Leopoldt予想(Leopoldt's conjecture)とは、代数体 $K$ と素数 $p$ について、$p$ の上の素点で $1$ に近い単数の群 $E_1$ を主単数の群 $U_1=\prod_{v\mid p}U_v^{(1)}$ に埋め込んだときの閉包の $\mathbb Z_p$ 上の階数が、単数群の階数 $r_1+r_2-1$ に等しいという予想である。$p$ 進単数規準の階数が最大であること、$K$ の独立な $\mathbb Z_p$ 拡大がちょうど $r_2+1$ 個であることなどと同値で、$r_1+r_2\le2$ の体では容易に示せ、部分体に遺伝する。$\mathbb Q$ や虚 2 次体のアーベル拡大では Brumer の定理から従うが、一般には未解決である。
前提知識: 代数体, Dirichletの単数定理, 局所体, p進数体
代数体 $K$ の単数群 $\mathcal O_K^\times$ は、Dirichletの単数定理 により、1 の冪根の群と階数 $r=r_1+r_2-1$ の自由アーベル群の積である。ここで $r_1$ は $K$ の実素点、$r_2$ は複素素点の個数である。素数 $p$ を 1 つ固定し、単数を $p$ の上の素点での完備化に埋め込むと、その閉包は $p$ 進整数 $\mathbb Z_p$ 上の加群になる。Leopoldt 予想 は、この閉包の $\mathbb Z_p$ 上の階数がちょうど $r$ である、すなわち整数係数で独立な単数は $p$ 進整数係数でも独立である、と主張する(Was82 p. 75)。
この予想は一般には未解決で、$K$ が $\mathbb Q$ か虚 2 次体のアーベル拡大なら正しいことが知られている。予想は $p$ 進単数規準が $0$ でないこと、$K$ の $\mathbb Z_p$ 拡大がちょうど $r_2+1$ 個独立にあることなど、多くの形に言い換えられ、岩澤理論 や p進L関数 の $s=1$ での値と深く結びつく。この記事では、予想を定式化し、階数の上界、$r\le1$ の場合の証明、部分体への遺伝を示し、言い換えと既知の結果を所在とともに述べる。
$K$ を代数体、$p$ を素数とする。$K$ の $p$ の上の素点 $v$ について、完備化 $K_v$ は $\mathbb Q_p$ の有限次拡大で局所体であり(局所体 の注意「大域体の完備化」)、その整数環の極大イデアルを $\mathfrak m_v$、剰余体の元の個数を $q_v$($p$ の冪)とする。$U_v^{(n)}:=1+\mathfrak m_v^n$($n\ge1$)とおき、$U_v^{(1)}$ を 主単数 の群という。
$u\in U_v^{(1)}$ と $a\in\mathbb Z_p$ について、$a$ に $p$ 進的に収束する整数の列 $(a_k)$ をとると、$u^{a_k}$ は $K_v$ で収束し、その極限 $u^a$ は列の取り方によらない。$(u,a)\mapsto u^a$ は連続で、$U_v^{(1)}$ はこの作用で位相的な $\mathbb Z_p$ 加群になる。
$U_v^{(n)}/U_v^{(n+1)}$ は、$1+x\mapsto x\bmod\mathfrak m_v^{n+1}$ により加法群 $\mathfrak m_v^n/\mathfrak m_v^{n+1}$(元の個数 $q_v$)と同型なので、$U_v^{(1)}/U_v^{(n)}$ は位数 $q_v^{n-1}$ の群であり、$u^{q_v^{n-1}}\in U_v^{(n)}$ である。$q_v^{n-1}$ は $p$ の冪なので、整数 $b,c$ が $b\equiv c\pmod{q_v^{n-1}}$ をみたせば $u^bu^{-c}\in U_v^{(n)}$ である。$p$ 進 Cauchy 列 $(a_k)$ に対し $(u^{a_k})$ は $K_v$ の Cauchy 列になり、$K_v$ の完備性と $U_v^{(1)}$ が閉であることから $U_v^{(1)}$ の中で収束する。2 つの列を交互に並べた列も $a$ に収束するので、極限は列によらない。$U_v^{(n)}$ は閉なので、極限をとると $a,b\in\mathbb Z_p$、$a-b\in q_v^{n-1}\mathbb Z_p$ なら $u^a(u^b)^{-1}\in U_v^{(n)}$ である。$(uw)^a=u^aw^a$ は整数で成り立ち、同じ整数列の極限をとって $a\in\mathbb Z_p$ でも成り立つ。$uw^{-1}\in U_v^{(n)}$ なら、$U_v^{(n)}$ は閉部分群なので $(uw^{-1})^b\in U_v^{(n)}$ である。よって $uw^{-1}\in U_v^{(n)}$、$a-b\in q_v^{n-1}\mathbb Z_p$ なら $u^a(w^b)^{-1}=u^a(u^b)^{-1}(uw^{-1})^b\in U_v^{(n)}$ であり、$(u,a)\mapsto u^a$ は連続である。$u^{a+b}=u^au^b$ と $(u^a)^b=u^{ab}$ は整数で成り立ち、この連続性から $\mathbb Z_p$ でも成り立つ。$\square$
