Euclid幾何学

同義語:Euclidean geometryユークリッド幾何学Euclid幾何Euclid平面

概要

Euclid幾何学(Euclidean geometry)とは、平行線公準が成り立つ平面や空間の幾何で、長さと角を実数で測る中立平面に平行線公準を加えた Euclid 平面、Hilbert の公理系のすべての公理、あるいは座標平面 $\mathbb R^n$ と合同変換の群のいずれからも組み立てられる。座標平面は中立平面の公理と平行線公準をすべて満たすので Euclid 平面の模型であり、中立平面では「どの三角形にも外接円がある」ことが平行線公準と同値になる。三角形の内角の和が $180^\circ$ であること、三平方の定理、合同でない相似な三角形の存在などとともに、平行線公準が崩れる非Euclid幾何学と比べたときの目印になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Hilbertの公理系, 平行線公準, Euclid空間

平行線がただ 1 本の幾何

Euclid 幾何学 は、中学・高校で学ぶ普通の平面と空間の幾何である。三角形の内角の和は $180^\circ$ で、三平方の定理が成り立ち、図形を拡大した相似な図形がある。歴史的には Euclid『原論』の 5 つの公準から組み立てられた幾何で(Hit18 §1.2、pp. 3–4)、その第 5 公準(平行線公準)が成り立つことが、ほかの幾何との境目になる。
Euclid 幾何学の立て方には、大きく 3 つある。

  1. 公理から:Hilbertの公理系 の公理 I〜V をすべて満たすものとする。
  2. 長さと角の公理から:長さと角を実数で測る 平行線公準 の中立平面で、平行線公準が成り立つものとする。
  3. 座標から:座標平面 $\mathbb R^2$(一般に Euclid空間 $\mathbb R^n$)を舞台とし、距離を変えない変換(合同変換)で変わらない性質を調べる。
    この記事では 2 の立場で Euclid 平面を定義し、次のことを証明する。
  4. 座標平面 $\mathbb R^2$ は Euclid 平面である。つまり 2 の公理系には模型があり、3 の立場の平面は 2 の意味でも Euclid 平面である。→ thm-eg-cartesian
  5. 中立平面で、「どの三角形にも外接円がある」ことは平行線公準と同値である。→ thm-eg-circumcircle
    2 は、平行線公準が「平行線」という言葉を使わない姿でも現れることを示す例である。平行線公準 では、内角の和・長方形・相似な三角形が平行線公準と同じ強さであることを示した。外接円もその仲間に加わる。

定義

Euclid 平面

平行線公準 の定義「中立平面」の公理 (A1)〜(A5) を満たす平面で、同 定義「平行線公準と長方形」の平行線公準(直線 $\ell$ の上にない点を通り $\ell$ に平行な直線はただ 1 本)が成り立つものを Euclid 平面 という。Euclid 平面で成り立つ事実の全体を(平面の)Euclid 幾何学 という。

円と外接円

中立平面の点 $O$ と実数 $r>0$ について、$OX=r$ となる点 $X$ の全体を中心 $O$、半径 $r$ の 円 という。三角形 $ABC$ の 3 つの頂点をすべて通る円を、三角形の 外接円 という。同じ点 $X$ については $XX=0$ と約束する。相異なる 2 点 $A$、$C$ について、線分 $AC$ の中点 $M$($AM=MC=\frac12AC$ となる線分上の点)を通り直線 $AC$ に垂直な直線を、線分 $AC$ の 垂直二等分線 という。

中点は (A3) により、半直線 $AC$ の上で $A$ からの長さが $\frac12AC$ の点として、ただ 1 つ決まる。$M$ で直線 $AC$ に垂直な直線は、(A4) によりただ 1 本である。
座標の立場では、Euclid 幾何学は次のように言い表される。$\mathbb R^n$ の 2 点 $x$、$y$ の距離を $|x-y|$ とし、距離を変えない全単射 $\mathbb R^n\to\mathbb R^n$ を 合同変換 という。合同変換は、直交行列 $A$ とベクトル $b$ を使って $x\mapsto Ax+b$ と書けるものに限る(等長写像 の定理「Euclid 空間の等長埋め込み」)。合同変換の全体は合成について群をなし、これを $n$ 次元の Euclid 群 という。図形の性質のうち合同変換で変わらないもの(長さ・角・面積・平行であることなど)を調べるのが、座標による Euclid 幾何学である。空間をそこに働く変換の群とともに考え、変換で変わらない性質を幾何学の対象とする考え方は、Klein の Erlangen プログラムとよばれる(Hit18 §1.2、p. 6)。平面の合同変換が鏡映 3 回以内の合成であることは 平面の合同変換の分類 の定理「3 鏡映定理」で示している。

