Sturmの定理

同義語:シュトゥルムの定理Sturm's theorem

概要

Sturmの定理(Sturm's theorem)とは、実閉体(たとえば実数体)を係数とする多項式 $P$ について、$P$ と導関数 $P'$ から余りに $-1$ を掛けながら互除法を進めて作る Sturm 列を、$P$ の根でない 2 点 $a< b$ で評価したときの符号の変化の数の差 $V(a)-V(b)$ が、開区間 $(a,b)$ にある $P$ の相異なる根の個数に等しいという定理である。証明に使うのは多項式の割り算と多項式についての中間値の定理だけで、$\pm\infty$ での符号を使えば根の総数も分かる。2 次式では判別式による実数解の個数の判定を含み、根の分離と近似や、実閉体の理論で使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 多項式環, Euclidの互除法, 中間値の定理

実数係数の多項式 $P$ が区間 $(a,b)$ に実数解をいくつもつかは、解を求めなくても分かる。$P$ と導関数 $P'$ から割り算だけで多項式の列を作り、その列を $a$ と $b$ で評価して符号の並びを比べればよい。これが Sturm の定理(Sturm's theorem)である(BPR16 Theorem 2.62, p. 62)。2 次方程式なら判別式の符号で実数解の個数が分かるが(2次不等式)、Sturm の定理はこれを任意の次数へ広げ、しかも区間を指定して数えられる。
数えるのは 相異なる 実数解の個数で、重解も 1 個と数える。証明に使うのは多項式の割り算と、多項式についての中間値の定理だけなので、定理は実数体 $\mathbb{R}$ だけでなく任意の 実閉体 で成り立つ。区間を半分ずつに分けながら数えれば、すべての実数解を 1 つずつ区間に閉じ込め(根の分離)、好きな精度で近似できる。

定義

以下、$R$ は実閉体とする。$R=\mathbb{R}$ と思って読んでよい。$R$ は順序体なので $1+1+\dots+1>0$ であり、標数は $0$ である。

符号の変化の数

$R$ の元の有限列 $c_0,c_1,\dots,c_k$ から $0$ に等しい項を取り除いた列を $c'_0,c'_1,\dots,c'_l$ とする。隣り合う 2 項で $c'_{j-1}c'_j<0$ となる $j$ の個数を、もとの列の 符号の変化の数 といい、$\operatorname{Var}(c_0,\dots,c_k)$ と書く。

たとえば $\operatorname{Var}(1,-3,-1,2)=2$、$\operatorname{Var}(-1,0,1,2)=1$ である。$0$ でない同じ数 $d$ を全項に掛けても、符号の変化の数は変わらない。

Sturm 列

$P\in R[x]$ を $0$ でない多項式とする。$S_0:=P$、$S_1:=P'$ とし、$S_i\ne0$ である限り
$$ S_{i+1}:=-\bigl(S_{i-1}\text{ を }S_i\text{ で割った余り}\bigr) $$
と定める。次数は真に減るので、ある $k\ge0$ で $S_k\ne0$、$S_{k+1}=0$ となる。列 $S_0,S_1,\dots,S_k$ を $P$ の Sturm 列 という。$x\in R$ について
$$ V(x):=\operatorname{Var}\bigl(S_0(x),S_1(x),\dots,S_k(x)\bigr) $$
とおく。

Euclidの互除法 との違いは、余りに $-1$ を掛けて次の項にする点である。この符号の付け方がないと定理は成り立たない(下の「条件を外した反例」の表の 2 行目)。
$0$ でない多項式 $F$ の最高次の係数を $c$、次数を $d$ とするとき、$F$ の $+\infty$ での符号を $c$ の符号、$-\infty$ での符号を $(-1)^dc$ の符号と定める。$V(+\infty)$、$V(-\infty)$ は、Sturm 列の各項の $\pm\infty$ での符号の列の符号の変化の数とする。

主定理

Sturm の定理

$R$ を実閉体、$P\in R[x]$ を $0$ でない多項式とし、$a< b$ を $P(a)\ne0$、$P(b)\ne0$ をみたす $R$ の元とする。このとき、$P$ の開区間 $(a,b)$ にある相異なる根の個数は $V(a)-V(b)$ に等しい。

証明の考え方

$x$ を $a$ から $b$ へ動かすと、$V(x)$ が変わりうるのは Sturm 列のどれかの項が $0$ になる点だけである。途中の項が $0$ になる点では、その両隣の項が逆の符号をもつので、変化の数は変わらない。$P$ の根を通るときだけ、$P$ と $P'$ の符号が「異なる」から「同じ」へ変わり、変化が 1 つ減る。証明は prf-sturm で与える。

