると、lem-riem-conn-koszul の右辺は $\nabla$ によらないので、任意の $Z$ に対し $g(\nabla_XY-\nabla'_XY,Z)=0$ である。$g$ は各点で非退化なので $\nabla_XY=\nabla'_XY$ である。
存在:$X,Y,Z\in\mathfrak{X}(M)$ に対し、lem-riem-conn-koszul の右辺の $\frac12$ 倍を $\omega_{X,Y}(Z)$ とおく。まず $\omega_{X,Y}$ が $Z$ について $C^\infty(M)$-線形であることを確かめる。$\mathbb{R}$-線形性は明らかである。$f\in C^\infty(M)$ に対し、$[X,fZ]=f[X,Z]+X(f)Z$ などを用いると、$Z$ を $fZ$ で置き換えたときに $f\,\omega_{X,Y}(Z)$ 以外に現れる項は
$$ \tfrac12\bigl(X(f)g(Y,Z)+Y(f)g(Z,X)-X(f)g(Z,Y)-Y(f)g(Z,X)\bigr)=0 $$
である。よって $\omega_{X,Y}$ は $M$ 上の 1 次微分形式であり(テンソル解析)、$g$ の非退化性により $g(\nabla_XY,Z)=\omega_{X,Y}(Z)$(すべての $Z$)を満たすベクトル場 $\nabla_XY$ がただ1つ定まる。
$\nabla$ が接続であること:$X$ についての加法性と $Y$ についての $\mathbb{R}$-線形性は右辺の形から明らかである。$X$ を $fX$ で置き換えると、$[fX,Y]=f[X,Y]-Y(f)X$、$[fX,Z]=f[X,Z]-Z(f)X$ より、$f\,\omega_{X,Y}(Z)$ 以外に現れる項は
$$ \tfrac12\bigl(Y(f)g(Z,X)-Z(f)g(X,Y)-Y(f)g(X,Z)+Z(f)g(X,Y)\bigr)=0 $$
であり、$\nabla_{fX}Y=f\nabla_XY$ を得る。$Y$ を $fY$ で置き換えると、$[X,fY]=f[X,Y]+X(f)Y$、$[fY,Z]=f[Y,Z]-Z(f)Y$ より、$f\,\omega_{X,Y}(Z)$ 以外に現れる項は
$$ \tfrac12\bigl(X(f)g(Y,Z)-Z(f)g(X,Y)+X(f)g(Y,Z)+Z(f)g(Y,X)\bigr)=X(f)g(Y,Z) $$
であり、$\nabla_X(fY)=f\nabla_XY+X(f)Y$ を得る。
捩れがないこと:$2\omega_{X,Y}(Z)-2\omega_{Y,X}(Z)$ を計算する。$\omega_{X,Y}$ の $X\,g(Y,Z)$ の項と $\omega_{Y,X}$ の $X\,g(Z,Y)$ の項は $g$ の対称性により打ち消し合い、$\omega_{X,Y}$ の $Y\,g(Z,X)$ の項と $\omega_{Y,X}$ の $Y\,g(X,Z)$ の項も打ち消し合い、$\omega_{X,Y}$ の $-Z\,g(X,Y)$ の項と $\omega_{Y,X}$ の $-Z\,g(Y,X)$ の項も打ち消し合う。$\omega_{X,Y}$ の $-g([X,Z],Y)$ の項と $\omega_{Y,X}$ の $-g([X,Z],Y)$ の項、$\omega_{X,Y}$ の $-g([Y,Z],X)$ の項と $\omega_{Y,X}$ の $-g([Y,Z],X)$ の項もそれぞれ打ち消し合う。残るのは括弧の項 $g([X,Y],Z)-g([Y,X],Z)=2g([X,Y],Z)$ だけであるから、$2\bigl(\omega_{X,Y}(Z)-\omega_{Y,X}(Z)\bigr)=2g([X,Y],Z)$、すなわち $2g(\nabla_XY-\nabla_YX-[X,Y],Z)=0$ である。$Z$ は任意で $g$ は非退化なので $\nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y]$ である。
計量的であること:$\omega_{X,Y}(Z)+\omega_{X,Z}(Y)$ を計算すると、$Y\,g(Z,X)$ と $-Y\,g(X,Z)$、$-Z\,g(X,Y)$ と $Z\,g(Y,X)$、$g([X,Y],Z)$ と $-g([X,Y],Z)$、$-g([X,Z],Y)$ と $g([X,Z],Y)$、$-g([Y,Z],X)$ と $-g([Z,Y],X)$ がそれぞれ打ち消し合い、$\frac12\bigl(X\,g(Y,Z)+X\,g(Z,Y)\bigr)=X\,g(Y,Z)$ が残る。よって $g(\nabla_XY,Z)+g(Y,\nabla_XZ)=X\,g(Y,Z)$ である。$\square$