主定理 1:座標平面は Euclid 平面である

$\mathbb R^2$ の内積を $\langle x,y\rangle=x_1y_1+x_2y_2$、長さを $|x|=\sqrt{\langle x,x\rangle}$ とし、次のように決める。

  • 直線 は $\{P+tv\mid t\in\mathbb R\}$($v\ne0$)の形の集合。
  • $B$ が $A$ と $C$ の 間にある とは、$B=(1-s)A+sC$ となる $0< s< 1$ があることとする。
  • 線分 $AB$ の 長さ は $|B-A|$。
  • 1 本の直線の上にない $X$、$V$、$Y$ の角 $\angle XVY$ は、$x=X-V$、$y=Y-V$ として
    $$ \cos\angle XVY=\frac{\langle x,y\rangle}{|x|\,|y|},\qquad 0< \angle XVY< \pi $$
    で決まる値($\pi$ ラジアンを $180^\circ$ とする)。
    Cauchy–Schwarz の不等式により右辺は $-1$ 以上 $1$ 以下で、等号は $x$ と $y$ が平行なとき、つまり 3 点が 1 本の直線の上にあるときに限る(Euclid空間 の補題「Lagrange の恒等式と Cauchy–Schwarz の不等式」)。よって角は $0$ と $\pi$ の間のただ 1 つの値に決まる。
座標平面は Euclid 平面である

上の約束で、$\mathbb R^2$ は 平行線公準 の中立平面の公理 (A1)〜(A5) を満たし、平行線公準も成り立つ。とくに $\mathbb R^2$ は Euclid 平面である。

