共終関手(cofinal functor)とは、関手 $L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ であって、$\mathcal J$ の各対象 $k$ について、$k$ から $L$ の像への射のなすコンマ圏 $(k\downarrow L)$ が空でなく連結であるものをいう。共終関手に沿って図式を制限しても余極限の存在と値は変わらず、逆に $\mathcal J'$ が小さく $\mathcal J$ が局所小のとき、集合値のすべての図式で余極限が変わらない関手は共終である。有向集合の間の単調写像では、共終であることは像が共終部分集合であることと同値で、部分列や単調な写像による部分ネット、茎の基本近傍系による計算はこの特別な場合である。フィルター圏の対角関手は共終であり、そこから集合の圏でフィルター余極限が二項積と交換することが従う。
共終関手(cofinal functor)は、余極限を計算するとき添字の圏を取り替えてよい関手である。自然数の列 $A_0\to A_1\to A_2\to\cdots$ の余極限は、偶数番目だけの列 $A_0\to A_2\to A_4\to\cdots$ の余極限と同じであり、点の茎はすべての開近傍の代わりに基本近傍系の上で計算できる。こうした「十分先まで届いている部分で計算してよい」という現象を、一般の添字圏と関手について定式化したものが共終関手である。
関手 $L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ が共終であるとは、$\mathcal J$ の各対象 $k$ について、「$k$ から $L$ の像への射」のなす圏が空でなく連結であることをいう。主定理(thm-cofinal-main)は、このとき任意の図式 $F\colon\mathcal J\to\mathcal X$ について $F$ と $F\circ L$ の余極限が一致することを述べる。逆に $\mathcal J'$ が小さく $\mathcal J$ が局所小なら、集合値のすべての図式で余極限が一致する関手は共終である(thm-cofinal-criterion)。有向集合の間の単調写像では、共終性は「像が共終部分集合であること」に帰着し(prop-cofinal-directed)、単調な写像で与えたネットの部分ネットの共終性はこの意味で共終関手の特別な場合である。
関手 $L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ と $\mathcal J$ の対象 $k$ に対し、コンマ圏 $(k\downarrow L)$ を次の圏とする。対象は組 $(j',u)$($j'\in\mathcal J'$、$u\colon k\to L(j')$)であり、$(j',u)$ から $(j'',u')$ への射は、$L(a)\circ u=u'$ を満たす $\mathcal J'$ の射 $a\colon j'\to j''$ である。これはコンマ圏の定義で、左側の関手を一点圏から $k$ を選ぶ関手にとったものである。
圏 $\mathcal A$ の対象 $x,y$ が、対象の有限列 $x=x_0,x_1,\dots,x_n=y$ で、各 $i$ について $x_{i-1}\to x_i$ または $x_i\to x_{i-1}$ の射があるものによって結べるとき、$x\approx y$ と書く。$\approx$ は同値関係であり、その同値類を連結成分、同値類の集まりを $\pi_0(\mathcal A)$ と書く。$\mathcal A$ が対象をもち、$\pi_0(\mathcal A)$ がただ 1 つの元からなるとき、$\mathcal A$ は連結であるという。
関手 $L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ が共終であるとは、$\mathcal J$ のすべての対象 $k$ について、コンマ圏 $(k\downarrow L)$ が連結であることをいう。すなわち、(i) 各 $k$ に射 $k\to L(j')$ があり、(ii) 2 つの射 $u\colon k\to L(j')$、$u'\colon k\to L(j'')$ は、$(k\downarrow L)$ の射の有限のジグザグで結べる。部分圏は、包含関手が共終のとき共終であるという。双対に、各 $k$ について $(L\downarrow k)$ が連結であるとき、$L$ は始関手(initial functor)であるという。
$F$ の余極限は、各 $F(k)$ からの射を矛盾なく 1 つの対象へまとめたものである。$\mathcal J'$ の上だけでまとめた $F\circ L$ の余極限へ $F(k)$ から射を作るには、$k$ から $L$ の像へ射 $u\colon k\to L(j')$ をとり、$F(k)\to F(L(j'))$ を通ればよい。そのような $u$ が存在することが (i)、どの $u$ を選んでも結果が同じになることを保証するのが (ii) である。(ii) は「選び方が 2 通りあっても、$\mathcal J'$ の中の射で行き来して比べられる」という条件であり、1 本の射で比べられなくても、ジグザグでつながっていればよい。
