群コホモロジー(group cohomology)とは、群 $G$ が作用するアーベル群 $M$ に対し、写像 $G^n\to M$ からなるコチェイン複体のコホモロジーとして定まるアーベル群の列 $H^n(G,M)$ のことである。$H^0(G,M)$ は不変元の群 $M^G$、$H^1(G,M)$ は交叉準同型を主交叉準同型で割った群、$H^2(G,M)$ は $M$ による $G$ の拡大を分類する群である。$H^n(G,M)$ は $\operatorname{Ext}^n_{\mathbb{Z}[G]}(\mathbb{Z},M)$ に等しく、$G$ 加群の短完全列から長完全列が得られる。有限群では正の次数のコホモロジーが群の位数で消える。Galois 群に使うと Galois コホモロジーになり、類体論の基本の道具になる。
群コホモロジー(group cohomology)は、群 $G$ が作用するアーベル群 $M$ に、アーベル群の列 $H^0(G,M),H^1(G,M),H^2(G,M),\dots$ を対応させる不変量である。$H^0$ は $G$ で動かない元の群 $M^G$、$H^1$ は「交叉準同型」を「主交叉準同型」で割った群、$H^2$ は群の拡大を分類する群である。短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ から $M\mapsto M^G$ を取ると右端の全射性が失われるが、そのずれを $H^1$ 以降がつないで長完全列になる。有限群では正の次数の $H^n$ が群の位数で消えるなど、計算の手がかりになる性質が多い。代数体の Galois 群に使うと Galoisコホモロジー になり、類体論の基本の道具になる。
以下、$G$ は群とする(有限とは限らない。位相は考えない)。
アーベル群 $M$ と、各 $\sigma\in G$ に対する群準同型 $M\to M$、$m\mapsto\sigma m$ の組で、$1m=m$、$(\sigma\tau)m=\sigma(\tau m)$ を満たすものを $G$ 加群という。$G$ 加群の間の群準同型 $\varphi\colon M\to N$ で $\varphi(\sigma m)=\sigma\varphi(m)$ を満たすものを $G$ 準同型という。$G$ で動かない元の部分群を
$$
M^G:=\{m\in M\mid \text{すべての }\sigma\in G\text{ で }\sigma m=m\}
$$
と書く。
$G$ 加群は、群環 $\mathbb{Z}[G]$ 上の左加群と同じものである(群環 の記事の命題「群環上の加群と群の表現」)。$G$ 準同型は $\mathbb{Z}[G]$ 線形写像と同じである。代表的な $G$ 加群を挙げる。
$n\ge0$ について、写像 $f\colon G^n\to M$ 全体を $C^n(G,M)$ とする($G^0$ は 1 点なので $C^0(G,M)=M$)。これを $n$ コチェインという。$d^n\colon C^n(G,M)\to C^{n+1}(G,M)$ を
$$
\begin{aligned}
(d^nf)(\sigma_1,\dots,\sigma_{n+1})={}&\sigma_1f(\sigma_2,\dots,\sigma_{n+1})\\
&+\sum_{i=1}^{n}(-1)^if(\sigma_1,\dots,\sigma_i\sigma_{i+1},\dots,\sigma_{n+1})+(-1)^{n+1}f(\sigma_1,\dots,\sigma_n)
\end{aligned}
$$
で定める。とくに $m\in C^0(G,M)=M$ については $(d^0m)(\sigma)=\sigma m-m$ である。
$d^{n+1}\circ d^n=0$ が成り立つ。これは後の thm-gcoh-standard-resolution で、$C^\bullet(G,M)$ を標準分解の $\operatorname{Hom}$ 複体と同一視して示す。
$Z^n(G,M):=\ker d^n$ の元を $n$ コサイクル、$B^n(G,M):=\operatorname{im}d^{n-1}$($B^0:=0$)の元を $n$ コバウンダリという。$d^n\circ d^{n-1}=0$ より $B^n\subset Z^n$ であり、
$$
H^n(G,M):=Z^n(G,M)/B^n(G,M)\qquad(n\ge0)
$$
を $G$ の $M$ 係数の $n$ 次コホモロジー群という。$G$ 準同型 $\varphi\colon M\to N$ は $f\mapsto\varphi\circ f$ で余境界写像と可換な写像 $C^n(G,M)\to C^n(G,N)$ を与え、準同型 $\varphi_*\colon H^n(G,M)\to H^n(G,N)$ を誘導する。