直線を 1 次式で、角を単位ベクトルの回転で書く

直線 $\{P+tv\}$ は、$v$ に垂直な $n\ne0$ を使って $\{x\mid\langle n,x\rangle=\langle n,P\rangle\}$ とも書ける(2 次元なので $v$ に垂直なベクトルは $n$ の定数倍に限る)。単位ベクトル $u=(u_1,u_2)$ について $u^\perp=(-u_2,u_1)$ とおくと、$u$、$u^\perp$ は正規直交基底で、どの単位ベクトル $w$ も、$(\langle w,u\rangle,\langle w,u^\perp\rangle)$ が単位円の点であることから、ただ 1 つの $\varphi\in(-\pi,\pi]$ で $w=\cos\varphi\,u+\sin\varphi\,u^\perp$ と書ける。
段 1((A1))。相異なる 2 点 $P$、$Q$ は直線 $\{P+t(Q-P)\}$ の上にある。直線 $\{R+tw\}$ が $P$、$Q$ を通れば、$Q-P$ は $w$ の 0 でない定数倍なので、この直線は $\{P+t(Q-P)\}$ に等しい。直線には無数の点があり、$(0,0)$、$(1,0)$、$(0,1)$ は 1 本の直線の上にない。
段 2((A2))。直線 $\{P+tv\}$ の点を媒介変数 $t$ で表すと、$B=(1-s)A+sC$ は $t_B=(1-s)t_A+st_C$ と同じことなので、「$B$ が $A$ と $C$ の間にある」は「$t_B$ が $t_A$ と $t_C$ の間にある」と同値である。相異なる 3 つの実数のうち、ほかの 2 つの間にあるものはちょうど 1 つである。次に、直線 $\ell=\{x\mid f(x)=0\}$、$f(x)=\langle n,x\rangle-c$ について、$\ell$ の側を $\{f>0\}$ と $\{f< 0\}$ とする。$f\bigl((1-s)A+sC\bigr)=(1-s)f(A)+sf(C)$ は $s$ の 1 次式なので、$f(A)$ と $f(C)$ が同符号なら $0\le s\le1$ で $0$ にならず、異符号ならちょうど 1 つの $0< s< 1$ で $0$ になる。よって同じ側の 2 点を結ぶ線分は $\ell$ と交わらず、反対側の 2 点を結ぶ線分は $\ell$ と交わる。
段 3((A3))。長さ $|B-A|$ は正である。$X\ne V$ のとき $u=\dfrac{X-V}{|X-V|}$ とおくと、直線 $VX$ の点 $V+su$ のうち、$V$ が $V+su$ と $X$ の間にないのは $s\ge0$ のときなので、半直線 $VX$ は $\{V+su\mid s\ge0\}$ である。その上で $V$ からの長さが $x>0$ の点は $V+xu$ だけである。$B=(1-s)A+sC$ なら $|B-A|=s|C-A|$、$|C-B|=(1-s)|C-A|$ で、和は $|C-A|$ である。
段 4((A4) の角の作図と和)。半直線 $VX$ の向きを $u$ とし、直線 $VX$ の与えられた側が $\{P\mid\langle n,P-V\rangle>0\}$ となるように $n=\pm u^\perp$ を選ぶ。$P\ne V$ について $P-V=r(\cos\varphi\,u+\sin\varphi\,n)$($r>0$、$-\pi<\varphi\le\pi$)と書くと、$P$ がその側にあることと $0<\varphi<\pi$ は同値で、そのとき $\cos\angle XVP=\cos\varphi$ から $\angle XVP=\varphi$ である。よって大きさ $\theta$ の角を作る半直線は $\{V+s(\cos\theta\,u+\sin\theta\,n)\mid s\ge0\}$ ただ 1 本である。
角の和を示すため、与えられた側として $Y$ のある側をとり、半直線 $VZ$ が角 $\angle XVY$ の内側にあるとする。$Z$ もこの側にある。$\angle XVY=\beta$、$\angle XVZ=\gamma$ とおく。直線 $VY$ は $m=-\sin\beta\,u+\cos\beta\,n$ を法線とし、
$$ \langle m,X-V\rangle=-|X-V|\sin\beta< 0,\qquad\langle m,Z-V\rangle=|Z-V|\sin(\gamma-\beta) $$
である。$Z$ は直線 $VY$ について $X$ と同じ側にあるので $\sin(\gamma-\beta)< 0$、$-\pi<\gamma-\beta<\pi$ から $\gamma<\beta$ である。このとき $\cos\angle ZVY=\cos\beta\cos\gamma+\sin\beta\sin\gamma=\cos(\beta-\gamma)$ で $0<\beta-\gamma<\pi$ なので $\angle ZVY=\beta-\gamma$、つまり $\angle XVZ+\angle ZVY=\angle XVY$ である。$V$ が $Y$ と $Y'$ の間にあれば $Y'-V$ は $Y-V$ の負の定数倍なので、$\cos\angle XVY'=-\cos\beta$ から $\angle XVY'=\pi-\beta$ で、一直線をなす 2 つの角の和は $\pi$ である。
段 5((A4) の最後の文)。$Y$ がこの側にあり $\angle XVY=\beta$、$Z$ が反対側にあり $\angle XVZ=\gamma$、$\beta+\gamma<\pi$ とする。段 4 の議論を $-n$ に使うと $Z-V=|Z-V|(\cos\gamma\,u-\sin\gamma\,n)$ である。直線 $VY$ の法線 $m_Y=-\sin\beta\,u+\cos\beta\,n$ と直線 $VZ$ の法線 $m_Z=\sin\gamma\,u+\cos\gamma\,n$ について
$$ \langle m_Y,u\rangle=-\sin\beta,\quad\langle m_Y,Z-V\rangle=-|Z-V|\sin(\beta+\gamma),\quad\langle m_Z,u\rangle=\sin\gamma,\quad\langle m_Z,Y-V\rangle=|Y-V|\sin(\beta+\gamma) $$
で、$0<\beta+\gamma<\pi$ から $\sin(\beta+\gamma)>0$ である。よって $X$ は直線 $VY$ について $Z$ と同じ側に、直線 $VZ$ について $Y$ と同じ側にあり、半直線 $VX$ は角 $\angle YVZ$ の内側にある($\beta+\gamma\ne\pi$ なので $Y$、$V$、$Z$ は 1 本の直線の上にない)。
段 6((A5))。三角形 $ABC$ で $b=B-A$、$c=C-A$ とおくと
$$ |B-C|^2=|b|^2+|c|^2-2\langle b,c\rangle=AB^2+AC^2-2\,AB\cdot AC\cos\angle A $$
なので、2 辺とその間の角から残りの辺が決まる。さらに $\cos\angle B=\dfrac{AB^2+BC^2-AC^2}{2\,AB\cdot BC}$ のように、各角の余弦は 3 辺の長さで決まる。よって 2 辺とその間の角がそれぞれ等しい 2 つの三角形は、残りの辺と角もそれぞれ等しい。
段 7(平行線公準)。直線 $\ell=\{\langle n,x\rangle=c\}$ と $\ell$ の上にない点 $P$ をとる。$P$ を通る直線は $\{\langle n',x\rangle=\langle n',P\rangle\}$($n'\ne0$)の形である。$n'$ が $n$ の定数倍でなければ、$\langle n,x\rangle=c$、$\langle n',x\rangle=\langle n',P\rangle$ は係数行列が正則な連立 1 次方程式なので解があり、2 直線は交わる。$n'$ が $n$ の定数倍なら直線は $\{\langle n,x\rangle=\langle n,P\rangle\}$ で、$\langle n,P\rangle\ne c$ なので $\ell$ と交わらない。よって $P$ を通る $\ell$ の平行線はただ 1 本である。$\square$