根の総数と半直線

同じ記号で、$P$ の $R$ における相異なる根の個数は $V(-\infty)-V(+\infty)$ に等しい。$a\in R$ が $P$ の根でなければ、$(a,+\infty)$ にある根の個数は $V(a)-V(+\infty)$、$(-\infty,a)$ にある根の個数は $V(-\infty)-V(a)$ である。

$V(\pm\infty)$ は各項の最高次の係数と次数だけで決まるので、根の総数は Sturm 列を作るだけで、どの点でも評価せずに分かる。

例

3 つの実数解をもつ 3 次式

$P=x^3-3x+1$ とする。$S_1=P'=3x^2-3$ で、$P=\tfrac x3S_1+(-2x+1)$ なので $S_2=2x-1$ である。$S_1$ を $S_2$ で割ると $S_1=\bigl(\tfrac32x+\tfrac34\bigr)S_2-\tfrac94$ なので $S_3=\tfrac94$ であり、$S_4=0$ である。符号は次のとおり。

$x$$S_0$$S_1$$S_2$$S_3$$V(x)$
$-\infty$$-$$+$$-$$+$$3$
$0$$+$$-$$-$$+$$2$
$1$$-$$0$$+$$+$$1$
$2$$+$$+$$+$$+$$0$
$+\infty$$+$$+$$+$$+$$0$

よって実数解は全部で $3-0=3$ 個あり、$(-\infty,0)$、$(0,1)$、$(1,2)$ に 1 個ずつある。$x=1$ では $S_1(1)=0$ だが、$1$ は $P$ の根でないので定理はそのまま使え、$0$ の項を除いて数える。

2 次式と判別式

$P=x^2+px+q$、$D:=p^2-4q$ とする。$P=\bigl(\tfrac x2+\tfrac p4\bigr)(2x+p)+q-\tfrac{p^2}4$ なので、$D\ne0$ なら Sturm 列は $P,\ 2x+p,\ D/4$ である。$\pm\infty$ での符号は $(+,-,\operatorname{sgn}D)$ と $(+,+,\operatorname{sgn}D)$ なので、$D>0$ なら $V(-\infty)-V(+\infty)=2-0=2$、$D<0$ なら $1-1=0$ である。$D=0$ なら余りが $0$ なので列は $P,\ 2x+p$ で終わり、根の個数は $1-0=1$(重解を 1 個と数える)である。判別式による実数解の個数の判定が、Sturm の定理の特別な場合として得られる。

重根をもつ多項式

$P=(x-1)^2(x+1)=x^3-x^2-x+1$ とする。$S_1=3x^2-2x-1=(3x+1)(x-1)$、$S_2=\tfrac89(x-1)$ で、$S_1$ は $S_2$ で割り切れるので列はここで終わる。$S_2$ は $P$ と $P'$ の最大公約元の定数倍である。$\pm\infty$ での符号は $(-,+,-)$ と $(+,+,+)$ なので根の個数は $2-0=2$ で、相異なる根 $1,-1$ の個数に一致する。重複度を込めた個数 $3$ ではない。

証明

Sturm 列 $S_0,\dots,S_k$ の最後の項を $D:=S_k$ とおく。

Sturm 列の性質
  1. $D$ は $P$ と $P'$ の最大公約元である($0$ でない定数倍を除く)。とくに各 $S_i$ は $D$ で割り切れ、$T_i:=S_i/D$ とおくと $T_k=1$ である。
  2. $1\le i\le k-1$ について、$S_{i-1}$ を $S_i$ で割った商を $Q_i$ とすると $T_{i-1}=Q_iT_i-T_{i+1}$ である。
  3. $0\le i\le k-1$ について、$T_i$ と $T_{i+1}$ は $R$ に共通の根をもたない。
  4. $P$ の根全体と $T_0$ の根全体は一致する。
互除法の不変量と重複度

