双対曲線(dual curve)とは、代数閉体上の既約な射影平面曲線 $C$ について、非特異な点での接線を双対射影平面の点とみて集めた集合の閉包 $C^*$ のことである。接線を与える Gauss 写像は、$C$ が直線でなければ定数でなく、$C^*$ はふたたび既約な平面曲線になる(直線の双対は 1 点)。標数 $0$ では $(C^*)^*=C$ が成り立ち、非特異な円錐曲線の双対は円錐曲線、尖点 3 次曲線の双対は尖点 3 次曲線である。正標数では、標数 $2$ の円錐曲線のようにすべての接線が 1 点を通り、双対曲線が直線になる例がある。
双対曲線(dual curve)とは、射影平面の曲線 $C$ の各非特異点での接線を集めたものを、直線全体のなす射影平面(双対射影平面)の中の図形として見たものである。接線に点を対応させる写像を Gauss 写像といい、その像の閉包が双対曲線 $C^*$ である。
$C$ が直線でなければ、Gauss 写像は定数でなく、$C^*$ はふたたび既約な平面曲線になる(thm-dc-curve)。たとえば標数が $2$ でなければ非特異な円錐曲線の双対曲線は円錐曲線で、標数が $2,3$ でなければ尖点 3 次曲線の双対曲線は尖点 3 次曲線である。標数 $0$ では双対をとる操作は対合で、$(C^*)^*=C$ が成り立つ(thm-dc-biduality)。これは「接線の接線」を考えると元の点に戻ることを意味し、関数体の導分を使って証明できる。正標数ではこの双対性は崩れうる:標数 $2$ の円錐曲線では、すべての接線が 1 点を通り、双対曲線は直線になる。
以下、$k$ は代数閉体とし、平面曲線とは既約な斉次多項式 $F\in k[x,y,z]$ の定める $C=V(F)\subset\mathbb{P}^2$ をいう。$d:=\deg F$、$F_x,F_y,F_z$ を偏微分、$C_{\mathrm{ns}}$ を非特異な点の集合とする。$C$ の特異点は有限個なので(代数曲線 の命題「曲線の点と閉集合」と定理「Jacobi の判定法(平面曲線)」)、$C_{\mathrm{ns}}$ は $C$ の空でない開集合である。
直線 $a_0x+a_1y+a_2z=0$ に係数の比 $(a_0:a_1:a_2)$ を対応させると、$\mathbb{P}^2$ の直線全体はもう 1 つの射影平面 $(\mathbb{P}^2)^*$ と同一視される。これを双対射影平面という。点 $P$ が直線 $\xi$ の上にあることは $\xi\cdot P:=\xi_0P_0+\xi_1P_1+\xi_2P_2=0$ と書け、この条件は $P$ と $\xi$ について対称である。とくに $(\mathbb{P}^2)^*$ の直線は「$\mathbb{P}^2$ の 1 点を通る直線の全体」であり、$((\mathbb{P}^2)^*)^*=\mathbb{P}^2$ と見なせる。
$C$ を直線でない平面曲線、$P\in C_{\mathrm{ns}}$ とする。$P$ を通る直線 $L$ で $I(P,C\cap L)\ge2$ となるものはただ 1 つあり、それは
$$
T_P:=V\bigl(F_x(P)\,x+F_y(P)\,y+F_z(P)\,z\bigr)
$$
である。$F_x(P),F_y(P),F_z(P)$ のどれかは $0$ でない。
$C$ は既約で直線でないので、どの直線も $C$ の成分でなく、$I(P,C\cap L)$ は有限である。座標を並べ替えて $P=(a:b:1)$、$f(x,y):=F(x,y,1)$ とする。$P$ は非特異なので $m_P(f)=1$ で、$f(P+(x,y))$ の 1 次の成分は $f_1=f_x(a,b)x+f_y(a,b)y\ne0$ である(点の重複度 の定理「単純点と非特異点」)。同記事の定理「直線による重複度の特徴づけ」の 3 により、$P$ を通る直線 $L$ について $I(P,C\cap L)\ge1$ で、等号は $L$ の方向 $v$ が $f_1(v)\ne0$ をみたすときに限る。よって $I\ge2$ となる直線は方向が $f_1=0$ の直線、すなわち $f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)=0$ ただ 1 本である。
$f_x(a,b)=F_x(P)$、$f_y(a,b)=F_y(P)$ であり、Euler の等式 $xF_x+yF_y+zF_z=dF$ を $P$ で使うと $aF_x(P)+bF_y(P)+F_z(P)=0$ なので、この直線を斉次化したものは $F_x(P)x+F_y(P)y+F_z(P)z=0$ である。$(F_x(P),F_y(P))=(f_x(a,b),f_y(a,b))\ne(0,0)$ である。$\square$