平行線公準 の例「中立平面の例」の 1 で述べた座標平面の性質は、thm-eg-cartesian で示されたことになる。この定理から、平面の三角形の内角の和は $180^\circ$ で(平行線公準 の定理「平行線公準の同値な言い換え」)、合同でない相似な三角形があるなど、Euclid 平面のすべての定理が座標平面で成り立つ。

主定理 2:外接円の存在と平行線公準

座標平面では、一直線上にない 3 点を通る円がただ 1 つある。中立平面ではこれが当たり前でなく、平行線公準と同じ強さの主張であることを示す。Hil02 は、平行線の公理と合同の公理から 3 点を通る円が作れることを述べている(§7、p. 15)。ここでは逆向きも含めて証明する。
以下、中立平面では 平行線公準 の節「中立平面の公理」で使ってよいとした事実(三角形の合同条件 SAS・ASA・SSS、直線外の点から下ろす垂線の存在と一意性、錯角が等しい 2 直線は交わらないこと)を使う。

垂直二等分線は 2 点から等距離の点の全体

中立平面の相異なる 2 点 $A$、$C$ について、$OA=OC$ となる点 $O$ の全体は、線分 $AC$ の垂直二等分線である。

中点で合同な三角形を作る

$M$ を線分 $AC$ の中点、$p$ を垂直二等分線とする。
段 1($p$ の点は等距離)。$M$ は $MA=MC$ を満たす。$O\in p$、$O\ne M$ なら、$O$ は直線 $AC$ の上にない($p$ と直線 $AC$ の共有点は $M$ だけ)。三角形 $OMA$ と $OMC$ で、$OM$ は共通、$MA=MC$、$\angle OMA=\angle OMC=90^\circ$ なので、(A5) により $OA=OC$ である。
段 2(等距離の点は $p$ の上)。$OA=OC$ とする。$O$ が直線 $AC$ の上にあれば、$O$ は $A$ と $C$ の間にある。実際、$O=A$ なら $OA=0< AC=OC$、$O=C$ なら $OC=0< AC=OA$ で仮定に反する。また、$A$ が $O$ と $C$ の間にあれば (A3) により $OC=OA+AC>OA$、$C$ が $A$ と $O$ の間にあれば $OA>OC$ となって、どちらも仮定に反する。よって $OA+OC=AC$、$OA=\frac12AC$ で、$O$ は半直線 $AC$ の上で $A$ からの長さが $\frac12AC$ の点、つまり $M$ である。$O$ が直線 $AC$ の上になければ、三角形 $OMA$ と $OMC$ は 3 辺がそれぞれ等しいので、SSS により $\angle OMA=\angle OMC$ である。2 つの角は一直線をなすので和は $180^\circ$ で、どちらも $90^\circ$ である。よって直線 $OM$ は $M$ で直線 $AC$ に垂直で、$p$ に一致し、$O\in p$ である。$\square$