$\mathcal J$ の対象 $t$ を 1 つ選び、対象 $t$ と恒等射だけからなる部分圏の包含 $L\colon\{t\}\to\mathcal J$ を考える。$(k\downarrow L)$ は射 $k\to t$ を対象とし、恒等射しか射をもたない圏なので、連結であることは $k\to t$ がちょうど 1 本あることである。よって $L$ が共終であることは $t$ が終対象であることと同値である(Mac98 IX.3 の演習 1, p. 218)。このとき主定理は、終対象をもつ添字圏の上の余極限が $F(t)$ であること(余極限(圏論) の命題「終対象をもつ添字圏上の余極限」)を与える。
$\mathbb{N}$ を通常の順序で圏とみると、狭義単調増加な列 $n_0< n_1<\cdots$ による関手 $k\mapsto n_k$ は共終である(prop-cofinal-directed)。したがって列 $A_0\to A_1\to\cdots$ の余極限は部分列 $A_{n_0}\to A_{n_1}\to\cdots$ の余極限に一致する。同じく有向集合 $D$ の共終部分集合 $M$(有向集合 の定義「共終部分集合」)について包含 $M\to D$ は共終であり、$D$ 上の帰納系の余極限は $M$ に制限して計算してよい。射影系の射影極限を共終部分集合に制限してよいことは、双対の始関手の場合である(射影極限 の命題「共終部分集合への制限」)。
位相空間の点 $x$ の開近傍全体を逆向きの包含で並べた有向集合を $\mathcal N_x$、その中の基本近傍系を $\mathcal B_x$ とする。任意の開近傍 $U$ は $\mathcal B_x$ の元 $V\subset U$ を含むので、$\mathcal B_x$ は $\mathcal N_x$ の共終部分集合であり、包含 $\mathcal B_x\to\mathcal N_x$ は共終である。よって前層の茎 $\varinjlim_{U\in\mathcal N_x}\mathcal F(U)$ は基本近傍系の上の帰納極限で計算できる(茎)。
$\mathcal J=\{0\to1\}$(射 $0\to1$ を 1 本もつ圏)、$\mathcal J'$ を 2 対象 $a,b$ の離散圏とし、$L(a)=L(b)=1$ とする。各 $k$ から像へ射はあるので (i) は満たすが、$(0\downarrow L)$ の対象 $(a,0\to1)$、$(b,0\to1)$ の間には射がなく、$(0\downarrow L)$ は連結でない。$F(0)=F(1)=\{*\}$ とする集合値の関手 $F$ では、$1$ が終対象なので $\operatorname{colim}F=F(1)$ は 1 点だが、$\operatorname{colim}(F\circ L)=F(1)\sqcup F(1)$ は 2 点である。
図式 $F\colon\mathcal J\to\mathcal X$ と対象 $x\in\mathcal X$ について、頂点 $x$ の余錐(射の族 $\tau_k\colon F(k)\to x$ で、$\mathcal J$ の射 $w\colon k\to k'$ について $\tau_{k'}\circ F(w)=\tau_k$ を満たすもの)全体の集合を $\operatorname{Cocone}(F,x)$ と書く(余極限(圏論) の注意「表現可能性による言い換え」と同じ記号)。余錐 $\tau$ を $L$ に沿って制限した $(\tau_{L(j')})_{j'\in\mathcal J'}$ は $F\circ L$ の余錐なので、制限写像
$$
\rho_x\colon\operatorname{Cocone}(F,x)\to\operatorname{Cocone}(F\circ L,x),\qquad\tau\mapsto(\tau_{L(j')})_{j'}
$$
が定まる。射 $f\colon x\to y$ との合成と $\rho$ は交換する($\rho_y(f\circ\tau)=f\circ\rho_x(\tau)$)。
$L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ を共終関手、$F\colon\mathcal J\to\mathcal X$ を関手とする。
1 の単射性。 $\tau\in\operatorname{Cocone}(F,x)$ と $k\in\mathcal J$ をとる。(i) により射 $u\colon k\to L(j')$ がある。余錐の条件を $u$ に当てると $\tau_k=\tau_{L(j')}\circ F(u)$ なので、$\tau_k$ は制限 $\rho_x(\tau)$ から決まる。
