Tateのアルゴリズム

同義語:Tate のアルゴリズムTate's algorithm

概要

Tateのアルゴリズム(Tate's algorithm)とは、剰余体が完全体である離散付値環の分数体上の楕円曲線を整係数の Weierstrass 方程式で与えたとき、座標変換と係数の付値の判定を順に行って、還元の小平の記号・導手の指数・局所指数 $[E(K):E_0(K)]$ を求め、方程式が極小かどうかも判定する手順である。特異点を原点に移す段と乗法的還元の判定は初等的に示せ、最後まで進んだ方程式は極小でないので、係数を割って極小方程式が得られる。剰余標数が $5$ 以上なら型は判別式の付値でほぼ決まるが、$2,3$ ではそうならず、このアルゴリズムが必要になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 楕円曲線, 半安定還元, Néronモデル, 離散付値環

Tate のアルゴリズム(Tate's algorithm)は、離散付値環 $R$ の分数体 $K$ 上の楕円曲線を $R$ 係数の Weierstrass 方程式で与えたとき、係数の付値を順に調べるだけで、還元の型を表す小平の記号(小平邦彦(Kunihiko Kodaira)にちなむ)・導手の指数・局所指数 $[E(K):E_0(K)]$ を求め、あわせて方程式が極小かどうかを判定する手順である。J. Tate が Cassels への手紙の形で発表し、論文集 Modular Functions of One Variable IV(Lecture Notes in Mathematics 476、1975)に収められた(Cre97 §3.2、p. 65 と同書の文献表の 65 番)。
Néronモデル の特殊ファイバーの形は小平と Néron による分類で 10 種類に尽くされるが、その型を決めるには本来、極小正則モデルを特異点の爆発で作る必要がある。Tate のアルゴリズムはこの爆発の計算を、座標変換と「どの係数が $\pi$ の何乗で割れるか」の判定に置き換えたものである。
この記事では、アルゴリズムの各段を述べ、最初の 3 段(特異点の移動、乗法的還元の判定と分裂の判定)、非極小の判定、剰余標数が $2,3$ でないときの極小性の判定法を完全に証明する。各段が正しい小平の記号を与えることは、この記事では証明しない(所在を挙げる)。

設定と記号

$R$ を離散付値環、$K$ をその分数体、$v$ を $v(\pi)=1$ と正規化した付値、$\pi$ を一意化元、$k=R/\pi R$ を剰余体とする。$k$ は完全体と仮定する。 $E/K$ の Weierstrass 方程式
$$ y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6\qquad(a_i\in R) $$
について、$b_2,b_4,b_6,b_8,c_4,c_6,\Delta$ を 楕円曲線 の定義「Weierstrass方程式と判別式・$j$ 不変量」のとおりに定める。たとえば $b_2=a_1^2+4a_2$、$b_4=a_1a_3+2a_4$、$b_6=a_3^2+4a_6$、$b_8=a_1^2a_6-a_1a_3a_4+4a_2a_6+a_2a_3^2-a_4^2$、$c_4=b_2^2-24b_4$ である。
座標変換 $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'+su^2x'+t$($u\in K^\times$、$r,s,t\in K$)で方程式は再び Weierstrass 方程式になり、新しい係数は
$$ ua_1'=a_1+2s,\quad u^2a_2'=a_2-sa_1+3r-s^2,\quad u^3a_3'=a_3+ra_1+2t, $$
$$ u^4a_4'=a_4-sa_3+2ra_2-(t+rs)a_1+3r^2-2st,\quad u^6a_6'=a_6+ra_4+r^2a_2+r^3-ta_3-t^2-rta_1 $$
をみたし、$u^4c_4'=c_4$、$u^6c_6'=c_6$、$u^{12}\Delta'=\Delta$ である(Cre97 (3.1.2)–(3.1.3)、pp. 62–63、Sil09 Table 3.1)。この変換を $T(r,s,t,u)$ と書く。$u=1$、$r,s,t\in R$ の変換は $R$ 係数を保ち、$\Delta$ を変えない。
$R$ 係数の Weierstrass 方程式のうち $v(\Delta)$ が最小のものを 極小(Weierstrass)方程式 という(半安定還元 の定義「極小Weierstrass方程式と還元の型」)。極小方程式は存在し、その $\Delta$ の付値 $v(\Delta_{\min})$ は $E$ だけで決まる。また $a_{i,j}:=a_i/\pi^j$ と書く($\pi^j\mid a_i$ のときに使う)。