$C$ が直線 $L_0$ なら、$P\in L_0$ を通る $L_0$ 以外の直線との交点数はすべて $1$ で、$L_0$ 自身は $C$ の成分なので交点数が定まらない。したがって「$I\ge2$ となるただ 1 本の直線」という形の接線の定義は直線にはそのまま当てはまらない。ただし上の $T_P$ の式は直線でも意味をもち、$T_P=L_0$ である。
$C$ を平面曲線とする。
$$
\gamma_C\colon C_{\mathrm{ns}}\longrightarrow(\mathbb{P}^2)^*,\qquad P\longmapsto\bigl(F_x(P):F_y(P):F_z(P)\bigr)
$$
を $C$ の Gauss 写像という。$\gamma_C(P)$ は接線 $T_P$ の座標である。像の閉包 $C^*:=\overline{\gamma_C(C_{\mathrm{ns}})}\subset(\mathbb{P}^2)^*$ を $C$ の双対曲線という。
prop-dc-tangent により $F_x,F_y,F_z$ は $C_{\mathrm{ns}}$ で同時に $0$ にならないので、$\gamma_C$ は射である。
$C$ の関数体 $K:=k(C)$ の言葉で書き直しておく。座標を選んで $C\not\subset\{z=0\}$ とし、$K$ の元を成分とするベクトル
$$
p:=(x/z,\ y/z,\ 1)\in K^3,\qquad\xi:=\bigl(F_x(p),F_y(p),F_z(p)\bigr)\in K^3
$$
をおく。$e$ 次の斉次式 $G$ について $G(p)=G/z^e$ は $C$ の有理関数で、$G(p)=0$ であることと $G$ が $C$ の上で $0$ になることは同値である($C\cap\{z=0\}$ は有限集合で、その外は $C$ で稠密)。とくに $F(p)=0$ であり、$\xi\ne0$ である($\xi=0$ なら $F_x,F_y,F_z$ が $C$ の上で $0$ になり $C_{\mathrm{ns}}=\emptyset$ となる)。斉次式 $G(\xi_0,\xi_1,\xi_2)$ について、$G(\xi)=0$ であることは $G(F_x,F_y,F_z)$ が $C$ の上で $0$ になること、すなわち $G$ が $\gamma_C(C_{\mathrm{ns}})$ の上で $0$ になることと同値である。したがって
$$
C^*=V\bigl(\{G\mid G\text{ は斉次式で }G(\xi)=0\}\bigr)
$$
である。$p$ と $\xi$ は、それぞれ $C$ と $C^*$ の「一般の点」の役割をする。
$C$ を平面曲線とする。
1:$F$ は 1 次式なので偏微分は定数である。
2:まず $\gamma_C$ が定数 $\xi^0$ だとする。Euler の等式から $\xi^0\cdot P=\sum_iF_i(P)P_i=dF(P)=0$、すなわち各 $P\in C_{\mathrm{ns}}$ は直線 $L^0:=\{\xi^0\cdot x=0\}$ にのる。$C_{\mathrm{ns}}$ は $C$ で稠密なので $C\subset L^0$ であり、$L^0$ の 1 次式は $C$ の上で $0$ になるから、零点定理により既約な $F$ で割り切れる。よって $d=1$ で、$C$ は直線となり仮定に反する。
$C_{\mathrm{ns}}$ は既約な $C$ の空でない開集合なので既約で、その連続像の閉包 $C^*$ も既約である。次に、$\xi_j\ne0$ となる $j$ を選び、残りの添字を $i,l$ とする。$K$ の $k$ 上の超越次数は $1$ なので(代数曲線 の定義「代数曲線」の後の注意)、$\xi_i/\xi_j$ と $\xi_l/\xi_j$ は $k$ 上代数的に従属であり、$0$ でない $g\in k[u,v]$ で $g(\xi_i/\xi_j,\xi_l/\xi_j)=0$ となるものがある。これを斉次化した $0$ でない斉次式 $G$ は $G(\xi)=0$ をみたすので、$C^*\subset V(G)$ である。$C^*$ は既約なので $G$ のある既約因子 $G_1$ について $C^*\subset V(G_1)$ である。$V(G_1)$ は曲線で、$C^*\ne V(G_1)$ なら $C^*$ は有限集合(代数曲線 の命題「曲線の点と閉集合」の 3)で、既約だから 1 点になる。これは $\gamma_C$ が定数でないことに反するので、$C^*=V(G_1)$ である。$\square$
