相対ホモトピー群

同義語:relative homotopy group

概要

相対ホモトピー群(relative homotopy group)とは、位相空間 $X$、部分空間 $A$、点 $x_0\in A$ に対し、立方体 $I^n$ から $X$ への写像で底面を $A$ に、残りの面を $x_0$ に写すもののホモトピー類の集合 $\pi_n(X,A,x_0)$ であり、$n\ge2$ で群、$n\ge3$ で可換群になる。元が $0$ であることは境界を止めて像を $A$ へ押し込めることと同値であり(圧縮判定法)、対の長完全列がある。これらから、包含 $A\hookrightarrow X$ が弱ホモトピー同値であることは、$X$ の各弧状連結成分が $A$ と交わり、すべての基点ですべての相対ホモトピー群が消えることと同値になる。圧縮補題や Whitehead の定理の土台である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ホモトピー群, 基本群, ホモトピー, 完全列

相対ホモトピー群は、位相空間 $X$、部分空間 $A$、点 $x_0\in A$ の組に対して、立方体 $I^n$ から $X$ への写像で、底面を $A$ に、残りの面を $x_0$ に写すもののホモトピー類として定める集合 $\pi_n(X,A,x_0)$ である。$n\ge2$ では群、$n\ge3$ では可換群になり、$A=\{x_0\}$ のときはホモトピー群 $\pi_n(X,x_0)$ に一致する。
中心になる性質は二つある。一つは圧縮判定法で、元が $0$ であることを「境界を止めたまま像を $A$ の中へ押し込めること」と言い換える。もう一つは対の長完全列
$$ \cdots\to\pi_n(A,x_0)\to\pi_n(X,x_0)\to\pi_n(X,A,x_0)\to\pi_{n-1}(A,x_0)\to\cdots\to\pi_0(A,x_0)\to\pi_0(X,x_0) $$
で、包含 $A\hookrightarrow X$ がホモトピー群に同型を誘導するかどうかを、相対ホモトピー群が消えるかどうかで判定できるようにする。二つを合わせると、すべての基点での相対ホモトピー群の消滅は、円板を境界を止めて $A$ へ押し込む条件になる。これを胞体ごとに使うのが 圧縮補題 であり、Whiteheadの定理 の証明の中心になる。

定義

$I:=[0,1]$、$I^n:=[0,1]^n$($n\ge1$)とし、点を $s=(s_1,\dots,s_n)$ と書く。$I^n$ の境界を $\partial I^n$ とし、最後の座標が $0$ の面 $\{s_n=0\}$ を $I^{n-1}$ と同一視して底面と呼ぶ。底面以外の面の和
$$ J^{n-1}:=\{s\in I^n : s_n=1\}\cup\{s\in I^n : \text{ある } i< n \text{ について } s_i\in\{0,1\}\} $$
は $\partial I^n\setminus I^{n-1}$ の閉包である。$n=1$ では $I^0=\{0\}$、$J^0=\{1\}$ である。ホモトピー $H\colon K\times I\to X$ が部分集合 $L\subset K$ の上で動かないとは、各 $x\in L$ について $H(x,t)$ が $t$ によらないことをいう。

相対ホモトピー群

位相空間 $X$、部分空間 $A\subset X$、点 $x_0\in A$ の組 $(X,A,x_0)$ と整数 $n\ge1$ を考える。連続写像 $f\colon I^n\to X$ で
$$ f(\partial I^n)\subset A,\qquad f(J^{n-1})=\{x_0\} $$
を満たすものを、$(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)$ の写像という。この形の二つの写像 $f_0,f_1$ がホモトピックであるとは、連続写像 $F\colon I^n\times I\to X$ で $F(\cdot,0)=f_0$、$F(\cdot,1)=f_1$ となり、各 $t\in I$ について $F(\cdot,t)$ がこの形の写像であるものがあることをいう。この同値関係による類の集合を $\pi_n(X,A,x_0)$ と書き、$n$ 次の相対ホモトピー群(relative homotopy group)という。定値写像 $x_0$ の類を $0$ と書く。

ホモトピックであることが同値関係になるのは、定値のホモトピー、時間を逆にしたホモトピー、二つのホモトピーを時間の前半と後半に置いたものが、どれも同じ形の写像の族だからである。$J^{n-1}$ は $x_0\in A$ に写るので、条件 $f(\partial I^n)\subset A$ は底面について $f(I^{n-1})\subset A$ と言っても同じである。
$n=1$ では $f$ は道で、始点 $f(0)$ は $A$ の中を動いてよく、終点 $f(1)$ は $x_0$ に固定される。$\pi_1(X,A,x_0)$ はこのような道のホモトピー類の集合であり、一般には自然な群の構造をもたない。$n=0$ の相対ホモトピー群は定義しない。

絶対ホモトピー群との関係と関手性
  1. $A=\{x_0\}$ のとき、$\pi_n(X,\{x_0\},x_0)=\pi_n(X,x_0)$ である。
  2. 連続写像 $\varphi\colon X\to Y$ が $\varphi(A)\subset B$、$\varphi(x_0)=y_0$ を満たすとき、$[f]\mapsto[\varphi\circ f]$ は写像 $\varphi_*\colon\pi_n(X,A,x_0)\to\pi_n(Y,B,y_0)$ を定め、$(\psi\circ\varphi)_*=\psi_*\circ\varphi_*$、$(\mathrm{id}_X)_*=\mathrm{id}$ が成り立つ。