アルゴリズムが求めるもの

還元のデータ

$E/K$ の極小正則モデルの特殊ファイバーの $\bar k$ 上の既約成分の数を $m_v$ とし(重複度は数えない)、その形を表す小平の記号(Kodaira symbol)を $\mathrm{I}_n$($n\ge0$)、$\mathrm{II}$、$\mathrm{III}$、$\mathrm{IV}$、$\mathrm{I}_n^*$($n\ge0$)、$\mathrm{IV}^*$、$\mathrm{III}^*$、$\mathrm{II}^*$ のいずれかとする。

  1. 導手の指数 を $f_v:=v(\Delta_{\min})+1-m_v$ とおく。
  2. $R$ が完備のとき、局所指数 を $c_v:=[E(K):E_0(K)]$ とおく。ここで $E_0(K)$ は、極小方程式を $\pi$ を法として還元した曲線の非特異点に還元される点の部分群である。

1 の式は Cre97 p. 65 では導手の指数の定義として採られている。Galois 表現の分岐から定めた導手の指数がこの式に等しいことが Ogg–Saito の公式である(Sil09 Proposition C.16.2、p. 450。この記事では証明しない)。$K$ が有理数体の完備化 $\mathbb{Q}_p$ のとき、$c_v$ は 玉河数 の局所玉河数 $c_p$ である。特殊ファイバーの成分群との関係は Néronモデル の定理「極小正則モデルと極小Weierstrassモデルとの関係」による。

アルゴリズム

以下の手順は Cre97 §3.2(pp. 64–68)の形に従い、剰余標数で場合分けする座標変換の具体的な値は省いて、各段で何を達成するかだけを書く。$n:=v(\Delta)$ とおく。