接線の一意性と Gauss 写像が射であることは Har77 I Exercise 7.3(p. 54)に、非線型の $C$ について $C^*$ が曲線であることは Ful08 Problem 6.47(p. 79)にある。
$k$ の標数を $0$ とし、$C$ を直線でない平面曲線とする。このとき $C^*$ は直線でなく、$(C^*)^*=C$ である。さらに、$C_{\mathrm{ns}}$ の空でない開集合 $U$ があって、$P\in U$ について $\gamma_C(P)$ は $C^*$ の非特異点であり、$\gamma_{C^*}(\gamma_C(P))=P$ が成り立つ。
段 1(導分):$u\in K\setminus k$ をとる。$k$ は代数閉体なので $u$ は $k$ 上超越的で、$K$ は $k(u)$ 上代数的(超越次数 $1$)、標数 $0$ なので分離的である。$k(u)$ の導分 $d/du$ は $K$ の導分 $D$ に延び(導分 の定理「分離代数拡大への一意延長」)、$D|_k=0$、$D(u)=1$ である。$h\in K$ が $D(h)=0$ をみたせば $h\in k$ である。実際 $h\notin k$ なら、同じ理由で $K$ は $k(h)$ 上分離代数的で、$D$ は $k(h)$ の上で $0$ だから、$k(h)$ の零導分の一意な延長として $D=0$ となり、$D(u)=1$ に反する。以下、ベクトルには $D$ を成分ごとに作用させる。
段 2(3 つの直交関係):$F(p)=0$ に $D$ を作用させると $\sum_iF_i(p)D(p_i)=0$、すなわち $\xi\cdot Dp=0$ である。Euler の等式から $\xi\cdot p=dF(p)=0$ で、これに $D$ を作用させると $D\xi\cdot p+\xi\cdot Dp=0$、よって $D\xi\cdot p=0$ である。$p$ は $\xi$ とも $D\xi$ とも直交する。
段 3($\xi$ と $D\xi$ は独立):$D\xi=\lambda\xi$($\lambda\in K$)とすると、$\xi_j\ne0$ について $D(\xi_i/\xi_j)=(\lambda\xi_i\xi_j-\xi_i\lambda\xi_j)/\xi_j^2=0$ なので、段 1 により $\xi_i/\xi_j=c_i\in k$ である。すると $F_i-c_iF_j$ は $C$ の上で $0$ で、$F_j(P)\ne0$ となる $P\in C_{\mathrm{ns}}$(空でない開集合)で $\gamma_C(P)=(c_0:c_1:c_2)$ となり、$\gamma_C$ が定数になって thm-dc-curve の 2 に反する。よって $\xi$ と $D\xi$ は $K$ 上 1 次独立で、両方に直交するベクトルは $p$ の $K$ 倍に限る。
段 4($C^*$ の Gauss 写像):thm-dc-curve により $C^*=V(G)$($G$ は既約な斉次式、次数 $e\ge1$)と書ける。標数 $0$ なので偏微分 $G_i:=\partial G/\partial\xi_i$ のどれかは $0$ でない $e-1$ 次式で、$G$ で割り切れないから $C^*$ の上で恒等的に $0$ ではなく、$G_i(\xi)\ne0$ である。$\eta:=(G_0(\xi),G_1(\xi),G_2(\xi))\ne0$ について、段 2 と同じ計算で $G(\xi)=0$ から $\eta\cdot D\xi=0$、Euler の等式から $\eta\cdot\xi=eG(\xi)=0$ である。段 3 により $\eta=\mu p$($\mu\in K^\times$)である。
段 5(点に戻す):$\eta=\mu p$ は、$C$ の上の有理関数として $G_i(F_x,F_y,F_z)(P)$ が $P_i$ に比例することを意味する。$\mu$ が正則で $0$ にならない空でない開集合 $U\subset C_{\mathrm{ns}}\cap\{z\ne0\}$ をとると、$P\in U$ で $\nabla G(\gamma_C(P))$ は $0$ でなく $P$ に比例する。よって $\gamma_C(P)$ は $C^*$ の非特異点で、$\gamma_{C^*}(\gamma_C(P))=P$ である。$U$ は無限集合なので $\gamma_{C^*}$ は定数でなく、$C^*$ は直線でない。$(C^*)^*$ は $U$ を含む閉集合なので $\overline U=C$ を含み、thm-dc-curve の 2 により既約な平面曲線である。既約な平面曲線どうしの包含 $C\subset(C^*)^*$ は、零点定理により定義式が定数倍を除いて一致することを意味するので、$(C^*)^*=C$ である。$\square$