1:$A=\{x_0\}$ なら写像の条件はどちらも $f(\partial I^n)=\{x_0\}$ であり、ホモトピーの条件も各時刻で境界を $x_0$ に写すことになる。これはホモトピー群の記事の定義「ホモトピー群の演算($n\geq1$)」で述べた立方体による $\pi_n(X,x_0)$ の表示そのものである。2:この形の写像やホモトピーに $\varphi$ を合成すると、$(Y,B,y_0)$ についての同じ形の写像やホモトピーになる。関手性は写像の合成の結合律による。$\square$

群の構造

$n\ge2$ とする。$(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)$ の写像 $f,g$ に対し、第 1 座標で貼り合わせた写像
$$ (f+g)(s):=\begin{cases}f(2s_1,s_2,\dots,s_n)&(0\le s_1\le\tfrac12),\\ g(2s_1-1,s_2,\dots,s_n)&(\tfrac12\le s_1\le1)\end{cases} $$
を考える。$n\ge2$ なので第 1 座標は底面を決める第 $n$ 座標と異なる。面 $\{s_1=1\}$ と $\{s_1=0\}$ は $J^{n-1}$ に含まれるので、継ぎ目 $s_1=\tfrac12$ では $f,g$ の値はどちらも $x_0$ であり、$f+g$ は連続で、再び同じ形の写像になる。$n=1$ では、貼り合わせに使える座標が底面を決める座標しかないので、この演算は定義できない。

群の構造

$n\ge2$ のとき、$[f]+[g]:=[f+g]$ は $\pi_n(X,A,x_0)$ の上の演算として定まり、$\pi_n(X,A,x_0)$ は $0$ を単位元とする群になる。$[f]$ の逆元は $\bar f(s):=f(1-s_1,s_2,\dots,s_n)$ の類である。$n\ge3$ ならこの群は可換である。また $n\ge2$ のとき、prop-rhg-absolute の誘導写像 $\varphi_*$ は群の準同型である。

要点:絶対ホモトピー群の群の公理を確かめるホモトピーは、第 1 座標だけを動かし、$0,1$ を $0,1$ に写すので、底面と $J^{n-1}$ の条件をそのまま保つ。可換性は第 1・第 2 座標の二つの貼り合わせによる Eckmann–Hilton の議論で、これには底面の座標と異なる座標が二つ要る。

詳しい証明を開く

演算が代表の取り方によらないことは、二つのホモトピー $F,G$ を同じ式で第 1 座標について貼り合わせればよい。結合律・単位元・逆元について、ホモトピー群の記事の命題「貼り合わせによる群構造」の証明が与えるホモトピーは、どれも $s_1$ の区間ごとに $f,g,h$ のいずれかを点 $(\theta(s_1,v),s_2,\dots,s_n)$ で評価する形をしている($v$ はホモトピーの時間、$\theta$ は値が $I$ にある連続関数)。しかも $s_1\in\{0,1\}$ の点と区間の継ぎ目では、評価する点の第 1 座標が $0$ か $1$ になる(同記事で、継ぎ目と $t=0,1$ で値が $x_0$ になることを確かめている部分)。このホモトピーの各時刻の写像を見ると、$s_n=0$ の点は $f,g,h$ の底面の点に写るので値は $A$ にあり、$s_n=1$ の点や $2\le i\le n-1$ で $s_i\in\{0,1\}$ の点は $J^{n-1}$ の点に写るので値は $x_0$、$s_1\in\{0,1\}$ の点も第 1 座標が $0$ か $1$ の点、すなわち $J^{n-1}$ の点に写るので値は $x_0$ である。よってこれらはこの記事の意味のホモトピーであり、群の公理が成り立つ。

$n\ge3$ なら、第 2 座標も底面を決める座標と異なるので、第 2 座標で貼り合わせる演算 $+_2$ が同じように定まり、定値写像を単位元にもつ。$I^n$ を $(s_1,s_2)$ について四つに分けて四つの写像を置くと、交替則 $(f+g)+_2(h+k)=(f+_2h)+(g+_2k)$ が代表の段階で成り立つ。ホモトピー群の記事の命題「$n\geq2$のときホモトピー群はアーベル群である」の証明にある Eckmann–Hilton の補題により、二つの演算は一致して可換である。準同型であることは $\varphi\circ(f+g)=(\varphi\circ f)+(\varphi\circ g)$ による。$\square$

$n=2$ の群は可換とは限らない(ex-rhg-cone)。

圧縮判定法

次の補題は、円柱 $I^n\times I$ の底 $I^n\times\{0\}$ を、縁 $\partial I^n\times\{0\}$ を止めたまま、側面と上面の和 $\partial I^n\times I\cup I^n\times\{1\}$ へ押しつける変形を式で与えるものである。

柱からの押し込み

$n\ge1$ とし、連続写像 $M\colon I^n\times I\to X$ が
$$ M(\partial I^n\times I)\subset A,\qquad M(I^n\times\{1\})\subset A $$
を満たすとする。このとき $f:=M(\cdot,0)$ は、$\partial I^n$ の上で動かないホモトピーによって、像が $A$ に含まれる写像に変形できる。