Tateのアルゴリズム

$R$ 係数の Weierstrass 方程式から始めて、次の段を順に行う。各段の「止まる」では、そこに書いた小平の記号・$f_v$・$c_v$ を出力する。

  1. $n=0$ なら止まる:$\mathrm{I}_0$(良い還元)、$f_v=0$、$c_v=1$。
  2. $u=1$ の変換で、$\pi\mid a_3,a_4,a_6$ となるようにする(還元の特異点を $(0,0)$ に移す)。
  3. $\pi\nmid b_2$ なら止まる:$\mathrm{I}_n$、$f_v=1$。$c_v$ は、$T^2+a_1T-a_2$ が $k$ で根をもてば $n$、もたなければ $n$ が偶数のとき $2$、奇数のとき $1$。
  4. $\pi^2\nmid a_6$ なら止まる:$\mathrm{II}$、$f_v=n$、$c_v=1$。
  5. $\pi^3\nmid b_8$ なら止まる:$\mathrm{III}$、$f_v=n-1$、$c_v=2$。
  6. $\pi^3\nmid b_6$ なら止まる:$\mathrm{IV}$、$f_v=n-2$。$c_v$ は $T^2+a_{3,1}T-a_{6,2}$ が $k$ で根をもてば $3$、もたなければ $1$。
  7. $u=1$ の変換で $\pi\mid a_1,a_2$、$\pi^2\mid a_3,a_4$、$\pi^3\mid a_6$ とし、$P(T):=T^3+a_{2,1}T^2+a_{4,2}T+a_{6,3}$ を $\pi$ を法として考える。$P$ が $\bar k$ で相異なる 3 根をもてば止まる:$\mathrm{I}_0^*$、$f_v=n-4$、$c_v=1+(P\text{ の }k\text{ での根の個数})$。
  8. $P$ がちょうど 2 重根をもてば、2 重根を $T=0$ に移し、2 次式の判別式が $\pi$ で割れなくなるまで座標を $\pi$ 進的に詰める操作を繰り返す。繰り返しの回数から $m\ge1$ が決まり、止まる:$\mathrm{I}_m^*$、$f_v=n-4-m$、$c_v\in\{2,4\}$。
  9. $P$ が 3 重根をもてば、それを $T=0$ に移す(このとき $\pi^2\mid a_3$、$\pi^4\mid a_6$)。$Y^2+a_{3,2}Y-a_{6,4}$ が $\bar k$ で相異なる根をもてば止まる:$\mathrm{IV}^*$、$f_v=n-6$、$c_v$ は根が $k$ にあれば $3$、なければ $1$。
  10. そうでなければ $\pi^3\mid a_3$、$\pi^5\mid a_6$ となるように変換する。$\pi^4\nmid a_4$ なら止まる:$\mathrm{III}^*$、$f_v=n-7$、$c_v=2$。
  11. $\pi^6\nmid a_6$ なら止まる:$\mathrm{II}^*$、$f_v=n-8$、$c_v=1$。
  12. ここまで来たら $\pi^i\mid a_i$($i=1,2,3,4,6$)である。$T(0,0,0,\pi)$ で各 $a_i$ を $\pi^i$ で割り、1 に戻る。
    方程式が極小なら、アルゴリズムは 12 に達する前に止まり、出力は def-tate-algorithm-data の小平の記号・$f_v$ に等しい。$R$ が完備で $k$ が有限体なら、出力の $c_v$ は $[E(K):E_0(K)]$ に等しい。
出典と証明の所在

最後の段落(各段の判定が正しい型を与えること)は、この記事では証明しない。Tate の原論文の主張と、各段の座標変換の具体的な値は Cre97 §3.2(pp. 65–68)にある。小平の記号と成分数・成分群の対応は Sil09 Theorem C.15.2 と Table 15.1(pp. 447–448)にある。8 の繰り返しの詳細は Cre97 pp. 67–68 の手順の 42–64 行目にあり、次の節の後の折りたたみで要点を述べる。この記事で完全に証明するのは、2 段目と 12 段目の主張、3 段目の型の判定(乗法的還元であることと分裂の判定)、極小性の判定法である。

12 に達したときは、元の方程式が極小でなかったことになる(prop-tate-algorithm-nonminimal)。したがってアルゴリズムは、与えた方程式から極小方程式を作る手順も兼ねている。1 に戻るたびに $v(\Delta)$ が $12$ 減るので、この戻りは有限回で終わる。

最初の段の証明

特異点の移動(2 段目)

特異点を原点に移す

$n\ge1$ とする。$R$ の元 $r,t$ を選んで $T(r,0,t,1)$ を施すと、新しい係数は $\pi\mid a_3,a_4,a_6$ をみたす。このとき $\pi$ を法とした曲線 $\tilde E$ の特異点は $(0,0)$ である。

$\tilde E$ を係数を $\pi$ を法として還元した $k$ 上の 3 次曲線とする。$v(\Delta)\ge1$ だから $\tilde E$ の判別式は $0$ であり、$\tilde E$ は特異点をちょうど 1 つもつ(Sil09 Proposition III.1.4 (a)、p. 45)。この特異点 $(x_0,y_0)\in\tilde E(\bar k)$ は、$\operatorname{Gal}(\bar k/k)$ の各元 $\sigma$ について $\sigma(x_0,y_0)$ も特異点なので $\sigma$ で動かない。$k$ は完全体なので、$\operatorname{Gal}(\bar k/k)$ の不変元は $k$ の元であり、$x_0,y_0\in k$ である。
$r,t\in R$ を $x_0,y_0$ の持ち上げとし、$x=x'+r$、$y=y'+t$ と置く。$\tilde E$ の新しい方程式は特異点 $(0,0)$ をもつ。$f(x,y):=y^2+a_1xy+a_3y-x^3-a_2x^2-a_4x-a_6$(新しい係数)とおくと
$$ f(0,0)=-a_6,\qquad\frac{\partial f}{\partial x}(0,0)=-a_4,\qquad\frac{\partial f}{\partial y}(0,0)=a_3 $$
である。$(0,0)$ が $\tilde E$ の特異点であることは、これら 3 つが $\pi$ で割れることにほかならない。$\square$

