余可算位相

同義語:可算補位相補可算位相

概要

余可算位相(cocountable topology)とは、集合 $X$ 上で、空集合と、補集合が高々可算であるような部分集合の全体を開集合とする位相のことである。$X$ が高々可算なときは離散位相に一致する。$X$ が非可算なときは、一点集合が閉である一方で空でない二つの開集合が必ず交わるので、$T_1$ ではあるが Hausdorff ではなく、連結で距離化可能でもない。Lindelöf だが第1可算でもコンパクトでもなく、収束する点列が最終的に定数になるので、点列閉でも閉でない集合がある。分離公理や点列による判定の反例として使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 可算集合, 閉包

定義

以下、集合 $A$ が高々可算であるとは、$A$ から $\mathbb{N}$ への単射が存在すること、すなわち $A$ が有限集合か可算無限集合であることをいう。高々可算でない集合を非可算という。高々可算な集合の部分集合は高々可算であり(単射を制限すればよい)、高々可算な二つの集合の合併も高々可算である(prf-cocountable-topology-axioms で確かめる)。

補集合が高々可算な部分集合を開集合とする族

集合 $X$ に対し
$$\tau_{\mathrm{coc}}(X):=\{\emptyset\}\cup\{U\subset X\mid X\setminus U\ \text{は高々可算}\}$$
とおく。$\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ は $X$ 上の位相であり(prop-cocountable-topology-axioms)、これを $X$ の余可算位相(cocountable topology)または可算補位相という。位相空間 $\langle X,\tau_{\mathrm{coc}}(X)\rangle$ を、余可算位相を入れた $X$ という。

$X$ 自身は $X\setminus X=\emptyset$ が有限なので開集合である。$X$ が高々可算のときは $\emptyset$ の補集合 $X$ も高々可算なので $\emptyset$ を別に加える必要はないが、$X$ が非可算のときは $\emptyset$ を明示的に加えないと族が位相にならない。閉集合は、$X$ 自身と、高々可算な部分集合の全体である。

直感

「高々可算の分だけ大きさが違う」ことを無視する位相である。非可算集合の上では開集合が「補集合が小さい集合」しかないので、どの二つの空でない開集合も交わってしまい、二点を近傍で引き離すことができない。それでも一点集合は閉なので $T_1$ の条件は満たしており、$T_1$ から Hausdorff が導けないことを示す標準的な例になっている。

例と反例

台集合が高々可算な場合

$X$ が高々可算ならば $\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ は離散位相、すなわち $X$ のすべての部分集合が開集合である。実際、任意の $U\subset X$ について $X\setminus U\subset X$ は高々可算だからである。逆も成り立つ(prop-cocountable-topology-discrete)。とくに有限集合や $\mathbb{Q}$ に余可算位相を入れると離散空間になる。

実数直線での他の位相との比較

$X=\mathbb{R}$ とする。空集合と、補集合が有限であるような部分集合の全体は $\mathbb{R}$ 上の位相(補有限位相)をなし、有限集合は高々可算なので余可算位相に含まれる。この包含は真である:$\mathbb{R}\setminus\mathbb{Z}$ は補集合 $\mathbb{Z}$ が可算無限なので余可算位相の開集合だが、$\mathbb{Z}$ は有限でないので補有限位相の開集合ではない。一方、余可算位相と $\mathbb{R}$ の通常の位相は、どちらも他方を含まない。$\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ は補集合 $\mathbb{Q}$ が可算無限なので余可算位相で開集合だが、通常の位相では開集合でない(無理数 $x$ を含むどの開区間も有理数を含むので、$\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ は $x$ の近傍を含まない)。逆に区間 $(0,1)$ は通常の位相で開集合だが、補集合 $(-\infty,0]\cup[1,\infty)$ が非可算なので余可算位相では開集合でない。