1, 2:定義から $S_{i-1}=Q_iS_i-S_{i+1}$($1\le i\le k$、$S_{k+1}=0$)である。この式から、$S_{i-1}$ と $S_i$ の公約元全体と、$S_i$ と $S_{i+1}$ の公約元全体は一致する。$i=1,\dots,k$ とたどると、$P,P'$ の公約元全体は $S_k,0$ の公約元全体、すなわち $D$ の約元全体である。よって $D$ は $P,P'$ の最大公約元で、同じ議論で各 $S_{i-1},S_i$ の最大公約元でもある。とくに $D$ は全部の $S_i$ を割り切る。式を $D$ で割れば 2 を得る。
3:$R[x]$ は単項イデアル整域なので、$US_i+WS_{i+1}=D$ となる $U,W\in R[x]$ がある(単項イデアル整域)。$D$ で割ると $UT_i+WT_{i+1}=1$ であり、共通の根 $c$ があれば $0=1$ となって矛盾する。
4:$P=DT_0$ なので $T_0$ の根は $P$ の根である。逆に $c$ を $P$ の重複度 $m\ge1$ の根とし、$P=(x-c)^mg$、$g(c)\ne0$ と書く。
$$ P'=(x-c)^{m-1}\bigl(mg+(x-c)g'\bigr) $$
であり、標数が $0$ なので括弧内の $c$ での値 $mg(c)$ は $0$ でない。よって $(x-c)^m$ は $P'$ を割り切らず、その約元 $D$ も割り切らない。$P=DT_0$ の $(x-c)$ の重複度を比べると、$T_0$ は $x-c$ で割り切れる。$\square$

符号が一定である範囲

$F\in R[x]$ を $0$ でない多項式とする。

  1. 区間 $I\subset R$ が $F$ の根を含まなければ、$F$ は $I$ の上で一定の符号をとる。
  2. $F$ の最高次の係数を $c$、次数を $d$ とし、$F=cx^d+c_{d-1}x^{d-1}+\dots+c_0$、$B:=1+\sum_{i< d}\lvert c_i/c\rvert$ とおく。$x\ge B$ なら $F(x)$ は $c$ と同符号、$x\le-B$ なら $(-1)^dc$ と同符号である。とくに $F$ の根はすべて $(-B,B)$ にある。
多項式の中間値の定理と係数の評価

1:$x< y$ を $I$ の 2 点として $F(x)F(y)<0$ なら、実閉体 の命題「多項式の中間値の定理」により $x$ と $y$ の間に根があり、それは $I$ に属するので仮定に反する。
2:$\lvert x\rvert\ge B$ とする。$\lvert x\rvert\ge1$ なので $i< d$ について $\lvert x\rvert^{i-d}\le\lvert x\rvert^{-1}$ であり、
$$ \Bigl\lvert\sum_{i< d}\frac{c_i}{c}x^{i-d}\Bigr\rvert\le\frac1{\lvert x\rvert}\sum_{i< d}\Bigl\lvert\frac{c_i}{c}\Bigr\rvert<1 $$
である($\lvert x\rvert>\sum_{i< d}\lvert c_i/c\rvert$)。よって $F(x)=cx^d\bigl(1+\sum_{i< d}(c_i/c)x^{i-d}\bigr)$ の括弧は正で、$F(x)$ は $cx^d$ と同符号である。$x^d$ は $x>0$ なら正、$x< 0$ なら $(-1)^d$ と同符号である。$\square$

根の近くでの $PP'$ の符号

$c$ を $P$ の根とする。ある $\varepsilon>0$ があって、$c-\varepsilon< x< c$ では $P(x)P'(x)<0$、$c< x< c+\varepsilon$ では $P(x)P'(x)>0$ である。

prf-sturm-sequence の 4 の記号で $PP'=(x-c)^{2m-1}h$、$h:=g\bigl(mg+(x-c)g'\bigr)$ であり、$h(c)=mg(c)^2>0$ である。$h$ の根は有限個なので、$(c-\varepsilon,c+\varepsilon)$ が $h$ の根を含まない $\varepsilon>0$ がとれ、lem-sturm-sign の 1 によりこの区間で $h>0$ である。$2m-1$ は奇数なので $(x-c)^{2m-1}$ は $x-c$ と同符号である。$\square$