$\varphi_*$ が定まるのは、$\varphi$ が $G$ 準同型なので $\varphi(\sigma_1f(\dots))=\sigma_1\varphi(f(\dots))$ となり、$d^n(\varphi\circ f)=\varphi\circ d^nf$ だからである(コホモロジー の記事の命題「複体の射はコホモロジーの射を誘導する」)。
交叉準同型 $f$ は $f(1)=f(1\cdot1)=f(1)+f(1)$ から $f(1)=0$ を満たす。
$M^G$ を取る操作は、短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ を $0\to A^G\to B^G\to C^G$ に移すが、右端の $B^G\to C^G$ は全射とは限らない。$c\in C^G$ を $B$ の元 $b$ に持ち上げても $b$ は $G$ で動くかもしれず、そのずれ $\sigma b-b\in A$ が交叉準同型になる。持ち上げを取り替えると主交叉準同型だけ変わるので、ずれは $H^1(G,A)$ の元として定まり、それが $0$ なら $c$ は $B^G$ から来る。$H^1$ は「$G$ 不変な持ち上げを作ることへの障害」を測り、同じことを次の次数で繰り返したものが $H^2,H^3,\dots$ である。
コチェインの式は、$\mathbb{Z}$ の標準的な自由分解から来ている。これを使うと $d\circ d=0$ が示せ、さらに $H^n(G,M)$ を別の射影分解で計算できる。
$n\ge0$ について、$G^{n+1}$ の元 $(g_0,\dots,g_n)$ を基底とする自由アーベル群を $X_n:=\mathbb{Z}[G^{n+1}]$ とし、$G$ を $\sigma(g_0,\dots,g_n):=(\sigma g_0,\dots,\sigma g_n)$ で作用させる。$\partial_n\colon X_n\to X_{n-1}$($n\ge1$)と $\varepsilon\colon X_0\to\mathbb{Z}$ を
$$
\partial_n(g_0,\dots,g_n):=\sum_{i=0}^n(-1)^i(g_0,\dots,\widehat{g_i},\dots,g_n),\qquad\varepsilon(g_0):=1
$$
で定める($\widehat{g_i}$ は $g_i$ を除くこと)。どちらも $G$ 準同型である。
要点:1 は $(g_0,\dots,g_n)=g_0\cdot(1,g_0^{-1}g_1,\dots,g_0^{-1}g_n)$ という一意な表示から、2 は $\mathbb{Z}$ 線形な縮約ホモトピー $(g_0,\dots,g_n)\mapsto(1,g_0,\dots,g_n)$ から、3 は基底 $(1,\sigma_1,\sigma_1\sigma_2,\dots)$ の成分を 1 つずつ除くと $d^n$ の各項が現れることから従う。
1. 各 $(g_0,\dots,g_n)$ は $g_0\cdot(1,g_0^{-1}g_1,\dots,g_0^{-1}g_n)$ とただ 1 通りに書ける。よって $X_n$ は $(1,\rho_1,\dots,\rho_n)$ の形の元を基底とする自由 $\mathbb{Z}[G]$ 加群であり、$\rho_i=\tau_1\cdots\tau_i$(逆に $\tau_i=\rho_{i-1}^{-1}\rho_i$、$\rho_0=1$)でこれらは $(\tau_1,\dots,\tau_n)\in G^n$ と 1 対 1 に対応する。
2. $\partial\partial(g_0,\dots,g_n)$ を展開すると、$g_i$ と $g_j$($i< j$)を除いた項が 2 回現れる。先に $g_j$ を除くと符号は $(-1)^j(-1)^i$、先に $g_i$ を除くと $g_j$ の位置が 1 つ前にずれて $(-1)^i(-1)^{j-1}$ であり、打ち消し合う。$\varepsilon\partial_1(g_0,g_1)=1-1=0$ である。完全性のために、$\mathbb{Z}$ 線形写像 $h_{-1}\colon\mathbb{Z}\to X_0$、$1\mapsto(1)$ と $h_n\colon X_n\to X_{n+1}$、$(g_0,\dots,g_n)\mapsto(1,g_0,\dots,g_n)$ をとる。$$\partial_{n+1}(1,g_0,\dots,g_n)=(g_0,\dots,g_n)-\sum_{i=0}^n(-1)^i(1,g_0,\dots,\widehat{g_i},\dots,g_n)$$ なので $n\ge1$ では $\partial_{n+1}h_n+h_{n-1}\partial_n=\mathrm{id}$、$n=0$ では $\partial_1h_0+h_{-1}\varepsilon=\mathrm{id}$、さらに $\varepsilon h_{-1}=\mathrm{id}$ である。$x\in\ker\partial_n$ なら $x=\partial_{n+1}h_n(x)\in\operatorname{im}\partial_{n+1}$、$x\in\ker\varepsilon$ なら $x=\partial_1h_0(x)$、$\varepsilon$ は全射なので、列は完全である。各 $X_n$ は自由なので射影的である(射影分解 の記事の命題「自由加群は射影的である」)。