反例:分離公理の含意が破れること

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。この空間は性質 $P$「$T_1$ である(相異なる二点 $x\neq y$ に対し、$x$ を含み $y$ を含まない開集合がある)」を満たすが(prop-cocountable-topology-t1)、性質 $Q$「Hausdorff である(相異なる二点が交わらない開近傍で分離される)」を満たさない(cor-cocountable-topology-separation)。したがって含意 $P\Rightarrow Q$ は成り立たない。同じ空間は連結であり、距離化可能でもない(いずれも cor-cocountable-topology-separation)。余可算位相は Mun00 §12 Example 4(p. 77)に位相の例として挙がっている。

性質

開集合系の公理をみたすこと

任意の集合 $X$ に対し、$\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ は $X$ 上の位相である。

まず、高々可算な二つの集合 $A,B$ の合併が高々可算であることを見る。単射 $f\colon A\to\mathbb{N}$ と $g\colon B\to\mathbb{N}$ をそれぞれ一つ取り、$h\colon A\cup B\to\mathbb{N}$ を、$x\in A$ のとき $h(x)=2f(x)$、$x\in B\setminus A$ のとき $h(x)=2g(x)+1$ と定める。偶数と奇数は一致せず、$f$ と $g$ は単射なので $h$ は単射である。よって $A\cup B$ は高々可算である。二つの集合について単射を選ぶだけなので、選択公理は使わない。
(1) $\emptyset\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ は定義による。$X\setminus X=\emptyset$ は有限なので $X\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ である。
(2) 任意合併について。$\{U_i\}_{i\in I}$ を $\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ の元の族とし、$U=\bigcup_{i\in I}U_i$ とおく。すべての $U_i$ が空なら $U=\emptyset\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ である。そうでなければ $U_{i_0}\neq\emptyset$ となる $i_0\in I$ を一つ取る(空でない一つの集合から元を一つ取るだけなので選択公理は使わない)。定義より $X\setminus U_{i_0}$ は高々可算である。de Morgan の法則から
$$X\setminus U=\bigcap_{i\in I}(X\setminus U_i)\subset X\setminus U_{i_0}$$
であり、高々可算な集合の部分集合は高々可算なので $X\setminus U$ は高々可算である。よって $U\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ である。
(3) 有限交叉について。$U,V\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ とする。どちらかが空なら $U\cap V=\emptyset\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ である。ともに空でなければ $X\setminus U$ と $X\setminus V$ はいずれも高々可算で、
$$X\setminus(U\cap V)=(X\setminus U)\cup(X\setminus V)$$
は冒頭で示したことから高々可算である。よって $U\cap V\in\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ である。二つの元についての交叉が閉じていれば有限個についても帰納法で従う。$\square$

一点集合はつねに閉

余可算位相を入れた $X$ において、各点 $x\in X$ に対し $\{x\}$ は閉集合である。とくにこの空間は $T_1$ である。

$X\setminus\{x\}$ の補集合は $\{x\}$ であり、これは有限なので高々可算である。したがって $X\setminus\{x\}$ は開集合であり、$\{x\}$ は閉集合である。相異なる二点 $x\neq y$ に対し、$X\setminus\{y\}$ は $x$ を含み $y$ を含まない開集合なので、$T_1$ の条件が満たされる。$\square$

非可算な台集合では空でない開集合どうしが交わること

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。$U,V$ が空でない開集合ならば $U\cap V\neq\emptyset$ である。

$U,V$ が空でない開集合なら、定義より $X\setminus U$ と $X\setminus V$ は高々可算である。$U\cap V=\emptyset$ と仮定すると
$$X=X\setminus(U\cap V)=(X\setminus U)\cup(X\setminus V)$$
となり、prf-cocountable-topology-axioms の冒頭で示したことから $X$ は高々可算になる。これは $X$ が非可算であることに反する。よって $U\cap V\neq\emptyset$ である。$\square$