$k$ が完全体でないと、特異点が $k$ 有理的とは限らず、この段が実行できない(節「反例」の表の 1 行目)。

乗法的還元と分裂(3 段目)

乗法的還元の判定

$n\ge1$ で、$\pi\mid a_3,a_4,a_6$ とする。

  1. 次の 3 つは同値である:(a) $\tilde E$ の特異点は結節点である、(b) $\pi\nmid b_2$、(c) $\pi\nmid c_4$。
  2. このとき方程式は極小で、還元は乗法的である。結節点の 2 本の接線の傾きは $T^2+a_1T-a_2$ の根であり、還元が分裂乗法的であることは、この 2 次式が $k$ で根をもつことと同値である。

$\tilde E$ の方程式は $y^2+\tilde a_1xy-\tilde a_2x^2-x^3=0$ であり、原点での 2 次の部分(接錐)は $Q(x,y):=y^2+\tilde a_1xy-\tilde a_2x^2$ である。$\tilde E$ は原点で特異なので、原点が結節点であることは $Q$ が $\bar k$ 上で相異なる 1 次式の積に分かれること、すなわち 2 元 2 次形式 $Q$ の判別式 $\tilde a_1^2+4\tilde a_2=\tilde b_2$ が $0$ でないことと同値である(標数 $2$ でも、$Q=y^2+\tilde a_1xy-\tilde a_2x^2$ が平方になるのは $\tilde a_1=0$ のときに限るので、同じ判定が成り立つ)。これで (a) と (b) が同値である。
$b_4=a_1a_3+2a_4$ は $\pi$ で割れるので $c_4=b_2^2-24b_4\equiv b_2^2\pmod\pi$ であり、(b) と (c) は同値である。
(c) のとき $v(c_4)=0<4$ なので、方程式は極小である(半安定還元 の補題「極小性と型の判定」)。極小方程式で $v(\Delta)>0$ かつ $v(c_4)=0$ であることは、還元が乗法的であることの定義である(半安定還元 の定義「極小Weierstrass方程式と還元の型」)。
接線は $y=\lambda x$ の形で、$Q(1,\lambda)=\lambda^2+\tilde a_1\lambda-\tilde a_2=0$ をみたす $\lambda$ がその傾きである。分裂乗法的とは 2 本の接線が $k$ 上で定義されること、すなわち $\lambda\in k$ であることなので、2 の後半が従う。$\square$

3 段目の $f_v=1$ と $c_v$ の値は、$\mathrm{I}_n$ 型の特殊ファイバーが $n$ 個の射影直線の輪であり($n$ は $v(\Delta)$)、分裂のときはすべての成分が $k$ 上で定義され、非分裂のときは Frobenius が輪を裏返すことから出る(Sil09 Table 15.1、p. 448。この記事では証明しない)。成分群が $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ になる例は Néronモデル の例「分裂乗法的還元をもつ楕円曲線と成分群」にある。

非極小の判定と極小性の判定法

12 段目に達した方程式は極小でない

$R$ 係数の方程式が $\pi^i\mid a_i$($i=1,2,3,4,6$)をみたせば、$T(0,0,0,\pi)$ による方程式 $y'^2+a_{1,1}x'y'+a_{3,3}y'=x'^3+a_{2,2}x'^2+a_{4,4}x'+a_{6,6}$ は $R$ 係数で、判別式は $\pi^{-12}\Delta$ である。とくに元の方程式は極小でない。