3. 1 により $G$ 準同型 $F$ は基底での値で決まり、その値は任意に選べるので $\Phi$ は同型である。$\sigma_1,\dots,\sigma_{n+1}\in G$ と $\rho_i:=\sigma_1\cdots\sigma_i$($\rho_0=1$)について、$(F\circ\partial_{n+1})(\rho_0,\rho_1,\dots,\rho_{n+1})$ の各項を見る。$\rho_0$ を除いた項は $F(\rho_1,\dots,\rho_{n+1})=\sigma_1F(1,\sigma_2,\sigma_2\sigma_3,\dots)=\sigma_1\Phi(F)(\sigma_2,\dots,\sigma_{n+1})$ である。$1\le i\le n$ で $\rho_i$ を除くと、隣り合う $\sigma_i,\sigma_{i+1}$ が積 $\sigma_i\sigma_{i+1}$ にまとまり、$(-1)^i\Phi(F)(\sigma_1,\dots,\sigma_i\sigma_{i+1},\dots,\sigma_{n+1})$ になる。$\rho_{n+1}$ を除いた項は $(-1)^{n+1}\Phi(F)(\sigma_1,\dots,\sigma_n)$ である。合計は $(d^n\Phi(F))(\sigma_1,\dots,\sigma_{n+1})$ に等しい。したがって $d^{n+1}d^n\Phi(F)=\Phi(F\circ\partial_{n+1}\circ\partial_{n+2})=0$ である。$\square$
$P_\bullet\to\mathbb{Z}$ を $\mathbb{Z}$ の $\mathbb{Z}[G]$ 加群としての任意の射影分解とすると、$M$ について自然な同型
$$
H^n(G,M)\cong H^n\bigl(\operatorname{Hom}_G(P_\bullet,M)\bigr)\qquad(n\ge0)
$$
がある。すなわち $H^n(G,M)\cong\operatorname{Ext}^n_{\mathbb{Z}[G]}(\mathbb{Z},M)$ である。
導来関手 の記事の命題「比較定理」により、$\mathrm{id}_{\mathbb{Z}}$ に対する鎖写像 $u\colon P_\bullet\to X_\bullet$、$v\colon X_\bullet\to P_\bullet$ があり、$vu$ と $\mathrm{id}_P$、$uv$ と $\mathrm{id}_X$ はそれぞれ鎖ホモトピックである。反変加法関手 $\operatorname{Hom}_G(-,M)$ は鎖ホモトピー $s$ を $s^*$ に移し、等式 $\mathrm{id}-vu=\partial s+s\partial$ を $\mathrm{id}-u^*v^*=s^*\partial^*+\partial^*s^*$ に移す。よって $u^*,v^*$ は互いに逆のホモトピー同値であり、コホモロジー の記事の命題「ホモトピーな複体の射は同じ射を誘導する」により、コホモロジーに互いに逆の同型を誘導する。左辺は thm-gcoh-standard-resolution の 3 により $H^n(\operatorname{Hom}_G(X_\bullet,M))$ に等しい。$M$ についての自然性は、$G$ 準同型 $M\to N$ との合成が $u^*$ と可換なことから従う。$\square$
$\operatorname{Ext}$ をここでは第 1 変数の射影分解で計算した。第 2 変数の入射分解で計算しても同じ群になることは 射影分解 の記事の節「Extの第一変数を解消する」と Ext関手 の記事を参照。
$G$ を $t$ で生成される無限巡回群とすると、$\mathbb{Z}[G]=\mathbb{Z}[t,t^{-1}]$(Laurent 多項式環)である。列
$$
0\to\mathbb{Z}[G]\xrightarrow{\ \cdot(t-1)\ }\mathbb{Z}[G]\xrightarrow{\ \varepsilon\ }\mathbb{Z}\to0
$$
は射影分解である。$\mathbb{Z}[t,t^{-1}]$ は整域なので $t-1$ 倍は単射で、$\varepsilon(f)=f(1)=0$ なら $t^kf$($k$ を十分大きくとる)は $t=1$ で $0$ になる整数係数多項式なので、モニック多項式 $t-1$ で割り切れる。$\operatorname{Hom}_G(\mathbb{Z}[G],M)\cong M$($F\mapsto F(1)$)のもとで $\cdot(t-1)$ との合成は $m\mapsto(t-1)m$ になるので、cor-gcoh-projective-resolution により