分離公理・連結性・距離化可能性への帰結

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。このとき次が成り立つ。

  1. $X$ は Hausdorff でない。
  2. $X$ は連結である。
  3. $X$ は距離化可能でない。
  1. $X$ は非可算なので相異なる二点 $x\neq y$ が取れる。$U$ を $x$ を含む開集合、$V$ を $y$ を含む開集合とすると、$U,V$ はいずれも空でないので prop-cocountable-topology-hyperconnected より $U\cap V\neq\emptyset$ である。よって $x$ と $y$ を交わらない開近傍で分離できず、$X$ は Hausdorff でない。
  2. $X=U\cup V$、$U\cap V=\emptyset$、$U$ と $V$ はともに空でない開集合、という分割があったとすると prop-cocountable-topology-hyperconnected に反する。よって $X$ は連結である。
  3. まず、距離空間 $(Y,d)$ は Hausdorff である。実際、$y\neq y'$ に対し $r=d(y,y')/2>0$ とおくと、開球 $B(y,r)$ と $B(y',r)$ は交わらない。もし $z$ が両方に属せば、三角不等式より
    $$d(y,y')\le d(y,z)+d(z,y')< r+r=d(y,y')$$
    となって矛盾するからである。Hausdorff であることは位相だけで決まる性質なので、1 と合わせて $X$ の位相は距離から定まらない。$\square$
部分集合の閉包の決定

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。$A\subset X$ に対し、$A$ が高々可算ならば $\overline{A}=A$ であり、$A$ が非可算ならば $\overline{A}=X$ である。

$A$ が高々可算のときは $X\setminus A$ が開集合なので $A$ は閉集合であり、$\overline{A}=A$ である。
$A$ が非可算とする。$x\in X$ を任意に取り、$U$ を $x$ を含む開集合とする。$U\neq\emptyset$ なので $X\setminus U$ は高々可算である。$A\subset X\setminus U$ とすると $A$ が高々可算になって仮定に反するので、$A\not\subset X\setminus U$、すなわち $A\cap U\neq\emptyset$ である。$x$ の任意の開近傍が $A$ と交わるので $x\in\overline{A}$ であり、$x$ は任意だったから $\overline{A}=X$ である。$\square$

離散位相と一致する条件

$\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ が $X$ の離散位相であることと、$X$ が高々可算であることは同値である。

$X$ が高々可算ならば、任意の $U\subset X$ に対し $X\setminus U$ は高々可算なので $U$ は開集合であり、$\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ は離散位相である。
逆を対偶で示す。$X$ が非可算とし、$x\in X$ を取る。$X\setminus\{x\}$ が高々可算だと仮定すると、$X=(X\setminus\{x\})\cup\{x\}$ は高々可算な二つの集合の合併なので高々可算となり、仮定に反する。よって $X\setminus\{x\}$ は非可算である。$\{x\}$ は空でなく補集合が高々可算でないので、$\{x\}$ は開集合でない。したがって $\tau_{\mathrm{coc}}(X)$ は離散位相でない。$\square$

収束する点列は最終的に定数

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。$X$ の点列 $(x_n)_{n\ge1}$ が $x\in X$ に収束することと、ある $N\ge1$ が存在してすべての $n\ge N$ で $x_n=x$ となることは同値である。

ある $N$ から先が $x$ に等しいならば、$x$ を含むどの開集合 $U$ についても $n\ge N$ で $x_n=x\in U$ なので、$(x_n)$ は $x$ に収束する(この向きは位相の取り方によらない)。
逆に $(x_n)$ が $x$ に収束するとし、$D=\{x_n\mid n\ge1,\ x_n\neq x\}$ とおく。$D$ は高々可算である。実際、$d\in D$ に対し $\varphi(d)=\min\{n\ge1\mid x_n=d\}$ とおくと($\mathbb{N}$ の空でない部分集合には最小元があるので定義でき、選択公理は使わない)、$\varphi(d)=\varphi(d')$ なら $d=x_{\varphi(d)}=d'$ なので $\varphi\colon D\to\mathbb{N}$ は単射である。よって $U=X\setminus D$ は開集合であり、$x\notin D$ だから $x\in U$ である。収束の定義より、ある $N$ が存在して $n\ge N$ ならば $x_n\in U$、すなわち $x_n\notin D$ である。$x_n\neq x$ であれば $D$ の定義から $x_n\in D$ となるので、$n\ge N$ では $x_n=x$ でなければならない。$\square$