根を通るたびに変化が 1 つ減る

段 1($D$ で割る):各 $x\in R$ について $W(x):=\operatorname{Var}\bigl(T_0(x),\dots,T_k(x)\bigr)$ とおく。$P(x)\ne0$ なら $D(x)\ne0$ であり($D$ は $P$ を割り切る)、$S_i(x)=D(x)T_i(x)$ なので $V(x)=W(x)$ である。
段 2(1 点の近くでの $W$):$c\in R$ を固定し、$Z:=\{i\mid1\le i\le k-1,\ T_i(c)=0\}$ とおく。lem-sturm-sequence の 3 により $Z$ は隣り合う番号を含まず、$i\in Z$ なら $T_{i-1}(c)\ne0$、$T_{i+1}(c)\ne0$ であり、2 により $T_{i-1}(c)=-T_{i+1}(c)$ である。$T_0,\dots,T_k$ の根は有限個なので、$c$ 以外にどの $T_j$ の根も含まない区間 $J=(c-\varepsilon,c+\varepsilon)$ がとれる。$c$ で $0$ でない $T_j$ は $J$ に根をもたず、lem-sturm-sign の 1 により $J$ で一定の符号をとる。
符号の変化の数について次が成り立つ:$u,w$ が $uw<0$ をみたせば、$y$ の値($0$ を含む)によらず $\operatorname{Var}(u,y,w)=1=\operatorname{Var}(u,w)$ である。$i\in Z$ の両隣の $T_{i-1},T_{i+1}$ は $J$ 全体で逆の符号をとり、しかも $Z$ に属さない。よって $J$ の各点 $x$ で、$W(x)$ は $Z$ の番号の項を取り除いた列 $(T_j(x))_{j\notin Z}$ の符号の変化の数に等しい。この列の $j\ge1$ の項は $J$ で一定の符号をとる。

  • $P(c)\ne0$ のとき:lem-sturm-sequence の 4 により $T_0(c)\ne0$ なので、$T_0$ も $J$ で一定の符号をとり、$W$ は $J$ で一定である。
  • $P(c)=0$ のとき:$T_0(c)=0$、$T_1(c)\ne0$ である。$D$ の根は $P$ の根であり、lem-sturm-sequence の 4 により $T_0$ の根でもあるので、$J$ の $c$ 以外の点で $D(x)\ne0$ である。よって $x\ne c$ では $T_0(x)T_1(x)=P(x)P'(x)/D(x)^2$ なので、$\varepsilon$ を小さくとり直せば、lem-sturm-near-root により $c$ の左で $T_0T_1<0$、右で $T_0T_1>0$ である。ほかの隣り合う項の符号は $J$ で変わらないので、$c$ の左の点 $x$ と右の点 $x'$ について $W(x)=W(x')+1$ であり、$W$ は $c$ の左右それぞれで一定である。

段 3(区間をたどる):$(a,b)$ に含まれる $T_0,\dots,T_{k-1}$ の根を $e_1< \dots< e_r$ とし、$e_0:=a$、$e_{r+1}:=b$ とおく。各開区間 $(e_{j},e_{j+1})$ では全部の $T_i$ が $0$ でないので、lem-sturm-sign の 1 により $W$ は一定である。その値を $w_j$ とする。段 2 を $c=a$、$c=b$($P(a),P(b)\ne0$)に当てると $W(a)=w_0$、$W(b)=w_r$ であり、$c=e_j$($1\le j\le r$)に当てると、$w_{j-1}-w_j$ は $P(e_j)=0$ なら $1$、そうでなければ $0$ である。$P$ の $(a,b)$ の根は $T_0$ の根なので $e_j$ のどれかである。足し合わせると
$$ V(a)-V(b)=W(a)-W(b)=\sum_{j=1}^{r}(w_{j-1}-w_j)=\#\{x\in(a,b)\mid P(x)=0\} $$
である。$\square$

根の総数と半直線の場合

各 $S_i$ に lem-sturm-sign の 2 の $B$ をとり、その最大値以上の元を $M$ とする。$S_i$ の根はすべて $(-M,M)$ にあり、$S_i(M)$、$S_i(-M)$ の符号はそれぞれ $+\infty$、$-\infty$ での符号に等しいので、$V(M)=V(+\infty)$、$V(-M)=V(-\infty)$ である。$P$ の根はすべて $(-M,M)$ にあるので、thm-sturm を $(-M,M)$ に当てれば前半を得る。$a$ が根でないとき、$M>\lvert a\rvert$ ととって $(a,M)$、$(-M,a)$ に当てれば後半を得る。$\square$

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
区間の端が根でない$P=x$、$a=-1$、$b=0$$V(-1)-V(0)=1$ だが $(-1,0)$ に根はない
余りに $-1$ を掛ける$P=x^2-1$ で余りをそのまま並べた列 $x^2-1,\ 2x,\ -1$両端の差が $1-1=0$ で、根 $\pm1$ の個数 $2$ と合わない
2 項目が導関数 $P'$$P=x^2-1$ で 2 項目を $1$ にした列 $x^2-1,\ 1$両端の差が $0-0=0$ で、根の個数 $2$ と合わない
係数の体が実閉体$R=\mathbb{Q}$、$P=x^2-2$Sturm 列 $x^2-2,\ 2x,\ 2$ から $V(-\infty)-V(+\infty)=2$ だが、$\mathbb{Q}$ に根はない
表の各行の確かめ