Christoffel 記号の公式

局所座標 $(x^i)$ に関し、$g_{ij}:=g(\partial_i,\partial_j)$、$(g^{ij})$ をその逆行列とすると、リーマン接続の接続係数(Christoffel 記号)は
$$ \Gamma^k_{ij}=\frac12g^{km}\bigl(\partial_ig_{jm}+\partial_jg_{im}-\partial_mg_{ij}\bigr) $$
で与えられる。特に $\Gamma^k_{ij}=\Gamma^k_{ji}$ である。

lem-riem-conn-koszul で $X=\partial_i$、$Y=\partial_j$、$Z=\partial_m$ とおく。座標ベクトル場どうしの Lie 括弧は $0$ なので
$$ 2g(\nabla_i\partial_j,\partial_m)=\partial_ig_{jm}+\partial_jg_{mi}-\partial_mg_{ij} $$
である。左辺は $2\Gamma^l_{ij}g_{lm}$ であるから、両辺に $g^{km}$ を掛けて $m$ について和をとれば主張の式を得る。右辺は $i,j$ について対称である。$\square$

接続係数の座標変換

接続 $\nabla$ の2つの局所座標 $(x^i)$、$(y^a)$ に関する接続係数をそれぞれ $\Gamma^k_{ij}$、$\tilde\Gamma^c_{ab}$ とすると、両座標の共通の定義域上で
$$ \tilde\Gamma^c_{ab}=\frac{\partial y^c}{\partial x^k}\left(\frac{\partial x^i}{\partial y^a}\frac{\partial x^j}{\partial y^b}\Gamma^k_{ij}+\frac{\partial^2x^k}{\partial y^a\partial y^b}\right) $$
が成り立つ。

$\partial/\partial y^b=\dfrac{\partial x^j}{\partial y^b}\partial_j$ であるから、接続の性質により
$$ \nabla_{\partial/\partial y^a}\frac{\partial}{\partial y^b}=\frac{\partial x^i}{\partial y^a}\nabla_i\Bigl(\frac{\partial x^j}{\partial y^b}\partial_j\Bigr)=\frac{\partial^2x^k}{\partial y^a\partial y^b}\partial_k+\frac{\partial x^i}{\partial y^a}\frac{\partial x^j}{\partial y^b}\Gamma^k_{ij}\partial_k $$
である。$\partial_k=\dfrac{\partial y^c}{\partial x^k}\dfrac{\partial}{\partial y^c}$ を代入して $\partial/\partial y^c$ の係数を比べればよい。$\square$

接続係数が消える座標

多様体 $M$ 上の接続 $\nabla$ について、次は同値である。

  1. $\nabla$ は捩れがない。
  2. 任意の点 $p\in M$ に対し、$p$ のまわりの局所座標 $(y^a)$ で、$p$ において接続係数がすべて消える($\tilde\Gamma^c_{ab}(p)=0$)ものが存在する。
  1. ⇒ (1):$p\in M$ をとり、(2) の座標をとる。def-riem-conn-torsion より $T^\nabla$ のこの座標に関する成分は $\tilde\Gamma^c_{ab}(p)-\tilde\Gamma^c_{ba}(p)=0$ であるから、$T^\nabla$ の $p$ における値は $0$ である。$T^\nabla$ はテンソル場なので(prop-riem-conn-torsion-tensorial)、これは座標によらない主張である。$p$ は任意なので $T^\nabla=0$ である。
  2. ⇒ (2):$p$ のまわりの局所座標 $(x^i)$ で $x^i(p)=0$ となるものをとり、定数 $c^k_{ij}:=\Gamma^k_{ij}(p)$ とおく。捩れがないので $c^k_{ij}=c^k_{ji}$ である。新しい関数 $y^1,\dots,y^n$ を
    $$ y^k:=x^k+\frac12c^k_{ij}x^ix^j $$
    で定めると、$\partial y^k/\partial x^i=\delta^k_i+c^k_{ij}x^j$ は $p$ で単位行列なので、逆写像定理(Mat88)により $(y^a)$ は $p$ のまわりの局所座標である。$x^k$ を $y$ の関数とみると、$x^k=y^k-\frac12c^k_{ij}y^iy^j+(y\text{ について 3 次以上の項})$ であり、$p$ において $\partial x^i/\partial y^a=\delta^i_a$、$\partial^2x^k/\partial y^a\partial y^b=-\frac12(c^k_{ab}+c^k_{ba})=-c^k_{ab}$ である($c^k_{ij}$ の対称性を用いた)。したがって lem-riem-conn-transformation より
    $$ \tilde\Gamma^c_{ab}(p)=\delta^c_k\bigl(\delta^i_a\delta^j_b\,c^k_{ij}-c^k_{ab}\bigr)=c^c_{ab}-c^c_{ab}=0 $$
    である。$\square$
接続係数が恒等的に消える座標