可算性と被覆

非可算集合の余可算位相は、被覆については「小さい」空間のようにふるまうが、各点の近傍は可算個では捉えきれない。

Lindelöf だが第1可算でない

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。

  1. $X$ の任意の開被覆は高々可算な部分被覆をもつ($X$ は Lindelöf空間 である)。
  2. どの点 $x\in X$ でも、$x$ の開近傍の可算族 $(U_n)_{n\ge1}$ で「$x$ の任意の開近傍 $V$ がある $U_n\subseteq V$ を含む」ものは存在しない($X$ は第1可算でない)。
  1. $\mathcal U$ を開被覆とする。$X\ne\emptyset$ なので空でない $U_0\in\mathcal U$ があり、$C=X\setminus U_0$ は高々可算である。$C$ の各点 $c$ について $c$ を含む $U_c\in\mathcal U$ を一つずつ選ぶ(可算個の選択を使う)。$\{U_0\}\cup\{U_c\mid c\in C\}$ は高々可算で $X$ を覆う。
  2. そのような族 $(U_n)$ があったとする。各 $U_n$ は空でない開集合なので $X\setminus U_n$ は高々可算であり、$D=\bigcup_n(X\setminus U_n)$ も高々可算である(可算個の高々可算集合の和。ここでも可算個の選択を使う)。$X$ は非可算なので $y\in X\setminus(D\cup\{x\})$ がとれる。$V=X\setminus\{y\}$ は $x$ を含む開集合であるが、$y\notin D$ なのですべての $n$ で $y\in U_n$ となり、どの $U_n$ も $V$ に含まれない。これは仮定に反する。$\square$

$X$ はコンパクトでもない。コンパクトなら可算コンパクトだが、擬コンパクト空間 の記事の命題「余可算位相の空間は可算コンパクトでない」が示すとおり、$X$ は可算コンパクトでないからである。こうして非可算集合の余可算位相は、「Lindelöf ならコンパクト」という含意の反例でもある。

可算個の開集合の共通部分

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。

  1. 開集合の可算個の共通部分は開集合である。とくに $G_\delta$ 集合は開集合である。空でない開集合の可算個の共通部分は非可算である。
  2. $X$ は可算メタコンパクトでない。すなわち、点有限な開細分をもたない可算な開被覆がある(メタコンパクト空間)。
  1. 開集合 $U_n$($n\ge1$)のどれかが空なら共通部分は空で開集合である。すべて空でなければ、$X\setminus\bigcap_nU_n=\bigcup_n(X\setminus U_n)$ は高々可算な集合の可算個の和なので高々可算であり(可算個の選択を使う)、共通部分は開集合である。$X$ は非可算なので、このとき共通部分は非可算である。
  2. 可算無限部分集合 $\{d_1,d_2,\dots\}\subset X$(相異なる点)をとり、$U_n:=X\setminus\{d_m\mid m\ge n\}$ とおく。$U_n$ は開集合で、$d_k\in U_{k+1}$ なので $\{U_n\}_{n\ge1}$ は $X$ を覆う。$U_1\subset U_2\subset\cdots$ で、$d_N\notin U_N$ だから有限個の $U_n$ は $X$ を覆わない。$\mathcal V$ をこの被覆の開細分とする。$\mathcal V$ の空でない元が有限個しかなければ、それぞれを含む $U_n$ を一つずつ選ぶと有限個の $U_n$ が $X$ を覆うことになり矛盾する。よって $\mathcal V$ は相異なる空でない元 $V_1,V_2,\dots$ を含み、1 により $\bigcap_kV_k\neq\emptyset$ である。その点は無限個の元に属するので、$\mathcal V$ は点有限でない。$\square$

1・2 は SS78 Example 20(pp. 50–51)にある。1 の性質をもつ空間を P 空間ということがある。prop-cocountable-topology-sequence も 1 から読み直せる。$x_n\to x$ なら、$x$ と異なる値の集合 $D$ について $X\setminus D=\bigcap_{d\in D}(X\setminus\{d\})$ は可算個の開集合の共通部分なので $x$ の開近傍であり、点列はやがて $D$ を出る。