$T(0,0,0,u)$ は $a_i$ を $a_i/u^i$ に替える(変換の式で $r=s=t=0$ とおく)。$u=\pi$ では仮定から $a_i/\pi^i\in R$ であり、$\Delta'=u^{-12}\Delta$ なので $v(\Delta')=v(\Delta)-12$ である。$\square$

剰余標数が $2,3$ でなければ、極小性は不変量の付値だけで判定でき、小平の記号もほぼ $v(\Delta)$ で決まる。

剰余標数が 2, 3 でないときの極小性

$R$ 係数の Weierstrass 方程式について、次が成り立つ。

  1. $v(\Delta)<12$、$v(c_4)<4$、$v(c_6)<6$ のいずれかが成り立てば、方程式は極小である。
  2. $\operatorname{char}k\ne2,3$ なら逆も成り立つ。すなわち方程式が極小であることと、$v(\Delta)<12$ または $v(c_4)<4$ であることは同値である。

1:$\Delta$ と $c_4$ については 半安定還元 の補題「極小性と型の判定」である。$c_6$ も同じ論法による。極小でなければ $R$ 係数の方程式への変換で $v(\Delta')< v(\Delta)$ となるものがあり、$u^{12}\Delta'=\Delta$ から $v(u)\ge1$ である。$c_6=u^6c_6'$ と $c_6'\in R$ から $v(c_6)\ge6$ となる。
2:$v(\Delta)\ge12$ かつ $v(c_4)\ge4$ とする。$1728\Delta=c_4^3-c_6^2$(Cre97 p. 62)で $1728=2^63^3$ は $R$ の単元なので、$v(c_6^2)\ge\min(v(c_4^3),v(1728\Delta))\ge12$、すなわち $v(c_6)\ge6$ である。$X:=36x+3b_2$、$Y:=108(2y+a_1x+a_3)$ と置くと、展開して
$$ Y^2-\bigl(X^3-27c_4X-54c_6\bigr)=6^6\bigl(y^2+a_1xy+a_3y-x^3-a_2x^2-a_4x-a_6\bigr) $$
が成り立つので、$E$ は方程式 $Y^2=X^3-27c_4X-54c_6$ でも表せる。これは $u=1/6$ の座標変換で、$6$ が単元だから $R$ 係数を保つ(Cre97 p. 62 の同型)。さらに $X=\pi^2X'$、$Y=\pi^3Y'$ と置くと $Y'^2=X'^3-27\pi^{-4}c_4X'-54\pi^{-6}c_6$ となり、係数は $R$ に属し、判別式の付値は $v(\Delta)-12$ になる。よって元の方程式は極小でない。$\square$

2 は Sil09 Remark VII.1.1(p. 186)が Exercise 7.1 (a)(p. 203)として挙げている主張である。$\operatorname{char}k=2,3$ では不変量の付値だけでは判定できず、12 段目まで進めて初めて分かる。

8 段目($\mathrm{I}_m^*$ の場合)の繰り返しの要点を開く

7 段目の後で $P(T)$ がちょうど 2 重根をもつとき、2 重根を $T=0$ に移すと、$P(T)\equiv T^2(T+a_{2,1})$、$a_{2,1}\not\equiv0\pmod\pi$ となり、$v(a_2)=1$、$\pi^3\mid a_4$、$\pi^4\mid a_6$ が成り立つ。以後、整数 $m=1,2,\dots$ と 2 つの冪 $\pi^{\mu},\pi^{\nu}$(最初は $\mu=\nu=2$)を保ちながら、2 次式 $Y^2+(a_3/\pi^{\nu})Y-a_6/\pi^{\mu+\nu}$ と $(a_2/\pi)X^2+(a_4/\pi^{1+\mu})X+a_6/\pi^{\mu+\nu}$ を交互に調べる。判別式が $\pi$ で割れればその 2 重根を $y$ または $x$ の平行移動で消して冪を 1 つ上げ、$m$ を 1 増やす。判別式が $\pi$ で割れなくなったところで止まり、その 2 次式が $k$ で根をもてば $c_v=4$、もたなければ $c_v=2$ とする。止まったときの $m$ が $\mathrm{I}_m^*$ の添字である。正確な手順は Cre97 pp. 67–68 の 42–64 行目にある。