段 3 が崩れる、すなわち $\xi$ の比がすべて導分で消えることが、正標数で双対性が成り立たない理由である(節「反例」)。
標数を $2$ でないとし、$C=V(x^{\mathsf T}Ax)$($A$ は正則な対称行列)を非特異な円錐曲線とする。$\nabla F(P)=2AP$ なので $\gamma_C(P)=(AP)$ であり、$\xi=AP$ とおくと $\xi^{\mathsf T}A^{-1}\xi=P^{\mathsf T}AP=0$ である。逆に $\xi^{\mathsf T}A^{-1}\xi=0$ なら $P:=A^{-1}\xi$ は $C$ の点で $\gamma_C(P)=\xi$ である。よって $C^*=V(\xi^{\mathsf T}A^{-1}\xi)$ はふたたび非特異な円錐曲線で、$(C^*)^*=V(x^{\mathsf T}Ax)=C$ となる。これは 円錐曲線 の節「極と極線」の対応を接線について述べたものである。
標数を $2,3$ でないとし、$C\colon y^2z=x^3$、$F=y^2z-x^3$ とする。非特異な点 $(t^2:t^3:1)$($t\ne0$)では $\nabla F=(-3t^4,2t^3,t^6)$ なので $\gamma_C=(-3t:2:t^3)$ であり、
$$
4\xi_0^3+27\xi_1^2\xi_2=4(-27t^3)+27\cdot4t^3=0
$$
である。$4\xi_0^3+27\xi_1^2\xi_2$ は既約で($\xi_2$ について 1 次で、係数 $27\xi_1^2$ と $4\xi_0^3$ は互いに素)、thm-dc-curve により $C^*=V(4\xi_0^3+27\xi_1^2\xi_2)$ である。これも尖点 3 次曲線で、尖点は $(0:0:1)$ である。$C$ の変曲点 $(0:1:0)$(平面3次曲線 の定理「Weierstrass 形への変形」の後の注意)では $\nabla F=(0,0,1)$ なので、$C$ の変曲点が $C^*$ の尖点に移る。逆に $t\to0$ で $\gamma_C(t)\to(0:1:0)$ となり、$C$ の尖点の側に $C^*$ の変曲点 $(0:1:0)$ が対応する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 直線でない(prop-dc-tangent・thm-dc-curve の 2) | 直線 $C=V(z)$ | $\gamma_C$ は定数 $(0:0:1)$ で、$C^*$ は曲線でなく 1 点 |
| 標数 $0$(thm-dc-biduality) | 標数 $2$ の円錐曲線 $xz=y^2$ | すべての接線が $(0:1:0)$ を通り、$C^*$ は直線、$(C^*)^*$ は 1 点 |
| 標数 $0$(thm-dc-biduality) | 標数 $3$ の尖点 3 次曲線 $y^2z=x^3$ | すべての接線が $(1:0:0)$ を通り、$C^*$ は直線、$(C^*)^*$ は 1 点 |
要点:正標数では偏微分の 1 つが恒等的に $0$ になり、Gauss 写像の像が直線に落ちる。
1 行目:$F=z$ の偏微分は $(0,0,1)$ で一定である。$C$ の点を通る $C$ 以外の直線はすべて交点数 $1$ で、接線を「交点数 $2$ 以上のただ 1 本の直線」として定めることもできない。
2 行目:$F=xz-y^2$ の偏微分は $(z,-2y,x)=(z,0,x)$ なので $\gamma_C(P)=(z:0:x)$ は直線 $\xi_1=0$ にのる。$C$ は直線でないので thm-dc-curve により $C^*$ は曲線であり、直線 $\xi_1=0$ に含まれるからそれに等しい。直線の双対は 1 点(1 行目)である。$\xi_1=0$ は「$(0:1:0)$ を通る直線」の条件である。関数体 $k(t)$($x=1$、$y=t$、$z=t^2$)では $\xi$ は $(t^2,0,1)$ の $K$ 倍で、$D=d/dt$ について $D(t^2,0,1)=(2t,0,0)=0$ となり、段 3 の独立性が崩れている。
3 行目:$F=y^2z-x^3$ の偏微分は $(-3x^2,2yz,y^2)=(0,2yz,y^2)$ で、$\gamma_C$ の像は直線 $\xi_0=0$ にのる。2 行目と同じく $C^*$ はこの直線で、$(C^*)^*$ は 1 点 $(1:0:0)$ である。
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