点列では閉包が捉えられないこと

prop-cocountable-topology-sequence により、この空間の点列は極限に最終的に等しいものしか収束しない。そのため点列の言葉では閉包や連続性を判定できない。

点列閉だが閉でない集合

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。$X$ の部分集合 $A$ は、$A$ の点列が $X$ で収束すればその極限も $A$ に属する(点列閉である)。実際、$A$ の点列 $(a_n)$ が $x$ に収束すれば、ある番号から先で $a_n=x$ なので $x\in A$ である。一方、prop-cocountable-topology-closure により、非可算な $A\ne X$ は閉でない(閉包が $X$)。たとえば $x\in X$ を一つ固定した $A=X\setminus\{x\}$ では、$x\in\overline A$ なのに、$A$ の点列で $x$ に収束するものはない。

この例から、この空間は 列型空間 ではない(点列閉なら閉、が成り立たない)。また、$\mathbb R$ の余可算位相から離散位相への恒等写像は、点列を保つのに連続でない(連続写像 の記事の例「反例:点列連続だが連続でない写像」)。距離空間では点列で閉集合と連続性が判定できるので、ここでも cor-cocountable-topology-separation の 3(距離化可能でない)が改めて確かめられる。

道とホモロジー

非可算集合の余可算位相は連結だが、道は定値写像しかない。そのため特異ホモロジーは連結性を見ず、開被覆から作る Čech コホモロジーとは 0 次から食い違う。

コンパクト部分集合と道

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。

  1. $X$ の部分集合がコンパクトであることと、有限集合であることは同値である。
  2. 連結なコンパクト空間 $K$ からの連続写像 $K\to X$ は定値写像である。とくに $X$ の道はすべて定値で、弧状連結成分は一点集合である。

1:有限集合はコンパクトである。$K\subset X$ が無限集合なら、可算無限部分集合 $D\subset K$ がとれる(可算個の選択を使う)。$D$ は可算なので $X$ の閉集合であり、$K$ でも閉である。また $d\in D$ について $D\cap\bigl(X\setminus(D\setminus\{d\})\bigr)=\{d\}$ なので、$D$ の相対位相は離散位相である。$K$ がコンパクトなら、その閉集合 $D$ もコンパクトになるが、無限離散空間 $D$ の一点集合による被覆は有限部分被覆をもたない。よって無限集合 $K$ はコンパクトでない。
2:$f\colon K\to X$ の像 $f(K)$ はコンパクトなので、1 により有限集合である。有限集合 $F\subset X$ の部分集合はどれも可算で $X$ の閉集合だから、$F$ の相対位相は離散位相である。$f(K)$ は連結な離散空間なので一点からなる。$[0,1]$ は連結でコンパクトなので、道は定値である。$\square$

特異ホモロジーと Čech コホモロジーの食い違い

$X$ を非可算集合とし、余可算位相を入れる。

  1. 球面 $S^n$ も標準単体 $\Delta^q$ も連結でコンパクトなので、prop-cocountable-topology-paths により基点付き写像 $S^n\to X$ と特異単体 $\Delta^q\to X$ はすべて定値写像である。よってすべての $x\in X$ と $n\ge1$ で ホモトピー群 $\pi_n(X,x)$ は自明であり、整数係数の特異ホモロジーは $H_0(X;\mathbb{Z})\cong\bigoplus_{x\in X}\mathbb{Z}$、$H_q(X;\mathbb{Z})=0$($q\ge1$)、特異コホモロジーは $H^0(X;\mathbb{Z})\cong\prod_{x\in X}\mathbb{Z}$、$H^q(X;\mathbb{Z})=0$($q\ge1$)である。
  2. 開被覆の脈体で定める Čechコホモロジー(その記事の注意「開被覆の脈体による記述」の $\check H^p(X;\mathbb{Z})$)は、$\check H^0(X;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$、$\check H^p(X;\mathbb{Z})=0$($p\ge1$)である。
    1 の $H^0$ は弧状連結成分(一点集合)ごとに値を選ぶ写像の全体であり、2 の $\check H^0$ は連結な $X$ 上の局所定数関数、すなわち定数の全体である。$X$ の点が非可算個あるので、$\check H^0(X;\mathbb{Z})\to H^0(X;\mathbb{Z})$(整数 $a$ を値がすべて $a$ の族に送る写像)は全射でない。
    1・2 の計算を開く