$m:=(\tfrac12,\dots,\tfrac12)\in I^n$、$\rho(s):=\max_i\lvert 2s_i-1\rvert$ とおく。$\rho$ は連続で値は $[0,1]$ にあり、$\rho(s)=1$ と $s\in\partial I^n$ は同値である。$\lambda(s):=1/\max(\rho(s),\tfrac12)$ は連続で $1\le\lambda\le2$ を満たす。
$$ R(s):=\bigl(m+\lambda(s)(s-m),\ \lambda(s)-1\bigr) $$
とおくと、$R(s)$ は $T:=\partial I^n\times I\cup I^n\times\{1\}$ に属する。実際、$\rho(m+\lambda(s-m))=\lambda(s)\rho(s)$ であり、$\rho(s)\ge\tfrac12$ なら $\lambda\rho=1$ なので第 1 成分は $\partial I^n$ にあって第 2 成分は $[0,1]$ にあり、$\rho(s)\le\tfrac12$ なら $\lambda=2$ なので第 2 成分は $1$ で第 1 成分は $I^n$ にある。$s\in\partial I^n$ なら $\lambda(s)=1$ で $R(s)=(s,0)$ である。
$E(s,u):=(1-u)(s,0)+uR(s)$ とおくと、$I^n\times I$ は凸なので $E\colon I^n\times I\to I^n\times I$ は連続で、$E(s,0)=(s,0)$、$E(s,1)=R(s)$、$s\in\partial I^n$ なら全時刻で $E(s,u)=(s,0)$ である。よって $H:=M\circ E$ は $H(\cdot,0)=f$ を満たし、$\partial I^n$ の上で動かず、$H(s,1)=M(R(s))\in M(T)\subset A$ である。$\square$

圧縮判定法

$n\ge1$ とし、$f\colon(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)$ を写像とする。$\pi_n(X,A,x_0)$ で $[f]=0$ となるための必要十分条件は、$f$ が $\partial I^n$ の上で動かないホモトピーによって、像が $A$ に含まれる写像に変形できることである。

必要性:$[f]=0$ とし、$F\colon I^n\times I\to X$ を $f$ から定値写像 $x_0$ へのこの記事の意味のホモトピーとする。各時刻で $\partial I^n$ は $A$ に写るので $F(\partial I^n\times I)\subset A$ であり、$F(I^n\times\{1\})=\{x_0\}\subset A$ である。lem-rhg-cylinder を $M=F$ に使えばよい。
十分性:$G$ を $f$ から $g$ への $\partial I^n$ の上で動かないホモトピーとし、$g(I^n)\subset A$ とする。$G$ は $\partial I^n$ の上で $f$ と同じ値をとるので、各時刻で $\partial I^n$ を $A$ に、$J^{n-1}$ を $x_0$ に写し、$[f]=[g]$ である。次に、$s=(s',s_n)$($s'\in I^{n-1}$)と書いて
$$ K(s,u):=g\bigl(s',\ s_n+u(1-s_n)\bigr) $$
とおく。値はすべて $g(I^n)\subset A$ にある。$s\in J^{n-1}$ なら、$s_n=1$ のときは点が動かず、ある $i< n$ で $s_i\in\{0,1\}$ のときは点が $J^{n-1}$ の中を動くので、$K(s,u)=x_0$ である。よって $K$ はこの記事の意味のホモトピーで、$K(\cdot,0)=g$、$K(s,1)=g(s',1)=x_0$ である。したがって $[g]=0$ であり、$[f]=0$ である。$\square$

この証明は、$[f]=0$ を示すホモトピーを円柱の中の円板の族に制限するという Hat02 §4.1(p. 343)の議論を、lem-rhg-cylinder の式で書き下したものである。同書は、$J^{n-1}$ を一点に潰して $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})$ を $(D^n,S^{n-1},s_0)$ とみなした円板による表示で判定法を述べている。

対の長完全列

$\pi_0(A,x_0)$ を $A$ の弧状連結成分の集合とし、$x_0$ を含む成分を基点とする基点付き集合とみなす。$\pi_0(X,x_0)$ も同様である。次の三種類の写像を考える。

  • $i_*\colon\pi_n(A,x_0)\to\pi_n(X,x_0)$($n\ge0$)は包含 $A\hookrightarrow X$ が誘導する写像である。
  • $j\colon\pi_n(X,x_0)\to\pi_n(X,A,x_0)$($n\ge1$)は、境界を $x_0$ に写す写像を、そのまま $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)$ の写像とみる写像である。
  • $\partial\colon\pi_n(X,A,x_0)\to\pi_{n-1}(A,x_0)$($n\ge1$)は、$n\ge2$ では $[f]$ を底面への制限 $f|_{I^{n-1}}$ の類に写す。$\partial I^{n-1}$ は $J^{n-1}$ に含まれるので、$f|_{I^{n-1}}$ は境界を $x_0$ に写す $A$ への写像である。$n=1$ では $[f]$ を始点 $f(0)$ の属する $A$ の弧状連結成分に写す。
    どれも代表の取り方によらない。たとえば $\partial$ については、この記事の意味のホモトピーを底面に制限すると、$A$ の中の、$\partial I^{n-1}$ の上で動かないホモトピー($n=1$ では $A$ の中の道)になるからである。$n\ge2$ では $i_*$、$j$、$\partial$ は群の準同型である($j$ と $i_*$ は和の式が同じこと、$\partial$ は第 1 座標の貼り合わせが底面の貼り合わせに制限されることによる)。基点付き集合の写像の列が完全であるとは、各項で、前の写像の像が次の写像による基点の逆像に一致することをいう。群の準同型の列では、これは通常の完全性である。
対の長完全列