1 の全射性。 $\sigma\in\operatorname{Cocone}(F\circ L,x)$ をとる。$(k\downarrow L)$ の対象 $(j',u)$ に $\theta(j',u):=\sigma_{j'}\circ F(u)\colon F(k)\to x$ を対応させる。$(k\downarrow L)$ の射 $a\colon(j',u)\to(j'',u')$ があれば、$u'=L(a)\circ u$ と $\sigma$ が余錐であること($\sigma_{j''}\circ F(L(a))=\sigma_{j'}$)から
$$
\theta(j'',u')=\sigma_{j''}\circ F(L(a))\circ F(u)=\sigma_{j'}\circ F(u)=\theta(j',u)
$$
である。よって $\theta$ は射で結ばれた対象で等しく、ジグザグで結ばれた対象でも等しい。$(k\downarrow L)$ は連結なので、$\theta$ は $(k\downarrow L)$ のすべての対象で同じ値をとる。その値を $\tau_k$ とおく。$\tau$ が余錐であることを示す。$w\colon k\to k'$ と $(k'\downarrow L)$ の対象 $(j',u')$ をとると、$(j',u'\circ w)$ は $(k\downarrow L)$ の対象なので
$$
\tau_k=\sigma_{j'}\circ F(u'\circ w)=\bigl(\sigma_{j'}\circ F(u')\bigr)\circ F(w)=\tau_{k'}\circ F(w)
$$
である。最後に $k=L(j')$ では対象 $(j',\operatorname{id}_{L(j')})$ を使えば $\tau_{L(j')}=\sigma_{j'}$ なので、$\rho_x(\tau)=\sigma$ である。
2。 余錐 $(c,\iota)$ が余極限であることは、すべての $x$ について $\operatorname{Hom}(c,x)\to\operatorname{Cocone}(F,x)$、$f\mapsto f\circ\iota$ が全単射であることと同じである(余極限(圏論) の注意「表現可能性による言い換え」)。$\rho_x(f\circ\iota)=f\circ\rho_c(\iota)$ なので、$f\mapsto f\circ\rho_c(\iota)$ は全単射 $f\mapsto f\circ\iota$ と全単射 $\rho_x$ の合成であり、$(c,\rho_c(\iota))$ は $F\circ L$ の余極限である。逆に $(c',\iota')$ が $F\circ L$ の余極限なら、$\tau:=\rho_{c'}^{-1}(\iota')$ について $f\mapsto f\circ\tau$ は $f\mapsto f\circ\iota'$ と $\rho_x^{-1}$ の合成なので全単射で、$(c',\tau)$ は $F$ の余極限である。両方の余極限があるとき、$(c,\rho_c(\iota))$ と $(c',\iota')$ はどちらも $F\circ L$ の余極限であり、$h$ はその間の比較の射なので同型である(余極限(圏論) の命題「余錐を保つ同型までの一意性」)。$\square$
2 のうち $F\circ L$ の余極限から $F$ の余極限が得られる向きは Mac98 IX.3 Theorem 1(pp. 217–218)にあり、添字圏が小さい場合の余極限の一致は KS06 Proposition 2.5.2 の (i)⇒(v)(pp. 57–58)にある。双対に、$L$ が始関手なら $F$ と $F\circ L$ の極限が一致する。
主定理の結論は共終性を特徴づける。以下 $\mathcal J'$ は小さい圏、$\mathcal J$ は局所小圏とする。
$k\in\mathcal J$ について、関手 $\operatorname{Hom}_{\mathcal J}(k,L(-))\colon\mathcal J'\to\mathbf{Set}$ の余極限は $\pi_0(k\downarrow L)$ であり、余錐は $u\in\operatorname{Hom}(k,L(j'))$ に $(j',u)$ の連結成分を対応させる写像である。とくに $L=\operatorname{id}_{\mathcal J}$ なら($\mathcal J$ が小さくなくても)、$\operatorname{Hom}_{\mathcal J}(k,-)$ の余極限は 1 点である。