    1:$x$ への定値写像である $q$ 単体を $\sigma_{x,q}$ と書くと、$C_q(X)=\bigoplus_{x\in X}\mathbb{Z}\sigma_{x,q}$ で、$\partial\sigma_{x,q}=\sum_{i=0}^q(-1)^i\sigma_{x,q-1}$ は $q$ が正の偶数なら $\sigma_{x,q-1}$、奇数なら $0$ である。鎖複体は各点の複体 $\mathbb{Z}\xleftarrow{0}\mathbb{Z}\xleftarrow{\mathrm{id}}\mathbb{Z}\xleftarrow{0}\cdots$ の直和で、この複体のホモロジーは次数 $0$ だけが $\mathbb{Z}$ である。余鎖複体はその直積で、同じ計算になる。

    2:開被覆 $\mathfrak U=\{U_i\}_{i\in I}$ の空でない元を有限個 $U_{i_0},\dots,U_{i_p}$ とると、補集合の合併 $\bigcup_k(X\setminus U_{i_k})$ は可算なので $X$ と異なり、$U_{i_0}\cap\cdots\cap U_{i_p}\ne\emptyset$ である。よって脈体 $N(\mathfrak U)$ は、頂点集合のすべての有限部分集合を単体とする複体である。その幾何的実現は、1 つの頂点への線分に沿った縮約で可縮なので、幾何的実現の特異コホモロジーと同型な単体的コホモロジー(同じ注意)は $H^0(N(\mathfrak U);\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$(定数関数)、$H^p=0$($p\ge1$)である。細分の写像は定数関数を同じ定数関数に送るので、順極限も $\mathbb{Z}$($p=0$)と $0$($p\ge1$)である。

反例の表

非可算集合 $X$ の余可算位相が破る含意をまとめる。

外す条件反例成り立たなくなること
Hausdorff($T_1$ だけを仮定)非可算集合の余可算位相$T_1$ なら Hausdorff
可算コンパクト(Lindelöf だけを仮定)同上Lindelöf ならコンパクト
列型(点列だけで判定)同上の $X\setminus\{x\}$点列閉なら閉
第1可算同上点列連続なら連続
台集合が高々可算非可算な $X$余可算位相が離散位相
弧状連結(連結だけを仮定)非可算集合の余可算位相特異コホモロジーと Čech コホモロジーの 0 次の一致

1 行目は cor-cocountable-topology-separation の 1、2 行目は prop-cocountable-topology-lindelof とその後の段落、3・4 行目は ex-cocountable-topology-sequentially-closed とその後の段落、6 行目は ex-cocountable-topology-singular-vs-cech による。

補足:補有限位相との関係と、他の記事での使われ方

$X$ 上の補有限位相(空集合と、補集合が有限であるような部分集合の全体)は余可算位相に含まれる。二つの位相は「無視する大きさ」を有限に取るか高々可算に取るかだけが違う。$X$ が可算無限部分集合を持つときこの包含は真になり、$X=\mathbb{R}$ での具体例は ex-cocountable-topology-real-line に挙げた。
非可算集合の余可算位相は、擬コンパクト空間 の記事で「擬コンパクトだが可算コンパクトでない空間」の反例として使われている。そこでは、この空間の上の実数値連続関数がすべて定数であること、この空間が可算コンパクトでないこと、正規空間でないことが示されている。本記事はそれらの主張を再掲せず、当該記事に委ねる。
prop-cocountable-topology-lindelof と prop-cocountable-topology-paths(可算個の選択を使う)を除いて、本記事の証明では選択公理を使っていない。使ったのは、高々可算な集合の部分集合と、高々可算な二つの集合の合併が高々可算であること、および $\mathbb{N}$ の空でない部分集合が最小元を持つことだけである。

関連項目

参考文献

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