型の一覧と例

剰余標数が $5$ 以上のとき、極小方程式の $v(\Delta)$ と、$v(c_4)$ が正かどうかで小平の記号が決まる。次の表は Sil09 Table 15.1(p. 448)による。$\Phi(\bar k)$ は Néron モデルの成分群で、Néronモデル の注意「出典と、小平と Néron による分類」の値と同じである。

小平の記号成分数 $m_v$$v(\Delta)$($\operatorname{char}k\ge5$)$f_v$($\operatorname{char}k\ge5$)$\Phi(\bar k)$
$\mathrm{I}_0$$1$$0$$0$$0$
$\mathrm{I}_n$($n\ge1$)$n$$n$$1$$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$
$\mathrm{II}$$1$$2$$2$$0$
$\mathrm{III}$$2$$3$$2$$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$
$\mathrm{IV}$$3$$4$$2$$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$
$\mathrm{I}_0^*$$5$$6$$2$$(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$
$\mathrm{I}_n^*$($n\ge1$)$5+n$$6+n$$2$$n$ 偶数で $(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$、奇数で $\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$
$\mathrm{IV}^*$$7$$8$$2$$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$
$\mathrm{III}^*$$8$$9$$2$$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$
$\mathrm{II}^*$$9$$10$$2$$0$

加法的還元の行では $f_v=v(\Delta)+1-m_v=2$ であり、Cre97 p. 65 の「$p\ne2,3$ で加法的なら $f_p=2$」と合う。

$y^2=x^3+5^k$ の型

$R=\mathbb{Z}_5$ とし、$E_k\colon y^2=x^3+5^k$($k=1,\dots,6$)を考える。$\Delta=-16\cdot27\cdot5^{2k}$ なので $v(\Delta)=2k$ である。$c_4=0$ だから、$k\le5$ では $v(\Delta)<12$ で方程式は極小(prop-tate-algorithm-minimality-criterion)で、還元は加法的である。表から、$k=1,2,3,4,5$ で型はそれぞれ $\mathrm{II}$、$\mathrm{IV}$、$\mathrm{I}_0^*$、$\mathrm{IV}^*$、$\mathrm{II}^*$ である。$k=3$ では 7 段目の 3 次式が $P(T)=T^3+1$ で、$\mathbb{F}_5$ での根は $T=4$ だけなので $c_v=2$ である。$k=6$ では $\pi^i\mid a_i$ がすべて成り立ち、12 段目で $y^2=x^3+1$ に替わる。その判別式は $-432$ で $5$ と素なので、$E_6$ は $5$ で良い還元をもつ。

11 での $\mathrm{I}_5$ 型

$E\colon y^2+y=x^3-x^2-10x-20$ は $\Delta=-11^5$、$c_4=496$ である。$\Delta$ を割る素数は $11$ だけである。$\mathbb{F}_{11}$ での特異点は $(5,5)$ で、$x=x'+5$、$y=y'+5$ と置くと $y'^2+11y'=x'^3+14x'^2+55x'$ となり、$\pi=11$ について $\pi\mid a_3,a_4,a_6$ である。$b_2=56\equiv1\pmod{11}$ なので 3 段目で止まり、型は $\mathrm{I}_5$、$f_{11}=1$ である。$T^2-14\equiv T^2-3$ は $5^2=25\equiv3$ により $\mathbb{F}_{11}$ で根をもつので、分裂乗法的で $c_{11}=5$ である。