$\operatorname{Hom}(k,L(-))$ の頂点 $X$ の余錐は、写像 $\sigma_{j'}\colon\operatorname{Hom}(k,L(j'))\to X$ の族で、$a\colon j'\to j''$ について $\sigma_{j''}(L(a)\circ u)=\sigma_{j'}(u)$ を満たすものである。これは $(k\downarrow L)$ の対象 $(j',u)$ に $\sigma_{j'}(u)$ を対応させる関数で、射 $a\colon(j',u)\to(j'',L(a)\circ u)$ の両端で値が等しいもの、すなわち $\pi_0(k\downarrow L)\to X$ という写像と同じである。この対応は $X$ について自然な全単射なので、$\pi_0(k\downarrow L)$ と上の余錐は余極限である($\mathcal J'$ が小さく $\mathcal J$ が局所小なので $\pi_0(k\downarrow L)$ は集合である)。$L=\operatorname{id}$ のとき、$(k\downarrow\operatorname{id})$ の任意の対象 $(j,u)$ へ $(k,\operatorname{id}_k)$ から射 $u$ があるので、この圏は連結で、$\pi_0$ は 1 点である(このときは $\mathcal J$ が小さくなくても、上の議論で余錐は 1 点からの写像と同じものになる)。$\square$
$L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ について、次は同値である。
1 ⇒ 2 は thm-cofinal-main である。2 ⇒ 3:$F=\operatorname{Hom}_{\mathcal J}(k,-)$ に 2 を当てると、lem-cofinal-pi0 により $\operatorname{colim}F$ は 1 点なので、$\operatorname{colim}(F\circ L)$ も 1 点である。3 ⇒ 1:lem-cofinal-pi0 により 3 は $\pi_0(k\downarrow L)$ が 1 点であること、すなわち $(k\downarrow L)$ が連結であることである。$\square$
この判定は KS06 Proposition 2.5.2 の (i)(iv)(vi) にあたり、Mac98 IX.3 は 2 ⇒ 1 の向きを演習 4・5(p. 218)にしている。判定を使うと、共終関手の合成 $L\circ M$ は共終である。$\mathcal J$ 上の $F$ について $\operatorname{colim}(F\circ L\circ M)\cong\operatorname{colim}(F\circ L)\cong\operatorname{colim}F$ が標準射で成り立つので、2 が $L\circ M$ について成り立つからである($M$ の定義域も小さい圏とする)。
有向集合 $(D,\le)$ は、対象を $D$ の元とし、$d\le d'$ のときだけ $d\to d'$ の射をただ 1 本もつ圏とみなす(薄い圏)。この圏の間の関手は単調写像である。
$D,E$ を有向集合、$\varphi\colon E\to D$ を単調写像とする。$\varphi$ が共終関手であるための必要十分条件は、$\varphi(E)$ が $D$ の共終部分集合であること、すなわち任意の $d\in D$ に対して $d\le\varphi(e)$ となる $e\in E$ があることである。
$d\in D$ について、$(d\downarrow\varphi)$ の対象は $d\le\varphi(e)$ を満たす $e$(射 $d\to\varphi(e)$ はただ 1 本)であり、$e\le e'$ ならその間に射がある(条件 $L(a)\circ u=u'$ は射が高々 1 本なので自動的に成り立つ)。よって $(d\downarrow\varphi)$ が空でないことは、$d\le\varphi(e)$ となる $e$ があることである。連結性は自動的に従う。$e_1,e_2$ が $(d\downarrow\varphi)$ の対象なら、$E$ の有向性から $e_1\le e_3$、$e_2\le e_3$ となる $e_3$ があり、単調性から $d\le\varphi(e_1)\le\varphi(e_3)$ なので $e_3$ も対象で、$e_1\to e_3\leftarrow e_2$ と結べる。$\square$
$E$ が有向でないと連結性が崩れる(ex-cofinal-not-connected は $E$ が 2 元の反鎖の場合である)。ネット の部分ネットについて、Willard の流儀(単調な $\varphi$ で像が共終)の部分ネットを与える $\varphi$ は、この命題により共終関手である(ネット の注意「部分ネットの流儀」)。Kelley の流儀では $\varphi$ に単調性を課さないので、$\varphi$ は一般には関手ではない。
圏 $\mathcal J$ がフィルター圏であるとは、(i) 対象をもち、(ii) 任意の 2 対象 $i,j$ に $i\to k$、$j\to k$ となる対象 $k$ と射があり、(iii) 任意の平行な射 $f,g\colon i\to j$ に $h\circ f=h\circ g$ となる射 $h\colon j\to k$ があることをいう(Ind対象 の定義「フィルター圏」)。有向集合はフィルター圏である。