直線 $n$ と $n$ の上にない点 $A$ について、$A$ から $n$ に下ろした垂線の足を $F$ とし、半直線 $AF$ の上で $F$ の先に $FC=FA$ となる点 $C$ をとる。$C$ を $A$ の $n$ に関する 鏡映 という。$F$ は線分 $AC$ の中点で、$n$ は $F$ で直線 $AC$ に垂直なので、$n$ は線分 $AC$ の垂直二等分線である。

外接円の存在は平行線公準と同値

中立平面で、次の 2 つは同値である。

  1. 平行線公準が成り立つ。
  2. どの三角形にも外接円がある。
    1 が成り立つとき、外接円は三角形ごとにただ 1 つである。
2 本の垂直二等分線が交わるか

段 1(1 ⇒ 2)。三角形 $ABC$ の辺 $AB$、$BC$ の垂直二等分線を $p$、$q$ とし、中点を $M$、$N$ とする。$p$ と $q$ が点 $O$ を共有すれば、lem-eg-bisector により $OA=OB=OC$ で、中心 $O$、半径 $OA$ の円が外接円である。
$p$ と $q$ が共有点をもたないとして矛盾を導く。直線 $AB$ が $q$ と交わらないとすると、$M$ を通り $q$ に平行な直線が $p$ と直線 $AB$ の 2 本あることになり($p$ は $AB$ に垂直なので $p\ne AB$)、平行線公準に反する。よって直線 $AB$ は $q$ と点 $X$ で交わる。$p$ と $q$ は平行で、直線 $AB$ はその両方と交わる横断線であり、$M$ で $p$ と直角に交わる。平行線の錯角は等しい(平行線公準(高校数学) の系「平行線の錯角は等しい」)ので、直線 $AB$ は $X$ で $q$ に垂直である。一方、直線 $BC$ も $N$ で $q$ に垂直である。$B$ は $q$ の上にない(lem-eg-bisector により $q$ の点は $B$ と $C$ から等距離だが、$BB=0\ne BC$)。$B$ から $q$ に下ろす垂線はただ 1 本なので、直線 $AB$ と直線 $BC$ は一致し、$A$、$B$、$C$ が 1 本の直線の上にあることになって矛盾する。
段 2(一意性)。外接円の中心 $O$ は $OA=OB=OC$ を満たすので、lem-eg-bisector により $p$ と $q$ の両方の上にある。段 1 と同じ議論で $p\ne q$($p=q$ なら直線 $AB$ と $BC$ はどちらも $B$ を通り $p$ に垂直になる)なので、共有点は高々 1 つである。半径は $OA$ で決まる。
段 3(2 ⇒ 1)。直線 $\ell$ と $\ell$ の上にない点 $P$ をとる。$P$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $Q$、$P$ を通り直線 $PQ$ に垂直な直線を $m$ とする。$m$ と $\ell$ はどちらも直線 $PQ$ に垂直で錯角が等しいので、$m$ は $\ell$ に平行である。$P$ を通る $m$ 以外の直線 $n$ が $\ell$ と交わることを示せばよい。$n$ が直線 $PQ$ なら $Q$ で交わるので、$n\ne PQ$ とする。
線分 $PQ$ の中点を $A$ とする。$A$ は $\ell$ の上にも $n$ の上にもない(直線 $PQ$ と $\ell$ の共有点は $Q$、$n$ との共有点は $P$ だけ)。$A$ の $\ell$ に関する鏡映を $B$、$n$ に関する鏡映を $C$ とする。直線 $AQ=PQ$ は $\ell$ に垂直なので、$B$ は直線 $PQ$ の上にあり、$\ell$ は線分 $AB$ の垂直二等分線である。$n$ は線分 $AC$ の垂直二等分線である。
$A$、$B$、$C$ は 1 本の直線の上にない。実際、$C$ が直線 $PQ$ の上にあれば、直線 $AC$ は直線 $PQ$ で、$n$ は $P$ で直線 $PQ$ に垂直になるが、$P$ で直線 $PQ$ に垂直な直線は $m$ だけなので $n=m$ となり、仮定に反する。
仮定 2 により三角形 $ABC$ に外接円があり、その中心 $O$ は $OA=OB=OC$ を満たす。lem-eg-bisector により、$OA=OB$ から $O\in\ell$、$OA=OC$ から $O\in n$ である。よって $n$ は $\ell$ と $O$ で交わる。$P$ を通る $\ell$ の平行線は $m$ だけである。$\square$