$x_0\in A\subset X$ とする。列
$$ \cdots\to\pi_n(A,x_0)\xrightarrow{i_*}\pi_n(X,x_0)\xrightarrow{j}\pi_n(X,A,x_0)\xrightarrow{\partial}\pi_{n-1}(A,x_0)\xrightarrow{i_*}\cdots\xrightarrow{j}\pi_1(X,A,x_0)\xrightarrow{\partial}\pi_0(A,x_0)\xrightarrow{i_*}\pi_0(X,x_0) $$
は完全である。

$n\ge1$ について、三つの項での完全性を順に示す。$s=(s',s_n)$、$s'\in I^{n-1}$ と書く($n=1$ では $s'$ は空)。
$\pi_n(X,x_0)$ での完全性:$g\colon I^n\to A$ が境界を $x_0$ に写すなら、$j(i_*[g])$ の代表 $g$ は像が $A$ に含まれるので、thm-rhg-compression の十分性により $0$ である。逆に $j[f]=0$ なら、同じ定理の必要性により、$f$ は $\partial I^n$ の上で動かないホモトピーで像が $A$ に含まれる写像 $g$ に変形できる。このホモトピーは境界を $x_0$ に止めたままなので、$[f]=i_*[g]$ である。
$\pi_n(X,A,x_0)$ での完全性:境界を $x_0$ に写す写像の底面への制限は定値写像なので、$\partial\circ j$ は基点に写る。逆に $\partial[f]$ が基点であるとする。$n\ge2$ なら $A$ の中のホモトピー $F\colon I^{n-1}\times I\to A$ で、$\partial I^{n-1}$ の上で値が $x_0$、$F(s',0)=f(s',0)$、$F(s',1)=x_0$ となるものがあり、$n=1$ なら $A$ の中の $f(0)$ から $x_0$ への道 $F$ がある。$v\in I$ について
$$ P_v(s',s_n):=\begin{cases}F\bigl(s',\ v-2s_n\bigr)&(0\le s_n\le v/2),\\ f\Bigl(s',\ \dfrac{s_n-v/2}{1-v/2}\Bigr)&(v/2\le s_n\le1)\end{cases} $$
とおく。$F$ の第 2 成分は $[0,v]$ にあり、分母は $\tfrac12$ 以上で、継ぎ目 $s_n=v/2$ では $F(s',0)=f(s',0)$ により値が一致するので、$(s,v)\mapsto P_v(s)$ は連続である。底面 $s_n=0$ の値 $F(s',v)$ は $A$ にあり、上面の値は $f(s',1)=x_0$、側面($s'\in\partial I^{n-1}$)の値は $x_0$ である。よって $P$ はこの記事の意味のホモトピーで、$P_0=f$ であり、$P_1$ は底面でも $F(s',1)=x_0$ をとるので境界を $x_0$ に写す。したがって $[f]=j[P_1]$ である。
$\pi_{n-1}(A,x_0)$ での完全性:$f$ を $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)$ の写像とすると、$(s',t)\mapsto f(s',t)$ は $X$ の中で底面 $f(\cdot,0)$ を定値写像 $f(\cdot,1)=x_0$ へ変形し、$\partial I^{n-1}$ の上では値が $x_0$ のままである($n=1$ では $f$ が $f(0)$ と $x_0$ を結ぶ道である)。よって $i_*\circ\partial$ は基点に写る。逆に、$g$ が $\pi_{n-1}(A,x_0)$ の元を表し、$i_*[g]$ が基点であるとする。$n\ge2$ なら、$X$ の中のホモトピー $G\colon I^{n-1}\times I\to X$ で、$\partial I^{n-1}$ の上で値が $x_0$、$G(\cdot,0)=g$、$G(\cdot,1)=x_0$ となるものがある。$f(s',s_n):=G(s',s_n)$ は底面を $g(I^{n-1})\subset A$ に、$J^{n-1}$ を $x_0$ に写すので $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x_0)$ の写像であり、$\partial[f]=[g]$ である。$n=1$ なら、$g$ は $A$ の点で、$X$ の中で $x_0$ と道 $G$ で結ばれるので、$G$ は $\pi_1(X,A,x_0)$ の元で $\partial[G]=[g]$ である。$\square$

これは Hat02 §4.1 Theorem 4.3(p. 344)である。同書は三つ組 $(X,A,B,x_0)$ の長完全列を示し、$B=\{x_0\}$ の場合として対の列を得ており、末尾の $\pi_0(A,x_0)$ と $\pi_1(X,A,x_0)$ での完全性は演習に回している。上の $\pi_n(X,A,x_0)$ での完全性の証明は、底面のホモトピー $F$ を幅を増やしながら付け足す同書 p. 344 の議論を式にしたものである。

すべての基点での消滅

円板の圧縮との同値

$n\ge1$ とする。次の三条件は同値である。

  1. すべての $x\in A$ について $\pi_n(X,A,x)=0$。
  2. 連続写像 $g\colon I^n\to X$ で $g(\partial I^n)\subset A$ となるものはどれも、$\partial I^n$ の上で動かないホモトピーによって、像が $A$ に含まれる写像に変形できる。
  3. 2 と同じ $g$ はどれも、各時刻で $\partial I^n$ を $A$ に写すホモトピーによって、像が $A$ に含まれる写像に変形できる。