$$
H^0(G,M)=M^G,\qquad H^1(G,M)\cong M/(t-1)M,\qquad H^n(G,M)=0\quad(n\ge2)
$$
である。とくに自明な作用では $H^1(G,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ であり、prop-gcoh-low-degree の 3 の $\operatorname{Hom}(G,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ と一致する。
$0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{j}C\to0$ を $G$ 加群の短完全列とする。準同型 $\delta^n\colon H^n(G,C)\to H^{n+1}(G,A)$ があって、
$$
0\to A^G\to B^G\to C^G\xrightarrow{\delta^0}H^1(G,A)\to H^1(G,B)\to H^1(G,C)\xrightarrow{\delta^1}H^2(G,A)\to\cdots
$$
は完全である。$\delta^n$ は次のように与えられる:$f\in Z^n(G,C)$ に対し $j\circ g=f$ となる $g\in C^n(G,B)$ をとると、$d^ng$ は $i(A)$ に値をとり、$\delta^n[f]=[\,i^{-1}\circ d^ng\,]$ である。とくに $c\in C^G$ について、$j(b)=c$ となる $b\in B$ をとると $\delta^0(c)$ は交叉準同型 $\sigma\mapsto i^{-1}(\sigma b-b)$ の類である。
各 $n$ について、次の図式の行が完全で、四角形が可換であることを示す。
$$
\xymatrix{
0 \ar[r] & C^n(G,A) \ar[r]^{i_*} \ar[d]_{d^n} & C^n(G,B) \ar[r]^{j_*} \ar[d]_{d^n} & C^n(G,C) \ar[r] \ar[d]^{d^n} & 0\\
0 \ar[r] & C^{n+1}(G,A) \ar[r]^{i_*} & C^{n+1}(G,B) \ar[r]^{j_*} & C^{n+1}(G,C) \ar[r] & 0
}
$$
ここで $i_*h=i\circ h$、$j_*g=j\circ g$ であり、可換性とは $d^n\circ i_*=i_*\circ d^n$、$d^n\circ j_*=j_*\circ d^n$ のことである。これは $i,j$ が $G$ 準同型であることから従う(def-gcoh-cohomology の直後の説明)。行の完全性:$i$ が単射なので $i_*$ は単射である。$j\circ g=0$ となるのは $g$ が $\ker j=i(A)$ に値をとるとき、すなわち $g=i\circ(i^{-1}\circ g)$ と書けるときであり、$\ker j_*=\operatorname{im}i_*$ である。$j$ の集合としての切断 $s\colon C\to B$($j\circ s=\mathrm{id}_C$)を 1 つとれば、任意の $f$ について $j_*(s\circ f)=f$ なので $j_*$ は全射である。
以上で $0\to C^\bullet(G,A)\to C^\bullet(G,B)\to C^\bullet(G,C)\to0$ は複体の短完全列であり、長完全列 の記事の定理「複体の短完全列の長完全列」により、コホモロジーの長完全列が得られる。同じ記事の接続準同型の構成(コサイクルを持ち上げ、その微分を $A$ の元として読む)を今の場合に書いたものが、主張の $\delta^n$ の記述である。$n=0$ では $C^0=$ 係数の加群、$H^0=$ 不変元であり(prop-gcoh-low-degree の 1)、$(d^0b)(\sigma)=\sigma b-b$ である。$\square$
接続準同型は短完全列の射について自然である(長完全列 の記事の命題「接続準同型の自然性」)。$\delta^0$ の記述から、$c\in C^G$ が $B^G$ の元の像であることと $\delta^0(c)=0$ が同値であることが直接読み取れる:$\delta^0(c)=0$ なら $\sigma b-b=\sigma a-a$ となる $a\in A$ があり、$b-i(a)\in B^G$ は $c$ の持ち上げである。
$G$ を位数 $N$ の有限群とする。$n\ge1$ なら、任意の $G$ 加群 $M$ について $N\cdot H^n(G,M)=0$ である。