リーマン多様体 $(M,g)$ の連結な座標近傍 $(U,(x^i))$ に関して、次は同値である。

  1. $U$ 上でリーマン接続の Christoffel 記号がすべて $0$ である。
  2. $g_{ij}$ が $U$ 上で定数関数である。
  1. ⇒ (1):prop-riem-conn-christoffel の右辺は $g_{ij}$ の偏導関数だけからなるので $0$ である。
  2. ⇒ (2):計量条件を $X=\partial_i$、$Y=\partial_j$、$Z=\partial_k$ に適用すると
    $$ \partial_ig_{jk}=g(\nabla_i\partial_j,\partial_k)+g(\partial_j,\nabla_i\partial_k)=\Gamma^m_{ij}g_{mk}+\Gamma^m_{ik}g_{jm}=0 $$
    である。一般に偏微分がすべて $0$ の関数は各連結成分上で定数であるから、$U$ が連結であることより $g_{ij}$ は $U$ 上で定数である。$\square$

補足

平行なベクトル場の長さと角

計量条件の幾何学的意味は次のとおりである。ベクトル場 $Y,Z$ がベクトル場 $X$ の方向に平行、すなわち $\nabla_XY=\nabla_XZ=0$ であるとする。これは直感的には、$Y,Z$ が $X$ の積分曲線に沿ってリーマン接続の意味で平行移動して作られていることを意味する。このとき計量条件から
$$ X\,g(Y,Z)=g(\nabla_XY,Z)+g(Y,\nabla_XZ)=0,\qquad X\,g(Y,Y)=2g(\nabla_XY,Y)=0 $$
であり、内積 $g(Y,Z)$ と長さ $\sqrt{g(Y,Y)}$、したがって $Y,Z$ のなす角は $X$ の積分曲線に沿って一定である。すなわちリーマン接続の平行移動は、Euclid 幾何の平行移動と同じく、ベクトルの長さと角を保つ(doCarmo92 Ch. 2、Lee18 Ch. 5)。

擬 Riemann 計量への拡張と流儀

本記事の定義と証明では、$g$ の正定値性を用いた箇所はなく、各点での非退化性($g(v,w)=0$ がすべての $w$ について成り立つなら $v=0$)だけを用いている。したがってリーマン接続の存在と一意性、Koszul 公式、Christoffel 記号の公式は擬 Riemann 多様体(Lorentz 多様体、時空)に対してもそのまま成り立つ(ONe83 Ch. 3、Wald84 Ch. 3)。名称は文献により「リーマン接続」(doCarmo92 Ch. 2)と「Levi-Civita 接続」(Lee18 Ch. 5)に分かれるが、同じ対象を指す。本記事では両者を同義とする。Christoffel 記号の添字の順序 $\Gamma^k_{ij}$(下添字の第1が微分方向)は文献により入れ替わることがあるが、リーマン接続では $i,j$ について対称なので違いは生じない。

微分幾何の他の概念との関係

リーマン接続は、曲線に沿う平行移動と測地線($\nabla_{\dot\gamma}\dot\gamma=0$ を満たす曲線)を定め、その共変微分の交換子からリーマン曲率テンソル $R(X,Y)Z=\nabla_X\nabla_YZ-\nabla_Y\nabla_XZ-\nabla_{[X,Y]}Z$ が定義される。prop-riem-conn-vanishing-coefficients の座標を計量に適合するようにとったものが正規座標であり、prop-riem-conn-constant-metric は「接続係数が近傍全体で消える」ことが計量が平坦であることに対応することを示している。接続をテンソル場一般へ拡張する規則と、Christoffel 記号がテンソルの成分ではないことについては テンソル解析 を参照。

関連項目

参考文献

[1]
Manfredo P. do Carmo, Riemannian Geometry, Mathematics: Theory & Applications, Birkhäuser, 1992, Ch. 2(Affine Connections; Riemannian Connections、定理 3.6 Levi-Civita)
[2]
John M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds, Graduate Texts in Mathematics 176, Springer, 2018, Ch. 4(Connections)、Ch. 5(The Levi-Civita Connection、定理 5.10 基本定理・Koszul 公式)
[4]
Robert M. Wald, General Relativity, University of Chicago Press, 1984, Ch. 3(Curvature: 接続と Christoffel 記号)、Ch. 6(Schwarzschild 解)
[5]
松本幸夫, 多様体の基礎, 基礎数学 5, 東京大学出版会, 1988, 逆関数定理・局所座標・ベクトル場と括弧積

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