$K=\mathbb Q_p$($p$ 奇素数)では $U^{(1)}=1+p\mathbb Z_p$ は $\mathbb Z_p$ に同型である(p進数体 の定理「$1$ に近い単元の群の構造」)。一般に $U_v^{(1)}$ は有限群と $\mathbb Z_p^{[K_v:\mathbb Q_p]}$ の直積に同型であり(Was82 p. 267)、
$$
U_1:=\prod_{v\mid p}U_v^{(1)}
$$
は $\mathbb Z_p$ 上の階数 $\sum_{v\mid p}[K_v:\mathbb Q_p]=[K:\mathbb Q]$ の加群である。有限生成 $\mathbb Z_p$ 加群 $M$ の 階数 を $\operatorname{rank}_{\mathbb Z_p}M:=\dim_{\mathbb Q_p}(M\otimes_{\mathbb Z_p}\mathbb Q_p)$ と定める。
単数 $\varepsilon\in\mathcal O_K^\times$ を、各 $v\mid p$ への埋め込みの組として $\prod_{v\mid p}K_v^\times$ の元とみなす。
$E_1:=\{\varepsilon\in\mathcal O_K^\times\mid p\text{ の上のすべての素点 }v\text{ で }\varepsilon\in U_v^{(1)}\}$ とおき、$E_1$ の $U_1$ での閉包を $\overline{E_1}$ と書く。$\overline{E_1}$ は $U_1$ の閉部分群で、lem-lc-zp-power の作用で $\mathbb Z_p$ 加群になる。
$E_1$ は $\mathcal O_K^\times$ の指数有限の部分群である。実際、$\varepsilon\mapsto(\varepsilon\bmod\mathfrak m_v)_{v\mid p}$ は有限群 $\prod_v(\mathcal O_v/\mathfrak m_v)^\times$ への準同型で、その核が $E_1$ である。よって $E_1$ も 1 の冪根の有限群と階数 $r$ の自由アーベル群の積である。
すべての代数体 $K$ とすべての素数 $p$ について、$\operatorname{rank}_{\mathbb Z_p}\overline{E_1}=r_1+r_2-1$ である。
この形は Was82 p. 75 による(同書 p. 265 にも再掲)。NSW20 (10.3.5)(p. 627)は、下の rem-lc-equivalent の $p$ 進単数規準の階数による形で述べている。$\delta_p(K):=r_1+r_2-1-\operatorname{rank}_{\mathbb Z_p}\overline{E_1}$ を Leopoldt の欠損(Leopoldt defect)という(NSW20 (10.3.7)、p. 629)。
$\varphi\colon E_1\otimes_{\mathbb Z}\mathbb Z_p\to U_1$ を $\varepsilon\otimes a\mapsto\varepsilon^a$ で定める。
$(\varepsilon,a)\mapsto\varepsilon^a$ は $a$ について加法的、$\varepsilon$ について乗法的なので(lem-lc-zp-power)、$\varphi$ は well-defined な $\mathbb Z_p$ 加群の準同型である。$E_1\cong\mu\times\mathbb Z^r$($\mu$ は有限群)なので $E_1\otimes\mathbb Z_p\cong(\mu\otimes\mathbb Z_p)\times\mathbb Z_p^r$ であり、$\mu\otimes\mathbb Z_p$ は $\mu$ の $p$ 部分で有限である。
1:基底 $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_r$ をとると、$\varphi$ は $(\zeta,a_1,\dots,a_r)\mapsto\zeta\varepsilon_1^{a_1}\cdots\varepsilon_r^{a_r}$ で、lem-lc-zp-power により連続である。定義域はコンパクトなので像はコンパクト、したがって Hausdorff 空間 $U_1$ の閉集合で、$E_1$ を含むから $\overline{E_1}$ を含む。逆に $\mathbb Z^r$ は $\mathbb Z_p^r$ で稠密なので、像は $E_1$ の像の閉包に含まれる。
2:完全列 $0\to\ker\varphi\to E_1\otimes\mathbb Z_p\to\overline{E_1}\to0$ に $\otimes_{\mathbb Z_p}\mathbb Q_p$ をとると、$\mathbb Q_p$ は $\mathbb Z_p$ 上平坦なので完全列のままであり、次元を数えて主張を得る。