$f\in Z^n(G,M)$ とし、$g\in C^{n-1}(G,M)$ を $g(\sigma_1,\dots,\sigma_{n-1}):=\sum_{\tau\in G}f(\sigma_1,\dots,\sigma_{n-1},\tau)$ で定める($n=1$ なら $g=\sum_\tau f(\tau)\in M$)。コサイクル条件 $(d^nf)(\sigma_1,\dots,\sigma_n,\tau)=0$ は
$$
\sigma_1f(\sigma_2,\dots,\sigma_n,\tau)+\sum_{i=1}^{n-1}(-1)^if(\dots,\sigma_i\sigma_{i+1},\dots,\tau)+(-1)^nf(\sigma_1,\dots,\sigma_{n-1},\sigma_n\tau)+(-1)^{n+1}f(\sigma_1,\dots,\sigma_n)=0
$$
である。$\tau$ について $G$ 全体で和をとる。$\tau\mapsto\sigma_n\tau$ は $G$ の全単射なので、第 3 項の和は $(-1)^ng(\sigma_1,\dots,\sigma_{n-1})$ になる。したがって
$$
(d^{n-1}g)(\sigma_1,\dots,\sigma_n)+(-1)^{n+1}N\,f(\sigma_1,\dots,\sigma_n)=0
$$
であり、$Nf=(-1)^nd^{n-1}g\in B^n(G,M)$ である。$\square$
$G$ を位数 $N$ の有限群とする。
任意のアーベル群 $X$ と $n\ge1$ について $H^n(G,\operatorname{Map}(G,X))=0$ である。$G$ が有限なら $\mathbb{Z}[G]\cong\operatorname{Map}(G,\mathbb{Z})$ なので、$H^n(G,\mathbb{Z}[G])=0$($n\ge1$)である。
$G$ 加群 $P$ について、$F\mapsto(p\mapsto F(p)(1))$ は同型 $\operatorname{Hom}_G(P,\operatorname{Map}(G,X))\cong\operatorname{Hom}_{\mathbb{Z}}(P,X)$ を与え、逆写像は $u\mapsto(p\mapsto(\tau\mapsto u(\tau p)))$ である。
$F_u(p)(\tau):=u(\tau p)$ とおく。$F_u(\sigma p)(\tau)=u(\tau\sigma p)=F_u(p)(\tau\sigma)=(\sigma F_u(p))(\tau)$ なので $F_u$ は $G$ 準同型で、$F_u(p)(1)=u(p)$ である。逆に $G$ 準同型 $F$ について $u(p):=F(p)(1)$ とおくと $F_u(p)(\tau)=F(\tau p)(1)=(\tau F(p))(1)=F(p)(\tau)$ である。
$H$ を $G$ の正規部分群とすると、$M^H$ には $G/H$ が $(\sigma H)m:=\sigma m$ で作用する($\tau\in H$ について $\tau\sigma m=\sigma(\sigma^{-1}\tau\sigma)m=\sigma m$ なので $\sigma m\in M^H$)。$G/H$ から $M^H$ への交叉準同型 $f$ に $f\circ\pi$($\pi\colon G\to G/H$)を対応させる写像をインフレーション $\inf$、$G$ の交叉準同型を $H$ に制限する写像を制限 $\operatorname{res}$ という。どちらも主交叉準同型を主交叉準同型に移すので、$H^1$ の準同型を与える。
$H$ を $G$ の正規部分群とすると、次の列は完全である。
$$
0\to H^1(G/H,M^H)\xrightarrow{\inf}H^1(G,M)\xrightarrow{\operatorname{res}}H^1(H,M)
$$
要点:$H$ への制限が主交叉準同型なら、その分を引いた交叉準同型は $H$ 上で $0$ になり、$G/H$ 上の $M^H$ 値の交叉準同型を経由する。
$\inf$ の単射性:$f\circ\pi(\sigma)=\sigma m-m$($m\in M$)とする。$\tau\in H$ で $0=f(\pi\tau)=\tau m-m$ なので $m\in M^H$ であり、$f$ は $G/H$ の主交叉準同型である。$\operatorname{res}\circ\inf=0$:$f\circ\pi$ は $H$ 上で $f(1)=0$ である。$\ker\operatorname{res}\subset\operatorname{im}\inf$:交叉準同型 $g$ の $H$ への制限が $\tau\mapsto\tau m-m$ なら、$g'(\sigma):=g(\sigma)-(\sigma m-m)$ は $g$ と同じ類で $g'|_H=0$ である。$\sigma\in G$、$\tau\in H$ について $g'(\sigma\tau)=g'(\sigma)+\sigma g'(\tau)=g'(\sigma)$ なので $g'$ は $G/H$ 上の写像 $\bar g$ を経由する。また $\tau\sigma=\sigma(\sigma^{-1}\tau\sigma)$ から $\tau g'(\sigma)=g'(\tau\sigma)-g'(\tau)=g'(\sigma)$ となり、$g'$ は $M^H$ に値をとる。$\bar g$ は $G/H$ の交叉準同型で、$\inf[\bar g]=[g]$ である。$\square$