各行の対象は、左の列の条件以外の仮定をみたしている。

確かめを開く

1 行目:Sturm 列は $x,\ 1$ である。$V(-1)=\operatorname{Var}(-1,1)=1$、$V(0)=\operatorname{Var}(0,1)=0$ である。$b=0$ が根なので仮定を破る。

2 行目:$x^2-1=\tfrac x2\cdot2x-1$ なので、互除法の余りは $-1$ である。$\pm\infty$ での符号は $(+,-,-)$ と $(+,+,-)$ で、どちらも変化は $1$ 回である。余りに $-1$ を掛けた正しい Sturm 列 $x^2-1,\ 2x,\ 1$ なら $(+,-,+)$ と $(+,+,+)$ で、$2-0=2$ になる。

3 行目:$x^2-1$ を $1$ で割った余りは $0$ なので列は $x^2-1,\ 1$ で終わり、$\pm\infty$ での符号はどちらも $(+,+)$ である。

4 行目:$x^2-2=\tfrac x2\cdot2x-2$ なので $S_2=2$ である。$\pm\infty$ での符号は $(+,-,+)$ と $(+,+,+)$ である。$\mathbb{Q}$ では多項式の中間値の定理が成り立たず($x^2-2$ は $1$ で負、$2$ で正だが $\mathbb{Q}$ に根がない)、数えられた $2$ は $\mathbb{Q}$ の実閉包の中の根 $\pm\sqrt2$ の個数である。

使い方と広がり

根の分離と近似

lem-sturm-sign の 2 により、$P$ の実数解はすべて $(-B,B)$ にある。Sturm 列を一度作れば、区間の端点での符号を調べるだけで、どの区間にいくつ解があるかが分かる。解を含む区間を中点で 2 つに分け、それぞれの個数を数えることをくり返すと、有限回で各区間に解がちょうど 1 個ずつ入るように分けられる(中点が解に当たったら、その点を解として記録し、両側の区間を少し縮めて続ければよい)。こうして区間に閉じ込めた解は、さらに中点で分ける二分法で好きな精度まで近似できる。高校数学の 解の配置 で扱う「区間の中に解がいくつあるか」という問いは、この方法で次数によらずに機械的に答えられる。

実閉体での意味

thm-sturm の証明は、$R$ の順序と多項式の中間値の定理しか使っていない。したがって、多項式が実閉体 $R$ に根をもつかどうか、いくつもつかは、係数の加減乗除と符号の判定だけで決まる。たとえば $P\in R[x]$ の係数がすべて部分体 $R_0$($R$ の順序を制限した順序体とみる)に属するなら、$P$ の $R$ における相異なる根の個数は、$R_0$ の中だけで計算した $V(-\infty)-V(+\infty)$ に等しく、$R_0$ の順序を延ばす実閉体 $R$ のとり方によらない。この「根の個数が順序だけで決まる」という性質は、実閉包の一意性の証明に使われる(実閉体 の注意「実閉包とArtin–Schreierの定理の出典」)。多変数への広がりが Tarski–Seidenbergの定理 である。

一般化:Tarski の定理

Sturm 列の 2 項目を $P'$ から $P'Q$($Q\in R[x]$)に替えて同じ規則で列を作ると、$a,b$ が $P$ の根でないとき、$V(a)-V(b)$ は
$$ \#\{x\in(a,b)\mid P(x)=0,\ Q(x)>0\}-\#\{x\in(a,b)\mid P(x)=0,\ Q(x)< 0\} $$
に等しい(BPR16 Theorem 2.73, p. 67。証明は Cauchy 指数を経由する Theorem 2.70, p. 65 による)。$Q=1$ が thm-sturm である。この一般化はこの記事では証明しない。これを使うと、$P$ の根のうち別の多項式 $Q$ が正になるものの個数も数えられ、実閉体の量化子消去 の 1 変数の場合の基礎になる。

Descartes の符号法則との比較

係数列 $c_0,\dots,c_d$ の符号の変化の数は、$P=\sum c_ix^i$ の正の根の個数(重複度を込める)以上で、差は偶数である(Descartes の符号法則。BPR16 Theorem 2.44, p. 54。この記事では証明しない)。こちらは割り算がいらない代わりに上界しか与えない。Sturm の定理は列を作る手間がかかるが、相異なる根の個数を正確に与える。

関連項目

参考文献

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