2 ⇒ 3 は明らかである。3 ⇒ 2:3 のホモトピーを $M$ とすると $M(\partial I^n\times I)\subset A$、$M(I^n\times\{1\})\subset A$ なので、lem-rhg-cylinder を使えばよい。2 ⇒ 1:$\pi_n(X,A,x)$ の元の代表 $f$ は 2 の $g$ の条件を満たすので、thm-rhg-compression の十分性により $[f]=0$ である。
1 ⇒ 3:要点は、$g$ を各時刻で $\partial I^n$ を $A$ に写すホモトピーで動かし、$J^{n-1}$ を一点 $x\in A$ に写す写像 $g_1$ に取り替えることである。$g_1$ は $\pi_n(X,A,x)=0$ の元を表すので、thm-rhg-compression の必要性により像が $A$ に含まれる写像に変形でき、二つのホモトピーをつなげば 3 になる。

$g_1$ の作り方を開く

$n=1$ なら $J^0=\{1\}$ なので、$x:=g(1)$ として $g_1:=g$ でよい。$n\ge2$ とし、$m'\in I^{n-1}$ を中心、$e:=(m',1)\in J^{n-1}$ とする。$c\colon J^{n-1}\times I\to J^{n-1}$ を、$0\le t\le\tfrac12$ では $c(s,t):=(s',s_n+2t(1-s_n))$、$\tfrac12\le t\le1$ では $c(s,t):=((2-2t)s'+(2t-1)m',1)$ で定める。前半は側面の点を側面の中で上へ押し上げ、上面の点を動かさない。後半は上面の中の線分に沿って $e$ へ縮める。$t=\tfrac12$ で両式は $(s',1)$ に一致し、$c(\cdot,0)$ は恒等写像、$c(\cdot,1)$ は定値 $e$ である。

$k\ge1$ について、レトラクション $r_k\colon I^k\times I\to I^k\times\{0\}\cup\partial I^k\times I$ を、$y:=2s-(1,\dots,1)$、$\|y\|_\infty:=\max_i\lvert y_i\rvert$ とし、$y$ の座標で書いて、$2\|y\|_\infty\le2-t$ なら $y\mapsto 2y/(2-t)$ と高さ $0$、$2\|y\|_\infty\ge2-t$ なら $y\mapsto y/\|y\|_\infty$ と高さ $2-(2-t)/\|y\|_\infty$ を与える式で定める。これは コファイブレーション の例「円板と境界の球面」のレトラクションの式のノルムを最大値ノルムに替えたもので、同じ確かめで連続なレトラクションである。

まず $\partial I^n\times I$ の上の写像 $h$ を作る。$J^{n-1}\times I$ の上では $h:=g\circ c$ とする。底面 $I^{n-1}\times I$ の上では、$I^{n-1}\times\{0\}$ で $g(s',0)$、$\partial I^{n-1}\times I$ で $g(c((s',0),t))$ をとる写像($t=0$ で一致)を $r_{n-1}$ と合成したものを $h$ とする。$r_{n-1}$ は $\partial I^{n-1}\times I$ を動かさないので、二つの定義は共通部分 $\partial I^{n-1}\times\{0\}\times I$ で一致し、$h$ は連続で値は $g(\partial I^n)\subset A$ にある。次に、$I^n\times\{0\}$ で $g$、$\partial I^n\times I$ で $h$ をとる写像($t=0$ で一致)を $r_n$ と合成して $G\colon I^n\times I\to X$ を得る。$G(\cdot,0)=g$、$G(\partial I^n\times I)\subset A$ であり、$s\in J^{n-1}$ なら $G(s,1)=g(c(s,1))=g(e)=:x$ である。よって $g_1:=G(\cdot,1)$ は $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,x)$ の写像である。$\square$

閉球体の対 $(D^n,S^{n-1})$ は、$y\mapsto(\|y\|/\|y\|_\infty)\,y$($y\neq0$)、$0\mapsto0$ と平行移動・相似で $(I^n,\partial I^n)$ と同相なので、条件 2 は「$D^n$ からの写像で $S^{n-1}$ を $A$ に写すものは、$S^{n-1}$ の上で動かないホモトピーで $A$ の中へ押し込める」と言っても同じである。これは Whiteheadの定理 の記事の条件 $(\mathrm{C}_n)$ であり、圧縮補題 は胞体ごとにこの形で使う。Hat02 §4.1(p. 346)は、この同値に「定値写像へ変形できる」という条件を加えた四条件の同値を述べ、それらが $i\le n$ で成り立つ対を $n$ 連結な対と呼んでいる。

包含が弱ホモトピー同値であるための条件

包含 $A\hookrightarrow X$ が弱ホモトピー同値であるための必要十分条件は、次の二つが成り立つことである。

  1. $X$ のどの弧状連結成分も $A$ の点を含む。
  2. すべての $n\ge1$ とすべての $a\in A$ について $\pi_n(X,A,a)=0$。