$G$ 加群 $A$ による $G$ の拡大とは、群の短完全列 $1\to A\to E\xrightarrow{\pi}G\to1$ で、$A$ を $E$ の正規部分群とみて、$\pi(e)=\sigma$ のとき $eae^{-1}=\sigma a$ となるものをいう($A$ の演算は $E$ の中では積で書く)。$\pi$ の切断 $s\colon G\to E$($\pi\circ s=\mathrm{id}$、写像としてのもの)をとると、$s(\sigma)s(\tau)s(\sigma\tau)^{-1}\in A$ なので
$$
s(\sigma)s(\tau)=f(\sigma,\tau)\,s(\sigma\tau)\qquad(f(\sigma,\tau)\in A)
$$
と書ける。$E$ の結合法則から $f$ は $2$ コサイクルであり、切断を取り替えると $f$ は $2$ コバウンダリだけ変わる。
$(s(\sigma)s(\tau))s(\rho)=f(\sigma,\tau)f(\sigma\tau,\rho)s(\sigma\tau\rho)$ であり、$s(\sigma)(s(\tau)s(\rho))=s(\sigma)f(\tau,\rho)s(\sigma)^{-1}\cdot s(\sigma)s(\tau\rho)=(\sigma f(\tau,\rho))f(\sigma,\tau\rho)s(\sigma\tau\rho)$ である($s(\sigma)as(\sigma)^{-1}=\sigma a$ を使った)。$A$ を加法で書くと $f(\sigma,\tau)+f(\sigma\tau,\rho)=\sigma f(\tau,\rho)+f(\sigma,\tau\rho)$ となり、prop-gcoh-low-degree の 4 のコサイクル条件と同じである。
別の切断は $s'(\sigma)=g(\sigma)s(\sigma)$($g\colon G\to A$)と書け、$s'(\sigma)s'(\tau)=g(\sigma)(\sigma g(\tau))f(\sigma,\tau)g(\sigma\tau)^{-1}s'(\sigma\tau)$ なので、加法で書くと $f'(\sigma,\tau)=f(\sigma,\tau)+\bigl(\sigma g(\tau)-g(\sigma\tau)+g(\sigma)\bigr)=f(\sigma,\tau)+(d^1g)(\sigma,\tau)$ である。
$E=\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$、$A=2\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$、$G=E/A\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}=\{0,1\}$ とする。$E$ は可換なので $G$ は $A$ に自明に作用する。切断 $s(0)=0$、$s(1)=1$ から、$f(1,1)=s(1)+s(1)-s(0)=2$($A$ の $0$ でない元)、ほかの値は $0$ の $2$ コサイクルが得られる。これはコバウンダリではない:$f=d^1g$ なら、自明な作用で $(d^1g)(\sigma,\tau)=g(\tau)-g(\sigma+\tau)+g(\sigma)$ なので、$f(0,0)=g(0)$ から $g(0)=0$、$f(1,1)=2g(1)-g(0)=g(0)$($A$ の中で $2g(1)=0$)から $f(1,1)=0$ となり矛盾する。したがって $H^2(\mathbb{Z}/2,\mathbb{Z}/2)\ne0$ であり、この類は分裂しない拡大 $\mathbb{Z}/4$ を表す。
$G=\{1,\sigma\}$ を位数 $2$ の群、$M=\mathbb{Z}^-$($\sigma m=-m$)とする。交叉準同型 $f$ は $f(1)=0$ と $a:=f(\sigma)$ で決まり、残る条件 $f(\sigma\sigma)=f(\sigma)+\sigma f(\sigma)$ は $0=a-a$ なのでつねに成り立つ。よって交叉準同型の群は $\mathbb{Z}$ と同型である。主交叉準同型は $f(\sigma)=\sigma m-m=-2m$ なので $2\mathbb{Z}$ に対応し、