3:2 により、予想は $\operatorname{rank}\ker\varphi=0$ と同値である。$\ker\varphi$ は有限生成 $\mathbb Z_p$ 加群 $E_1\otimes\mathbb Z_p$ の部分加群なので、階数 $0$ であることは捩れ部分 $\mu\otimes\mathbb Z_p$(有限)に含まれることと同値である。$\square$
$E_1$ の代わりに、$U_1$ に含まれる $\mathcal O_K^\times$ の別の指数有限の部分群を使っても、閉包の階数は変わらない。2 つの部分群の共通部分も指数有限で、$\varphi$ の定義域を $\otimes\mathbb Q_p$ したものは変わらないからである。
$r_1+r_2\le2$ なら、すべての素数 $p$ について Leopoldt 予想は成り立つ。$r_1+r_2\le2$ となるのは、$\mathbb Q$、虚 2 次体、実 2 次体、実素点を 1 つだけもつ 3 次体、総虚な 4 次体である。
$r=r_1+r_2-1\le1$ である。$r=0$ なら prop-lc-kernel の 2 により階数は $0=r$ である。$r=1$ とし、$E_1$ の 1 の冪根でない元 $\varepsilon$ をとる。$a\mapsto\varepsilon^a$ は $\mathbb Z_p$ から $U_1$ への連続な準同型で、その核は $\mathbb Z_p$ の閉部分群なので、$0$ か $p^n\mathbb Z_p$ である(岩澤理論 の命題「$\mathbb{Z}_p$ 拡大の中間体」の (a))。$p^n\mathbb Z_p$ なら $\varepsilon^{p^n}=1$ が $K_v$ で、したがって $K$ で成り立ち($K\to K_v$ は単射)、$\varepsilon$ が 1 の冪根でないことに反する。よって核は $0$ で、$\overline{E_1}$ は $\mathbb Z_p$ に同型な部分加群を含み、階数は $1$ 以上である。prop-lc-kernel の 2 から階数は $1=r$ である。
体の列挙:次数 $n=r_1+2r_2$ で $r_1+r_2\le2$ なのは $(r_1,r_2)=(1,0),(0,1),(2,0),(1,1),(0,2)$、すなわち $n=1,2,2,3,4$ の上の場合である。$\square$
NSW20 p. 627 は同じ観察から、2 次体、虚 2 次体の 2 次拡大、総実でない 3 次体について予想が成り立つと述べている。
$K\subseteq L$ を代数体とする。Leopoldt 予想が $L$ と $p$ について成り立てば、$K$ と $p$ についても成り立つ。
$K$ の $p$ の上の素点 $v$ と、その上の $L$ の素点 $w$ について、$K_v\subseteq L_w$ で $\mathfrak m_v\subseteq\mathfrak m_w$ なので、$U_v^{(1)}\subseteq U_w^{(1)}$ である。$x\mapsto(x)_{w}$($w$ は $v$ の上を動く)で定まる $\iota\colon U_1(K)\to U_1(L)$ は単射で連続な $\mathbb Z_p$ 準同型である。$E_1(K)\subseteq E_1(L)$ であり、$\mathbb Z_p$ は $\mathbb Z$ 上平坦(捩れがない)なので $E_1(K)\otimes\mathbb Z_p\to E_1(L)\otimes\mathbb Z_p$ は単射である。可換図式
$$
\begin{array}{ccc}
E_1(K)\otimes\mathbb Z_p&\xrightarrow{\varphi_K}&U_1(K)\\
\downarrow&&\downarrow{\scriptstyle\iota}\\
E_1(L)\otimes\mathbb Z_p&\xrightarrow{\varphi_L}&U_1(L)
\end{array}
$$
から、$\ker\varphi_K$ は単射により $\ker\varphi_L$ の部分群に移る。仮定と prop-lc-kernel の 3 により $\ker\varphi_L$ は有限なので、$\ker\varphi_K$ も有限であり、同じ命題から $K$ について予想が成り立つ。$\square$
この定理は NSW20 (10.3.11)(p. 629)の (i) にあたる。Kronecker–Weberの定理 によりアーベル体は円分体に含まれるので、アーベル体の場合は円分体の場合に帰着する。
以下の同値性はこの記事では証明しない。
2 から、$K$ が総実で予想が成り立てば、$K$ の $\mathbb Z_p$ 拡大は円分 $\mathbb Z_p$ 拡大(岩澤理論 の定理「円分 $\mathbb{Z}_p$ 拡大」)ただ 1 つである。実際、$r_2=0$ なので $\operatorname{Gal}(\widetilde K/K)\cong\mathbb Z_p$ であり、$\mathbb Z_p$ 拡大 $K_\infty\subseteq\widetilde K$ は $\mathbb Z_p$ の閉部分群 $H$ で $\mathbb Z_p/H\cong\mathbb Z_p$ となるものに対応するが、$0$ でない閉部分群 $p^n\mathbb Z_p$ の商は有限なので $H=0$、すなわち $K_\infty=\widetilde K$ だからである。