要点:基点 $a\in A$ での長完全列(thm-rhg-exact)で、$\pi_n(X,A,a)$ の両隣の写像の単射性・全射性と、$\pi_n(X,A,a)$ の消滅とを行き来する。$\pi_0$ の単射性だけは、$A$ の二点を結ぶ $X$ の道を $\pi_1(X,A,a)$ の元とみて thm-rhg-compression を使う。

詳しい証明を開く

必要性:1 は $\pi_0$ の全射性である。$y\in\pi_n(X,A,a)$ とする。$\pi_{n-1}(A,a)\to\pi_{n-1}(X,a)$ は単射なので、$\pi_{n-1}(A,a)$ での完全性から $\partial y$ は基点である($n=1$ でも、単射なので基点の逆像は基点だけである)。$\pi_n(X,A,a)$ での完全性から $y=j(z)$ となる $z$ があり、全射性から $z=i_*(w)$ と書けるので、$y=j(i_*(w))=0$ である。

十分性:$n\ge1$ について、$\pi_n(X,A,a)=0$ と $\pi_n(X,a)$ での完全性から $i_*$ は全射であり、$\pi_{n+1}(X,A,a)=0$ と $\pi_n(A,a)$ での完全性から $i_*$ の核は自明で、$i_*$ は単射である。$\pi_0$ の全射性は 1 である。単射性:$a,a'\in A$ が $X$ の中の道 $\gamma$($a'$ から $a$ へ)で結ばれるとする。$\gamma$ は $(I,\partial I,\{1\})\to(X,A,a)$ の写像で、$\pi_1(X,A,a)=0$ なので、thm-rhg-compression により $\gamma$ は端点を止めたまま $A$ の中の道に変形できる。よって $a,a'$ は $A$ の同じ弧状連結成分にある。$\square$

例

線分と端点

$X=D^1=[-1,1]$、$A=S^0=\{-1,1\}$、$x_0=1$ とする。$\pi_1(D^1,S^0,1)$ の元は、始点が $\pm1$ のどちらかで終点が $1$ の道の類である。ホモトピーの間、始点は離散集合 $S^0$ の中を連続に動くので変わらず、始点の同じ二つの道は線分の凸性により端点を止めた直線ホモトピーで結べる。よって $\pi_1(D^1,S^0,1)$ はちょうど二つの元からなり、$\partial$ は $\pi_0(S^0)$ への全単射である。

円板と境界の球面

$n\ge2$ とし、$x_0\in S^{n-1}$ とする。$D^n$ は凸なので可縮で、すべての $k\ge1$ で $\pi_k(D^n,x_0)=0$ である。長完全列から、$k\ge2$ で $\partial\colon\pi_k(D^n,S^{n-1},x_0)\to\pi_{k-1}(S^{n-1},x_0)$ は全単射な準同型、すなわち群の同型である。とくに $\pi_n(D^n,S^{n-1},x_0)\cong\pi_{n-1}(S^{n-1},x_0)\cong\mathbb{Z}$(ホモトピー群の記事の例「球面自身: $\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$」)であり、$2\le k< n$ では $\pi_k(D^n,S^{n-1},x_0)=0$(同記事の例「球面の次元未満の群 $\pi_k(S^n)=0\ (1\leq k< n)$」)である。$k=1$ でも、$\pi_1(D^n)=0$ と $\pi_0(S^{n-1})$ が一点であることから、$\pi_1(D^n,S^{n-1},x_0)$ は一点である。

錐と可換でない相対ホモトピー群

$Y$ を空でない弧状連結な空間、$CY$ をその錐(位相)とし、底面 $\{[y,0]\}$ を $Y$ と同一視する(同記事の命題「底面の埋め込みと頂点の補集合」)。$CY$ は可縮(同記事の命題「錐は可縮」)なので、長完全列から $n\ge2$ で $\partial\colon\pi_n(CY,Y,y_0)\to\pi_{n-1}(Y,y_0)$ は群の同型である。$Y=S^1\vee S^1$ とすると、$\pi_1(Y)$ は階数 $2$ の自由群で可換でない(Seifert–van Kampenの定理の記事の例「円周のウェッジ和」)ので、$\pi_2(CY,Y,y_0)$ は可換でない。Hat02 §4.1 Example 4.4(p. 345)はこの方法で任意の群を $\pi_2$ として実現している。

条件を外した反例

cor-rhg-weq と prop-rhg-group の条件を一つずつ外す。最後の 2 行は、相対ホモロジー群で成り立つ性質が、相対ホモトピー群では成り立たない例である。CW 対 $(X,A)$ については商写像が同型 $H_n(X,A)\cong\tilde H_n(X/A)$ を誘導するが(Hat02 Proposition 2.22、p. 124)、ホモトピー群ではこの切除にあたる性質が成り立たない。

外す条件反例成り立たなくなること
$n\ge3$(可換性)$(CY,Y)$、$Y=S^1\vee S^1$、$n=2$$\pi_n(X,A,x_0)$ が可換であること
$X$ の各弧状連結成分が $A$ と交わる$X=\{0,1\}$(離散)、$A=\{0\}$相対ホモトピー群がすべて消えれば包含が弱ホモトピー同値であること
すべての基点 $a\in A$$X=\{p\}\sqcup D^2$、$A=\{p\}\sqcup S^1$同上
すべての次数 $n$$X=D^{N+1}$、$A=S^N$($N\ge1$)、$n\le N$ だけ同上
ホモロジー群に替えること$(\mathbb{RP}^n,\mathbb{RP}^{n-1})$($n\ge2$)と商 $\mathbb{RP}^n/\mathbb{RP}^{n-1}\cong S^n$商写像 $(X,A)\to(X/A,\ast)$ が $n$ 次の群に同型を誘導すること
同上($1$ 次、胞体の貼り付け)$([0,1],\{0,1\})\to([0,1]/\{0,1\},\ast)\cong(S^1,\ast)$商写像が $1$ 次の集合に全単射を誘導すること
反例の確かめ