$$
H^0(G,\mathbb{Z}^-)=0,\qquad H^1(G,\mathbb{Z}^-)\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}
$$
である。一方、自明な作用の $\mathbb{Z}$ では $H^0=\mathbb{Z}$、$H^1=\operatorname{Hom}(G,\mathbb{Z})=0$ である。
$G$ を有限群とし、係数に自明に作用させる。
$L/K$ を有限次 Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とすると、Galois 理論の基本定理により $H^0(G,L)=L^G=K$、$H^0(G,L^\times)=K^\times$ である。$\mathbb{C}/\mathbb{R}$ で $G=\{1,c\}$($c$ は複素共役)とし、短完全列 $0\to\mathbb{Z}\to\mathbb{C}\xrightarrow{\exp(2\pi i\,\cdot)}\mathbb{C}^\times\to1$ を考える。$c$ は $\mathbb{Z}$ に自明に作用するのではなく、$c(\exp(2\pi iz))=\exp(-2\pi i\bar z)$ となるので、この列を $G$ 加群の列にするには $\mathbb{Z}$ に符号で作用させ、$\mathbb{C}$ に $z\mapsto-\bar z$ で作用させる。このとき $\mathbb{C}^G=i\mathbb{R}$ の像は正の実数 $\mathbb{R}_{>0}$ で、$(\mathbb{C}^\times)^G=\mathbb{R}^\times$ なので、$H^0$ の段で全射性が崩れる。$\mathbb{C}$ は $\mathbb{Q}$ 上のベクトル空間なので cor-gcoh-h2-z の 1 により $H^1(G,\mathbb{C})=0$ であり、thm-gcoh-long-exact の完全列 $i\mathbb{R}\to\mathbb{R}^\times\xrightarrow{\delta^0}H^1(G,\mathbb{Z}^-)\to H^1(G,\mathbb{C})=0$ から、$\delta^0$ は同型 $\mathbb{R}^\times/\mathbb{R}_{>0}\cong H^1(G,\mathbb{Z}^-)\cong\mathbb{Z}/2$(ex-gcoh-sign)を与える。実数の符号がこの $H^1$ の元である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $G$ が有限 | $G=\mathbb{Z}$、$M=\mathbb{Z}$(自明な作用) | $H^1$ がある正の整数倍で消える(prop-gcoh-order-kills) |
| 作用が自明 | $G=\mathbb{Z}/2$、$M=\mathbb{Z}^-$ | $H^1(G,M)=\operatorname{Hom}(G,M)$ |
| $H^1(G,A)=0$($A$ は短完全列の左端) | $0\to\mathbb{Z}^-\xrightarrow{2}\mathbb{Z}^-\to\mathbb{Z}/2\to0$ | $B^G\to C^G$ が全射 |
表の 3 行は次のとおりである。
$G$ が有限なら、$H^0$ を $M^G/N_GM$($N_G=\sum_{\sigma\in G}\sigma$)に取り替え、負の次数に群のホモロジーをつないだ Tateコホモロジー が定義でき、巡回群では周期 $2$ になる。巡回群については Herbrand商 が $M^G/N_GM$ と $H^1$ の大きさの比を測る。Galois 群のような射有限群では、コチェインを連続なものに限った Galoisコホモロジー を使う。$L/K$ が有限次 Galois 拡大のとき $H^1(\operatorname{Gal}(L/K),L^\times)=0$ となることが Hilbertの定理90 である。
この記事の標準分解・長完全列・余誘導加群・位数による消滅・インフレーション制限列は、NSW20 第 I 章の Proposition (1.2.1)(p. 12)、Theorem (1.3.2)(p. 27)、Proposition (1.3.7)(p. 32)、Proposition (1.6.1)(p. 60)、Proposition (1.6.7)(p. 67)にあたる(同書は射有限群と連続コチェインで述べ、Proposition (1.2.1) は $\mathbb{Z}$ の分解ではなく係数 $A$ の標準分解 $0\to A\to X^0(G,A)\to X^1(G,A)\to\cdots$ の完全性として述べ、位数による消滅は制限と余制限を使って示している)。
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