全臍的部分多様体

同義語:全臍的totally umbilic submanifoldtotally umbilical submanifoldtotally umbilic

概要

全臍的部分多様体(totally umbilic submanifold)とは、Riemann 多様体の部分多様体で、第 2 基本形式が各点で計量と平均曲率ベクトルの積 $\mathrm{II}=g\otimes H$ に等しいもの、すなわちすべての点が臍点であるものである。超曲面ではすべての主曲率が各点で等しいことにあたり、球面・超平面・Warped 積のファイバー・定曲率空間の測地球面・双曲空間のホロ球面が例である。この性質は外の空間の計量の共形変換で保たれる。$2$ 次元以上の連結な全臍的超曲面は、Euclid 空間では超平面か球面の開集合に限り、定曲率空間では平均曲率ベクトルが法接続について平行になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 全測地的部分多様体, 部分多様体, 共形変換, Gauss曲率

球面はどの点でもどの向きにも同じだけ曲がっている。曲面の 1 点での曲がり方は 2 つの主曲率で表されるが(Gauss曲率)、球面ではそれがいつも等しい。主曲率が等しい点を臍点(へそてん、umbilic point)といい、すべての点が臍点である部分多様体を全臍的(totally umbilic)であるという。一般の Riemann 多様体の部分多様体では、第 2 基本形式が各点で計量の(法ベクトル倍の)倍数であることが全臍的の定義になる。
全臍的部分多様体は、曲がり方に向きの差がない部分多様体である。曲がり方が $0$ なら全測地的、$0$ でなければ球面のようなものになる。実際、Euclid 空間の連結な全臍的超曲面は、超平面か球面の開集合に限る。全臍的であることは計量の共形変換で保たれるので、この結果から双曲空間の全臍的超曲面(測地球面、ホロ球面など)も決まる。この記事では、全臍的部分多様体を定義して特徴づけ、共形不変性、Euclid 空間での分類、定曲率空間での平均曲率ベクトルの平行性を証明する。

定義

記号は 全測地的部分多様体 の節「第 2 基本形式」に従う:$(\bar M,\bar g)$ は Riemann 多様体、$M\subset\bar M$ は $n$ 次元の部分多様体で誘導計量 $g$ をもち、$\mathrm{II}(X,Y)=(\bar\nabla_XY)^\perp$ は第 2 基本形式で、Gauss の公式 $\bar\nabla_XY=\nabla_XY+\mathrm{II}(X,Y)$ が成り立つ。

平均曲率ベクトル・臍点・全臍的

$T_pM$ の正規直交基底 $e_1,\dots,e_n$ について
$$ H_p:=\frac1n\sum_{i=1}^n\mathrm{II}(e_i,e_i)\in N_pM $$
を $p$ での平均曲率ベクトルという(基底のとり方によらない)。ある $\eta\in N_pM$ があって、すべての $v,w\in T_pM$ について
$$ \mathrm{II}(v,w)=g(v,w)\,\eta $$
となるとき、$p$ を $M$ の臍点という。このとき両辺のトレースをとって $\eta=H_p$ である。すべての点が臍点であるとき、すなわち $\mathrm{II}=g\otimes H$ のとき、$M$ は全臍的であるという。

全測地的部分多様体($\mathrm{II}=0$)は $H=0$ の全臍的部分多様体である。$n=1$ では $T_pM$ が 1 次元なので、すべての曲線が全臍的である。全臍的という条件に意味があるのは $n\ge2$ のときである。
超曲面($\dim\bar M=n+1$)で単位法ベクトル場 $N$ を選ぶと、$\mathrm{II}(X,Y)=h(X,Y)N$ と書け、$\bar g(sX,Y)=h(X,Y)$ で形作用素 $s$ が決まる。$p$ が臍点であることは $s_p=\kappa\,\mathrm{id}$($\kappa=\bar g(H_p,N)$)、すなわち $s_p$ の固有値(主曲率)がすべて等しいことである。$\mathbb R^3$ の曲面では $\kappa_1=\kappa_2$ である。