$\mathcal J$ がフィルター圏なら、対角関手 $\Delta\colon\mathcal J\to\mathcal J\times\mathcal J$、$\Delta(j)=(j,j)$ は共終である。
$(i_1,i_2)\in\mathcal J\times\mathcal J$(直積圏)を固定する。$((i_1,i_2)\downarrow\Delta)$ の対象は $j$ と射の組 $(u_1\colon i_1\to j,\ u_2\colon i_2\to j)$ であり、$a\colon j\to j'$ が $(j,u_1,u_2)$ から $(j',a u_1,a u_2)$ への射である。(ii) により対象がある。2 つの対象 $(j,u_1,u_2)$、$(j',u'_1,u'_2)$ をとる。(ii) により射 $a\colon j\to m$、$a'\colon j'\to m$ がある。$a u_1,a'u'_1\colon i_1\to m$ は平行なので、(iii) により $b\colon m\to m'$ で $b a u_1=b a' u'_1$ となるものがある。さらに $b a u_2,b a' u'_2\colon i_2\to m'$ に (iii) を当てて $c\colon m'\to n$ で $c b a u_2=c b a' u'_2$ となるものをとる。$e:=cba$、$e':=cba'$ とおくと $e u_1=e' u'_1$、$e u_2=e' u'_2$ なので、$e$ と $e'$ はともに対象 $(n,eu_1,eu_2)$ への射であり、2 つの対象はこの対象を介して結べる。$\square$
この命題は KS06 Corollary 3.2.3 (ii)(p. 79)にある。帰結として、集合の圏ではフィルター余極限が二項積と交換する。
$\mathcal J$ を小さいフィルター圏、$A,B\colon\mathcal J\to\mathbf{Set}$ を関手とし、余極限の余錐を $\alpha_j\colon A(j)\to\operatorname{colim}A$、$\beta_j\colon B(j)\to\operatorname{colim}B$ とする。このとき $(\alpha_j\times\beta_j)_j$ が誘導する写像
$$
\operatorname{colim}_{j\in\mathcal J}\bigl(A(j)\times B(j)\bigr)\to\operatorname{colim}A\times\operatorname{colim}B
$$
は全単射である。
要点:対角関手の共終性で $\mathcal J\times\mathcal J$ 上の余極限に移し、それを片方の変数ずつ計算する。
集合の圏では小さい図式の余極限が存在する(余極限(圏論) の命題「余積と余等化子による構成」)。$H\colon\mathcal J\times\mathcal J\to\mathbf{Set}$ を $H(i,j):=A(i)\times B(j)$ で定めると $H\circ\Delta=A\times B$ である。集合 $S$ について $(-)\times S$ と $S\times(-)$ は左随伴なので(随伴関手 の例「直積と写像集合」)、余極限を保つ(余極限(圏論) の命題「左随伴は余極限を保存する」)。したがって各 $i$ について $(A(i)\times\operatorname{colim}B,(\operatorname{id}\times\beta_j)_j)$ は $H(i,-)$ の余極限であり、余極限(圏論) の定理「余極限どうしの交換」の関手 $G$ は $G(i)=A(i)\times\operatorname{colim}B$、$G(f)=A(f)\times\operatorname{id}$ である。$G$ の余極限は同じ理由で $(\operatorname{colim}A\times\operatorname{colim}B,(\alpha_i\times\operatorname{id})_i)$ なので、同定理により $(\operatorname{colim}A\times\operatorname{colim}B,(\alpha_i\times\beta_j)_{(i,j)})$ は $H$ の余極限である。prop-cofinal-diagonal と thm-cofinal-main の 2 により、その対角への制限 $(\alpha_j\times\beta_j)_j$ は $H\circ\Delta=A\times B$ の余極限である。よって $(\alpha_j\times\beta_j)_j$ が誘導する写像は、2 つの余極限の間の比較の射として全単射である。$\square$
フィルター余極限が集合の圏で有限極限と交換するという一般の定理(Mac98 IX.2 Theorem 1, p. 215)は、この記事では証明しない。$\mathcal J$ がフィルター圏でないと上の系は成り立たない(反例の表)。