p進L関数 との関係も深い。総実なアーベル体 $K$ について、$K$ に対応する自明でない偶指標 $\chi$ の $L_p(1,\chi)$ の積は、$2^{d-1}h(K)R_p(K)/\sqrt{D_K}$ に $p$ における因子 $\prod_\chi(1-\chi(p)p^{-1})$ を掛けたものに等しい($d=[K:\mathbb Q]$、$h(K)$ は類数、$D_K$ は判別式。符号は適当に選ぶ。Was82 Theorem 5.24、p. 71)。$p$ における因子は $0$ でないので、この場合、予想はすべての $L_p(1,\chi)$ が $0$ でないことと同値である。
この節の定理はこの記事では証明しない。
$K=\mathbb Q(\sqrt2)$、$\varepsilon=1+\sqrt2$ とする。$3^2=9\equiv2\pmod7$ なので、Hensel の補題により $\beta^2=2$、$\beta\equiv3\pmod7$ となる $\beta\in\mathbb Z_7$ があり、$7$ は $K$ で 2 つの素点に分解して、それぞれ $\sqrt2\mapsto\beta$、$\sqrt2\mapsto-\beta$ で $K_v=\mathbb Q_7$ となる。$\varepsilon$ の像は法 $7$ で $1+3=4$ と $1-3\equiv5$ で、$4^3\equiv1$、$5^6\equiv1\pmod7$ なので $\varepsilon^6\in E_1$ である。$U_1=(1+7\mathbb Z_7)^2$ は階数 $2$ だが、$\overline{E_1}$ は $\varepsilon^6$ で生成され、thm-lc-small-rank により階数 $1=r$ である。
虚 2 次体 $K$ では $r=0$ なので予想は自明に成り立ち、rem-lc-equivalent の 2 により $\operatorname{Gal}(\widetilde K/K)\cong\mathbb Z_p^2$ である。円分 $\mathbb Z_p$ 拡大のほかにも $\mathbb Z_p$ 拡大が無限に多くある(岩澤理論 の節「円分 $\mathbb{Z}_p$ 拡大」の後の段落)。
予想の主張の「単数であること」と「$p$ の上のすべての素点で同時に見ること」は、どちらも外せない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 単数群を考える | $K=\mathbb Q$、$p=3$、$7$ と $13$ で生成される $\mathbb Q^\times$ の部分群 | $\mathbb Z$ 上の階数 $2$ が閉包の $\mathbb Z_3$ 上の階数に等しいこと |
| $p$ の上のすべての素点で見る | $K=\mathbb Q(\zeta_7+\zeta_7^{-1})$、$p=13$、$13$ の上の 1 つの素点 $v$ | 単数群の階数 $2$ が $U_v^{(1)}$ での閉包の階数に等しいこと |
1 行目:$7\equiv13\equiv1\pmod3$ なので $7,13\in1+3\mathbb Z_3$ である。素因数分解の一意性から $7^a13^b=1$ なら $a=b=0$ で、$\langle7,13\rangle$ の $\mathbb Z$ 上の階数は $2$ である。一方 $1+3\mathbb Z_3\cong\mathbb Z_3$(p進数体 の定理「$1$ に近い単元の群の構造」)の閉部分加群の階数は $1$ 以下である。この例は Was82 p. 75 の注意にある。
2 行目:$K$ は $\mathbb Q(\zeta_7)$ の最大実部分体で、総実な 3 次体なので $r=2$ である。$13\equiv-1\pmod7$ の法 $7$ での位数は $2$ なので、円分体 の定理「円分体における素数の分解」により、$13$ は $\mathbb Q(\zeta_7)$ で不分岐で、剰余次数は $2$ である。$K/\mathbb Q$ でも $13$ は不分岐で、剰余次数 $f$ と素点の個数 $g$ は $fg=[K:\mathbb Q]=3$ をみたし、$f$ は $\mathbb Q(\zeta_7)$ での剰余次数 $2$ を割るので $f=1$、$g=3$ である。すなわち $13$ は $K$ で完全分解する。よって各 $v\mid13$ で $K_v=\mathbb Q_{13}$、$U_v^{(1)}=1+13\mathbb Z_{13}\cong\mathbb Z_{13}$ で、1 つの $v$ での閉包の階数は $1$ 以下である。$K$ はアーベル体なので予想そのものは成り立ち、$U_1=\prod_{v\mid13}U_v^{(1)}$ での閉包の階数は $2$ である。素点ごとの関係は素点によって異なり、すべての素点で同時に成り立つ関係はない(Was82 p. 75 の注意)。
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