1 行目:ex-rhg-cone による。
2 行目:$I^n$ は弧状連結なので、$(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(X,A,0)$ の写像とそのホモトピーの値は点 $0$ だけで、相対ホモトピー群はすべて一点である。$\pi_0(A)\to\pi_0(X)$ は全射でないので弱ホモトピー同値でない。
3 行目:二つの弧状連結成分はどちらも $A$ と交わる。基点 $p$ では、写像の値は成分 $\{p\}$ にあるので相対ホモトピー群は消える。基点 $a\in S^1$ では、値は成分 $D^2$ にあるので $\pi_2(X,A,a)=\pi_2(D^2,S^1,a)\cong\mathbb{Z}$ である(ex-rhg-disk)。包含は $\pi_1(S^1,a)\cong\mathbb{Z}\to\pi_1(D^2,a)=0$ で単射でない。
4 行目:ex-rhg-disk により $1\le n\le N$ で $\pi_n(D^{N+1},S^N,a)=0$ であり、$S^N$ は弧状連結なので cor-rhg-weq の条件 1 も成り立つ。しかし $\pi_N(S^N)\cong\mathbb{Z}\to\pi_N(D^{N+1})=0$ は単射でなく、実際 $\pi_{N+1}(D^{N+1},S^N,a)\cong\mathbb{Z}$ である。
5 行目:$n\ge2$ とし、赤道 $S^{n-1}=\{x_{n+1}=0\}$ の点 $a$ と $x_0:=[a]$ を基点にとる。次の 3 点を示す。(a) $\pi_n(\mathbb{RP}^n,\mathbb{RP}^{n-1},x_0)\cong\pi_{n-1}(S^{n-1})\times\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}^2$。(b) $\mathbb{RP}^n/\mathbb{RP}^{n-1}\cong S^n$ なので $\pi_n(\mathbb{RP}^n/\mathbb{RP}^{n-1})\cong\mathbb{Z}$。(c) したがって商写像 $q$ が誘導する準同型 $q_*\colon\mathbb{Z}^2\to\mathbb{Z}$ は単射でない($e_1,e_2$ の像を $r,s$ とすると $(s,-r)$ が核に入り、$r=s=0$ なら核は全体)。一方、相対ホモロジーでは $H_n(\mathbb{RP}^n,\mathbb{RP}^{n-1})\cong\tilde H_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$ が商写像で同型に写る。$\mathbb{Z}$ の値はどちらも $\pi_m(S^m)\cong\mathbb{Z}$(ホモトピー群 の例「球面自身: $\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$」)による。

(a)・(b) の確かめを開く

(a) の前半:$p\colon S^n\to\mathbb{RP}^n$ は 2 重被覆で(被覆空間 の例「球面から実射影空間へ」)、$p^{-1}(\mathbb{RP}^{n-1})=S^{n-1}$ である。$p_*\colon\pi_n(S^n,S^{n-1},a)\to\pi_n(\mathbb{RP}^n,\mathbb{RP}^{n-1},x_0)$ が全単射な準同型であることを示す。準同型であることは $p$ との合成が第 1 座標の貼り合わせと可換なことによる。$c:=(0,\dots,0,1)\in J^{n-1}$ とし、$f$ を $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(\mathbb{RP}^n,\mathbb{RP}^{n-1},x_0)$ の写像とする。$F(s,t):=f(c+t(s-c))$ は定値写像 $x_0$ から $f$ へのホモトピーなので、被覆空間 の定理「ホモトピーの持ち上げ」により、定値写像 $a$ から始まる持ち上げ $\tilde F$ がある。$t\mapsto\tilde F(c,t)$ は定値道 $x_0$ の持ち上げなので定値 $a$ であり、$\tilde f:=\tilde F(\cdot,1)$ は $f$ の持ち上げで $\tilde f(c)=a$ をみたす。$\tilde f(J^{n-1})$ は離散なファイバー $\{a,-a\}$ に含まれ、$n\ge2$ なので $J^{n-1}$ は連結だから、$\tilde f(J^{n-1})=\{a\}$ である。また $\tilde f(\partial I^n)\subset p^{-1}(\mathbb{RP}^{n-1})=S^{n-1}$ である。よって $p_*$ は全射である。単射性:$p\circ\tilde f_0$ と $p\circ\tilde f_1$ がこの記事の意味のホモトピー $G$ で結ばれるとする。$G$ を $\tilde f_0$ から始まるように持ち上げた $\tilde G$ は、$J^{n-1}\times I$ が連結で $\{a,-a\}$ に値をとるので $J^{n-1}\times I$ を $a$ に写し、$\partial I^n\times I$ を $S^{n-1}$ に写す。$\tilde G(\cdot,1)$ と $\tilde f_1$ はどちらも $p\circ\tilde f_1$ の持ち上げで $c$ での値が $a$ なので、同記事の定理「持ち上げの一意性」により一致する。よって $[\tilde f_0]=[\tilde f_1]$ である。