臍点の特徴づけ

$p\in M$ について次は同値である。

  1. $p$ は臍点である。
  2. 単位ベクトル $v\in T_pM$ について、$\mathrm{II}(v,v)$ が $v$ によらない。
  3. $p$ を出る $M$ の測地線の、$\bar M$ の中での加速度($\bar D_t\gamma'$ の $t=0$ での値)が、単位速さの測地線について初速度によらない。

1 ⇒ 2 は定義から明らかである。2 ⇒ 1:2 の共通の値を $\eta$ とすると、すべての $v$ について $\mathrm{II}(v,v)=g(v,v)\eta$ である。$B(v,w):=\mathrm{II}(v,w)-g(v,w)\eta$ は対称双線形で $B(v,v)=0$ なので、偏極恒等式 $B(v,w)=\frac14\bigl(B(v+w,v+w)-B(v-w,v-w)\bigr)$ から $B=0$ である。2 ⇔ 3:$M$ の測地線 $\gamma$($\gamma(0)=p$、$\gamma'(0)=v$)について、曲線に沿う Gauss の公式から $\bar D_t\gamma'=D_t\gamma'+\mathrm{II}(\gamma',\gamma')=\mathrm{II}(\gamma',\gamma')$ であり、$t=0$ で $\mathrm{II}(v,v)$ である(Lee18 Proposition 8.10、p. 233)。$\square$

例

球面と測地球面
  1. 中心 $c$、半径 $r$ の球面 $S\subset\mathbb R^{n+1}$ を考える。$S$ の接ベクトル場 $X,Y$ について $\langle Y,x-c\rangle=0$ を $X$ の向きに微分すると $\langle D_XY,x-c\rangle=-\langle X,Y\rangle$ であり($D$ は $\mathbb R^{n+1}$ の微分)、$x-c$ の向きが法線なので
    $$ \mathrm{II}(X,Y)=-\frac{\langle X,Y\rangle}{r^2}\,(x-c),\qquad H=-\frac{x-c}{r^2},\qquad|H|=\frac1r $$
    である。球面は全臍的である。超平面は全測地的なので全臍的である。
  2. Warped 積 $B\times_fF$ のファイバー $\{p\}\times F$ は、Warped積多様体 の命題「葉とファイバーの幾何」により $\mathrm{II}(V,W)=-\dfrac{g(V,W)}{f}\mathrm{grad}f$ を満たすので、全臍的で $H=-\mathrm{grad}f/f$ である。
  3. $\mathbb R^n$、$S^n$、双曲空間 $H^n$ の、点 $o$ を中心とする測地極座標の計量は $dr^2+f(r)^2g_{S^{n-1}}$($f(r)=r$、$\sin r$、$\sinh r$)の形である(Warped積多様体 の例「極座標によるEuclid空間」、双曲空間 の命題「測地極座標」)。半径 $r_0$ の測地球面 $\{r_0\}\times S^{n-1}$ は (2) によって全臍的で、
    $$ |H|=\frac{|f'(r_0)|}{f(r_0)}=\frac1{r_0},\qquad|\cot r_0|,\qquad\coth r_0 $$
    である。$S^n$ では $r_0=\pi/2$(赤道)で $H=0$ となり、赤道は全測地的である。双曲空間では $|H|>1$ で、$r_0\to\infty$ のとき $|H|\to1$ である。

共形不変性

共形変換による第 2 基本形式の変化

$\bar g'=e^{2\rho}\bar g$ とし、$M$ の $\bar g'$ についての第 2 基本形式・平均曲率ベクトルを $\mathrm{II}'$、$H'$ とする。$\bar g$ についての $\rho$ の勾配を $\mathrm{grad}\,\rho$ とすると
$$ \mathrm{II}'(X,Y)=\mathrm{II}(X,Y)-g(X,Y)\,(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp,\qquad H'=e^{-2\rho}\bigl(H-(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp\bigr) $$
であり、$\mathrm{II}'-g'\otimes H'=\mathrm{II}-g\otimes H$ である($g'=e^{2\rho}g$ は $M$ の誘導計量)。とくに $M$ の臍点の集合は $\bar g$ と $\bar g'$ で同じであり、$M$ が $\bar g$ について全臍的であることと $\bar g'$ について全臍的であることは同値である。