∞圏(準圏)では、単体的集合の写像 $p\colon S\to T$ が共終であるとは、任意の右ファイブレーション $X\to T$ について、切断の空間の間の制限写像 $\operatorname{Map}_T(T,X)\to\operatorname{Map}_T(S,X)$ がホモトピー同値であることと定義される(HTT09 Definition 4.1.1.1, p. 223)。共終な写像は∞圏の余極限を保ち、逆に余極限を保つ写像は共終である(HTT09 Proposition 4.1.1.8, p. 226)。$T$ が∞圏のとき、$f\colon S\to T$ が共終であることは、各対象 $t$ について $S\times_T T_{t/}$ が弱可縮であることと同値である(HTT09 Theorem 4.1.3.1, p. 236。Quillen の定理 A の精密化)。これらの結果はこの記事では証明しない。
普通の圏の関手 $L\colon\mathcal J'\to\mathcal J$ の脈体 $N(L)$ にこの判定を当てると、条件は各 $k$ について $(k\downarrow L)$ の脈体が弱可縮であることになる(脈体は圏の引き戻しを単体的集合の引き戻しに移し、$N(\mathcal J)_{k/}$ の $n$ 単体は $k$ から始まる射の列 $k\to j_0\to\cdots\to j_n$ なので $(k\downarrow\operatorname{id}_{\mathcal J})$ の脈体と同型である。よって $N(\mathcal J')\times_{N(\mathcal J)}N(\mathcal J)_{k/}$ は $(k\downarrow L)=\mathcal J'\times_{\mathcal J}(k\downarrow\operatorname{id}_{\mathcal J})$ の脈体と同型である)。弱可縮な単体的集合は連結なので、$N(L)$ が∞圏の意味で共終なら $L$ はこの記事の意味で共終である。逆は成り立たない。2 対象 $a,b$ と平行な 2 本の射 $a\rightrightarrows b$ だけをもつ圏 $\mathcal P$ から一点圏への関手は、$(*\downarrow L)\cong\mathcal P$ が連結なので共終だが、$\mathcal P$ の脈体は 2 つの頂点を 2 本の辺で結んだもの(合成できる非恒等射の組がないので非退化な 2 単体はない)で、円周と弱ホモトピー同値であり弱可縮でない。∞圏では余極限が射の空間のホモトピー型まで見るので、連結性だけでなく高次のホモトピーも消えていることが要る。また、任意の単体的集合 $K$ について、ある普通の圏 $\mathcal I$ と共終写像 $N(\mathcal I)\to K$ が存在する(HTT09 Proposition 4.2.3.14, p. 254。$\mathcal I$ は $K$ の単体の圏。この記事では証明しない)ので、∞圏の余極限の多くの議論は普通の圏の脈体を添字とする場合に帰着できる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $(k\downarrow L)$ が空でない | 空の圏から一点圏への関手 | $F(*)=\{*\}$ のとき $\operatorname{colim}(F\circ L)=\emptyset$ だが $\operatorname{colim}F=\{*\}$ |
| $(k\downarrow L)$ が連結(空でないことは保つ) | 2 対象の離散圏から一点圏への関手 | $F(*)=\{*\}$ のとき $\operatorname{colim}(F\circ L)=F(*)\sqcup F(*)$ は 2 点だが $\operatorname{colim}F=F(*)$ は 1 点 |
| $E$ が有向(prop-cofinal-directed) | ex-cofinal-not-connected の 2 元の反鎖 | 像が共終でも共終関手でない |
| $\mathcal J$ がフィルター圏(cor-cofinal-filtered-product) | 2 対象の離散圏、$A=B$ は値がどちらも 1 点 | 左辺は 2 点、右辺は $2\times2=4$ 点 |
1 行目:空の図式の余極限は始対象で、集合の圏では空集合である。2 行目:$(*\downarrow L)$ は 2 対象の離散圏で、空でないが連結でない。2 対象の離散圏上の余極限は余積である。4 行目:離散圏は (ii) を満たさないのでフィルター圏でない。余極限は余積なので、左辺は $\{*\}\sqcup\{*\}$、右辺は $(\{*\}\sqcup\{*\})\times(\{*\}\sqcup\{*\})$ である。
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