段 3 の作図は、平行線公準が崩れる平面では、$\ell$ と交わらない $n$ について 3 点 $A$、$B$、$C$ が外接円をもたないことを示している。具体的な例を挙げる。

反例:外接円のない双曲三角形

双曲幾何学 の上半平面 $\mathbb H$ で、3 点 $A=-1+i$、$B=i$、$C=1+i$ を考える。
$A$ と $C$ を通る双曲直線は、実軸の上に中心をもち $A$、$C$ を通る半円で、中心は $0$、半径は $|1+i|=\sqrt2$ である。$|B|=1\ne\sqrt2$ なので $B$ はこの双曲直線の上になく、$A$、$B$、$C$ は双曲三角形をなす。
双曲平面の円は普通の円である。円板モデルでは 双曲幾何学 の例「双曲平面の円」で示されており、円板モデルから $\mathbb H$ に戻す 1 次分数変換は円を円か直線に移す(Möbius変換 の定理「円は円に移る」)。双曲的な円は $\mathbb H$ の中の有界な集合なので、その像は直線ではなく円である。ところが $A$、$B$、$C$ は普通の直線 $\operatorname{Im}z=1$ の上にあり、一直線上の 3 点を通る普通の円はない(lem-eg-bisector により、中心は線分 $AB$、$BC$ の普通の垂直二等分線 $\operatorname{Re}z=-\frac12$、$\operatorname{Re}z=\frac12$ の両方の上にあることになるが、この 2 直線は交わらない)。よってこの双曲三角形には外接円がない。

外接円の計算

座標平面の $A=(0,0)$、$B=(4,0)$、$C=(0,2)$ では、辺 $AB$ の垂直二等分線は $x=2$、辺 $AC$ の垂直二等分線は $y=1$ なので、外接円の中心は $(2,1)$、半径は $\sqrt{2^2+1^2}=\sqrt5$ である。$\angle A$ が直角なので、中心は斜辺 $BC$ の中点 $(2,1)$ に一致する。

Euclid 幾何学に特有の事実

平行線公準を使う事実と、それが崩れる双曲平面での姿を並べる。

Euclid 平面での事実双曲平面では記事
三角形の内角の和は $180^\circ$どれも $180^\circ$ より小さい平行線公準
長方形があるない平行線公準
合同でない相似な三角形がある角が等しければ合同平行線公準
どの三角形にも外接円があるないことがあるthm-eg-circumcircle
直角三角形で $c^2=a^2+b^2$$\cosh c=\cosh a\cosh b$三平方の定理、双曲幾何学 の定理「双曲幾何の余弦定理」
半径 $r$ の円周は $2\pi r$$2\pi\sinh r$双曲幾何学 の例「双曲平面の円」

中立平面では、内角の和・長方形・相似は 1 つの図形で成り立てば平行線公準が従い(平行線公準 の主定理)、外接円はすべての三角形で成り立てば平行線公準が従う(thm-eg-circumcircle)。双曲平面の三平方の定理は、余弦定理で直角 $\gamma=90^\circ$ とおけば得られる。

例と反例

thm-eg-circumcircle と lem-eg-bisector の仮定を 1 つずつ外す。

外す条件反例成り立たなくなること
平行線公準上半平面の 3 点 $-1+i$、$i$、$1+i$(ex-eg-no-circumcircle)外接円の存在
3 点が一直線上にない座標平面の $(0,0)$、$(1,0)$、$(2,0)$3 点を通る円の存在
中立平面の (A5)(SAS)座標平面で長さを $\lvert x\rvert+\lvert y\rvert$ で測る平面2 点から等距離の点の全体が直線であること

最後の行の平面は (A1)〜(A4) を満たす(平行線公準 の例「反例:距離 $|x|+|y|$ の平面」)。$(0,0)$ と $(1,1)$ から等距離の点の全体は、$|x|+|y|=|x-1|+|y-1|$ を満たす点の全体で、たとえば $x\ge1$、$y\le0$ の部分の点 $(x,y)$ はすべてこれを満たす(両辺とも $x-y$)。等距離の点が平面の広い部分を占め、lem-eg-bisector が成り立たない。

関連項目

参考文献

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