$\bar g'$ は $\bar g$ の正の関数倍なので、接空間 $T_pM$ の直交補空間は 2 つの計量で同じであり、法成分 $Z^\perp$ も同じである。共形変換 の命題「共形変換によるリーマン接続の変化」により、$M$ の接ベクトル場 $X,Y$ について
$$ \bar\nabla'_XY=\bar\nabla_XY+(X\rho)Y+(Y\rho)X-\bar g(X,Y)\,\mathrm{grad}\,\rho $$
である。$(X\rho)Y+(Y\rho)X$ は $M$ に接するので、法成分をとって $\mathrm{II}'$ の式を得る。$g'$ についての正規直交基底は $e^{-\rho}e_i$ なので $H'=\frac1n\sum_ie^{-2\rho}\mathrm{II}'(e_i,e_i)=e^{-2\rho}\bigl(H-(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp\bigr)$ である。よって
$$ \mathrm{II}'-g'\otimes H'=\mathrm{II}-g\otimes(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp-g\otimes\bigl(H-(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp\bigr)=\mathrm{II}-g\otimes H $$
である。$p$ が臍点であることは、この量が $p$ で $0$ になることにほかならない。$\square$

共形写像は全臍的部分多様体を保つ

$\phi\colon(\bar M,\bar g)\to(\bar N,\bar h)$ を共形変換($\phi^*\bar h=e^{2\rho}\bar g$)とする。$M\subset\bar M$ が全臍的なら、$\phi(M)\subset\bar N$ も全臍的である。

$\phi$ は $(\bar M,e^{2\rho}\bar g)$ から $(\bar N,\bar h)$ への等長写像である。prop-tu-conformal により $M$ は $e^{2\rho}\bar g$ について全臍的であり、等長写像は Riemann 接続を保つので(Riemann幾何学 の命題「等長写像とリーマン接続の両立」)、第 2 基本形式も $d\phi$ で写り合い、$\phi(M)$ は全臍的である。$\square$

ホロ球面

双曲空間 の上半空間モデル $U^n=\{(\xi,y)\mid y>0\}$、$g_U=y^{-2}(|d\xi|^2+dy^2)$ は Euclid の計量 $g_E$ の共形変換で、$\rho=-\log y$ である。$g_E$ についての勾配は $\mathrm{grad}\,\rho=-y^{-1}\partial_y$ である。
(1) 水平な超平面 $\{y=c\}$(ホロ球面)は $g_E$ について全測地的で、法線は $\partial_y$ の向きなので、prop-tu-conformal により
$$ \mathrm{II}_U(X,Y)=g_E(X,Y)\,\frac1c\,\partial_y=g_U(X,Y)\,c\,\partial_y,\qquad H_U=c\,\partial_y $$
で、$|H_U|_{g_U}=c\cdot\frac1c=1$ である。ホロ球面は全臍的で、平均曲率の大きさは $1$ である。
(2) 中心 $b$ が境界 $y=0$ の上にある Euclid の球面(半径 $R$)では、単位法ベクトルを $\nu=(x-b)/R$ とすると $H_E=-\nu/R$ で、$(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp=\langle-y^{-1}\partial_y,\nu\rangle\nu=-\nu/R$ である($\langle\partial_y,\nu\rangle=y/R$)。よって $H_U=e^{-2\rho}(H_E-(\mathrm{grad}\,\rho)^\perp)=0$ で、このような半球面は全臍的かつ $H=0$、すなわち全測地的である。これは 双曲空間 の例「上半空間の測地線と全測地的な超曲面」と一致する。境界に垂直な超平面も同様に全測地的である。