(a) の後半:$\Gamma:=\pi_n(S^n,S^{n-1},a)$ とし、閉じた下半球 $D_-:=\{x\in S^n\mid x_{n+1}\le0\}$ をとる。$D_-$ は $D^n$ と同相で可縮であり、$S^{n-1}\subset D_-$ である。対の写像 $(S^n,S^{n-1},a)\to(S^n,D_-,a)$ が誘導する準同型を $\rho\colon\Gamma\to\pi_n(S^n,D_-,a)$ とする。$(S^n,D_-)$ の長完全列(thm-rhg-exact)で $\pi_n(D_-)=\pi_{n-1}(D_-)=0$ なので、$j'\colon\pi_n(S^n)\to\pi_n(S^n,D_-,a)$ は同型である。$(S^n,S^{n-1})$ の $j\colon\pi_n(S^n)\to\Gamma$ について $\rho\circ j=j'$ である(どちらも境界を $a$ に写す写像をそのまま相対の写像とみる)。$\Phi:=(\partial,\ j'^{-1}\circ\rho)\colon\Gamma\to\pi_{n-1}(S^{n-1})\times\pi_n(S^n)$ は準同型である。単射:$\Phi(g)=0$ なら $\partial g=0$ なので完全性から $g=j(y)$ と書け、$0=j'^{-1}\rho j(y)=y$ から $g=0$ である。全射:$\pi_{n-1}(S^n)=0$($n-1< n$)なので完全性から $\partial$ は全射である。$(w,y)$ が与えられたら $\partial g=w$ となる $g$ をとり、$y':=j'^{-1}\rho(g)$ とおくと、$\partial\circ j=0$ により $\Phi(g+j(y-y'))=(w,\ y)$ である。よって $\Phi$ は同型で、(a) の前半と合わせて (a) を得る。

(b):実射影空間 の命題「円板の境界の対蹠点を貼った空間」の写像 $h\colon D^n\to\mathbb{RP}^n$ は開円板を $\mathbb{RP}^n\setminus\mathbb{RP}^{n-1}$ の上へ全単射に写し、境界を $\mathbb{RP}^{n-1}$ へ写すので、連続な全単射 $D^n/S^{n-1}\to\mathbb{RP}^n/\mathbb{RP}^{n-1}$ を誘導する。前者はコンパクトで後者は Hausdorff(CW 複体を部分複体でつぶした空間)なので同相写像であり、$D^n/S^{n-1}\cong S^n$ である。相対ホモロジーの同型は、CW 対が良い対であることによる。


6 行目:$X=[0,1]$、$A=\{0,1\}$、$x_0=1$ とする。ex-rhg-interval と同じ理由($t\mapsto2t-1$ で $D^1$ に移す)で、$\pi_1(X,A,1)$ はちょうど 2 つの元、始点が $1$ の定値の道の類と、始点が $0$ の道 $t\mapsto t$ の類からなる。$A$ を 1 点 $\ast$ につぶした商 $[0,1]/\{0,1\}$ は $t\mapsto e^{2\pi it}$ により $S^1$ と同相で、prop-rhg-absolute の 1 により $\pi_1(S^1,\{\ast\},\ast)=\pi_1(S^1,\ast)\cong\mathbb{Z}$ である。商写像は定値の道を $0$ に、道 $t\mapsto t$ を 1 周するループ $t\mapsto e^{2\pi it}$ の類(生成元)に写すので、像は 2 元しかなく全射でない。一方、相対ホモロジーでは $H_1([0,1],\{0,1\})\cong\mathbb{Z}\cong\tilde H_1(S^1)$ が商写像で同型に写る。$1$ 次の相対ホモトピー集合は群ではないので、ここで比べているのは基点付き集合の写像である。
5 行目の計算は May99 第 9 章の演習 2(p. 71)、6 行目は同書第 13 章の演習 2(p. 105)の問いにあたる。

使われ方

cor-rhg-weq と prop-rhg-all-basepoints を合わせると、包含 $A\hookrightarrow X$ が弱ホモトピー同値なら、$D^n$ からの写像で $S^{n-1}$ を $A$ に写すものは、すべての $n$ で境界を止めて $A$ へ押し込める。$X$ が CW 複体で $A$ が部分複体なら、これを胞体ごとに行って $A$ が $X$ の強変位レトラクトであることが分かる(圧縮補題)。同じ長完全列は、相対 Hurewicz の定理(Hurewiczの定理)や、相対ホモトピー群と商空間のホモトピー群の比較でも基本の道具になる。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §2.1:Proposition 2.22(良い対の商と相対ホモロジー, p. 124)。§4.1:相対ホモトピー群の定義・群の構造・円板による表示・圧縮判定法(p. 343)、Theorem 4.3(対と三つ組の長完全列, p. 344)、Example 4.4(錐, p. 345)、n 連結な対の四条件(p. 346)
[2]
J. P. May, A Concise Course in Algebraic Topology, Chicago Lectures in Mathematics, University of Chicago Press, 1999, Chapter 9 Problems 2(p. 71、実射影空間の対の相対ホモトピー群)、Chapter 13 Problems 2(p. 105、胞体の貼り付けと相対ホモトピー群)

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