剰余標数 3 での同じ $v(\Delta)$

$R=\mathbb{Z}_3$ で $E\colon y^2=x^3-12x-27$ と $E'\colon y^2=x^3-12x-30$ を比べる。$\Delta=-16(4\cdot(-12)^3+27b^2)$($b=-27,-30$)から $\Delta_E=-2^4\cdot3^3\cdot473$、$\Delta_{E'}=-2^6\cdot3^3\cdot161$ で、どちらも $v_3(\Delta)=3$ である。どちらも $\mathbb{F}_3$ を法として $y^2=x^3$ になり、特異点は既に原点にある。$c_4=576=2^6\cdot3^2$ は $3$ で割れるので 3 段目は通過する。$E'$ では $a_6=-30$ が $9$ で割れないので 4 段目で止まり、型 $\mathrm{II}$、$f_3=3$ である。$E$ では $9\mid27$ なので 5 段目に進み、$b_8=-a_4^2=-144$ は $27$ で割れないので型 $\mathrm{III}$、$f_3=2$ である。$v(\Delta)<12$ なので両方とも極小であり、剰余標数 $3$ では $v(\Delta)$ だけで型が決まらない。

反例

アルゴリズムと判定法の仮定を 1 つずつ外した例を挙げる。

外す条件反例成り立たなくなること
剰余体 $k$ が完全体$R=\mathbb{F}_2(t)[\![\pi]\!]$、$y^2+\pi y=x^3+t$還元の特異点が $k$ 有理的で 2 段目が実行できること
方程式の極小性$\mathbb{Z}_5$ 上 $y^2=x^3+5^6$$v(\Delta)$ と表から小平の記号が読めること
$\operatorname{char}k\ne2,3$ex-tate-algorithm-char3 の 2 曲線極小方程式の $v(\Delta)$ で小平の記号が決まること

1 行目:$a_1=0$、$a_3=\pi$ なので $b_2=b_4=0$、$b_6=\pi^2$ で、$\Delta=-27b_6^2=\pi^4\ne0$(標数 $2$)であり、$K$ 上の楕円曲線である。$\tilde E\colon y^2=x^3+t$ の偏微分は $2y=0$ と $3x^2=x^2$ なので特異点は $x=0$、$y^2=t$ の点 $(0,\sqrt t)$ で、$\sqrt t\notin k$ である。$k=\mathbb{F}_2(t)$ は完全体でない。2 行目:ex-tate-algorithm-family の $k=6$ で、方程式は $v(\Delta)=12$ をみたすが極小でなく、表の $v(\Delta)=12$ の型はない。良い還元である。3 行目:剰余標数 $3$ で、どちらも極小・$v(\Delta)=3$ だが型は $\mathrm{III}$ と $\mathrm{II}$ に分かれ、導手の指数も $2$ と $3$ になる。

使い所

  • 導手と大域極小方程式の計算. $\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線では、判別式を割る各素数でアルゴリズムを走らせれば、大域極小方程式・導手 $N=\prod_pp^{f_p}$・局所指数 $c_p$ がすべて求まる(Cre97 p. 65)。これらは Birch–Swinnerton-Dyer予想 の公式の玉河数の積 $\prod_pc_p$ と、楕円曲線のL関数 の関数等式の導手に現れる。
  • Néron モデルの成分群. 出力の型から $\Phi(\bar k)$ が表で読め、$c_v$ が $\Phi(k)$ の位数を与える(Néronモデル の定理「極小正則モデルと極小Weierstrassモデルとの関係」)。
  • 半安定性の判定. 3 段目で止まれば乗法的還元で、$f_v=1$ である。すべての素数で 1 段目か 3 段目で止まる曲線が半安定な曲線である(半安定還元)。

関連項目

参考文献

[2]
Joseph H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, Springer, 2009, Proposition III.1.4(特異な Weierstrass 曲線の特異点)p. 45、Table 3.1、Remark VII.1.1(極小性の判定)p. 186、Exercise 7.1 p. 203、Theorem C.15.2 と Table 15.1(還元の型の表)pp. 447–448、Proposition C.16.2(Ogg–Saito の公式)p. 450

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