Euclid 空間の全臍的超曲面

$\mathbb R^{n+1}$ の超曲面 $M$ の上では、$\mathbb R^{n+1}$ 値の関数を $M$ の接ベクトル $X$ の向きに微分したものを $D_XZ$ と書く。局所的な単位法ベクトル場 $N$ について、$|N|=1$ から $D_XN$ は $M$ に接し、$\langle N,Y\rangle=0$ を微分して $\langle D_XN,Y\rangle=-\langle N,D_XY\rangle=-h(X,Y)$ なので、Weingarten の公式 $D_XN=-sX$ が成り立つ(Lee18 Theorem 8.13 (c)、p. 236)。

Euclid 空間の全臍的超曲面

$n\ge2$ とし、$M\subset\mathbb R^{n+1}$ を連結な $n$ 次元の部分多様体とする。$M$ が全臍的であることと、$M$ が超平面の開集合または球面の開集合であることは同値である。

超平面と球面が全臍的であることは ex-tu-spheres の (1) で見た。逆を示す。
段 1(主曲率は定数)。$M$ の開集合 $U$ の上で単位法ベクトル場 $N$ をとり、$s=\kappa\,\mathrm{id}$($\kappa=\langle H,N\rangle$)とすると、Weingarten の公式は $D_XN=-\kappa X$ となる。$U$ 上の接ベクトル場 $X,Y$ について、$\mathbb R^{n+1}$ 値の関数の 2 階微分は交換するので $D_XD_YN-D_YD_XN-D_{[X,Y]}N=0$ であり、$D_XY-D_YX=[X,Y]$ を使うと
$$ 0=D_X(-\kappa Y)-D_Y(-\kappa X)+\kappa[X,Y]=-(X\kappa)Y+(Y\kappa)X $$
である。$n\ge2$ なので、各点で 1 次独立な $X,Y$ がとれ、$X\kappa=Y\kappa=0$ である。$X$ は任意なので $\kappa$ は $U$ の上で局所定数である。$|\kappa|=|H|$ は $N$ の選び方によらず $M$ 全体で定義された連続関数で、局所定数だから、$M$ が連結なので定数 $k\ge0$ である。
段 2($k=0$ のとき)。$H=0$ なので $\mathrm{II}=g\otimes H=0$ で、$M$ は全測地的である。全測地的部分多様体 の定理「定曲率空間の全測地的部分多様体」の 1 により、$M$ は超平面の開集合である。
段 3($k>0$ のとき)。$U$ の上で $c:=x+\kappa^{-1}N$ とおく($x$ は位置ベクトル)。$N$ を $-N$ に替えると $\kappa$ も $-\kappa$ になるので、$c$ は $N$ の選び方によらず、$M$ 全体の上の滑らかな写像である。段 1 から $\kappa$ は局所定数なので
$$ D_Xc=X+\kappa^{-1}D_XN=X-X=0 $$
であり、$M$ が連結なので $c$ は定ベクトルである。よって $|x-c|=|\kappa^{-1}N|=1/k$ で、$M$ は中心 $c$、半径 $1/k$ の球面 $S$ に含まれる。$M$ も $S$ も $n$ 次元なので、包含 $M\to S$ は単射なはめ込みであり、逆関数定理 により $M$ は $S$ の開集合である。$\square$

$n\ge2$ の仮定は段 1 で、「異なる 2 つの向きの主曲率の変化を比べる」ところに使われた。曲線($n=1$)では主曲率(曲率)は自由に変えられる。

定曲率空間の全臍的部分多様体

外の空間が定曲率なら、超曲面に限らず同じ現象が起こる。法接続 $\nabla^\perp_X\xi:=(\bar\nabla_X\xi)^\perp$($\xi$ は法ベクトル場)は法束の計量的な接続である(Lee18 Proposition 8.6、p. 231)。

定曲率空間での平均曲率ベクトルの平行性

$(\bar M,\bar g)$ を断面曲率が定数の Riemann 多様体とし、$M\subset\bar M$ を $n\ge2$ 次元の全臍的部分多様体とする。このとき平均曲率ベクトルは法接続について平行($\nabla^\perp H=0$)であり、$|H|$ は $M$ の各連結成分の上で一定である。超曲面なら、主曲率 $\kappa=\bar g(H,N)$ は連結成分の上で一定である。

断面曲率が定数 $c_0$ なら、断面曲率 の系「定曲率の特徴づけ」により $\bar R(X,Y)Z=c_0\bigl(\bar g(Y,Z)X-\bar g(X,Z)Y\bigr)$ であり、$X,Y,Z$ が $M$ に接すれば $\bar R(X,Y)Z$ も $M$ に接する。Codazzi の方程式(Lee18 Theorem 8.9、p. 232)
$$ \bigl(\bar R(X,Y)Z\bigr)^\perp=(\nabla_X\mathrm{II})(Y,Z)-(\nabla_Y\mathrm{II})(X,Z),\qquad(\nabla_X\mathrm{II})(Y,Z):=\nabla^\perp_X\bigl(\mathrm{II}(Y,Z)\bigr)-\mathrm{II}(\nabla_XY,Z)-\mathrm{II}(Y,\nabla_XZ) $$
の左辺は $0$ である。$\mathrm{II}=g\otimes H$ を代入すると、$g$ が $\nabla$ について平行なので $(\nabla_X\mathrm{II})(Y,Z)=g(Y,Z)\nabla^\perp_XH$ となり
$$ g(Y,Z)\,\nabla^\perp_XH=g(X,Z)\,\nabla^\perp_YH $$
を得る。単位ベクトル $X$ を与え、$n\ge2$ なので $X$ に直交する単位ベクトル $Y=Z$ をとると $\nabla^\perp_XH=0$ である。法接続は計量的なので $X\,|H|^2=2\bar g(\nabla^\perp_XH,H)=0$ である。超曲面では単位法ベクトル場 $N$ について $2\bar g(\nabla^\perp_XN,N)=X|N|^2=0$ から $\nabla^\perp N=0$ なので、$H=\kappa N$ の平行性は $X\kappa=0$ を意味する。$\square$

thm-tu-euclid の段 1 は、この定理の $\bar M=\mathbb R^{n+1}$ の場合を直接計算したものである。

双曲空間と球面の全臍的超曲面

$n\ge3$ とする(超曲面の次元 $n-1$ が $2$ 以上)。

  1. 上半空間モデル $U^n$ の連結な全臍的超曲面は、Euclid の超平面または球面と $U^n$ の交わりの開集合である。
  2. 単位球面 $S^n\subset\mathbb R^{n+1}$ の連結な全臍的超曲面は、アフィン超平面と $S^n$ の交わり(大球面または小球面)の開集合である。

1:$g_U=y^{-2}g_E$ なので、prop-tu-conformal により $g_U$ について全臍的な超曲面は $g_E$ についても全臍的であり、thm-tu-euclid から主張が従う。
2:$M$ は $n-1$ 次元なので $S^n$ 全体ではなく、$M$ に含まれない点 $q\in S^n$ がある。$S^n$ の回転(等長写像で、アフィン超平面との交わりを同じ形の交わりに写す)で $q$ を北極に移せば、$M$ は北極を含まないとしてよい。ステレオ射影の逆写像 $\psi(y)=\Bigl(\dfrac{2y}{1+|y|^2},\ \dfrac{|y|^2-1}{1+|y|^2}\Bigr)$ は $\mathbb R^n$ から $S^n$ から北極を除いたものへの共形変換である(共形変換 の例「ステレオ射影」)。cor-tu-conformal-map を $\psi^{-1}$ に当てると $\psi^{-1}(M)\subset\mathbb R^n$ は全臍的で、thm-tu-euclid により超平面 $a\cdot y=d$ か球面 $|y|^2-2b\cdot y+e=0$ の開集合である。$X=\psi(y)=(X',X_{n+1})$ とおくと $1-X_{n+1}=\dfrac2{1+|y|^2}$、$y=\dfrac{X'}{1-X_{n+1}}$、$|y|^2=\dfrac{1+X_{n+1}}{1-X_{n+1}}$ なので、それぞれの方程式に $1-X_{n+1}$ を掛けると
$$ a\cdot X'-d\,(1-X_{n+1})=0,\qquad(1+X_{n+1})-2b\cdot X'+e\,(1-X_{n+1})=0 $$
となり、どちらも $X$ の 1 次式である。よって $M$ はアフィン超平面と $S^n$ の交わりに含まれ、次元を比べてその開集合である。$\square$

双曲空間の全臍的超曲面の例として、この記事では、全測地的な超曲面($H=0$、ex-tu-horosphere の (2))、ホロ球面($|H|=1$、同 (1))、測地球面($|H|=\coth r_0>1$、ex-tu-spheres の (3))を見た。thm-tu-space-form により、$n\ge3$ なら $H^n$ のどの連結な全臍的超曲面の上でも $|H|$ は一定である。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
$n\ge2$平面の放物線 $y=x^2$($n=1$)直線か円の開集合である
$M$ が連結である互いに交わらない 2 つの球面の和1 つの超平面か球面の開集合である
全臍的である(平均曲率が一定であることだけ残す)$\mathbb R^3$ の円柱 $x^2+y^2=1$超平面か球面の開集合である
外の空間が定曲率である$\mathbb R^{n+1}$($n\ge2$)の計量 $e^{2\rho}g_E$、$\rho=x_1x_{n+1}$ の中の超平面 $x_{n+1}=0$$\lvert H\rvert$ が一定である
反例の確かめ

1 行目:$n=1$ ではどの曲線も全臍的である(def-tu-main の後の注意)。放物線の曲率 $2/(1+4x^2)^{3/2}$ は一定でないので、直線の開集合でも円の開集合でもない。
2 行目:2 つの球面のそれぞれが全臍的なので、和(交わらないので部分多様体である)も全臍的だが、1 つの球面には含まれない。thm-tu-euclid の証明の段 3 で $c$ が一定になるのは連結成分ごとである。
3 行目:単位法ベクトル $N=(x,y,0)$ について、円柱の主曲率は円周の向きに $-1$、母線の向きに $0$(Weingarten の公式 $D_XN=-sX$ で $s$ の固有値は $-1$ と $0$、符号は $N$ の向きによる)なので、どの点も臍点でない。平均曲率は $\pm\frac12$ で一定であるが、円柱は超平面でも球面でもない。
4 行目:$g_E$ について超平面は全測地的で、$\mathrm{grad}_{g_E}\rho=(x_{n+1},0,\dots,0,x_1)$ は超平面の上で $x_1e_{n+1}$(法線の向き)である。prop-tu-conformal により、超平面は $e^{2\rho}g_E$ について全臍的で、$\rho=0$ の超平面の上で $H'=-x_1e_{n+1}$、$|H'|=|x_1|$ である。$n\ge2$ で超平面は連結だが、$|H'|$ は一定でない。thm-tu-space-form の対偶により、この計量は定曲率でない。

補足

全測地的との関係。 全臍的で $H=0$ なら全測地的である。全測地的部分多様体 の定理「定曲率空間の全測地的部分多様体」と thm-tu-euclid を比べると、Euclid 空間では超平面が $H=0$ の場合、球面が $H\ne0$ の場合にあたる。
Warped 積との関係。 ex-tu-spheres の (2) のように、Warped 積のファイバーはいつも全臍的である。定曲率空間の測地球面が全臍的であることは、その測地極座標が Warped 積の形をとることから従った。
共形幾何。 prop-tu-conformal は、第 2 基本形式からトレースを除いた部分 $\mathrm{II}-g\otimes H$ が計量の共形類だけで決まることを示している。cor-tu-hyperbolic の証明のように、共形変換で写り合う空間(Euclid 空間・球面・双曲空間)の間では、全臍的超曲面の分類を移し合える。

関連項目

参考文献

[1]
John M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds, Graduate Texts in Mathematics 176, Springer, 2018, Proposition 8.6(法接続、p. 231)、Theorem 8.9(Codazzi の方程式、p. 232)、Proposition 8.10(第 2 基本形式の幾何学的解釈、p. 233)、Theorem 8.13 (c)(超曲面の Weingarten の公式、p. 236)

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